(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外気導入室の底壁の斜状の裾部分に取り付けられ、自重で下方に垂れ下がって前記外気導入室の内壁から離間して前記排出孔を下方外部に向けて開口させる一方、前記外気導入口を経た外気の導入のために前記外気導入室内に負圧が発生したときには、該負圧により吸い上げられて前記外気導入室の内壁への当接により前記排出孔を閉塞する可撓性シートをさらに備えた
ことを特徴とする請求項2に記載の転圧車両。
タイヤハウス内に面するように前記外気導入室の下側に配設されて前記熱交換器の下側を覆うと共に、前記外気導入室内と連通して一つの空間を形成することにより外気導入室の一部として機能する熱交換器カバーをさらに備え、
前記熱交換器カバーの底壁が前記排気管の断面輪郭線内に頂点を位置させた斜状をなすように形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の転圧車両。
【背景技術】
【0002】
工事等に使用される産業機械は、その形態に応じて種々の排気構造が採用されている。例えば、特許文献1に記載されているミニショベルでは、作業装置が取り付けられた旋回体にエンジンの排ガスが導かれる排気管を立設し、その上部から排ガスを排出している。排気管には、所定の間隙をもって排気管を覆うように排気管カバーが取り付けられ、これにより排気管の周囲との接触が防止されている。
【0003】
このような排気構造のため、排気管と排気管カバーとの間隙に枯葉等のゴミが侵入する場合があり、高温の排気管との接触によりゴミが燃え易いことから、排気管カバーの下端部分に切り欠き部を形成してブラシ等でゴミを容易に清掃除去できるように配慮している。
【0004】
一方、産業機械の一種であるタイヤローラや振動ローラ等の転圧車両は、車体の前後に備えられた走行輪を兼ねた前部及び後部転圧輪により走行しながら、路床または路盤等に敷きつめられた砂利やアスファルト等の舗装材を締め固める作業を実施する。舗装工事の際には、転圧輪への舗装材の付着防止を目的とした転圧輪への散水、或いは転圧後の路面の冷却硬化促進を目的とした路面への散水が行われ、これらの用途に使用する多量の水は転圧車両の内部に設けられた貯水タンクに貯留されている。
【0005】
転圧車両は、エンジンを動力源としたHST(Hydro Static Transmission)により転圧輪を駆動して走行し、エンジンの排気は、貯水タンクやHSTのレイアウト上の制約により通常の後方排気を採用できないことを受けて、例えば前部転圧輪のタイヤハウス内から路面近傍に排出される。
【0006】
図2は転圧車両としてのタイヤローラのエンジンルーム及び外気導入室を示す断面図であり、実際は本発明の実施形態の車両を示すものであるが、便宜上、この図を利用して従来技術の転圧車両の排気構造を説明する。
エンジンルーム9にはラジエータ等の熱交換器21を介して外気導入室20が隣接され、エンジンルーム9及び外気導入室20は開閉可能なフード11により上方から覆われている。エンジン10により冷却ファン10aが駆動されると、エンジンルーム9に発生した負圧により、フード11に設けられた外気導入口24から外気が外気導入室20内に導入され、さらに熱交換器21を経てエンジンルーム9内へと流通する。
【0007】
エンジン10の排気管31は、エンジンルーム9から外気導入室20内を経由して下方に位置する前部転圧タイヤ3fのタイヤハウス15内まで延設されている。この排気管31の案内により、エンジン10からの排ガスは路面近傍に排出される。
【0008】
図2中に示された熱交換器カバー26は本発明の実施形態のものであるが、それに代えて従来技術の排気構造では、
図12に示す熱交換器カバー101が採用されていた。同図は
図2の矢視Aに相当する。
熱交換器カバー101は鋼板を折曲形成して製作され、外気導入室20の下側に配設されている。熱交換器カバー101は全体として車両後方に向けて凹状をなして熱交換器21の前面を覆うと共に、その上部及び下部が開放されている。冷却ファン10aによりエンジンルーム9で生じた負圧により、外気は外気導入室20の底壁20cに形成された間隙102を経て熱交換器カバー101の内部に導入され、さらに上記のように熱交換器21を経てエンジンルーム9内へと流通する。
【0009】
このように構成された熱交換器カバー101の内部を上下に貫通するように、エンジン10からの排気管31が配設されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、
図12に示す従来技術のタイヤローラの排気構造は、排気管31を上下に貫通させるために熱交換器カバー101の上部及び下部を大きく開放させているため、熱交換器21内には外気導入口24からの外気だけでなく、タイヤハウス15内の外気も吸い込まれて熱交換器21を流通する。路面に近いタイヤハウス15内の外気には砂塵や泥が含まれると共に、舗装材の付着防止のために前部転圧タイヤ3fに散布される付着防止剤が含まれる場合もある。これらの砂塵、泥、付着防止剤等は熱交換器21のコアに付着・堆積するため、熱交換器21を頻繁に清掃する必要が生じると共に、エンジンルーム9内の作動機器の思わぬトラブルの要因にもなり得る。
【0012】
熱交換器カバー101の上部を外気導入室20に接続すると共に下部を閉塞すれば、タイヤハウス15内の外気の吸込みは解消される。しかしながら、熱交換器カバー101の上部の接続は問題ないが、下部の閉塞は熱交換器カバー101内へのゴミの堆積という新たな問題を引き起こす。
【0013】
即ち、車両1の上側に位置する外気導入口24からの外気には、上記した砂塵、泥、付着防止剤等は含まれないものの、枯葉等のゴミが混入している場合がある。そして、このゴミの侵入防止のために外気導入口24には網目パネル25が配設されているが、ゴミの一部は外気と共に外気導入室20及び熱交換器カバー101内に侵入してしまう。
【0014】
図12に示す従来技術では熱交換器カバー101の下部が開放されているため、侵入したゴミは堆積することなく下方に排出される。しかし、タイヤハウス15内からの外気の吸込み防止のために熱交換器カバー101の下部を閉塞するとゴミの堆積が避けられず、堆積したゴミが排気管31と接触して燃える可能性がある。
【0015】
結果として、タイヤハウス15内の外気の吸込み防止と熱交換器カバー101内へのゴミの堆積防止とはトレードオフの関係になり、両者を共に解決する対策はない。ゴミの清掃の煩雑さを解消する対策として特許文献1の技術が提案されているが、
図12に示す従来技術のものとは排気構造が根本的に相違するため、解決策にはなり得なかった。
【0016】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、路面に近いタイヤハウス内から熱交換器カバー内への外気の吸込みを防止した上で、外気導入口から外気と共に侵入して熱交換器カバー内に堆積したゴミが排気管との接触により燃える事態を未然に回避することができる転圧車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明の転圧車両は、走行用動力源のエンジンが収容されたエンジンルームに隣接して画成され、車体パネルの上方に開口する外気導入口を経て外気が導入される外気導入室と、前記外気導入室と前記エンジンルームとの間に配設され、前記外気導入室から前記エンジンへと流通する外気との熱交換により前記エンジンの冷却作用を奏する熱交換器と、前記エンジンルームから前記外気導入室内を経由して該外気導入室の底壁に形成された排気貫通孔を経て下方外部へと延設され、前記エンジンの排ガスを路面近傍に案内する排気管とを備え、前記外気導入室の底壁は、前記排気管の断面輪郭線内に頂点を位置させた斜状をなすように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の転圧車両によれば、路面に近い下方外部から外気導入室内への外気の吸込みを防止した上で、外気導入口から外気と共に侵入して外気導入室内に堆積したゴミが排気管との接触により燃える事態を未然に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の転圧車両をタイヤローラとして具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のタイヤローラを示す側面図、
図2はタイヤローラのエンジンルーム及び外気導入室を排気管の取り回しと共に示す断面図である。以下の説明では、車両に搭乗した運転者を主体として前後、左右及び上下方向を表現する。
【0021】
タイヤローラ1(以下、車両と称する場合もある)の車体2の前部には走行輪を兼ねた3本のゴム製の前部転圧タイヤ3fが設けられ、これらの前部転圧タイヤ3fは左右方向に並列配置されている。また、車体2の後部には走行輪を兼ねた4本のゴム製の後部転圧タイヤ3rが設けられ、これらの後部転圧タイヤ3rは左右方向に並列配置されている。
【0022】
車体2上にはステアリング4を備えた操作台5が設置され、操作台5の後側には運転席6が設置されると共に、操作台5及び運転席6を上方から覆うようにルーフ7が設けられている。運転席6に着座した作業者は、ステアリング4及びフロア8上の図示しないペダル類を操作してタイヤローラ1を走行させ、転圧作業中には前部及び後部転圧タイヤ3f,3rにより路面に敷きつめた舗装材を締め固める。
【0023】
図示はしないが車体2は鋼板を溶接したフレームからなり、操作台5の直前に画成されたエンジンルーム9内には、エンジン10やHST等の各種機器が収容されて開閉式のフード11(車体パネル)により上方から覆われている。なお、エンジンルーム9を挟んだ左右両側及びエンジンルーム9の下側には車体フレームによりそれぞれ密閉空間が画成され、これらの密閉空間は相互に連通して貯水タンク12として機能する。
【0024】
前部転圧タイヤ3fの近接位置には前部散水パイプ13fが支持され、後部転圧タイヤ3rの近接位置には後部散水パイプ13rが支持されている。これらの散水パイプ13f,13rは図示しない配管を介して貯水タンク12と接続され、転圧作業中には、貯水タンク12内に貯留された水がポンプにより汲み上げられて配管を経て各散水パイプ13f,13rに供給され、前部及び後部転圧タイヤ3f,3rの外周面に散水されることにより舗装材の付着が防止される。
【0025】
図2に示すように、前部転圧タイヤ3fは車体2の最前部に形成されたタイヤハウス15内に配設されて、操舵フレーム16に回転可能に支持されている。操舵フレーム16はヨーク17を介して車体2側の旋回軸受け18に連結され、図示しない油圧操舵装置によりステアリング4の操作に応じてヨーク17及び操舵フレーム16が水平方向に回転駆動され、これにより前部転圧タイヤ3fの操舵が行われる。
【0026】
エンジンルーム9の前側には隣接して外気導入室20が画成され、この外気導入室20はエンジンルーム9と略等しい左右幅を有している。外気導入室20とエンジンルーム9との間には、エンジン10を冷却するラジエータ等の熱交換器21が配設されている。外気導入室20は、以下の各壁面により画成されている。その左右両側はそれぞれ側壁20aにより、前側は前壁20bにより、下側の前部は底壁20cにより、下側の後部は主として後述する熱交換器カバー26により、上側はフード11によりそれぞれ画成され、後側は画成されることなく熱交換器21に面している。
【0027】
外気導入室20の底壁20cは旋回軸受け18と同一高さ、換言すると熱交換器21の高さ方向の略中間位置に配置され、外気導入室20内において底壁20c上にはエアクリーナ22がブラケット23により固定されている。フード11のエアクリーナ22の直上に相当する位置には、四角状をなす外気導入口24が開口形成されている。
【0028】
上方に開口する外気導入口24を経て枯葉等のゴミが侵入するのを防止するために、外気導入口24には網目パネル25が固定されている。本実施形態の網目パネル25は線材を縦横に編み込んで製作されている。但し、網目パネル25の構成はこれに限るものではなく、例えばパンチングメタルを用いてもよい。
【0029】
図3は熱交換器カバーの内部と排気管とを示す
図2のA矢視相当の断面図、
図4は熱交換器カバーの内部と排気管とを示す
図2のB矢視相当の断面図、
図5は熱交換器カバーの内部と排気管とを示す
図2のD矢視図、
図6は熱交換器カバーを前方斜め下方より見た
図2のC矢視図である。
【0030】
図2〜6に示すように、熱交換器カバー26は鋼板を折曲形成して製作され、タイヤハウス15内に面するように外気導入室20の下側に配設されている。熱交換器カバー26は全体として左右側壁26a、前壁26b及び底壁26cからなり、車両後方に向けて凹状をなして熱交換器21の前面の下側半分を覆っている。
熱交換器カバー26の形状について詳述すると、左右側壁26aの後端にはフランジ部26dが形成され、これらのフランジ部26dは、熱交換器21を車体2に固定しているブラケット27に対してボルト28により締結され、これにより車体2に熱交換器カバー26が固定されている。熱交換器カバー26の左右側壁26a及び前壁26bの上端は、外気導入室20の底壁20cに接続されている。
【0031】
結果として、熱交換器カバー26内は外気導入室20内と連通して一つの空間を形成することにより、外気導入室20の一部として機能する。そして熱交換器カバー26内は、一方で外気導入室20を介して外気導入口24から外部と連通し、他方で熱交換器21を介してエンジンルーム9内と連通している。本発明では熱交換器カバー26内も外気導入室20内の一部としてとらえているが、本実施形態では便宜上、外気導入室20内とは別個の熱交換器カバー26内として説明する。
【0032】
そして、エンジン10により冷却ファン10aが駆動されると、エンジンルーム9に発生した負圧により、外気導入口24から外気が外気導入室20及び熱交換器カバー26の内部に導入され、さらに熱交換器21を経てエンジンルーム9内へと流通する。外気は外気導入室20内のエアクリーナ22からエンジン10の吸入空気として吸入されると共に、熱交換器21との間の熱交換によりエンジン10の冷却作用を奏する。
【0033】
一方、特に
図2に示すように、エンジン10の排気管31は円形パイプ状をなし、エンジンルーム9から外気導入室20内に水平に延設され、車幅方向中央で下方に直角に屈曲されている。この屈曲箇所から排気管31は下方に延設され、外気導入室20内及び熱交換器カバー26内を経由して、底壁26cに形成された円形状をなす排気貫通孔32を経て前部転圧タイヤ3fのタイヤハウス15内まで延設されている。排気管31はブラケット33により車体2側に固定されると共に、その下端を車体2底面に固定されたマフラーエンド34に接続されている。
【0034】
この排気管31の案内により、エンジン10からの排ガスは路面近傍でマフラーエンド34から後方に向けて排出される。このような排ガスの排出位置及び排出方向は、タイヤローラ1の稼働中に周囲で作業する作業者への排ガスの影響を配慮したものである。
【0035】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、
図12に示す従来技術では、熱交換器カバー101の上部及び下部が大きく開放されているため、エンジンルーム9内の負圧により熱交換器カバー101内に砂塵、泥、付着防止剤等を含んだタイヤハウス15内からの外気が吸い込まれ、熱交換器21の煩雑な清掃やトラブルの要因になるという問題がある。また、外気の吸込み防止のために熱交換器カバー101の下部を閉塞した場合には、熱交換器カバー101内に枯葉等のゴミが堆積して排気管31との接触により燃える可能性が生じるため、両者はトレードオフの関係になる。
【0036】
このような不具合を鑑みて本発明者は、熱交換器カバー26内のゴミの堆積を防止すべき部位に着目した。即ち、ゴミの堆積を防止する必要があるのは、熱交換器カバー26内の底壁26c全体ではなく、排気管31と接触する可能性がある排気管31の周囲に限られる。よって、ゴミを排気管31から遠ざけるように底壁26cを斜状に形成すれば、排気管31へのゴミの接触を防止してゴミが燃える事態を回避できる。
【0037】
さらに、斜状の底壁26cの裾部分に熱交換器カバー26内と下方外部(タイヤハウス15内)とを連通させる排出孔を形成すれば、熱交換器カバー26内に侵入したゴミは堆積することなく、底壁26cの傾斜に倣って少量ずつ排出孔から下方に排出されるため、排出孔を最小限の大きさにとどめて外気の吸込みを抑制できる。
【0038】
以上の知見に基づき本実施形態では、熱交換器カバー26の底壁26cを斜状に形成すると共に、その裾部分に排出孔を形成しており、以下に第1,2実施形態として説明する。
【0039】
[第1実施形態]
本実施形態の熱交換器カバーの底壁26cは平板状をなす前後2面からなり、側方視(一側方)において逆V字状をなすように鋼板(板材)を二つ折りして成形されている。底壁26cの左右両端は側壁26aに溶接され、底壁26cの前後両端は前壁26b及び熱交換器21側に対してそれぞれ離間し、これにより底壁26cの最下端の前後には、熱交換器カバー26内とタイヤハウス15内とを連通させる左右方向に帯状をなす排出孔36が形成されている。
【0040】
底壁26cの頂点Pの左右方向中央には円形状をなす排気貫通孔32が貫設され、この排気貫通孔32内に排気管31が挿通されている。排気貫通孔32の内周縁と排気管31の外周面とは、僅かな隙間を介して離間させても互いに接触させてもよいし、或いは溶接等で接合してもよい。
【0041】
結果として側方視において、排気管31の円形状をなす断面輪郭線Eの中心に底壁26cの頂点Pが位置することなる。そして、排気管31を基準として底壁26cの一方の面は前方に下るように傾斜し、他方の面は後方に下るように傾斜し、それらの傾斜の最下端に相当する裾部分にそれぞれ排出孔36が開口している。
【0042】
従って、網目パネル25をすり抜けて熱交換器カバー26内に侵入したゴミは、底壁26cを形成する前後何れかの面の傾斜に倣って前方或いは後方へと移動し、傾斜の最下端に到達すると排出孔36から下方に排出される。
【0043】
このため、熱交換器カバー26内に侵入したゴミの中で、底壁26c上の排気管31から離間した箇所に降り落ちたゴミは勿論、排気管31の近接位置に到達したゴミ、即ち排気管31と接触して燃える可能性があるゴミも底壁26cの傾斜により排気管31から遠ざけられる。そして、何れのゴミも最終的には排出孔36から下方に排出されるため、排気管31との接触によりゴミが燃える事態を未然に回避することができる。
【0044】
また、熱交換器カバー26の上部と外気導入室20との接続箇所は密閉されており、熱交換器カバー26の下部は、帯状をなす一対の排出孔36が形成されているだけである。そして、上記のように熱交換器カバー26内に侵入したゴミが底壁26cの傾斜に倣って少量ずつ排出孔36から排出されることから、排出孔36の大きさは最小限で十分に排出機能を達成できる。
【0045】
このため、排出孔36を経て熱交換器カバー26内に吸い込まれるタイヤハウス15内の外気が最小限にとどめられ、その外気に含まれる砂塵、泥、付着防止剤等に起因する不具合、例えば熱交換器21の頻繁な清掃やエンジンルーム9内の作動機器のトラブル等を未然に防止することができる。
【0046】
ところで、以上の説明から明らかなように、熱交換器カバー26内に侵入した全てのゴミは底壁26cの傾斜により排気管31から遠ざけられる。そして、一旦底壁26cの傾斜を下ったゴミは、底壁26cの傾斜を遡って再び排気管31に接近することはあり得ない。
【0047】
本実施形態では、底壁26cの傾斜の最下端に排出孔36を形成することによりゴミを自動的に排出して、熱交換器カバー26内の清掃を不要としたが、定期的な清掃を前提とすれば、排出孔36を省略して熱交換器カバー26の下部を完全に閉塞してもよい。この場合には、底壁26c上にゴミが堆積して排気管31の高さに達する以前にゴミの清掃を実施すればよい。タイヤハウス15内からの外気の熱交換器カバー26内への吸込みがなくなるため、砂塵、泥、付着防止剤等に起因する不具合を完全に解消することができる。
【0048】
一方、このように排出孔36を省略することなく、タイヤハウス15内からの外気の吸込みを防止することもでき、以下に第1実施形態の別例として説明する。
この別例の基本的な構成は第1実施形態の排気構造と同様であるため、重複する箇所の説明は省略し、相違点を重点的に述べる。
【0049】
図7は別例の熱交換器カバー26の内部と排気管31とを示す
図2のA矢視相当の断面図である。
底壁26cの前端及び後端、即ち傾斜方向の最下端にはそれぞれゴム等の可撓性シート41の基端がボルト42により取り付けられている。可撓性シート41の左右幅は排出孔36と同一であり、前後長は排出孔36よりも長く設定されている。
【0050】
エンジン停止により熱交換器カバー26内に負圧が発生していないとき、各可撓性シート41は自重により垂れ下がり、それらの先端を熱交換器21の固定ブラケット27(内壁)及び前壁26b(内壁)から離間させ、これにより排出孔36を下方のタイヤハウス15内に向けて開口させている。
【0051】
そして、エンジン10が運転されて熱交換器カバー26内に負圧が発生すると、各可撓性シート41は負圧により吸い上げられ、それらの先端を固定ブラケット27及び前壁26bに当接させる。結果として排出孔36が閉塞されることから、熱交換器カバー26内にはタイヤハウス15内の外気が吸い込まれなくなり、外気導入口24からの車体2上側の外気のみが導入される。よって、タイヤハウス15内からの外気に含まれる砂塵、泥、付着防止剤等に起因する不具合を未然に防止することができる。
【0052】
このエンジン10の運転中において、熱交換器カバー26内には外気導入口24から導入される外気と共に枯葉等のゴミが侵入して底壁26c上に降り落ちる。それらのゴミは底壁26cを形成する前後何れかの面の傾斜に倣って前方或いは後方へと移動し、傾斜の最下端まで移動する。
【0053】
そして、エンジン停止により可撓性シート41が垂れ下がると排出孔36が開口し、その排出孔36を経てゴミが下方に排出される。結果として、排出孔36によるゴミを自動的に排出する機能を温存した上で、タイヤハウス15内からの外気の吸込みをなくして砂塵、泥、付着防止剤等に起因する不具合を完全に解消することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態を説明する。第1実施形態との相違点は熱交換器カバー26の底壁26cの形状にあり、その他の構成は第1実施形態と同一である。よって、重複する箇所の説明は省略し、相違点を重点的に述べる。
【0055】
図8は熱交換器カバー26の内部と排気管31とを示す
図2のA矢視相当の断面図、
図9は熱交換器カバー26の内部と排気管31とを示す
図2のB矢視相当の断面図、
図10は熱交換器カバー26の内部と排気管31とを示す
図2のD矢視図である。
【0056】
本実施形態の熱交換器カバーの底壁26cは平板状をなす左右2面からなり、前方視(一側方)において逆V字状をなすように鋼板を二つ折りして成形され、その前端が熱交換器カバー26の前壁26bに溶接されている。底壁26cの左右両端は左右側壁26aに対してそれぞれ離間し、これにより底壁26cの左右には、熱交換器カバー26内とタイヤハウス15内とを連通させる排出孔51がそれぞれ形成されている。
【0057】
前壁26bの下部の左右両側には、それぞれ熱交換器21側に下るように傾斜したガイド面52が形成されている。これらのガイド面52により左右の排出孔51は前後長が減少し、ゴミを排出可能な最小限の開口面積まで狭められている。
【0058】
結果として前方視において、排気管31の円形状をなす断面輪郭線Eの中心に底壁26cの頂点Pが位置することなる。そして、排気管31を基準として底壁26cの一方の面は左方に下るように傾斜し、他方の面は右方に下るように傾斜し、それらの傾斜の最下端に相当する裾部分にそれぞれ排出孔51が開口している。
【0059】
従って、網目パネル25をすり抜けて熱交換器カバー26内に侵入したゴミは、底壁26cを形成する左右何れかの面の傾斜に倣って左方或いは右方へと移動すると共に、一部のゴミはガイド面52の傾斜に倣って後方へと移動し、傾斜の最下端に到達すると排出孔51から下方に排出される。
【0060】
このため重複する説明はしないが、第1実施形態と同じく、熱交換器カバー26内に侵入した全てのゴミを排出孔51から下方に排出でき、排気管31との接触によりゴミが燃える事態を未然に回避することができる。また、排出孔51の大きさを最小限に抑制することにより、熱交換器カバー26内へのタイヤハウス15内の外気の吸込みを防止して、その外気に含まれる砂塵、泥、付着防止剤等に起因する不具合を未然に防止することができる。
【0061】
以上のように本実施形態の排気構造は第1実施形態と同様の作用効果を奏し、言うまでもないが、第1実施形態で述べたように排出孔51を省略することもできる。また、第1実施形態の別例と同じく可撓性シートを用いることもでき、以下に別例として簡単に説明する。
【0062】
図11は別例の熱交換器カバー26の内部と排気管31とを示す
図2のD矢視図である。
この別例では、前壁26bの下部のガイド面52は形成されておらず、底壁26cの左右には熱交換器カバー26の前後長に等しい排出孔61がそれぞれ形成されている。そして、底壁26cの左端及び右端、即ち傾斜方向の最下端にはそれぞれゴム等の可撓性シート62の基端がボルト63により取り付けられ、可撓性シート62の前後幅は排出孔61と同一であり、左右長は排出孔61よりも長く設定されている。
【0063】
第1実施形態の別例と同じく、エンジン10の運転中には熱交換器カバー26内に発生した負圧により各可撓性シート62が吸い上げられ、それらの先端を左右側壁26a(内壁)に当接させる。これにより排出孔61が閉塞されて、タイヤハウス15内からの外気の吸込みが防止される。そして、このときに熱交換器カバー26内に侵入したゴミは、底壁26cの傾斜に倣って左方或いは右方の最下端まで移動し、その後にエンジン停止により可撓性シート62が垂れ下がると、排出孔61が開口してゴミが下方に排出される。従って重複する説明はしないが、第1実施形態の別例と同様の作用効果が得られる。
【0064】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではタイヤローラ1の排気構造として具体化したが、転圧車両の種別はこれに限るものではなく、例えば振動ローラやマカダムローラ等に適用してもよい。
【0065】
また上記実施形態では、開閉可能なフード11に外気導入口24を開口形成して外気を導入したが、外気導入口24を設ける箇所はこれに限るものではなく、例えば車体2を形作るパネルに外気導入口24を開口形成してもよい。
【0066】
また上記第1実施形態では、側方視において逆V字状をなすように底壁26cを形成し、第2実施形態では、前方視において逆V字状をなすように底壁26cを形成したが、底壁26cの頂点Pが排気管31の断面輪郭線E内に位置するものであれば、底壁26cの形状は上記に限らない。よって、例えば四角錐状をなすように底壁26cを前後及び左右に折曲してもよく、この場合でも底壁26cの頂点Pを排気管31の断面輪郭線E内に位置させれば、実施形態と同様の作用効果を得ることができる。