(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建築物に固定された導電性基体及び該導電性基体の表側に一体に設けられた熱可塑性樹脂層を備える固定部材と、該固定部材の該熱可塑性樹脂層側に敷設された防水シートとを融着するための電磁誘導加熱装置において、
前記固定部材の前記導電性基体を前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで電磁誘導加熱するための加熱コイルと、
前記加熱コイルを底部に収容する装置本体と、
前記固定部材の所定部位に前記防水シートを介して押し当てられる位置決め部材とを備え、
前記位置決め部材は、前記装置本体に取り付けられるとともに、前記加熱コイルの中心線と同心上に配置される棒状部材で構成され、前記固定部材の中心部に前記防水シートを介して押し当てられることを特徴とする電磁誘導加熱装置。
建築物に固定された導電性基体及び該導電性基体の表側に一体に設けられた熱可塑性樹脂層を備える固定部材に、該固定部材の該熱可塑性樹脂層側に敷設された防水シートを融着して固定する防水シートの固定方法において、
前記固定部材の前記導電性基体を電磁誘導加熱するための加熱コイルを底部に収容する装置本体に取り付けられるとともに、前記加熱コイルの中心線と同心上に配置される棒状部材からなる位置決め部材を、前記固定部材の中心部に前記防水シートを介して押し当てて前記固定部材と前記加熱コイルとの位置決めを行った後、
前記加熱コイルに通電して前記導電性基体を前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで加熱して前記防水シートを前記固定部材に融着することを特徴とする防水シートの固定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2の電磁誘導加熱装置には位置検出センサが搭載されているが、位置検出センサの検出可能範囲は狭いので、作業者は、固定部材のおよその位置を把握した上で電磁誘導加熱装置を固定部材の近傍に持って行く必要がある。しかしながら、固定部材の上に防水シートが敷設されているので、固定部材を目視することができない状況であり、しかも、電磁誘導加熱装置を固定部材の上及びその近傍に配置しようとすると、電磁誘導加熱装置によって下方の視界が遮られているので、固定部材の位置を把握しにくく、電磁誘導加熱装置の位置合わせが困難である。
【0008】
そこで、特許文献3の位置決め用治具を利用する方法が考えられるが、この位置決め用治具は電磁誘導加熱装置とは別体に構成されているので、施工の際に持ち運ぶ器具が増えることになり、施工時の作業性が悪化するおそれがある。さらに、特許文献3の場合、位置決め用治具を固定部材に位置決めした後、電磁誘導加熱装置を位置決め用治具のガイド部材によって案内しなければならず、作業工程が多く、煩雑である。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、持ち運ぶ器具の数を増やすことなく、電磁誘導加熱装置を固定部材に対して容易にかつ確実に位置決めできるようにして施工時の作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、電磁誘導加熱装置の装置本体に位置決め手段を組み込んで一体化し、この位置決め手段によって電磁誘導加熱装置の加熱コイルを固定部材の真上に配置できるようにした。
【0011】
第1の発明は、建築物に固定された導電性基体及び該導電性基体の表側に一体に設けられた熱可塑性樹脂層を備える固定部材と、該固定部材の該熱可塑性樹脂層側に敷設された防水シートとを融着するための電磁誘導加熱装置において、前記固定部材の前記導電性基体を前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで電磁誘導加熱するための加熱コイルと、前記加熱コイルを底部に収容する装置本体と、前記固定部材の所定部位に前記防水シートを介して押し当てられる位置決め部材とを備え、前記位置決め部材は、前記装置本体に取り付けられ
るとともに、前記加熱コイルの中心線と同心上に配置される棒状部材で構成され、前記固定部材の中心部に前記防水シートを介して押し当てられることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、建築物に固定された固定部材を覆うように防水シートが敷設された状態で、電磁誘導加熱装置の位置決め部材を固定部材の所定部位に対して防水シートを介して押し当てることで、固定部材と、装置本体に収容されている加熱コイルとの相対的な位置関係が所定の位置関係になり、これを利用することにより、固定部材の真上に加熱コイルを配置することが可能になる。この位置決め作業の際、位置決め部材が装置本体に取り付けられているので、特許文献3のように位置決め用治具を電磁誘導加熱装置とは別に持ち運ぶ必要が無くなるとともに、位置決め部材の押し当て作業を行うことによって電磁誘導加熱装置の位置が定まるので、容易にかつ確実な位置決めが行える。
【0013】
また、棒状部材からなる位置決め部材を固定部材の中心部に防水シートを介して押し当てると、加熱コイルの中心線上に位置決め部材が位置しているので、加熱コイルの中心線と固定部材の中心部とが自動的に一致する。これにより、加熱コイルと固定部材とが確実に位置決めされる。
【0014】
第
2の発明は、前記装置本体には、前記位置決め部材が挿通するとともに、当該位置決め部材を前記加熱コイルの中心線方向に案内する案内孔が形成され、前記位置決め部材は、前記装置本体の前記底部から突出した突出状態と、前記装置本体の前記底部から突出しない非突出状態とに切り替えられることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、位置決め部材を突出状態にすることで、作業者が位置決め部材の先端部を容易に目視することが可能になり、突出状態の位置決め部材の先端部を固定部材の中心部に防水シートを介して押し当てることが可能になる。押し当てた後、位置決め部材を非突出状態に切り替えることで、位置決め部材が邪魔になることはなく、加熱コイルを固定部材に接近させて配置することが可能になる。位置決め部材を突出状態から非突出状態に切り替える際には、案内孔によって案内されるので、操作がスムーズに行える。
【0016】
第
3の発明は、前記装置本体には、前記位置決め部材を非突出方向に付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、位置決め部材が付勢部材によって非突出方向に付勢されているので、作業者が位置決め操作を行わないときには、位置決め部材を装置本体の底部から突出しないようにしておくことが可能になり、位置決め部材が邪魔になり難い。
【0018】
第
4の発明は、前記位置決め部材には、前記防水シートを介して前記固定部材の所定部位に押し当てられる部分に、前記固定部材の本体を前記建築物に固定するためのビスの頭部の形状に対応した凹部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、位置決め操作時に、位置決め部材を固定部材の所定部位に防水シートを介して押し当てた際、位置決め部材の凹部が、固定部材の本体を建築物に固定しているビスの頭部に対応した形状になっているので、当該凹部によって位置決めが確実になされる。
【0020】
第
5の発明は、前記装置本体には、前記固定部材を検出する検出センサと、当該検出センサによる検出結果を表示する表示部とが設けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、位置決め部材による位置決めを行った後、位置決めが正しく行われていれば、例えば検出センサによって固定部材を検出することが可能になり、その結果が表示部に表示される。これにより、作業者は位置決めが正しく行われているか否かを確認することができる。
【0022】
第
6の発明は、前記装置本体には、前記検出センサが前記固定部材を検出不可であるときに前記加熱コイルへの通電を禁止する制御部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、検出センサによって固定部材を検出することができない場合には、加熱コイルと固定部材とがずれている可能性が高く、この場合に加熱コイルに通電されないので、安全性を高めることができる。
【0024】
第
7の発明は、建築物に固定された導電性基体及び該導電性基体の表側に一体に設けられた熱可塑性樹脂層を備える固定部材に、該固定部材の該熱可塑性樹脂層側に敷設された防水シートを融着して固定する防水シートの固定方法において、前記固定部材の前記導電性基体を電磁誘導加熱するための加熱コイルを底部に収容する装置本体に取り付けられ
るとともに、前記加熱コイルの中心線と同心上に配置される棒状部材からなる位置決め部材を、前記固定部材の
中心部に前記防水シートを介して押し当てて前記固定部材と前記加熱コイルとの位置決めを行った後、前記加熱コイルに通電して前記導電性基体を前記熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで加熱して前記防水シートを前記固定部材に融着することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、施工時に持ち運ぶ器具の数を増やすことなく、電磁誘導加熱装置の加熱コイルを固定部材に対して容易にかつ確実に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、建築物に固定された固定部材の所定部位に防水シートを介して押し当てられる位置決め部材を、加熱コイルを収容する装置本体に取り付けたので、施工時に持ち運ぶ器具の数を増やすことなく、電磁誘導加熱装置の加熱コイルを固定部材に対して容易にかつ確実に位置決めすることができ、施工時の作業性を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る電磁誘導加熱装置1を上方から見た斜視図である。この電磁誘導加熱装置1は、
図12に示す建築物100に固定された固定部材110と防水シート120とを融着するため装置である。この実施形態の説明では、電磁誘導加熱装置1の構成を説明する前に、固定部材110及び防水シート120について説明する。
【0030】
図12に示すように、建築物100に防水シート120を敷設する際、建築物100に対して防水シート120を固定するための固定部材110が複数使用される。建築物100は、例えばビルや工場、店舗等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、防水シート120の敷設が必要な建築物であればよい。防水シート120の敷設が必要な部位は、一般的には屋根であるが、その他の部位に防水シート120を敷設することもできる。防水シート120は、従来から防水層を形成する際に使用されるシートを用いることができ、例えば塩化ビニル製のシートを挙げることができる。防水シート120の厚みは特に限定されるものではないが、例えば1mm〜数mm程度に設定することができる。
【0031】
図12では、建築物100の屋根の下地に固定部材110の本体がビス130によって固定されるようになっている。固定部材110の本体は、円形板状の導電性基体111aと、導電性基体111aの表側(
図12の上側)に一体に設けられた熱可塑性樹脂層111bとを備えた積層材で構成されている。導電性基体111aの直径は、特に限定されるものではないが、例えば60mm以上100mm以下の範囲で設定することができる。導電性基体111aの材料は、任意の導電性材料であればよく、例えば、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属やそれらのうち、任意の複数を含む合金等を使用することができる。また、亜鉛やその合金でメッキされたメッキ鋼板等を使用することもできる。
【0032】
熱可塑性樹脂層111bは、防水シート120に融着する熱可塑性樹脂からなる層である。例えば、防水シート120が塩化ビニル製であれば、熱可塑性樹脂層111bも塩化ビニルで形成することができる。
【0033】
固定部材110の中央部には、下方へ窪む窪み部112が形成されている。窪み部112は、建築物100の上面に沿って延びる円形板部113と、円形板部113の周縁部から上方へ傾斜して延びる傾斜板部114とで形成されている。円形板部113の中心部(固定部材110の中心部)には、当該円形板部113を上下方向に貫通するビス挿通孔115が形成されている。このビス挿通孔115にビス130の軸部132を挿通して建築物100にねじ込むことで固定部材110の本体を強固に締結固定することができる。固定部材110の本体を締結固定した後のビス130の頭部131は、窪み部112内において円形板部113の上面に位置することになる。このビス130は、固定部材110の一部を構成する部材であり、円盤状の本体とビス130とで固定部材110が構成されている。尚、上述した固定部材110の形状は一例であり、他の形状の固定部材を使用することもできる。
【0034】
図10等に示すように、1枚の防水シート120は、複数の固定部材110によって建築物100に固定されるようになっている。固定部材110は、所定の間隔で配置されているが、防水シート120が固定部材110の熱可塑性樹脂層111b側に敷設された状態では、固定部材110を目視することができなくなり、固定部材110の位置が分かりづらくなるが、防水シート120の膨らみによっておよその位置は推定できる。
【0035】
(電磁誘導加熱装置1の全体構成)
図9に示すように、電磁誘導加熱装置1は、電力供給ユニット2と、加熱ユニット3とを備えている。電力供給ユニット2と加熱ユニット3とは、接続線4によって接続されており、各種信号のやり取りや、電力供給ユニット2から加熱ユニット3への電力の供給が可能になっている。
【0036】
電力供給ユニット2は、制御部2aと、インバータ基板2bとを備えている。電力供給ユニット2には、例えば電源等から電力が供給されるようになっている。制御部2aは、インバータ基板2bを制御する制御信号を生成し、生成した制御信号をインバータ基板2bに送信するように構成されている。制御部2aによる制御内容については後述する。インバータ基板2bは、加熱ユニット3に対して融着用の電流(高周波電流)を出力する部分である。電力供給ユニット2は、加熱ユニット3と別体とされている。
【0037】
(加熱ユニット3の構成)
図1に示すように、加熱ユニット3は、固定部材110の導電性基体111aを熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで電磁誘導加熱するための加熱コイル10(
図5に示す)と、加熱コイル10を底部22に収容する装置本体20と、固定部材110の所定部位に防水シート120を介して押し当てられる位置決め部材30とを備えている。位置決め部材30は、装置本体20に取り付けられており、後述する加熱コイル10の中心線と同心上に配置される真っ直ぐな棒状部材で構成されている。位置決め部材30の長軸に直交する方向の断面は、略円形となっている。
【0038】
装置本体20は、略円筒状の部材からなる周壁部21と、周壁部21の下端部に取り付けられて当該周壁部21の下端部を閉塞する底部22と、周壁部21の上端部に取り付けられて当該周壁部21の上端部を閉塞する上板23とを備えている。底部22及び上板23は、周壁部21の外径と略同じ外径を有する円形の板状をなしている。従って、
図4に示す装置本体20の中心線Xは、周壁部21の中心、底部22の中心及び上板23の中心を通って上下方向に延びる線となる。
【0039】
図6〜
図8に示すように、底部22には、加熱コイル10を収容するコイル収容凹部22aが形成されている。底部22の中心部には、上下方向(
図4に示す中心線X方向)に延びる円環状の環状壁部22bが設けられている。加熱コイル10は、環状壁部22bの周りを略円形に周回するように設けられた内側コイル10aと、当該内側コイル10aの外方において当該内側コイル10aを矩形に周回するように設けられた外側コイル10bとで構成されている。外側コイル10bの外形及び内形は、四辺の長さが略等しい矩形または矩形に近い形状とすることができる。この場合、一辺の長さは、例えば80mm以上100mm以下に設定することができ、例えば固定部材110の外径と略同じか、固定部材110の外径よりも長めに設定することができる。尚、内側コイル10aと外側コイル10bとは電気的に接続されており、同時に通電可能となっている。
図6における符号10cは、加熱コイル10に接続される電力供給配線である。内側コイル10aの中心線と、外側コイル10bの中心線とは同心上に位置しており、これら中心線は、装置本体20の中心線Xと同心上に位置付けることができる。
【0040】
底部22には、コイル収容凹部22aを上方から閉塞する閉塞板22cが設けられている。尚、
図5では、閉塞板22cを省略しており、この図に示すように、平面視で外側コイル10bが略矩形、内側コイル10aが略円形であるため、外側コイル10bと内側コイル10aとの間には、外側コイル10bの4つの角部に対応する部分に半径方向に比較的広い空間が形成されることになる。この4つの空間に対応するように、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4が設けられている。第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4は、固定部材110を検出するための検出センサであり、
図7に示すように、検出部側が下に向くように配設されて閉塞板22cに固定されている。内側コイル10aを囲むように、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4を配置することができる。また、近接センサの数は4つに限られるものではなく、任意の数にすることができる。
【0041】
第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4は、それぞれ、例えばセンサコイル、発振回路等を有している。センサコイルが発振回路を通じて磁束を発生した際、固定部材110が近くに存在していると、固定部材110に渦電流が発生することになる。この渦電流によっても磁界を生じ、その磁束がセンサコイルに鎖交する。これにより、センサコイルには渦電流による磁束が加わることになり、これら磁束によってセンサコイルに電圧が発生する。つまり、センサコイルを固定部材110に接近させると、センサコイルのインピーダンスが変化し、このセンサコイルのインピーダンスの変化を測定することで固定部材110が近接したことを検知できる。固定部材110が近接したことを判定する閾値は、任意に設定することができる。インピーダンスの変化の検出は、発振振幅や発振周波数の変化等を検出することで可能になる。
【0042】
図9に示すように、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4は、電力供給ユニット2の制御部2aに接続されており、検出信号が制御部2aに入力されるようになっている。
【0043】
図6に示すように、底部22には、非接触温度センサS5が設けられている。非接触温度センサS5は、外側コイル10bの外方において検出部側が下に向くように配設されて、閉塞板22cに固定されている。非接触温度センサS5は、非接触状態で防水シート120の表面温度を検出するためのセンサであり、従来から周知の赤外線放射温度センサ等で構成することができる。
図9に示すように、非接触温度センサS5は、電力供給ユニット2の制御部2aに接続されており、検出信号が制御部2aに入力されるようになっている。
【0044】
図6に示すように、底部22には、コイル温度センサS6が設けられている。コイル温度センサS6は、外側コイル10bに接触するように配設されており、この外側コイル10bの温度を検出するためのものである。コイル温度センサS6は、従来から周知の熱電対等で構成することができる。
図9に示すように、コイル温度センサS6は、電力供給ユニット2のインバータ基板2bに接続されており、検出信号がインバータ基板2bに入力されるようになっている。
【0045】
図3に示すように、上板23には、第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4が視認可能に設けられている。第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4の位置は、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の位置に対応しており、第1近接センサS1の直上方に第1ランプL1、第2近接センサS2の直上方に第2ランプL2、第3近接センサS3の直上方に第3ランプL3、第4近接センサS4の直上方に第4ランプL4が配置されている。
図9に示すように、第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4は、電力供給ユニット2の制御部2aに接続されており、制御部2aによって点灯、消灯の切替が行われるようになっている。第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4は、それぞれ、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の検出結果を表示する表示部である。
【0046】
図3に示すように、上板23には、加熱スイッチAが設けられている。加熱スイッチAは、作業者の操作によって加熱コイル10への通電を開始可能にするスイッチであり、通常時はOFFになっているが、作業者が例えば押すことによってONになるように構成されている。
図9に示すように、加熱スイッチAは、電力供給ユニット2の制御部2aに接続されている。
【0047】
上板23には、作業者が把持する取っ手27が取り付けられている。取っ手27は、上板23から上方に離れており、装置本体20の中心線Xの径方向に突出するように形成されている。
【0048】
また、装置本体20には、電力供給ユニット2の制御部2aに接続されたブザーBが設けられている。例えば、何らかの理由によって電力の供給を禁止する場合等に、ブザーBを鳴らして作業者へ報知することができる。
【0049】
図7に示すように、底部22には、位置決め部材30が挿通するとともに、当該位置決め部材30を加熱コイル10の中心線方向に案内する下側案内孔22dが形成されている。下側案内孔22dは環状壁部22bの内方において形成されており、下側案内孔22dの中心線は上下方向に延びるとともに、加熱コイル10の中心線の同心上に位置している。下側案内孔22dの内周面を、位置決め部材30の下側部分が摺動することで、位置決め部材30の下側部分が上下方向に案内される。
【0050】
図7に示すように、底部22の上方には、固定板24が設けられている。固定板24は、装置本体20の中心線Xと直交する方向に延びており、複数の支持部材25を介して底部22の閉塞板22cに固定されている。支持部材25は、上下方向に延びる金属製の棒材等で構成されている。支持部材25の下端部は閉塞板22cに固定されている。固定板24は、支持部材25の上端部に固定されており、固定板24と、底部22との上下方向の離間距離が一定に保たれるようになっている。
【0051】
固定板24には、下側案内孔22dと同心上に上側案内孔24aが上下方向に貫通するように形成されている。上側案内孔24aの内周面を、位置決め部材30の上側部分が摺動することで、位置決め部材30の上側部分が上下方向に案内される。
【0052】
位置決め部材30の上端部には、径方向に拡大した拡大形状部31が設けられている。位置決め部材30を作業者が操作する際には、拡大形状部31を押す等すればよい。一方、位置決め部材30の下端部は、防水シート120を介して固定部材110の所定部位に押し当てられる部分である。固定部材110の所定部位は、例えば、固定部材110の中心部とすることができ、当該固定部材110の一部であるビス130の頭部131とすることができる。また、位置決め部材30の下端部を、固定部材110の窪み部112に防水シート120を介して押し当てるようにしてもよい。
【0053】
位置決め部材30の下端部には、ビス130の頭部131の形状に対応した凹部32が形成されている。位置決め部材30の下端部を、防水シート120を介してビス130の頭部131に押し当てる際には、防水シート120が頭部131の形状に沿って上方に膨らんだ形状となっており、この膨らんだ部分が位置決め部材30の凹部32に嵌まることになる。
【0054】
位置決め部材30は、上下方向に移動することにより、装置本体20の底部22から下方へ突出した突出状態(
図4に仮想線で示す)と、装置本体20の底部22から突出しない非突出状態(
図6〜
図8に示す)とに切り替えられる。位置決め部材30が突出状態した状態では、拡大形状部31が上板23の上面に当接し、位置決め部材30がそれ以上、下方へは移動しないようになっている。
【0055】
また、
図8に示すように、装置本体20には、位置決め部材30を非突出方向(上方)に付勢する付勢部材28が設けられている。付勢部材28は例えば引っ張りバネやゴム等の弾性部材で構成することができる。付勢部材28の上端部は、固定板24に設けられている係合部材24aに係合している。付勢部材28の下端部は、位置決め部材30における固定板24よりも下側に設けられている係合部材30aに係合している。これにより、位置決め部材30に対して当該位置決め部材30を上方へ移動可能な大きさの力が常時作用することになる。従って、作業者が位置決め操作を行わないときには、位置決め部材30を装置本体20の底部22から突出しないようにしておくことが可能になり、位置決め部材30が邪魔になり難い。位置決め部材30が非突出状態にあるときには、拡大形状部31が取っ手27から上方に離れた位置にあるので、作業者は非突出状態であることを上方からの目視だけで把握できる。
【0056】
位置決め部材30を非突出状態から突出状態にする際には、作業者が拡大形状部31を下方へ押せばよい。拡大形状部31を下方へ押すことで、位置決め部材30が付勢部材28による上向きの付勢力に抗して下方へ移動し、突出状態になる。
【0057】
(制御部2aの構成)
制御部2aは、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の全てが固定部材110を検出した場合で、かつ、加熱スイッチAがONとされた場合に、インバータ基板2bに対して、加熱コイル10への通電を許可する制御信号を出力する。一方、加熱スイッチAがOFFとされている場合には、加熱コイル10への通電を禁止する。また、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の少なくとも1つが固定部材110を検出していない場合、即ち、固定部材110を検出不可の場合にも、加熱コイル10への通電を禁止する。これによりインターロック回路が構成されている。
【0058】
インバータ基板2bは、コイル温度センサS6から出力された温度情報に基づいて加熱コイル10の温度が所定の高温度以上であるか否かを判定する判定部(図示せず)を備えている。この判定部が、加熱コイル10の温度が所定の高温度未満であると判定すれば、加熱コイル10への通電を可能にする一方、加熱コイル10の温度が所定の高温度以上であると判定すれば、加熱コイル10への通電を不能にする。所定の高温度は、加熱コイル10の熱による損傷等が起こりやすい温度とすることができる。
【0059】
したがって、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の全てが固定部材110を検出し、かつ、加熱スイッチAがONとされ、しかも、加熱コイル10の温度が所定の高温度未満の場合にのみ、インバータ基板2bから加熱コイル10に対して高周波電流が供給される。
【0060】
また、制御部2aは、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の各々による固定部材110の検出結果に基づいて、第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4を制御する。例えば、第1近接センサS1が固定部材110を検出している場合には、第1ランプL1を点灯させ、第1近接センサS1が固定部材110を検出していない場合には、第1ランプL1を消灯させる。第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4についても同様である。
【0061】
(施工要領)
次に、電磁誘導加熱装置1を使用した施工要領について説明する。
図10に示すように、固定部材110が建築物に固定され、その上側に防水シート120が敷設された後に電磁誘導加熱装置1による融着を開始する。作業者は、加熱ユニット3の取っ手27を持ち、その状態で、例えば指で位置決め部材30の拡大形状部31を下方へ押し、位置決め部材30を突出状態にする。これにより、位置決め部材30の下端部を加熱ユニット3の斜め上方から視認することができる。固定部材110は所定の間隔で設けられているので、作業者は固定部材110のおよその位置を推定することができるとともに、防水シート120の膨らみによっても固定部材110のおよその位置を推定することができる。
【0062】
このため、作業者は、位置決め部材30の下端部を目視しながら、固定部材110のビス130の頭部131辺りを狙って位置決め部材30の下端部を押し付ける。位置決め部材30を押し付けると、防水シート120がビス130の頭部131の形状に沿って上方に膨らんだ形状になるので、位置決め部材30の凹部32が防水シート120の膨らんだ部分に嵌まり、位置決め部材30の位置が定まる。位置決め部材30の下端部の位置がずれていた場合には、位置を微調整することで、位置決め部材30の凹部32を防水シート120の膨らんだ部分に嵌めることができる。
【0063】
そして、位置決め部材30の下端部が防水シート120に対して動かないように、位置決め部材30の下端部を防水シート120に押し付けながら、取っ手27を降ろしていくことで、位置決め部材30に対して装置本体20が下方へ移動していく。その結果、
図11に示すように、位置決め部材30が非突出状態に切り替わる。これにより、固定部材110と、装置本体20に収容されている加熱コイル10との相対的な位置関係が所定の位置関係、即ち、固定部材110の真上に加熱コイル10を配置することが可能になる。位置決め部材30を突出状態から非突出状態に切り替える際には、案内孔22d、24aによって案内されるので、操作がスムーズに行える。
【0064】
装置本体20を下方へ降ろした時点で、第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4が点灯していれば、第1近接センサS1、第2近接センサS2、第3近接センサS3及び第4近接センサS4の全てが固定部材110を検出しているということである。この場合、固定部材110に対する加熱コイル10の位置がずれていないので、作業者は第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4によって最終確認を行うことができる。尚、第1ランプL1、第2ランプL2、第3ランプL3及び第4ランプL4のいずれかが点灯していない場合には、装置本体20の位置を微調整すればよい。
【0065】
次いで、作業者が加熱スイッチAをONにすると、加熱コイル10に高周波電流が供給されて加熱コイル10に磁束が発生する。この磁束は固定部材110の導電性基体11aに渦電流を発生させ、これにより、固定部材110の導電性基体11aにジュール熱が発生する。加熱コイル10への通電時間は、非接触温度センサS5の検出信号に基づいて制御することができる。固定部材110の熱可塑性樹脂層111bの溶融温度以上となるまで固定部材110の導電性基体111aを加熱することで、防水シート120を固定部材110に融着することができる。電磁誘導加熱による融着作業自体は従来から周知のものである。
【0066】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、固定部材110の導電性基体111aを電磁誘導加熱するための加熱コイル10を底部22に収容する装置本体20に位置決め部材30を取り付け、この位置決め部材30を、固定部材110に防水シート120を介して押し当てて固定部材110と加熱コイル10との位置決めを行った後、加熱コイル10に通電して導電性基体111aを熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで加熱して防水シート120を固定部材110に融着することができる。
【0067】
位置決め作業の際、位置決め部材30が装置本体20に取り付けられているので、位置決め用治具を電磁誘導加熱装置1とは別に持ち運ぶ必要が無くなり、しかも、位置決め部材30の押し当て作業を行うことによって電磁誘導加熱装置1の位置が定まるので、容易にかつ確実な位置決め作業を行うことができる。
【0068】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、加熱コイル10は、内側コイル10aと外側コイル10bに分けることなく、1つのコイルで構成してもよい。近接センサS1〜S4の位置は、固定部材110を検出可能な位置であればよく、固定部材110の形状は大きさに合わせて任意に設定することができる。
【解決手段】電磁誘導加熱装置は、固定部材の導電性基体を熱可塑性樹脂の溶融温度以上となるまで電磁誘導加熱するための加熱コイルと、加熱コイルを底部に収容する装置本体20と、固定部材の所定部位に防水シートを介して押し当てられる位置決め部材30とを備えている。位置決め部材30は、装置本体20に取り付けられている。