特許第6605086号(P6605086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605086筒状品の射出成形金型及び筒状品の射出成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605086
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】筒状品の射出成形金型及び筒状品の射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20191031BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B29C45/37
   B29C45/00
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-137712(P2018-137712)
(22)【出願日】2018年7月23日
(62)【分割の表示】特願2014-144673(P2014-144673)の分割
【原出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-158590(P2018-158590A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧 健二朗
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−1514(JP,A)
【文献】 特開2011−156758(JP,A)
【文献】 特開2002−301742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 33/00 − 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維入りの溶融樹脂をゲートから第1金型と第2金型の突き合わせ面側に形成されたキャビティ内に射出することにより、前記キャビティ内で前記強化繊維入りの溶融樹脂が合流してウェルド部が形成される筒状品の射出成形金型において、
前記ウェルド部からずれた位置には、前記キャビティに開口する強化繊維配向変更用凹所が形成され、
前記強化繊維配向変更用凹所は、前記キャビティ内の前記強化繊維入りの溶融樹脂の一部を流入させて、前記ウェルド部の前記強化繊維の向きを乱すようになっており、前記第1金型と前記第2金型のいずれか一方に形成され、
前記強化繊維配向変更用凹所内で固まった強化繊維入り樹脂は、前記第1金型と前記第2金型との離型時に、前記第1金型と前記第2金型のいずれか一方と共に前記第1金型と前記第2金型のいずれか他方に対して相対移動し、前記第1金型と前記第2金型のいずれか他方に残留する前記筒状品から切り離される、
ことを特徴とする筒状品の射出成形金型。
【請求項2】
強化繊維入りの溶融樹脂をゲートから第1金型と第2金型の突き合わせ面側に形成されたキャビティ内に射出することにより、前記キャビティ内で前記強化繊維入りの溶融樹脂が合流してウェルド部が形成される筒状品の射出成形方法において、
前記ウェルド部からずれた位置には、前記キャビティに開口する強化繊維配向変更用凹所が形成され、
前記強化繊維配向変更用凹所は、前記キャビティ内の前記強化繊維入りの溶融樹脂の一部を流入させて、前記ウェルド部の前記強化繊維の向きを乱すようになっており、前記第1金型と前記第2金型のいずれか一方に形成され、
前記強化繊維配向変更用凹所内で固まった強化繊維入り樹脂は、前記第1金型と前記第2金型との離型時に、前記第1金型と前記第2金型のいずれか一方と共に前記第1金型と前記第2金型のいずれか他方に対して相対移動し、前記第1金型と前記第2金型のいずれか他方に残留する前記筒状品から切り離される、
ことを特徴とする筒状品の射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形によって生じるウェルド部の強度を向上させる繊維強化樹脂材料製筒状品の射出成形金型、及び射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図14に示すように、ピンポイントゲート100から金型101のキャビティ102内に溶融樹脂を射出し、キャビティ102の形状が転写された筒状品103(図15参照)を製造する射出成形方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3383971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図14及び図15に示すように、従来の射出成形方法は、溶融樹脂がピンポイントゲート100から金型101のキャビティ102内に射出されると、キャビティ102内で溶融樹脂が合流した部分にウェルド部104ができ、このウェルド部104が筒状品103の強度を低下させるという問題が指摘されている。とりわけ、繊維強化樹脂材料を使用して射出成形された筒状品103は、ウェルド部104の強化繊維105が一方向(溶融樹脂の流れる方向)に揃ってしまうため(図16参照)、軸に圧入するとウェルド部104において割れを生じやすいという問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、ウェルド部の強度を向上させた筒状品の射出成形金型及び筒状品の射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、強化繊維25入りの溶融樹脂をゲート11から第1金型3と第2金型4の突き合わせ面3a,4a側に形成されたキャビティ5内に射出することにより、前記キャビティ5内で前記強化繊維25入りの溶融樹脂が合流してウェルド部24が形成される筒状品1の射出成形金型2に関するものである。この発明において、前記ウェルド部24からずれた位置には、前記キャビティ5に開口する強化繊維配向変更用凹所20が形成されている。前記強化繊維配向変更用凹所20は、前記キャビティ5内の前記強化繊維25入りの溶融樹脂の一部を流入させて、前記ウェルド部24の前記強化繊維25の向きを乱すようになっており、前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか一方に形成されている。また、前記強化繊維配向変更用凹所20内で固まった強化繊維25入り樹脂は、前記第1金型3と前記第2金型4との離型時に、前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか一方と共に前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか他方に対して相対移動し、前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか他方に残留する前記筒状品1から切り離される。
【0007】
本発明は、強化繊維25入りの溶融樹脂をゲート11から第1金型3と第2金型4の突き合わせ面3a,4a側に形成されたキャビティ5内に射出することにより、前記キャビティ5内で前記強化繊維25入りの溶融樹脂が合流してウェルド部24が形成される筒状品1の射出成形方法に関するものである。この発明において、前記ウェルド部24からずれた位置には、前記キャビティ5に開口する強化繊維配向変更用凹所20が形成されている。前記強化繊維配向変更用凹所20は、前記キャビティ5内の前記強化繊維25入りの溶融樹脂の一部を流入させて、前記ウェルド部24の前記強化繊維25の向きを乱すようになっており、前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか一方に形成されている。また、前記強化繊維配向変更用凹所20内で固まった強化繊維25入り樹脂は、前記第1金型3と前記第2金型4との離型時に、前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか一方と共に前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか他方に対して相対移動し、前記第1金型3と前記第2金型4のいずれか他方に残留する前記筒状品1から切り離される
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、射出成形された筒状品におけるウェルド部及びウェルド部近傍の強化繊維の向きが乱され、筒状品のウェルド部及びウェルド部近傍の強化繊維が絡み合うため、筒状品のウェルド部が目立ち難くなると共に、筒状品のウェルド部の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る筒状品の射出成形金型の構造を示す図である。図1(a)が図1(b)に示す射出成形金型をA1−A1線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図1(b)が射出成形金型の縦断面図(図1(a)のA2−A2線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図2】本発明の第1実施形態に係る筒状品を示す図である。図2(a)が筒状品の正面図であり、図2(b)が図2(a)の矢印C1に沿った方向から見た筒状品の側面図であり、図2(c)が図2(a)のA3−A3線に沿って切断して示す筒状品の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形金型における強化繊維配向変更用凹所と強化繊維の向きとの関係を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る筒状品の射出成形金型の構造を示す図である。図4(a)が図4(b)に示す射出成形金型をA4−A4線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図4(b)が射出成形金型の縦断面図(図4(a)のA5−A5線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図5】本発明の第2実施形態に係る筒状品を示す図である。図5(a)が筒状品の正面図であり、図5(b)が図5(a)の矢印C2に沿った方向から見た筒状品の側面図であり、図5(c)が図5(a)のA6−A6線に沿って切断して示す筒状品の断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る筒状品における溶融樹脂導入路の切り離し痕と強化繊維の向きとの関係を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る筒状品の射出成形金型の構造を示す図である。図7(a)が図7(b)に示す射出成形金型をA7−A7線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図7(b)が射出成形金型の縦断面図(図7(a)のA8−A8線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図8】本発明の第3実施形態に係る筒状品を示す図である。図8(a)が筒状品の正面図であり、図8(b)が図8(a)の矢印C3に沿った方向から見た筒状品の側面図であり、図8(c)が図8(a)のA9−A9線に沿って切断して示す筒状品の断面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る筒状品の射出成形金型の構造を示す図である。図9(a)が図9(b)に示す射出成形金型をA10−A10線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図9(b)が射出成形金型の縦断面図(図9(a)のA11−A11線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図10】本発明の第4実施形態に係る筒状品を示す図である。図10(a)が筒状品の正面図であり、図10(b)が図10(a)の矢印C4に沿った方向から見た筒状品の側面図であり、図10(c)が図10(a)のA12−A12線に沿って切断して示す筒状品の断面図である。
図11図1に示した射出成形金型のピンポイントゲートをサイドゲートに変更した構造を示す図である。図11(a)が図11(b)に示す射出成形金型をA13−A13線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図11(b)が射出成形金型の縦断面図(図11(a)のA14−A14線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図12図1に示した射出成形金型のピンポイントゲートをトンネルゲートに変更した構造を示す図である。図12(a)が図12(b)に示す射出成形金型をA15−A15線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図12(b)が射出成形金型の縦断面図(図12(a)のA16−A16線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図13図1に示した射出成形金型の一点ゲートを多点ゲートに変更した構造を示す図である。図13(a)が図13(b)に示す射出成形金型をA17−A17線に沿って切断して示す図(第2金型の平面図)であり、図13(b)が射出成形金型の縦断面図(図13(a)のA18−A18線に沿って切断して示す射出成形金型の断面図)である。
図14】従来例に係る筒状品の射出成形金型の構造を示す図である。
図15】従来例に係る筒状品の外観斜視図である。
図16】従来例に係る筒状品のウェルド部及びその近傍における強化繊維の配向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0012】
[第1実施形態]
(筒状品の射出成形金型)
図1は、本発明の第1実施形態に係る筒状品1の射出成形金型2の構造を示す図である。なお、図1(a)が図1(b)に示す射出成形金型2をA1−A1線に沿って切断して示す図(第2金型4の平面図)であり、図1(b)が射出成形金型2の縦断面図(図1(a)のA2−A2線に沿って切断して示す射出成形金型2の断面図)である。
【0013】
図1に示すように、射出成形金型2は、第1金型3と第2金型4の突き合わせ面3a,4a側にキャビティ5が形成されている。キャビティ5は、図2に示す繊維強化樹脂材料製筒状品1(以下、筒状品と略称する)を形作る形状になっており、強化繊維入りの溶融樹脂が充填されるようになっている。筒状品1は、図2に示すように、円筒部6と、この円筒部6の一端側に一体に形成された中空円板部7と、を有している。そして、この筒状品1を形作るキャビティ5は、円筒部6を形作る第1キャビティ部8と、第1キャビティ部8の一端側に位置して中空円板部7を形作る第2キャビティ部10と、を有している。このキャビティ5は、第2金型4に形成されており、開口端が第1金型3によって塞がれるようになっている。なお、強化繊維入りの溶融樹脂は、PA66−GF30(30%ガラスファイバー入りナイロン66)、PA6−GF20(20%ガラスファイバー入りナイロン6)、PPS−GF40(40%ガラスファイバー入りポリフェニレンサルファイド)、POM−GF25(25%ガラスファイバー入りポリアセタール)等が使用される。
【0014】
第1金型3は、第2金型4に形成された第2キャビティ部10に開口するゲート11(ピンポイントゲート)が形成されている。第2金型4は、第1キャビティ部8の内周面側に位置する内型部12と、第1キャビティ部8の外周面側に位置する外型部13と、を有している。また、第2金型4は、円筒状のエジェクトスリーブ14が内型部12と外型部13との間にスライド移動できるように収容されている。なお、エジェクトスリーブ14は、その先端が第1キャビティ部8の他端に位置し、第1金型3と第2金型4とが分離した後に図中左側へスライド移動させられ、射出成形後に冷めて固まった筒状品1をキャビティ5から押し出すようになっている。
【0015】
第2金型4の内型部12は、先端12aが第1金型3と第2金型4のパーティングライン(P.L.)15よりも引っ込んで位置しており、先端12aが第2キャビティ部10の底面になっている。また、内型部12の中央には、内型部12の中心軸16に沿って延びる軸型17が収容されている。軸型17は、丸棒状に形成されており、先端17aが第1金型3の突き合わせ面3aに突き当てられ、第2キャビティ部10内に位置する部分が筒状品1の中空円板部7の中央穴18を形成するようになっている。
【0016】
第2金型4の外型部13は、第1キャビティ部8に連通する強化繊維配向変更用凹所20が形成されている。この強化繊維配向変更用凹所20は、第1キャビティ部8の他端側に接続される溶融樹脂導入路21と、この溶融樹脂導入路21を介して第1キャビティ部8に連通する溶融樹脂収容室22と、を有している。溶融樹脂導入路21は、第1キャビティ部8への開口面積がゲート11の第2キャビティ部10への開口面積と同程度の大きさに形成される。また、この溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8側の開口部23は、図1(a)に示すように、内型部12の中心軸16を中心としてゲート11に対向する位置から更に時計回り方向に角度θ分だけ回転した位置(180°+θ分だけ時計回り方向に回転した位置)に配置されている。その結果、溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8側の開口部23は、ゲート11からキャビティ5内に射出された強化繊維入りの溶融樹脂が合流するウェルド部24からずれて位置することになる。そして、キャビティ5内に充填された強化繊維25入りの溶融樹脂の一部は、溶融樹脂導入路21から溶融樹脂収容室22内に流入させられ、ウェルド部24の強化繊維25の向きが乱される(図3参照)。これにより、キャビティ5内のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が複雑に絡み合い、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強度が向上する(図3参照)。強化繊維配向変更用凹所20の容積は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きを乱すことができるだけの強化繊維入りの溶融樹脂量を収容できる大きさに決定される。なお、溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8側の開口部23は、内型部12の中心軸16を中心としてゲート11に対向する位置から反時計回り方向に角度θ分だけ回転した位置に配置してもよい。また、角度θは、キャビティ5の容量、第1キャビティ部8の外径寸法等に応じて最適の角度に設定される。また、溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8への開口面積は、キャビティ5内に強化繊維入りの溶融樹脂が充填された後、キャビティ5内の強化繊維入りの溶融樹脂が流入するのを可能にする大きさになっていればよい。すなわち、溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8への開口面積がゲート11のキャビティ5への開口面積よりも大きい場合と、溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8への開口面積がゲート11のキャビティ5への開口面積と等しい場合と、溶融樹脂導入路21の第1キャビティ部8への開口面積がゲート11のキャビティ5への開口面積よりも小さい場合とが考えられる。また、溶融樹脂導入路21は、第1キャビティ部8の他端側に開口する場合を例示したが、これに限られず、第1キャビティ部8の一端側に配置するか、又は一端側と他端側との間に配置してもよい。
【0017】
また、強化繊維配向変更用凹所20は、内型部12の中心軸16と溶融樹脂導入路21の中心線26とのなす角をα1とし、内型部12の中心軸16に対する溶融樹脂収容室22の開き角をα2とすると、α2がα1と等しいか又は大きくなるように(α2≧α1となるように)形成されている。また、溶融樹脂収容室22は、第1キャビティ部8に近接する稜線27が内型部12の中心軸16と平行になるように形成され、底部28から第2金型4の突き合わせ面4aへ向かうにしたがって拡開する断面形状(台形形状の断面形状)になっており(図1(b)参照)、平面視した形状が楕円形状になっている(図1(a)参照)。溶融樹脂導入路21は、中心線26に直交する断面形状が円形形状であり、第1キャビティ部8側から溶融樹脂収容室22側へ向かうにしたがって穴径が漸増するテーパ穴である。
【0018】
強化繊維配向変更用凹所20内の強化繊維入り溶融樹脂は、筒状品1の射出成形後に冷えて固まり、第1金型3と第2金型4が分離され、キャビティ5内の筒状品1がエジェクトスリーブ14によって押し出されると、筒状品1と溶融樹脂導入路21内の樹脂とが切断され、その後に、時差突き出しピン30によって第2金型4の強化繊維配向変更用凹所20内から第2金型4の外部に押し出される。この際、溶融樹脂導入路21内で固まった強化繊維入り樹脂は、時差突き出しピン30によって溶融樹脂収容室22内で固まった強化繊維入り樹脂が押されると、Y軸方向へ沿ってスライドしながらZ軸方向に沿って移動し、溶融樹脂導入路21内から溶融樹脂収容室22内へ抜け出る。これにより、強化繊維配向変更用凹所20内で固まった強化繊維入り樹脂は、時差突き出しピン30によって強化繊維配向変更用凹所20内から第2金型4の外部に無理なく押し出される。
【0019】
以上のような本実施形態に係る射出成形金型2によれば、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され(図3参照)、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため、筒状品1のウェルド部24が目立ち難くなると共に、筒状品1のウェルド部24の強度が向上する。
【0020】
(筒状品の射出成形方法)
以下、図1に示す射出成形金型2を使用した筒状品1の射出成形方法を説明する。
【0021】
先ず、第1金型3の突き合わせ面3aと第2金型4の突き合わせ面4aを突き合わせて型締めし、強化繊維入りの溶融樹脂を第1金型3のゲート11からキャビティ5内に射出する。この際、ゲート11からキャビティ5内に射出された溶融樹脂がゲート11から周方向に180°回転した位置で合流し、その強化繊維入りの溶融樹脂が合流する部分にウェルド部(ウェルドライン)24が形成される。
【0022】
強化繊維入りの溶融樹脂がキャビティ5内の全域に充填されると、キャビティ5内の強化繊維入りの溶融樹脂に作用する射出圧力によってキャビティ5内の一部(ウェルド部24及びウェルド部24近傍)の強化繊維入りの溶融樹脂がウェルド部24からずれて位置する溶融樹脂導入路21及び溶融樹脂収容室22内へ押し出される。これにより、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、キャビティ5内のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合う(図3参照)。
【0023】
キャビティ5内及び強化繊維配向変更用凹所20内の強化繊維入りの溶融樹脂が冷えて固まった後、第1金型3と第2金型4とを分離する(型開きする)。この際、第2金型4側のキャビティ5内の筒状品(射出成形品)1と第1金型3側のゲート11とが分離され、ゲート11の切り離し痕31が筒状品1の中空円板部7の外表面に形成される(図2(a)参照)。
【0024】
次に、キャビティ5内の筒状品1をエジェクトスリーブ14でキャビティ5の外に押し出す。この際、溶融樹脂導入路21内の固まった強化繊維入りの溶融樹脂と筒状品1とが切り離され、筒状品1の円筒部6の外表面に溶融樹脂導入路21の切り離し痕32が形成される(図2(b)参照)。
【0025】
次に、時差突き出しピン30がエジェクトスリーブ14よりも遅れて作動し、強化繊維配向変更用凹所20内で固まった強化繊維入りの樹脂を時差突き出しピン30が強化繊維配向変更用凹所20内から押し出す。
【0026】
以上のような本実施形態に係る射出成形方法によれば、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図3参照)、筒状品1のウェルド部24が目立ち難くなると共に、筒状品1のウェルド部24の強度が向上する。
【0027】
(筒状品)
図2に示す本実施形態に係る筒状品1は、上述した射出成形金型2を使用し、上述した射出成形方法によって形成されている。この筒状品1は、円筒部6と、この円筒部6の一端側に一体に形成された中空円板部7と、を有している。そして、筒状品1の一端側の中空円板部7には、ゲート11の切り離し痕31が形成されている。また、筒状品1の円筒部6の他端側には、溶融樹脂導入路21の切り離し痕32がウェルド部24からずれた位置に形成されている。そして、筒状品1は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が溶融樹脂導入路21の切り離し痕31に向かう方向へ向きを変え、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が複雑に絡み合っている。
【0028】
このような本実施形態に係る筒状品1は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図3参照)、ウェルド部24が目立ち難くなると共に、ウェルド部24の強度が向上する。
【0029】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る筒状品1の射出成形金型2を示す図であり、第1実施形態に係る射出成形金型2の変形例を示す図である。なお、図4(a)が図4(b)に示す射出成形金型2をA4−A4線に沿って切断して示す図(第2金型4の平面図)であり、図4(b)が射出成形金型2の縦断面図(図4(a)のA5−A5線に沿って切断して示す射出成形金型2の断面図)である。
【0030】
本実施形態に係る射出成形金型2は、強化繊維配向変更用凹所20の位置、及び強化繊維配向変更用凹所20の形状が第1実施形態に係る射出成形金型2と相違するが、他の基本的構成が第1実施形態に係る射出成形金型2と同様であるため、第1実施形態に係る射出成形金型2に対応する構成部分に第1実施形態に係る射出成形金型2と同一符号を付し、第1実施形態の説明と重複する説明を省略する。
【0031】
第1金型3に形成されたゲート11は、第1実施形態に係る射出成形金型1のゲート11と同様に、第2金型4に形成された第2キャビティ部10に開口している。また、強化繊維配向変更用凹所20は、第1キャビティ部8の一端側に接続される溶融樹脂導入路33と、この溶融樹脂導入路33を介して第1キャビティ部8に連通する溶融樹脂収容室34と、を有している。溶融樹脂導入路33は、ヘジテーション効果を得るため、第1キャビティ部8への開口面積がゲート11の第1キャビティ部8への開口面積よりも小さく形成される。
【0032】
また、この溶融樹脂導入路33の第1キャビティ部8側の開口部35は、図4(a)に示すように、内型部12の中心軸16を中心としてゲート11に対向する位置から更に時計回り方向に角度θ分だけ回転した位置(180°+θ分だけ時計回り方向に回転した位置)に配置されている。その結果、溶融樹脂導入路33の第1キャビティ部8側の開口部35は、ゲート11からキャビティ5内に射出された強化繊維入りの溶融樹脂が合流するウェルド部24からずれて位置することになる。そして、キャビティ5内に充填された強化繊維入りの溶融樹脂の一部は、溶融樹脂導入路33から溶融樹脂収容室34内に流入させられ、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱される(図6参照)。これにより、キャビティ5内のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が複雑に絡み合い、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強度が向上する。ここで、強化繊維配向変更用凹所20の容積は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きを乱すことができるだけの強化繊維入りの溶融樹脂量を収容できる大きさに決定されている。なお、本実施形態に係る強化繊維配向変更用凹所20は、第1実施形態に係る射出成形金型2の強化繊維配向変更用凹所20の容積とほぼ同様の容積となるように形成されている。また、溶融樹脂導入路33の第1キャビティ部8側の開口部35は、内型部12の中心軸16を中心としてゲート11に対向する位置から反時計回り方向に角度θ分だけ回転した位置(180°−θ分だけ時計回り方向に回転した位置)に配置してもよい。また、角度θは、キャビティ5の容量、第1キャビティ部8の外径寸法等に応じて最適の角度に設定される。
【0033】
本実施形態に係る射出成形金型2は、第1金型3と第2金型4が型締めされた状態において(図4に示す状態において)、強化繊維入りの溶融樹脂がゲート11からキャビティ5内に射出されると、ゲート11のキャビティ5への開口位置から周方向へ180°離れた位置で強化繊維入りの溶融樹脂が合流し、この強化繊維入りの溶融樹脂の合流部にウェルド部24(ウェルドライン)が形成される(図6参照)。そして、強化繊維入りの溶融樹脂がキャビティ5内を満たすと、キャビティ5内の一部の強化繊維入りの溶融樹脂がキャビティ5内に作用する射出圧力によって溶融樹脂導入路33及び溶融樹脂収容室34内へ押し出され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合う(図6参照)。
【0034】
キャビティ5内及び強化繊維配向変更用凹所20内の強化繊維入りの溶融樹脂が冷えて固まった後、第1金型3と第2金型4とが分離される(型開きされる)。この際、キャビティ5内の筒状品1(射出成形品)からゲート11及び溶融樹脂導入路33が切り離され、キャビティ5内の筒状品1にはゲート11の切り離し痕31と溶融樹脂導入路33の切り離し痕36が形成される。
【0035】
次に、キャビティ5内の筒状品1は、エジェクトスリーブ14によってキャビティ5の外部に押し出される。このようにして、図5に示す筒状品1が形成される。
【0036】
以上のような本実施形態に係る射出成形金型2によれば、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図6参照)、筒状品1のウェルド部24が目立ち難くなると共に、筒状品1のウェルド部24の強度が向上する。
【0037】
また、本実施形態に係る射出成形方法によれば、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図6参照)、筒状品1のウェルド部24が目立ち難くなると共に、筒状品1のウェルド部24の強度が向上する。
【0038】
また、本実施形態に係る筒状品1は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図6参照)、ウェルド部24が目立ち難くなると共に、ウェルド部24の強度が向上する。
【0039】
なお、本実施形態に係る射出成形金型2において、溶融樹脂導入路33の第1キャビティ部8への開口面積がゲート11の第1キャビティ部8への開口面積よりも小さく形成される態様を例示したが、これに限られず、強化繊維25入り溶融樹脂がキャビティ5に充填された後に、キャビティ5内の強化繊維25入り溶融樹脂の一部が強化繊維配向変更用凹所20内に押し出され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱されるようになっていれば、溶融樹脂導入路33の第1キャビティ部8への開口面積がゲート11の第1キャビティ部8への開口面積と等しいか又は大きく形成されてもよい。
【0040】
[第3実施形態]
図7は、本発明の第3実施形態に係る筒状品1の射出成形金型2を示す図であり、第1実施形態に係る射出成形金型2の変形例を示す図である。なお、図7(a)が図7(b)に示す射出成形金型をA7−A7線に沿って切断して示す図(第2金型4の平面図)であり、図7(b)が射出成形金型2の縦断面図(図7(a)のA8−A8線に沿って切断して示す射出成形金型2の断面図)である。
【0041】
本実施形態に係る射出成形金型2は、キャビティ5の形状及びゲート11の位置が第1実施形態に係る射出成形金型2と相違するが、他の基本的構成が第1実施形態に係る射出成形金型2と同様であるため、第1実施形態に係る射出成形金型2に対応する構成部分に第1実施形態に係る射出成形金型2と同一符号を付し、第1実施形態の説明と重複する説明を省略する。
【0042】
図7に示すように、射出成形金型2は、射出成形する筒状品1が円筒形状であり、筒状品1が中空円板部を備えていないため(図8参照)、第1実施形態に係る射出成形金型2の第2キャビティ部10が設けられておらず、キャビティ5が第1実施形態に係る射出成形金型2の第1キャビティ部8に対応する部分のみからなっている。そして、第1金型3には、ゲート11がキャビティ5の一端側に開口するように形成されている。
【0043】
また、第2金型4に形成された強化繊維配向変更用凹所20の溶融樹脂導入路21は、第1実施形態に係る射出成形金型2と同様に、内型部12の中心軸16を中心としてゲート11に対向する位置から更に時計回り方向に角度θ分だけ回転した位置(180°+θ分だけ時計回り方向に回転した位置)に配置されている。その結果、溶融樹脂導入路21のキャビティ5側の開口部23は、ゲート11からキャビティ5内に射出された強化繊維入りの溶融樹脂が合流するウェルド部24からずれて位置することになる。そして、キャビティ5内に充填された強化繊維入りの溶融樹脂の一部は、溶融樹脂導入路21から溶融樹脂収容室22内に流入させられ、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱される(図3参照)。これにより、キャビティ5内のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が複雑に絡み合い、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強度が向上する。なお、溶融樹脂導入路21は、キャビティ5の他端側に開口する場合を例示したが、これに限られず、キャビティ5の一端側又は一端側と他端側との間に配置してもよい。
【0044】
以上のような本実施形態に係る射出成形金型2によれば、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図3参照)、筒状品1のウェルド部24が目立ち難くなると共に、筒状品1のウェルド部24の強度が向上する。
【0045】
また、本実施形態に係る射出成形方法は、使用する射出成形金型2が第1実施形態に係る射出成形金型2と僅かに相違するものの、第1実施形態に係る射出成形方法と同様である。したがって、本実施形態に係る射出成形方法によれば、第1実施形態に係る射出成形方法と同様の効果を得ることができる。
【0046】
図8は、本実施形態に係る射出成形金型2によって射出成形された筒状品1を示す図である。なお、図8(a)が筒状品1の正面図であり、図8(b)が図8(a)の矢印C3方向から見た筒状品1の側面図であり、図8(c)が図8(a)のA9−A9線に沿って切断して示す筒状品1の断面図である。
【0047】
図8に示すように、筒状品1の一端側の端面37には、ゲート11の切り離し痕31が形成されている。また、筒状品1の他端側の外周面38には、溶融樹脂導入路21の切り離し痕32がウェルド部24からずれた位置に形成されている。そして、筒状品1は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が溶融樹脂導入路21の切り離し痕32に向かう方向へ向きを変え、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が複雑に絡み合っている。
【0048】
このような本実施形態に係る筒状品1は、第1実施形態に係る筒状品1と同様に、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図3参照)、ウェルド部24が目立ち難くなると共に、ウェルド部24の強度が向上する。
【0049】
[第4実施形態]
図9は、本発明の第4実施形態に係る筒状品1の射出成形金型2を示す図であり、第2実施形態に係る射出成形金型2の変形例を示す図である。なお、図9(a)が図9(b)に示す射出成形金型2のA10−A10線に沿って切断して示す図(第2金型4の平面図)であり、図9(b)が射出成形金型2の縦断面図(図9(a)のA11−A11線に沿って切断して示す射出成形金型2の断面図)である。
【0050】
本実施形態に係る射出成形金型2は、キャビティ5の形状が第2実施形態に係る射出成形金型2と相違するが、他の基本的構成が第2実施形態に係る射出成形金型2と同様であるため、第2実施形態に係る射出成形金型2に対応する構成部分に第2実施形態に係る射出成形金型2と同一符号を付し、第2実施形態の説明と重複する説明を省略する。
【0051】
図9に示すように、射出成形金型2は、射出成形する筒状品1が円筒形状であり、筒状品1が中空円板部を備えていないため(図10参照)、第2実施形態に係る射出成形金型2の第2キャビティ部10が設けられておらず、キャビティ5が第2実施形態に係る射出成形金型2の第1キャビティ部8に対応する部分のみからなっている。そして、第1金型3には、ゲート11がキャビティ5の一端側に開口するように形成されている。
【0052】
また、第1金型3に形成された強化繊維配向変更用凹所20の溶融樹脂導入路33は、第2実施形態に係る射出成形金型2と同様に、内型部12の中心軸16を中心としてゲート11に対向する位置から更に時計回り方向に角度θ分だけ回転した位置(180°+θ分だけ時計回り方向に回転した位置)に配置されている。その結果、溶融樹脂導入路33のキャビティ5側の開口部35は、ゲート11からキャビティ5内に射出された強化繊維入りの溶融樹脂が合流するウェルド部24からずれて位置することになる。そして、キャビティ5内に充填された強化繊維入りの溶融樹脂の一部は、溶融樹脂導入路33から溶融樹脂収容室34内に流入させられ、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱される(図6参照)。これにより、キャビティ5内のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が複雑に絡み合い、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強度が向上する。
【0053】
以上のような本実施形態に係る射出成形金型2によれば、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、筒状品1のウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図6参照)、筒状品1のウェルド部24が目立ち難くなると共に、筒状品1のウェルド部24の強度が向上する。
【0054】
また、本実施形態に係る射出成形方法は、使用する射出成形金型2が第2実施形態に係る射出成形金型2と僅かに相違するものの、第2実施形態に係る射出成形方法と同様である。したがって、本実施形態に係る射出成形方法によれば、第2実施形態に係る射出成形方法と同様の効果を得ることができる
【0055】
図10は、本実施形態に係る射出成形金型2によって射出成形された筒状品1を示す図である。なお、図10(a)が筒状品1の正面図であり、図10(b)が図10(a)の矢印C4方向から見た筒状品1の側面図であり、図10(c)が図10(a)のA12−A12線に沿って切断して示す筒状品1の断面図である。
【0056】
図10に示すように、筒状品1の一端側の端面37には、ゲート11の切り離し痕31が形成されている。また、筒状品1の一端側の端面37で且つゲート11の切り離し痕31から中心軸1aの周りに180°+θ分だけ時計回り方向に沿って回転させた位置には、溶融樹脂導入路33の切り離し痕36がウェルド部24からずれて形成されている。そして、筒状品1は、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が溶融樹脂導入路33の切り離し痕36に向かう方向へ向きを変え、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維が絡み合っている(図6参照)。
【0057】
このような本実施形態に係る筒状品1は、第2実施形態に係る筒状品1と同様に、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25の向きが乱され、ウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維25が絡み合うため(図6参照)、ウェルド部24が目立ち難くなると共に、ウェルド部24の強度が向上する。
【0058】
[その他の実施形態]
強化繊維配向変更用凹所20は、上記第1乃至第4実施形態に係る射出成形金型2の位置に限られず、射出成形された筒状品1におけるウェルド部24及びウェルド部24近傍の強化繊維の向きを乱し、筒状品1のウェルド部24の強度を向上させることができる限り、中心軸16に沿った方向のいずれの位置に配置してもよい。
【0059】
また、上記第1乃至第2実施形態において、筒状品1の円筒部6の肉厚及び中空円板部7の肉厚を一様した態様を例示したが、筒状品1の円筒部6の肉厚及び中空円板部7の肉厚を変化させてもよい。また、上記第3乃至第4実施形態において、筒状品1の肉厚を一様にした態様を例示したが、筒状品1の肉厚を変化させてもよい。
【0060】
また、上記各実施形態において、ゲート11は、ピンポイントゲートを例示したが、これに限られず、キャビティ5内で強化繊維入りの溶融樹脂が合流してウェルド部を生じさせるサイドゲート(図11参照)やトンネルゲート(図12参照)等の適用が考えられる。なお、図11及び図12に示す射出成形金型2は、図1に示した第1実施形態に係る射出成形金型2の変形例であり、第1実施形態に係る射出成形金型2と共通する構成部分に同一符号を付し、第1実施形態に係る射出成形金型2の説明と重複する説明を省略する。
【0061】
また、上記各実施形態において、ゲート11は、一つのキャビティ5に対して一箇所のみ設ける態様を例示したが、これに限られず、一つのキャビティ5に対して複数箇所設けるようにしてもよい(図13参照)。また、強化繊維配向変更用凹所20は、図13に示すように、ゲート11と同数設けられる。すなわち、強化繊維配向変更用凹所20は、ゲート11がY軸に沿った直線で且つ中心軸16を通る直線上に一対配置される場合、X軸に沿った直線で且つ中心軸16を通る直線に対して反時計回り方向へ所定角度(θ)だけずらして一対配置される。そして、図13(a)に示すように、一対のゲート11,11は、中心軸16を中心とした点対称になっている。また、図13(a)に示すように、一対の強化繊維配向変更用凹所20は、中心軸16を中心とした点対称になっている。なお、一対の強化繊維配向変更用凹所20は、X軸に沿った直線で且つ中心軸16を通る直線に対して時計回り方向へ所定角度(θ)だけずらして配置してもよい。また、図13(a)において、ウェルド部は、一対のゲート11,11からキャビティ5内に射出された強化繊維入りの溶融樹脂が合流する部分(X軸に沿った直線で且つ中心軸16を通る直線上の部分)に形成される。また、図13に示す射出成形金型2は、二点ゲートを例示したが、これに限られず、三点ゲート以上の多点ゲートを設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1……筒状品、2……射出成形金型、5……キャビティ、11……ゲート、20……強化繊維配向変更用凹所、24……ウェルド部、25……強化繊維
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16