特許第6605030号(P6605030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605030亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子及びそれらの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605030
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子及びそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/87 20060101AFI20191031BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20191031BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   A61K8/87
   A61K8/73
   A61Q5/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-527780(P2017-527780)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-536377(P2017-536377A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】CN2014092734
(87)【国際公開番号】WO2016086348
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイ・キン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ルー
(72)【発明者】
【氏名】ウーイー・オウヤン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・イー・パン
(72)【発明者】
【氏名】トン・サン
(72)【発明者】
【氏名】シャンダ・シャオ
(72)【発明者】
【氏名】シーリン・ジャン
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−535045(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0101540(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0251688(US,A1)
【文献】 特開2010−163389(JP,A)
【文献】 特表2014−519504(JP,A)
【文献】 特表2010−510213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
WPIDS(STN)
PubMed
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリチオン亜鉛粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子並びに、少なくも1つの化粧品として許容されるカチオン性ポリマー、皮膚軟化剤、界面活性剤、レオロジー変性剤もしくは化粧品活性物質を含むヘアケア組成物であって、ピリチオン亜鉛対ポリウレタンの重量比が1:99〜3:7の範囲であり、前記ポリウレタン微粒子が100ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、ヘアケア組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン微粒子が30ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、請求項1に記載のヘアケア組成物。
【請求項3】
前記ピリチオン亜鉛粒子が2ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、請求項1または2に記載のヘアケア組成物。
【請求項4】
前記ピリチオン亜鉛粒子が1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、請求項3に記載のヘアケア組成物。
【請求項5】
ピリチオン亜鉛対ポリウレタンの重量比が0.5:9.5〜3:7の範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘアケア組成物。
【請求項6】
ピリチオン亜鉛対ポリウレタンの重量比が1.0:9.0〜2.0:8.0の範囲である、請求項5に記載のヘアケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子、ヘアケア組成物におけるそれらの使用、及びそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーなどのヘアケア製品は、ふけが形成するのを防ぐ活性成分を含むことが多い。ふけは、イースト及び真菌によって生じる、頭皮から死んだ皮膚細胞が剥がれ落ちることによって現れる状態である。したがって、ふけ防止シャンプーは、抗菌活性を有するピリチオン亜鉛などの亜鉛塩を有している。しかし、ピリチオン亜鉛粒子は、塊になることが既知であり、頭皮に対するそれらの付着性及び/または残留性を妨げる。シャンプーの配合物において、ピリチオン亜鉛粒子は、エチレングリコールジステアレートまたは雲母系真珠光沢剤による真珠光沢のある外観も阻害する。ピリチオン亜鉛は、髪に付着後の滑らかさ/感覚の感触の乏しさの一因となることも既知である。
【0003】
付着時のふけ防止亜鉛塩の性能を改善するために、異なる取組みが行われてきた。例えば、米国特許出願公開第US2013/0296289号は、亜鉛塩、分岐アルキロイルイセチオネート、脂肪族アシルイセチオネート、及び共界面活性剤を含む、ふけ防止シャンプーの配合物を開示している。PCT国際公開第WO2010/039145号は、ポリ(メチルビニルエーテルマレイン酸)の部分的に中和されたモノブチルエステル及びポリビニルピロリドン、アルキルグラフト化ビニルピロリドングラフトコポリマー、ならびにマレイン酸の亜麻仁油変性ジカルボン酸半エステルの粉末ブレンドから選択されるポリマーと組み合わせて、ピリチオン亜鉛を含むヘアケア製品を開示している。しかし従来技術は、好ましくない視覚外観などの審美的性質の乏しさ、及び髪に対する付着後の滑らかさの欠如を欠点としてもつ。
【0004】
したがって、消費者による所望の好ましい真珠光沢のある外観を阻害しない、または髪に滑らかさの欠如を残さないと同時に、亜鉛塩の良好な付着性を提供する、ヘアケア配合物に使用するための新規の添加剤を開発することが必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、亜鉛塩粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子を含む組成物であって、亜鉛塩対ポリウレタンの比が1:99〜3:7の範囲であり、ポリウレタン微粒子が100ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、組成物を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、(a)亜鉛塩粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子であって、亜鉛塩対ポリウレタンの比が1:99〜3:7の範囲であり、ポリウレタン微粒子が100ミクロン未満の平均粒子サイズを有する、ポリウレタン微粒子と、(b)少なくとも1つの化粧品として許容されるカチオン性ポリマー、皮膚軟化剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、または化粧品活性物質とを含む、パーソナルケア組成物を提供する。特定の実施形態では、亜鉛塩は、2ミクロン未満の平均粒子サイズを有するピリチオン亜鉛を含む。
【0007】
本発明の別の態様は、ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子を調製するための方法であって、(a)イソシアネート及びポリオールを含むプレポリマー反応混合物を反応させて、ポリウレタンプレポリマーを提供するステップと、(b)ポリウレタンプレポリマーをポリビニルアルコール及びアミンと接触させて、ポリウレタンスラリーを提供するステップと、(c)ポリウレタンスラリーをピリチオン亜鉛懸濁液と混合して、ポリウレタン/ピリチオン亜鉛複合希釈液を提供するステップと、(d)ポリウレタン/ピリチオン亜鉛複合希釈液を噴霧乾燥して、ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子を提供するステップとを含む方法、を提供する。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、ヘアケア組成物を頭皮に適用することを含むふけを減少させるための方法であって、該ヘアケア組成物が、(a)亜鉛塩粒子でコーティングされたポリウレタン微粒子であり、ピリチオン亜鉛対ポリウレタンの比が1:99〜3:7の範囲であり、ポリウレタン微粒子が100ミクロン未満の平均粒子サイズを有するポリウレタン微粒子と、(b)少なくとも1つの化粧品として許容されるカチオン性ポリマー、皮膚軟化剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、または化粧品活性物質とを含む方法、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ポリウレタンプレポリマー溶液(下部)及び重合ポリウレタン微粒子(上部)のIRスペクトルを示す。
図2】ピリチオン亜鉛対ポリウレタンが1.0:9.0の重量比を有する、ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子のエネルギー分散型X線スペクトルを示す。
図3】(a)ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子を含む本発明のシャンプーに対して比較したピリチオン亜鉛を含むシャンプー、及び(b)ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子を含む本発明のシャンプーに対して比較した比較のベースシャンプーで処理した髪の感覚性能(すなわち、湿潤摩擦の滑らかさ、洗い流しの滑らかさ、及び湿潤の櫛すき)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、ここで驚くべきことに、亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子がシャンプー配合物中に組込まれると、頭皮に適用された場合、優れた付着性及び/または残留性を提供し、好ましい視覚外観及び好ましい触感覚を維持すると同時に、このような配合物で処理された髪に絹のように滑らかな感覚も残すことを発見した。したがって、本発明は、一態様では、亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子であって、亜鉛塩対ポリウレタンの比が1:99〜3:7の範囲であり、ポリウレタン微粒子が100ミクロン未満の平均粒子サイズを有するポリウレタン微粒子を提供する。
【0011】
本発明において有用なポリウレタン微粒子は、ポリオール及びイソシアネート、ならびに2つの含有成分間の反応を促進する触媒の組み合わせによって形成してよい。したがって、本発明の一態様は、亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子を調製するための方法であって、(a)イソシアネート及びポリオールを含むプレポリマー反応混合物を混合して、ポリウレタンプレポリマーを提供するステップと、(b)触媒の存在下でポリウレタンプレポリマーをポリビニルアルコールと反応させて、ポリウレタン微粒子を含むポリウレタンスラリーを提供するステップと、(c)ポリウレタンスラリーを亜鉛塩懸濁液と混合して、ポリウレタン/亜鉛塩複合希釈液を提供するステップと、(d)ポリウレタン/亜鉛塩複合希釈液を噴霧乾燥して、亜鉛塩でコーティングされたポリウレタン微粒子を提供するステップとを含む、方法を提供する。
【0012】
プレポリマー反応混合物において有用なイソシアネートは、イソシアネート官能基、すなわち−N=C=O、を含む当該技術分野において既知のものである。適切なイソシアネートには、例えば、トルエンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルオキシレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイオシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、ビス(シクロヘキシルイソシアネート)メタン、及びこれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、イソシアネートはイソホロンジイソシアネートを含む。
【0013】
プレポリマー反応混合物において有用なポリオールは、ポリウレタンの製造において有用であるような当該技術分野において既知のものである。適切なポリオールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)、ポリオキシプロピレングリコール、ポリエーテルトリオール、及びポリエーテルテトラオールが含まれる。好ましくは、ポリオールはポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)を含む。
【0014】
プレポリマー混合物の反応において有用な触媒は、例えば、アミン触媒及び有機金属触媒を含むポリウレタンの製造において有用であるような当該技術分野において既知のものである。適切なアミン触媒には、例えば、エチレンジアミン(EDA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、イソホロンジアミン(IDPA)、ジエチレントリアミン(DETA)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルセチルアミン、ジアミノ−ビシクロオクタン、及びこれらの組み合わせが含まれる。適切な有機金属には、例えば、第一スズオクトアート、ジブチルスズジラウレート、及びこれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、触媒はDETAを含む。
【0015】
特定の実施形態では、ポリウレタンスラリー中のポリウレタン微粒子は、100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、より好ましくは30ミクロン未満、及びさらにより好ましくは20ミクロン未満の平均粒子サイズを有する。特定の実施形態では、ポリウレタン微粒子は、1〜100ミクロン、好ましくは5〜50ミクロン、より好ましくは5〜30ミクロン、及びさらにより好ましくは5〜20ミクロンの範囲の粒子サイズを有する。
【0016】
本発明において有用な亜鉛塩には、ふけ防止剤として有用であり、粉末または懸濁液の形態で有り得るものが含まれる。適切な亜鉛塩懸濁液は、例えば、水中に亜鉛塩を10〜80%、好ましくは30〜60%含む。適切な亜鉛塩には、例えば、ピリチオン亜鉛、硫酸亜鉛及びその水和物(例えば硫酸亜鉛水和物)、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、亜鉛塩はピリチオン亜鉛であり、1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオンまたはその可溶性塩を、硫酸亜鉛などの亜鉛塩と反応させることによって調製することができ、亜鉛1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン(ピリチオン亜鉛の別名)を形成する。特定の実施形態では、亜鉛塩は、3ミクロン未満、好ましくは2ミクロン未満、及びより好ましくは1ミクロン未満の平均粒子サイズを有する。特定の実施形態では、亜鉛塩は0.02〜2.0ミクロン、及び好ましくは0.03〜0.8ミクロンの範囲の粒子サイズを有する。
【0017】
特定の実施形態では、ポリウレタン/亜鉛塩複合希釈液は、1:99〜3:7、好ましくは0.5:9.5〜2.0:8.0、及びより好ましくは1.0:9.0〜2.0:8.0の重量比で亜鉛塩及びポリウレタン微粒子を含む。
【0018】
亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子を形成するのに有用な噴霧乾燥方法は、当技術分野において既知である。いずれかの既知の噴霧乾燥方法が、本発明において使用され得る。得られる亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子は、特定の実施形態では、100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、及びより好ましくは30ミクロン未満の平均粒子サイズを有する。特定の実施形態では、亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子は、1〜100ミクロン、好ましくは1〜50ミクロン、及びより好ましくは5〜30ミクロンの範囲の粒子サイズを有する。
【0019】
本発明の別の態様は、上記に記載される亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子を含むヘアケア組成物、及び少なくとも1つの化粧品として許容されるカチオン性ポリマー、皮膚軟化剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、または化粧品活性物質を提供する。本発明では、「ヘアケア」は、典型的にはヒトに局所的に(すなわち経口摂取ではく)、特にヒトの髪に適用されるパーソナルケア組成物に関する。ヘアケア組成物の例には、シャンプー、残留型コンディショナー、スタイリングゲル、ヘアスプレー、及びムースが含まれるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、ヘアケア組成物はシャンプー、好ましくはふけ防止シャンプーである。好ましくは、ヘアケア組成物は化粧品として許容される。本明細書で使用する場合、「化粧品として許容される」とは、パーソナルケア組成物に典型的に使用される成分を意味し、パーソナルケア組成物中に典型的に認められる量で有毒な物質が存在する場合、本発明の一部として検討されないということを、強調することを目的とする。本発明のヘアケア組成物は、当該技術分野において周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥するプロセスにより製造してよい。
【0020】
当業者は、必要に応じて適用分野の一般常識と日常的な経験を組み合わせることにより、本明細書に記載される所望のメリットを提供するために特定の組成物(例えば効果的なふけ防止剤)に使用するべき亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子の有効量を容易に決定し得る。非限定的実施例として、本発明のヘアケア組成物中の亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子量は、組成物の総重量に基づき0.1〜10.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%、及びより好ましくは1.0〜3.0重量%の範囲でよい。
【0021】
特定の実施形態では、本発明のヘアケア組成物はカチオン性ポリマーを含む。適切なカチオン性ポリマーには、例えば、正電荷を有するために変性される多糖(例えば、ポリクアテルニウム10、ポリクアテルニウム24、及びポリクアテルニウム67を含む、例えばカチオン性セルロース誘導体)、カチオン性グアー誘導体、カチオン性メタクリルアミドポリマー、合成カチオン性ポリマー(例えば、ポリクアテルニウム6及びポリクアテルニウム7)、ならびに例えば、PD QUATの商品名でThe Down Chemical Companyから市販されているジヒドロキシプロピルトリアルキル塩化アンモニウムを含む四級トリアルキルアンモニウムハライド化合物が含まれる。特定の好ましい実施形態では、カチオン性ポリマーはカチオン変性ヒドロキシエチルセルロースであり、UCAREまたはSOFTCATの商品名でThe Dow Chemical Companyから市販されている。特定の実施形態では、ヘアケア組成物はカチオン性ポリマーを、組成物の重量に対して、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜20重量%、及びより好ましくは1.0〜3.0重量%の量で含む。
【0022】
特定の実施形態では、本発明のヘアケア組成物は皮膚軟化剤を含む。適切な皮膚軟化剤には、例えば、炭化水素油、エステル、天然油、脂肪酸、またはシリコーンが含まれる。適切なシリコーン及びシリコーン油には、例えば(室温で液体またはペースト状である)直鎖状または環状のシリコーン鎖を含む揮発性または不揮発性ポリメチルシロキサン(PDMS)、好ましくはシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン、例えばシクロペンタシロキサン及びシクロヘキサジメチルシロキサン)、(シリコーン鎖に懸垂しているかまたはシリコーン鎖の末端にあり、2〜24個の炭素原子を含む)アルキル、アルコキシ、またはフェニル基を含むポリジメチルシロキサン、フェニルシリコーン(例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチオン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン2−フェニルエチルトリメチルシロキシケイ酸、及びポリメチルフェニルシロキサン)、フルオロ油(例えば、部分的に炭化水素系及び/または部分的にシリコーン系フルオロ油、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。特定の好ましい実施形態では、皮膚軟化剤は、ジメチコン、ラウレス−23、及びDOW CORNING 2−1491 Silicone Emulsionの商品名でDow−Corningから市販されている(超高分子量ポリジメチルシロキサンガム及び中分子量ポリジメチルシロキサン流体のブレンドの60%大きい粒子サイズの非イオン性エマルジョンとしても記載されている)C12−15パレス−3のブレンドを含む。特定の実施形態では、ヘアケア組成物は、ヘアケア組成物の重量に対して0.1〜5重量%、好ましくは0.75〜3重量%、及びより好ましくは1〜2重量%の量で皮膚軟化剤を含む。
【0023】
特定の実施形態では、本発明のヘアケア組成物は界面活性剤を含む。適切な界面活性剤には、例えば、カチオン性、アニオン性、または両性の界面活性剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、界面活性剤は非イオン性/乳化剤界面活性剤である。特定の実施形態では、界面活性剤はカチオン性界面活性剤、好ましくはベヘントリモニウムクロリドである。このような実施形態では、界面活性剤は、組成物の重量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、及びより好ましくは1〜4重量%の量で存在してよい。特定の実施形態では、界面活性剤は洗浄用界面活性剤を含む。このような実施形態では、界面活性剤は、組成物の重量に対して1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%、及びより好ましくは7〜18重量%の量で存在する。好ましくは、洗浄用界面活性剤は、両性界面活性剤と組み合わせたアニオン性界面活性剤を含む。適切なアニオン性界面活性剤には、例えば、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、アニオン性界面活性剤は、組成物の重量に対して1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%、及びより好ましくは7〜15重量%の量で存在する。特定の実施形態では、混合物は、二ナトリウムココアンホジアセテート、デシルグルコシド、またはコカミドプロピルベタインのうちの少なくとも1つを含む、第2の界面活性剤と組み合わせたアニオン性界面活性剤である。特定の実施形態では、第2の界面活性剤は、組成物の重量に対して1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%、及びより好ましくは2〜6重量%の量で存在する。特定の好ましい実施形態では、界面活性剤は(STANDAPOL ESの商品名でCognisから市販されているなどの)ラウレス硫酸ナトリウム、及び(VELVETEX CDCの商品名でHenkelから市販されているなどの)二ナトリウムココアンホジアセテートの混合物である。界面活性剤がラウレス硫酸ナトリウム及び二ナトリウムココアンホジアセテートの混合物である特定の実施形態では、ラウレス硫酸ナトリウム対二ナトリウムココアンホジアセテートの比が、9:1〜2:1、好ましくは約6:1の範囲である。
【0024】
特定の実施形態では、本発明のヘアケア組成物はレオロジー変性剤を含む。適切なレオロジー変性剤には、例えば、変性または未変性カルボキシビニルポリマー(例えば、CARBOPOL及びPEMULENという名称で販売されている製品(INCI名:アクリレーツ/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー、Lubrizolから市販されている))、ポリアクリレート及びポリメタクリレート(例えば、(Guardianから市販されている)LUBRAJEL及びNORGELあるいは(Hispano Chimicaから市販されている)HISPAGELの名称で販売されている製品、または(The Dow Chemical Companyから市販されている)ACULYNレオロジー変性剤、ポリアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ポリマー及びClariantから販売されている(任意で架橋する及び/または中和する(例えばポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−スルホン酸)(INCI名:アンモニウムポリアクリルジメチルタウラミド))ポリマー、アクリルアミドの乳化架橋アニオン性ポリマー及びAMPS(例えばSEPIGEL 305の名称で販売されているもの(INCI名:ポリアクリルアミド/C13−14イソパラフィン/ラウレス−7、Seppic社製)及びSIMULGEL 600の名称で販売されているもの(INCI名:アクリルアミド/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80、Seppic社製))、多糖バイオポリマー(例えば、キサンタンガム、グアーガム、カロブガム、アカシアガム、スクレログルカン、キチン及びキトサン誘導体、カラゲナン、ゲル化剤、アルギナート、セルロース(例えば微結晶セルロース)、セルロース誘導体、会合性ポリマー(例えば会合性ポリウレタン)、6〜30個の炭素原子を含み、親水性配列で分離される少なくとも2つの炭化水素系親油性鎖を含むポリマー(例えば(Hus Americaから市販されている)SERAD FX1010、SERAD FX1100、及びSERAD FX1035の名称で販売されているポリウレタン)、RHEOLATE 255、RHEOLATE 278、及びRHEOLATE 244(INCI名:ポリエーテル−尿素−プロウレタン、Rheox社製)、(The Dow Chemical Companyから市販されている)DW 1206F、DW 1206J、DW 1206B、DW 1206G、及びACULYN 46))が含まれる。特定の実施形態では、ヘアケア組成物は、組成物の重量に対して0.05〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%、及びより好ましくは0.5〜2.0重量%の量でレオロジー変性剤を含む。
【0025】
特定の実施形態では、本発明のヘアケア組成物は化粧品活性物質、例えば追加のふけ防止活性物質を含む。適切な追加のふけ防止活性物質には、例えば、オクトピロックス(ピロクトンオラミン)、アゾール抗菌剤(例えばクリンバゾール)、セレン化合物(すなわち硫化セレン)、ピリチオン亜鉛(非改変)、サルチル酸、及びそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、ヘアケア組成物は、化粧品活性物質を0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、及びより好ましくは0.3〜1重量%の量で含む。
【0026】
本発明のヘアケア組成物は、皮膚科学的に許容される担体も含んでよい。このような物質は、皮膚に有意な刺激をもたらさず、組成物中の活性剤の活性及び特性を打ち消さない担体または希釈剤として典型的に特徴づけられる。本発明における有用な皮膚科学的に許容される担体の例には、脱イオン水または蒸留水などの水、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンなどのエマルジョン、エタノール、イソプロパノール等などのアルコール、アセトン、プロピレングリコール、グリセリン等などのグリコール、クリーム、水溶液、油、軟膏、ペースト、ゲル、ローション、乳液、発泡体、懸濁液、粉末、またはそれらの混合物が含まれ、限定されない。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づき、約99.99〜約50重量%の皮膚科学的に許容される担体を含む。
【0027】
特定の実施形態では、ヘアケア組成物は、例えば、湿潤剤、ワックス、感覚変性剤、防腐剤/抗酸化剤/キレート剤、還元剤、pH調節剤/緩衝剤/中和剤、サンスクリーン活性物質、ビタミン、タンパク質/アミノ酸、植物抽出物、天然成分、生物学的活性物質、芳香剤/香水、発泡剤、浸透剤、揮発性物質/推進剤/溶媒/担体、液体ビヒクル/溶媒/担体、塩、帯電防止剤、縮毛防止剤、ヘアウェーブ/縮毛矯正剤、吸収促進剤、着色剤、及び硬質粒子を含む他の任意成分を含む。このような成分によって提供される所望の特性を達成するために効果的な任意成分量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0028】
上述したように、本発明のヘアケア組成物は、組成物中に含まれる亜鉛塩の付着性が向上したため、髪を妨害しているふけのふけ防止添加剤として極めて効果的である。それらはヘアケア適用のための既知の添加剤よりも優れていないとしても、組成物の望ましい視覚外観(例えば真珠光沢効果)を阻害する欠点、または髪に付着後の滑らかさ/感覚の感触の乏しさの一因となることがなく、既知の添加剤に比肩するふけ防止特質を示す。したがって、本発明のヘアケア組成物は髪のふけ処理にとって有用である。このように一態様では、本発明は、本明細書に記載される亜鉛塩コーティングポリウレタン微粒子、及び少なくとも1つの化粧品として許容されるカチオン性ポリマー、皮膚軟化剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、または化粧品活性物質を含むヘアケア組成物を頭皮に適用することを含む、ふけを減少させるための方法に使用してよいヘアケア組成物を提供する。
【0029】
本発明の方法を実施するに際して、ヘアケア組成物は概して、組成物を髪に適用することによって局所的に施与される。当業者は、組成物を適用するべき頻度を容易に決定し得る。頻度は、例えば、個々人の特定の日に生じるふけの量及び/または個々人のふけに対する反応性に依存してよい。非限定的実施例として、少なくとも1日1回の頻度での施与が望ましいかもしれない。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を、ここで以下の実施例で詳細に記載する。
【実施例】
【0031】
実施例1
例示的なピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子の調製
本発明の例示的なピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子を、プレポリマー調製、ポリウレタン微小球懸濁液の調製、及び噴霧乾燥によるピリチオン亜鉛でのポリウレタン微粒子のコーティング、の3相で調製した。
【0032】
プレポリマー調製
Sigma−Aldrich社製PTMEG 2000(ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール)120gを120℃で1時間加熱し、次いで50℃に冷却した。Sigma−Aldrich社製IPDI(イソホロンジイソシアネート)45gをPTMEG溶液に加え、94℃で3.5時間加熱することによってプレポリマー原液を得た。反応プロセス全体にわたり、N下で系をパージした。滴定測定で、プレポリマー原液のNCO値は2〜8重量%であった。
【0033】
ポリウレタン微粒子懸濁液の調製
60gのプレポリマー溶液を、Sigma−Aldrichから市販されているPVA 2088(ポリビニルアルコール)240gの7重量%溶液に4℃で、2,000rpmで高速撹拌下滴下して加えた。プレポリマー溶液をPVAに加えた後、溶液をさらに30分間撹拌した。水性DETA(プレポリマー溶液の25重量%、NCO基に対して1.1xモル比)を懸濁液中に導入し、40分間連続して撹拌した。得られた懸濁液を洗浄し、遠心分離機にかけ、ポリウレタンスラリーを採取した。図1は、ポリウレタン粒子に残差のない−NCOが認められたことをIR分光法により示す。
【0034】
ピリチオン亜鉛でのポリウレタン微粒子のコーティング
Arch Personal Care Productsから市販されているピリチオン亜鉛(ZPT)懸濁液(亜鉛オマジンFPS、48%水性分散液)をポリウレタン(PU)スラリーと、ピリチオン亜鉛懸濁液対ポリウレタンスラリーの3つの異なる重量比、0.5:9.5、1.0:9.0、及び2.0:8.0で混合した。次に各混合物を水で希釈し、50x希釈複合粒子希釈液を作った。次に、各希釈液を噴霧乾燥し(空気吸入温度:110℃、空気速度:40、流速:10ml/分)、ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子(ZPU)を得た。
【0035】
実施例2
粒子形態評価
(ポリウレタンスラリーからの)ポリウレタン粒子の粒子形態、及び上記実施例1において調製されたようなピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン粒子の3つのバッチを、FEI Nova(商標)Nano SEM630を使用して走査電子顕微鏡(SEM)によって評価した。各試料のサイズ分布を、以下の表1にレポートする。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例3
ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子の表面分析
上記実施例1において調製されたようなZPU(1.0:9.0)粒子の表面の組成物を、エネルギー分散型X線分析(EDX)により分析した。図2に示したEDX元素分析は、粒子から観察されたZn及びS元素のピークを示す。マッピング技術により色強調表示された元素信号は微粒子表面から出た元素反応を示し、実質的に実施例1に従って調製されたZPU粒子は、ZPTでコーティングされたPUの混合微粒子であったことを確認した。
【0038】
実施例4
ヘアケアシャンプー組成物の調製
本発明の例示的なヘアケアシャンプーは、以下表2に記載する含有成分を含む。
【0039】
【表2】
【0040】
真珠光沢系シャンプーは、Moisture & Silkの商品名でLUXから市販されており、ラベル標示されている成分は、水、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、エチレングリコールジステアレート、ジメチコノール、アミノジメチルシリコーン、アミノ酸、アクリレートコポリマー、ココナッツ油モノエタノールアミン、グアーガム_2ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロピルエーテルクロライド、NaCl、クエン酸、EDTA、防腐剤である。
【0041】
ZPT粒子、PU粒子、及びZPU粒子を各自それぞれのベースシャンプー配合物に加え、350rpmで20分間撹拌した。
【0042】
実施例5
真珠光沢効果/視覚外観の評価
上記実施例1及び4において調製されたような、本発明のZPU粒子を含むシャンプーの視覚外観への効果を評価した。実施例4において調製した4つのヘアケア配合物の各自を、ガラスバイアルに密閉し、Nepheloskan分光計を使用して走査した。ピクセル分散向上技術を利用して、以下表3にレポートしたように試料の真珠光沢効果を示した。
【0043】
【表3】
【0044】
表3に示すように、ZPU2%を含む本発明の試料は、非常に良好な相対的真珠光沢度を示し、裸眼でも観察し得る。真珠光沢効果は、ZPT0.2%を含む試料に対しては大幅に減少した。これらの結果は、(非改変)ポリウレタン微粒子の有無にかかわらず、ピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子を含む本発明のヘアケア組成物をベースシャンプーに加えた場合、(非改変)ピリチオン亜鉛を含むベースシャンプーと比較して、真珠光沢効果の優れた残留性を提供することを示す。
【0045】
実施例6
触感の滑らかさ測定
上記実施例4において調製されたような試料C1(ベースシャンプー)、C4(ベースシャンプー+ZPT1%)、及びE1(ベースシャンプー+ZPU2%)の髪の触覚の滑らかさ(a)40℃の水で湿らせた後、髪に適用中(「湿潤摩擦試験」)、(b)40℃の水で30秒間シャンプー組成物を洗い流した後(「洗い流し試験」)、及び(c)洗い流した後、濡れた髪の櫛すきやすさ(「湿潤櫛すき試験」)を評価した。12人の参加者の髪を、各試験1(滑らかさに乏しい、を示している)から5(良好な滑らかさ、を示している)の尺度で、評価した。図3(a)は、3つの試験全てにおいて、本発明のピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子シャンプー組成物が、比較のピリチオン亜鉛(非改変)シャンプー組成物よりも劇的に良好に働いたことを示す。図3(b)は、3つの試験全てにおいて、ベースシャンプーに対して比較した場合、本発明のピリチオン亜鉛コーティングポリウレタン微粒子シャンプー組成物が好ましく働いたことを示す。
図1
図2
図3