(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センサー基材は、シクロオレフィン・ポリマー(COP)、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)の少なくとも1種で形成されている請求項1記載のセンサーユニット。
前記フレキシブル配線基板のうちの、前記対向縁部の延びる方向の両側に位置する基板両端部が、前記センサー基材と前記透光基材との間に挟まれている請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサーユニット。
前記開口部は、周囲が内縁部で囲まれた少なくとも1つの穴であり、前記穴が、前記表示領域と前記配線領域との境界線と、前記透光基材の縁部との間に位置している請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサーユニット。
請求項1ないし8のいずれかに記載のセンサーユニットが設けられ、前記透光基材の表面側に透光性のパネル部材が接合されて、前記パネル部材の表面が操作面となっていることを特徴とする入力装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された一体型タッチ偏光板では、伝導性フィルムと偏光板とを光学接着剤を介して貼り合わせるときに、伝導性フィルムと偏光板との間に挟まれるフレキシブル配線基板の厚さを、光学接着剤の厚さで吸収しきれず、フレキシブル配線基板の縁部に小さな空隙が残る現象が生じやすい。
【0006】
一体型タッチ偏光板は、伝導性フィルムの下側に液晶表示パネルが設けられ、伝導性フィルムの中央部分が表示領域となって、液晶表示パネルの表示を透視できるようになっている。ここで、前記空隙が伝導性フィルムの前記表示領域に及ぶことがあると、表示領域で透視される画像の表示品質に影響を与えることになる。そのため、フレキシブル配線基板の縁部を表示領域から離すことが必要になり、表示領域の側方に、フレキシブル配線基板を接合するための配線領域を広く確保しなくてはならなくなる。
【0007】
また、前記気泡の発生を避けるために、偏光板に凹部などの開口部を形成し、この開口部の内部において、伝導性フィルムにフレキシブル配線基板を接合することが考えられる。しかし、この構造では、伝導性フィルムと偏光板との積層部分ではなく、伝導性フィルムの単体部分にフレキシブル配線基板が接合されるため、フレキシブル配線基板の引出し部が曲げられたときに、フレキシブル配線基板が接合されている部分の伝導性フィルムに大きな曲げが発生することになる。
【0008】
伝導性フィルムとして、シクロオレフィン系フィルムなどの脆い材料が使用されているときには、フレキシブル配線基板を曲げたときに、フレキシブル配線基板が接合されている部分の伝導性フィルムに作用する曲げ応力によって、シクロオレフィン系フィルムなどが破損するおそれがある。
【0009】
また、伝導性フィルムとしてPETなど比較的強度が高いフィルムを使用した場合であっても、PETフィルムの単体部分にフレキシブル配線基板が接合されていると、フレキシブル配線基板の引出し部が曲げられたときに、PETフィルムに大きな曲げが発生し、これが、PETフィルムである伝導性フィルムと偏光板との剥がれの原因になることもある。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、フレキシブル配線基板を曲げたときに、センサー基材に大きな曲げ応力が作用するのを防止することができるセンサーユニットとそのセンサーユニットを備えた入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透光性のセンサー基材と、前記センサー基材の前方に接着された透光基材とを有するセンサーユニットにおいて、
前記センサー基材は、透光性の電極層が形成された表示領域と、前記表示領域よりも前記センサー基材の縁部側に位置して前記電極層から延びる配線層が形成された配線領域とを有し、前記配線領域において前記センサー基材にフレキシブル配線基板が接合されて、前記フレキシブル配線基板に設けられた導電層が前記配線層に導通しており、
前記透光基材の前記配線領域に対応する領域に開口部が形成され、前記フレキシブル配線基板の一部が前記センサー基材と前記透光基材との間に挟まれて、前記フレキシブル配線基板の縁部のうちの前記表示領域に向く対向縁部の少なくとも一部が前記開口部内に位置していることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のセンサーユニットは、センサー基材が、シクロオレフィン・ポリマー(COP)、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)の少なくとも1種で形成されているものに有効である。
本発明のセンサーユニットは、例えば、前記透光基材は、光学調整基材である。
【0013】
本発明のセンサーユニットは、前記フレキシブル配線基板のうちの、前記対向縁部の延びる方向の両側に位置する基板両端部が、前記センサー基材と前記透光基材との間に挟まれているものとして構成できる。
【0014】
この場合に、前記センサー基材と前記透光基材との間に挟まれている前記基板両端部は、前記対向縁部よりも、前記表示領域から遠ざかる位置にあることが好ましい。
【0015】
本発明のセンサーユニットは、例えば、前記開口部は、前記透光基材の縁部に解放された凹部である。
【0016】
この場合に、前記凹部の前記表示領域側の内縁部は、前記表示領域と前記配線領域との境界線よりも前記縁部側に離れた位置にあることが好ましい。
【0017】
本発明のセンサーユニットは、前記開口部は、周囲が内縁部で囲まれた少なくとも1つの穴であり、前記穴が、前記表示領域と前記配線領域との境界線と、前記透光基材の縁部との間に位置しているものであってもよい。
【0018】
次に本発明の入力装置は、前記いずれかのセンサーユニットが設けられ、前記透光基材の表面側に透光性のパネル部材が接合されて、前記パネル部材の表面が操作面となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、センサー基材に光学調整基材などの透光基材が接合されているものにおいて、フレキシブル配線基板の表示領域に対向する対向縁部が、透光基材に形成された開口部内に位置している。そのため、対向縁部に気泡が形成されるのを抑制でき、気泡が表示領域に影響を与えるのを防止することができる。そのため、フレキシブル配線基板を、表示領域に接近した位置に取付けることが可能になり、表示領域を広く確保でき、配線領域を狭くすることができる。また、フレキシブル配線基板のうちのセンサー基材に接合する接合部の面積を広くでき、フレキシブル配線基板の接合を安定させることができる。
【0020】
また、フレキシブル配線基板の一部が、センサー基材と透光基材に挟まれているために、フレキシブル配線基板の引出し部が曲げられたときに、センサー基材単体に大きな応力が作用するのを防止できる。よって、センサー基材をシクロオレフィン系樹脂フィルムやポリカーボネート系樹脂フィルムなどの比較的脆い材料で形成した場合であっても、このフィルムが曲げ応力で破損するのを防止しやすくなる。また、センサー基材をPETなどの剛性の高い材料で形成したときでも、フレキシブル配線基板の引出し部が曲げられたときに、センサー基材単体に大きな応力が作用するのを防止でき、センサー基材と透光基材との間の剥離力が増大するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、本発明の実施の形態のセンサーユニット10およびこれを使用した入力装置20を搭載した小型電子機器1が示されている。小型電子機器1は、携帯電話、携帯情報端末、またはゲーム装置などとして使用される。
図1以下の各図では、X方向が横方向、Y方向が縦方向でありY1方向が基部側でY2方向が先部側、Z1方向が前方(表側)、Z2方向が後方(背部側)である。
【0023】
図1に示す小型電子機器1は合成樹脂製の筐体2を有している。筐体2の内部には、カラー液晶表示パネルなどの表示装置3と、各種電子回路を実装した回路基板などが収納されている。表示装置3の表示側である前方(Z1方向)に入力装置20が配置されている。
【0024】
入力装置20は投影型のタッチパネルである。
図2と
図4に示すように、入力装置20は、センサーユニット10とその前方に貼り合わされるパネル部材21とで構成されている。
【0025】
パネル部材21は、ガラス板であり、あるいは透光性のアクリル系などの合成樹脂材料で、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)で形成された透光パネルである。
図1に示すように、パネル部材21は筐体2の前方(Z1方向)を覆っており、筐体2と共に小型電子機器1の外形を形成している。パネル部材21の前方(Z1方向)に向く表面が操作面22である。
【0026】
図1と
図2および
図4に示すように、パネル部材21は、中央の四角い領域が表示・操作領域21aであり、この領域21aが透光性である。表示装置3の表示画面は、表示・操作領域21aを透して前方から目視可能である。パネル部材21は、表示・操作領域21aを囲む加飾領域21bを有している。
図4に示すように、加飾領域21bでは、パネル部材21の装置内方(Z2方向)に向く表面に着色部23が形成されており、パネル部材21が部分的に非透光性となっている。着色部23は、塗装、スパッタ、着色フィルムの張り合わせなどの工程で形成されている。
【0027】
図4に示すように、入力装置20は、装置内方(Z2方向)に位置するセンサーユニット10とパネル部材21とが、光学接着剤(OCA)24によって貼り合わされて構成されている。
【0028】
センサーユニット10も、少なくともパネル部材21の表示・操作領域21aに対向する部分が透光性である。本明細書での透光性とは、表示装置3の表示内容を透視できる程度の光透過率を有していることを意味し、例えば全光線透過率が80%以上であり、好ましくは90%以上である。
【0029】
図2と
図4に示すように、センサーユニット10は、センサー基材11と、その前方(Z1方向)に重ねられた透光基材17とを有している。
図4に示すように、センサー基材11と透光基材17は光学接着剤(OCA)25によって接着されている。また、センサー基材11と透光基材17との間にフレキシブル配線基板31が接合されている。
【0030】
図2に示すように、センサー基材11は長方形であり、横方向(X方向)に沿って延びる基部側の縁部12aと、同じく横方向(X方向)に沿って延びる先部側の縁部12bと、縦方向(Y方向)に沿って延びる一対の長辺側の縁部12c,12cとを有している。センサー基材11は、表示・入力領域11aと、表示・入力領域11aを囲む配線領域11bとを有している。表示・入力領域11aはセンサー基材11の中央部に位置し、配線領域11bは、表示・入力領域11よりもセンサー基材11の縁部12a,12b,12c側に位置している。表示・入力領域11aが、本発明での表示領域である。センサー基材11では、表示・入力領域11aと配線領域11bとの境界が明確化されているものではないが、センサー基材11のうちの前記パネル部材21の表示・操作領域21aに対向する領域が表示・入力領域11aであり、加飾領域21bに対向する領域が配線領域11bである。
【0031】
センサー基材11は透光性シートであり、シクロオレフィン・ポリマー(COP)、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)の少なくとも1種で形成されている。センサー基材11は、光学的に等方性を有するフィルム、または位相差フィルムである。COPまたはCOCは、高透明で且つ耐熱性や耐薬品性に優れている。しかし、これらはPETなどに比べると機械的強度が低く、曲げ力などに対して脆い性質を有している。
【0032】
図4に示すように、センサー基材11は、Z1側に向く前方表面13aとZ2方向に向く後方表面13bを有している。
図2に示すように、前方表面13aには、複数の第1の電極層14と、複数の第2の電極層15が形成されている。電極層14,15は、ITO層や銀ナノワイヤ層などの透光性と導電性を備えた材料で形成されている。第1の電極層14と第2の電極層15は同じ形状で同じ面積を有しており、四角形状または菱形の形状である。第1の電極層14は、縦方向(Y方向)へ列を成して規則的に並んでおり、連結導電層14aによってY方向に並ぶ第1の電極層14が互いに連結されて導通されている。第2の電極層15は、横方向(X方向)へ行を成して規則的に並んでおり、連結導電層15aによってX方向に並ぶ第2の電極層15が互いに連結されて導通されている。なお、連結導電層14aと連結導電層15aの交差部には透光性の絶縁材料が挟まれており、連結導電層14aと連結導電層15aは互いに絶縁されている。
【0033】
Y方向に連結されているそれぞれの列の第1の電極層14から延びる第1の配線層14bは、センサー基材11の基部側の縁部12aに沿う配線領域11bに引き出されている。X方向に連結されているそれぞれの行の第2の電極層15から延びる第2の配線層15bは、配線領域11bにおいて長辺側の縁部12cに沿うように引き回され、基部側の縁部12aに沿う配線領域11bに引き出されている。そして、基部側の縁部12aに沿う配線領域11bの一部に、配線層14b,15bが集合するコネクタ部16が形成されている。
【0034】
図2に示すように、透光基材17は、センサー基材11とほぼ同じ大きさの長方形であり、基部側の縁部17aと先部側の縁部17bおよび長辺側の縁部17c,17cを有している。透光基材17は、偏光板や1/4λ位相差板、あるいは偏光板と1/4λ位相差板とが重ねられた光学調整基材である。透光基材17を偏光板とすることで、表示装置3である液晶表示パネルの前方の偏光板を省略できる。また1/4λ位相差板を使用すると、表示・入力領域11aを透過する表示装置3の表示光を円偏光とすることができ、偏光サングラスを着用して見たときの黒ずみの発生を防止できるようになる。
【0035】
透光基材17は、センサー基材11を補強する目的を有しているため、透光基材17の曲げ剛性は、センサー基材11の曲げ剛性よりも高いことが好ましい。また、透光基材17が光学調整基材でなく、剛性の高いPETなどの樹脂シートなどで構成されていてもよい。
【0036】
図4に示すように、透光基材17は、Z1方向に向く前方表面18aとZ2方向に向く後方表面18bを有している。透光基材17の後方表面18bとセンサー基材11の前方表面13aとが光学接着剤25で貼り合わされ、透光基材17の前方表面18aとパネル部材21の背面とが光学接着剤24で貼り合わされる。
【0037】
図2と
図3に示すように、透光基材17に、開口部19が形成されている。開口部19は、基部側の縁部17aで解放された凹部である。
図2と
図3には、センサー基材11における表示・入力領域11aと基部側(Y1側 )の配線領域11bとの境界線Bが示されている。
図4に示すように、境界線Bは、パネル部材21の表示・操作領域21aと加飾領域21bとの境界線に下方から対向する仮想線である。凹部である開口部19は、前記境界線Bと平行に延びる内縁部19aを有している。内縁部19aは、境界線Bよりも基部側(Y1側)に離れて位置している。また、凹部はX方向に向く両側の内縁部19b,19bを有している。
【0038】
図2と
図3に示すように、フレキシブル配線基板31は、横方向(X方向)の幅寸法が大きな接合部32と、横方向の幅寸法が小さく接合部32から延び出る引出し部33とが一体に形成されている。接合部32は、先部側(Y2側)に位置して、表示・入力領域11aおよび境界線Bに向けられた対向縁部32aと、X方向の両側に向く両側縁部32b,32bを有している。
図3に示すように、フレキシブル配線基板31のZ2方向に向く配線表面には、接合部32に複数のランド部35が形成され、引出し部33に、それぞれのランド部35から延びるリード部34が形成されている。ランド部35とリード部34は銅箔などの導電層で形成されている。
【0039】
図3と
図4および
図5に示すように、フレキシブル配線基板31の接合部32は、
図2に示すセンサー基材11の前方表面13aに形成されたコネクタ部16に、異方性導電性接着剤などで接着固定され、接合部32のZ2側に向く配線表面に形成されたランド部35と、センサー基材11の前方表面13aに形成された配線層14b,15bとが一対一の関係で導通接続される。
【0040】
フレキシブル配線基板31の接合部32が、センサー基材11に接合された後に、センサー基材11上に透光基材17が接合される。透光基材17の後方表面18bには予め光学接着剤25が固着されており、センサー基材11に透光基材17を重ねて加圧することで、センサー基材11と透光基材17とが接合される。
【0041】
このとき、
図3に示すように、フレキシブル配線基板31の接合部32の大部分が、透光基材17に形成された開口部19の内部に位置する。そして、接合部32の対向縁部32aのうちのX方向での中央部分が開口部19内に位置する。好ましくは、対向縁部32aが、開口部19のY2側の内縁部19aからY1側へ向けて離れた位置となり、内縁部19aと対向縁部32aとの間に隙間δが形成される。また、
図3と
図5に示すように、接合部32は、対向縁部32aに沿う方向(X方向)の両側部分が基板両端部36,36であり、この基板両端部36,36が前記両側縁部32b,32bを有している。基板両端部36,36は、センサー基材11と透光基材17との間に挟まれており、基板両端部36,36とセンサー基材11とが異方性導電性接着剤で固定され、基板両端部36,36と透光基材17とが光学接着剤25で固定されている。
【0042】
図10には、比較例のセンサーユニット10Aが示されている。
図10は、
図4と同じ部分を示す断面図である。比較例では、透光基材17に開口部19が形成されていない。
図4と
図10に示すように、フレキシブル配線基板31の接合部32の厚さ寸法は、光学接着剤25の層の厚さよりも大きいため、センサー基材11と透光基材17との間に接合部32が挟まれたときに、接合部32の厚さを光学接着剤25の層の厚さによって完全に吸収することができない。
【0043】
図10に示す比較例では、接合部32の対向縁部32aが、センサー基材11と透光基材17とで上下から完全に挟まれ、しかも、接合部32の厚さを光学接着剤25の層の厚さによって完全に吸収しきれないため、対向縁部32aにおいて、センサー基材11の前方表面13aと光学接着剤25との間に気泡Vが発生しやすい。対向縁部32aに沿って発生する気泡Vが、センサー基材11における表示・入力領域11aまで進行することがあると、表示・入力領域11aの縁部において、表示装置3で表示される画像の透過精度が低下し、画像の表示品質に悪影響を与えることになる。これを避けるためには、接合部32の対向縁部32aを、表示・入力領域11aと配線領域11bとの境界線Bから基部側(Y1側)へかなり離すことが必要になる。その結果、接合部32の接合面積を狭くすることが必要になってフレキシブル配線基板31の接合が不安定になる。あるいは、配線領域11bを広くし、表示・入力領域11aを狭めなくてはならなくなる。
【0044】
これに対し、本発明の実施の形態のセンサーユニット1では、
図3と
図4に示すように、フレキシブル配線基板31に形成された接合部32の対向縁部32aの一部(中央部分)が、透光基材17に形成された開口部19の内部に位置し、開口部19の内縁部19aと対向縁部32aとの間に隙間δが形成されている。そのため、接合部32の対向縁部32aの中央部分の広い範囲で気泡Vが発生するのを防止でき、気泡Vが、センサー基材11における表示・入力領域11aまで進行するのを抑制できるようになる。
【0045】
ただし、接合部の両側の基板両端部36,36は、センサー基材11と透光基材17とで挟まれているため、基板両端部36,36の対向縁部32aには気泡Vが発生することがある。しかし、対向縁部32aの中央部分が開口部19の内部に位置しているため、基板両端部36,36の対向縁部32aで発生した気泡Vを、開口部19に逃がすことができ、基板両端部36,36で発生した気泡Vが表示・入力領域11aまで進行するのを防止することができる。
【0046】
その結果、接合部32の対向縁部32aを、境界線Bに接近させることが可能になり、接合部32の面積を広くして、センサー基材11と接合部32の接合を安定させることができる。また配線領域11bを狭くし、表示・入力領域11aを広く確保することも可能である。
【0047】
しかも、
図5に示すように、接合部32のX方向の両側に位置する基板両端部36,36が、センサー基材11と透光基材17との間に挟まれて、基板両端部36,36がセンサー基材11と透光基材17の双方に接合され固定されている。そのため、フレキシブル配線基板31の接合部32をX方向へ曲率を持つように曲げようとしたときの曲げ剛性を高くできる。したがって、
図4に示すように、フレキシブル配線基板31の引出し部33を、センサー基材11の後方表面13bに対向するようにU字形状に曲げても、接合部32の曲率が大きくなるのを抑制することができる。
【0048】
この実施の形態では、
図3に示すように、接合部32の対向縁部32aが、基板両端部36,36に至るまでX方向へ直線状に延びている。そのため、センサー基材11と透光基材17との間に挟まれる基板両端部36,36の面積を広くでき、フレキシブル配線基板31の曲げに対する撓み強度を高く維持できるようになる。
【0049】
実施の形態のセンサー基材11は、COP、COC、PCの少なくとも1種で形成されている。これら材料は、光学特性は良好であるが、特にCOP,COCは脆い材料であり、曲げ変形によって破損しやすいものとなっている。しかし、接合部32が接合されている部分においてセンサー基材11の曲げを抑制できるため、センサー基材11をこれら材料で形成しても損傷が発生しにくくなる。
【0050】
また、センサー基材11が部分的に大きく曲げられるのを防止できるため、例えばセンサー基材11がPETなど比較的強度の高い形成されている場合に、センサー基材11が単体で大きく曲げられることに起因するセンサー基材11と透光基材17との接合部の剥がれなどを防止しやすくなる。
【0051】
図6ないし
図8に、フレキシブル配線基板31の接合部32と、センサー基材11ならびに透光基材17との接合構造の他の実施の形態を示している。各実施の形態で、
図1ないし
図5に示す実施の形態と同じ機能を発揮する部分には同じ符号を付して説明する。
【0052】
図6(A)に示す実施の形態では、フレキシブル配線基板31の接合部32に、Y2の両側縁部32c,32cとY1側の両側縁部32d,32dが段差を介して形成されている。表示・入力領域11aに向く対向縁部32aとY2側の両側縁部32c,32cが開口部19の内部に位置し、Y1側の両側縁部32d,32dが、センサー基材11と透光基材17との間に挟まれている。よって、接合部32のうちの、センサー基材11と透光基材17とで挟まれている基板両端部36,36を、境界線Bならびに対向縁部32aからY1側に大きく離れて位置させることができる。
【0053】
接合部32の対向縁部32aとY2側の両側縁部32c,32cが開口部19の内部に位置しているため、対向縁部32aと両側縁部32c,32cで気泡Vが形成されるのを防止できる。また、基板両端部36,36の縁部周辺に気泡Vが発生することがあっても、基板両端部36,36が境界線Bから大きく離れているため、この気泡が表示・入力領域11aに悪影響を与えにくくなる。
【0054】
図6(B)に示す実施の形態では、対向部32のX方向の両側において、Y2側の両側縁部32e,32eがY1方向に向かうにしたがって互いに離れるように傾斜し、Y1側の両側縁部32d,32dはY1−Y2方向と平行となっている。Y2側の両側縁部32e,32eが傾斜している結果、対向部32のうちの、センサー基材11と透光基材17とで挟まれている基板両端部36,36を、境界線BからY1側へ離すことができる。したがって、傾斜している両側縁部32e,32eに沿って気泡Vが発生したとしても、この気泡Vが、表示・入力領域11aに悪影響を与えにくくなる。
【0055】
図6(A)と
図6(B)に示す実施の形態において、接合部32のY1−Y2方向の幅寸法の最大値を同じとし、両側縁部32d,32dのX方向の間隔を同じとしたときに、センサー基材11と透光基材17との間に挟まれている基板両端部36,36の面積を、
図6(B)の実施の形態の方が
図6(A)に示す実施の形態よりも広く確保することが可能である。そのため、
図6(B)では、フレキシブル配線基板31が曲げられたときに、接合部32が接合されている部分でセンサー基材11に作用する撓み力を低減できる。
【0056】
図7(A)に示す実施の形態では、透光基材17に形成される開口部119が、全周が内縁部で囲まれた穴であり、穴の形状は矩形である。フレキシブル配線基板31の接合部32の対向縁部32aと、両側縁部32b,32bのY2側の部分が開口部119の内部に位置している。よって、対向縁部32aと両側縁部32b,32bのY2側の部分に気泡が発生するのを抑制することができる。
【0057】
しかも、接合部32のY1側の部分がX方向の全長にわたって、センサー基材11と透光基材17とで挟まれている。そのため、
図4に示すように、フレキシブル配線基板31の引出し部33が曲げられたとしても、接合部32とセンサー基板11との貼り合わせ部に大きな曲率の曲げが発生しにくい。これにより、接合部32が接合されている部分でセンサー基材11が破損するのを防止できるようになり、または、センサー基材11と透光基材17との接合部に剥がれが生じるなどの問題が生じにくくなる。
【0058】
図7(B)に示す実施の形態では、透光基材17に形成された開口部219が、長円形状である。この実施の形態でも、接合部32の対向縁部32aとY2側の両側縁部32c,32cが開口部219の内部に位置しているため、縁部32a,32cに気泡が発生することがない。また、接合部32の基板両端部36,36が、対向縁部32aからY1側へ大きく離れた位置において、開口部219よりもX方向の両側へ突出し、この基板両端部36,36がセンサー基材11と透光基材17に挟まれている。よって、基板両端部36,36の縁部に気泡が発生しても境界線Bまで及びことがなく、また基板両端部36,36が、センサー基材11と透光基材17とに挟まれているため、さらに接合部32に曲げ変形が生じにくくなっている。
【0059】
図8(A)に示す実施の形態では、透光基材17に設けられた開口部319が、X方向に向けて複数(2か所)に分割された凹部によって形成されている。この実施の形態では、フレキシブル配線基板31の接合部32が、X方向の両側に位置する基板両端部36a,36aにおいてセンサー基材11と透光基材17とで挟まれているのみならず、接合部32の中央部36bにおいても、センサー基材11と透光基材17とで挟まれている。すなわち、接合部32は、基板両端部36a,36aと中央部36bの3か所で、センサー基材11と透光基材17の双方に接着されて固定されている。この実施の形態では、接合部32のうちのセンサー基材11と透光基材17の双方に接着されて固定されている面積の比率が高くなり、フレキシブル配線基板31の引出し部33が曲げられたときに、接合部32が曲がりにくくなっている。
【0060】
図8(B)に示す実施の形態では、透光基材17に形成された開口部419が、3か所の穴で構成されている。この実施の形態でも、接合部32のうちのセンサー基材11と透光基材17の双方に接着されて固定されている面積の比率が高くなり、フレキシブル配線基板31の引出し部33が曲げられたときに、接合部32が曲がりにくくなっている。
【0061】
図8(A)(B)に示す実施の形態では、接合部32の対向縁部32aの一部がセンサー基材11と透光基材17とで挟まれているため、その部分で、対向縁部32aに沿って気泡が形成されることがある。しかし、この気泡は、開口部319,419の内部に逃げやすいため、気泡が、表示・入力領域11aに伝達されにくい。
【0062】
図9(A)(B)に示す実施の形態は、
図8(A)(B)に示す実施の形態の変形例である。
図9(A)(B)では、接合部32の対向縁部32aから基部側(Y1側)に窪む切欠き部が形成されており、透光基材17に形成された開口部319,419の内部には、対向縁部32aと、そのX方向の両側に位置する短縁部32fが位置している。その結果、開口部319,419の内部に、対向縁部32aとその両側の短縁部32fが位置することになり、境界部Bの近くに気泡が発生するのを防止できるようになる。
【0063】
なお、
図3に示す実施の形態と
図8(A)(B)に示す実施の形態において、接合部32においてX方向に直線的に延びている対向縁部32aのうちの、半分以上が、開口部19,319,419の内部に位置していることが好ましく、さらには、70%以上が、開口部19,319,419の内部に位置していることが好ましい。