(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吊具と前記梁部とは、前記吊具が前記荷に装着された状態で前記昇降機構により吊り上げられるときに、相互に干渉しない構成とされたことを特徴とする請求項1に記載の荷昇降装置。
前記梁部は、前記吊具が前記荷に装着された状態で前記昇降機構により吊り上げられるときに、前記吊具及び前記荷と干渉しない構成とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の荷昇降装置。
前記梁部、前記支柱、前記昇降機構及び前記吊具のすべて又はそれらのうちのいずれかが、それぞれ複数の部材に分解可能とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の荷昇降装置。
前記梁部、前記支柱及び前記吊具のすべて又はそれらのうちのいずれかが、それぞれ複数の柱状の部材に分解可能とされたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の荷昇降装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近時、乗用車の洗車に使用される洗車機を、これまで設置場所としては一般的なガソリンスタンドや洗車場といったオープンスペースではなく、例えば、自動車販売ディーラーが入居するビルなどの建物内にも設置したいといった要望があり、特に地価の高い大都市部においてその傾向が高くなっている。前記のようなオープンスペースでは、設置場所の上方には何の制約もないことから、クレーンなどを使用して洗車機を設置場所に容易に吊り下ろすことができるため、設置作業に然したる障害はない。ところが、建物内では当然のことながら天井が存在するため、クレーンなどによる設置作業に天井が障害となる。
【0006】
また、建物内に洗車機を設置する場合に限らず、例えば、屋外であっても多数の配管やケーブルが張り巡らされたコンビナートなどの施設において、配管やケーブルの直下に荷を設置する場合では、設置場所の上方に配管やケーブルが存在するため、上記建物内の場合と同様、クレーンなどによる設置作業にそれら配管やケーブルが障害となる。
【0007】
そこで上記のような荷の設置場所の上方に天井や配管といった障害物が存在する場合には、クレーンの代替として、例えば、上記特許文献1に記載の装置(荷の上端部に設けられた吊点部を吊点として直接荷を吊る装置)を用いることが考えられる。
【0008】
特許文献1に記載の装置にて荷を吊る場合、荷に掛ける掛け具や、荷を昇降させる昇降機構が荷の上方に設けられているため、少なくとも掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスが荷の上方に確保される場合は、当該装置の採用は可能である。しかしながら、例え、荷の全高が、該荷が昇降されるべき場所の天井高よりも低く、該荷の上方にクリアランスが存在しても、掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスが該荷の上方に確保できなければ、該荷を該場所において昇降させることができない、という問題があった。
【0009】
このような問題に鑑み、建物内に洗車機を設置するにあたって、荷昇降装置を一切用いずに洗車機を該場所に設置しようとすると、洗車機の正面を上にして寝かせた状態で洗車機を該場所に搬入した後に、洗車機を回転させて起こすことで設置する方法が考えられる。しかしながら、洗車機を回転させる際に洗車機の位置を調整することが困難であるが故に、洗車機が天井と衝突してしまうことがあり、このような方法ではうまく設置できないという問題があった。かといって、荷昇降装置を一切用いずに洗車機を該場所に設置しようとして、洗車機を複数の細かい部品に分解した状態で該場所に搬入した後に、該場所において該部品を組み立てて完成させることにより洗車機を設置しようとしても、設置作業に要する時間が長くなり、コストがかかってしまうという問題があった。
【0010】
また、上記したような、屋外施設における配管やケーブルなどの直下での荷の設置についても、洗車機の設置の場合と同様の問題があり、荷が分解できないものである場合には、設置それ自体を断念せざるを得ないといった問題があった。
【0011】
この点に関して、上記特許文献2に記載の装置(荷が吊り板の上に載せられた状態で、該吊り板に設けられた吊点部を吊点として荷を吊る装置)を用いて荷を吊る場合、掛け具や昇降機構は吊り板の上方に設けられていれば足りるため、荷の上方にクリアランスを確保しなくても該荷を吊ることができる。しかし、該荷は吊り板の上に載置され、該荷の直下には該吊り板が存在することから、該荷を吊り下ろして他の荷等の上に組み付ける際に、他の荷に該吊り板が干渉してしまい、荷同士を組み付けることができないという問題があった。
【0012】
例えば、近年の洗車機の種類には、洗車機を設置しようとする場所への搬入を容易にするために、上下部に分離可能とし、設置時に洗車機上部を洗車機下部に組み付けて設置するタイプのものがある。上記特許文献2に記載するような装置を用いて、洗車機上部を吊り下ろして洗車機下部の上に組み付けようとしても、該洗車機上部が載置されている吊り板が該洗車機下部と干渉してしまい、該洗車機上部を該洗車機下部の上に組み付けることができないという問題があった。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、荷の上方に障害物が存在するため掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスを荷の上方に確保することができない場合でも、短い作業時間で、荷の位置を調整しながら、荷を吊った状態で昇降させることができ、かつ、荷を吊り下ろして他の荷等の上に載置して、組み付けることも可能とする荷昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の荷昇降装置は、上端部に吊点部が設定されている荷を上から吊った状態で昇降させる荷昇降装置であって、支柱と、前記支柱により支えられた梁部と、前記梁部に設けられた昇降機構と、前記荷に装着された状態で前記昇降機構に吊られる吊具と、を備え、前記吊具は、前記昇降機構と接続されているオフセット吊点部と、前記荷を保持する荷保持部と、底面に設けられ
、前記荷の底面と他の荷との接触を許容する開口部と、を有するものであり、前記オフセット吊点部は、前記吊具が前記荷に装着された状態において、前記吊点部よりも下方に設けられ、前記荷に装着されている前記吊具を、前記昇降機構により前記オフセット吊点部を吊点として吊った状態で昇降させることを特徴とするものである。
【0015】
この特定事項により、荷を吊る吊点が該荷の上端部よりも下方に位置することになるため、荷の設置場所の上方に天井などの障害物がある場合、障害物と吊点との離間距離を吊点が下がった分稼ぐことができる。したがって、荷の設置場所の上方に天井などの障害物があり、荷と障害物との間に掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスが確保できない場合であっても、簡単に、該荷の位置を調整しながら、該荷を吊った状態で昇降させることができる。また、該荷を吊り下ろして他の荷等の上に載置して、組み付けることもできる。
【0016】
上記荷昇降装置にあっては、前記吊具と前記梁部とは、前記吊具が前記荷に装着された状態で前記昇降機構により吊り上げられるときに、相互に干渉しない構成とされてもよい。
【0017】
この特定事項により、荷の吊り上げ高さが吊具と梁部との干渉により制限されることがない。
【0018】
前記梁部は、前記吊具が前記荷に装着された状態で前記昇降機構により吊り上げられるときに、前記吊具及び前記荷と干渉しない構成とされてもよい。
【0019】
この特定事項により、荷の吊り上げ高さが、吊具及び荷と、梁部との干渉により制限されることがない。
【0020】
上記荷昇降装置にあっては、前記梁部、前記支柱、前記昇降機構及び前記吊具のすべて又はそれらのうちのいずれかが、それぞれ複数の部材に分解可能に構成されてもよい。
【0021】
この特定事項により、荷昇降装置の運搬が容易となる。
【0022】
上記荷昇降装置にあっては、前記梁部、前記支柱及び前記吊具のすべて又はそれらのうちのいずれかが、それぞれ複数の柱状の部材に分解可能に構成されてもよい。
【0023】
この特定事項により、分解した後束ねて運搬することができることから、荷昇降装置の運搬がさらに容易となる。
【0024】
上記荷昇降装置にあっては、前記荷昇降装置が、設置床面上に沿って移動可能であってもよい。
【0025】
この特定事項により、荷昇降装置が、荷を上昇させた状態で移動して、該荷を他の場所に吊り下ろすことができる。
【0026】
上記荷昇降装置にあっては、前記昇降機構がチェーンブロックであってもよい。
【0027】
この特定事項により、容易に調達可能な昇降機構とすることができる。
【0028】
上記荷昇降装置にあっては、前記荷が洗車機であってもよい。
【0029】
この特定事項により、荷昇降装置を、洗車機の設置、撤去、組み付け、解体等に用いることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の荷昇降装置によれば、荷の設置場所の上方に天井などの障害物があり、荷と障害物との間に掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスが確保できない場合であっても、短い作業時間で、荷の位置を調整しながら、荷を吊った状態で昇降させることができ、かつ、荷を吊り下ろして他の荷等の上に載置して、組み付けることを可能とする、構造が簡単な荷昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置を示す概略側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置の他の例を示す概略側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置のさらに他の例を示す概略側面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る昇降機構を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る吊具を示す斜視図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置を用いて荷を設置する方法(以下、荷を設置する方法)の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図7B】荷を設置する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図7C】荷を設置する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図7D】荷を設置する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図7E】荷を設置する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図7F】荷を設置する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図8A】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置を用いて荷を撤去する方法(以下、荷を撤去する方法)の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図8B】荷を撤去する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図8C】荷を撤去する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図8D】荷を撤去する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図8E】荷を撤去する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図8F】荷を撤去する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置を用いて上下部に分離されている洗車機の洗車機上部を洗車機下部に組み付けて、洗車機を組み立てる方法(以下、洗車機を組み立てる方法)の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図9B】洗車機を組み立てる方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図9C】洗車機を組み立てる方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図9D】洗車機を組み立てる方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図9E】洗車機を組み立てる方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図9F】洗車機を組み立てる方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図10A】本発明の一実施形態に係る荷昇降装置を用いて上下部に分離可能な洗車機の洗車機上部を洗車機下部から分離する方法(以下、洗車機を解体する方法)の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図10B】洗車機を解体する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図10C】洗車機を解体する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図10D】洗車機を解体する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図10E】洗車機を解体する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【
図10F】洗車機を解体する方法の一ステップを説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る荷昇降装置1を示す概略側面図である。また、
図2は荷昇降装置1を示す概略正面図である。なお、
図1及び
図2において、荷昇降装置1の正面側(前側)を矢符FR、上昇方向を矢符UP、右側を矢符R、左側を矢符Lで示す。
図3、
図4及び
図6においても同様に示す。
【0034】
荷昇降装置1は、
図1や
図2に示すように、支柱11と、支柱11により支えられた梁部10と、梁部10に設けられた昇降機構20と、荷90に装着された状態で昇降機構20に吊られている吊具30と、を備えている。なお、
図1及び
図2は概略図であり、ガセットプレートや補強リブ等の図示は省略している。以下、上記の各構成要素について、梁部10から詳述する。
【0035】
−梁部−
梁部10は、昇降機構20が十分な高さ位置から吊具30を吊ることができるように、昇降機構20の上端を可能な限り高い位置に保持するために設けられるものであり、
図1に示すように、荷昇降装置1の前後方向を長手方向として、略水平に保たれた状態で、自立している支柱11により両端が支持されている。梁部10は、
図2に示すように、荷昇降装置1の左側に設けられた左梁部10aと、荷昇降装置1の右側に設けられた右梁部10bと、からなる。
【0036】
そして、左梁部10a及び右梁部10bには、昇降機構20が2個ずつ垂れ下がるように掛けられ、それら計4個の昇降機構20により吊具30が荷90に装着された状態で吊られていることから、左梁部10a及び右梁部10bには、合わせて、下式で示す重量(1)が鉛直方向に掛かる。
【0037】
重量(1)=(左梁部10a及び右梁部10bに掛けられた昇降機構20の総重量)+(昇降機構20により吊られている吊具30の重量)+(吊具30が装着されている荷90の重量)
左梁部10a及び右梁部10bには、それぞれ、上記の重量(1)が左梁部10a及び右梁部10bにより分配された重量、すなわち上記の重量(1)の2分の1の重量が掛かる。左梁部10a及び右梁部10bは、この重量に耐えられるように、ともに、剛性に優れている一般的なH型鋼からなる。左梁部10a及び右梁部10bがH型鋼で構成されることにより、左梁部10a及び右梁部10bを束ねて運搬することが可能となる。
【0038】
勿論のこと、梁部10の材質や構造は、左梁部10aや右梁部10bのような2本のH型鋼からなる構成に限られず、上記の重量(1)による負荷が掛かっても変形しないような剛性を有していれば足りるため、単数又は複数の、他の形態の鋼材や、木材等から構成されていてもよい。
【0039】
−支柱−
支柱11は、梁部10を支えるために、左右方向を長手方向として、自立するように設けられている。支柱11は、
図1に示すように、荷昇降装置1の正面側に設けられた前支柱11aと、荷昇降装置1の後面側に設けられた後支柱11bと、からなる。支柱11は、梁部10を略水平に保つ状態で支えることができれば足りることから、支柱11は、
図3に示すように、梁部10の一端のみを支える構成としてもよい。このとき、梁部10が略水平に保たれるように、梁部10と支柱11との入隅部に支柱補強部13を設けてもよい。
【0040】
前支柱11aの上に左梁部10a及び右梁部10bの一端が据えられ、後支柱11bの上に左梁部10a及び右梁部10bの他端が据えられることにより、左梁部10a及び右梁部10bは、それぞれ前支柱11aから後支柱11bまでに架けて橋渡すように、前支柱11a及び後支柱11bの上に載置されている。なお、左梁部10aや右梁部10bは、前支柱11aや後支柱11bの上に載置されるのに限られず、互いに締結されていてもよい。
【0041】
前支柱11a及び後支柱11bは、ともに、左梁部10a及び右梁部10bに掛けられている複数の昇降機構20が十分な高さ位置から吊具30を吊ることができるように、左梁部10a及び右梁部10bを支えるのに十分な高さを有するとともに、左側に設けられた左梁部10aと右側に設けられた右梁部10bとを離間させ配置するのに十分な幅と、左梁部10a及び右梁部10bの一端部を据えるのに十分な奥行きと、を有する。なお、前支柱11a(又は後支柱11b)は、左側に設けられた左梁部10aと右側に設けられた右梁部10bとを離間させ配置するために、左側部と、右側部と、にさらに分離されている構成であって、左梁部10aを前支柱11a(又は後支柱11b)の左側部の上に載置させ、右梁部10bを前支柱11a(又は後支柱11b)の右側部の上に載置させるような構成であってもよい。
【0042】
そして、前支柱11a及び後支柱11bには、左梁部10a及び右梁部10bのそれぞれが、橋渡すように架けられており、左梁部10a及び右梁部10bには合わせて上記の重量(1)が鉛直方向に掛かっていることから、前支柱11aが左梁部10a及び右梁部10bを支える支点と、後支柱11bが左梁部10a及び右梁部10bを支える支点とには、合わせて、上記の重量(1)に左梁部10a及び右梁部10bの重量を追加した以下の重量(2)が鉛直方向に掛かる。
【0043】
重量(2)=重量(1)+(左梁部10a及び右梁部10bの重量)
前支柱11a及び後支柱11bには、それぞれ、合わせて上記の重量(2)の2分の1の重量が掛かることとなる。前支柱11a及び後支柱11bは、この重量が掛かっても崩壊しないように、ともに、強度に優れている一般的なくさび緊結式足場からなる。前支柱11a及び後支柱11bがくさび緊結式足場から構成されることにより、前支柱11a及び後支柱11bを分解して、建枠や踏板等を束ねて運搬することが可能となる。
【0044】
さりとて、前支柱11a及び後支柱11bに存在する、左梁部10aを支える支点と、右梁部10bを支える支点とには、それぞれ、上記の重量(2)の4分の1の重量が掛かることとなり、この重量が各支点に集中すると、くさび緊結式足場からなる前支柱11a及び後支柱11bの建枠が変形する虞がある。そのような虞がある場合、これらの建枠が、応力集中により変形することを回避するためのクッション材として、左梁部10a及び右梁部10bと前支柱11a及び後支柱11bとの間には、
図1及び
図2に示すように、それぞれ、応力緩和部12が設けられている。応力緩和部12は、薄いながらもクッション性や強度に優れている、例えば樫のような木材が好ましいが、材質はこれに限られない。
【0045】
前支柱11aの上に応力緩和部12を設けたものの高さと、後支柱11bの上に応力緩和部12を設けたものの高さは、左梁部10a及び右梁部10bが略水平に保たれるように、同等に設定されている。
【0046】
勿論のこと、支柱11の材質や構造は、前支柱11aや後支柱11bのようなくさび緊結式足場からなる構成に限られず、上記の重量(2)による負荷が掛かっても耐えられる強度や剛性を有しているものであれば足りる。
【0047】
なお、荷昇降装置1を床面上に沿って移動可能とするために、支柱11の底部に、車輪等を設けてもよい。
【0048】
−昇降機構−
昇降機構20は、吊具30を吊るために、梁部10から垂れ下がるように掛けられ、吊具30のオフセット吊点部31と連結される。左梁部10aの正面側に第1昇降機構20aが、左梁部10aの後面側に第2昇降機構20bが、右梁部10bの正面側に第3昇降機構20cが、右梁部10bの後面側に第4昇降機構20dが、それぞれ掛けられている。昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)は、それぞれ、
図5に示すように、チェーンブロック21と、吊手22と、を備える。
【0049】
チェーンブロック21は、両端にフックを有する手動あるいは電動のチェーンブロックであって、上記の重量(1)に応じた定格荷重を有するものである。チェーンブロック21は、広く市場に流通しているもので足りるため、調達が容易である。
【0050】
吊手22は、
図5に示すように、梁部10に貫通させるように、四角環状に形成されている。この形状により、後述するオフセット吊点部31の位置に合わせて、吊手22を梁部10に沿ってスライドさせることが可能となる。
【0051】
吊手22は、剛性や加工性に優れており、かつ、安価であるSS400等の鋼板に、梁部10(左梁部10a、右梁部10b)を貫通させるための四角穴22bを打ち抜き、四角穴22bの下に、チェーンブロック21を引っ掛けるための丸穴22cを打ち抜いたものである。梁部10を吊手22の四角穴22bに貫通させたとき、重力により、梁部10と吊手22の四角穴22bの上辺の内壁が接触する構造となっている。つまり、構造上、梁部10と接触している四角穴22bの上辺の内壁が負荷を受け、吊手22の上部の両角部分にその負荷による応力が集中することとなる。吊手22に掛けられたチェーンブロック21により、吊具30が吊られた場合であっても、吊手22が変形しないように、四角穴22bの上辺部における梁部10との接触面積を増加させて応力を分散させるための吊手補強部22aが、吊手22の両面に溶接、接着又はボルト止め等により添設されている。また、それら2つの吊手補強部22aは、吊手22の上部の両角部分を補強すべく、該2つを合わせた幅寸法が吊手22の幅寸法と同等とされている。なお、吊手補強部22aは、吊手22と同部材からなるが、材質はこれに限られず、また、吊手22が十分な剛性を有しているのであれば、吊手補強部22aを設けなくてもよい。
【0052】
吊手22は、梁部10に掛けることができ、かつ、チェーンブロック21を掛けた状態で吊具30を吊っても変形しない剛性を有していれば足りるため、例えば、環状やフック状に形成されていてもよいし、ステンレス鋼やアルミ合金等を用いてもよい。また、板材を打ち抜いた一体ものに限られず、複数部材を溶接又は締結させたものでもよい。
【0053】
昇降機構20は、吊具30を吊った状態で昇降させることができ、かつ、吊具30の昇降位置を調整できるものであれば足りるため、上記の構成に限られず、例えば、ホイストやウインチ等でもよい。
【0054】
また、昇降機構20は、その運搬を容易にするために、複数の部材に分解可能に構成されていてもよい。
【0055】
−吊具−
吊具30は、昇降機構20と接続された状態で吊られ、荷90を吊るための新たな吊点を提供するために、荷90に装着される。吊具30は、
図6に示すように、オフセット吊点部31と、荷保持部32と、を有し、荷保持杆301と、吊点支持杆302と、これらを相互に連結する連結杆303と、から構成されている。
【0056】
荷保持杆301は、
図6に示すように、荷昇降装置1の上端側に配置されており、荷昇降装置1の前後方向を長手方向として、左側に設けられた左荷保持杆301aと、右側に設けられた右荷保持杆301bと、からなる。
【0057】
左荷保持杆301a及び右荷保持杆301bの長さは、吊具30が荷90の上に跨るように装着されるのに十分な長さに設定されている。左荷保持杆301a及び右荷保持杆301bの形状及び左右方向の位置は、後述する荷保持部32の位置に合わせて設定されている。左荷保持杆301a及び右荷保持杆301bは、ともに、剛性に優れている一般的なH型鋼からなる。また、左荷保持杆301a及び右荷保持杆301bは、後述する荷保持部32としてボルト締結穴が貫通できるように、H型鋼のフランジ面が下方となるように配置されている。
【0058】
吊点支持杆302は、
図6に示すように、荷昇降装置1の下端側に配置されており、荷昇降装置1の左右方向を長手方向として、左荷保持杆301aの前端から右荷保持杆301bの前端までに沿って伸びている前吊点支持杆302aと、左荷保持杆301aの後端から右荷保持杆301bの後端までに沿って伸びている後吊点支持杆302bと、からなる。
【0059】
前吊点支持杆302a及び後吊点支持杆302bは、ともに、剛性に優れている一般的なH型鋼からなる。また、前吊点支持杆302a及び後吊点支持杆302bは、H型鋼のウェブ部分に、後述するオフセット吊点部31を掛けるための丸穴を有し、オフセット吊点部を前後軸方向に回転可能とするために、H型鋼のフランジ面が水平になるように配置されている。
【0060】
また、前吊点支持杆302a及び後吊点支持杆302bに掛けられるオフセット吊点部31が、それぞれ対応する昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)と接続された状態で、昇降機構20が吊具30と干渉しないように、前吊点支持杆302a及び後吊点支持杆302bの長さは、それぞれ、左荷保持杆301aの左側面から右荷保持杆301bの右側面までの距離よりも長く設定されている。
【0061】
連結杆303は、
図6に示すように、荷昇降装置1の上下方向を長手方向として、上端が荷保持杆301と連結され、下端が吊点支持杆302と連結されるように設けられており、左荷保持杆301aの前端と前吊点支持杆302aの左端を連結する第1連結杆303aと、右荷保持杆301bの前端と前吊点支持杆302aの右端を連結する第2連結杆303bと、左荷保持杆301aの後端と後吊点支持杆302bの左端を連結する第3連結杆303cと、右荷保持杆301bの後端と後吊点支持杆302bの右端を連結する第4連結杆303dと、からなる。連結杆303(第1連結杆303a〜第4連結杆303d)は、ともに、剛性に優れている一般的なH型鋼からなる。
【0062】
連結杆303(第1連結杆303a〜第4連結杆303d)の天面には、それぞれ、荷保持杆301(左荷保持杆301a、右荷保持杆301b)の底面とボルト等で締結できるように、ガセットプレート304(ガセットプレート304a〜ガセットプレート304d)が溶接されているとともに、連結杆303の側面及びガセットプレート304の底面に、三角形状の補強リブ305(補強リブ305a〜補強リブ305d)が溶接されている。同様に、連結杆303の底面には、それぞれ、吊点支持杆302(前吊点支持杆302a、後吊点支持杆302b)の天面とボルト等で締結できるように、ガセットプレート306(ガセットプレート306a〜ガセットプレート306d)が溶接されているとともに、連結杆303の外側面及びガセットプレート306の天面に三角形状の補強リブ307(補強リブ307a〜補強リブ307d)が溶接され、連結杆303の内側面及びガセットプレート306の天面に補強リブ308(補強リブ308a〜補強リブ308d)が溶接されている。
【0063】
オフセット吊点部31は、荷90の上端部(荷90の天面及び荷90の各側面の上端)に予め設定されている吊点部91の代替となる新たな吊点として用いられるものであり、
図6に示すように、吊点支持杆302(前吊点支持杆302a、後吊点支持杆302b)のウェブ部の両端にそれぞれ掛けられているシャックルからなる。各オフセット吊点部31は、各昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)と接続され、鉛直方向に吊られる。つまり、前吊点支持杆302aの左端のオフセット吊点部31aは第1昇降機構20aと接続され、前吊点支持杆302aの右端のオフセット吊点部31bは第2昇降機構20bと接続され、後吊点支持杆302bの左端のオフセット吊点部31cは第3昇降機構20cと接続され、後吊点支持杆302bの右端のオフセット吊点部31dは第4昇降機構20dと接続される。
【0064】
オフセット吊点部31は、吊具30が荷90に装着された状態において、荷90の上端部に予め設定されている吊点部91よりも下方に設けられている。これにより、荷90を吊る吊点が吊点部91からオフセット吊点部31に代替されるとき、荷90を吊る吊点が実質的に下方に移設されることとなる。荷90を吊る吊点がオフセット吊点部31に代替されることにより、荷90はオフセット吊点部31を吊点として鉛直方向に吊られる。このとき、昇降機構20は、荷90の上方ではなく、オフセット吊点部31の直上に存在することとなるため、昇降機構20の高さ分のクリアランスを荷90の上方に確保することなく、荷90を昇降させることができる。
【0065】
オフセット吊点部31は、シャックルに限られず、例えば、フック等でもよい。
【0066】
荷保持部32は、
図6に示すように、荷90を保持するために、荷保持杆301(左荷保持杆301a、右荷保持杆301b)の底面内側に設けられたボルト締結穴であり、左荷保持杆301aの前端に設けられた第1荷保持部32aと、右荷保持杆301bの前端に設けられた第2荷保持部32bと、左荷保持杆301aの後端に設けられた第3荷保持部32cと、右荷保持杆301bの後端に設けられた第4荷保持部32dと、からなる。荷保持部32(第1荷保持部32a〜第4荷保持部32d)の位置は、荷90に予め設けられたボルト締結穴の位置に合わせて決められる。荷保持部32と、荷90のボルト締結穴とに、ボルトやナット等を締結させることにより、吊具30は荷90に締結される。勿論のこと、荷保持部32は、荷90と固定されることができれば足りるため、ボルト締結穴に限られず、例えば、荷90の締結穴に貫通させてナットを介して締結できるスタッドとしてもよい。
【0067】
開口部33は、吊具30が荷90に装着された状態で、荷90を他の荷の上に載置させ、該他の荷に組み付けることを可能とするために、吊具30の底部、すなわち、前吊点支持杆302aと後吊点支持杆302bの間に設けられている。開口部33は、少なくとも、荷90の底面と該他の荷との接触を許容するものであれば足りるため、大きさや形状は、本実施例の開口部33に限られない。
【0068】
吊具30は、互いにボルト等により締結されている荷保持杆301(左荷保持杆301a、右荷保持杆301b)、吊点支持杆302(前吊点支持杆302a、後吊点支持杆302b)、及び連結杆303(第1連結杆303a〜第4連結杆303d)からなるため、それらのボルト等を外し、荷保持杆301、吊点支持杆302及び連結杆303を束ねて運搬することが可能である。
【0069】
左荷保持杆301aの内側面(右側面)と、右荷保持杆301bの内側面(左側面)との距離は、左梁部10aと右梁部10bとの間隔よりも短く設定されている。これにより、吊具30が荷90に装着された状態で、昇降機構20により吊り上げられるときに、吊具30の天面に位置する荷保持杆301が、梁部10と干渉しないため、吊具30を梁部10の底面よりも高い位置まで上昇させることができる。
【0070】
吊具30は、荷90を保持しながら、荷90の上端部に予め設定されている吊点部91よりも下方に新たな吊点を提供できるものであれば足りるため、上記の構成に限られず、例えば、
図4に示すように、荷90の天面が完全に露出するように荷90の外側面に装着される吊具30であって、吊具30が荷90に装着された状態で昇降機構20により吊り上げられるときに、吊具30及び荷90が梁部10と干渉しないように構成されるものであってもよい。これにより、荷の吊り上げ高さが荷90と吊具30及び梁部10との干渉により制限されることがない。
【0071】
勿論のこと、吊具30は複数の独立した部分を備えていてもよい。例えば、荷90の一端を保持する部分と、他端を保持する部分と、を備えていてもよい。また、吊具30は、その運搬を容易にするために、複数の部材に分解可能に構成されていてもよいし、複数の柱状の部材に分解可能に構成されていてもよい。
【0072】
次に、本発明に係る荷昇降装置の使用例と併せて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
<荷を設置する方法>
図7A〜
図7Fは、以上で説明した荷昇降装置1を用いて、荷90を設置する方法の各ステップを示す。なお、
図7A〜
図7Fにおいて、吊具30を構成するH型鋼の図示は省略している。
【0074】
まず、
図7Aに示すように、荷保持部32を荷90に固定させることにより、吊具30を荷90に装着する。次に、
図7Bに示すように、梁部10及び支柱11を設置し、昇降機構20を梁部10から垂れ下がるように掛ける。
【0075】
梁部10及び支柱11が設置される場所は、荷90が設置されるべき場所でもよいし、荷90が設置されるべき場所とは異なる場所でもよい。梁部10及び支柱11が設置される場所が、荷90が設置されるべき場所と異なる場合は、床面上に沿って移動可能とした荷昇降装置1により、荷90を上昇させた状態で荷昇降装置1を荷90が設置されるべき場所まで移動させてもよいし、あるいは、後述するように、荷90を台車等に吊り下ろして載置させ、荷90が設置されるべき場所まで移動させてもよい。なお、荷90の設置場所が、従来の装置や方法では設置作業が極めて困難であった、例えば、ビルなどの建物内である場合は、天井高が、設置作業時に必要とされる荷90の引き上げ高さ(荷90を設置に必要とされる高さにまで引き上げたときの、設置場所の床面から荷90の頂点までの高さに吊具30の荷保持杆301の厚みを足した高さ)よりも高い限り、問題なく荷昇降装置1により荷90を上から吊った状態で昇降させ、荷90を設置することが可能である。なお、荷90の天面が完全に露出するように荷90の外側面に装着される吊具30を用いれば、荷90の上方に荷保持杆301が存在しないため、荷90を荷保持杆301の厚み分さらに高く吊り上げることが可能となる。
【0076】
そして、
図7Cに示すように、吊具30及び吊具30が装着されている荷90を梁部10の下に移動させ、各昇降機構20をそれぞれに対応するオフセット吊点部31と接続する。続いて、
図7Dに示すように、昇降機構20により、吊具30を吊り上げる。このとき、昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)を同時に駆動して吊具30を吊り上げる。また、吊具30が昇降機構20により上昇されると、吊具30が装着されている荷90も同時に上昇される。荷90が上昇された状態で、
図7Eに示すように、上昇されている荷90の下方で必要な作業、例えば、床面に免震・防音等のマットを敷く作業、清掃作業等を行う。このとき、荷昇降装置1が床面上に沿って移動可能であるならば、荷昇降装置1を荷90が設置されるべき場所まで移動させることができる。また、荷90の下方に台車等を用意すれば、後に荷90を該台車等に吊り下ろして載置させることにより、荷90を荷90が設置されるべき場所に移動させ、鉛直軸方向に回転させることも可能となる。
【0077】
最後に、
図7Fに示すように、昇降機構20により、吊具30を吊り下ろす。このとき、吊具30が装着されている荷90も同時に降下される。吊具30を荷90から取り外し、荷昇降装置1を撤去すると、荷90を設置する作業が完了する。
【0078】
<荷を撤去する方法>
図8A〜
図8Fは、以上で説明した荷昇降装置1を用いて、荷90を撤去する方法の各ステップを示す。なお、
図8A〜
図8Fにおいて、吊具30を構成するH型鋼の図示は省略している。
【0079】
まず、
図8Aに示すように、荷保持部32を荷90に固定させることにより、吊具30を荷90に装着する。次に、
図8Bに示すように、梁部10が吊具30及び荷90の上方に位置するように、梁部10及び支柱11を設置し、昇降機構20を梁部10から垂れ下がるように掛ける。
【0080】
そして、
図8Cに示すように、各昇降機構20をそれぞれに対応するオフセット吊点部31と接続する。続いて、
図8Dに示すように、昇降機構20により吊具30を吊り上げる。このとき、昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)を同時に駆動して吊具30を吊り上げる。また、吊具30が昇降機構20により上昇されると、吊具30が装着されている荷90も同時に上昇される。荷90が上昇された状態で、
図8Eに示すように、上昇されている荷90の下方で必要な作業、例えば、床面に敷かれている免震・防音等のマットを剥がす作業、清掃作業等を行う。このとき、荷昇降装置1が床面上に沿って移動可能であるならば、荷昇降装置1を荷90が移動されるべき場所まで移動させる。あるいは、
図8Eに示すように、荷90を荷90が移動されるべき場所まで移動させることができるように、荷90の下方に台車等を用意する。
【0081】
最後に、
図8Fに示すように、昇降機構20により、吊具30を吊り下ろし、荷90を上記で用意した台車等に載置させる。吊具30を荷90から取り外し、荷90を荷90が移動されるべき場所まで移動させる。荷昇降装置1を撤去すると、荷90を撤去する作業が完了する。
【0082】
<洗車機を組み立てる方法>
図9A〜
図9F、以上で説明した荷昇降装置1を用いて、上下部に分離されている洗車機99の洗車機上部99aを洗車機下部99bに組み付けて、洗車機99を組み立てる方法の各ステップを示す。なお、
図9A〜
図9Fにおいて、吊具30を構成するH型鋼の図示は省略している。
【0083】
まず、
図9Aに示すように、荷保持部32を洗車機上部99aに固定することにより、吊具30を洗車機上部99aに装着する。一般的に、洗車機の厚み寸法はその幅寸法よりも小さいことから、洗車機上部99aの正面が荷昇降装置1の正面を向くように吊具30に装着すると、荷昇降装置1の奥行きを必要最小限として、洗車機99を組み立てることができる。次に、
図9Bに示すように、梁部10及び支柱11を設置し、昇降機構20を梁部10から垂れ下がるように掛ける。
【0084】
梁部10及び支柱11が設置される場所は、洗車機99が設置されるべき場所でもよいし、洗車機99が設置されるべき場所とは異なる場所でもよい。梁部10及び支柱11が設置される場所が、洗車機99が設置されるべき場所と異なる場合は、後述するように、台車等に載置した洗車機下部99bに洗車機上部99aを吊り下ろして載置させ、洗車機上部99aを洗車機下部99bに組み付けて洗車機99を完成させた後に、該台車等に載せた状態で洗車機99を洗車機99が設置されるべき場所まで移動させてもよい。なお、洗車機99の設置場所が、従来の装置や方法では設置作業が極めて困難であった、例えば、ビルなどの建物内である場合は、天井高が、組立作業時に必要とされる洗車機上部99aの引き上げ高さ(洗車機上部99aを洗車機99の組み立てに必要とされる高さにまで引き上げたときの、設置場所の床面から洗車機上部99aの頂点までの高さに吊具30の荷保持杆301の厚みを足した高さ)よりも高い限り、問題なく荷昇降装置1により洗車機上部99aを上から吊った状態で昇降させ、洗車機99を組み立てることが可能である。なお、洗車機上部99aの天面が完全に露出するように洗車機上部99aの外側面に装着される吊具30を用いれば、洗車機上部99aの上方に荷保持杆301が存在しないため、洗車機上部99aを荷保持杆301の厚み分さらに高く吊り上げることが可能となる。
【0085】
次に、
図9Cに示すように、吊具30及び吊具30が装着されている洗車機上部99aを梁部10の下に移動させ、各昇降機構20をそれぞれに対応するオフセット吊点部31と接続する。続いて、
図9Dに示すように、昇降機構20により、吊具30を吊り上げる。このとき、昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)を同時に駆動して吊具30を吊り上げる。また、吊具30が昇降機構20により上昇されると、吊具30が装着されている洗車機上部99aも同時に上昇される。洗車機上部99aが上昇された状態で、
図9Eに示すように、洗車機下部99bを洗車機上部99aの下方に用意する。このとき、洗車機下部99bを台車等に載置させておけば、後に洗車機上部99aを洗車機下部99bに組み付けて洗車機99を完成させ、洗車機99を該台車等に載せた状態で洗車機99が設置されるべき場所に移動させ、鉛直軸方向に回転させることも可能となる。
【0086】
最後に、
図9Fに示すように、昇降機構20により、吊具30を吊り下ろし、吊具30が装着されている洗車機上部99aを降下させ、洗車機上部99aを洗車機下部99bの上に載置する。洗車機上部99aを洗車機下部99bに組み付けて、洗車機99を完成させる。吊具30を洗車機上部99aから取り外し、荷昇降装置1を撤去すると、洗車機99を組み立てる作業が完了する。
【0087】
以上説明したように、洗車機99を吊る吊点(オフセット吊点部31)が洗車機99の上端部よりも下方に位置することになるため、洗車機99の設置場所の上方に天井などの障害物がある場合、障害物と吊点との離間距離を吊点が下がった分稼ぐことができる。したがって、洗車機99の設置場所の上方に天井などの障害物があり、洗車機99と障害物との間に掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスが確保できない場合であっても、荷昇降装置1によれば、洗車機99を設置することができる。
【0088】
<洗車機を解体する方法>
図10A〜
図10Fは、以上で説明した荷昇降装置1を用いて、上下部に分離可能な洗車機99の洗車機上部99aを洗車機下部99bから分離する方法の各ステップを示す。ここで、上下部に分離可能な洗車機99とは、洗車機上部99aが洗車機下部99bの上に載置された状態で取り外し可能な留め具等で固定されたものでもよいし、洗車機99を横に切断して洗車機上部99aと洗車機下部99bとに物理的に分離可能なものでもよい。なお、
図10A〜
図10Fにおいて、吊具30を構成するH型鋼の図示は省略している。
【0089】
まず、
図10Aに示すように、荷保持部32を洗車機99の洗車機上部99aに固定させることにより、吊具30を洗車機上部99aに装着する。一般的に、洗車機の厚み寸法はその幅寸法よりも小さいことから、洗車機上部99aの正面が荷昇降装置1の正面を向くように吊具30に装着すると、荷昇降装置1の奥行きを必要最小限として、洗車機99を解体することができる。次に、
図10Bに示すように、梁部10が吊具30及び洗車機上部99aの上方に位置するように、梁部10及び支柱11を設置し、昇降機構20を梁部10から垂れ下がるように掛ける。
【0090】
そして、
図10Cに示すように、各昇降機構20をそれぞれに対応するオフセット吊点部31と接続する。このとき、洗車機上部99aを洗車機下部99bに組み付けている留め具等を除去する、あるいは、洗車機99を横に切断することにより、洗車機上部99aを洗車機下部99bから分離できる状態にする。続いて、
図10Dに示すように、昇降機構20により吊具30を吊り上げ、吊具30が装着されている洗車機上部99aを上昇させ、洗車機下部99bから分離させる。このとき、昇降機構20(第1昇降機構20a〜第4昇降機構20d)を同時に駆動して吊具30を吊り上げる。洗車機上部99aが上昇された状態で、
図10Eに示すように、洗車機下部99bを移動させ撤去する。
【0091】
最後に、
図10Fに示すように、昇降機構20により、吊具30を吊り下ろし、吊具30が装着されている洗車機上部99aを降下させる。吊具30を洗車機上部99aから取り外し、荷昇降装置1を撤去すると、洗車機99を解体する作業が完了する。
【0092】
上記の実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【課題】掛け具や昇降機構の高さ分のクリアランスを荷の上方に確保することができない場合でも、短い作業時間で、荷の位置を調整しながら、荷を吊った状態で昇降させることができ、かつ、荷を吊り下ろして他の荷等の上に載置して、組み付けることを可能とする、構造が簡単な荷昇降装置を提供する。
【解決手段】荷昇降装置1は、支柱11と、支柱11により支えられた梁部10と、梁部10に設けられた昇降機構20と、荷90に装着された状態で昇降機構20に吊られている吊具30と、を備え、吊具30は、昇降機構20と接続されているオフセット吊点部31と、荷90を保持する荷保持部32と、底面に設けられた開口部33と、を有するものであり、オフセット吊点部31は、吊具30が荷90に装着された状態において、荷90の上端部に設定されている吊点部91よりも下方に設けられている荷昇降装置1。