(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605142
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】自動車ブレーキシステムを運転するための方法および装置、ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/00 20060101AFI20191031BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20191031BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
B60T8/00 Z
B60T8/17 C
B60T13/74 D
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-524535(P2018-524535)
(86)(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公表番号】特表2018-521905(P2018-521905A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2016065890
(87)【国際公開番号】WO2017029017
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年1月31日
(31)【優先権主張番号】102015215532.3
(32)【優先日】2015年8月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,トーマス
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102012220770(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102010027348(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0251095(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/00
B60T 8/17
B60T 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)のブレーキシステム(3)を運転するための方法であって、液圧式に制御可能な少なくとも1つのホイールブレーキ装置(9)と、前記自動車(1)の少なくとも1つのホイール(6)に作用接続された/作用接続可能な、発電機式に運転可能な電気機械(4)と、戻し力(FR)に抗して移動可能なブレーキペダル(11)とを有しており、この場合、前記ブレーキペダル(11)の位置(x)に依存して目標ブレーキトルクが設定され、前記ブレーキペダルの位置(x)に依存して摩擦ブレーキトルクを発生させるためにホイールブレーキ装置(9)が制御され、かつ/または回生ブレーキトルクを発生させるために前記電気機械(4)が制御され、それによって前記ホイールブレーキ装置(9)および前記電気機械(4)が共に前記目標ブレーキトルクを発生させる方法において、
前記目標ブレーキトルクにおける前記摩擦ブレーキトルクの割合に依存して、前記戻し力(FR)を変えることが可能であり、
少なくとも、前記ブレーキペダルの位置(x)の増加に伴って前記戻し力(FR)が増加する勾配が、前記ブレーキペダルの位置(x)の所定範囲(x1−x2)において、当該所定範囲外と比較して小さく制御される、自動車(1)のブレーキシステム(3)を運転するための方法。
【請求項2】
前記摩擦ブレーキトルクの割合が予め設定可能な第1の限界値を上回ると、前記戻し力(FR)を増大させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記摩擦ブレーキトルクの割合が予め設定可能な第2の限界値を下回ると、前記戻し力(FR)を低下させることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の限界値が、前記第2の限界値よりも大きいかまたはこれと同じであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記戻し力(FR)を、前記ブレーキペダル(11)の移動が次第に大きくなるにつれて増大させることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記摩擦ブレーキトルクを、前記電気機械(4)の発電機特性曲線に依存して調節することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記戻し力(FR)を変えるために、前記ブレーキシステム(3)のブレーキ倍力装置(12)を制御することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
自動車(1)のブレーキシステム(3)を運転するための装置(10)であって、液圧式に制御可能な少なくとも1つのホイールブレーキ装置(9)と、前記自動車(1)の少なくとも1つのホイール(6)に作用接続された/作用接続可能な、発電機式に運転可能な電気機械(4)と、戻し力(FR)に抗して移動可能なブレーキペダル(11)とを有しており、この場合、前記ブレーキペダル(11)の位置(x)に依存して目標ブレーキトルクが設定され、検出された前記ブレーキペダルの位置(x)に依存して摩擦ブレーキトルクを発生させるために前記ホイールブレーキ装置(9)が制御され、かつ/または回生ブレーキトルクを発生させるために前記電気機械(4)が制御され、それによって前記ホイールブレーキ装置(9)および前記電気機械(4)が共に前記目標ブレーキトルクを発生させる形式のものにおいて、
規定通りの使用時に請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実施する自動車(1)のブレーキシステム(3)を運転するための装置(10)。
【請求項9】
自動車(1)のためのブレーキシステム(3)であって、液圧式に制御可能な少なくとも1つのホイールブレーキ装置(9)と、前記自動車(1)の少なくとも1つのホイール(6)に作用接続された/作用接続可能な、発電機式に運転可能な電気機械(4)と、戻し力(FR)に抗して移動可能なブレーキペダル(11)とを有しており、この場合、前記ブレーキペダル(11)の位置(x)に依存して目標ブレーキトルクが設定され、検出された前記ブレーキペダルの位置(x)に依存して摩擦ブレーキトルクを発生させるためにブレーキ装置(8)が制御され、かつ/または回生ブレーキトルクを発生させるために前記電気機械(4)が制御され、それによって前記ブレーキ装置(8)および前記電気機械(4)が共に前記目標ブレーキトルクを発生させるブレーキシステムにおいて、
請求項8記載の装置(10)が設けられていることを特徴とする、自動車(1)のためのブレーキシステム(3)。
【請求項10】
戻し力を変えるために電気機械式のブレーキ倍力装置を備えることを特徴とする、請求項9記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のブレーキシステムを運転するための方法であって、液圧式に制御可能な少なくとも1つのホイールブレーキ装置と、自動車の少なくとも1つのホイールに作用接続された/作用接続可能な、発電機式に運転可能な電気機械と、目標ブレーキトルクを予め設定するための、戻し力に抗して移動可能なブレーキペダルとを有しており、この場合、ブレーキペダル位置に依存して摩擦ブレーキトルクを発生させるために摩擦ブレーキ装置が制御され、かつ/または回生ブレーキトルクを発生させるために電気機械が制御され、それによって摩擦ブレーキ装置および電気機械が共に目標ブレーキトルクを発生させる方法に関する。
【0002】
また本発明は、この方法を実施するための装置、並びにこのような形式のブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
今日の自動車には、従来の内燃機関に追加してまたはその代わりに、電気機械を有する駆動装置がますます装備されている。このような形式のハイブリッド駆動装置または電気駆動装置は、いわゆる再生式または回生式の制動によって、電気エネルギを生成することができる。このために、電気機械は発電機式に運転され、これによって、電気機械が負のトルクを自動車のドライブトレインに作用させると同時に、電気エネルギを生成する。多くの運転状況において、発電機式に運転される電気機械による純粋に電気的な制動は、所望の目標ブレーキトルクを生成するためには十分ではないので、さらに、再生式または回生式の制動に加えて、自動車の少なくとも1つのホイールに摩擦ブレーキトルクを発生させる従来のホイールブレーキ装置を液圧式に操作することが公知である。これによって、車両速度および目標ブレーキトルクに依存して、回生ブレーキトルクと共に目標ブレーキトルクを満たす液圧式の摩擦ブレーキトルクが得られる。このように、回生ブレーキトルクが液圧式に発生された摩擦ブレーキトルクと共に液圧式に消費されることによって、各運転状況における所望の目標ブレーキトルクを変えることができる。特に、液圧式の消費によって、電気機械の不安定なブレーキトルク特性若しくは発電機特性を補正することができる。
【0004】
この場合、制動操作中の回生ポテンシャルは、電気機械の発電機特性およびその他の周辺条件、例えば蓄電池の充電状態、電気機械の運転温度等にも依存している。この場合、発電機特性は、車速に依存しており、従って実際の車速に依存して、提供可能な様々な高さの回生ブレーキトルクを保証する。液圧的な消費によって、この依存性は目標ブレーキトルクのために補正され、運転者に、車速に依存しない分かりやすいブレーキトルクが、ブレーキペダル位置に依存して提供される。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
請求項1の特徴を有する本発明による方法は、運転者が、ブレーキペダルを操作したときに、ブレーキシステムが目標ブレーキトルクを主に回生式にまたは液圧式に変更するかどうかの触覚的なフィードバックを得ることができる、という利点を有している。これによって、運転者は、その運転方法若しくは実際の制動操作を、ブレーキペダルを移動させることによって、例えば回生ブレーキトルクを自動車のエネルギバランスを改善するために最大限利用するように、適合させることができる。このために、本発明によれば、目標ブレーキトルクにおける摩擦ブレーキトルクの割合に依存して、戻し力が変えられるようになっている。つまり、運転者がブレーキペダルを移動させるために克服しなければならない、ブレーキペダルに作用する戻し力は、摩擦ブレーキトルク若しくは回生ブレーキトルクの割合に依存して変えられるようになっている。これによって、運転者は、ブレーキペダルを操作するときに、運転者によって要求された目標ブレーキトルクがホイールブレーキ装置を制御するかどうかを、感じることができる。これによって、使用者は、簡単な形式および方法で、外部の状況が許容すれば、純粋な回生ブレーキトルクが得られるように、目標ブレーキトルクを調節することができる。従って、運転者は、その運転方法を、目標摩擦ブレーキトルクが例えば主に回生トルクによって変更されるように、適合させることができる。これによって、運転者は、摩擦ブレーキトルク、つまり液圧的な部分を有するブレーキトルクを生ぜしめる目標ブレーキトルクを、意図的に避けることができる。要求された目標ブレーキトルクがどのように回生ブレーキトルクおよび摩擦ブレーキトルクによって変更されるかが、運転者に視覚的に表示されるブレーキシステムとは異なり、本発明による方法は、運転者がその制動動作を適合させるために、例えば走行経過から目を離す必要がない、という利点を提供する。
【0006】
本発明の好適な実施態様によれば、摩擦ブレーキトルクの割合が予め設定可能な第1の限界値を上回ると、戻し力が増大されるようになっている。これによって、運転者は、ブレーキペダルを操作したときに、増大された対向圧力若しくは増大された戻し力を感じると、予め設定された摩擦ブレーキトルクが第1の限界値を上回り、その場合、目標ブレーキトルクが少なくとも部分的に摩擦ブレーキトルクによって変更されることを感知する。これに対して、運転者は、低下されたまたは僅かに増大された対向圧力を感じると、運転者の目標ブレーキトルクが、摩擦ブレーキトルクが第1の限界値を下回っていて特に回生式に制動される領域内にあることを感知する。第1の限界値は好適な形式で、第1の限界値を上回ったときに主に液圧式に制動され、それによって目標ブレーキトルクが摩擦ブレーキトルクの優勢的な割合から得られるように、選定される。
【0007】
本発明の好適な実施態様によれば、摩擦ブレーキトルクの割合が予め設定可能な第2の限界値を下回ると、戻し力が低下されるようになっている。つまり、例えば摩擦ブレーキトルクの実際に調節された割合が低下すると、戻し力は低下され、特に僅かに増大され、使用者は、目標ブレーキトルクを変えるために、ブレーキペダルを戻し力に抗して僅かに移動させることができる。これは例えば、電気機械の発電機特性に基づいて提供された電気機械の可能な回生ブレーキトルクが、車速の増大につれて、目標ブレーキトルクだけをまたはほぼ目標ブレーキトルクだけを、つまり液圧的な消費なしに変更できるまで、まず次第に増大する場合である。
【0008】
好適には、第1の限界値は、第2の限界値より大きいかまたはこれと同じである。これによって、増大された戻し力と低下された戻し力との間の予期しないまたは不安定な切換を避ける戻し力のヒステリシス制御が提供される。
【0009】
本発明の好適な実施態様によれば、戻し力は、ブレーキペダルの移動が次第に大きくなるにつれて戻し力に抗して増大するようになっている。これによって、戻し力に抗したブレーキペダルの移動時に戻し力は低下し、予期せずに省略された戻し力に基づいて運転者がブレーキペダルをさらに移動させ、それによって、意図したよりも高い目標ブレーキトルクを予め設定することは避けられる。これによって、戻し力は、摩擦ブレーキトルクの割合に依存して、戻し力の従来通りの経過に基づいてのみ低下され、戻し力の無制限の低下は行われないことが保証される。言い換えれば、摩擦ブレーキトルクの割合に依存して、戻し力に抗してブレーキペダルを移動させる際の戻し力増大、およびひいては戻し力は、従来通りの戻し力に対して低下される。特に、ブレーキペダルの戻し力は連続的に増大し、摩擦ブレーキトルクが第1および/または第2の限界値を下回る領域内でのみ、戻し力増大の勾配が低下されるようになっている。
【0010】
好適な形式で、摩擦ブレーキトルクは、電気機械の発電機特性曲線に依存して調節されるので、目標ブレーキトルクは好適には、ブレーキシステムを有する自動車の好適なエネルギバランスを得るために、目標ブレーキトルクのできるだけ大きい割合が回生ブレーキトルクによって変えられるように、変更される。
【0011】
特に好適には、戻し力を変えるために、ブレーキ倍力装置、特に電気機械式のブレーキ倍力装置が制御される。これによって、運転者に、目標ブレーキトルクにおける摩擦ブレーキトルクの割合または回生ブレーキトルクの割合に関する触覚的なフィードバックを与えるために、ブレーキシステム若しくはブレーキペダルの戻し力を、前述のように簡単な形式および方法で変えることができる。
【0012】
請求項8の特徴を有する本発明による装置は、前記方法を実施する、専用に用意されたコントロールユニットを特徴としている。その他の利点および好適な特徴は、前記説明並びに請求項に記載されている。
【0013】
請求項9の特徴を有する本発明によるブレーキシステムは、本発明による装置、並びにブレーキペダルの戻し力を変えるためのユニットを特徴としている。この場合、ユニットは、本発明による装置に接続されているので、装置が本発明の方法に従ってユニットを制御することによって戻し力を変えるようになっている。
【0014】
特に好適には、戻し力を変えるためのユニットは、ブレーキ倍力装置、特に電気機械式のブレーキ倍力装置である。液圧式のブレーキシステムは、通常はブレーキ倍力装置を備えており、従って液圧式のブレーキシステム内に組み込まなければならない、戻し力を変えるための追加的な構造群は必要ない。これによって、コスト上および取り付けスペース上の利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】好適なブレーキシステムを有する自動車の概略的な平面図である。
【
図2】ブレーキシステムの制動挙動を示す図である。
【
図3】ブレーキシステムのブレーキペダルの戻し力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0017】
図1は、駆動装置2並びにブレーキシステム3を有する自動車1の概略図を示す。
【0018】
駆動装置2は、駆動機械として電気機械4を有しており、この電気機械4は、選択的に伝動装置5によって自動車1の駆動輪6に作用接続されている。電気機械4は、モータ式および発電機式に運転され、このためにエネルギアキュムレータ7に接続または接続可能であり、エネルギアキュムレータ7から駆動のためのエネルギが取り出されるか、または回生運転時に発生されたエネルギがエネルギアキュムレータ7に供給される。
【0019】
以下に詳しく説明されているように、電気機械4は同時にブレーキシステム3の構成部分でもある。ブレーキシステム3は、液圧ブレーキ装置8を有していて、この液圧ブレーキ装置8は、自動車1のそれぞれ1つの車輪に対応配設されたホイールブレーキ装置9を液圧式に操作するために、複数のホイールブレーキ装置9に接続されており、それによって、自動車1を減速させるための摩擦ブレーキトルクが調節される。さらにブレーキシステム3は装置10を有していて、この装置10は、コントロールユニットとして構成されていて、液圧ブレーキ装置8並びに電気機械4を、目標ブレーキトルクに依存して制御する。
【0020】
このブレーキシステム3は、目標ブレーキトルクを予め設定するために、自動車1の運転者によって操作可能なブレーキペダル11を有している。このために、ブレーキペダル11は、矢印で示されているように、戻し力に抗して運転者によって移動させることができる。しかもこの場合、ブレーキペダル11は液圧ブレーキ装置8、特に液圧ブレーキ装置8の装置12、特にブレーキ倍力装置に接続されており、このブレーキ倍力装置は、図面では、見易さの理由によりブレーキペダル11に対応配設されて示されており、ブレーキペダル11に作用する戻し力を変化させるために構成されているか、またはそのために適している。
【0021】
ブレーキペダル位置によって予め設定された目標ブレーキトルクに依存して、装置10は、目標ブレーキトルクをホイールブレーキ装置9の摩擦ブレーキトルクによって、および電気機械4の回生ブレーキトルクによって変更するために、電気機械4および液圧ブレーキ装置8を制御する。
【0022】
図2には、このために、自動車1の速度vに関するグラフに電気機械4の発電機特性が示されている。この場合、発電機特性は特性曲線13によって示されており、この特性曲線13は、車両速度に依存して電気機械4により提供可能な回生ブレーキトルクを示す。標準的に、特性曲線13は、より低い速度v1乃至v2の領域内でその最大値を有する。同様に、
図2には、運転者がブレーキペダル11の操作によって調節した、例えば目標ブレーキトルクが特性曲線14によって示されている。図示の実施例では、目標ブレーキトルクは最大可能な回生ブレーキトルクを下回っているが、より低いおよびより高い車両速度vにおいては最大提供可能な回生ブレーキトルクを上回っている。従って、提供可能な回生ブレーキトルク13が目標ブレーキトルクを変更するためには不十分である領域I内で、装置10は、単数または複数のホイールブレーキ装置9によって相応の摩擦ブレーキトルクを、目標ブレーキトルクを変更するように調節するために、追加的に液圧ブレーキ装置8を制御する。目標ブレーキトルクが電気機械4だけによって提供され得る領域II内で、摩擦ブレーキトルクの割合が好適には可能な限り十分に減少され、特にゼロに設定されるので、電気機械4の回生能力が制動時に最大利用される。
【0023】
図3には、ブレーキペダル移動若しくは位置xに依存してペダル11に作用する戻し力F
Rがグラフで示されている。この場合、破線15によって、ペダルストロークxに依存する戻し力の従来の変化が示される。この場合、通常の戻し力は、戻し力に抗するブレーキペダル11の移動量が増大するにつれて連続的に増大する。特に、直線的なストロークと力に関する線が得られる。
【0024】
装置10は好適な方法を実行し、この方法において、ブレーキペダル11に作用する戻し力は、ブレーキ倍力装置12の影響を受けて変化する。このために、装置10はまず目標ブレーキトルクにおける摩擦ブレーキトルクの割合を算出する。図示の実施例では、摩擦ブレーキトルクの割合が、ゼロに等しい第1の限界値と比較されるようになっている。つまり、摩擦ブレーキトルクが目標ブレーキトルクの変更のために要求されると直ちに、第1の限界値が超えられる。これは、
図2では、走行速度v
0までおよび速度v
3からの場合、つまり、目標ブレーキトルクが少なくとも部分的に摩擦ブレーキトルクによって変更される領域I内の場合である。摩擦ブレーキトルクの割合が予め設定された第1の限界値を下回るかまたは、v
0乃至v
3の領域内におけるように、第1の限界値を下回る第2の予め設定可能な限界値を下回ると、装置10がブレーキ倍力装置12を制御し、
図3に特性曲線16によって示されているように、戻し力F
Rが特性曲線15に対して低下されるように、戻し力F
Rを変化させる。この場合、実際の走行速度vに依存してブレーキペダル位置xの領域が調節され、このブレーキペダル位置xの領域内で戻し力F
Rが通常の戻し力に対して低下される。x
1とx
2との間の領域の外で、つまり摩擦ブレーキトルクの割合がゼロより大きいときに、特性曲線15に従って戻し力は高められるか若しくは初期値に戻される。
【0025】
これによって、運転者は、運転者によって予め設定された目標ブレーキトルクに依存してブレーキシステム3が目標ブレーキトルクを変更するように感じる。領域x
1乃至x
2内で、運転者はブレーキペダル11を戻し力F
Rに抗して移動させる際により小さい対向圧力を感じるか、または殆ど増大しない対向圧力を感じる。いずれにしても、運転者は、特性曲線15に従った通常変化と比較して減少された対向圧力を感じる。目標ブレーキトルクが電気機械4だけではもはや変更不可能な程度に、運転者が目標ブレーキトルクを増大させ、追加的に液圧ブレーキ装置8が制御されるとはじめて、対向圧力が高められ、運転者は、運転者によって要求されたブレーキトルクを変更するために液圧ブレーキ装置8が追加的にスイッチオンされたように感じる。
【0026】
戻し力F
Rに影響を及ぼすために、ブレーキ倍力装置12はまず電気機械式のブレーキ倍力装置として構成されており、この電気機械式のブレーキ倍力装置の、戻し力F
Rに影響を及ぼす特性は、相応の制御若しくは影響によって補正可能である。これによって、運転者のために主観的に規定された、車両の公差範囲内で、例えば、そこに存在する車両に対する間隔または先行する車両の速度変化、または停止するまでの速度変化から得られる周辺状況を運転者に与える可能性が得られる。ブレーキペダル11における触覚的なフィードバックは、制動効果に関連して、特に電気機械4の回生ポテンシャルの利用に関連して、制動挙動の適合の直感的な変更を可能にする。
【0027】
さらにオプション的に、装置10は、基本的条件をより精確に示すためのその他の情報、例えば衛星保護されたナビゲーションシステムの実際の位置データ、例えば車間センサ、レーダセンサ、ビデオセンサ、ライダーセンサ等の周辺センサのデータ、または車両対車両通信のデータも算出することができる。
【0028】
全体的に、この方法は、運転者への触覚的なフィードバックによって自動車のエネルギバランスの最適化若しくは燃費低減を直感的に可能にするという利点を、運転者に提供する。
【符号の説明】
【0029】
1 自動車
3 ブレーキシステム
4 電気機械
6 ホイール
8 ブレーキ装置
9 ホイールブレーキ装置
10 装置
11 ブレーキペダル
12 ユニット、ブレーキ倍力装置
F
R 戻し力
v 自動車1の速度、車速
x ブレーキペダル