特許第6605154号(P6605154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605154
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】車両においてブレーキ力を提供する方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20191031BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20191031BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
   B60T8/88
   B60T13/74 H
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-549175(P2018-549175)
(86)(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公表番号】特表2019-508319(P2019-508319A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2017052877
(87)【国際公開番号】WO2017167482
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年9月18日
(31)【優先権主張番号】102016205298.5
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ベールレ―ミラー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブラッテルト,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】マンヘルツ,エディト
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0042171(US,A1)
【文献】 特表2015−512824(JP,A)
【文献】 特表2013−545670(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010063345(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011078900(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
B60T 13/00−17/22
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧車両ブレーキ(1)と、ブレーキピストン(16)をブレーキディスク(20)に対して変位させる電気ブレーキモータ(3)を有する電気機械式ブレーキ装置とを備える車両においてブレーキ力を提供する方法であって、
a)まず、前記電気ブレーキモータ(3)の操作により、該電気ブレーキモータ(3)のアイドル回転ストロークが電気機械ブレーキ力の発生なしに克服され、
b)続いて、ブレーキ液圧が生成され、
c)最後に、前記ブレーキ液圧により引き起こされる前記ブレーキピストン(16)の摺動を克服するため、および前記電気機械ブレーキ力の発生のために、前記電気ブレーキモータ(3)が再び操作される、方法。
【請求項2】
前記ブレーキ液圧により生ぜしめられる前記ブレーキピストン(16)の摺動が決定され、かつ前記ブレーキピストン(16)の摺動から実際のブレーキ液圧が推論されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記実際のブレーキ液圧が目標ブレーキ圧と相異する場合に警告信号が生成されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アイドル回転ストロークは、2つのホイールブレーキ装置で決定され、相異する場合に警告信号が生成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
電気機械ブレーキ力の発生によって引き起こされた液圧低下は、液圧アクチュエータの操作によって補償されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
電気機械ブレーキ力の発生によって引き起こされた液圧低下は、ブレーキ液圧の上昇について最初から考慮されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
車両の停止状態において駐車ブレーキ力を生成するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
限速度値未満での車両の走行時にブレーキ力を生成するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
閉ループもしくは開ループ制御機器であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法を実行するための、閉ループもしくは開ループ制御機器。
【請求項10】
車両における駐車ブレーキであって、ブレーキディスク(20)の方向にブレーキピストン(16)を変位させる電気ブレーキモータ(3)を有する電気機械式ブレーキ装置と、前記駐車ブレーキ(1)の調整可能なコンポーネントを制御するための請求項9に記載の閉ループもしくは開ループ制御機器(12)とを備えた、車両における駐車ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特許文献1において、停止状態の車両が誤って動き出すのを阻止する電気機械式駐車ブレーキが記載される。駐車ブレーキは、車両を固定するための締付力を生成する電気ブレーキモータを備えている。その際、電気ブレーキモータの回転運動がスピンドルナットの軸方向の調節運動(Stellbewegung)に変換され、この調節運動により、ブレーキパッドの支持体であるブレーキピストンがブレーキディスクに対して軸方向に押圧される。
【0002】
電気ブレーキモータは、車両の液圧車両ブレーキの一部であるホイールブレーキ装置に統合されている。車両ブレーキの作動液も同様にブレーキピストンに作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011078900号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る方法により、液圧車両ブレーキと、電気ブレーキモータを有する電気機械式ブレーキ装置とを備える車両においてブレーキ力が提供される。電気機械式ブレーキ装置のブレーキモータは、ブレーキパッドを支持するブレーキピストンに作用し、ブレーキピストンが変位運動(Verstellbewegung)した場合に、ブレーキパッドがブレーキディスクに対して押し付けられる。この場合、有利にも、電気ブレーキモータのロータの回転運動が、ブレーキピストンを押すスピンドルナットの軸方向の調節運動に変換される。
【0005】
液圧車両ブレーキは、車両の1つもしくは複数のホイールに1つまたは複数のホイールブレーキ装置を備え、ホイールブレーキ装置において、電気機械式ブレーキ装置の電気ブレーキモータによっても変位させられる同じブレーキピストンに液圧下のブレーキフルードが作用する。ブレーキピストンは、電気ブレーキモータかブレーキフルードのどちらかによって、または電気ブレーキモータとブレーキフルードの組合せによって変位させることができる。
【0006】
この方法では、ブレーキ力を提供するために、まず、電気ブレーキモータのアイドル回転ストローク(Leerlaufweg)が電気機械ブレーキ力の発生なしに克服されるまで電気ブレーキモータが操作され、電気ブレーキモータのロータ軸によって変位させられるスピンドルナットがブレーキピストンと接触するが、その際、ブレーキ力は生成されない。
【0007】
続いて、次のステップにおいて、ブレーキ液圧が生成され、それによりホイールブレーキ装置においてブレーキ力が自動的に液圧式で生成される。その一方で、電気ブレーキモータは、前回達した接触位置にとどまり、その際、電気機械ブレーキ力は生成されない。
【0008】
最後に、さらに次のステップにおいて、電気ブレーキモータが再び操作され、まずブレーキ液圧にもとづくブレーキピストンの摺動によって生ぜしめられた、追加アイドルストローク(zusaetzlicher Leerweg)を示すクリアランス(Spiel)が克服される。続いて、電気ブレーキモータがこのポイントを越えてさらに運転され、それによりブレーキモータがブレーキピストンを変位させ、ブレーキモータによる電気機械ブレーキ力の発生が達成される。
【0009】
この手順には、自動的に行われる制動過程の終了後、電気ブレーキモータによって変位されたピストン位置がブレーキモータのセルフロックによりロックされるという利点がある。したがって、制動過程の終了後に、ブレーキ液圧および電気ブレーキモータの作用によってブレーキピストンがとっている現在ピストン位置にブレーキピストンがとどまり続けることが保証される。したがって、相当するブレーキ力が液圧式および電気機械式で生成される。ブレーキ液圧によるブレーキピストンの摺動と、ブレーキ力を減少させ得るホイールブレーキ装置の弾性とを補償することができる。
【0010】
有利な一実施形態によると、ブレーキ液圧により生ぜしめられたブレーキピストンの摺動が決定され、ブレーキピストンの摺動からホイールブレーキ装置の実際のブレーキ液圧が推論される。ブレーキ液圧によるブレーキピストンの摺動の決定は、ブレーキ液圧の生成と、まずブレーキ液圧により生じる追加アイドルストロークを克服する電気モータの再度の操作とに続いて行われることが有利である。この追加アイドルストロークは、ブレーキ液圧の作用にもとづくブレーキピストンの摺動に相当する。
【0011】
第1ステップにおけるアイドルストロークと第3ステップにおける追加アイドルストロークとは、モータの状態変数をもとにして、特に電気ブレーキモータの電流プロファイルをもとにして決定することができる。なぜなら電流プロファイルは、ブレーキモータのアイドル運転において少なくとも略一定だからである。したがって、電気ブレーキモータのロータ軸により変位させられるスピンドルナットとブレーキピストンとの接触点を電流プロファイルの上昇から十分な精度で決定することができる。
【0012】
ブレーキピストンの摺動は、加えられるブレーキ液圧と相関関係にある。それにより、ブレーキピストンの摺動が既知である場合、電気ブレーキモータの追加アイドルストロークから的確に、実際に印加するブレーキ液圧を推論することができる。このブレーキ液圧は目標ブレーキ圧と一致しなければならない。一致しない場合、運転者に表示される、および/または、例えば車両の電子制御回路におけるさらなる処理のために利用され得る警告信号を出力することができる。例えば、過度に小さいブレーキピストンの摺動が検出された場合、実際のブレーキ液圧を十分に推論することができず、警告信号が出力される。
【0013】
ブレーキモータによる電気機械ブレーキ力の発生によりブレーキピストンが摺動し、それによってブレーキフルードが占める容積が拡大する。このことはブレーキ液圧の低下をもたらし、好ましい実施形態によると、このブレーキ液圧の低下は、液圧アクチュエータの操作によって補償される。この補償は、ブレーキ力を提供する方法を終了するために電気ブレーキモータをオフにする時点より前に行われることが好ましい。
【0014】
電気ブレーキモータがブレーキ液圧に続いて電気機械式でブレーキ力を発生させた後に、ブレーキモータがオフにされ、ブレーキモータのセルフロックにもとづいてロックされ、それによって液圧ブレーキ力の分量(Anteil)も保持され、重畳(Superposition)によって液圧ブレーキ力の分量と電気機械ブレーキ力の分量の作用が長持ちする。
【0015】
さらに別の合目的的な実施形態によると、車両における、好ましくは同じ車軸の2つの異なったホイールブレーキ装置で、ブレーキ液圧により生ぜしめられるブレーキピストンの摺動が決定され、相異する場合に警告信号が生成される。ホイールブレーキ装置が異なったブレーキ回路に属するかぎり、場合によっては、異なったブレーキ回路の液圧差を確認することができ、それに対応して警告信号を生成することができる。しかし、同じブレーキ回路に属する場合でも、相異する場合に警告信号を生成することができる。
【0016】
さらに、2つの異なったホイールブレーキ装置で電気ブレーキモータのアイドル回転ストロークを決定することが可能であり、相異する場合に警告信号が生成される。アイドル回転ストロークは、まず、電気ブレーキモータが電気機械ブレーキ力の発生なしにアイドル回転ストロークのみを克服する第1ステップにおいて、および/または別のステップにおいて、ブレーキ液圧が生成された後、続いて電気ブレーキモータによって追加アイドルストロークが進行される(zurueckgelegt)。
【0017】
電気機械ブレーキ力の発生により引き起こされた液圧低下は、例えば、補償制御の枠内で、特に電気機械式でブレーキ力を発生させる間に液圧アクチュエータの操作によって補償することができる。さらに別の合目的的な一実施形態によると、ブレーキ液圧の追加分量によって補償が行われ、追加分量は、パイロット制御(Vorsteuerung)として最初から考慮されることが有利である。通常の場合について液圧低下が少なくとも略既知であるので、この液圧低下は、これの相応の上昇によりブレーキ液圧において最初から考慮することができる。
【0018】
液圧アクチュエータとして、ブレーキ回路において、例えば、エレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESP)の液圧ポンプ、または、例えばiBoosterもしくはeBoosterなどのブレーキ倍力装置が考えられる。
【0019】
方法は、車両の停止状態において駐車ブレーキ力を生成するために実行することができる。しかし、方法を用いて車両の走行中にブレーキ力を発生させることも可能である。この場合、方法は、制限速度値未満で行われることが好ましい。制限速度値は、例えば30km/h以下の値である。液圧式、および電気機械式での自動的なブレーキ力の発生を用いて、例えば、自動化された駐車過程を実行することができる。さらに、自動化された方式で、車両の走行中に駐車操作とは無関係にブレーキ力を発生させることが可能である。
【0020】
駐車ブレーキを用いて、運転者が場合によっては車両の外にいるときに、例えば、特に運転者の介入なしの高度に自動化された駐車過程をより確実に実行することができる。駐車過程の間、車両は、通常、液圧車両ブレーキで制動される。液圧車両ブレーキが機能しない場合、駐車ブレーキの電気ブレーキモータにより車両を制動することができる。
【0021】
自動化された駐車過程の終了後、必要な場合には、ブレーキ液圧を目標圧へ上昇させることができる。ブレーキモータを制御することによってスピンドルナットとブレーキピストンとがすでに接触点に到着しているかぎり、追加アイドルストロークにわたる駐車ブレーキの再度の作動により、要求される液圧に達したか否かを確認することができる。
【0022】
いくつかの方法ステップは自動的に実行され、特に、閉ループもしくは開ループ制御機器で行われる。この制御機器は自動車ブレーキシステムの構成要素であってもよいし、車両ブレーキシステムの閉ループもしくは開ループ制御機器と通信してもよい。
【0023】
他の利点および合目的的な実施形態は、他の請求項、図の説明、および図面から読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ブレーキ倍力装置を有する液圧車両ブレーキの模式図を示し、後車軸における車両ブレーキのホイールブレーキ装置が付加的に電気ブレーキモータを有する電気機械式ブレーキ装置として形成されている。
図2】電気ブレーキモータを有する電気機械式ブレーキ装置の断面図を示す。
図3】車両においてブレーキ力を提供するための方法ステップのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図において、同一部品には同じ参照符号が付されている。
【0026】
図1に示された車両の液圧車両ブレーキ1は、液圧下のブレーキフルードを車両の各ホイールのホイールブレーキ装置9に供給および制御するための前車軸ブレーキ回路2と後車軸ブレーキ回路3とを備えている。両ブレーキ回路2、3は、共通のマスタブレーキシリンダ4に接続されており、マスタブレーキシリンダには、ブレーキフルード貯蔵容器5を介してブレーキフルードが供給される。マスタブレーキシリンダ4内のマスタブレーキシリンダピストンは、運転者によってブレーキペダル6を介して操作される。運転者によってもたらされるペダルストローク(Pedalweg)は、ペダルストロークセンサ7により測定される。ブレーキペダル6とマスタブレーキシリンダ4との間にはブレーキ倍力装置10が位置し、このブレーキ倍力装置は、例えば、好ましくはトランスミッションを介してマスタブレーキシリンダ4を操作する電気モータを備えている(iBooster)。
【0027】
ペダルストロークセンサ7により測定されたブレーキペダル6の調節運動は、センサ信号として、ブレーキ倍力装置10を制御するための調整信号が生成される閉ループもしくは開ループ制御機器11へ伝達される。ホイールブレーキ装置9へのブレーキフルードの供給は、各ブレーキ回路2、3において、他のユニットとともにブレーキ液圧系統8の一部をなすいくつかの切替弁を介して行われる。さらに、エレクトロニック・スタビリティ・プログラム(ESP)の構成要素である液圧ポンプがブレーキ液圧系統8に属している。
【0028】
図2において、車両の後車軸のホイールに配置されているホイールブレーキ装置9が詳細に示されている。ホイールブレーキ装置9は、液圧車両ブレーキ1の一部であり、後車軸ブレーキ回路からブレーキフルード22が供給される。ホイールブレーキ装置9は、さらに、電気機械式ブレーキ装置を有し、この電気機械式ブレーキ装置は、好ましくは車両を停止状態に固定するための駐車ブレーキとして用いられるが、車両が移動する場合でも、特に制限速度値未満の比較的低い車速の場合に車両を制動するために使用することができる。
【0029】
電気機械式ブレーキ装置は、ブレーキディスク20を上からつかむ(uebergreifen)グリッパ19を有するブレーキキャリパ12を備えている。ブレーキ装置は、ブレーキモータ13であるDCモータをアクチュエータとして有しており、このモータのロータ軸がスピンドル14を回転駆動し、スピンドルにはスピンドルナット15が回転不能に支承されている。スピンドル14が回転すると、スピンドルナット15が軸方向に変位させられる。スピンドルナット15は、ブレーキパッド17の支持体であるブレーキピストン16の内部を移動し、ブレーキパッドは、ブレーキピストン16によってブレーキディスク20に対して押圧される。ブレーキディスク20の対向側には、グリッパ19で定置に保持された別のブレーキパッド8が配置されている。ブレーキピストン16は、その外面がシールリング23で取り囲まれ、収容ハウジングに対して圧密に封止されている。
【0030】
スピンドル14が回転運動すると、スピンドルナット15がブレーキピストン16の内部を軸方向前方へ、ブレーキディスク20の方向へ移動することができ、もしくは、スピンドル14が逆方向に回転運動すると、軸方向後方へ、ストッパ21に達するまで移動することができる。締付力を生成するために、スピンドルナット15は、ブレーキピストン16の内端面に作用し、それによってブレーキ装置において軸方向に摺動可能に支承されたブレーキピストン16がブレーキパッド17によりブレーキディスク20の対向する端面に対して押圧される。
【0031】
液圧ブレーキ力の場合、液圧車両ブレーキ1からのブレーキフルード22の液圧がブレーキピストン16に作用する。車両の停止状態においても、電気機械式ブレーキ装置の操作により液圧を補助的に作用させることができ、それにより全ブレーキ力は電気モータにより提供された分量と、液圧による分量とから構成される。車両の走行中、液圧車両ブレーキのみが作動するか、または液圧車両ブレーキと電気機械式ブレーキ装置とが作動するか、あるいは電気機械式ブレーキ装置のみが作動してブレーキ力を生成する。液圧車両ブレーキ1の調整可能なコンポーネントと電気機械式ホイールブレーキ装置9とを制御するための制御信号は、閉ループもしくは開ループ制御機器11で生成される。
【0032】
図3において、車両においてブレーキ力を提供するための方法ステップのフローチャートが示されている。駐車ブレーキ力を生成する車両の停止時にも走行時にも、例えば駐車過程の間にも方法を自動化して実行することができる。
【0033】
まず、方法の開始後の第1方法ステップ30において、電気機械式ブレーキ装置の電気ブレーキモータが操作され、ブレーキモータのロータ軸は、スピンドルナットがブレーキピストンと接触するまでアイドル回転(Leerlauf)で動作する。スピンドルナットがその出発位置からブレーキピストンとの接触点まで進む経路は、ブレーキ力の発生なしに進行されるアイドルストロークである。電気ブレーキモータは接触点で止められる。
【0034】
続いて、次の方法ステップ31において、液圧車両ブレーキが自動的に操作され、液圧アクチュエータ、例えばESPポンプまたはiBoosterを用いてブレーキ液圧が生成される。ブレーキ圧の高さは通電により生じて目標圧に調整される。
【0035】
次の方法ステップ32において、ブレーキ液圧の上昇に続いて、ブレーキピストンの変位によるブレーキ液圧の生成にもとづいて生じた追加アイドルストロークの進行のために電気ブレーキモータが再び操作される。追加アイドルストロークは、スピンドルナットとブレーキピストンとの接触点に再び達するまで電気ブレーキモータをアイドル回転で操作することによって進行される。
【0036】
追加アイドルストロークを進行して第2接触点に達すると直ちに、次の方法ステップ33において、ホイールブレーキ装置における実際の液圧が検知される。これは、方法ステップ32におけるブレーキ液圧の生成によりブレーキピストンが進行したピストンストロークを表す、進行された追加アイドルストロークにもとづいて行われる。追加アイドルストロークは、現在のブレーキ液圧と相関関係にある。
【0037】
方法ステップ34において、ステップ33で検知された実際のブレーキ圧が目標液圧と一致するか否かの確認が行われる。一致しない場合、ノーの分岐(「N」)に従って、警告信号が生成されるステップ35へ進み、続いてステップ36へ進む。これに対して実際のブレーキ液圧と目標圧とが一致する場合、イエスの分岐(「Y」)に従って次の方法ステップ36へ進む。
【0038】
ステップ36において、進行された追加アイドルストロークがブレーキシステムの2つの異なるホイールブレーキ装置において一致するか否かの確認が行われる。この場合、特に、ホイールブレーキ装置の追加アイドルストロークが同じ車軸の左と右とで一致するか否かが検査される。一致しない場合、ノーの分岐に従ってステップ37へ進み、ブレーキシステムのエラーを示す警告信号が生成される。続いて、次の方法ステップ38へ移る。
【0039】
これに対して、ステップ36における確認が、少なくとも2つの異なるホイールブレーキ装置の追加アイドルストロークが一致するという結果である場合、正常に機能していると考えられ、イエスの分岐に従って直接ステップ38へ進むことができる。
【0040】
ステップ38において、電気ブレーキモータの操作による電気機械式でブレーキ力が発生される。電気機械ブレーキ力の大きさは、例えば電気ブレーキモータの電流プロファイルをもとにして推定することができる。
【0041】
次のステップ39において、ブレーキモータの操作によるブレーキピストンの機械的変位によって生成された液圧低下が補償される。液圧低下の補償は、液圧アクチュエータの、特にステップ33において、および電気機械式でブレーキ力を発生させる間にブレーキ液圧を生成するために用いられたのと同じ液圧アクチュエータの操作によって行われることが好ましい。
【0042】
電気機械式での目標ブレーキ力に達した後に、電気ブレーキモータがオフにされ、セルフロックによってブレーキピストンの到達位置が保持される。
【符号の説明】
【0043】
1 液圧車両ブレーキ
2 ブレーキ回路
3 電気ブレーキモータ
4 マスタブレーキシリンダ
5 ブレーキフルード貯蔵装置
6 ブレーキペダル
7 ペダルストロークセンサ
8 ブレーキ液圧系統
9 ホイールブレーキ装置
10 ブレーキ倍力装置
11 閉ループもしくは開ループ制御機器
12 ブレーキキャリパ
13 ブレーキモータ
14 スピンドル
15 スピンドルナット
16 ブレーキピストン
17 ブレーキパッド
18 ブレーキパッド
19 グリッパ
20 ブレーキディスク
21 ストッパ
22 ブレーキフルード
23 シールリング
図1
図2
図3