(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
微細組織として、30面積%以上(100面積%を除く)のフェライト(ferrite)と、70面積%以下(0面積%を除く)のパーライト(pearlite)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の非調質線材。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一側面による冷間加工性に優れた非調質線材について詳細に説明する。
本発明者らは、伸線加工後に所定の強度を有するとともに、優れた冷間加工性を確保することができる線材を提供するために、様々な角度から検討を行った。その結果、線材の平均硬度、及び線材の中心偏析部と非偏析部の硬度比を適切に制御することにより、伸線加工後に所定の強度を有するとともに、冷間加工性が劣化しない線材を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の線材は、線材の直径方向における1/2dの位置及び1/4dの位置で測定した線材の硬さをそれぞれHv
,1/2d(Hv)、Hv
,1/4d(Hv)としたときに、下記関係式1及び2を満たすことを特徴とする。
下記関係式1を満たさない場合には、伸線加工後の強度が過度に大きくなって冷間加工性が劣化する可能性があり、下記関係式2を満たさない場合には、伸線加工後の冷間鍛造時の線材の内部に割れが発生することがあり、その結果、冷間加工性が劣化するおそれがある。
[関係式1](Hv
,1/2d+Hv
,1/4d)/2≦240
[関係式2]Hv
,1/2d/Hv
,1/4d≦1.2
(ここで、dは線材の直径を意味する)
【0010】
上記関係式1及び2を満たすために、本発明の線材は、以下のような合金組成及び成分の範囲を有することができる。後述する各成分の含有量は、特に言及しない限り、いずれも重量基準であることを予め明らかにしておく。
まず、非調質線材の合金組成及び成分の範囲について詳細に説明する。
【0011】
C:0.15〜0.30%
炭素は、線材の強度を向上させる役割を果たす。本発明では、かかる効果を奏するために、0.15%以上含まれることが好ましく、0.16%以上含まれることがより好ましい。但し、その含有量が過剰な場合、鋼の変形抵抗が急増し、その結果、冷間加工性が劣化するという問題がある。したがって、上記炭素の含有量の上限は、0.3%であることが好ましく、0.29%であることがより好ましい。
【0012】
Si:0.05〜0.3%
シリコンは、脱酸剤として有用な元素である。本発明では、かかる効果を奏するために、0.05%以上含まれることが好ましく、0.06%以上含まれることがより好ましい。但し、その含有量が過剰な場合、固溶強化により鋼の変形抵抗が急増し、その結果、冷間加工性が劣化するという問題がある。したがって、上記シリコンの含有量の上限は、0.3%であることが好ましく、0.25%であることがより好ましい。
【0013】
Mn:1.0〜2.0%
マンガンは、脱酸剤及び脱硫剤として有用な元素である。本発明では、かかる効果を奏するために、1.0%以上含まれることが好ましく、1.1%以上含まれることがより好ましい。但し、その含有量が過剰な場合、鋼自体の強度が過度に高くなって鋼の変形抵抗が急増し、その結果、冷間加工性が劣化するという問題がある。したがって、上記マンガンの含有量の上限は、2.0%であることが好ましく、1.8%であることがより好ましい。
【0014】
Cr:0.5%以下(0%を除く)
クロムは、熱間圧延時のフェライト及びパーライト変態を促進させる役割を果たす。また、鋼自体の強度を必要以上に高くせず、鋼中の炭化物を析出して、固溶炭素量を低減させることで、固溶炭素による動的ひずみ時効の減少に寄与する。但し、その含有量が過剰な場合、鋼自体の強度が過度に高くなって鋼の変形抵抗が急増し、その結果、冷間加工性が劣化するという問題がある。上記クロムの含有量は、0.5%以下(0%を除く)であることが好ましく、0.05〜0.45%であることがより好ましい。
【0015】
P:0.02%以下
リンは、鋼中に不可避に含有される不純物であって、結晶粒界に偏析して鋼の靭性を低下させ、遅延破壊抵抗性を減少させる主な原因となる元素であるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、リンの含有量は0%に制御することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明では、上記リンの含有量の上限を0.02%に管理する。
【0016】
S:0.02%以下
硫黄は、鋼中に不可避に含有される不純物であって、結晶粒界に偏析して鋼の延性を大きく低下させ、鋼中硫化物(MnS介在物)を形成して、冷間鍛造性、遅延破壊抵抗性、及び応力弛緩特性を劣化させる主な原因となる元素であるため、その含有量を可能な限り低く制御することが好ましい。理論上、硫黄の含有量は0%に制御することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明では、上記硫黄の含有量の上限を0.02%、より好ましくは0.01%、さらに好ましくは0.009%、最も好ましくは0.008%に管理する。
【0017】
可溶性Al:0.01〜0.05%
可溶性アルミニウムは、脱酸剤として有用に作用する元素である。本発明では、かかる効果を奏するために、0.01%以上含まれることが好ましく、0.015%以上含まれることがより好ましく、0.02%以上含まれることがさらに好ましい。但し、その含有量が0.05%を超えると、AlNの形成によるオーステナイト粒度の微細化効果が大きくなって冷間加工性が低下する。したがって、本発明では、上記可溶アルミニウムの含有量の上限を0.05%に管理する。
【0018】
Nb:0.005〜0.02%
ニオブは、炭窒化物を形成して、オーステナイト及びフェライトの粒界移動を制限する役割を果たす元素であって、0.005%以上含有する。しかし、上記炭窒化物は、破壊起点として作用して、衝撃靭性、特に低温衝撃靭性を低下させる可能性があるため、溶解度限界を守って添加することが好ましい。また、その含有量が過剰な場合には、固溶限界を超えるため、粗大な析出物を形成するという問題がある。したがって、その含有量は0.02%以下に制限することが好ましく、0.018%以下に制限することがより好ましい。
【0019】
V:0.05〜0.2%
バナジウムは、ニオブと同様に炭窒化物を形成して、オーステナイト及びフェライトの粒界移動を制限する役割を果たす元素であって、0.05%以上含有する。但し、上記炭窒化物は、破壊起点として作用して、衝撃靭性、特に低温衝撃靭性を低下させる可能性があるため、溶解度限界(可溶性ubility limit)を守って添加することが好ましい。したがって、上記バナジウムの含有量は、0.2%以下に制限することが好ましく、0.18%以下に制限することがより好ましい。
【0020】
N:0.01%以下
窒素は、不可避に含有される不純物であって、その含有量が過剰な場合には、固溶窒素量が増加して鋼の変形抵抗が急増し、その結果、冷間加工性が劣化するという問題がある。理論上、窒素の含有量は0%に制御することが有利であるが、製造工程上必然的に含有せざるを得ない。したがって、上限を管理することが重要であり、本発明では、上記窒素の含有量の上限を0.01%に管理することが好ましく、0.008%に管理することがより好ましく、0.007%に管理することがさらに好ましい。
【0021】
上記合金組成の他の残部は鉄(Fe)である。さらに、本発明の非調質線材は、通常の鋼の工業的生産過程で含まれ得る他の不純物を含むこともできる。かかる不純物は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも分かる内容であるため、本発明では、特にその種類と含有量を制限しない。
【0022】
但し、Tiは、本発明の効果を得るために、その含有量を極力抑えなければならない代表的な不純物に該当するため、これについて簡単に説明すると、次の通りである。
Ti:0.005%以下
チタンは、炭窒化物の形成元素であって、Nb及びVよりも高い温度で炭窒化物を形成する。したがって、鋼中にチタンが含まれると、C及びNの固定には有利であり得るが、Tiの炭窒化物を核として、Nb及び/またはVが析出して基地内に粗大な炭窒化物が多量形成されるため、冷間加工性が劣化する可能性がある。したがって、その上限を管理することが重要であり、本発明では、上記チタンの含有量の上限を0.005%に管理することが好ましく、0.004%に管理することがより好ましい。
【0023】
一例によると、本発明の線材の炭素当量(Ceq)は、0.5以上0.6以下であることができる。ここで、炭素当量(Ceq)は、下記式1で定義されることができる。もし、炭素当量(Ceq)が0.5未満であるか、または0.6を超えると、目標とする強度を確保することが難しくなり得る。
[式1]Ceq=[C]+[Si]/9+[Mn]/5+[Cr]/12
(ここで、[C]、[Si]、[Mn]及び[Cr]はそれぞれ、該当元素の含有量(%)を意味する)
【0024】
一例によると、C、Mn、Cr、Nb及びVの含有量は、下記関係式3を満たすことができる。もし、下記関係式3を満たさない場合には、中心部偏析により、線材の中心偏析部と非偏析部の硬度差が急増し、その結果、冷間鍛造加工時の内部割れ発生の可能性が大幅に増加し、冷間加工性が劣化するおそれがある。
[関係式3]7.35[C]+1.88[Mn]+0.34[Cr]+0.25[Nb]+0.47[V]≦4.5
(ここで、[C]、[Mn]、[Cr]、[Nb]及び[V]はそれぞれ、該当元素の含有量(%)を意味する)
【0025】
一例によると、Nb及びVの含有量は、下記関係式4を満たすことができる。本発明者らは、関係式4を満たす場合、粗大なNb及びVの複合炭窒化物の形成が抑制されることを確認した。もし、Nb及びVの含有量が下記関係式4を満たさない場合には、ビレットの再加熱時に、Nb、Vの炭窒化物が十分に固溶されず、線材の製造工程中において基地内に粗大に析出して、冷間加工性が劣化するおそれがある。10[Nb]/[V]の値のより好ましい下限は0.6であり、より好ましい下限は0.7である。また、10[Nb]/[V]の値のより好ましい上限は1.5であり、さらに好ましい上限は1.2である。
[関係式4]0.5≦10[Nb]/[V]≦2.0
(ここで、[Nb]及び[V]はそれぞれ、該当元素の含有量(%)を意味する)
【0026】
一例によると、上記非調質線材は、Nb及び/またはVを含む炭窒化物を含み、上記炭窒化物の平均円相当径(equivalent circular diameter)は70nm以下であることができる。もし、炭窒化物の平均円相当直径が70nmを超えると、中心偏析部においてかかる炭窒化物が破壊起点として作用するおそれがある。ここで、炭窒化物とは、炭素及び/または窒素を含む析出物を意味する。
一例によると、上記Nb及び/またはVを含む炭窒化物のうち、平均円相当直径80nm以上の炭窒化物の単位面積当たりの個数が5個/μm
2以下であることができる。もし、平均円相当直径80nm以上の炭窒化物の単位面積当たりの個数が5個/μm
2を超えると、目標とする冷間加工性を確保することが難しくなり得る。
一方、本発明では、Nb及び/またはVを含む炭窒化物の平均円相当直径などを測定する方法については特に限定しないが、例えば、次のような方法を用いることができる。すなわち、非調質線材を長さ方向と垂直な方向に切断した後、走査型電子顕微鏡(FE−SEM、Field Emission Scanning Electron Microscope)を用いて1/4dの位置(ここで、dは非調質線材の直径を意味する)において1,000倍率で断面写真を撮影し、電子プローブ微小分析(EPMA、Electron Probe Micro−Analyzer)を用いることで、それぞれの析出物の組成を分析してその種類を区別する。その後、これを分析して、Nb及び/またはVを含む炭窒化物の平均円相当直径、及び平均円相当直径が80nm以上の粗大な炭窒化物の個数を算出することができる。
【0027】
一例によると、本発明の線材は、その微細組織として、フェライト(ferrite)とパーライト(pearlite)を含むことができる。より好ましくは、面積分率で、30%以上(100%を除く)のフェライト(ferrite)と、70%以下(0%を除く)のパーライト(pearlite)と、を含むことができる。上記のような組織を確保する場合には、優れた冷間加工性に加え、適切な伸線加工後の優れた強度を確保することができる利点がある。
また、一例によると、上記フェライトの平均粒径は、5〜25μmであることができ、より好ましくは10〜20μmであることができる。上記フェライトの平均粒径が5μm未満の場合には、粒界微細化により強度が増加し、冷間加工性が低下するおそれがある。一方、25μmを超えると、強度が減少するおそれがある。
また、一例によると、上記フェライトの粒径標準偏差は、5μm以下(0μmを含む)であることができ、より好ましくは3μm以下(0μmを含む)であることができる。上記フェライトの粒径標準偏差が5μmを超えると、粗大なフェライトが脆性破壊の起点となって鋼の靭性と加工性が劣化するおそれがある。
【0028】
一方、ともに形成されるパーライトの平均粒径及び粒径標準偏差は、上記フェライトの平均粒径及び粒径標準偏差の影響を受けるため、特に制限しない。ここで、粒径とは、線材の長さ方向である一断面を観察して検出した粒子の円相当直径(equivalent circular diameter)を意味する。
一例によると、本発明の線材は、線材の状態で断面減少率(RA)が70%以上と延性が非常に優れるという長所がある。
一例によると、本発明の線材を5〜25%の伸線加工量(D)に伸線加工時に、伸線加工後の線材の硬さは下記関係式5を満たすことができる。もし、伸線加工後の線材の硬さが関係式5を満たさない場合には、加工硬化による強度上昇が非常に大きくなって冷間加工性が急激に低下する可能性がある。
[関係式5]Hv
,1−10≦(Hv
,D,1/2d+Hv
,D,1/4d)/2
≦Hv
,1+10
(ここで、Hv
,1は「(Hv
,1/2d+Hv
,1/4d)/2+85.45×{1−exp(−D/11.41)}」を意味し、Hv
,D,1/2d、Hv
,D,1/4dはそれぞれ、伸線加工後の線材の直径方向における1/2dの位置及び1/4dの位置で測定した線材の硬さを意味する)
【0029】
以上で説明した本発明の伸線用線材は、様々な方法で製造することができ、その製造方法は、特に制限されない。但し、一実施例として、次のような方法により製造することができる。
以下、本発明の他の一側面である冷間加工性に優れた非調質線材の製造方法について詳細に説明する。
まず、上記成分系を満たすブルーム(bloom)を加熱した後、鋼片を圧延してビレット(billet)を得る。
ブルーム(bloom)の加熱温度は、1200〜1300℃であることが好ましく、1220〜1280℃であることがより好ましい。ブルームの加熱温度が1200℃未満の場合には、熱間変形抵抗が増加する可能性がある。一方、1300℃を超えると、オーステナイトの粗大化により、延性が劣化するおそれがある。
一例によると、ブルームの加熱時に、加熱温度における保持時間は、4時間以上であることができる。もし、その保持時間が4時間未満の場合には、均質化処理が十分でないおそれがある。一方、加熱温度における保持時間が長いほど、均質化に有利であるため偏析の低減に有利となる。したがって、本発明では、その保持時間の上限については特に限定しない。
【0030】
次に、上記ビレット(billet)を再加熱した後、線材圧延して非調質線材を得る。
ビレットの再加熱温度は1050〜1250℃であることが好ましく、1100〜1200℃であることがより好ましい。もし、ビレットの再加熱温度が1050℃未満の場合には、熱間変形抵抗が増加して、生産性の低下をもたらす可能性がある。一方、加熱温度が1250℃を超えると、フェライト結晶粒が過度に粗大となり、延性が低下するおそれがある。
一例によると、ビレットの再加熱時に、再加熱温度における保持時間は80分以上であることができる。もし、その保持時間が80分未満の場合には、均質化処理が十分でない可能性がある。一方、再加熱温度における保持時間が長いほど、偏析を助長する元素の均質化に有利となる。したがって、本発明では、その保持時間の上限については特に限定しない。
【0031】
線材圧延時の仕上げ圧延温度はAe3〜(Ae3+50)℃であることが好ましい。もし、仕上げ圧延温度がAe3℃未満の場合には、線材の中心部と表面部の温度偏差により、フェライト結晶粒の粒度偏差が発生し、フェライト結晶粒微細化による強度上昇が原因で変形抵抗が増加する可能性がある。一方、Ae3+50℃を超えると、フェライト結晶粒が過度に粗大となって、靭性が低下するおそれがある。ちなみに、Ae3は、以下の式2から計算することができる。ここで、仕上げ圧延温度とは、仕上げ圧延開始時点におけるスラブの表面温度を意味する。仕上げ圧延開始後は、復熱効果により、スラブの表面温度が仕上げ圧延温度よりも上昇する可能性があるが、本発明では、仕上げ圧延開始後のスラブの表面温度については特に限定しない。
[式2]Ae3(℃)
=930-185√[C]+60[Si]-25[Mn]-500[P]+12[Cr]-200[Al]+110[V]-400[Ti]
(ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[P]、[Cr]、[Al]、[V]及び[Ti]はそれぞれ、該当元素の含有量(%)を意味する)
【0032】
その後、上記非調質線材を巻き取った後、冷却する。
非調質線材の巻取温度は750〜900℃であることができ、より好ましくは800〜850℃であることができる。もし、巻取温度が750℃未満の場合には、冷却時に発生した表層部のマルテンサイトが復熱によって回復せず、焼戻マルテンサイトが生成されて、硬くて脆い鋼となるため、冷間加工性が低下するおそれがある。一方、巻取温度が900℃を超えると、その表面に厚いスケールが形成されて、脱スケール時にトラブルが発生しやすいだけでなく、冷却時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
非調質線材の冷却時の冷却速度は、0.1〜1℃/secであることができ、好ましくは0.3〜0.8℃/sec以下であることができる。これは、安定的にフェライトとパーライトの複合組織を形成するためのものである。もし、冷却速度が0.1℃/sec未満の場合には、パーライト組織のラメラ間隔が広がって延性が足りない可能性があり、1℃/secを超えると、フェライト分率が足りなくなり冷間加工性が劣化するおそれがある。
【0033】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、かかる実施例の記載は、本発明の実施を例示するためのものであって、かかる実施例の記載によって本発明が制限されるものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とそれから合理的に類推される事項によって決定されるためである。
下記表1のような合金組成を有するブルーム(bloom)を1250
℃で5時間加熱した後、1150
℃の仕上げ圧延温度条件下で鋼片圧延してビレット(billet)を得た。その後、上記ビレット(billet)を1150
℃で2時間再加熱した後、線材圧延して線径20mmの非調質線材を製造した。この際、比較例1の場合、仕上げ圧延温度770
℃で仕上げ圧延し、残りの実施例の場合は、仕上げ圧延温度850
℃で仕上げ圧延した。次に、800
℃の温度で巻き取った後、0.5
℃/secの速度で冷却した。続いて、走査型電子顕微鏡を用いて冷却された線材の微細組織を観察し、炭窒化物の円相当直径などを算出した後、直径方向における1/2dの位置及び1/4dの位置で硬さを測定し、その結果を下記表2に示した。
また、冷却された線材の冷間加工性を評価し、下記表2にともに示した。冷間加工性は、切欠き圧縮試験片に対して真ひずみ0.7の圧縮試験を行って、割れが発生したか否かを評価した。この際、割れが発生していない場合を「GO」、割れが発生した場合を「NG」と評価した。
【0036】
その後、各線材にそれぞれ10%、20%、30%の伸線加工量を印加して鋼線を製造した。また、製造されたそれぞれの鋼線に対して、直径方向における1/2dの位置及び1/4dの位置で硬さを測定して、冷間加工性を評価し、その結果を下記表3に示した。
【表3】
表3から分かるように、本発明で提案する合金組成及び製造条件を満たす発明例1〜8の場合には、線材の平均硬度、及び線材の中心偏析部と非偏析部の硬度比が本発明で提供する範囲を満たしているため、冷間加工性が非常に優れていることが分かる。一方、比較例1〜9の場合には、線材の中心偏析部と非偏析部の硬度比が本発明で提供する範囲を超えるため、伸線加工後の冷間鍛造時の内部に割れが発生し、発明鋼に比べて冷間加工性が劣ることが分かる。