特許第6604967号(P6604967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6604967油成分を沈殿させることなくpHを調整するプロトンポンプとして水と臨界未満/超臨界の二酸化炭素を用いた解乳化及び原料とその画分からの生化学物質の抽出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6604967
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】油成分を沈殿させることなくpHを調整するプロトンポンプとして水と臨界未満/超臨界の二酸化炭素を用いた解乳化及び原料とその画分からの生化学物質の抽出
(51)【国際特許分類】
   C10G 33/04 20060101AFI20191031BHJP
   C10G 21/08 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C10G33/04
   C10G21/08
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-563790(P2016-563790)
(86)(22)【出願日】2015年5月5日
(65)【公表番号】特表2017-517596(P2017-517596A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】US2015029165
(87)【国際公開番号】WO2015171556
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2016年12月5日
(31)【優先権主張番号】14/269,667
(32)【優先日】2014年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(74)【代理人】
【識別番号】100178445
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194892
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 麻美
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】ユースフ,ザキ
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06566410(US,B1)
【文献】 特開平04−298201(JP,A)
【文献】 特表平06−504306(JP,A)
【文献】 特開平11−290610(JP,A)
【文献】 特開2013−180244(JP,A)
【文献】 特開平04−225802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油とその画分からの生化学物質の抽出のための、原油の一部であるアスファルテンを沈殿させることのない方法であって、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合し、エマルジョンは芳香族レジン、アスファルテン、及び生化学物質を含む界面活性分子を含んでいるステップと、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合することによって、エマルジョンの水相のpHを、エマルジョンの界面張力を弱める第1のpH値に減少させる条件に混合物を維持するステップと
を備え、
生化学物質が沈殿又は水相に移動しそこから抽出されるとともに、アスファルテンが混合物中で溶媒和されてアスファルテン沈殿が防止され、
さらに、臨界前から超臨界の二酸化炭素の添加に先立って、エマルジョンに精油所の生成物由来のレジン添加材を導入するステップを含む方法。
【請求項2】
原油とその画分からの生化学物質の抽出のための、原油の一部であるアスファルテンを沈殿させることのない方法であって、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合し、エマルジョンは芳香族レジン、アスファルテン、及び生化学物質を含む界面活性分子を含んでいるステップと、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合することによって、エマルジョンの水相のpHを、エマルジョンの界面張力を弱める第1のpH値に減少させる条件に混合物を維持するステップと
を備え、
生化学物質が沈殿又は水相に移動しそこから抽出されるとともに、アスファルテンが混合物中で溶媒和されてアスファルテン沈殿が防止され、
さらに、臨界前から超臨界の二酸化炭素の添加に先立って、液化リグニン成分を導入するステップを含む方法。
【請求項3】
原油のエマルジョンは、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、水中油中水型エマルジョン、及び油中水中油型エマルジョンからなるグループから選択されたエマルジョンからなる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
生化学物質は、ラムノリピドからなる請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
界面活性分子は、それに結合したカルボキシル酸基を有する分子からなる請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
界面活性分子は、ナフテン酸を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
第1のpH値は、芳香族レジンとアスファルテンの、pHIEPと、カルボキシル酸基の酸解離定数よりも低い請求項5記載の方法。
【請求項8】
さらに、原油のエマルジョンの混合物と臨界前から超臨界の二酸化炭素に、臨界前から超臨界の二酸化炭素が原油のエマルジョンの油相を横切ってエマルジョンの相の境界まで拡散し、その後、原油のエマルジョンの水相に入って安定することを許容するステップを含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項9】
さらに、全体の酸性対塩基性官能基比を0.25から4の間に維持するステップを含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項10】
比が0.5から2の間に維持される請求項9記載の方法。
【請求項11】
さらに、全体の酸性対塩基性官能基比を0.25から4の間に維持するために、追加の芳香族レジンを添加するステップを含む請求項9記載の方法。
【請求項12】
原油のエマルジョンは容器に収容され原油のエマルジョンの温度は水の凝固点よりも高く、容器の圧力は1バールから300バールの間に維持され、容器の温度は二酸化炭素の臨界前−超臨界温度よりも高く150℃よりも低い請求項1又は2記載の方法。
【請求項13】
さらに、エマルジョンの相の境界において、ゼータ電位を低下させて、芳香族レジン、ナフテン酸、アスファルテンの等電のIEPの近傍に到達させ、それによって、エマルジョンの界面膜を弱くするための、水相のpHを調整するステップを含む請求項1又は2記載の方法。
【請求項14】
ゼータ電位は−10eVと10eVの間に低下する請求項13記載の方法。
【請求項15】
界面活性分子の−COOH基は、混合物を含む容器の中の高圧下で、炭酸の形成とプロトン(H+)を放出するその解離のために、第1のpH値において失活する請求項1又は2記載の方法。
【請求項16】
さらに、全体の酸性対塩基性官能基比を0.25から4の間に維持し、水相のpHを生化学物質のpKaよりも低く維持し、それによって、生化学物質を電気的に不活性にして沈殿を可能にし、又は、その水相との水素結合により溶解した形態を維持する請求項1又は2記載の方法。
【請求項17】
原油とその画分からの生化学物質の抽出のための方法であって、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合して第1の混合物を形成し、エマルジョンは芳香族レジン、アスファルテン、及び生化学物質を含む界面活性分子を含んでいるステップと、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合することによって、エマルジョンの水相のpHを、エマルジョンの界面張力を弱める第1のpH値に減少させる条件に混合物を維持し、それによって、解乳化を生じされるステップと
を備え、
生化学物質が沈殿又は水相に移動しそこから抽出されるとともに、アスファルテンが原油に溶媒和されたままであって、アスファルテン沈殿が防止され、
さらに、臨界前から超臨界の二酸化炭素の添加に先立って、エマルジョンに精油所の生成物由来のレジン添加材を導入するステップを含む方法。
【請求項18】
原油とその画分からの生化学物質の抽出のための方法であって、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合して第1の混合物を形成し、エマルジョンは芳香族レジン、アスファルテン、及び生化学物質を含む界面活性分子を含んでいるステップと、
原油のエマルジョンを亜臨界から超臨界の二酸化炭素と混合することによって、エマルジョンの水相のpHを、エマルジョンの界面張力を弱める第1のpH値に減少させる条件に混合物を維持し、それによって、解乳化を生じされるステップと
を備え、
生化学物質が沈殿又は水相に移動しそこから抽出されるとともに、アスファルテンが原油に溶媒和されたままであって、アスファルテン沈殿が防止され、
さらに、臨界前から超臨界の二酸化炭素の添加に先立って、液化リグニン成分を導入するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油の解乳化方法に関する。より詳細には、本発明は、望ましくない原油成分の沈殿を避けて、原油とその画分から生化学物質を抽出するための解乳化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油とその画分は、様々な化学品を生産するための供給原料として用いられている。将来、様々な高価値が付加された生化学物質も、水の存在下での原油とその画分のバイオプロセスから商用的に生産可能である。油田の原油は、多くの場合、水とエマルジョンを形成する。
【0003】
エマルジョンは、通常は混合することのできない2つ以上の液体の混合物であって、一つの相が他の連続相中に不連続的に分散している。油/水エマルジョンは様々なタイプがあり、油中水型(W/O)エマルジョン(水が分散相で油が連続相)と、水中油型(O/W)エマルジョン(油が分散相で水が連続相)や、水中油中水型(W/O/W)エマルジョンと油中水中油型(O/W/O)エマルジョンのようなより複雑なエマルジョンがある。大抵、油田で生成するエマルジョンはW/Oエマルジョンである。
【0004】
これらのエマルジョンの中に、粘性をもたらすいくつかの表面活性物質が存在する。さらに、水中に存在するイオン(H、OH、Clなど)と相互作用する電荷を有する油相からの多くのタイプの界面活性成分(基、COOHなど)が存在することにより、耐久性のあるフィルムが原油/水の界面において通常は形成される。原油とその画分におけるエマルジョンは、固有の成分から形成される。
【0005】
原油中に存在し或いは形成又は産出される、高価値の生化学物質は、多種多様の用途を有しており、それには制癌剤用途、掘削流体、美容外科、飲用水からの重金属の除去がある。しかし、原油とその画分などの基質で産出されるこれらの固有の生化学物質は、高度に界面活性な化合物であり、それらは通常は、破壊(すなわち、解乳化)が非常に困難な水−油系の頑強なエマルジョンを作り出す。したがって、混合物から生化学物質を抽出するのは困難である。これらの場合の多くにおいて、従来の抽出(解乳化)法は、系の高い粘性と界面活性剤の強い両親媒性特性のために、役に立たない。
【0006】
さらに、原油の解乳化のためのいくつかの方法があるが、これらの方法は通常はアスファルテン−油中の表面活性巨大分子の一種−の沈殿を招き、設備の機能不全を招く。特に、アスファルテンの沈殿は、パイプラインとポンプにアスファルテンの沈着を引き起こし、パイプラインを減らして無価値にし、ポンプを損傷させる。したがって、アスファルテンの沈殿を避けることが望まれる。
【0007】
それゆえに、高価値の生化学物質の抽出と、さらにアスファルテンの沈殿を避けるという両者に効果的な解乳化法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、原油とその画分での生化学反応の結果として生じる場合に、原油とその画分の界面活性な生化学製品(例えば、ラムノリピド)を抽出するための方法を対象とする。より詳細には、本発明は、pHを調整するプロトンポンプとして臨界未満/超臨界のCOを用い、アスファルテンの沈殿も避ける、解乳化法に関する。
【0009】
本発明において、臨界未満から超臨界のCOは、油−水相の界面と、最終的には水相の中に容易に拡散するように、原油エマルジョン(例えば、水中油型、油中水型、水中油中水型、又は油中水中油型エマルジョン)の中に導入され、それによって、系の温度と圧力に応じた大きなpHの低下を引き起こす。注入されたCOは、つぎにエマルジョンのフィルムの界面を含む水相の至るところで水分子と相互作用することにより水相で炭酸を形成する。系のエマルジョンの界面でのpHの低下は、エマルジョンの界面における界面活性分子(例えば、アスファルテン、レジン酸、ナフテン酸、ラムノリピド)と水の間の電荷分布のバランスを変化させ、分子の表面活性が非活性化する。この非活性化は、界面活性成分が水分子への親和性を失うため、エマルジョンの界面膜を弱くすることになる。
【0010】
原油は、つぎに穏やかに撹拌又は混合され、それによりエマルジョンが凝集する。エマルジョンが凝集すると、それらのサイズは、重力が油と水(水性)の画分を分離する臨界点に達する。このシナリオにおいて、ラムノリピド分子は、水相に移動し、プロトンポンプとして作用する水系における加圧されたCOの存在が維持される。凝集によって油と水相が分離されると、ラムノリピドは、温度変化や水の蒸発によって水相から集めることができる。アスファルテンの沈殿は、混合物中のアスファルテンに対する芳香族レジンの比を臨界値よりも高い値に維持することでこの方法においては避けられ、それは、解乳化工程の前か最中に原油のエマルジョンに油レジンの補給剤(アスファルテン巨大分子の溶解剤として配備される)を導入することで達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のより完全な理解とその多くの特徴は、以下の詳細な説明と添付の図面を参照することによって達成される。図面は本発明のいくつかの実施例を説明するのみであって、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意することが重要である。
図1】原油のエマルジョンからのラムノリピドの抽出工程の概略図である。
図2】アスファルテン巨大分子、レジンが欠如したアスファルトの集合体、レジンが存在するアスファルトの集合体の概略図である。
図3】エマルジョンの液滴の界面の代表図である。
図4】エマルジョンの液滴に取り込まれたラムノリピドの代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、原油エマルジョンから界面活性な生化学製品(例えば、ラムノリピド)を、それらが生化学生成物から生成した後に抽出するための方法を対象とする。
【0013】
[A.エマルジョン]
エマルジョンの形態での水と原油の共存は、工程と製品品質の見込みの両方から極めて魅力がない。油のいくつかの成分は、天然の固有の界面活性剤としての役割を果たし、原油/水の界面における耐久性のあるフィルムも、油相に存在する多種の分子と巨大分子の界面活性成分の存在により通常は形成される。アスファルテンとレジン(芳香性レジン)の両方は、それらの水と油の両方に対する部分的な新和性(両親媒性特性)のため、W/O又はO/W界面における界面活性剤の役割を果たす。
【0014】
原油とその抽出物のpHに対する(フィルム/膜/薄膜の)界面張力の研究から観察されるように、界面における界面活性が、アスファルテン、レジン及びナフテン酸の主にカルボキシル酸(−COOH)種の存在に由来することが知られている。
【0015】
レジンは、アスファルテンと比べると軽い巨大分子であり、界面活性基が付加した通常の芳香族化合物に類似した溶剤として振る舞う。W/O界面を形成するための、それらの水との相互作用の動力学は、これらの巨大分子に存在するその他の極性成分の存在に基づく。通常、高分子量のレジンと比較して、低分子量のレジンは界面活性が高い(すなわち、新たなW/O界面に達して覆うのも速い)傾向があり、長鎖の類似体と比較して強い酸強度を示す。
【0016】
カルボキシル酸(RCOOH)の界面活性は、それらが弱酸であってそれらの解離が局所的なpHに依存するため、pHに依存する。一般的に、最も軽い有機極性分子は、中性pHで水に比較的容易に溶解しエマルジョン形成への寄与は最小あり、一方で、最も重い分子は、大部分は油溶性であり、それらの疎水性の部分は有機相に溶解したままであり、それらの極性部分は適正なpH範囲でW/O界面で水分子と相互作用する。ラムノリピド分子の生成が完了した後、それはまた、油と水の間の界面において、アスファルテンとレジン巨大分子とともに、エマルジョンの形成に参加する。このエマルジョンからのラムノリピドの抽出には、油と水相の間の橋渡しとして相互作用する、これらの分子の界面活性特性の失活を必要とする。
【0017】
水の由来は、栄養分を受けて代謝産物を放出するために、原油又はその画分の対応物に加えて、補助的な反応媒体から生じることがある。また、多くの場合において、水と原油の混合物の混合又は撹拌は、水が分散相(O/W)に残存する安定な油中水型エマルジョンを形成することがある。原油エマルジョンでの水の安定性は、主に相の境界面において水滴をカプセルに包む強固な保護フィルムに依存することがよく知られている。先に触れたように、アスファルテンとレジン(天然の界面活性剤としての)は、原油からこの界面のフィルムに存在する。レジンは、原料中のアスファルテンの分散を増加させ、それゆえ、アスファルテン同士の凝集を最低限にする。さらに、レジン−アスファルテン比が減少すると、エマルジョンの界面膜における数が増加したアスファルテン巨大分子の存在が、エマルジョンに増加した剛性を与えるため、エマルジョンはより強固になり、壊れなくなる。
【0018】
低分子量のレジンが界面において界面の緩和を柔軟にし、一方、高分子量のアスファルテンが破壊が困難な強固なエマルジョンを形成することは、理解されるべきである。天然の有機酸の存在は、エマルジョンの安定性の増加にも寄与する可能性がある。多くの場合、原油に存在するこれらの有機酸は、主にナフテン酸型のRCOOHであり、原油の微生物分解により生じる。アスファルテンやレジンなどの重い化合物もまた、それらの構造に付加したCOOHとその他の極性基を有しているだろう。巨大分子構造に付加した両親媒性を有する化合物のすべては、エマルジョンと、ラムノリピドを含むエマルジョンの、形成と安定性に寄与することがある。ナフテン酸はまた、界面でエマルジョンの安定性に好ましい条件を与える。原油由来の油水界面における酸性基の失活は、エマルジョン安定性に大きく影響する。
【0019】
界面活性剤が水−油界面で蓄積すると、液滴が凝集して大きな液滴を形成するのを妨げ、相分離を妨げる。これらの成分の中で、アスファルテンはCOOH基が付加しているため、エマルジョンを安定させる主要成分であると考えられている。ほとんどの場合、レジン又はナフテン酸は、単独で安定なエマルジョンを生成することができない。さらに、レジンとナフテン酸は、場合によっては、界面でアスファルテン分子と重なり/絡み合って、エマルジョンの安定性に影響を与えるかもしれない。特に、レジンは、界面フィルムを形成する際にアスファルテンが相互に結合することを妨げるようにして、油中のアスファルテンの溶解度を高め、それによってエマルジョンの剛性を低下させる。アスファルテンは、原油の最も重く最も極性の高い画分を代表し、それら代表的な巨大分子は、主に、脂肪族の側鎖と様々な官能基を有する縮合芳香環のシートを含んでいる。これらの構造的な特性により、アスファルテンは界面活性を示し固有の乳化剤として作用する。
【0020】
最も低分子量のアスファルテン分子は、500Daの範囲内にあることがあり、その他の天然に存在する界面活性剤の典型的な分子量と同様である(例えば、レジンとナフテン酸分子は、通常、300〜400Daの分子量を有する)。これら低分子量の天然の界面活性剤は、比較的速いペースで移動してフィルム表面に達して平衡に達するが、アスファルテン材料(界面フィルムに向かってゆっくりと移動する)は、より多くの弾力のない表面被覆を形成する。大きなアスファルテン分子が液滴のフィルム表面に蓄積すると、O/WとW/Oの界面に剛性を与える。
【0021】
したがって、原油中の固有成分は、エマルジョンの安定性や頑強さのレベルを増加させ又は減少させる原因となる。さらに、細かい固形物(有機と無機の両方)は、エマルジョンの安定に寄与する。アスファルテンの化学は、多くの因子、すなわち、温度、圧力及びその固有の有機分散剤(例えば、レジン、ナフテン酸)に依存する。
【0022】
アスファルテンが分離したものとして作用せず、代わりに塊状の状態のままであり続け要ることは、注目すべきである。さらに、界面フィルムは、決して単分子層ではなく、むしろ物理的構造は、累計のアスファルテンの凝集、レジン、ナフテン酸などによって、水滴の表面に形成される。アスファルテン分子は、原油のW/O界面におけるπ−π相互作用によりフロックを形成する傾向があり、油の高い芳香族レジン対アスファルテン比が閾値未満に落ちない限り、それによって、W/Oエマルジョンの安定性に相乗効果を与える。アスファルテン、レジン、ワックス、及び小さい固体粒子はともに、水−油界面の高粘性の又は強固なフィルムを形成することによるエマルジョンの安定性の原因であると通常は考えられる。これらの分子は、水滴の周りに一種の膜(又は薄膜)を形成し、エマルジョンの液滴の凝集を積極的に軽減させる。
【0023】
異なった条件(例えば、pHと水含有量)で、酸性の原油は、異なった安定性を有する異なったタイプのエマルジョンを形成することがある。しかし、原油中の脂肪酸(ナフテン酸)の存在とともに、エマルジョンのパターンは、通常は、アスファルテンとレジンの存在に加えて水相との相互作用とともに変化する。脂肪酸−塩水の系における最も基本的な特性の一つは、層状リオトロピック液晶D相の形成である。この相は、エマルジョン界面において広がる水の層を覆う、界面活性の分子と巨大分子の二層構造を含む微細構造を有する。この構造がW/Oエマルジョンの安定性を増強させることは、疑いなく示されている。凝集に対する最後の保護は、界面に高い界面強度と剛性を与える多層を成すものの存在に起因する。
【0024】
前述のように、原油は通常、多量のナフテン酸、RCOOHを含み、それは、原油の微生物分解の結果である。エマルジョンのタイプは、中間の画分に含まれる酸性の両親媒性物質によって決められることが分かっている。水中油型エマルジョンの安定性は、界面に存在するナフテン酸、RCOOの間の静電斥力によって決められ、油中水型エマルジョンの安定性は、重い画分(すなわち、アスファルテンとレジン)に存在する両親媒性により決められる。
【0025】
ナフテン酸は、RCOOHの分子構造を有する炭化水素であり、Rは一般にシクロペンタンとシクロヘキサンの誘導体として特徴づけられる。酸性油の利用は、石油の生産操業中の制約を開放する。リザーバ水は、必然的に二酸化炭素(CO)で飽和しており、重炭酸アニオン(HCO)と平衡状態にある。石油の生産工程中、pHは圧力低下とCOの放出に伴い上昇し、リザーバ水にカチオンが存在するとRCOOナフテン酸塩が形成される。レジン(及びレジン酸)とアスファルテンのように、ナフテン酸とそれらの塩も、界面活性化合物として振る舞うことがある。それらはまた、エマルジョンの形成に寄与し、水/原油分離を困難にする主要な原因となることがある。
【0026】
ナフテン酸の化学的振る舞いは、高級脂肪酸と同程度の酸強度を有する代表的なカルボキシル酸と同様である。酸の解離定数は、10−5から10−6のオーダー内(pKa≒5〜6)である。ナフテン酸は、酢酸などの低分子量のカルボキシル酸よりもわずかに弱い。したがって、このエマルジョンが、異なった重い成分(例えば、アスファルテン、レジン)、有機粒子、水相のpH、原油に存在する無機物質、それぞれの間の相互作用によって安定化することは良く知られている。減圧された無水の原油の中に、アスファルテンは、通常、芳香族化合物とレジンによって安定化された分散体として見出され、例外的にはまれに、微粒子の形態で見出される。レジンと軽い極性成分の役割は、π−π相互作用によってアスファルテンの分散/懸濁を安定化させることである。このレジンのπ−π相互作用によって、アスファルテン巨大分子は、凝集と沈殿を同時に避けることができる。
【0027】
水が原油に取り入れられると、状況は顕著に変化する。系はエネルギー的に高レベルに達し、エネルギーの違いは、混合プロセスに間に形成された界面の面積に比例し、新たに形成された界面領域は、油相から油成分の界面活性成分を引き寄せ始める。したがって、界面活性が最も高い分子は、界面のエネルギーレベルを減らすために、新しいW/O界面に向って移動する傾向がある。この場合、低分子量の界面活性分子(例えば、レジン、ナフテン酸は、油水界面に速く移動する。本質的には、W/O又はO/W界面において、レジン(又はナフテン酸)分子と、溶媒和されたアスファルテン巨大分子の間に、競争が起こる。
【0028】
レジンの最終的な位置づけを決定する因子は、これらの分子の親水性/親油性のバランス(HLB)、又は、いくつかの場合においては、親水性/親油性の差異(HLD)、及びその固体表面の特性である。界面活性が高い成分(極性基が付加した)は、親水性の低いレジン分子と、またある程度は、アスファルテンの両方を覆ったW/O界面に親和性を示す傾向がある。アスファルテン分子は、サイズが大きいので、界面に向ってゆっくりと移動する傾向がある。したがって、アスファルテンの溶解条件は、部分的に変化することがあり、少数の粒子の沈殿が界面で生じることがある。最も近接した隣接物としての界面レジンフィルムによって被覆された水滴とともに、アスファルテン粒子は、水滴表面フィルムと重なって堆積する傾向がある。その結果、結果として生じる界面特性は、エマルジョンの大幅な増加に対応した、高い頑強さと安定性を有する。
【0029】
界面フィルムを保護する機械的特性は、W/Oエマルジョンの強度と安定性の水準を与える。界面フィルムにおける高濃度の重合体タイプの有機分子の重なりは、解乳化プロセスを挑戦的にし、時間のかかるものとする、弾性又は粘性のいずれかを与えることがある。芳香族のアスファルテン分子は、分子集合の結果として、サンドイッチ状の積層構造を作る。
【0030】
界面活性成分中のカルボニル基の存在は、エマルジョンの安定性にとって重要な必要条件である。しかし、対応するアスファルテン画分と比較した、モデル系(人工的な系)におけるレジン(−COOH基)で形成されるエマルジョンの相対的な不安定性は、−COOH基の存在が適切ではなく、長い有機鎖(例えば、アスファルテン)を必要とする可能性があることを示している。
【0031】
さらに、レジン又はアスファルテン分子中のOHとカルボニル基(−C=O)は、水滴の周囲に水素結合を通じて機械的なバリアを形成しそれによって合体を妨げる役割を果たす。レジン又はアスファルテン中の鎖式カルボニル基(−COOH)は、アスファルテンとレジンの環式構造中の柔軟性のないカルボニル(−C=O)基と比較して水素結合に影響を受けやすいため、おそらく、よりエマルジョンの安定性を良くする重要な役割を果たすと思われる。
【0032】
ゼータ電位(ζ)は、ζ=0における物質の等電点(IEP)に関連したエマルジョンの重要な指標(不安定性)である。IEPより小さいpH値において、ゼータ電位は正であり、一方、IEPより高いpH値において、ゼータ電位は負である。アスファルテンのゼータ電位へのpHの効果は、一方又は両方が解離とプロトン付加を受けるpH依存の官能基−酸性及び/又は塩基性−を含む物質の表面を観察することで説明することができる。アスファルテンの負の表面電荷は、カルボキシル酸(−COOH)などの酸性の表面官能基の解離から生じ、周囲条件で約4のpK値を示す。正の表面電位は、ピリジンなどの塩基性の窒素含有官能基のプロトン付加により生じる。ヘプタン溶媒中のアスファルテン1:5の等電点でのpH値(pHIEP)は、約4.5であり、アスファルテン1:15とアスファルテン1:40について、pHIEPは3.0である。
【0033】
油/塩水と塩水/無機物の界面の間の酸/塩基型相互作用もまた、エマルジョンフィルムの安定性に寄与することがある。油と無機物の両方の極性官能基は、油/塩水と塩水/無機物の界面で接触したときに酸又は塩基として作用することができる。水相のpHと塩分濃度に依存して、2つの荷電した界面の間の相互作用は、二層の力を決定する。両方の界面における電荷分布、電位、及び荷電位置の兆候は、相互作用が引力か斥力のいずれかであることを決定する。電荷が水相の水分子から油相中の極性基に移動するため、引力は、エマルジョンフィルムを不安定化させ、場合によっては破壊する傾向がある。これは、油/水界面での逆に荷電した界面活性極性官能基と、油のバルク相中の逆に荷電した極性基へ、アスファルテンの電荷間の直接的な接触を与える。反対に、二層の力が斥力(すなわち、固体と、油の官能基が同じ電荷を有している)であるとき、水のフィルムは、二層の斥力がファン・デル・ワールス力と加えられた毛細血管圧よりも大きい限り安定したままである。多価のカチオンの存在は、反対の極性の引力により水のフィルムを不安定にする可能性がある。
【0034】
したがって、効果的かつ迅速にW/O又はO/Wエマルジョンの乳化を破壊し、親水性が高い分子を水相に移動させるために、エマルジョンの界面における石油化学−その酸/塩基、界面活性剤との相互作用、動電学的な振る舞い、親水性と親油性のバランス(HLB)、親水性と親油性の相違(HLD)、等電の振る舞い(ゼータ電位)、イオン強度、を含む−を理解することは重要である。
【0035】
本発明において、加圧/溶解COがラムノースの−COOH基を失活させるのに効果を有する。しかし、ラムノリピドに存在するラムノース糖は、水相に溶解し、又は、水相に沈殿する傾向がある。したがって、ラムノリピド中の糖の存在とその大きなサイズのため、分子は結局、水相中で、系の温度に依存して、沈殿物又は溶解した分子となる。
【0036】
[B.石油化学]
原油は、通常は、アスファルテンとレジンがコロイド状に分散していると考えられ、それは、非極性化合物からなる連続相に分散した、別々の極性成分を構成する。原油中のレジンは、アスファルテンを懸濁状態に保ち、原油の安定性を維持する、コロイド分散剤(架橋剤)として作用する。レジンが原油から分離されると、このコロイド系の安定性は失われ、アスファルテンの沈殿が生じる。原油は、主に飽和芳香族炭化水素を含む、異成分からなる複合有機混合物である。それはまた、異核化合物、乳化された水、その他の無機物を含む。炭化水素部分は、主に、ノルマルアルカン、イソアルカン、シクロアルカン、芳香族(アルキル側鎖を有する、単核、二核、多核芳香族炭化水素(PAH))、レジン(スルホキシド、アミド、チオフェン、ピリジン、キノリン、カルバゾールなどの多数の基本単位を有する集合体)、数千の種種雑多の誘導体を有するアスファルテン(広範なポリ芳香族、ナフテン酸、硫化物、多価フェノール、脂肪酸の集合体)を含む。
【0037】
アスファルテンは、天然ではコロイド状であり、原子の水素対炭素比は1.0と1.2の間の範囲である。アスファルテンのN、S、Oの含量は少なく、アスファルテンの基幹の大部分が、巨大分子あたり5から7のヘテロ原子を含む極性基が散在する縮合芳香族炭素からなることを意味している。さらに、N、S、O又は金属化合物からなる複素核の多環化合物の多種多様の種類の分布は、分子量、構造、不安定さによって変化し、高い沸点範囲に通常は集中している。さらに、石油の特性は、石油の由来と場所に関して、広範な範囲の特性と、異質性を示す。同様に、精製所で処理される石油は、通常は由来が異なる原油の混合物であり、このため、それぞれ原料油の混合物に存在する原油の由来によって決まる中間の特性を有している。
【0038】
原油の分散の安定性は、不連続相と連続相の界面の電気的特性に密接に関連している。アスファルテンの平均的な分子量は異論があるが、約700から約15000原子質量単位の範囲である。アスファルテンの表面電荷は、アスファルテンの由来によって異なることがある。例えば、あるものは、水とエタノール中で正味の正電荷が測定され、その一方でほかのものは正味の負の表面電荷が測定される。アスファルテン画分は、原油中で最も大きなパーセンテージのヘテロ原子(O、S、N)と、有機金属成分(Ni、V、Fe)を含んでいる。アミン基、カルボキシル基、S、N、O、及び金属は、原油のアスファルテンとレジン成分の両方に存在する。アスファルテン分子の構造は、様々なアルキル側鎖により置換された多環芳香族の集合体であると考えられている。
【0039】
アスファルテンの溶解度クラス定義は、原油源の中で大きく変化するアスファルテン分子構造の広範な分布を示唆している。一般に、アスファルテンは、プロトンを分子内的、分子間的に供与、又は受容可能な、縮合環芳香族性、小さい脂肪族側鎖、及び極性ヘテロ原子含有官能基(例えば、カルボキシル酸、カルボニル、フェノール、ピロール、及びピリジン)を有している。
【0040】
アスファルテン集合体の最も妥当らしい機構は、主として、芳香環同士のπ−π相互作用と、極性官能基同士の水素結合と、その他の電解移動相互作用を含む。したがって、アスファルテン集合体の振る舞いは、多分散性、化学組成、及びアスファルテンモノマーの官能基の立体配置又は相互接続性によってコントロールされるようである。
【0041】
[1.有機金属化学]
原油中の金属は、多種多様の有機及び無機の形態で存在する。金属の無機の形態と有機金属化合物は、おおよそその不安定さに関連して分布する。原油中の有機金属は、通常は2つの形態で存在する。Zn、Ti、Ca及びMgは、通常、ナフテン酸との組み合わせで石鹸として存在する。反対に、V、Cu、Ni及びFeの一部は、油溶性ポルフィリン型化合物として存在する。
【0042】
原油中に見出される主な金属有機化合物は、金属ポルフィリンとして知られている。ポリフィリンは、クロロフィルと類似の環構造を有し、キレート化合物として環の中心に金属が存在する環を有している。バナジウム(V)、鉄(Fe(II))及びニッケル(Ni(II))は、まとめて重金属として知られているが、ポルフォリン環の中心に多く存在する。より揮発性の種(主に第2水銀炭化水素)は、より揮発性の飽和した画分において見出され、それに対してバナジル(V)及びNiポルフィリンは、N、S及びO含有環状化合物と多環式化合物と併せて、中間の極性分子量画分において見出される。原油残渣中の重金属(Me)は、アスファルテン中にポルフィリン化合物の形態で凝集する。この種の化合物の分子量は、420と520(すなわち、C27からC33)の間で変化する。
【0043】
Vの大きな割合(10〜60パーセント)は、ヘテロ原子として見出され、原油中でポルフォリン構造を形成する。この金属構成要素は、レジンとアスファルテンの画分の低揮発性種の中での見出される。しかし、それらの存在は、不揮発性アスファルテン集合体の中で最も観察される。ここで与えられる証拠は、アスファルテン分子が原油の最も複合的な成分であり解乳化と精油に大きな影響を与えることを示す。アスファルテン画分は、相互に包括的に、トルエン中の溶解度とn−ヘプタン中の不混和性を基にして、確定される。
【0044】
金属成分は、主に高分子量のアスファルテン画分に濃縮されているが、アスファルテン分子に極性を与える。この画分に濃縮されたこれら微量元素が、対応する原油より10倍多くこの画分に濃縮されていることが確認されている。
【0045】
【化1】
【0046】
[2.有機窒素化学]
原油は、有機のN含有化合物を含むが、原油中の有機N化合物の濃度は比較的低い(0.1〜2重量%)。石油中の有機Nは、原油中の芳香ヘテロ環化合物中のピロール官能基とピリジン官能基によって占められる。それらは、主に非塩基性のピロールヘテロ環と塩基性のピリジンヘテロ環からなり、ピリジン型を越えてピロール型が優勢である。種々の異なった種類の有機N化合物の中で、アルキル置換カルバゾールが原油中に存在する主要な種類の有機N化合物であることが知られている。カルバゾールとベンゾカルバゾールは、岩石抽出物と原油の通常の成分でもある。
【0047】
種々のタイプのN含有化合物の濃度は、油の中で回収段階の間で変化する。一般的に、それぞれの油井での後期回収段階由来の原油は、基本的なタイプのN含有化合物の量が減少していることを示す。全体として、後期回収段階由来の原油中のアミン画分も、減少の傾向を示す。反対に、中性のN含有化合物の存在は、相対的に増加の傾向を示す。したがって、油中のNの含有量と種類は、重い画分と残渣において大部分が濃縮されて顕著に変化する。
【0048】
これらの化合物と貯留鉱物の間の強い相互作用は、油回収中のアミンと同様に、基本的な有機N化合物の存在度を減少させる原因となることがありうる。ピリジン型官能基は、原油と鉱物表面の間の極性相互作用に伴って生じる極性種であると考えられている。水素化処理後の残渣の難処理性のN化合物の存在は、原料油の一部(例えば、輸送燃料に対する中間留出物)を効果的に改善する際に、それらが使用されることを妨げる。
【0049】
原油のレジン画分は、極性分子を含み、しばしばN、O及びSなどのヘテロ原子を含む。この画分は、操作上で決められ、ひとつの一般的なレジンの定義は、画分がペンタンとヘプタンなどの軽いアルカンに溶解するが、液体プロパンに不溶であることである。ナフテン酸は、この画分の一部である。レジンは、脱れき油(アスファルテンのない)中に存在する最も極性が高い芳香族種であり、アスファルテンの分子と集合体の極性の芳香族部位を溶媒和することによって原油中のアスファルテンの溶解度を増加させることに寄与する。原油中のアスファルテンの溶解性は、レジン溶媒和により大いに媒介され、したがって、レジンは析出とエマルジョンの安定化に決定的な役割を果たす。レジンは、界面活性が高いものの、モデル系でそれ自体によって油中水型エマルジョンを顕著に安定化させることは見出されていない。しかし、溶液中のレジンの存在(最適な酸対塩基の官能基の比)は、油/水界面におけるアスファルテンの溶媒和又は置換によって、(アスファルテンの析出なしに)エマルジョンを不安定化することがある。レジンの存在下又は非存在下におけるアスファルテンの集合体は、図2に示される。
【0050】
ほとんどの酸は、軽い画分と中間の画分に含まれ、一方、アスファルテンとレジンは、本質的に重い画分に存在する。エマルジョンの形成と安定化(含水量と水相の初期pHに依存する)における酸性の原油中に存在する両親媒性物質の寄与は、以下のように特定されている。(i)軽いナフテン酸(低分子量)とナフテン酸塩はエマルジョンを形成し安定化させることはできない。(ii)中間の画分に含まれる酸(中分子量から高分子量)は原油で形成されるエマルジョンのタイプに影響を及ぼすと思われる。(iii)中間の画分から生じたナフテン酸塩は高いpHと含水量で形成されるO/W型エマルジョンの形成と安定化の原因となる。そして、(iv)原油中に含まれる最も重い両親媒性物質(すなわち、レジンとアスファルテン)は油が連続相のエマルジョンの長期の安定化に主要な役割を果たす。代表的なエマルジョンの液滴界面の図面を図3に示す。
【0051】
[C.解乳化及び原油画分からのラムノリピド(生化学品)の抽出]
原油の解乳化における一つの重要な挑戦は、原油からのアスファルテンの析出を防ぐことである。最も重い原油は、極めて粘性が高く、低いAPI比重と、低いレジン対アスファルテン比を有し、場合によっては、高い酸対塩基官能基比(逆もまた同様)を有することがある。多くの場合、レジン対アスファルテン比は、臨界閾値よりも低く、これにより、ひとたびエマルジョンが破壊され又は不安定化すると、アスファルテンが析出する結果となる。高い酸対塩基官能基比>4又は低い酸対塩基官能基比<0.25もまた、解乳化を困難にする。レジン濃度が臨界閾値よりも低い又は高い場合、アスファルテンの分散に利用可能な十分な溶媒和剤がないことがあるため、アスファルテン分子は凝集を始め、結局、原油から析出する。これは、原油と原油画分を界面活性生成物の生成のために利用する石油生産者と処理工程にとって大きな挑戦である。ここで説明されるように、本発明はこの懸案事項を解決するものである。
【0052】
レジンは、アスファルテン巨大分子の溶媒和剤である。したがって、レジン対アスファルテン比が臨界閾値よりも低い場合、追加のレジンの材料(酸対塩基官能基比のバランスをとった)が、解乳化プロセスの前か最中に原油に加えられることが要求される。このバランスをとるため、有機の塩基性N基を含むレジン溶液が、以下の範囲内の官能基をもたらすために加えられる:0.25<酸性対塩基性官能基比<4。これらのバランスをとった、添加材を含む酸対塩基性官能基比は、原油画分又はその他の天然供給源において見られる。通常、主に高濃度のアミン基を有する、異なった沸点範囲のコーカーガスオイル又はビスブレーキング法を経た油は、原油中のアスファルテンの溶媒和剤としてこれらの重い原油中の添加物として、また一方、酸対塩基官能基比のバランスをとるためにも、使用可能である。しかしながら、原油が非常に低い酸対塩基官能基を含んでいる場合、酸基を多く含むレジンの添加物は、酸対塩基官能基比のバランスをとるために混合されてもよく、それはエマルジョンの破壊が始まる前に必要とされる。
【0053】
解乳化の重要なステップの一つとして、2つの乳化された液滴の合体がある。泡の脱水を可能にするための、水滴間の直接の接触とそれに続く水滴の合体を実現するために、エマルジョンの安定性の原因となる吸着材は、液滴間の近接した接触と、界面における粘度の減少を許容するために、原油の油水界面から弱められ、置換され、失活されなければならない。この界面活性剤の置換又は失活はまた、界面におけるレオロジーの変化から知ることができる。原油の油水界面の複雑なレオロジーは、界面膜表面の界面活性剤(アスファルテン、レジン、又はナフテン酸)の存在による硬い(又は弾力のある)界面膜の形成を通じて明らかである。硬さはまた、芳香族のレジン対アスファルテン比に依存し、油中のバランスのとれていない酸対塩基官能基比も同様である。この芳香族のレジン対アスファルテン比は、アスファルテンを隔離された状態に保ち、アスファルテンの集合体が沈殿することを完全に防ぐために重要であることが言及されるべきである。約0.25から4の範囲内の油中のバランスのとれた酸対塩基官能基比は、ゼータ電位(−10から10eV)をコントロールすることによってエマルジョン膜を弱くし、又は膜における動電学的な振る舞いを弱くする。
【0054】
原油は、いくつかの異なった種からなる複雑な系であり、そこで観測される界面レオロジーは、相対的な界面活性だけでなく、様々なpH条件におけるバルク相と界面間を分割する成分の能力にも依存する。特に、アスファルテン分子はすべての原油成分の中でサイズが大きいため、アスファルテンは、弾性膜を形成することによって純粋な油水界面に吸着し、再配向を受けて界面層を硬くすることがある。一方、界面活性化合物の添加は、界面の弾性を変化させ、混合された固有の界面活性剤/アスファルテン吸収層は、pHに依存して非常に安定な界面を形成する。しかし、原油固有の界面活性種が油溶液中に存在し、pH管理とは別に増加又は減少する場合、界面レオロジーは、かなり異なっていることがある。さらに、界面活性原油成分を含むモデル系への乳化破壊剤の添加は、分岐鎖化学品が固有の界面活性成分と効果的に置換可能であることを示している。
【0055】
二酸化炭素は、圧力増加を考慮すると、水中で2つの解離していない形態を有する:水溶性の二酸化炭素と炭酸。水溶性の二酸化炭素から炭酸への反応はゆっくりであるため、周囲条件において炭酸は急速に解離する一方、炭酸はおそらく水溶性の二酸化炭素よりもはるかに低濃度である。
【0056】
臨界前の範囲から超臨界の範囲に加圧された二酸化炭素は、水相に追加の二酸化炭素を溶解し、解離していない炭酸を形成することができる。二酸化炭素は、より高圧でさらに溶解し、その結果としてHイオンに解離する。温度上昇もまた、炭酸の解離を促進させる。
【0057】
本発明において、可逆/切り替え可能/調整可能なプロトン(H)ポンプのスマートな乳化破壊剤を定義することが必要である。この乳化破壊剤は、CO、水、及び場合によってはアスファルテン溶媒和剤の組み合わせにより形成される。高圧のCOは、300バール(すなわち、CO2の超臨界圧より高い)まで到達可能な圧力容器に導入される。系の温度は、約150℃未満に保たれる。いくつかの等式が乳化破壊剤、我々の場合は水相へ溶解される炭酸の性質を説明するために必要である。
【0058】
ここで、ガス状のCOは、場合に応じてCO2(g)により分圧pco2とともに表示される。溶解したCOは、CO2(aq)により表示され、溶解した炭酸は、H2CO3により、[H2CO3*(aq)] = [H2CO3(aq)] + [CO2 (aq)]とともに表示される。CO2(g)は、以下に示されるような圧力に対してH2CO3*(aq)と平衡にある。
CO2(g) + H2O(aq) ←→ H2CO3*(aq)
H2CO3*(aq) ←→ H+(aq) + HCO3- (aq)
【0059】
簡単にするために、溶解したCO2(aq)と炭酸、H2CO3(aq)の重量モル濃度の和を[H2CO3*(aq)]で表示する。実際には、99.85%がCO2(aq)であり0.15%だけがH2CO3(aq)である。[H2CO3*(aq)] ≒ CO2 (aq) ≒CO2 (aq) + H2CO3 (aq)と推定される。さらに、ガス空間のCOガスは、ヘンリーの法則[CO2 (aq) = pCO2/kH]、ここでkH (モル kg-1 atm-1)はヘンリーの法則の定数、に従って水相中のCOと平衡になる。したがって、水相中のCOの溶解度は、圧力の増加に伴い増加する。さらに、水中のCOの溶解度は、温度の低下に伴って増加する。しかし、系でCOの超臨界の振る舞いを維持するために、系の温度は、COの超臨界圧に加えて二酸化炭素の臨界温度よりも高くなければならない。その結果として、二酸化炭素と水の高圧での組み合された効果は、閉じた容器又は接触器の内側で独特の性質を呈する。COの超臨界条件を維持することが重要であり、それは、この条件でCOが油相に直ちに拡散し、直ちにO/W又はW/O界面に達するからである。界面のCOは、HCOとHを形成することによって水相で平衡に達する。高圧でCOは、より迅速に解離し、水相の全域でpHを著しく低下させる。その結果として、界面に存在する界面活性成分は、等電点状態(pHIEP)又はゼータ電位に到達し、界面活性成分を失活へと導く。
【0060】
炭酸の第一解離定数は、下記によって与えられる。K1 = {a(H+)a(HCO3- )} / a(H2CO3*)、ここで、a(j)は、含まれる種jの活性である。このpHとpKの定義を用いて、この等式は下記に改めることができる。pK1 = pH + log {[H2CO3*]/[ HCO3- ]} - log(γa)、ここで、jaとγaは、それぞれ、HCOの重量モル濃度と活量係数である。ここで、中性種の活量係数は、単一であると仮定する。したがって、乳化破壊プロセスの間、CO2は二つの役割をする。超臨界COは、高い拡散率とゼロの界面張力によって、原油相(W/Oの場合)又は水相(O/W相)を通って拡散し、標的の化合物の物質移動を起こすために粘性を低下させる。
【0061】
上述のように、原油の界面活性成分(アスファルテン、レジン、ナフテン酸、脂肪酸など)はすべて、ある程度は、安定なエマルジョンの生成の原因である。したがって、界面活性成分の失活と、粘度又は界面張力の弱化は、種々の方法を通じて達成される必要がある。これらには、界面の臨界前から超臨界のCOの存在又は浸透、界面のゼータ電位の減少又はHLDの変化、低分子量レジン又はレジン型の化合物のアスファルテン巨大分子を溶媒和するための導入、が含まれる。
【0062】
レジン型添加剤による溶媒和は、界面の粘度を弱くし、アスファルテンがそれら自体を自由に再配向できるようにし、アスファルテン分子が相互に積層しない(すなわち、沈殿の生成を開始しない、及び、析出しない)ようにする。しかし、溶媒和は、アスファルテンの両性イオンが相互のみならず反対の電荷を帯びた極性吸引力を有するレジン分子とも架橋し、水分子の非存在下でミセルを形成することを許容する。エマルジョンの液滴界面の弱化とラムノリピド分子の取り込みの代表的図面を図4に示す。
【0063】
しかし、フィルム(フィルムの厚さ)の崩壊は、低pHにおいて、たとえ水相にイオン強度が高い塩があっても、原油成分の界面活性成分を失活させることによって達成可能であり、アスファルテンの析出の防止は、最大限に重要なことではない。これは、精製所において容易に利用可能な芳香族溶媒を添加することによって、芳香族レジン対アスファルテン比を増加させる(及び/又は酸対塩基官能基比のバランスをとる)ことによってなされる。添加剤の必要量は、原油又は原油の画分のタイプに依存する。
【0064】
本発明による原油のエマルジョンからの生化学品(ラムノリピド)の抽出工程の概略図を図1に示す。
【0065】
本発明において、臨界前と超臨界の二酸化炭素の独特の特性は、大きなpH変化(低下)を誘引し、エマルジョンフィルム界面の周囲の水分子と相互作用することにより炭酸を生成させるために、それが油水相の界面に拡散するだけでなく水相(外部から導入された、又は天然に存在する)にも達するように、それをO/W又はW/O、或いはW/O/W及びO/W/Oエマルジョンに導入することによって発揮される。
【0066】
ラムノリピドは、高活性の界面活性化合物である。それらは構造中に脂肪酸のみならず糖類(ラムノース)を持っている。それらはまた、それに結合したカルボキシル酸も有している。ラムノリピドの化学構造は下記に示される。
【0067】
【化2】
【0068】
したがって、ラムノリピドの抽出のため、系の最終圧は、それがO/W又はW/O界面で固有の界面活性分子−ラムノリピドを含む−のカルボキシル基の酸性の性質を相互作用的に失活させる低pH環境の広い配置を作り出すようにコントロール(臨界前から超臨界の範囲)されなければならない。この失活とともに、油の分子に存在する酸基と水の水素結合の間の相互作用は、水相のpHが十分に様々な油成分のカルボキシル酸基のpK(酸の解離定数)値よりも低く低下したときに失活又は減少する。したがって、油相由来の解離したカルボキシル酸基(−COO)と、水分子との間の相互作用は、有機酸基(−COO)がその対イオン(H)と結合し、その結果として生じるエマルジョン膜界面における油相の極性酸性基と、水相中の水素結合との関与が解消されることによって、前の状態に戻る。
【0069】
エマルジョンの界面における二酸化炭素の拡散は、粘度と密度を減少させ、それによりエマルジョン膜における界面張力を低下させる。十分な緩和時間を許すことによって、この拡散は、凝集などの種々の方法によってエマルジョンの破壊を助ける。本発明において、二酸化炭素は、水の内側、或いは油/水(O/W)又は水/油(W/O)界面において拡散し、引き続き、炭酸(HCO)と溶解したCOが水相中で形成されて、平衡に達するまで水相中に移動する。油の界面からの二酸化炭素の一部もまた、重炭酸イオンが形成されて、水と平衡に達する。さらに、フィルム界面に存在する二酸化炭素は、油相と最小限の電気的相互作用を有し、その結果として、O/W又はW/Oエマルジョン膜に(粘度の減少によって)負の相互作用を作り出し、膜の弾性を弱くする。適切な時間と温度(25〜150℃)が臨界前と超臨界のCOが存在している間に許されるならば、油中の有機極性基の緩和がエマルジョンの界面で生じ、フィルムの頑強さが顕著に低下する。
【0070】
系の水におけるpHの低下は、レジン酸とナフテン酸に、それらの酸の特性を「スイッチオフ」させる原因になり、すなわち、これらの酸からのプロトンは、それらが、炭酸(HCO)からの(H)の放出によるエマルジョン界面でのpHより高いpK値を有するため、逆行して重炭酸(−COO)アニオンと結合してその解離していない状態(−COOH)に戻す。この出来事は、ナフテン酸、レジン酸、プロトポルフィリン、アスファルテンのすべての大きな非極性(有機)成分由来の−COOH基において起こり、それは、高圧下でのカルボン酸の生成とそのプロトン(H)を放出する解離のために、低いpHにおいて不活性になる。
【0071】
COの注入に先立って、エマルジョンフィルムに存在するアスファルテン、ナフテン酸、レジンのカルボキシル酸(R−COOH)成分は、フィルムの強い界面張力の主な原因であり、それらに堅固さ、強度又は頑強さを与える。しかし、その他の極性成分、すなわち、有機のS、N、NH基は、低いpH条件での水とのそれらの相互作用を変えることがある。油水接触領域におけるR−COOHのの解離からのHイオンの生成は、結果としてエマルジョン界面の生成をもたらすことが指摘されるべきである。この界面において、界面活性成分の有機成分は、油相に向いたファン・デル・ワールス引力(又はπ−π引力)により油相の有機巨大分子によって引かれる。反対に、界面活性成分(例えば、R−COOH)から解離したHイオンは、水相に向いた電気的引力(又はコロンビウムの引力)により水分子の方に引かれる。界面活性成分を有するW/O又はO/W界面の中央の組織は、界面フィルムの発達の基礎を与える。
【0072】
フィルムの強度もまた、極性アスファルテンも水相に向って競争する場合は、界面におけるアスファルテン分子の積層状の堆積に起因する。アスファルテンのカルボキシル及びその他の極性基もまた、2つの相の間のこのような相互作用に参加することがある。レジンが界面活性剤に参加している場合、それらの芳香族の対応部分は、π−π引力により油相のアスファルテンの芳香族中心によって引かれる。ナフテン酸の場合、有機の対応部分(有機化合物)は、油中に存在するアスファルテンとその他の有機成分の脂肪族の成分によりファン・デル・ワールス引力によって引かれる。界面で界面活性剤として作用するアスファルテンのために、エマルジョンは強固で緊密になる。ここで、アスファルテンの芳香族部分は、π−π引力により油相のその他のアスファルテンによって引かれ、アスファルテンの脂肪族部分は、油相に存在又は並列するレジンとアスファルテンの脂肪族部分によって引かれる。実際には、それは、油成分の相対濃度、それらの温度、サイズ、輸送特性、及び界面膜で最後に決まる油成分のタイプを決める極性基である。
【0073】
アスファルテン巨大分子の極性ヘテロ原子成分(S、N、O、金属)もまた、エマルジョンフィルムの強度に寄与する。これらのヘテロ原子は、主にアスファルテン中の両性イオンと、レジンのある範囲に、同様に残存する。臨界前から超臨界のCOがO/W又はW/Oエマルジョンを含む原油に導入されるとき、COの侵入は、エマルジョンの界面において顕著な影響を有する。高圧のCOは、pHの低下を生じさせ、それは系に加えられた圧力によって主に左右される。このエマルジョン膜界面に存在する任意の弱酸は、エマルジョン膜の弱化の結果としてその解離していない形態にゆっくりと戻り始めるものと認められる。さらに、エマルジョン膜の弱化とともに、ヘテロ原子含有アスファルテンは、失活したカルボキシル基(−COOH)が、水素結合能力の点で水相と相互作用する能力をすでに失っているために、油相の内側に移動するようにして、エマルジョン膜が緩和することにより、分子又は巨大分子の部分の相互の又は内部の再配置を受ける機会を得る。巨大分子(アスファルテン)のこの再配置と再組織はまた、アスファルテンの巨大分子、レジン、及びナフテン酸の内部又は間の、向かい合った正に帯電した、又は負に帯電したヘテロ原子(両性イオン)の間でも生じることがある。アスファルテンとレジンの分子には、多数の両性イオン(向かい合って帯電した極性基)が存在する可能性がある。
【0074】
したがって、エマルジョン膜におけるこれらの集合体−水の相互作用の動電学的振る舞いの変化は、油と水の間の界面において、炭酸(HCO)の解離(すなわち、Hと重炭酸(HCO)イオンの生成)から形成される、局所的なpHによって、強いエマルジョンの生成の原因となる油成分に有機酸(カルボキシル)基を含む分子が、プロトン(H+)又はヒドロニウムイオン(H)と相互作用することによって、解離していない形態に戻るように、制御される。したがって、カルボン酸は、カルボキシル酸(−COOH)基を不活性化させ、それによってレジンとアスファルテンの等電点(IEP)がフィルム界面に到達するように、界面のゼータ電位(約−10から10eV)を変化させるための、界面におけるプロトンポンプとして作用する。これは、エマルジョンの水相のpHがフィルムの界面における有機酸(ナフテン酸、レジン、アスファルテンのカルボキシル酸)の酸解離定数より低下したときに起こる。
【0075】
この結果として、フィルム界面における親水性親油性バランス(HLB)又は親水性親油性差異(HLD)の変化は、エマルジョンフィルムの界面張力を弱くする。これらの現象は、アスファルテンの両性イオンがそれらの中でそれらの間で相互作用を開始するときにも起こる。カルボキル酸基−COOHは、その対イオンHと元通りに結合し、フィルム界面(水中に存在する)において緩和して、アスファルテン分子の酸基に加えてレジンとナフテン酸の電荷を持たない−COOHを形成することになる。これらの効果は、水と油相中の極性基との間の相互作用を衰えさせることになる。
【0076】
これが達成されると、エマルジョン系の穏やかな混合がエマルジョンの合体を引き起こし、その後、エマルジョンのサイズが大きくなる。合体の間の界面フィルムの破壊は、エマルジョンの液滴が大きなサイズになることを助ける。液滴が臨界サイズに達すると、合体が継続するにつれ重力が油と水の画分を分離を促進する。しかし、二酸化炭素と系の圧力は、油相からの不意のアスファルテンの析出を避けるようにアスファルテン集合体が制御されるように、調節されなければならない。
【0077】
したがって、加圧された臨界前と超臨界の二酸化炭素は、解乳化プロセスの間、プロトンポンプと粘度低下剤の両方として作用する。これは、溶媒和剤(例えば、アスファルテンの析出を防止するためのレジン)の添加とともに、又は、添加することなく、実施される。高い芳香族レジン対アスファルテン比は、エマルジョン分解の間のアスファルテン析出を防止するために重要である。また、原油中の酸性対塩基性官能基比は、エマルジョンの不安定化に重要である。したがって、芳香族のレジン型材料(コーカーガスオイル、ビスブレーキング法を経た油、又は生体由来のフェニル含有分子)の添加は、界面膜を薄くすることを助け、アスファルテン巨大分子を溶媒和された状態に保ち、約0.25<酸性対塩基性官能基比<4の範囲内に調整することによってその頑固さを低下させてエマルジョン液滴を合体させてより大きなものにすることを許容する。
【0078】
水相中でpHを低下させたときのラムノリピド(pKa〜4.28−5.56)分子中のカルボキシル基もまた、解離していない形態に戻る。その結果、ラムノリピドはその界面活性特性/能力の一部を失う。しかし、ラムノリピドの糖部分に存在する−OH基は、系の温度に依存して水相に分子が溶解することを助ける。系の温度を低下させると、水相中のラムノリピドの析出を助けることができる。これは、水相へのラムノリピドの相分離を開始させ、それは、系の高圧(COの存在に伴う)が維持されている間に、ラムノリピド分子の糖部分からの高い親水性の寄与によって達成されなければならない。この状況において、同時に起こるエマルジョンの合体も、水と油相の重力分離の結果として、大きな液滴の形成を引き起こす。水相に集められた、析出した、又は溶解したラムノリピドは、つぎに温度変化又は水の蒸発によって抽出される。
【0079】
本発明の特徴を以下に説明する。
【0080】
本発明において、乳化破壊剤(プロトンポンプ)は、加圧された臨界前と超臨界の二酸化炭素によって、水との組み合わせにおいて、場合によっては、アスファルテン溶媒和剤との組み合わせにおいて形成される。具体的には、高圧COは、300バール(すなわち、COの超臨界圧より高い)と同じ高さに到達可能な圧力容器に導入される。系の温度は、約150℃未満に維持される。
【0081】
系の最終圧は、O/W又はW/O界面でアスファルテン、レジン酸、ナフテン酸のカルボキシル基の酸性の性質を相互作用的に失活させる低pH環境の広い配置を形作るように、制御(臨界前から超臨界の範囲)される必要がある。この失活とともに、油分子に存在する酸基とその他の極性基と、水の水素結合との間の相互作用は、油成分のカルボキシル酸基のpK(酸解離定数)値よりも水相のpHが低下したときに、失活又は減少する。したがって、油相由来の解離したカルボキシル酸基(−COO)と、水分子との間の相互作用は、有機酸基(−COO)がその対イオン(H)と結合し、その後に油相の極性酸性基と水相の水素結合がエマルジョン膜界面において遊離することによって元に戻る。高圧(70〜200気圧)と約25〜70℃において、pHはおよそ2.8と2.95の間である。したがって、エマルジョンの水の超臨界範囲(71気圧と32℃)又はその近傍のpHは、3.00前後であり、これは解離していない形態の原油の固有の有機酸を失活させるのに十分である。
【0082】
高い酸対塩基官能基比を有する原油由来のエマルジョンは、通常、破壊が困難であり、一方、低い酸対塩基官能基比(0.25〜4)を有する原油は、比較的破壊が容易である。したがって、アスファルテンとレジンの酸対塩基官能基(例えば、有機N、スルホキシド)の比は、エマルジョンの安定性に最も重要である。酸対塩基官能基比は、向かい合って荷電した極性官能基を中性にするために、特定の範囲(約0.25<酸対塩基官能基比<約4)の間にあるようにバランスを取らなければならない。酸性又は塩基性の官能基を含むレジン様化合物の追加分は、エマルジョンを不安定化させるために、全般的な比が上記の範囲内にあるように、酸性対塩基性官能基を調整するために加えられるべきである。
【0083】
ピロールとピリジン基をそれらのレジンとアスファルテン構造に含む塩基性の原油のいくつかも、エマルジョン(W/O又はO/W)の形成に参加することがある。ピロールとピリジン基の両方は、孤独な電子対を有する。それらは水中にあるとき、水相に潜む、水のOHイオンを離脱する水からの、Hイオンと結合する傾向を有する。結果として、有機窒素含有基も、油水界面にフィルムを形成する。フィルムの強度は2つのパラメータに依存する。第1のパラメータは、有機窒素の塩基性度であり、第2のものは、油相中のそれらの基の結合した有機の対応部分のサイズである。孤独な電子対がプロトンの受入れに対して非常に受容性に富むことを理解することは重要である。プロトンが付加した有機窒素含有(ピロールとピリジン)基と、水相に存在するOHとの間のコロンビウムの引力は、油と水の間の界面に集まる、油相由来の両親媒性物質の濃度を増加させて、結果として界面膜が形成される。
【0084】
この点において、比較的小さいサイズのレジン分子に起因して、それらは界面(O/W又はW/O)に速く殺到する傾向がある。しかし、レジン対アスファルテン比(低い)に依存して、いくつらかのアスファルテンは界面に達して堆積することもある。ここで、−COOHと有機窒素のような官能基は、水分子と相互作用し、それらの疎水性の両親媒性物質は油相中に留まる。すべての場合において、いくらかのアスファルテン分子と、ある場合には蝋の粒子も、レジンとアスファルテンの上に堆積し、その結果、エマルジョン膜界面を強くする。
【0085】
高圧CO2がこのエマルジョンに導入又は加えられとき、炭酸(HCO)は水相でHCOに解離し、Hイオンは有機窒素基の孤立電子対に付加する。これが起こったとき、有機N含有基は、徐々にそれらの塩基性の性質を失う。さらに、水から解離した対のOHイオンは、対応するOHイオンから解離したHイオンによって、中和され、又は、溶媒和される。炭酸からの高濃度のH+イオンの存在により、系のpHは低下し、エマルジョン界面は弱くなり、OH−イオンの濃度は減少する。漸減するOH−イオン濃度と、炭酸(HCO/HCO)由来の増加するH+イオン濃度により、水相のpHはエマルジョンの内側で低下し、したがって、エマルジョン界面は弱化する。穏やかな撹拌により、弱化したエマルジョンは容易に合体する。このプロセスが継続すると、液滴はサイズが大きくなり、最後には大きな液滴に効果を有し始めた重力の作用により相分離が起こる。しかし、アスファルテンの析出を避ける目的で、大きいアスファルテン巨大分子を溶媒和された状態に保ちそれらが相互に積層することを防止するために、芳香族レジン様材料を加えることによって芳香族レジン対アスファルテン比は所定の値又は範囲に保たれる。
【実施例】
【0086】
以下の例は、本発明の実施形態をより良く説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0087】
[例1−W/Oエマルジョン]
この例において、原油の温度は、0℃(水の凝固点)未満から最大でおよそ250℃まで変動することがある。系の圧力は、約1バールから約300バールまで変動することがある。系の最適な温度は、二酸化炭素の臨界前−超臨界温度より高く0℃まで、最高で300℃(膜界面から蝋粒子を融解するため)までである。水相のpHの調整は、膜界面のゼータ電位(−10から10eV)をレジンとアスファルテンの等電IEPの近傍に達するように低下させるために重要である。
【0088】
乳化した(油中水型の)原油は、親密に臨界前から超臨界のCOとオイルリザーバ中、又は解乳化容器の内側で混合される。混合物は、臨界前から超臨界のCO、又は逆の場合も同様、が油相の全域に拡散し、エマルジョンの相の境界に達し、最終的には水相の内側に進行できるように、安定することを許される。水相の内側のpHは、炭酸の生成とその後の高濃度のH+イオンを発生させる酸の解離によって低下し、炭酸成分の酸解離定数より低くなる。
【0089】
結果として、相の境界において、ゼータ電位は、−10から10eVの間又はゼロの近くに低下し、界面フィルムを非常に弱くする。水相のCOの分圧が増加するため、pHは低下し、pHIEPとレジン、アスファルテン、ナフテン酸分子のカルボキシル酸基の酸解離定数より低くなり、それらは水相における解離力を失う。
【0090】
引き続き、レジン、アスファルテン、ナフテン酸のカルボキシル酸が解離していない状態に戻ると、これらのカルボキシル酸からのHイオンは、水相の水分子と相互作用することができない。この状況において、レジン、アスファルテン、ナフテン酸のカルボキル酸(固有の表面活性剤として作用する)は、油相に向って引き戻され、それによって、界面張力を弱くする。これは、エマルジョン界面におけるゼータ電位の低下を引き起こし、その結果としての電気二重層も弱くなる。
【0091】
系における芳香族のレジン対アスファルテン比が臨界値よりも低い場合、製油所の製品由来のレジン添加物(例えば、コーカーガスオイル、ビスブレーキング法を経た油)が、二酸化炭素の注入に先立って導入され、芳香族レジン対アスファルテン比を臨界値よりも高く保ち、したがってアスファルテンの析出を防止すする。生体資源由来のレジン分子に類似する分子(例えば、バニリン、リグニンのスルフォン酸塩などの、液化リグニン成分)、又は石油画分は、レジンの代替として二酸化炭素の注入に先立って導入されてもよく、芳香族レジン対アスファルテン比を保持し、アスファルテンの析出を防止する。
【0092】
また、原油に高濃度の−COOH基が存在する場合は、エマルジョンの破壊を効率的にするため、全体の酸性対塩基性官能基比を0.25〜4の間に持ってくるために芳香族の塩基性レジンが添加されなければならないかもしれず、一方で最適な比は0.5〜2の間にあるべきである。しかし、原油が天然で塩基性である場合、酸性官能基を有するレジン添加剤は、酸性対塩基性官能基比を維持するために必要とされる。水相の低いpHにおいて、ラムノリピド分子(生化学)は、系の温度に依存して、沈殿し、又は水相に移動する。ラムノリピドは、つぎに、水相の水の蒸発を経て、又は、いくつかのその他の回収技術によって、水相から抽出される。
【0093】
[例2−W/Oエマルジョン]
例2は、例1と同じステップと同じ操作条件を含み、その違いは、水中油型エマルジョンが用いられる(図1のように)代わりに、油中水型エマルジョンが図2で用いられていることである。ラムノリピド分子(生化学)は、系の温度に依存して、沈殿し、又は水相に移動する。ラムノリピドは、つぎに、水相の水の蒸発を経て、又は、いくつかのその他の回収技術によって、水相から抽出される。
【0094】
本発明は、いくつかの特定の例と実施例を用いて上で説明されたが、この技術分野で通常の技術を有する者にとって自明な改良や変形が存在する。したがって、説明された実施例は、すべての点において、実例としてであって限定するものではないと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、詳細な説明よりもむしろ添付した請求の範囲によって示される。請求の範囲と同等な意味と範囲に入るすべての変更は、それらの範囲内に取り込まれるべきである。
図1
図2
図3
図4