特許第6605128号(P6605128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605128多層クッションおよびそれを備えたマットレス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605128
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】多層クッションおよびそれを備えたマットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/10 20060101AFI20191031BHJP
   A47C 27/08 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   A47C27/10 Z
   A47C27/08 F
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-512771(P2018-512771)
(86)(22)【出願日】2016年8月9日
(86)【国際出願番号】JP2016073446
(87)【国際公開番号】WO2017183218
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2019年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-83113(P2016-83113)
(32)【優先日】2016年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506164006
【氏名又は名称】株式会社ウォーキングDAY
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿本 益志
(72)【発明者】
【氏名】高野 純一
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−218731(JP,A)
【文献】 特開2004−113309(JP,A)
【文献】 特開2005−118130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C27/00−27/22
A61G7/00−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の弾性部と複数の貫通孔とが所定部分に形成された複数の孔付きクッションで構成される多層クッションであって、
所定の孔付きクッションの貫通孔内に他の孔付きクッションの弾性部を貫通させて前記複数の孔付きクッションを重ね合わせるとともに、各孔付きクッションの弾性部の反発力が互いに異なるようにしたことを特徴とする多層クッション。
【請求項2】
各孔付きクッションの複数の弾性部をそれぞれ可撓性を備えた収容部と、前記収容部内に収容される流体とで構成し、各孔付きクッションの複数の収容部をそれぞれ流路で連通した請求項1に記載の多層クッション。
【請求項3】
前記流体を空気で構成した請求項2に記載の多層クッション。
【請求項4】
前記収容部内に膨張収縮が可能な弾性部材を収容した請求項2または3に記載の多層クッション。
【請求項5】
前記所定の孔付きクッションの貫通孔に前記他の孔付きクッションの弾性部が嵌合して、各孔付きクッションにずれが生じないようにした請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の多層クッション。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一つに記載された多層クッションを備えたマットレスであって、
前記多層クッションを表面を露出させて収容する凹部を備えた弾性を有するマットレス本体と、前記マットレス本体と前記多層クッションを被覆するカバー部材とを備えたことを特徴とするマットレス。
【請求項7】
前記マットレス本体の長手方向の所定部分に、幅方向に延びる線状切欠き部を形成した請求項6に記載のマットレス。
【請求項8】
前記マットレス本体と前記多層クッションとの表面に弾性を有するシート部材を設置した請求項6または7に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具、椅子、枕、背もたれ等に用いられる多層クッションおよびそれを備えたマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、寝具の中には、内部にクッションが組み込まれたマットレスがある(例えば、特許文献1参照)。このマットレス(床ずれ防止マット)は、給排気自在のエアセルが多数設けられたクッション(膨縮ゾーン)の周囲に発泡材からなるマットレス本体(非膨縮ゾーン)を配設し、クッションとマットレス本体の上部に覆い部を配設して構成されている。
【0003】
また、クッションは、合成樹脂製のシートにエアセルを多数並設した形状をしている。このクッションのエアセルは、空気の給排気が交互のタイミングで行われる第1のエアセル群と第2のエアセル群とで構成されており、第1のエアセル群に属するエアセルと第2のエアセル群に属するエアセルはそれぞれ前後左右に隣接するように配置されている。そして、第1のエアセル群は第1給排パイプに連通し、第2のエアセル群は第2給排パイプに連通しており、第1給排パイプと第2給排パイプは、流路切替弁を介してポンプに連結されている。このため、流路切替弁を操作しながらポンプを駆動させることにより、第1のエアセル群と第2のエアセル群に交互にエアが充填される。このように構成されたマットレスによると、床ずれ防止の効果が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4409906号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、前述した従来のマットレスに備わったクッションは、一方が開口した殻部が多数並設された一対のシートを、各殻部の開口どうしが重なるように突き合わせて接合して形成され、上下一対の殻部でエアセルが構成されているため、第1給排パイプと第2給排パイプにおける各エアセルを連通するパイプの部分を交差させることができない。このため、第1のエアセル群の各エアセルを連通するパイプと、第2のエアセル群の各エアセルを連通するパイプは互いに平行した状態で、各エアセルの角部同士を接続している。したがって、第1のエアセル群に属するエアセルと第2のエアセル群に属するエアセルの配置が前後左右に交互に位置する配置に限られてしまう。クッションにおいては、任意の部分を任意の硬さにできることが好ましいが、前述したマットレスに備わったクッションではパイプの配置に制限があるため、任意の部分を任意の硬さにすることはできない。
【0006】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、任意の部分を任意の硬さにできる多層クッションおよびそれを備えたマットレスを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係る多層クッションの構成上の特徴は、複数の弾性部(11a,11b,21a,21b,21c)と複数の貫通孔(15,25a,25b,25c)とが所定部分に形成された複数の孔付きクッション(10A,10B,20A,20B,20C)で構成される多層クッション(10,20)であって、所定の孔付きクッションの貫通孔内に他の孔付きクッションの弾性部を貫通させて複数の孔付きクッションを重ね合わせるとともに、各孔付きクッションの弾性部の反発力が互いに異なるようにしたことにある。
【0008】
本発明に係る多層クッションは、複数の弾性部と複数の貫通孔とが所定部分に形成された複数の孔付きクッションを用い、一方の孔付きクッションの貫通孔に他方の孔付きクッションの弾性部を貫通させた状態で重ね合わせて構成されている。また、重ね合された各孔付きクッションの弾性部の反発力(硬さ)はそれぞれ異なるようにしている。このため、各孔付きクションの弾性部と貫通孔の配置を、それぞれ対応する弾性部と貫通孔を互いに組み合わせることができる範囲で任意に設定することにより、任意の反発力を発生する弾性部が任意の位置に配置された多層クッションを容易に得ることができる。
【0009】
また、所定部分に反発力の大きな弾性部が位置し、他の部分に反発力の小さい(柔らかい)弾性部が位置するようになるため、その反発力の小さい部分で多層クッションの反発力、すなわち、身体にかかる圧力が軽減され、柔らかく、心地よい感触を得ることができる。また、所定部分に一定以上の反発力の大きな弾性部を位置させると、体に柔らかい押圧効果が与えられる。
【0010】
この場合の弾性部としては、種々のものを用いることができ、例えば、可撓性の収容部内に、気体、液体または発泡樹脂からなる多孔質の弾性部材などを収容したものや、発泡樹脂からなる多孔質の弾性部材だけで構成することができる。弾性部として、気体や液体を用いる場合は、その気圧や液圧の差によって弾性部の硬さを調節でき、弾性部を弾性部材だけで構成する場合は、硬さの異なる材料を用いることで各孔付きクッションの弾性部の硬さが異なるようにすることができる。また、各孔付きクッションの弾性部における使用者に当接する部分の位置(高さ)を変えることで反発力が異なるようにすることもできる。
【0011】
本発明に係る多層クッションの他の構成上の特徴は、各孔付きクッションの複数の弾性部をそれぞれ可撓性を備えた収容部(14)と、収容部内に収容される流体とで構成し、各孔付きクッションの複数の収容部をそれぞれ流路(17,27a,27b,27c)で連通したことにある。本発明によると、複数の収容部をそれぞれ流路で連結し、その内部で流体が移動できるようにしたため、流体の移動性に優れたクッションを得ることができる。本発明に係る流体としては、気体、液体、ゲル・ジェル状のものなど種々の流体を用いることができるが、この流体は空気で構成することがより好ましい。
【0012】
本発明に係る流体は、孔付きクッション内に密閉されていてもよいが、ポンプなどを介して孔付きクッションから出し入れが可能になっていることがより好ましい。これによると、各孔付きクッションの弾性部の硬さの調節が容易になる。また、各孔付きクッションの収容部が、それぞれ流路を介して連通しているため、各孔付きクッションの各弾性部が互いに離れた場所に位置していても、各孔付きクッションにおけるすべての弾性部の硬さを同じにすることができる。
【0013】
この場合、多層クッションの一部の圧力の変化に対して即時に流体が流路内を移動するため、呼吸のような細かな振動に対しても流体に移動が生じ、振動による衝撃を吸収することができ。また、多層クッションが、常に身体にフィットし、振動による圧力を分散させる。なお、本発明に係る各孔付きクッションの流路は、互いに重なって交差していても問題はないため、弾性部と貫通孔を任意の位置に配置することができる。さらに、流体として空気を用いると、多層クッションが安価になるとともに、軽量化が図れる。
【0014】
本発明に係る多層クッションのさらに他の構成上の特徴は、収容部内に膨張収縮が可能な弾性部材(US,UH)を収容したことにある。
【0015】
本発明によると、収容部内に、空気などの流体の他に弾性部材も収容されるため、使用者の体重がかかることによって多層クッションが圧縮されたときに、一部の収容部内の流体が流路で連結されている他の複数の収容部内に体重のかかり方に応じて自由に移動して、流体が無くなった収容部が、上下面(表裏両面)が当接するほどつぶれてしまうこと(底付き)が生じなくなる。これによって、どんな状態のときでも、多層クッション全体に亘って、良好なクッション性を発揮させることができる。また、弾性部材を収容部内に収容することによって、収容部内に充填する流体の量を少なくすることができ、これによって流体のコントロールが容易になる。
【0016】
本発明に係る多層クッションのさらに他の構成上の特徴は、所定の孔付きクッションの貫通孔に他の孔付きクッションの弾性部が嵌合して、各孔付きクッションにずれが生じないようにしたことにある。
【0017】
本発明によると、各孔付きクッション間にずれが生じないため、各孔付きクッションを固定するための部材等を用いることなく、多層クッションに型崩れが生じることを防止できる。
【0018】
本発明に係る多層クッションを備えたマットレスの構成上の特徴は、多層クッション(10)を表面を露出させて収容する凹部(31c,31d)を備えた弾性を有するマットレス本体(31)と、マットレス本体と多層クッションを被覆するカバー部材(34)とを備えたことにある。
【0019】
本発明によると、多層クッションをマットレスの一部として用いて、マットレスにおけるクッション性を高めることが好ましい部分、例えば、使用者の腰部、臀部および背中が位置する部分だけに多層クッションを配置し、他の部分は、マットレス本体で構成することができる。この場合、マットレス本体としては安価な材料で構成されるものを用いることができるため、良好なクッション性を備えたマットレスを低価格で製造することができる。
【0020】
また、本発明に係るマットレスは、良好なクッション性を備えているため、寝具として用いた場合に、床ずれの発生を防止できるとともに、快適な睡眠が可能になる。さらに、マットレスの一部を多層クッションで構成することで、使用者の体にかかる圧力を軽減する効果も生じる。また、マットレス本体と多層クッションは、カバー部材で覆われるため、汚れ、破損、型崩れ等を防止された状態に維持される。なお、カバー部材としては、平面視が長方形の袋の側部に線ファスナーで開閉可能な開口を設けたものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明に係る多層クッションを備えたマットレスの他の構成上の特徴は、マットレス本体の長手方向の所定部分に、幅方向に延びる線状切欠き部(31e)を形成したことにある。
【0022】
本発明によると、マットレスを、線状切欠き部の部分で折り曲げやすくなるため、マットレスを、曲面状の台や床の上面に設置して使用する場合に、台や床の上面に追従して変形させやすくなる。また、マットレスを、頭部側が昇降可能になったベッドなどの上面に設置して使用する場合にも、ベッドの昇降に追従して変形しやすく、背ずれを起こしにくい。また、ベッドから車いす等の移乗時にはマットレスが体の動きに追従し変形するため、姿勢が安定し、移動をサポートするため、離床しやすくなる。さらに、マットレスの折り畳みが容易になるため、マットレスを使用しない場合に、収納しやすくなるとともに持ち運びもし易くなる。
【0023】
本発明に係る多層クッションを備えたマットレスのさらに他の構成上の特徴は、マットレス本体と多層クッションとの表面に弾性を有するシート部材(32)を設置したことにある。
【0024】
本発明によると、マットレス本体と多層クッションとの境界部や、多層クッションの表面などに大きな凹凸があっても、多層クッションと使用者の体の間にはカバー部材を介してシート部材が位置するため、使用者が多層クッションの凹凸を強く感じることがなくなる。これによって、マットレスの使い心地が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る多層クッションを示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る多層クッションを示しており、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図3図2(a)の3−3断面図である。
図4】孔付きクッションを示した斜視図である。
図5】下側外郭部を示しており、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図6図5(a)の6−6断面図である。
図7】他の実施形態に係る多層クッションの概略を示した平面図である。
図8図7の多層クッションを分解した状態を示した平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る多層クッションを備えたマットレスを示した斜視図である。
図10図9に示したマットレスの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1ないし図3は、同実施形態に係る多層クッション10を示している。図2(a)は、多層クッション10を上方から見た状態を示し、図2(b)は、多層クッション10を前方から見た状態を示しており、以下の説明において、前後、左右、上下の各方向は、図2(a),(b)に基づいたものとする。この多層クッション10は、ともに前後よりも左右の方が長い孔付きクッション10A(図4参照)と孔付きクッション10Bで構成されており、孔付きクッション10Aの上側に孔付きクッション10Bを組み付けて硬さが異なる弾性部11aと弾性部11bが前後および左右に交互に配置されるようにしている。
【0027】
孔付きクッション10Aと孔付きクッション10Bは、ともにウレタンフィルムからなる同じ構成の外郭部12を備えており、各外郭部12は、図4に示したように、前後よりも左右の方が長い長方形の枠状部13の内側部分に、10個の収容部14と10個の貫通孔15とを前後および左右に交互に配置した形状をしている。そして、孔付きクッション10Aの外郭部12の各収容部14内には、発泡ウレタンからなる弾性部材USと空気が収容され、孔付きクッション10Bの外郭部12の各収容部14内には、弾性部材USよりも硬い発泡ウレタンからなる弾性部材UHと空気が収容されている。孔付きクッション10Aの外郭部12の収容部14と弾性部材USと空気で弾性部11aが構成され、孔付きクッション10Bの外郭部12の収容部14と弾性部材UHと空気で弾性部11bが構成されている。
【0028】
また、収容部14と貫通孔15との外周には、それぞれ連結縁部16が形成されている。そして、枠状部13の内部、隣接する収容部14の角部間の連結縁部16の内部、および、枠状部13と枠状部13に隣接する収容部14との間の連結縁部16の内部にはそれぞれ空気を通す流路17が形成されており、この流路17によって枠状部13の内部と各収容部14の内部はそれぞれ連通している。また、枠状部13の角部のうちの収容部14が位置する2つの角部の近傍にはそれぞれ流路17を外部に開放する給排口部18が形成されている。この給排口部18にはパイプ19が連結される。
【0029】
孔付きクッション10Aは、図4に示したように、左右に5列、前後に4列の合計20の領域に区分されており、枠状部13の前部両側に弾性部11aを位置させ、枠状部13の後部両側に貫通孔15を位置させて、前後左右でそれぞれ弾性部11aと貫通孔15が交互に位置するように構成されている。また、孔付きクッション10Bは、図4に示した孔付きクッション10Aを前後方向で反転させた形状になるように配置され、枠状部13の前部両側に貫通孔15が位置し、枠状部13の後部両側に弾性部11bが位置している。
【0030】
そして、孔付きクッション10Aの上側に孔付きクッション10Bを位置させ、孔付きクッション10Aの貫通孔15に孔付きクッション10Bの弾性部11bの下部を貫通させ、孔付きクッション10Bの貫通孔15に孔付きクッション10Aの弾性部11aの上部を貫通させて、孔付きクッション10Aと孔付きクッション10Bが組み付けられている。これによって、20に区分された領域に、柔らかい弾性部11aと、弾性部11aよりも硬い弾性部11bとが交互に配置された多層クッション10が得られる。
【0031】
また、孔付きクッション10A,10Bの外郭部12は、下側外郭部12aと上側外郭部12bの所定部分を溶着して一体に形成されている。下側外郭部12aは、図5(a),(b)および図6に示したように形成されており、左右の長さが502mm、前後の長さが327mm、厚みが、0.6mmのウレタンフィルムに、収容部14の下側を構成する下側収容部14aと貫通孔15の下側を構成する下側貫通孔15aを前後および左右に交互に形成した形状をしている。なお、図5(a),(b)は、孔付きクッション10Bの下側外郭部12aを示している。下側外郭部12aの外周部は、枠状部13の下側部分を構成する下側枠状部13aで構成され、下側収容部14aと下側貫通孔15aとの外周には、それぞれ連結縁部16の下側部分を構成する下側連結縁部16aが形成されている。
【0032】
そして、下側枠状部13aの幅方向の内周側部分、隣接する下側収容部14aの角部間の下側連結縁部16a、および、下側枠状部13aと下側枠状部13aに隣接する下側収容部14aとの間の下側連結縁部16aにはそれぞれ流路17の下側部分を構成する下側流路17aが形成されている。また、下側枠状部13aの後部左側の角部近傍と、後部左端に位置する下側収容部14aの左側部分との間、および、下側枠状部13aの後部右側の角部近傍と、後部右端に位置する下側収容部14aの右側部分との間には、それぞれ給排口部18の下側部分を構成する下側給排口部18aが形成されている。
【0033】
下側収容部14aは、上縁部が、左右の長さが90mmで、前後の長さが70mmで、角部に半径10mmの曲部が形成された略四角形に形成され、上下の長さは18mmになっている。また、下側収容部14aの各側部は、それぞれ僅かに内部側に傾斜して下方に延びており、各側部間および底部と側部の間にも半径が略10mmの曲部が形成されている。このため、下側収容部14aは、全体として丸みを帯びた略四角形の箱状に形成されている。下側貫通孔15aは、左右の長さが92mmで、前後の長さが72mmで、角部に半径11mmの曲部が形成された略四角形に形成されている。このように、下側貫通孔15aは、下側収容部14aの上縁部よりも僅かに大きく形成されている。
【0034】
下側枠状部13aは、幅が11mmに設定されており、下側流路17aのうち下側枠状部13aに設けられた部分は、下側枠状部13aの内周側に位置している。下側流路17aの幅は6mmに設定されており、下側流路17aを形成することにより、下側枠状部13aの上下の長さは2mmになっている。また、下側連結縁部16aにおける下側収容部14aと下側貫通孔15aの間に位置する部分の幅は4mmに設定され、下側連結縁部16aにおける下側枠状部13aの内周側に位置する部分の幅は5mmに設定されている。さらに、下側流路17aにおける下側枠状部13aの内周側以外に位置する部分の幅も6mmに設定されている。
【0035】
上側外郭部12bは、下側外郭部12aと上下を逆にした同一の形状に形成されており、収容部14の上側を構成する上側収容部14b、貫通孔15の上側を構成する上側貫通孔15b、枠状部13の上側部分を構成する上側枠状部13b、連結縁部16の上側部分を構成する上側連結縁部16b、流路17の上側部分を構成する上側流路(図示せず)および給排口部18の上側部分を構成する上側給排口部18bを備えている。
【0036】
そして、上側枠状部13bを下側枠状部13aに溶着し、上側連結縁部16bを下側連結縁部16aに溶着することにより、下側外郭部12aに上側外郭部12bが組み付けられて、外郭部12が形成される。なお、孔付きクッション10Aの下側外郭部12aと上側外郭部12bを組み付けるときには、収容部14内にそれぞれ弾性部材USを入れ、孔付きクッション10Bの下側外郭部12aと上側外郭部12bを組み付けるときには、収容部14内にそれぞれ弾性部材UHを入れる。
【0037】
このように構成された多層クッション10を使用する際には、孔付きクッション10Aのパイプ19と孔付きクッション10Bのパイプ19に、それぞれ収容部14内に空気を供給したり、収容部14内の空気を外部に排出したりするポンプP(図9および図10参照)を接続する。このポンプPとしては、手動式のポンプや電動式のポンプなど種々のものを用いることができる。手動式のポンプを用いる場合には、各孔付きクッション10A,10Bの一対のパイプ19のうちの一方にポンプPを接続し、他方を栓などで閉塞することが好ましい。そして、各収容部14内に空気を供給するときには、ポンプPを押圧操作し、各収容部14内の空気を排出するときには、ポンプPを一方のパイプ19から外すか、または、他方のパイプ19の栓を抜く。また、使用時には、ポンプPを一方のパイプ19から外し、そのパイプ19を栓で閉塞してもよい。
【0038】
また、電動式のポンプを用いる場合には、孔付きクッション10Aの一対のパイプ19の少なくとも一方と、孔付きクッション10Bの一対のパイプ19の少なくとも一方に、それぞれポンプPを接続するとともに、各ポンプPにスイッチや調節用つまみを備えた操作部(図示せず)を接続する。この場合、ポンプPに接続されていないパイプ19があれば、そのパイプ19は栓で閉塞しておく。さらに、切換弁を介して孔付きクッション10Aと孔付きクッション10Bに1個のポンプPを接続し、孔付きクッション10Aに空気が供給されるときには、孔付きクッション10Bは排気され、孔付きクッション10Bに空気が供給されるときには、孔付きクッション10Aは排気されるようにしてもよい。要は、ポンプPは、孔付きクッション10A,10Bに対して空気を供給、排出できるものであればよく、1個であっても複数であってもよい。
【0039】
そして、ポンプPを作動させて、孔付きクッション10Aと孔付きクッション10Bの収容部14内に空気を入れて、孔付きクッション10Aと孔付きクッション10Bをそれぞれ膨張させる。この場合、孔付きクッション10Aと孔付きクッション10Bの内部の気圧が、2kPa以下になるようにし、その範囲で、孔付きクッション10Aの収容部14内の気圧よりも、孔付きクッション10Bの収容部14内の気圧の方が高くなるようにすることが好ましい。これによって、弾性部11aと弾性部11bの上下部は、枠状部13と連結縁部16よりも下側と上側にそれぞれ突出するとともに、柔らかい弾性部11aと、弾性部11aよりも硬い弾性部11bとが交互に位置するようになる。
【0040】
この多層クッション10は、種々の方法で使用することができ、例えば、寝具の上に設置することができる。この場合、寝具における腰部、臀部および背中が位置する部分に局部的に多層クッション10を設置することができる。これによると、使用者が寝具の上に寝た時に、多層クッション10が使用者の腰部、臀部および背中の形に追従して変形し、多層クッション10と体との接触面積が増大するため、体圧が分散されるようになる。この結果、長期間寝ていても、使用者の腰部、臀部および背中の一部に大きな負担がかかってその部分に床ずれができたりすることを防止できる。また、使用者に当たる部分が、交互に位置する柔らかい弾性部11aと硬い弾性部11bになるため、マッサージ効果も生じる。
【0041】
また、多層クッション10を椅子やソファ等、着座するものに使用することもでき、この場合には、座面に多層クッション10を設置して、その上をシート状のもので覆うことが好ましい。この場合、多層クッション10は、使用者の臀部の形状に追従して変形するため、接触圧が分散されて、座り心地が良好になる。また、この多層クッション10は、背もたれに取り付けて使用することもでき、この場合、多層クッション10は、使用者の背中の形状に追従して変形するため、接触圧が分散されて、ホールド感が増し、座り心地が良好になる。
【0042】
さらに、この多層クッション10は、枕に組み付けて使用することもでき、この場合、枕カバーで多層クッション10に位置ずれが生じないようにする。この場合、多層クッション10は、使用者の頭部の形状に追従して変形するため、接触圧が分散されて、快適な睡眠ができるようになる。多層クッション10は、それ以外にも、アームレスト、フットレスト、座布団等、身体に接触するあらゆるクッションとして使用することもできる。
【0043】
なお、前述した実施形態では、孔付きクッション10Aの上側に孔付きクッション10Bを配置しているが、孔付きクッション10Bの上側に孔付きクッション10Aを配置してもよい。孔付きクッション10Aの上側に孔付きクッション10Bを配置したときには、弾性部11aの上部よりも弾性部11bの上部が僅かに上方に突出し、孔付きクッション10Bの上側に孔付きクッション10Aを配置したときには、弾性部11bの上部よりも弾性部11aの上部が僅かに上方に突出する。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る多層クッション10は、弾性部11aと貫通孔15を備えた孔付きクッション10Aと、弾性部11bと貫通孔15を備えた孔付きクッション10Bを重ねることで、弾性部11aと弾性部11bが交互に位置するようにしている。この場合、孔付きクッション10Aの流路17と孔付きクッション10Bの流路17が交差した状態で重なるが、これによって、孔付きクッション10A,10Bの両流路17内の空気の移動が妨げられることはない。このため、硬さのことなる弾性部11a,11bを備えた多層クッション10が容易に得られる。
【0045】
また、本実施形態に係る多層クッション10では、空気の供給排出により、孔付きクッション10A,10B内の空気圧が調節可能になっているとともに、各孔付きクッション10A,10Bの各収容部14内が、流路17を介して連通している。このため、孔付きクッション10A,10Bの弾性部11a,11bの硬さの調節が容易になる。さらに、収容部14内に弾性部材US,UHを収容しているため、一部の弾性部11a,11bに底付きが生じてクッション性が悪くなることが防止される。
【0046】
また、弾性部11a,11bの上下方向の中央部分の断面の大きさと貫通孔15の大きさが同程度になっているため、弾性部11a,11bはそれぞれ対応する貫通孔15に嵌合するようになる。これによって、孔付きクッション10A,10Bに横ずれが生じなくなる。さらに、本実施形態に係る多層クッション10は、孔付きクッション10A,10Bで構成されているため、孔付きクッション10A,10Bの一方が破損したときには、破損した一方だけを取り換えることができるという効果も生じる。また、外郭部12は、同じ形状の下側外郭部12aと上側外郭部12bを溶着して形成され、同じ形状の外郭部12を、孔付きクッション10Aと、孔付きクッション10Bの双方に用いているため、多層クッション10の製造が容易であるとともに、安価になる。
【0047】
また、前述した実施形態では、弾性部11aと弾性部11bが交互に配置されているが、他の実施形態として、硬さのことなる2種類の弾性部を不規則に配置させて多層クッションを構成することもできる。この場合、一方の孔付きクッションを、弾性部と貫通孔を任意の位置に配置させて形成し、他方の孔付きクッションに、一方の孔付きクッションの弾性部に対応する貫通孔と、一方の孔付きクッションの貫通孔に対応する弾性部を設ける。この場合、各孔付きクッションの弾性部と貫通孔の数は同じであってもよいし異なっていてもよい。すなわち、多層クッションに、貫通孔だけの領域が含まれていてもよい。
【0048】
この実施形態によると、任意の硬さの弾性部が任意の位置に配置された多層クッションが容易に得られる。この場合、例えば、人体のツボに合わせて硬い弾性部を配置することができる。この実施形態に係る多層クッションのそれ以外の作用効果は、前述した実施形態と同様である。なお、この実施形態の変形例として、柔らかい弾性部と硬い弾性部を、前後左右にそれぞれ交互に配置するのではなく、それ以外の配置で規則的に配置して多層クッションを構成することもできる。
【0049】
さらに他の実施形態として、孔付きクッションを2個でなく、3個またはそれ以上で構成して、多層クッションを構成することができる。図7は、3個の孔付きクッション20A,20B,20Cからなる多層クッション20の概略を示している。この多層クッション20は、孔付きクッション20Aの上側に孔付きクッション20Bを組み付け、さらに孔付きクッション20Bの上側に孔付きクッション20Cを組み付けて、硬さが異なる弾性部21a、弾性部21bおよび弾性部21cが分散して配置されるようにしている。
【0050】
図8は多層クッション20を分解した状態を示しており、孔付きクッション20Aは、四角形の枠状部23aの内側部分に、12個の弾性部21aと16個の貫通孔25aを形成して構成されている。弾性部21aは、全て平面視が六角形になった同一形状に形成されており、左右両側に、突出した角部を位置させている。このように形成された弾性部21aは、左右に一定間隔で3個並んだ列が前後に4列配置された形状に形成され、各列は左右方向に互いにずれた状態で配置されている。すなわち、前列と前から3番目の列は左右方向の位置が同じで、前から2番目の列と後列は、前列と3番目の列よりも少し右側に位置しており、各弾性部21a間の間隔は同じになっている。
【0051】
また、図示は省略するが、弾性部21aは、前述した多層クッション10と同様、収容部内に、弾性部材と空気を収容して構成され、枠状部23aとそれに隣接する収容部との間および隣隣り合った弾性部21aの収容部の間には、それぞれ細い連結縁部が形成されている。そして、連結縁部の内部に、流路27aが形成されており、この流路27aによって枠状部23aの内部と各収容部の内部はそれぞれ連通している。また、枠状部23aの角部のうちの収容部が位置する2つの角部の近傍にはそれぞれ流路27aを外部に開放する給排口部(図示せず)が形成されている。
【0052】
貫通孔25aは、各弾性部21a間を結ぶ流路27aが形成された連結縁部の間、および枠状部23aとその近傍に位置する各弾性部21aを結ぶ流路27aが形成された連結縁部との間(前部左側の2か所と後部右側の2か所は除く)に形成されている。貫通孔25aは、それぞれ平面視が略三角形に形成されており、内部に弾性部21aの大きさのものを1個設置できる14個の貫通孔25aと、弾性部21aの大きさのものを2個設置できる2個の貫通孔25aからなっている。
【0053】
孔付きクッション20Bは、枠状部23aと同じ大きさの枠状部23bの内側部分に、9個の弾性部21bと11個の貫通孔25bを形成して構成されている。弾性部21bは、弾性部21aと同様、収容部内に、弾性部材と空気を収容して構成されているが、弾性部材の硬度と空気圧を変えることにより、弾性部21aよりも少し硬くなっている。この弾性部21bは、左右に一定間隔で3個並んだ列が前後に3列配置された形状に形成され、各列は左右方向に互いにずれた状態で配置されている。すなわち、前列と後列は、2番目の列よりも右に位置しており、各弾性部21b間の間隔は同じになっている。
【0054】
また、枠状部23bとその近傍に位置する収容部との間および隣隣り合った弾性部21bの収容部の間には、それぞれ細い連結縁部(図示せず)が形成されている。そして、連結縁部の内部に、流路27bが形成されており、この流路27bによって枠状部23bの内部と各収容部の内部はそれぞれ連通している。また、枠状部23bの角部のうちの2つの角部の近傍にはそれぞれ流路27bを外部に開放する給排口部(図示せず)が形成されている。
【0055】
貫通孔25bは、各弾性部21b間を結ぶ流路27bが形成された連結縁部の間、および枠状部23bとその近傍に位置する各弾性部21bを結ぶ流路27bが形成された連結縁部との間に形成されている。貫通孔25bは、それぞれ平面視が略三角形に形成されたものと略L形に形成されたものからなっており、内部に弾性部21aの大きさのものを1個設置できる8個の貫通孔25bと、弾性部21aの大きさのものを2個設置できる1個の貫通孔25bと、弾性部21aの大きさのものを4個設置できる1個の貫通孔25bと、弾性部21aの大きさのものを7個設置できる1個の貫通孔25bからなっている。
【0056】
孔付きクッション20Cは、枠状部23aと同じ大きさの枠状部23cの内側部分に、9個の弾性部21cと11個の貫通孔25cを形成して構成されており、孔付きクッション20Bを左右方向に反転し、さらに、各弾性部21bを枠状部23bに対して少し後方に位置させた形状をしている。弾性部21cは、弾性部21a,21bと同様、収容部内に、弾性部材と空気を収容して構成されているが、弾性部材の硬度と空気圧を変えることにより、弾性部21bよりも少し硬くなっている。また、孔付きクッション20Cには、孔付きクッション20Bと同様、連結縁部が形成され、連結縁部の内部に流路27cが形成されている。また、枠状部23cの角部のうちの2つの角部の近傍にはそれぞれ流路27cを外部に開放する給排口部(図示せず)が形成されている。
【0057】
そして、孔付きクッション20Aの上側に孔付きクッション20Bを位置させ、孔付きクッション20Aの貫通孔25aに孔付きクッション10Bの弾性部21bの下部を貫通させ、孔付きクッション20Bの貫通孔25bに孔付きクッション20Aの弾性部21aの上部を貫通させて、孔付きクッション20Aに孔付きクッション20Bを組み付ける。さらに、孔付きクッション20Bの上側に孔付きクッション20Cを位置させ、孔付きクッション20Aの貫通孔25aおよび孔付きクッション10Bの貫通孔25bの空いた部分に孔付きクッション20Cの弾性部21cの下部を貫通させ、孔付きクッション20Cの貫通孔25cに孔付きクッション20Aの弾性部21aの上部と孔付きクッション20Bの弾性部21bの上部を貫通させて、孔付きクッション20A,20Bに孔付きクッション20Bを組み付ける。
【0058】
これによって、それぞれ硬さのことなる3種類の弾性部21a,21b,21cが分散して配置された多層クッション20が得られる。この場合、枠状部23a,23b,23cは重なる。また、流路27a,27b,27cには、互いに重なる部分が生じるが、弾性部21a,21b,21cとは重なることはない。さらに、変形例として、弾性部21a,21b,21cの配置を変えて、孔付きクッション20A,20B,20Cを組み付けたときに、任意の位置に所定の硬さの弾性部21a,21b,21cが位置するようにすることができる。この実施形態によると、3種類の硬さの弾性部21a,21b,21cを任意の位置に配置した多層クッションを得ることができる。さらに、同様にして、4つ以上の孔付きクッションで多層クッションを構成することもできる。
【0059】
また、他の実施形態として、前述した各実施形態における多層クッションにおいて、弾性部から弾性部材を省略することもできる。この場合、収容部内の空気圧を調節することで、各孔付きクッションの硬さが異なるようにする。また、前述した収容部内に弾性部材と空気を収容した弾性部を備えた多層クッションにおいては、各孔付きクッションの弾性部の硬さを変えるために、弾性部材の硬度と空気圧との双方が異なるようにしているが、弾性部材の硬度と空気圧の一方を同じにして他方だけが異なるようにしてもよい。さらに、各孔付きクッションの弾性部の硬さは同じにして、各孔付きクッションの弾性部の上部の高さが異なるようにし、使用者が多層クッションを押圧したときに、各孔付きクッションの弾性部から受ける反発力が異なるようにすることで、各弾性部の硬さが異なるように感じるようにしてもよい。
【0060】
さらに他の実施形態として、弾性部を発泡樹脂からなる多孔質の弾性部材で構成した複数の孔付きクッションで多層クッションを構成してもよい。この場合、硬さの異なる材料を用いることで各孔付きクッションの弾性部の硬さが異なるようにする。また、さらに他の実施形態として、この弾性部を発泡樹脂からなる多孔質の弾性部材で構成した孔付きクッションと、前述した孔付きクッション20A、孔付きクッション20Bおよび孔付きクッション20Cの少なくとも1つを組み合わせて多層クッションを構成してもよい。さらに、弾性部を空気以外の流体を用いて構成した孔付きクッションを製造し、この孔付きクッションと、前述した各孔付きクッション20A等のいずれかを組み合わせて、多層クッションを構成してもよい。すなわち、種類の異なる複数の孔付きクッションを、適宜組み合わせて多層クッションを構成することができる。
【0061】
図9および図10は、前述した多層クッション10を備えたマットレス30を示している。このマットレス30は、寝具として用いられるもので、2つの多層クッション10、マットレス本体31、シート部材32およびこれらのものを収容するカバー部材34を備えている。また、マットレス30は、前後方向の長さが略190mm、左右方向の長さが略80mm、厚みが略15mm程度の大きさに設定されている。
【0062】
マットレス本体31は、可撓性を備えたシート状の基部31aの上面に伸縮性および弾性を備えた発泡ウレタンからなるクッション部31bを貼り付けて構成されており、マットレス30よりも僅かに小さい大きさに形成されている。このマットレス本体31の上面における中央部分と後部側部分には、それぞれ多層クッション10を設置できる凹部31c,31dが形成されている。凹部31cは、マットレス30に使用者が寝た時に、使用者の腰部および臀部が当接する部分に位置し、凹部31dは、マットレス30に使用者が寝た時に、背中が当接する部分に位置するようになっている。
【0063】
そして、2つの多層クッション10は、それぞれポンプPを外部に突出させて、凹部31c,31d内に設置されている。また、各多層クッション10が凹部31c,31d内に設置された状態では、各多層クッション10の上面は、マットレス本体31の上面に位置するか、またはそれよりも僅かに上方に突出した状態になる。また、クッション部31bには、前後に一定間隔で左右に延びる複数の線状切欠き部31eが形成されている。この線状切欠き部31eは、前後に100mm〜150mm程度の間隔で配置され、クッション部31bの上面から基部31aに向かって延びている。この線状切欠き部31eを設けることによって、マットレス本体31を曲げやすくなる。
【0064】
シート部材32は、マットレス本体31のクッション部31bよりも軟質でかつ薄い発泡ウレタンからなっている。このシート部材32は、2つの多層クッション10が設置されたマットレス本体31の上面に設置される。このシート部材32を用いることによって、多層クッション10とマットレス本体31の凸凹感が緩和される。
【0065】
カバー部材34は、2つの多層クッション10が設置されたマットレス本体31およびシート部材32を積層し、少し圧縮させた状態で収容できる扁平な袋状に形成されており、周側部の略半分(図9および図10では右側半分)に線状の開口が形成されている。そして、開口に線ファスナー34aが設けられており、この線ファスナー34aによって、カバー部材34は、開閉可能になっている。また、カバー部材34の左側部の後部側には、多層クッション10に接続されたポンプPを外部に取り出すための切欠き穴(図示せず)が形成されている。また、カバー部材34は、抗菌処理が施された布で構成され、内面には防水加工が施されている。このため、カバー部材34によると、菌が発生し難く、肌触りがよくなるとともに、内部に水分等の液体が浸入することが防止される。
【0066】
このように構成されたカバー部材34の線ファスナー34aを開けてカバー部材34の内部に、2つの多層クッション10が設置されたマットレス本体31およびシート部材32を入れる。このとき、ポンプPは、切欠き穴から外部に出しておく。そして、線ファスナー34aを閉じて、図9に示したマットレス30が得られる。このマットレス30を使用する際には、ポンプPの操作により、2つの多層クッション10の硬さを調整する。
【0067】
その状態で、使用者は、マットレス30の上面に寝る。これによると、2つの多層クッション10は、それぞれ使用者の腰部、臀部および背中に沿って変形する。この結果、多層クッション10と使用者の体との接触面積が増大し、体圧が適度に分散されるようになり、床ずれの発生を防止できるとともに、快適な睡眠が可能になる。また、マットレス本体31に線状切欠き部31eを設けることによって、マットレス30は曲がり易くなっているため、マットレス30を曲面状の台などの設置面に設置する場合でも、マットレス30は設置面に沿うようになる。なお、ポンプPとして、電動式のものを用いる場合には、ポンプPをカバー部材34の内部に収容し、操作部だけを外部に出してもよい。
【0068】
以上のように、本実施形態に係るマットレス30によると、使用者の腰部、臀部および背中が当接する部分にマッサージ効果を発生させることができるとともにクッション性を高めることができる。また、使用者が病人や老人など体が不自由な人である場合には、排尿やよだれなどで、カバー部材34が汚れても、その汚れがカバー部材34の内部に浸入することが防止される。さらに、多層クッション10が設置されたマットレス本体31の上面に、シート部材32を設置したため、使用者が多層クッション10の凹凸を強く感じることがなくなり、マットレス30の使い心地が良くなる。
【0069】
また、前述したマットレス30の他の実施形態として、シート部材32を省略してもよい。さらに、前述したマットレス30では、マットレス本体31のクッション部31bに、左右に延びる複数の線状切欠き部31eを形成しているが、この線状切欠き部31eに加えて、上下に延びる線状切欠き部を一定間隔で複数形成してもよい。これによるとマットレスを前後方向でなく左右方向にも曲げ易くなる。
【0070】
本発明に係る多層クッションおよびマットレスは、前述した各実施形態に限定するものでなく適宜、変更して実施することができる。例えば、前述した各実施形態に係る多層クッション10等では、外郭部12をウレタンフィルムで構成しているが、外郭部12を構成する材料としては、ウレタンフィルムに限らず、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)フィルム、塩化ビニルフィルムなど可撓性を備え内部に空気を気密状態で収容できる外郭部12を形成できるものであればなんでもよい。また、弾性部材US,UHを構成する材料としても、発砲ウレタンに限らず、弾性を備えたものであれば何でもよい。
【0071】
さらに、外郭部12内に充填される流体としても、空気に代えて、他の気体や液体を用いてもよい。空気以外の流体を用いる場合には、流体を収容するタンクを設け、タンク内の流体を、ポンプPの作動により外郭部12内に供給したり排出したりできるようにする。また、弾性部11a,11b等の形状についても、四角形や六角形に限らず、円形、楕円形、三角形、他の多角形、星形等種々の形状にすることができ、その個数も適宜変更することができる。さらに、本発明に係る多層クッションおよびマットレスのそれ以外の部分についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
10,20…多層クッション,10A,10B,20A,20B,20C…孔付きクッション、11a,11b,21a,21b,21c…弾性部、14…収容部、15,25a,25b,25c…貫通孔、17,27a,27b,27c…流路、30…マットレス、31…マットレス本体、31c,31d…凹部、31e…線状切欠き部、32…シート部材、34…カバー部材、US,UH…弾性部材。
図1
図2
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図7
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図9
図10