(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605018
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】短いブレード及び短いバンドを備えるフランシスタービン
(51)【国際特許分類】
F03B 3/12 20060101AFI20191031BHJP
F03B 3/02 20060101ALI20191031BHJP
F03B 11/04 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
F03B3/12
F03B3/02
F03B11/04
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-503085(P2017-503085)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公表番号】特表2017-520720(P2017-520720A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】CA2015050367
(87)【国際公開番号】WO2016011537
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】62/027,910
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514098746
【氏名又は名称】アンドリッツ ハイドロ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スベン ボン フェレンベルグ
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06135716(US,A)
【文献】
米国特許第08506244(US,B2)
【文献】
特開2007−064018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/12
F03B 3/02
F03B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランシス水力タービンランナーであって、
トレーリングエッジとのジャンクションにおけるバンドの直径に対するランナーの回転軸に平行な方向に沿うバンドの長さの比率として17%(0.17)未満のバンド長さ比率を有するバンド;
クラウン;
クラウンからバンドまで延びている複数のランナーブレード;及び
ランナーブレードのリーディングエッジとバンドとの間のジャンクションを含み、
該ジャンクションは、ランナーの回転方向において、リーディングエッジとクラウンとの間のジャンクションの前を先行することを特徴とするフランシス水力タービンランナー。
【請求項2】
バンドとクラウンとの間に、ランナーブレードのリーディングエッジの方向に曲がっている湾曲部を有するランナーブレードのトレーリングエッジをさらに含む、請求項1に記載のフランシス水力タービンランナー。
【請求項3】
リーディングエッジが、負のすくい角を有する、請求項1又は2に記載のフランシス水力タービンランナー。
【請求項4】
バンド長さ比率が、15%(0.15)未満である、請求項1〜3のいずれかに記載のフランシス水力タービンランナー。
【請求項5】
フランシスタービンランナーであって、
ランナーの外周の直径に対するランナーの回転軸に平行な方向に沿う、外周におけるランナーブレードのエッジの高さの比率である外縁長さ比率として17%(0.17)未満の外縁長さ比率を有するランナーの外周;
クラウン;
ランナーのクラウンから外周まで延びている複数のランナーブレード;及び
ランナーの外周におけるそれぞれのランナーブレードのリーディングエッジのコーナーを含み、
該コーナーは、リーディングエッジがクラウンに接合するコーナーの回転方向において前にあることを特徴とするフランシスタービンランナー。
【請求項6】
ランナーの外周とクラウンとの間に、ランナーブレードのリーディングエッジの方向に曲がっている湾曲部を有するランナーブレードのトレーリングエッジをさらに含む、請求項5に記載のフランシスタービンランナー。
【請求項7】
リーディングエッジが、負のすくい角を有する、請求項5又は6に記載のフランシスタービンランナー。
【請求項8】
外縁長さ比率が、15%(0.15)未満である、請求項5〜7のいずれかに記載のフランシスタービンランナー。
【請求項9】
ブレードの最外縁エッジに取り付けられた環状バンドをさらに含む、請求項5〜8のいずれかに記載のフランシスタービンランナー。
【請求項10】
フランシス水力タービンであって、
トレーリングエッジとのジャンクションにおけるバンドの直径に対する分配器の底部からバンドにおけるトレーリングエッジの取り付けポイントまで、ランナーの回転軸に平行な方向に沿って測定されたバンド長さの比率として17%(0.17)未満のバンド長さ比率を有するバンドと、クラウンと、クラウンからバンドまで延びているランナーブレードと、ランナーブレードのリーディングエッジとバンドとの間のジャンクションとを含むランナー;
ランナーの上流に位置するらせんケーシング;
ランナーとらせんケーシングとの間に位置する分配器;及び
ランナーから下流に位置するドラフトチューブを含み、
前記ジャンクションは、ランナーの回転方向において、リーディングエッジとクラウンとの間のジャンクションの前を先行することを特徴とするフランシス水力タービン。
【請求項11】
バンドとクラウンとの間に、ランナーブレードのリーディングエッジの方向に曲がっている湾曲部を有するランナーブレードのトレーリングエッジをさらに含む、請求項10に記載のフランシス水力タービン。
【請求項12】
リーディングエッジが、負のすくい角を有する、請求項10又は11に記載のフランシス水力タービン。
【請求項13】
バンド長さ比率が、15%(0.15)未満である、請求項10〜12のいずれかに記載のフランシス水力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力タービン、例えばフランシスタービンに関し、特にフランシスタービンのランナーのブレード及びバンドに関する。
【0002】
図1は、水力エネルギーをトルクに変換し、発電機(図示せず)を駆動するように構成された従来のフランシス水力タービン1を示す。水は、典型的には、らせんケーシング2を通り、タービン1の回転ランナー3を囲んでいる分配器13へ流れる。分配器13は、ステーベーン132及びガイドベーン130を有する。水は、垂直軸を有するタービン内で、水平方向に沿って一般にらせん運動でランナーへ流れる。水の回転速度によって、ランナーが駆動し、軸の周りを回転する。水がランナーを通って流れると、水の運搬成分(transport component)は、水平流から一般に垂直流出に変換される。ランナーから、水はランナーの下のドラフトチューブ5の垂直コーンへ流れる。
【0003】
水平軸を有するタービンの場合、水は、一般にらせん運動でランナーの内側に流れる。水の回転速度によって、ランナーが駆動し、軸の周りを回転する。水がランナーを通って流れると、水は一般に水平流出に変換される。ランナーから水は流れ、ランナーの下流のドラフトチューブの水平コーンへ流れる。
【0004】
フランシスタービンのランナー3は、バンド8に向かってランナー3の軸11に沿って延びている回転面を有するクラウン6、及びクラウン6の回転面から環状バンド8まで外に延びているブレード7を典型的に含む。それぞれのブレード7は、リーディングエッジ及びトレーリングエッジを有する。これらのエッジの末端は、クラウン6及びバンド8に接合されている。ランナー3は、タービンにおける底部リング22の上に配置されている。
【0005】
水は、ランナー3に入り、ブレードのリーディングエッジの周りを流れ、ブレードの間を流れ、ブレードのトレーリングエッジを通過し、次にドラフトチューブ5へ流れる。
【0006】
水の速度は、ランナーにおいて、クラウンの近くよりもバンドの近くで一般に速い。高速度の水流によって、バンドやバンドの近くにおいて比較的に高い水力摩擦を生じ、これがエネルギーの一部を摩擦で失わせるので、タービンの効率を減少させる。高速度の水によって、ランナーにおいて低静圧も引き起こされる。低静圧によって、ブレード、バンド及びクラウンの表面を損傷させ得るキャビテーションバブルの形成が引き起こされることがある。
【0007】
水力タービンの分野において、ランナーバンドは、シュラウド又はリングとしても知られている。クラウンは、ハブとしても知られている。ブレードのリーディングエッジは、入口エッジ又は流入エッジとしても知られている。ブレードのトレーリングエッジは、ランナーブレードの出口エッジ又は流出エッジとしても知られている。本明細書では、これらの用語を、異なるランナー構成要素に関して互換的に使用することがある。
【0008】
図2及び
図3は、それぞれ、ランナー9の回転軸11の周りを方向(R)で回転する例示的な従来のフランシスタービンランナー9の側面図及び底面図である。ランナー9は、ランナーブレード10の環状列、環状バンド12及びクラウン14を含む。ランナー9は、クラウン14から見たとき時計回りに回転する。クラウン14は、回転軸11に沿ってバンド12に通常面する回転面を有する。クラウン14における開口23は、軸11と同軸であり、発電機のためのシャフトを受け入れる。
【0009】
図2は、バンド12に重ね合されたブレード10の末端18を図示の目的で示す。ブレード10の末端は、例えば溶接などでバンド12に接合されるが、バンド12を通って延びている必要はない。ブレード10の末端18は、ランナー9の実用的な実施態様において、バンド12を通じて可視的でなくてもよい。
【0010】
ブレード10は、ランナー9のバンド12とクラウン14との間で環状列に配置されている。ブレード10は、
図1に示されているように、らせんケーシング2からの水を、バンドとクラウンとの間をドラフトチューブ5へと流れるように指向させる。
【0011】
それぞれのブレード10は、リーディングエッジ16からトレーリングエッジ20までの湾曲状に延びている同様の形状を有する。リーディングエッジ16は、ランナー9への入口にあり、トレーリングエッジ20は出口にある。疑似ストリームライン(pseudo-streamlines)17、19は、ブレード10の形状を図示するためにブレード10のイメージ上に描かれている。実線の疑似ストリームライン17は、ブレード10の吸い込みサイドに示され、破線の疑似ストリームライン19は、ブレード10の圧力サイドに示されている。ブレード10の吸い込みサイドは、ランナーの回転(R)方向に向き、圧力サイドは回転(R)方向の逆に向く。それぞれの疑似ストリームライン17、19は、リーディングエッジ16からトレーリングエッジ20までのブレード10の表面上に描かれている。
【0012】
それぞれのブレード10は、4つのコーナーP、Q、S及びTを有する。ブレード末端21の2つのコーナーP及びSはクラウン14に接し、2つのコーナーQ及びTはバンド12に接している。コーナーP、Sはクラウン14の外表面に接している。コーナーPはクラウン14の上流領域の近くにあり、コーナーSはクラウン14の下流領域25にある。ブレード末端18のコーナーQ及びTはバンド12に接しており、コーナーQはバンド12の第1リムに近接して位置しており、コーナーTはバンド12の第2リムの近くにある。
【0013】
クラウン14の外表面は、ブレード10の末端21を支持している。末端21は溶接などでクラウン14に接合されている。クラウン14は、駆動シャフトを受け入れるための内部開口を有する。クラウン14の外表面の部分24は、流れ方向においてブレード10のコーナーSを越えて延びている。クラウン14の部分24は、ドラフトチューブ5に面している。
【0014】
バンド12は、ブレード10の末端18を支持している環状構造物である。バンド12は、タービンランナー3の軸11の方向に曲がっている湾曲部を有してもよい。湾曲部はブレード10のエッジ18に適合する。バンドは長さ(L)及び直径(D)を有する。長さ(L)は、分配器13の底部15からバンド8におけるトレーリングエッジTまでの間で測定される距離である。直径(D)は、ランナー3の出口直径であり、トレーリングエッジTとの接合部におけるバンド12の直径である。正規化されたバンド長さは、本明細書において「バンド長さ比率」と呼ばれ、その長さの最小直径に対する比(L/D)によって特徴づけられる。
【0015】
従来のランナーは、少なくとも17%(0.17)のバンド長さ比率を有し、これらは本明細書において「長いランナー」と称される。
【0016】
本明細書において、「短いランナー」と称されるランナーは、17%(0.17)未満のバンド長さ比率を有する。短いランナーは、過去に試みられたことがあるが、重大なキャビテーションダメージを受け、ランナーを損傷させ、その水力効率を減少させていた。キャビテーションは、通常、長いブレードを備える長いバンドランナーにおいて過度ではない。従来の知見は、バンド及びブレードはキャビテーションを避けるために長くなければならないというものである。
【0017】
長いランナーにおいて、ブレード及びバンドの長さは増加するので、ランナーの質量が増加する。長いランナーの水力効率は、より長いブレード及びバンドの湿潤表面積が増加して、水力摩擦損失が増加することによって影響を受ける。ランナーにおけるキャビテーションを減少させ、あるいはランナー能力を改善するための試みは、米国特許第6,135,716号及び4,479,757号の各明細書に開示されているが、ランナー能力を改善させ、かつランナーにおけるキャビテーションを減少させる必要性が依然として存在していた。
【0018】
前方走行リーディングエッジ(forerunning leading edges)を備える短いブレードを有する短いランナーが発明された。短いランナーは、長いランナーと比較して少ない湿潤表面積を有し、これにより水力摩擦が減少し、能力が改善される。短いランナーはバンドを有するか、又はバンドレス(シュラウドレス)であることもある。
【0019】
前方走行リーディングエッジにおいて、リーディングエッジは、リーディングエッジがランナーの回転方向において、クラウンと接合する場所の前で、バンドと接合する。前方走行リーディングエッジは、「逆リーディングエッジ」とも称される。
【0020】
前方走行リーディングエッジは、ブレードの圧力負荷をバンドから離れてクラウンの方向にシフトさせる。負荷は、圧力サイドと吸い込みサイドとの間の圧力差の結果として、ブレードの表面上の種々の位置に適用される動水力(hydraulic force)を指す。負荷がシフトすることによって、ブレードは、バンドとクラウンとの間でより均一に負荷がかけられる。
【0021】
ブレードの負荷をバンドから離れてシフトさせることは、バンド及びバンドの近くのブレード表面におけるキャビテーションリスクを減少させる。キャビテーションリスクを減少させることによって、短いブレードは実用的になる。他のブレードパラメーター、例えばブレード厚さ、ブレード角の分布(distribution)が、キャビテーションリスク、及びキャビテーションによるランナーへのダメージのリスクを減少させるために選択されることがある。
【0022】
前方走行リーディングエッジを有する短いブレードを組合せることで、従来の長いランナーと比較して水力摩擦が減少した短いランナーとなる。短いランナーにおけるキャビテーションリスクは、許容可能レベル内である。短いランナーは従来の長いランナーより軽量であり、ランナーを製造するための材料コスト及び生産コストを軽減する。
【0023】
短いブレードのトレーリングエッジは反転されることがある。反転トレーリングエッジは、ブレードのリーディングエッジの方向に曲がった湾曲部を有する。湾曲部は、ランナーのバンドからクラウンまでトレーリングエッジの全長に沿って延びている。反転トレーリングエッジは、特にブレードの中間領域(mid-span regions)において、疑似ストリームライン17、19に沿うブレードの長さを減少させる。ブレードの長さを短くすることは、ブレードの湿潤表面積を減少させ、それによって、水力摩擦を減少させる。
【0024】
短いランナーは、既存のランナーを取り換えるために、特に、既存の水力タービンにおいて、ランナーを挿入すべき利用可能なスペースがほとんどない場合に使用される。短いランナーは、従来のタービンを生産する際のサイズ及びコストより、サイズを減少させ、材料コスト及び生産コストを軽減させる、新しいタービンアセンブリのデザインをも可能にする。
【0025】
短いランナーは、バンド、クラウン、前方走行リーディングエッジを有する短いブレードの列、及び17%(0.17)未満のバンド長さ比率を含む。さらにブレードのトレーリングエッジは反転されていてもよく、すなわち、クラウンとバンドとの間のリーディングエッジの方向に曲がっていてもよい。
【0026】
バンドレス(シュラウドレス)タービンランナーは、クラウン、前方走行リーディングエッジを有する短いブレードの列、及び17%(0.17)未満の外縁長さ比率を有するランナーの外周を含む。さらにブレードのトレーリングエッジは反転されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】は、ステーベーンとガイドベーンを備える分配器、ランナー、ドラフトチューブ、及びらせんケーシングを有する従来の垂直フランシスタービンの側面図であり、一部は断面で示されている。
【0028】
【
図2】は、フランシスタービンのための従来のランナーの概略図を示す側面図である。
【0029】
【0030】
【
図4】は、短いバンド及び短いブレードを有する短いランナーの概略を示す側面図である。
【0031】
【
図5】は、
図4に示した短いランナーの底面図である。
【0032】
【
図6】は、
図4に示したランナーの上面図であり、図中、クラウンはブレードを図示する目的で破線で示されている。
【0033】
【
図7】は、ランナーブレードの斜視図であり、リーディングエッジを示しており、疑似ストリームラインがブレードの表面に描かれている。
【0034】
【
図8】は、
図7に示したランナーブレードの斜視図であり、ブレードの上から下への図を提供している。
【0035】
【
図9】は、
図1に示したランナーブレードの斜視図であり、トレーリングエッジの図を提供している。
【0036】
【
図10】は、短いランナーブレードの子午線図(meridional view)である。
【0037】
【
図11】は、短いランナーの別の実施態様の側面及び底面の斜視図である。
【0038】
【0039】
【
図13】は、反転トレーリングエッジを有する短いランナーの別の実施態様の側面及び底面の斜視図である。
【0040】
【0041】
【
図15】は、短いランナーの水力効率と従来の長いランナーの水力効率とを比較したグラフである。
【0042】
図4及び
図5は、前方走行リーディングエッジを有するブレード30を備えるフランシスタービンのための短いランナー26を図示している。短いランナー26は、軸28の周りを方向(R)に回転する。バンド長さ比率(L/D)は、17%(0.17)未満であり、15%(0.15)未満であってもよく、11%〜7%(0.11〜0.07)の範囲であってもよい。
【0043】
短いランナー26は、ランナーブレード30の環状列、環状バンド32及びクラウン34を含む。方向(R)は、ランナー26をクラウン34から見たときに時計回りの方向である。クラウン34は、ランナー26の軸28に沿ってバンド32に向かって延びている回転面を有してもよい。それぞれのブレード30は、リーディングエッジ36及びトレーリングエッジ40を含む。
【0044】
リーディングエッジ36は、ランナー26への上流入口にあり、水又は他の液圧流体(hydraulic fluid)のためのらせんケーシング及び分配器から下流にある。トレーリングエッジ40は、ランナー26の下流端にあり、ランナー26の下流にあるドラフトチューブに面している。実線の疑似ストリームライン17は、ブレード図の吸い込みサイド上に示され、破線の疑似ストリームライン19は、ブレード図の圧力サイド上に示されている。疑似ストリームライン17、19は、図示の目的のためのものであり、ブレードの表面上の構造物を指しておらず、実際のストリームラインを表してもいない。
【0045】
それぞれのブレード30の第1エッジ33は、クラウン34の外表面に固定され、第2エッジ38は、バンド32の内表面に固定されている。第1エッジ33のコーナーP及びSは、クラウンの外表面の上流領域及び下流領域にそれぞれある。コーナーQ及びTは、バンド32の上流領域及び下流領域にそれぞれある。
【0046】
バンド長さLは、従来のバンドと比較して短い。より短いバンド長さLに適合するために、ブレード長さはエッジ38に沿って短くされた。
図2と
図4を比較すると、短いランナー26のバンド長さL及びブレード30のエッジ38の長さが、長いランナー9のブレード10より短いことを示している。
【0047】
破線の疑似ストリームライン19および実線の疑似ストリームライン17により図示されているように、ブレード30の湾曲部は、短いエッジ38及び短いバンド32に適合するようなプロポーションを有する。
【0048】
図6は、それぞれのブレード30の前方走行リーディングエッジ36を図示する。前方走行リーディングエッジ36において、バンド32におけるエッジのコーナーQは、クラウン34におけるコーナーPの前に、ランナーの回転Rの方向に角度をつけて存在する。すくい角(θ)は、短いランナー26の軸28からコーナーQとコーナーPの方向に測定された、ブレード30のリーディングエッジ36のコーナーQとコーナーPとの間の角度である。正のすくい角は、コーナーPが回転方向RにコーナーQの前方であるときに存在する。
図6に示されるような負のすくい角(θ<0°)は、前方走行リーディングエッジを示す。
【0049】
前方走行リーディングエッジジャンクションQは、ブレードの水力負荷を、バンド32からクラウン34の方向にシフトさせる。このシフトは、バンド32の近くの水力負荷を減少させ、それによってバンド32におけるキャビテーションリスク、及びバンド34の近くのブレード30の部分におけるキャビテーションリスクを減少させる。クラウン34の方向への水力負荷のシフトは、ブレード30のスパンに沿う、より均一な負荷も提供する。
【0050】
図7、
図8及び
図9は、短いランナー26におけるブレード30の異なる視点からの図である。ブレード30は、ブレード30の吸い込みサイドに向かってみる角度で見た
図7に示す図においては、「V」形状であるように見える。ブレード30のエッジ33は、クラウンンに取り付けられ、エッジ38は、バンドに取り付けられている。ブレードのコーナーP、Q、S及びTは、
図4、
図5及び
図6に示すコーナーに相当する。
【0051】
図10は、
図7〜
図9に示したブレード30のリーディングエッジ36及びトレーリングエッジ40を示すための短いランナーの子午線図である。ブレード30のエッジ33は、クラウン34の外表面を示している輪郭線42に接して示されている。ブレード30の反対のエッジ38は、バンドの内表面の輪郭線44に接している。図の垂直軸(Z)は、回転軸を示し、水平半径(r)は、ランナーの軸28から、トレーリングエッジのバンドとのジャンクション(ポイントT)までの距離を示す。
【0052】
短いブレード30におけるトレーリングエッジ40の反転は、トレーリングエッジのコーナーSとコーナーTとの間の直線46と比較して、トレーリングエッジ40の湾曲から明らかである。トレーリングエッジ40は、ブレード30のリーディングエッジ36の方向に湾曲した形状を有する。反転トレーリングエッジと対比して、(
図10において破線で示された)従来のトレーリングエッジ20は、リーディングエッジ36から離れて湾曲しており、それによって、直線46から外側に弓形に曲がっている。
【0053】
反転トレーリングエッジ40は、特にブレードの中間(M)領域においてブレード30の長さを短くする。ブレード30を短くすることによって、ブレード30の湿潤表面積が減少し、それによって、ブレード30と水との間の水力摩擦が減少する。摩擦が減少することによって、水のエネルギーを、シャフトに適用されるトルクに変換するフランシスタービンの効率を増加させる。
【0054】
短いランナーの総湿潤表面積は、従来の長いランナーの湿潤表面積と比較して15パーセント(15%)又はそれ以上だけ減少する。短いランナーの湿潤表面積の減少は、従来の長いランナーと比較して、より短いバンド及びより短いブレードであることによる。湿潤表面積の減少度は、短いランナーにおけるブレードのトレーリングエッジを反転させることによってさらに大きくなり、例えば20パーセント(20%)よりも大きくなる。
【0055】
水力表面摩擦は、ランナーの湿潤表面上の剪断応力を測定することによって定量される。表面上の剪断応力は、ランナーの湿潤表面上を流れている水とランナー表面との間の摩擦の結果である。表面積を減少させることによって、剪断応力が水により生じ、水力摩擦を生じる領域が減少する。短いランナーの湿潤表面積が減少することによって、長いランナーと比較して、30パーセント(30%)又はそれ以上だけ表面上に積分された水力剪断応力を減少させ得る。水力剪断応力の量を減少させることによって、摩擦によるエネルギー損失は減少し、それによって、より多くのエネルギーがトルクに変換され、ランナーのシャフトを駆動する。
【0056】
図11及び
図12は、短いランナー48の別の実施態様を示す。ランナー48は、シャフト60を受け入れるように適合されている。ブレード50のそれぞれは、コーナーP及びコーナーQを備える前方走行リーディングエッジ52を有する。それぞれのブレード50のトレーリングエッジ54は、リーディングエッジ52から離れて曲がる湾曲部を有するように示されている。クラウンの下流端58は、ランナー48の軸28に垂直である。バンド62は、フランシスタービンにおける静止底部リングに適合するように段差がある外円筒表面を有する。
【0057】
図13及び
図14は、トレーリングエッジ66を除いて、
図11及び
図12に示す短いランナー48に類似する短いランナー64の別の実施態様を示す。短いランナー64のトレーリングエッジ66は、リーディングエッジ52に向って曲がっているトレーリングエッジ66のエッジTとエッジSとの間の湾曲したエッジから明らかなように、反転している。
【0058】
図15は、従来の長いランナーの水力効率と、ランナー26、48及び64のような短いランナーの水力効率とをグラフ化して比較したものである。Y軸の水力効率は、従来の長いランナーのピーク効率に正規化されている。X軸の排出率は、ピーク効率における排出率に正規化されている。短いランナーの能力効率68は、従来の長いランナーの能力効率70より一貫して高い。効率は、らせんケーシングの入口において水力システムに入るエネルギーからドラフトチューブの出口において水力システムを離れるエネルギーを引いた値に対するシャフト上でトルクに変換されるエネルギーの比率として定義される。
【0059】
短いランナーは、水平タービンにおいて使用されることもある。水平タービンのための短いランナーは、ランナーの軸として水平軸を代わりに有する。短いランナーは、垂直タービンにおける短いランナーの利点が水平タービンにおいても見られるように機能する。
【0060】
さらに、バンドレス(シュラウドレス)ランナーは、短いブレード及び前方走行リーディングエッジを有することがある。バンドレスランナーは、フランシスタービン及びカプランタービン(Kaplan turbine)において使用されることがある。バンドレスランナーの前方走行リーディングエッジは、リーディングエッジが、バンドレスランナーの回転方向において、クラウンと接合する場所の前にあるランナーの外周においてリーディングエッジを有するものとして定義することができる。
【0061】
短いバンドレスランナーは、17%(0.17)未満のランナーの外縁長さ比率を有する。外縁長さ比率(L/D)は、ランナーの下部分配器からランナーの外周におけるトレーリングエッジの地点までの間で測定された距離である長さ(L)と、バンドレスランナーの出口直径、すなわち、ランナーの外周におけるランナーの直径(D)との比率である。
【0062】
バンドレスランナーにおける短いブレードの外周エッジは、静止ケーシングの底部リングの表面に面するように適合されていてもよく、ブレードは、水がブレードの外縁エッジと静止ケーシングの表面との間を流れないように適合されていてもよい。例えば、短いブレードの外周エッジは、静止表面に対してシールを形成してもよい。短いバンドレスランナーは、バンドを備える短いランナーと同様の利点を有する。
【0063】
タービンにおける短いランナーの利点は、これらに限られるものではないが、より軽量のランナーを提供すること、水力摩擦を減少させること、水力効率を増加させること、及び許容可能なキャビテーションン挙動を維持することを含む。
【0064】
本発明を現在最も実用的で好ましいと考えられる実施態様との関係で説明したが、本発明は開示された実施態様に制限されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に含まれる種々の変更及び等価な改良に及ぶことを意図していることを理解されたい。