(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、培養開始から5〜7日目に酵母誘導物質10〜50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル50〜100μmol/L、9〜11日目に酵母誘導物質100〜200mg/L、ジャスミン酸メチルエステル120〜260μmol/Lを添加し、17〜25日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目に酵母誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加えて、19日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
ラカンカの成熟胚を分離し、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、3〜5回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶステップ(1)と、
ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得るステップ(2)により、前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系を獲得する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
【背景技術】
【0002】
モグロシドVは、モグロシドともいい、ウリ科ラカンカ属ラカンカ(Siraitia grosvenori)の主な甘味成分で、その甘さは蔗糖の350倍に上り、すでに7種の単量体が分離されており、そのうちモグロシドVとシアメノサイドIの甘さが最も強い。モグロシドVは熱を下げて肺を潤わせ、喉や便通に効くなどの薬用効果があり、また、モグロシドVは斬新な味わいと純粋な味を有するため、人々に深く好かれており、肥満症、高血圧、糖尿病患者等の最も適切な甘味料と健康食品で、広範な応用価値がある。現在、モグロシドVを得る方法は主に天然ラカンカを原料として、加熱などの方法を通じて抽出している。しかしながら、天然ラカンカに含まれているモグロシドVの量がきわめて低く、既存の技術ではラカンカの利用率およびモグロシドVの抽出率がそれほど高くなく、原料を大きく浪費しているだけでなく、日増しに増大する市場ニ−ズを満足させることができない。
【0003】
植物細胞培養技術を通じて目的とする二次代謝産物を生産することは、天然植物中の目標成分含量を高める有効な手段の一つである。細胞懸濁培養は増殖スピ−ドが速く、培養規模が大きくかつ均一な植物細胞培養産物を大量に提供することができるため、植物細胞培養技術を通じてモグロシドVを生産すれば、モグロシドVの含有量を効果的に高め、生産コストを下げることができ、モグロシドVの市場化に適している。特許文献1に開示された「ラカンカカルス細胞懸濁系の培養方法」において、培養で得られたラカンカ総配糖体、モグロシドVの含有量はそれぞれ細胞総重量の8.11%と5.77%であった。しかしながらこの方法の培養周期は21日間と長く、操作維持の難しさとコストが増大し、かつ得られたモグロシドVの含有量は市場の需要を満たせるものではなかった。
【0004】
植物次生代謝の過程において、誘導物質は特殊な生物化学分子として迅速、専一かつ選択的にある特定遺伝子の表現を誘導して、代謝経路の関連酵素の活性を高めることができるため、当該酵素が制御している次生産物の生成量を促進または抑制することができる。真菌誘導物質は微生物分子に由来した一種の確定した化学信号で、植物細胞を刺激して、迅速に防御応答反応を発生させることによって、高度専一かつ選択的に植物の特定遺伝子の表現を刺激して、特定の次生代謝の経路を活性化させ、次生代謝産物の合成を促進することができる。非特許文献1に、糖の濃度を300mg/Lに調整したコウジカビ粗抽出物の成分(蛋白質+多糖類)はモグロシドVの総量を対照群より246.72%向上させることができ、また500mg/Lのフェニルアラニンを添加すると細胞によるモグロシドVの合成を著しく促進することができ、モグロシドVの総量が対照群より260.38%向上したと記載されている。この方法はモグロシドVの含有量を高めることができるが、苦味成分の分泌合成も同時に増えるので、後続プロセスにおけるモグロシドVの分離と純化の難度およびコストを増している。
【0005】
酵母(Yeast)は植物細胞の培養によく使われている誘導物質で、二次代謝産物の形成を促進することができる。研究によると、Ti−形質転換された丹参(Salvia miltiorrhiza)細胞の培養において、酵母誘導物質の添加によってクリプトタンシノン(Cryptotanshinone)が2倍増加した。また酵母は紫雪花(Plumbago roseal)の培養において、プルンバギン(Plumbagin)の含有量を3倍増やした。ただ違う培養系ではその誘導効果が異なる。ジャスミン酸メチルエステル(Methyl Jasmonate、MeJA)は次生代謝物の蓄積を刺激する非生物類の誘導因子で、異なる植物懸濁培養系にジャスミン酸メチルエステルを加えると細胞の次生代謝物の蓄積を誘導することができる。200μmol/Lのジャスミン酸メチルエステルでエンジュ(Maackiaamurensis Rupr.etMaxim)の懸濁培養細胞を処理した9日後、イソフラボンの含有量が対照の417.18%に増えた。100μmol/Lのジャスミン酸メチルエステルで南方イチイ(Taxus chinensis)の懸濁細胞を処理した場合、タキソールの含有量が10倍増加した。しかしながら、ジャスミン酸メチルエステルをいくつかの植物懸濁培養系に添加した場合、懸濁細胞のアレルギー反応を誘発したり、またはフェノ−ル化合物の放出を促進したりすることによって、懸濁細胞の褐変を招くことがある。1.0mg/Lのジャスミン酸メチルエステルで野生葛の懸濁細胞を処理した場合、細胞培養物中のプエラリンの含有量の増大がみられたが、細胞が著しく褐変した。現在のところ、酵母あるいはジャスミン酸メチルエステルのラカンカ懸濁培養系への応用がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の不足を克服するために、本発明の目的はラカンカ懸濁細胞中のモグロシドVの含有量を高める方法を提供することである。前記方法はラカンカ懸濁細胞の培養周期を短縮することができるだけでなく、生産過程の操作維持コストを下げ、ラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高めると同時に、苦味成分の合成分泌を抑えることもできる。
【0009】
本発明の発明者は、初代ラカンカ懸濁細胞の培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、適量の酵母誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを添加することによって、ラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量およびその合成速度を効果的に向上させることができると同時に、モグロシドIIの合成分泌を低減させることができることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は以下の技術的手法を通じて実現することができる。
本発明はラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法を提供し、当該方法は、初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、酵母誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを加えることにあることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、培養開始から5〜7日目に酵母誘導物質10〜50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル50〜100μmol/L、9〜11日目に酵母誘導物質100〜200mg/L、ジャスミン酸メチルエステル120〜260μmol/Lを添加し、17〜25日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得する。
【0012】
好ましくは、前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、ジャスミンの酸メチルエステル100μmol/L、11日目に酵母誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加えて、19日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得する。
【0013】
好ましくは、初代ラカンカ懸濁細胞培養系は、
ラカンカの成熟胚を分離し、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、3〜5回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、状態が安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶステップ(1)と、
ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得るステップ(2)により獲得される。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)の継代回数は4回である。
【0015】
本発明は以下技術的難題を克服した。すなわちジャスミン酸メチルエステル単独で対数生長期のラカンカ懸濁細胞を処理した場合、処理後単位時間内のモグロシドVの合成量がある程度増加したが、細胞の褐変が顕著で、総含有量は通常の培養群よりも低下した。酵母誘導物質を単独添加した場合、モグロシドVの総含有量に対する明らかな影響が見られなかったが、モグロシドVの合成速度は緩やかになった。
【0016】
一連の技術的最適化を通じて、初代ラカンカ懸濁細胞培養系において、培養開始から5〜7日目に酵母誘導物質10〜50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル50〜100μmol/L、9〜11日目に酵母誘導物質100〜200mg/L、ジャスミン酸メチルエステル120〜260μmol/Lを加えて、17〜25日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得することが好都合で、モグロシドVの合成速度と総含有量が著しく向上し、苦味成分の分泌合成が著しく低下し、かつ細胞培養周期を著しく短縮させることができることが明らかになった。特に培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目酵母誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加えて、19日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を収穫した場合、モグロシドVの合成速度がもっとも速く、総含有量が最も高く、苦味成分であるモグロシドIIの合成分泌が最も少なかった。
【0017】
本発明はまたモグロシドVの製造方法を提供し、その特徴は、上述の方法で製造した成熟ラカンカ懸濁細胞からさらにモグロシドVを分離・抽出することにある。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べると、本発明は以下のメリットがある。
1.本発明はラカンカの胚を培養原料とし、分化継代能力がさらに強くて安定し、成長が旺盛で、状態安定かつ均一なラカンカカルスを培養するのに適している。
2.本発明の培養方法で得たラカンカ細胞懸濁系は、モグロシドVの生成量が著しく高く、かつ合成分泌した苦味などの不純物の含有量がさらに少なくなくなっている。
3.本発明の培養方法で得たラカンカ細胞懸濁系は、細胞の成長が速く、分散性が良く、培養周期が短く、操作維持の難度が減り、更なる市場化生産の要求を満たすことができる。
4.本発明の方法でモグロシドVを獲得するプロセスは、大量の土地資源を節約し、生態環境の保護に役立ち、我が国の持続的発展可能な経済戦略に合致しているだけでなく、モグロシドVを得るための効果的なプロセスを提供している。
5.本発明は人工方式でラカンカ細胞とモグロシドVの製造過程を調節することができ、製品の品質を管理・制御するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施例は本発明の説明に用いるが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0020】
(実施例1)
(1)ラカンカの成熟胚を、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、4回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目に酵母誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加える。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0021】
(実施例2)
(1)ラカンカの成熟胚を、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で3回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、状態が安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/L(新鮮重量)の接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から5日目に酵母誘導物質10mg/L、ジャスミン酸メチルエステル50μmol/L、9日目に酵母誘導物質100mg/L、ジャスミン酸メチルエステル120μmol/Lを加える。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドII含有量を測定した。
【0022】
(実施例3)
(1)ラカンカの成熟胚を、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、5回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/L(新鮮重量)の接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目に酵母誘導物質25mg/L、ジャスミン酸メチルエステル75μmol/L、11日目に酵母誘導物質200mg/L、ジャスミン酸メチルエステル260μmol/Lを加える。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0023】
(実施例4)
(1)ラカンカ茎のカルスを接種・誘導し、ショ糖2.5%、6−ベンジルアデニン0.2mg/L、ナフチ−ル酢酸0.04mg/L、寒天4.0mg/Lを含むpH5.8のMS培地で継代培養し、3回、4回あるいは5回連続継代培養した新鮮で柔らかくて砕けやすい黄白色のカルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得たカルスを300g/Lの接種量でショ糖4.0%、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.02mg/Lを含むMS液体培地が入っている無菌三角フラスコに移し、初期培地のpHは5.5〜6.0で、120r/minの振盪培養器に入れて25℃の暗黒条件下で24時間懸濁培養した後静置し、上層部の培地と共に単細胞と小細胞塊を空の無菌三角形フラスコに移し、引き続き振盪培養する。
(3)3日後に同様の方法でもう一回移して、7日後に懸濁細胞を40μmのろ過網でろ過した後に新鮮な培地に接種して引き続き振盪培養し、一定の体積に達した後に大きな三角形フラスコに移して、同様の方法で培地を添加して振盪培養を継続し、一定量の均一で安定的な細胞懸濁培養液を得るまで続けて、細胞懸濁培養温度は25±2℃で、光の強さは2000luxで、日照時間は12h/dで、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(4)ステップ(3)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目に酵母誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加える。
(5)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0024】
(対照例1)
本対照例は、コウジカビ誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを添加する技術的手法と本発明の技術的手法の技術効果の相違を評価するために用いるもので、具体的なステップは次の通りである。
(1)ラカンカの成熟胚を分離し、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、4回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目に黒色アスペルギルス誘導物質50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目に黒色アスペルギルス誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加える。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドII含有量を測定した。
【0025】
(対照例2)
本対照例は、フェニルアラニンと酵母誘導物質を添加する技術的手法と本発明の技術的手法の技術効果の相違を評価するために用いるもので、具体的なステップは次の通りである。
(1)ラカンカの成熟胚を分離し、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、4回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目にフェニルアラニン50mg/L、酵母誘導物質50mg/L、11日目にフェニルアラニン180mg/L、酵母誘導物質180mg/Lを加える。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0026】
(対照例3)
本対照例は、酵母誘導物質を単独で添加する技術的手法と本発明の技術的手法の技術効果の相違を評価するために用いるもので、具体的なステップは次の通りである。
(1)ラカンカの成熟胚を、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、4回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、11日目に酵母誘導物質180mg/Lを加える。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0027】
(対照例4)
本対照例は、ジャスミン酸メチルエステルを単独で添加する技術的手法と本発明の技術的手法の技術効果の相違を評価するために用いるもので、具体的なステップは次の通りである。
(1)ラカンカの成熟胚を、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、4回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(3)ステップ(2)で得た初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養し、培養開始から7日目にジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目にジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを添加する。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0028】
(対照例5)
本対照例は、文献1が開示した技術的手法と本発明技術的手法の技術効果の相違を評価するために用いるもので、具体的なステップは次の通りである。
(1)ラカンカ茎のカルスを接種・誘導し、蔗糖2.5%、6−ベンジルアデニン0.2mg/L、ナフチ−ル酢酸0.04mg/L、寒天4.0mg/Lを含むpH5.8のMS培地で継代培養し、3回、4回あるいは5回連続継代培養した新鮮で、柔らかくて砕きやすい黄白色のカルスを選ぶ。
(2)ステップ(1)で得たカルスを300g/Lの接種量でショ糖4.0%、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.02mg/Lを含むMS液体培地が入っている無菌三角形フラスコに入れて、初期培地pHは5.5〜6.0で、120r/minの振盪培養器に入れて、25℃の暗黒条件下で24h懸濁培養した後静置し、上層部の培地と共に単細胞と小細胞塊を空の無菌三角形フラスコに移して引き続き振盪培養し、
(3)3日後に同様の方法でもう一回移し、7日後に懸濁細胞を40μmのろ過網でろ過した後新鮮な培地に接種して引き続き振盪培養し、一定の体積に達した後に大きな三角形フラスコに移して、同様の方法で培地を添加して、一定量の均一で安定的な細胞懸濁培養液に達するまで引き続き振盪培養し、細胞懸濁培養温度は25±2℃で、光強さは2000luxで、日照時間は12h/dで、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得る。
(4)培養開始から1〜31日の間に、一日おきにラカンカ懸濁細胞を抽出し、モグロシドVとモグロシドIIの含有量を測定した。
【0029】
モグロシドV含有量の比較
1.実験方法
乾燥重量1.5gのラカンカ細胞を秤量し、15:1の浴比で60%のエタノールを添加して超音波で40分間抽出した後、90℃の微沸騰状態下でさらに2時間抽出し、このように繰り返して3回抽出した後抽出液を合わせてロータリーエバポレーターで5mLになるまで濃縮し、濃縮液を0.22μm濾過膜で濾過し、高速液体クロマトグラフィーで定性と定量分析を行った。
クロマトグラフィー条件:カラム:逆相C18カラム、4.6mm×250mm、移動相:水−アセトニトリル=78:22、流速:1.0mL/min、検出波長:203nm。
2.結果
異なる処理条件が単位時間内のモグロシドVの生成量に及ぼす影響を表1に示す。
【0031】
異なる処理条件がモグロシドV生成量のピ−ク値(最大値)に及ぼす影響を調べた結果を表2に示す。
【0033】
モグロシドII含有量の比較
1.実験方法
乾燥重量1.5gのラカンカ細胞を秤量し、15:1の浴比で60%のエタノールを添加して超音波で40分間抽出した後、90℃の微沸騰状態下でさらに2時間抽出し、このように繰り返して3回抽出した後抽出液を合わせてロータリーエバポレーターで5mLになるまで濃縮し、濃縮液を0.22μmの濾過膜で濾過し、高速液体クロマトグラフィーで定性と定量分析を行った。
クロマトグラフィー条件:カラム:ZORBAXSBCC18カラム、4.6mm×150mm、移動相:水−アセトニトリルグラジエント溶出(0〜25min、13.5%〜35%アセトニトリル)、流速:0.8mL/min、検出波長:203nm。
2.結果
異なる処理条件がモグロシドVピ−ク値の時のモグロシドIIの含有量に及ぼす影響を調べた結果を表3に示す。
【0035】
結論
モグロシドVの含有量を比較した結果(表1、表2)から、対照例1〜5に比べると、実施例1〜4のモグロシドV含有量が著しく向上し、ピ−ク時の値はそれぞれ85.2、84.9±1.8、86.7±2.2、85.1±3.0g/Lであり、ラカンカ懸濁培養系に酵母誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを添加することによって、モグロシドVの生成量を効果的に高めることができ、技術的効果が従来技術より著しく優れていることが明らかになった。また、対照例1〜5に比べると、実施例1においてモグロシドVの合成速度が著しく向上し、培養開始から15日目にモグロシドVの含有量は70g/Lを上回り、19日目にモグロシドVの含有量はピ−ク値に達した。ラカンカ懸濁細胞培養系に酵母誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを添加することによって、ラカンカ懸濁細胞によるモグロシドVの合成速度を著しく向上させることができ、技術的効果が従来技術より著しく優れていることが明らかになった。
【0036】
モグロシドIIの含有量を比較した結果(表3)から、対照例1〜5に比べると、実施例1〜5のモグロシドII含有量が著しく低下し、ラカンカ懸濁細胞培養系に酵母誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを添加することによって、苦味成分であるモグロシドIIの含有量を著しく低下させることができ、技術的効果が従来技術より著しく優れていることが明らかになった。
【0037】
以上、一般的説明、具体的な実施形態および実験を通じて、本発明について詳しく説明してきた。しかしながら、本発明に基づくいくらかの修正又は改良は、当該領域の技術者にとって成し得ることが自明である。そのため、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での修正又は改良は本発明の請求範囲に属するものと見なすべきである。
【0038】
(付記)
(付記1)
初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、酵母誘導物質とジャスミン酸メチルエステルを加える、
ことを特徴とするラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
【0039】
(付記2)
前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、培養開始から5〜7日目に酵母誘導物質10〜50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル50〜100μmol/L、9〜11日目に酵母誘導物質100〜200mg/L、ジャスミン酸メチルエステル120〜260μmol/Lを添加し、17〜25日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
【0040】
(付記3)
前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系で成熟ラカンカ懸濁細胞を培養する過程において、培養開始から7日目に酵母誘導物質50mg/L、ジャスミン酸メチルエステル100μmol/L、11日目に酵母誘導物質180mg/L、ジャスミン酸メチルエステル220μmol/Lを加えて、19日目に成熟したラカンカ懸濁細胞を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
【0041】
(付記4)
ラカンカの成熟胚を分離し、ショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/L、寒天4.6g/Lを含むpH5.5〜6.0のMS半固形培地で継代培養し、3〜5回連続継代培養した成長旺盛で、柔らかく、安定的かつ均一な新鮮胚カルスを選ぶステップ(1)と、
ステップ(1)で得た新鮮胚カルスを100g/Lの接種量でショ糖30g/L、6−ベンジルアデニン1.0mg/L、ナフチ−ル酢酸0.5mg/L、イノシトール100mg/Lを含むpH5.5〜6.5のMS液体培地に移し、そして回転速度150r/min、温度25±2℃、光強度4000lux、日照時間12h/dの振盪培養器のなかで培養し、初代ラカンカ懸濁細胞培養系を得るステップ(2)により、前記初代ラカンカ懸濁細胞培養系を獲得する、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
【0042】
(付記5)
前記ステップ(1)の継代回数は4回である、
ことを特徴とする付記4に記載のラカンカ懸濁細胞中のモグロシドV含有量を高める方法。
【0043】
(付記6)
付記1乃至3および付記5のいずれか1つに記載の方法で製造した成熟ラカンカ懸濁細胞からさらにモグロシドVを分離・抽出する、
ことを特徴とするモグロシドVの製造方法。
【0044】
(付記7)
付記4に記載の方法で製造した成熟ラカンカ懸濁細胞からさらにモグロシドVを分離・抽出する、
ことを特徴とするモグロシドVの製造方法。