特許第6605148号(P6605148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605148希土類リン酸塩粒子、それを用いた散乱性向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605148
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】希土類リン酸塩粒子、それを用いた散乱性向上方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/37 20060101AFI20191031BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20191031BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20191031BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20191031BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C01B25/37 Z
   C08L101/00
   C08K3/32
   G02B5/02 B
   G02B1/04
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-531881(P2018-531881)
(86)(22)【出願日】2017年7月31日
(86)【国際出願番号】JP2017027689
(87)【国際公開番号】WO2018025800
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2018年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-152342(P2016-152342)
(32)【優先日】2016年8月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 顕治
(72)【発明者】
【氏名】伊東 純一
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−526270(JP,A)
【文献】 特開2014−237572(JP,A)
【文献】 特開2013−014497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/37
C08K 3/32
C08L 101/00
G02B 1/04
G02B 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
前記凝集体粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積99容量%における体積累積粒径D99と、前記D50との比であるD99/D50の値が10以下であり、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子。
【請求項2】
LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
BET比表面積換算の一次粒子径が10nm以上100nm以下であり、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子。
【請求項3】
LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
前記希土類リン酸塩粒子の結晶子サイズ/BET比表面積換算の一次粒子径の値が0.45以上であり、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子。
【請求項4】
LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
細孔径分布において0.2μm以上10μm以下の範囲に1個以上のピークを有し、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子。
【請求項5】
LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
細孔径分布において0.2μm以上10μm以下の範囲にピークを1個のみ有し、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子。
【請求項6】
LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
平均細孔径が0.2μm以上10μm以下であり、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子。
【請求項7】
白色度L*が70以上である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の希土類リン酸塩粒子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の希土類リン酸塩粒子を樹脂シート基材に添加して、該樹脂シート基材の散乱性を向上させる散乱性向上方法。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の希土類リン酸塩粒子を基材の表面に配置して、該基材の散乱性を向上させる散乱性向上方法。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の希土類リン酸塩粒子及び樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の希土類リン酸塩粒子及び樹脂を含む樹脂組成物から構成される光散乱シート。
【請求項12】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の希土類リン酸塩粒子及び樹脂を含む樹脂組成
物から構成されるコート層が基材の表面に設けられた光散乱部材。
【請求項13】
請求項11に記載の光散乱シート又は請求項12に記載の光散乱部材を備えた光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類リン酸塩粒子に関する。また本発明は、この希土類リン酸塩粒子を用いた散乱性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な樹脂中に無機粒子が含有されてなる光散乱シートは、液晶表示装置のバックライトモジュールや、プロジェクションテレビジョン等の画像表示装置のスクリーンや、ヘッドアップディスプレイ等に用いられる透明スクリーンや、照明器具等の様々な光学デバイスで用いられている。このような光散乱シートには、透明性を確保しつつ光散乱性に優れる特性が求められている。このことから、無機粒子としては、チタニア、シリカ、ジルコニア及び酸化亜鉛等の屈折率が高い無機材料が用いられている。例えば特許文献1には、透明な高屈折率材料として、酸化亜鉛を含む硬化性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−138270号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の無機粒子を用いた光散乱シートは、透明性及び光散乱性を有するものではあるものの、表示装置に当該光散乱シートを実際に用いた場合には、光散乱性が十分とは言えないため、鮮明な画像が得られ難く、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、基材の内部又は表面に配置した場合に、該基材の透明性を確保しつつ光散乱性を向上させ得る粒子を提供することにある。
【0006】
本発明は、LnPO(式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。)で表される希土類リン酸塩の一次粒子が複数凝集した凝集体粒子からなり、
前記凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であり、
基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられる希土類リン酸塩粒子を提供することにより前記の課題を解決したものである。
【0007】
また本発明は、前記の希土類リン酸塩粒子を樹脂シート基材に添加して、該樹脂シート基材の散乱性を向上させる散乱性向上方法を提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記の希土類リン酸塩粒子を基材の表面に配置して、該基材の散乱性を向上させる散乱性向上方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の希土類リン酸塩粒子は、基材の内部又は表面に配置されて光散乱を生じさせるために用いられるものである。詳細には、本発明の希土類リン酸塩粒子は、基材の内部に均一に分散した状態で配置されたり、基材の内部のうち基材の片側表面側に偏在した状態で配置されたり、基材の表面に設けられたコート層の内部に均一に分散した状態で配置されたりして、該基材に入射した光に散乱を生じさせるために用いられるものである。入射した光の散乱には一般に前方散乱と後方散乱とがある。光を散乱させることに関し、本発明の希土類リン酸塩粒子は、前方散乱及び後方散乱のいずれか又は双方に用いられる。以下の説明において単に「散乱」というときには、前方散乱及び後方散乱の双方を包含する。また、以下の説明において「光」というときには、可視光の波長領域を含む光のことを意味する。
【0010】
本発明の希土類リン酸塩粒子は、LnPOで表される希土類リン酸塩からなる一次粒子が複数凝集してなる凝集体粒子の集合体である。式中、Lnは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を表す。以下の説明において、「凝集体粒子」というときには、文脈に応じ、凝集体粒子の集合体である粉末を指す場合と、該粉末を構成する個々の凝集体粒子を指す場合とがある。
【0011】
希土類リン酸塩は高屈折率を有する材料である。このことに起因して、本発明の希土類リン酸塩粒子を基材の内部又は表面に分散させて配置すると、光の大きな散乱が生じる。
【0012】
希土類リン酸塩は一般に高アッベ数を有する材料でもある。希土類リン酸塩に関し、アッベ数以外の光学特性について本発明者が種々の検討を行ったところ、希土類リン酸塩は、他の高アッベ数材料、例えばジルコニアに比べて、屈折率の波長依存性が小さいことが判明した。つまり様々な波長を含む光が入射した場合に、屈折の程度のばらつきが小さいことが判明した。その結果、本発明の希土類リン酸塩粒子を用いることでコントラストの強い散乱光を得ることができる。
【0013】
LnPO4で表される希土類リン酸塩における希土類元素は上述のとおりであるところ、これらのうち、屈折率の波長依存性が小さいことから、Y、La、Gd、Yb及びLuから選択される少なくとも一種の希土類元素を用いることが好ましい。希土類元素は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明で用いる希土類リン酸塩は、結晶質のものであってもよく、あるいはアモルファス(非晶質)のものであってもよい。一般に、後述する方法で希土類リン酸塩粒子を製造すると、結晶質の希土類リン酸塩が得られる。希土類リン酸塩が結晶質のものである場合、屈折率が高くなる点から好ましい。
【0015】
本発明の希土類リン酸塩粒子は、一次粒子の凝集体粒子からなる。一次粒子の凝集体粒子は一般に二次粒子とも呼ばれる。本明細書において一次粒子とは、外見上の幾何学的形態から判断して、粒子としての最小単位と認められる物体のことである。一次粒子は、希土類リン酸塩の多結晶体又は単結晶体であり得る。
【0016】
前記の凝集体粒子は、一次粒子が2個以上凝集したものから構成されている。一次粒子の凝集は、例えば分子間力、化学結合、又はバインダによる結合等に起因して生じるものである。後述する方法で希土類リン酸塩粒子を製造すると、一次粒子どうしが分子間力及び又は化学結合によって凝集する。
【0017】
凝集体粒子は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50が0.1μm以上20μm以下であることが有利である。本発明者の検討の結果、凝集体粒子のD50をこの範囲に設定することによって、該凝集体粒子を基材の内部又は表面に配置して、光散乱を生じさせる場合に、基材の透明性を維持しつつ、散乱の程度を高くし得ることが判明した。基材の透明性を維持しつつ、散乱の程度を一層大きくする観点から、凝集体粒子のD50は0.3μm以上20μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以上10μm以下であることが更に好ましく、0.3μm以上3μm以下であることが一層好ましい。このような粒径を有する凝集体粒子は、例えば後述する方法によって好適に製造することができる。
【0018】
体積累積粒径D50は次の方法で測定される。希土類リン酸塩粒子を水と混合し、一般的な超音波バスを用いて1分間分散処理を行う。装置はベックマンコールター社製LS13 320を用いて測定する。
【0019】
凝集体粒子は体積累積粒径D50が上述の範囲を満たす限り、その形状は本発明において臨界的なものではない。各凝集体粒子においては、凝集している一次粒子の数も異なれば、一次粒子の大きさ及び形状も異なるので、凝集体粒子の形状は様々である。一般的に言えば、凝集体粒子の形状が球状に近づくほど散乱性が高くなり、また後述する樹脂シート基材を構成する樹脂組成物中及び基材の表面コート層を構成する樹脂組成物中の分散性が良好になる傾向にある。
【0020】
本発明者の検討の結果、凝集体粒子はその粒度分布がシャープであるほど散乱性が一層高くなることが判明した。凝集体粒子の粒度分布はD99/D50の値を尺度に評価することができる。D99はレーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積99容量%における体積累積粒径を表す。D99/D50の値が1に近づくほど、凝集体粒子はその粒度分布がシャープになる。本発明においては、D99/D50の値は10以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましく、2.5以下であることが一層好ましい。D99はD50と同様の方法で測定することができる。
【0021】
凝集体粒子は、希土類リン酸塩の一次粒子の凝集体であることから、一次粒子間に細孔を有する。この細孔径の分布を測定したときに、凝集体粒子は、0.2μm以上10μm以下の範囲に1個以上のピークを有することが、散乱性を一層高める観点から有利であることが判明した。特にこの範囲にピークを1個のみ有することが、散乱性を更に一層高める観点から有利である。この範囲にピークを1個のみ有し、且つこの範囲外にピークを1個以上有してもよい。
【0022】
凝集体粒子の細孔に関連し、該細孔の平均細孔径は、0.2μm以上10μm以下であることが、散乱性を一層高める観点から好ましい。特に平均細孔径が0.2μm以上8μm以下であると、とりわけ0.5μm以上6μm以下であると、散乱性が更に一層高くなるので好ましい。
【0023】
凝集体粒子の細孔径分布や平均細孔径を上述のとおりに設定するには、例えば後述する方法で凝集体粒子を製造すればよい。また、凝集体粒子の細孔径分布や平均細孔径は、例えば次の方法で測定することができる。細孔分布測定用水銀圧入ポロシメーター(例えば、マイクロメリティックス社製、Auto Pore IV)により測定することができる。
【0024】
凝集体粒子を構成する個々の希土類リン酸塩の一次粒子の粒径は、凝集体粒子の粒径等に影響する要因の一つである。本発明者の検討の結果、一次粒子の粒径は10nm以上100nm以下であることが好ましく、12nm以上50nm以下であることが更に好ましく、12nm以上25nm以下であることが一層好ましい。本明細書に言う一次粒子の粒径とは、BET比表面積換算の一次粒子径のことである。
【0025】
BET比表面積換算の一次粒子径は次の方法で測定される。
BET比表面積の測定は、島津製作所社製の「フローソーブ2300」を用い、窒素吸着法で測定することができる。測定粉末の量は0.3gとし、予備脱気条件は大気圧下、120℃で10分間とする。
そして、測定されたBET比表面積より、一次粒子径は、粒子形状が球形と仮定して、次式にて計算される。
d=6000/(A・ρ)
ここでdが計算により算出される一次粒子径[nm]、AはBET一点法で測定される比表面積[m/g]、ρは測定対象の密度[g/cm]である。
【0026】
希土類リン酸塩の一次粒子に関し、該一次粒子は結晶性が高いことが、屈折率をより高め、ひいては散乱性を一層高める観点から有利であると考えられる。一次粒子の結晶性は、希土類リン酸塩粒子の結晶子サイズとBET比表面積換算の一次粒子径との比である〔希土類リン酸塩粒子の結晶子サイズ/BET比表面積換算の一次粒子径〕の値を尺度として評価できる。この値が1に近づくほど、希土類リン酸塩の一次粒子はその結晶性が高くなり、単結晶体に近づく。本発明においては、〔希土類リン酸塩粒子の結晶子サイズ/BET比表面積換算の一次粒子径〕の値は、0.45以上であることが好ましく、0.50以上であることが更に好ましく、0.53以上であることが一層好ましい。
【0027】
希土類リン酸塩粒子の結晶子サイズは、次の方法で測定することができる。X線回折装置(リガク社製 RINT-TTR IIを用い、専用のガラスホルダーに希土類リン酸塩を充填し、50kV−300mAの電圧−電流を印加して発生させたCu Kα線によって、サンプリング角0.02°、走査速度4.0°/minの条件で測定する。測定結果を用いてXRD解析ソフトウエアJADEにより結晶子サイズを求める。
【0028】
一次粒子の凝集体粒子からなる本発明の希土類リン酸塩粒子は、その白色度L*が高いことが、樹脂に配合した場合に、該樹脂と希土類リン酸塩粒子を含む樹脂組成物が着色されづらい点から好ましい。具体的には、白色度L*は70以上であることが好ましく、80以上であることが更に好ましく、90以上であることが一層好ましい。
【0029】
白色度L*は、例えば、分光測色計(コニカミノルタ製、CM−2600d)を用いてJIS Z8729「U*V*W*系による物体色の表示方法」に従って直接粉体の明度を測定することができる。
【0030】
また、本発明の希土類リン酸塩粒子は、本発明の効果を失わない程度において、後述する樹脂シート基材を構成する樹脂組成物中及び基材の表面コート層を構成する樹脂組成物中の分散性を良好にする目的で、その表面が親油性処理することができる。親油性処理としては、例えば各種のカップリング剤による処理などが挙げられる。カップリング剤としては、例えば有機金属化合物が挙げられる。具体的にはシランカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などを用いることができる。
【0031】
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0032】
チタンカップリング剤としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートなどが挙げられる。ジルコニウムカップリング剤としては、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレートなどが挙げられる。
【0033】
アルミニウムカップリング剤としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイドステアレートなどが挙げられる。
【0034】
以上の各種カップリング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。カップリング剤としてシランカップリング剤を用いた場合には、希土類リン酸塩粒子の表面はシラン化合物で被覆されることになる。このシラン化合物は親油基、例えばアルキル基又は置換アルキル基を有していることが好ましい。アルキル基は直鎖のものでもよく、あるいは分岐鎖のものでもよい。いずれの場合であってもアルキル基の炭素数は1〜20であることが、樹脂との親和性が良好となる点から好ましい。アルキル基が置換されている場合、置換基としてはアミノ基、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基などを用いることができる。希土類リン酸塩粒子の表面を被覆するシラン化合物の量は、希土類リン酸塩粒子質量に対して0.01〜200質量%、特に0.1〜100質量%であることが、樹脂との親和性が良好となる点から好ましい。
【0035】
本発明の希土類リン酸塩粒子は、これを例えば樹脂に添加して樹脂組成物となし、該樹脂組成物の散乱性を向上させるために用いることができる。樹脂組成物の形態に特に制限はないが、樹脂シートの形態、すなわち樹脂シートからなる基材中に本発明の希土類リン酸塩粒子が分散して配置した形態であると、光散乱シートへの適用を容易に行えることから有利である。このように、本発明の希土類リン酸塩粒子は、該粒子を樹脂シートからなる基材に添加することによって、樹脂シートからなる基材の散乱性を向上させることができる。
【0036】
本発明の希土類リン酸塩粒子を樹脂に添加して光散乱シートとなした場合、本発明の希土類リン酸塩粒子の添加の対象となる樹脂の種類に特に制限はなく、成形可能な熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を用いることができる。特に、シートの形態への成形が容易である点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートやポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸又はそのエステルやポリメタクリル酸又はそのエステル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリスチレンやポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂などが挙げられる。
【0037】
本発明の希土類リン酸塩粒子を樹脂に添加して光散乱シートとなした場合、該光散乱シートに含まれる希土類リン酸塩粒子の割合は、透過性と光散乱性とのバランスを考慮して、該光散乱シートの総質量に対して0.05質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下とすることが更に好ましく、0.1質量%以上5質量%以下とすることが一層好ましい。光散乱シートの厚みは、光散乱性や取り扱い性等を考慮すると、20μm以上3000μm以下とすることが好ましく、50μm以上200μm以下とすることが一層好ましい。
【0038】
本発明の希土類リン酸塩粒子と樹脂とを含む樹脂組成物から構成される光散乱シート等を得るためには、例えば溶融状態の樹脂に本発明の希土類リン酸塩粒子を練り込んだ後、インフレーション法、Tダイ法、溶液流延法、及びカレンダー法等の公知のシート成形方法によって成形すればよい。
【0039】
また、本発明の希土類リン酸塩粒子は、該粒子を基材の表面に配置させることによって、基材の散乱性を向上させることもできる。本発明の希土類リン酸塩粒子を基材の表面に配置する方法は、例えば、本発明の希土類リン酸塩粒子と有機溶媒とバインダ樹脂とを含む組成物を混合してコート液を作製し、該コート液をローラーやスプレーガン等を用いて基材の表面に塗工又は噴霧すればよい。この場合には、本発明の希土類リン酸塩粒子及び樹脂を含む樹脂組成物から構成されるコート層が、基材の表面に設けられてなる光散乱部材が得られる。また、本発明の希土類リン酸塩粒子を基材の表面に配置する別の方法としては、スパッタ等を用いて、基材の表面に、樹脂等のバインダを用いることなく、本発明の希土類リン酸塩粒子を直接配置させることもできる。
【0040】
本発明の希土類リン酸塩粒子及び樹脂を含む樹脂組成物から構成されるコート層を基材の表面に設けて光散乱部材(例えば、シート状の基材の表面にコート層が設けられた光散乱部材)とした場合、コート層に含まれる樹脂の種類に特に制限はなく、バインダ樹脂として一般的な樹脂を用いることができる。このような樹脂の例としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸若しくはそのエステル又はポリメタクリル酸若しくはそのエステル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリスチレンやポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂などが挙げられる。
【0041】
上述のように、コート層を基材の表面に設けた光散乱部材とした場合、コート層に含まれる希土類リン酸塩粒子の割合は、透過性と光散乱性とのバランスを考慮して、該コート層の総質量に対して、0.01質量%以上90質量%以下とすることが好ましく、0.1質量%以上65質量%以下とすることが更に好ましい。
【0042】
このような方法で得られた光散乱シートや光散乱部材は、例えば、ディスプレイ、照明用部材、窓用部材、電飾部材、導光板部材、プロジェクタのスクリーン、ヘッドアップディスプレイ等に用いられる透明スクリーン、ビニールハウス等の農業用資材、などとして好適に製造することができる。また、光散乱シートを光学デバイスに組み込んで使用することもできる。そのような光学デバイスとしては、例えば、液晶TV、パソコン、タブレット、スマートフォン等のモバイル機器などが挙げられる。
【0043】
次に、本発明の希土類リン酸塩粒子の好適な製造方法について説明する。本発明の希土類リン酸塩粒子を製造するには、先ず1種又は2種以上の希土類元素源を含む水溶液と、リン酸根を含む水溶液とを混合して、1種又は2種以上の希土類リン酸塩の沈殿を生じさせる。例えば1種又は2種以上の希土類元素源を含む水溶液に、リン酸根を含む水溶液を添加することで希土類リン酸塩の沈殿を生じさせる。本発明に適した製造方法の一例として、前述の沈殿物をスプレードライ等により乾燥した後、焼成をすることで所望の形状の粒子を合成することが可能である。更に、前述の沈殿を得る工程を加熱状態で実施することで、所望の形状であり、且つ非常に高結晶性の粒子を得ることができる。希土類リン酸塩粒子中に水が残存していることがあるので、この水を除去する目的で希土類リン酸塩粒子を比較的低温下に加熱することが好ましい。具体的な加熱温度は例えば80℃以上800℃以下であることが好ましい。希土類元素源を含む水溶液の加熱の程度は50℃以上100℃以下とすることが好ましく、70℃以上95℃以下とすることが更に好ましい。この温度範囲で加熱した状態下に反応を行うことで、所望のD50及び一次粒子径を有する凝集体粒子が得られる。また、所望の一次粒子の結晶性や細孔径分布や平均細孔径、及び白色度を有する凝集体粒子が得られる。
【0044】
希土類元素源を含む水溶液としては、該水溶液中における希土類元素の濃度が、0.01〜1.5mol/リットル、特に0.01〜1mol/リットル、とりわけ0.01〜0.5mol/リットルのものを用いることが好ましい。この水溶液中において希土類元素は三価のイオンの状態になっているか、又は三価のイオンに配位子が配位した錯イオンの状態になっていることが好ましい。希土類元素源を含む水溶液を調製するためには、例えば硝酸水溶液に希土類酸化物(例えばLn23等)を添加してこれを溶解させればよい。
【0045】
リン酸根を含む水溶液においては、該水溶液中におけるリン酸化学種の合計の濃度を、0.01〜3mol/リットル、特に0.01〜1mol/リットル、とりわけ0.01〜0.5mol/リットルとすることが好ましい。pH調整のために、アルカリ種を添加することもできる。アルカリ種としては、例えばアンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、エチルアミン、プロピルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物を用いることができる。
【0046】
希土類元素源を含む水溶液とリン酸根を含む水溶液は、リン酸イオン/希土類元素イオンのモル比が0.5〜10、特に1〜10、とりわけ1〜5となるように混合することが、効率よく沈殿生成物が得られる点から好ましい。
【0047】
以上のようにして凝集体粒子からなる希土類リン酸塩粒子が得られたら、これを常法に従い固液分離した後、1回又は複数回水洗する。水洗は、液の導電率が例えば2000μS/cm以下になるまで行うことが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0049】
〔実施例1〕
本実施例では、リン酸ランタンからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は以下に述べるとおりである。
ガラス容器1に水600gを計量し、60%硝酸(和光純薬工業社製)61.7g、La(日本イットリウム社製)26.6gを添加し、80℃に加温して溶解させた。別のガラス容器2に水600g、85%リン酸18.8gを添加した。
ガラス容器1へガラス容器2の内容物を添加し、1時間エージングを行った。得られた沈殿物をデカンテーション洗浄により、上澄みの導電率が100μS/cm以下になるまで洗浄を行った。洗浄後、減圧濾過で固液分離し、大気中で120℃×5時間乾燥させたのち、大気中で450℃×3時間焼成した。
【0050】
〔実施例2〕
本実施例では、リン酸ガドリニウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例において、Laに代えて29.6gのGd(日本イットリウム社製)を用いた以外は実施例1と同様とした。
【0051】
〔実施例3〕
本実施例では、リン酸イットリウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例1において、Laに代えて18.8gのY(日本イットリウム社製)を用いた以外は実施例1と同様とした。
【0052】
〔実施例4〕
実施例3において、製造の手順を、大気中での焼成温度を450℃から800℃に変更した以外は実施例3と同様とした。
【0053】
〔実施例5〕
本実施例では、リン酸イットリウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順を次に示す。実施例4と同様にしてリン酸イットリウムからなる凝集体粒子を得た。そして、リン酸イットリウム10gと純水20gと混合し、それによって得られたスラリーを、ペイントシェイカーを用いて、5時間にわたりリン酸イットリウムの粉砕を行った。粉砕後、固液分離して得られたケーキを真空乾燥した。
【0054】
〔実施例6〕
本実施例では、リン酸ルテチウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例3において、Yに代えて33.1gのLu(日本イットリウム社製)を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0055】
〔実施例7〕
本実施例では、リン酸イッテルビウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例3において、Yに代えて32.8gのYb(日本イットリウム社製)を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0056】
〔実施例8〕
本実施例では、リン酸ジスプロジウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例3において、Yに代えて31.1gのDy(日本イットリウム社製)を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0057】
〔実施例9〕
本実施例では、リン酸ユウロピウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例3において、Yに代えて29.3gのEu(日本イットリウム社製)を用いた以外は実施例3と同様とした。
【0058】
〔比較例1〕
本比較例では、リン酸ルテチウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は以下に述べるとおりである。
ガラス容器1に水370gを計量し、80℃に加温し、60%硝酸(和光純薬工業社製)14.4gを添加した。更にLu23(日本イットリウム社製)7.4gを添加し、完全に溶解させた。次に別のガラス容器2に水390g、85%リン酸5.3g、25%アンモニア水9.3gを添加した。ガラス容器1の溶液とガラス容器2の溶液とをそれぞれ10mL/minでホモジナイザーへ送液し、ホモジナイザー中に同時添加して混合した。ホモジナイザーの回転数は20000rpmに設定した。混合終了後、沈殿物をデカンテーション洗浄により、上澄みの導電率が100μS/cm以下になるまで洗浄を行った。洗浄終了後、減圧濾過で固液分離した。得られた沈殿物を大気中で120℃×5h乾燥させ、更に大気中800℃×5h焼成した。
なお、実施例1の製造方法と比較例1の製造方法との主な違いは、希土類リン酸塩の沈殿物を得る方法と、固液分離後の沈殿物の焼成条件にある。
【0059】
〔比較例2〕
本比較例では、リン酸イットリウムからなる凝集体粒子を製造した。製造の手順は、実施例において、Luに代えて4.2gのYを用いた以外は実施例1と同様とした。
【0060】
〔比較例3〕
本比較例では、和光純薬工業社製の酸化ジルコニウム粒子を用いた。
【0061】
〔比較例4〕
本比較例では、和光純薬工業社製の酸化チタン(アナターゼ型)を用いた。
【0062】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた凝集体粒子について、D50、D99/D50、結晶子サイズ、一次粒子径、白色度L*、細孔径分布のピーク位置及び平均細孔径を以下の方法で測定した。また、以下の方法で散乱性及び透過性を評価した。それらの結果を以下の表1に示す。
【0063】
〔D50及びD99の測定並びにD99/D50の算出〕
希土類リン酸塩粒子0.1gを水10mlと混合し、超音波分散器(アズワン社製、ASU−10)を用いて1分間分散処理を行った。装置はベックマンコールター社製LS13 320を用いて、D50及びD99を測定し、D99/D50を算出した。
【0064】
〔結晶子サイズの測定〕
X線回折装置(リガク社製 RINT-TTR IIを用い、専用のガラスホルダーに希土類リン酸塩を充填し、50kV−300mAの電圧−電流を印加して発生させたCu Kα線によって、サンプリング角0.02°、走査速度4.0°/minの条件で測定した。測定結果を用いてXRD解析ソフトウエアJADEにより結晶子サイズを求めた。
【0065】
〔一次粒子径の測定〕
BET比表面積換算の一次粒子径を測定した。
BET比表面積の測定は、島津製作所社製の「フローソーブ2300」を用い、窒素吸着法で測定した。測定粉末の量は0.3gとし、予備脱気条件は大気圧下、120℃で10分間とした。
そして、測定されたBET比表面積より、一次粒子径は、粒子形状が球形と仮定して、次式にて計算した。
d=6000/(A・ρ)
ここでdが計算により算出される一次粒子径[nm]、AはBET一点法で測定される比表面積[m/g]、ρは測定対象の密度[g/cm]である。
【0066】
〔白色度の測定〕
分光測色計(コニカミノルタ製、CM−2600d)を用いてJIS Z8729「U*V*W*系による物体色の表示方法」に従って直接粉体の明度を測定した。
【0067】
〔細孔径分布のピーク位置及び平均細孔の測定〕
細孔分布測定用水銀圧入ポロシメーター(マイクロメリティックス社製、Auto Pore IV)により測定した。2つの数値が記載されている例は、ピークが2つ観察されたことを意味する。
【0068】
〔散乱性及び透過性の評価〕
アクリル樹脂(三菱レイヨン社製、品名:ダイヤナールLR−167)の固形分100部に対して、実施例及び比較例の粒子を100部添加し、固形分率が50%になるように、トルエン及び1−ブタノールとからなる混合溶媒で希釈し、ペイントシェイカーで60分間混合して、塗工液を調製した。
次に、この塗工液を、ポリカーボネートシート(タキロン社製、厚み:2mm)にバーコーター(#3)を用いて塗工し、80℃で5分間乾燥させ、光散乱層とポリカーボネート基材層とからなる光散乱シートを得た。
当該光散乱シートの散乱性は、レーザーポインタを光散乱シートに向けて照射し、光散乱シートに映ったポイント画像の鮮明性を下記基準により目視により評価した。
[散乱性の評価基準]
○:ポイント画像が鮮明である。
×:ポイント画像がぼやけており、不鮮明である。
また、当該光散乱シートの透明性は、下記基準により目視により評価した。
[透明性の評価基準]
○:透明
×:白濁又は半透明
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られた希土類リン酸塩の凝集体粒子を用いると、従来知られていた高屈折率材料であるジルコニアやチタニアに比べて、透過性を損なうことなく散乱性を高めることができることが判る。したがって本発明の希土類リン酸塩粒子は、優れた透過性及び散乱性が要求される透明スクリーン用途として有用であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の希土類リン酸塩粒子によれば、該粒子を基材の内部又は表面に配置することで、該基材の透明性を確保しつつ光散乱性を向上させることができる。