特許第6605188号(P6605188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605188
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】洗濯物処理機器
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/10 20060101AFI20191031BHJP
   D06F 39/14 20060101ALI20191031BHJP
   D06F 23/04 20060101ALI20191031BHJP
   F16F 9/14 20060101ALI20191031BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   D06F37/10
   D06F39/14 Z
   D06F23/04
   F16F9/14 A
   F16F7/00 E
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-222449(P2013-222449)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-83451(P2014-83451A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0119175
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0119176
(32)【優先日】2012年10月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンベ
(72)【発明者】
【氏名】アン ヨンジュン
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0062837(US,A1)
【文献】 特開2006−046359(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081894(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/028361(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/008082(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/010379(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0050059(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/045097(WO,A1)
【文献】 特開昭52−143372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/10
D06F 23/04
D06F 39/14
F16F 7/00
F16F 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布出し入れホールが形成された本体、
前記布出し入れホールを開閉するリッド、及び
前記本体に対して前記リッドを回転可能に支持する少なくとも一つのヒンジ部を含み、
前記ヒンジ部は、
所定の粘性を有する流体が充填されたヒンジハウジング、
前記ヒンジハウジング内に配置される弾性部材、及び
円周方向に沿って高さ差を有する接触面が形成された一対のカムを含み、
前記一対のカムのうちいずれか一つのカムが前記リッドと連動して回転するとき、いずれか一つのカムの接触面が他の一つのカムの接触面に沿って摺動し、前記一対のカム間の距離が可変され、
前記一対のカムは、
前記リッドの回転に対して独立的な固定カム、及び
前記リッドと連動して回転する回転カムを含み、
前記固定カムの接触面と前記回転カムの接触面との間の相互作用によって前記回転カムの直線方向移動が行われ、
前記ヒンジハウジング内で前記回転カムと前記弾性部材との間に配置され、前記回転カムによって移動し、前記弾性部材を圧縮させるピストンをさらに含
前記ピストンには、前記弾性部材が圧縮されるとき、前記ヒンジハウジング内で前記弾性部材が配置された第1空間から前記回転カムが配置された第2空間に流体を通過させ、前記圧縮された弾性部材が復元されるとき、前記第2空間から前記第1空間に前記流体を通過させる流体移動路が形成され、
前記固定カムと前記回転カムのうち少なくとも一つのカムでの接触面は、円周方向に沿って所定の回転角度で分割された少なくとも3個の区間にそれぞれ形成される、洗濯物処理機器。
【請求項2】
記3個の区間のうち互いに隣接した一対の区間で、いずれか一つの区間に形成された接触面の始端は、前記カムの軸方向投映上で、他の一つの区間に形成された接触面と重畳する、請求項1に記載の洗濯物処理機器。
【請求項3】
前記3個の区間に形成された接触面のうち少なくとも一つは、始端と終端との間の角度が120°以上である、請求項2に記載の洗濯物処理機器。
【請求項4】
前記いずれか一つの区間に形成された接触面の始端と終端との間の角度は、前記いずれか一つの区間に形成された接触面の始端と隣接した他の一つの区間に形成された接触面の始端との間の角度より大きい、請求項2に記載の洗濯物処理機器。
【請求項5】
前記いずれか一つの区間に形成された接触面の始端と前記隣接した他の一つの区間に形成された接触面の始端との間の角度は120°である、請求項4に記載の洗濯物処理機器。
【請求項6】
前記リッドの最大開放角度が120°より小さくなるように前記リッドの回転を制限するストッパーをさらに含む、請求項5に記載の洗濯物処理機器。
【請求項7】
前記リッドの最大開放角度は実質的に110°である、請求項6に記載の洗濯物処理機器。
【請求項8】
前記固定カムと前記回転カムのいずれかには挿入ホールが形成され、
他の一つには、前記挿入ホールに挿入される挿入突起が形成される、請求項1に記載の洗濯物処理機器。
【請求項9】
前記挿入突起は、前記回転カムの変位区間内で前記挿入ホール内に挿入された状態を維持する、請求項8に記載の洗濯物処理機器。
【請求項10】
前記固定カムと前記回転カムのうち少なくとも一つの接触面は、前記接触面上の最高点を基準にして互いに反対方向に勾配を有する正傾斜面及び逆傾斜面を含む、請求項1に記載の洗濯物処理機器。
【請求項11】
前記固定カムと前記回転カムのうちいずれか一つに形成された正傾斜面は、前記リッドが開放される方向にトルクが作用するように、他の一つに形成された正傾斜面と連関する、請求項10に記載の洗濯物処理機器。
【請求項12】
前記固定カムと前記回転カムのうちいずれか一つに形成された逆傾斜面は、前記リッドが閉鎖される方向にトルクが作用するように、他の一つに形成された逆傾斜面と連関する、請求項10に記載の洗濯物処理機器。
【請求項13】
前記リッドが閉鎖された位置で、前記固定カムと前記回転カムのうちいずれか一つに形成された逆傾斜面は、他の一つに形成された逆傾斜面と接触する、請求項11に記載の洗濯物処理機器。
【請求項14】
前記接触面は、前記接触面上の最高点を基準にして互いに反対方向に勾配を有する正傾斜面及び逆傾斜面を含み、
前記3個の区間のうち互いに隣接した一対の区間で、いずれか一つの区間に形成された逆傾斜面の少なくとも一部は、前記カムの軸方向投映上で、他の一つの区間に形成された接触面と重畳する、請求項2に記載の洗濯物処理機器。
【請求項15】
前記少なくとも一つのヒンジ部は、
前記リッドの左側を前記本体と連結する左側ヒンジ部、及び
前記リッドの右側を前記本体と連結する右側ヒンジ部を含み、
前記左側ヒンジ部と前記右側ヒンジ部は、前記リッドに対して相称的に配置される、請求項1に記載の洗濯物処理機器。
【請求項16】
前記左側ヒンジ部と前記右側ヒンジ部は同一である、請求項15に記載の洗濯物処理機器。
【請求項17】
前記左側ヒンジ部と前記右側ヒンジ部は、同一のダンピング力を提供する、請求項15に記載の洗濯物処理機器。
【請求項18】
前記ピストンは、前記ヒンジハウジング内で前記回転カムと前記弾性部材との間に配置される、請求項1に記載の洗濯物処理機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物処理機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗濯物処理機器は、水と洗剤の化学的分解作用及び水と洗濯物との間の摩擦などの物理的作用を用いて、衣服、寝具など(以下、「布」と略称する)に付いた汚染物質を分離する洗濯機と、濡れた洗濯物を脱水して乾燥させる乾燥器と、洗濯物に加熱された蒸気を噴射し、洗濯物に生じたしわを伸ばしたり、洗濯物を殺菌するリフレッシャーなどのように、洗濯物に物理的及び化学的作用を加えて洗濯物を処理する各種装置を通称する。
【0003】
このような洗濯物処理機器は、洗濯物の処理が行われる本体と、本体に回転可能に結合され、布出し入れホールを開閉するリッド又はドアとを含むが、リッドは、閉鎖時に本体と強く衝突することによって製品の耐久性に悪影響を及ぼすという問題を有する。また、リッドは、金属材質で形成されたり、観測窓を形成するためにガラスが嵌められた場合などにおいて、リッドの重量増加のため開放するのに多くの力が必要なだけでなく、閉鎖過程で本体と強く衝突するという問題を有していた。
【0004】
このような問題を防止するために、従来は、リッドの回転によって弾性部材の変形が行われ、変形した弾性部材の復元力によってリッドの回転速度を減速させるヒンジ装置が講究されたが、このようなヒンジ装置は、弾性部材から作用した反撥力、すなわち、リッドの回転速度を減速させる制動力が均一に伝達されないので、リッドの振動が発生するという問題を有していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の効果は、添付した特許請求の範囲の開示から、当該分野における通常の知識を有する者には明らかに理解されるであろう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、リッドの回転速度を減速させる制動力を均一に分散させることによって、リッドが揺れずに安定的に動作できるようにした洗濯物処理機器を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、リッドを支持するヒンジ部を構成する両カム間の接触面積をより広く確保することによって、リッドに対する十分な支持力を確保し、その結果、リッドの重量増加により効果的に対応できるようにした洗濯物処理機器を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、リッドを支持するヒンジ部を構成する両カム間の接触区間が3区間以上になることによって、両カム間の相互作用がより強固に行われるようにし、その結果、リッドが揺れずに安定的に動作できるようにした洗濯物処理機器を提供することにある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、リッドを支持するヒンジ部の剛性を補強した洗濯物処理機器を提供することにある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、リッドアセンブリーの左右両側に同一の力が適用されることによって、リッドアセンブリーの左右側の浮き上がり現象を解消できる洗濯物処理機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の洗濯物処理機器は、布出し入れホールが形成された本体、前記布出し入れホールを開閉するリッド及び前記本体に対して前記リッドを回転可能に支持するヒンジ部を含み、前記ヒンジ部は、所定の粘性を有する流体が充填されたヒンジハウジング、前記ヒンジハウジング内に配置される弾性部材及び円周方向に沿って高さ差を有する接触面が形成された一対のカムを含み、前記一対のカムのうちいずれか一つのカムが前記リッドと連動して回転するとき、いずれか一つのカムの接触面が他の一つのカムの接触面に沿って摺動し、前記一対のカム間の距離が可変することによって前記弾性部材が変形し、前記一対のカムのうち少なくとも一つのカムでの接触面は、円周方向に沿って所定の回転角度で分割された少なくとも3個の区間にそれぞれ形成される。
【0012】
前記3個の区間のうち互いに隣接した一対の区間で、いずれか一つの区間に形成された接触面の始端は、前記カムの軸方向投映上で、他の一つの区間に形成された接触面と重畳し得る。
【0013】
前記3個の区間に形成された接触面のうち少なくとも一つは、始端と終端との間の角度が120°以上であり得る。
【0014】
前記いずれか一つの区間に形成された接触面の始端と終端との間の角度は、前記いずれか一つの区間に形成された接触面の始端と前記隣接した他の一つの区間に形成された接触面の始端との間の角度より大きくなり得る。前記いずれか一つの区間に形成された接触面の始端と前記隣接した他の一つの区間に形成された接触面の始端との間の角度は120°であり得る。前記リッドの最大開放角度が120°より小さくなるように前記リッドの回転を制限するストッパーをさらに含むことができる。前記リッドの最大開放角度は実質的に110°であり得る。
【0015】
前記一対のカムのうちいずれか一つには挿入ホールを形成し、他の一つには、前記挿入ホールに挿入される挿入突起を形成することができる。前記挿入突起は、前記一対のカムのうち移動が行われるカムの変位区間内で前記挿入ホール内に挿入された状態を維持することができる。
【0016】
前記一対のカムのうち少なくとも一つの接触面は、前記接触面上の最高点を基準にして互いに反対方向に勾配を有する正傾斜面及び逆傾斜面を含むことができる。前記一対のカムのうちいずれか一つに形成された正傾斜面は、前記リッドが開放される方向にトルクが作用するように、他の一つに形成された正傾斜面と連関し得る。
【0017】
前記一対のカムのうちいずれか一つに形成された逆傾斜面は、前記リッドが閉鎖される方向にトルクが作用するように、他の一つに形成された逆傾斜面と連関し得る。前記リッドが閉鎖された位置で、前記一対のカムのうちいずれか一つに形成された逆傾斜面は、他の一つに形成された逆傾斜面と接触し得る。
【0018】
前記接触面は、前記接触面上の最高点を基準にして互いに反対方向に勾配を有する正傾斜面及び逆傾斜面を含み、前記3個の区間のうち互いに隣接した一対の区間で、いずれか一つの区間に形成された逆傾斜面の少なくとも一部が、前記カムの軸方向投映上で、他の一つの区間に形成された接触面と重畳し得る。
【0019】
前記少なくとも一つのヒンジ部は、前記リッドの左側を前記本体と連結する左側ヒンジ部及び前記リッドの右側を前記本体と連結する右側ヒンジ部を含むことができ、前記左側ヒンジ部と前記右側ヒンジ部は、前記リッドに対して相称的に配置することができる。前記左側ヒンジ部と前記右側ヒンジ部は同一であり得る。
【0020】
前記左側ヒンジ部と前記右側ヒンジ部は、同一のダンピング力を提供することができる。
【0021】
前記一対のカムは、前記リッドの回転に対して独立的な固定カム及び前記リッドと連動して回転する回転カムを含むことができ、前記固定カムの接触面と前記回転カムの接触面との間の相互作用によって前記回転カムの直線方向移動を行うことができる。前記回転カムによって移動し、前記弾性部材を変形させるピストンをさらに含むことができる。前記ピストンは、前記ヒンジハウジング内で前記回転カムと前記弾性部材との間に配置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る洗濯物処理機器によると、リッドの回転速度を減速させる制動力を均一に分散させることによって、リッドが揺れずに安定的に動作することができる。
【0023】
本発明に係る洗濯物処理機器によると、リッドを支持するヒンジ部を構成する両カム間の接触面積をより広く確保することによって、リッドに対する十分な支持力を確保し、その結果、リッドの重量増加により効果的に対応することができる。
【0024】
本発明に係る洗濯物処理機器によると、リッドを支持するヒンジ部を構成する両カム間の接触区間が3区間以上になることによって、両カム間の相互作用がより強固に行われるようにし、その結果、リッドが揺れずに安定的に動作することができる。
【0025】
本発明に係る洗濯物処理機器によると、リッドを支持するヒンジ部の剛性を補強することができる。
【0026】
本発明に係る洗濯物処理機器によると、リッドアセンブリーの左右両側に同一の力が適用されることによって、リッドアセンブリーの左右側の浮き上がり現象を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例に係る洗濯機の斜視図である。
図2図1の洗濯機の内部を示した側断面図である。
図3図1のリッドとヒンジ部との結合関係を示した図である。
図4A】ヒンジ部を示した斜視図である。
図4B】ヒンジ部の分解斜視図である。
図4C】固定カムを示した図である。
図4D】移動カムを示した図である。
図5A】移動カムの各接触面を示した図である。
図5B】移動カムを展開して示した図である。
図6A】リッドが開放された状態のヒンジ部の内部構成を示した図である。
図6B図6Aの断面図である。
図7A】リッドが閉鎖される回転をする過程でのヒンジ部の内部構成を示した図である。
図7B図7Aの断面図である。
図8】リッドの回転運動を説明するための側面図である。
図9】本発明の他の実施例に係るリッドを示した図である。
図10図9に示したリッドとヒンジ部の分解斜視図である。
図11図10に示したヒンジ部の斜視図である。
図12図11に示したヒンジ部の断面図である。
図13図12に示したヒンジ部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の利点及び特徴とこれらを達成する方法は、添付の図面を併用して以下に詳しく説明される実施例から明らかになるであろう。しかし、これらの実施例は、様々な形態で実施されてもよく、ここに説明される例示的な実施例に限定されるものではない。むしろ、これらの実施例は、本開示が綿密且つ完全であるように、且つ本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。本発明の範囲は、特許請求の範囲により定められるべきである。図面中、可能な限り、同一又は類似の構成要素には同一の参照番号を使用するものとする。
【0029】
以下、本発明の洗濯物処理機器を説明するにおいて洗濯機を例に挙げるが、本発明の範囲がこれに限定されることはなく、乾燥器、乾燥兼用洗濯機、リフレッシャーなどの洗濯物処理機器にも適用可能であることを明示する。
【0030】
図1は、本発明の一実施例に係る洗濯機の斜視図である。図2は、図1の洗濯機の内部を示した側断面図である。図3は、図1のリッドとヒンジ部との結合関係を示した図である。
【0031】
図1ないし図2を参照すると、洗濯機Wは、本体10と、本体10に回転可能に備えられるリッド20とを含む。本体10は、上部が開放されたキャビネット11と、キャビネット11の上部に備えられ、上側からキャビネット11内に洗濯物を出し入れするための布出し入れホールhが形成されたトップカバー12とを含むことができる。この場合、リッド20は、トップカバー12によって支持され、布出し入れホールhを開閉する。
【0032】
コントロールパネル16は、洗濯機Wを操作するための各種制御命令が入力される入力部と、洗濯機の作動状態を表示する表示部とを含むことができる。
【0033】
キャビネット11の内部には、支持部材15を通して外槽30がぶら下げられ、外槽30には洗濯水が収容される。外槽30の内部には内槽35が回転可能に配置される。支持部材15の下端には、内槽35の回転時に発生する振動による外槽30の揺れを緩衝するダンパー25が備えられ、内槽35の底にはパルセーター40が回転可能に備えられる。パルセーター40と内槽35に収容された洗濯物との摩擦作用及びパルセーター40の回転に伴って形成される水流作用によって洗濯物の汚染を効果的に除去することができる。
【0034】
内槽35と外槽30との間に洗濯水が流動し得るように、内槽35には複数の水孔36が形成される。外槽30の下側には、内槽35とパルセーター40を回転させる駆動手段であるモーター50が備えられる。モーター50によって回転する回転軸55を通して内槽35及び/又はパルセーター40の回転が行われる。
【0035】
内槽35とパルセーター40を同時に又はいずれか一つを選択的に回転させるために、回転軸55と内槽35及び/又はパルセーター40とを締結させるクラッチ(図示せず)が備えられる。クラッチの作動により、内槽35とパルセーター40が同時に回転したり、パルセーター40のみが回転し得る。
【0036】
トップカバー12には、洗剤が収容される洗剤ボックス60が取り出し可能に備えられており、家庭用蛇口などの外部水源と連結され、洗剤ボックス60に洗濯水を供給する給水ホース70と、給水ホース70を介して流入する洗濯水を断続する給水バルブ75とが備えられる。給水バルブ75が開放され、外部水源から洗濯水が給水されると、給水された洗濯水は、洗剤ボックス60に流入し、洗剤ボックス60に収容された洗剤と混合されて内槽35に給水される。
【0037】
外槽30の下端には、外槽30内の洗濯水を外部に排水するための排水ホース80と、排水ホース80を介して流出する洗濯水を断続する排水調節バルブ85と、洗濯水を外部にポンピングする排水ポンプ86とが備えられる。
【0038】
リッド20は、使用者が布出し入れホールhを開閉できるように、トップカバー12に回転可能に結合される。このとき、使用者がリッド20を容易に開放できるように、リッド20が閉鎖された状態で、リッド20の前端部はトップカバー12より前に突出することが望ましい。
【0039】
図3を参照すると、リッド20は、リッドフレーム21と、リッドフレーム21によって支持される視窓22とを含むことができる。リッドフレーム21は合成樹脂材の射出物からなり、視窓22は強化ガラスなどの透明な部材からなり得る。リッドフレーム21より相対的に高い剛性を有する視窓22がリッドフレーム21の中央部に備えられるので、構造的な安定性が向上し、その結果、リッドフレーム21のねじれを防止することができる。
【0040】
図4Aはヒンジ部を示した斜視図で、図4Bはヒンジ部の分解斜視図で、図4Cは固定カム、図4Dは移動カムを示した図である。図5Aは、移動カムの各接触面を示した図で、図5Bは、移動カムを展開して示した図である。図6Aは、リッドが開放された状態のヒンジ部の内部構成を示した図で、図6B図6Aの断面図である。図7Aは、リッドが閉鎖される回転をする過程でのヒンジ部の内部構成を示した図で、図7B図7Aの断面図である。
【0041】
これら図面を参照すると、ヒンジ部100は、本体10に対してリッド20が回転できるように支持するものであって、所定の粘性を有する流体が充填されたヒンジハウジング110と、ヒンジハウジング110内に配置される弾性部材141及び一対のカム120、130とを含む。弾性部材141は圧縮スプリングであり得る。
【0042】
一対のカム120、130のうち少なくとも一つは、円周方向に沿って高さ差を有するように形成された接触面を含む。一対のカムのうちいずれか一つがリッド20と連動して回転し、他の一つのカムは、前記の回転するカムとの接触を維持するように備えられる。したがって、両カムのうち少なくとも一つに形成された接触面の形状に応じて、いずれか一つのカムが自身の回転中心O(又はリッド20の回転軸線)に沿って移動する。
【0043】
カム(cam)装置とは、回転運動を往復運動に転換させる装置である。一般に、このようなカム装置は、周囲の任意の点から回転軸までの距離が一定でない回転カムが回転することによって、回転カムの周囲の接触したカムフォロア(cam follower)が回転カムの回転軸と直交する方向に移動するが、カムとカムフォロアの形状又は構造に応じては、回転カムの回転軸に沿う往復運動への転換も可能である。
【0044】
本発明において、一対のカムは、リッド20と連動して回転する第1のカムと、回転カムとの接触を維持するように備えられ、第1のカムが回転することによって第1のカムとの相対距離が可変する第2のカムとを含む。すなわち、一対のカムのうちいずれか一つのカム(第1のカム)がリッドと連動して回転するとき、いずれか一つのカム(第1のカム)の接触面が他の一つのカム(第2のカム)の接触面に沿って摺動し、一対のカムのうちいずれか一つが移動する。ここで、「一対のカムのうちいずれか一つ」は、実施例によって第1のカム及び第2のカムのいずれにもなり得る。
【0045】
より詳細に、上述したカムの定義によると、第1のカムは、リッド20と連動して回転する回転カムと定義し、第2のカムは、第1のカムによって往復運動するカムフォロアと定義することができる。しかし、本発明のヒンジ部を定義するにおいて、第1のカムが回転する場合、第2のカムが必ず往復運動しなければならないと限定すべきではないという点に注意すべきである。実施例によって、第1のカム(図7Aの130参照)は、リッド20と連動して回転すると同時に、往復運動もすることができる。
【0046】
また、両カム間に接触がなされる第1のカムの接触面と第2のカムの接触面の形状が必ずしも同一であるべきでもない。すなわち、第1のカム及び第2のカムのうち少なくとも一つのカムに、円周方向に沿って高さが可変する接触面が形成されれば十分である。ここで、接触面の高さは、カムの回転軸と直交する所定の平面から接触面上の任意の点までの距離と定義した。
【0047】
ヒンジハウジング110は、一端が開放されたハウジング本体111と、ハウジング本体111の開放された一端を閉鎖するハウジングカバー115とを含むことができる。ハウジング本体111には支持板112を形成することができ、支持板112には、ヒンジ部100をトップカバー12と締結するための締結部材144が挿入される多数の締結孔113を形成することができる。ハウジングカバー115には、シャフト160が貫通する貫通ホールが形成され、ハウジングカバー115は各締結部材144によってハウジング本体111と結合することができる。
【0048】
図3を参照すると、ヒンジ部100は、一対として備えることができる。一対のヒンジ部100の各回転中心又はシャフト160は同軸上に整列し、特に、リッド20の後端に対称的に配置することができる。リッドフレーム21の後端には、両側にそれぞれヒンジ部100が収容される収容部21aを陥没するように形成することができ、シャフト160の端部周囲には、シャフト160と結合される部材(図示せず)を収容できる所定の空間21bをさらに形成することができる。図面には示していないが、視窓22の分離を防止すると同時に、リッドフレーム21の内部構成、特にヒンジ部100が外観上露出しないように、リッドフレーム21の下側に結合されるフレーム部材をさらに備えることができる。
【0049】
リッド20が一対のヒンジ部100によって支持され、各ヒンジ部100が同一に構成されることによって、リッド20の回転動作に伴って各ヒンジ部100によって支持される支持力又はダンピング力が同一であるので、リッド20は、開閉が繰り返されるとしてもねじれなどの変形が生じないという効果を有する。
【0050】
一方、区分部材150又はピストンは、一対のカムのうちリッド20の回転時に軸方向に沿って移動するカムと弾性部材141との間に配置され、前記の移動するカムの変位に対応して弾性部材141を変形させ、ヒンジハウジング110の内部を、弾性部材141が配置された第1の空間S1と、一対のカム120、130が配置された第2の空間S2とに区分する(図6B図7B参照)。区分部材150には、第1の空間S1と第2の空間S2との間に流体を移動させるための流体移動路151が形成される。したがって、カムの移動に伴って弾性部材141の長さが可変し、第1の空間S1又は第2の空間S2が縮小又は拡張されると、それに対応して第1の空間S1と第2の空間S2との間に流体が移動する(図7Bの矢印参照)。このとき、流体の移動により、リッド20の作動時に所定のダンピング力が提供される。
【0051】
ヒンジ部100は、所定の粘性を有する流体が充填されたヒンジハウジング110と、ヒンジハウジング110内に配置される弾性部材141と、円周方向に沿って高さ差を有する接触面121、122、123と接触面131、132、133が形成された一対のカム120、130とを含む。シャフト160は、ヒンジ部100をトップカバー12と連結するものであって、自身の回転が拘束される固定軸である。シャフト160には丸棒の外周面に沿って切削面161を形成することができ、トップカバー12には、シャフト160の断面形状に対応する挿入ホールが形成されたブラケットなどの固定部材を備えることができる。
【0052】
一対のカム120、130は、シャフト160に固定結合され、リッド20の回転に対して独立的に自身の回転が拘束される固定カム120と、リッド20と連動して回転し、その回転角度によって固定カム120との距離が可変する移動カム130とを含むことができる。固定カム120の接触面121、122、123と移動カム130の接触面131、132、133は互いに接触した状態を維持し、その結果、リッド20の回転時、移動カム130の接触面131、132、133が固定カム120の接触面121、122、123に沿って摺動し、接触面の形状、特に各接触面の高さ差によって移動カム130の位置が可変する。
【0053】
各カムの接触面(例えば、131)は、中心軸O(図4D参照)を基準にして円周方向に沿って高さが可変する勾配をなし、このとき、接触面の勾配方向は、リッド20が布出し入れホールhを閉鎖する回転をするとき、移動カム130が弾性部材141を圧縮させる方向に移動できるように定められる。このとき、区分部材150は、移動カム130の変位に対応して移動しながら弾性部材141を圧縮する。このような構造で、圧縮された弾性部材141から作用する復元力は、移動カム130と固定カム120との接触面間の相互作用によってリッド20が開放される方向へのトルクを生成し、その結果、リッド20の閉鎖速度が減速する。すなわち、このときのトルクは、リッド20の開放時、使用者がより小さい力でもリッド20を開放できるように作用する。
【0054】
流体移動路151は、第1の空間S1に向かって開口された第1のホール152と第2の空間S2に向かって開口された第2のホール153の面積が互いに異なるように形成することができる。このような構造により、リッド20の閉鎖時と開放時において流体の移動による粘性力に差が発生する。特に、リッド20の開放時よりもリッド20閉鎖時により大きなダンピング力が提供されるように、第1のホール152の断面積を第2のホール153の断面積よりも小さく形成することができる。この場合、流体移動路151は、第1のホール152から第2のホール153に行くほど内径が漸次大きくなるように形成することができる。
【0055】
図6B図7Bを比較すると、リッド20の閉鎖動作によって区分部材150が移動し、弾性部材141が圧縮されると、第1の空間S1は縮小される一方、第2の空間S2は拡張される。したがって、ヒンジハウジング110内で、流体は、第1の空間S1から第2の空間S2に移動しながら所定のダンピング力を提供する。
【0056】
ヒンジ部100は、区分部材150の外周面とヒンジハウジング110の内周面との間を気密するOリング142と、ハウジング本体111とハウジングカバー115との間を気密するOリング145とをさらに含むことができる。
【0057】
図4Cを参照すると、固定カム120は、第1のカム脚A、第2のカム脚B及び第3のカム脚Cを含む。第1のカム脚A、第2のカム脚B及び第3のカム脚Cは、それぞれ後述する移動カム130の第1のカム脚A'、第2のカム脚B'及び第3のカム脚C'と噛み合うものであって、第1のカム脚A、第2のカム脚B及び第3のカム脚Cは、それぞれ円周方向に沿って端部の高さが可変する環状の隔壁構造をなし、各カム脚の端部には接触面121、122、123が形成される。
【0058】
このとき、第1、第2及び第3のカム脚A、B、Cのうち少なくとも一つに形成された接触面は、最高点を基準にして両側に互いに異なる傾斜を有して延長される正傾斜面及び逆傾斜面を含むことができる。
【0059】
より詳細に、第1のカム脚Aに形成された接触面121は、リッド20の回転角度がd1とd3との間であるB−D区間(図8参照)に対応する正傾斜面121aと、リッド20の回転角度が0(リッド20が閉鎖された状態)とd1との間であるA―B区間に対応する逆傾斜面121bとを含むことができ、同様に、第2のカム脚Bの接触面122は、正傾斜面122a及び逆傾斜面122bを含むことができ、第3のカム脚Cの接触面123は、正傾斜面123a及び逆傾斜面123bを含むことができる。
【0060】
正傾斜面と逆傾斜面は、最高点H1、H2、H3を基準にして両側に互いに反対に勾配を有し、図5Aないし図5Bを参照すると、第1の接触面131は、最高点H1から終端A2に向かって下向き傾斜Δ1を有する正傾斜面131aと、最高点H1から始端A1に向かって下向き傾斜Δ2を有する逆傾斜面131bとを含むことができる。各傾斜面での各勾配であるΔ1とΔ2は、互いに異なる符号を有する値であるが、各値が該当の区間で一定の値である必要はない。例えば、最高点H1と終端A2との間で、Δ1の値は可変し得る。
【0061】
また、固定カム120は、移動カム130側に突出した挿入突起124をさらに含むことができ、挿入突起124は、移動カム130に形成された挿入ホール134(図4D参照)内に挿入され、移動カム130の移動を案内する。リッド20の動作に伴って移動カム130の位置が変わる変位区間で、挿入突起124は、常に挿入ホール134内に挿入された状態を維持することが望ましい。
【0062】
図4Dを参照すると、移動カム130は、固定カム120と同様に、第1のカム脚A'、第2のカム脚B'及び第3のカム脚C'を含むことができ、第1のカム脚A'、第2のカム脚B'及び第3のカム脚C'には、それぞれ固定カム120の各接触面と接する各接触面が形成される。
【0063】
移動カム130の第1のカム脚A'に形成された接触面131は、固定カム120の第1のカム脚Aに形成された接触面121に対応し、移動カム130の第2のカム脚B'に形成された接触面132は、固定カム120の第2のカム脚Bに形成された接触面122に対応し、移動カム130の第3のカム脚C'に形成された接触面132は、固定カム120の第3のカム脚Cに形成された接触面123に対応するものであって、リッド20の回転時、移動カム130の接触面がこれに対応する固定カム120の接触面に沿って摺動する。
【0064】
一方、固定カム120と同様に、第1のカム脚A'の接触面131は、正傾斜面131a及び逆傾斜面131bを含むことができ、第2のカム脚B'の接触面132は、正傾斜面132a及び逆傾斜面132bを含むことができ、第3のカム脚C'の接触面133は、正傾斜面133a及び逆傾斜面133bを含むことができる。
【0065】
移動カム130の正傾斜面131a、132a、133aは、リッド20の回転角度B―D区間で、それぞれ固定カム120の正傾斜面121a、122a、123aに沿って摺動する。すなわち、移動カム130の正傾斜面131a、132a、133aと固定カム120の正傾斜面121a、122a、123aとが互いに連関することによって、リッド20が開放される方向にトルクが作用する。
【0066】
そして、移動カム130の逆傾斜面131b、132b、133bは、リッド20の回転角度A―B区間で、それぞれ固定カム120の逆傾斜面121b、122b、123bに沿って摺動する。すなわち、移動カム130の逆傾斜面131b、132b、133bと、固定カム120の逆傾斜面121b、122b、123bとが互いに連関することによって、リッド20が閉鎖される方向にトルクが作用する。リッド20が完全に閉鎖された位置で、移動カム130の逆傾斜面131b、132b、133bと、固定カム120の逆傾斜面121b、122b、123bとの間には互いに接触が維持される。
【0067】
図5Aないし図5Bを参照すると、本発明の一実施例に係るヒンジ部において、一対のカムのうち少なくとも一つのカムには、3個の区間にそれぞれ接触面131、132、133が形成される。したがって、一対のカムが接触を維持しながら回転するとき、少なくとも3個の区間で互いに支持されることによって、より安定的な動作が可能であるという利点がある。
【0068】
このために、一対のカムのうち少なくとも一つのカム(以下、移動カム130と説明するが、固定カムもこれに対応する形態で形成可能であることを明示する。)には、少なくとも3個のカム脚A'、B'、C'が形成され、それぞれのカム脚の端部には各接触面が形成される。
【0069】
リッド20が閉鎖される回転をする過程で一対のカム間の距離が遠くなると、一対のカムの各接触面間の接触面積が減少する。したがって、一対のカムのうちいずれか一つのカムの接触面が2個の区間に形成された構造では、カムの中心に対して対称的に存在する2個の接触面によってそれぞれのカムが支持されるので、揺れが発生し得る。勿論、それぞれのカムの外周面がヒンジハウジング110の内周面と完全に密着するとカムの揺れを防止できるが、ヒンジハウジング110内でいずれか一つのカムは移動可能でなければならないので、カムとヒンジハウジング110との間には微細な遊隔が存在するようになり、その結果、カムの中心に対して実質的に対称的に存在する2個の接触面のみでは、カムが揺れないように支持するのに限界がある。したがって、本実施例では、円周方向に沿って所定の回転角度で分割された少なくとも3個の区間A'、B'、C'にそれぞれ接触面131、132、133が形成されたカムを含むヒンジ部を提案する。
【0070】
図5Aには、一対のカムのうちリッド20の回転時に移動するカム、すなわち、移動カム130が示されており、以下では、これを基準にして説明するが、これに限定されることはなく、移動カム130と噛み合った他の一つの固定カム120にも実質的に同一の構造を適用することができる。ただし、一対のカムのうちいずれか一つのカムに形成された接触面が凹状(又は、凸状)の構造を有するなら、これと噛み合う他の一つのカムには各カムの接触面間に面接触がなされるように、凸状(又は、凹状)の構造を有することが望ましい。
【0071】
移動カム130を軸方向から見たとき、カムの中心Oを基準にして所定の回転角度で3個の区間A'、B'、C'に分割し、各区間に接触面が形成される。このとき、3個の区間は移動カム130のカム脚を基準にして区分された。
【0072】
3個の区間のうち互いに隣接した一対の区間で、いずれか一つの区間(例えば、B')に形成された接触面132の始端B1は、カムの軸方向投映上で、他の一つの区間(例えば、A')に形成された接触面131と重畳し得る。すなわち、第2のカム脚B'に形成された接触面132の反対側に該当する背面132cが垂直線IIと所定の角度θをなして傾斜して形成されることによって、第2のカム脚B'に形成された接触面132の始端B1の下側でさらに回転した位置、すなわち、第1の区間での始端A1からの角度がII地点でより大きくなる地点に第1のカム脚A'の接触面の終端A2が位置し得る。
【0073】
このような構造は、第1のカム脚A'に形成された接触面の始端A1と第3のカム脚C'に形成された接触面の終端C2との間の位置関係と、第3のカム脚C'に形成された接触面の始端C1と第2のカム脚B'に形成された接触面の終端B2との間の位置関係においても同様である。
【0074】
一方、上述したように、固定カム120は、移動カム130と実質的に同一の3個のカム脚A、B、C(図4C参照)を含み、各カム脚は、移動カム130の接触面の始端と終端との間で移動カムと相互作用する。換言すると、固定カム120の接触面上で所定の点Pを取ると、リッド20が回転する間、その点Pは、移動カムに形成された接触面の始端と終端との間、特に垂直線(例えばII)と終端(例えばA2)との間にも位置し得る。
【0075】
それぞれのカム脚の各始端間の間隔が120°であるとしても、すなわち、IとIIとの間、IIとIII との間、III とIとの間の角度がそれぞれ120°であるとしても、任意のカム脚で始端(例えば、B1)と終端(例えば、B2)との間の角度を120°以上にすることができ、その結果、120°以上の回転区間でも固定カムの接触面と移動カムの接触面との間に互いに支持されることを意味する。
【0076】
リッド20の最大開放角度d3は、120°を超えないように設定することができる。例えば、リッド20の開放角度が120°に至ると、トップカバー12に備えられたストッパーによってリッド20が係止されることによって、リッド30のこれ以上の回転を制限することができる。しかし、リッド20の回転を制止する構造は、既に設定されたリッド20の最大開放角度で厳格にリッド20の回転を拘束するよりは、多少の余裕を置くことが望ましい。すなわち、外力によってリッド20が開放される間に正確に最大開放角度で厳格な拘束が行われると衝撃によってヒンジ部の破損が発生し得るので、最大開放角度を超えた所定区間に制動区間を置くことが望ましい。したがって、このような制動区間を考慮すると、リッド20の実際の開放角度は120°以上まで至ることができ、本実施例では、制動区間でもヒンジ部の動作の安定性と正確性を確保できるという利点がある。
【0077】
図8は、リッドの回転運動を説明するための側面図である。図8を参照すると、リッド20が閉鎖された位置Aから最大開放位置Dに行くほど大きくなる回転角度を開放角度と定義すると、リッド20が開放される間に開放角度がd2になるC地点を経過した時点からは、使用者による追加的な外力がなくても自動的にリッド20がD地点まで回転することができる。使用者が加える外力のみでリッド20が開放される場合、リッド20は、開放角度が90°以上になった時点から自動的に開放されるが、本実施例では、ヒンジ部100によってリッド20が開放される方向にトルクが作用するので、開放角度が90°より小さい区間でも(d2<90)リッド20を自動的に開放することができる。d2は、略80°に設定することができる。
【0078】
リッド20の最大開放角度d3は、略110°に設定することができる。実施例によって、リッド20が最大開放角度以上に回転しないように制限するストッパー(図示せず)をさらに備えることができ、或いは、コントロールパネル16との接触によってリッド20の回転を制限することができる。
【0079】
開放角度d1とd2との間の区間では、リッド20の回転が減速又は停止される。ヒンジ部100から作用するトルクは、リッド20の自重によるトルクと反対方向であり、これに加えて、流体の移動による粘性力を考慮すると、前記区間でリッド20の回転速度が減速することは自明である。ところが、さらに、ヒンジ部100から作用するトルクと、ヒンジハウジング110内での流体の流動による粘性力などは、リッド20の自重によるトルクを相殺する各因子として作用するので、これら各因子の適切な組み合わせによって開放角度d1とd2との間の区間でリッド20を停止状態に維持することもできる。洗濯機の容量が増大するほどリッド20のサイズも大きくなり、使用者がリッド20の前端をつかんでC地点まで持ち上げることが容易でない。そのため、使用者の手が接触する範囲内の所定区間でリッド20の回転を停止させることによって、布を投入したり取り出すときの使用便宜性が向上し得る。
【0080】
一方、リッド20が閉鎖される間に開放角度がd1より小さい区間に至ると、リッド20が自動的に閉鎖される回転をする。この区間では、他の区間に比べてリッド20の自重によるトルクが強く作用するので、ヒンジ部100から作用するトルクのサイズがこれを超えないように接触面の形状、弾性部材141の弾性係数、流体の粘性力などが調整されると、リッド20を自動的に閉鎖することができる。
【0081】
しかし、これに加えて、固定カム120及び移動カム130のうち少なくとも一つで、カム脚(以下、移動カムのカム脚(A'を例に挙げる)にリッド20が開放される方向にトルクを作用させる第1の接触面131aと、第1の接触面131aと反対方向に勾配を有する第2の接触面131bとを含むように形成し、B地点とD地点との間では、移動カム130と固定カム120との間に第1の接触面131aを通した接触をなし、A地点とB地点との間では、第2の接触面131bを通した接触をなすことができる。上述したように、固定カム120にも移動カム130の各接触面131a、131bに対応する各接触面121a、121bが形成されることによって、各カムに形成された接触面が互いに接触し得る。A地点の開放角度d1は、略25°に設定することができる。
【0082】
本発明の洗濯物処理機器は、ヒンジ部を構成する両カム間の接触面積をより広く確保することによって、リッドに対する十分な支持力を確保し、その結果、リッドの重量増加により効果的に対応することができる。
【0083】
本発明の洗濯物処理機器は、ヒンジ部を構成する両カム間の接触区間が3区間以上になることによって、両カム間の相互作用がより強固に行われるようにし、その結果、リッドが揺れずに安定的に動作できるという効果を有する。
【0084】
また、本発明の洗濯物処理機器は、ヒンジ部の剛性を補強できるという効果を有する。
【0085】
図9は、本発明の他の実施例に係るリッドを示した図である。図10は、図9に示したリッドとヒンジ部の分解斜視図である。
【0086】
図9ないし図10を参照すると、リッド20'は、リッドフレーム21'と、リッドフレーム21'によって支持される視窓22'と、リッドフレーム21'の前端に備えられるハンドル25'とを含むことができる。
【0087】
リッド20'は、一対のヒンジ部200によって回転可能に支持することができる。一対のヒンジ部200は、リッド20'の下面後方で左右方向に互いに所定間隔だけ離隔するように左右側に配置されたヒンジ部200(1)、200(2)を含むことができる。ヒンジ部200がリッド20'の下面後方に設置されるので、側面に設置される場合に比べて外部への露出が少ないという利点を有する。
【0088】
リッドフレーム21'の下部には、ヒンジ部200が装着されるヒンジ装着部216が下向きに突出するように形成される。ヒンジ装着部216には、ヒンジ部200が収容される収容部21a'を形成することができる。
【0089】
シャフト260は、ヒンジ部200とトップカバー12とを連結するものであって、自身の回転が拘束される固定軸である。シャフト260には、丸棒の外周面に沿って切削面261を形成することができ、トップカバー12には、シャフト260の断面形状に対応する挿入ホールが形成されたブラケットなどの固定部材を備えることができる。
【0090】
ヒンジ装着部216がリッドフレーム21'の下面より下向きに突出することによってヒンジ部200がより下側に位置するようになるので、シャフト260がトップカバー12と結合される。また、従来にヒンジ部がリッドフレームに挿入される構造の場合、下側に位置したトップカバーとの結合のためにヒンジ部のサイズが一定サイズ以上に大きくなるべきである一方、本実施例では、ヒンジ装着部216がリッドフレーム21'から下向きに突出するので、ヒンジ部200とトップカバー12との結合が容易であり、従来の場合に比べてヒンジ部200のサイズを縮小することが可能である。図面符号218は、ヒンジ部200の下部を覆うカバーである。
【0091】
左右側ヒンジ部200(1)、200(2)は実質的に同一の構造である。このような左右側ヒンジ部200(1)、200(2)は、互いに装着する位置が異なるだけで、互いに対称的に配置される。したがって、リッド20'の左右側に同一の回転力を提供するだけでなく、部品共用化が可能であるため部品の数が減少し、組み立てが容易である。
【0092】
図11は、図10に示したヒンジ部の斜視図である。図12は、図11に示したヒンジ部の断面図である。図13は、図12に示したヒンジ部の分解斜視図である。
【0093】
図11ないし図13を参照すると、ヒンジ部200は、シャフト260、ヒンジハウジング210、弾性部材241、一対のカム220、230、ピストン250及びオイルを含むことができる。
【0094】
ヒンジハウジング210は、一端が開放されたハウジング本体211と、ハウジング本体211の開放された一端を閉鎖するハウジングカバー215とを含むことができる。ハウジングカバー215には、シャフト260が貫通する貫通ホールが形成される。以下では、一対のカム220、230をそれぞれ第1のカム220と第2のカム230という。一対のカム220、230のうちいずれか一つのカム230がリッド20'と連動して回転するとき、いずれか一つのカム230の接触面が他の一つのカム220の接触面に沿って摺動し、一対のカム間の距離が可変する。第1のカム220は、シャフト260によって回転が拘束される固定カムであり、第2のカム230は、リッド20'と連動して回転し、その回転角度によって第1のカム220との距離が可変する移動カムであり得る。
【0095】
シャフト260の一端は、ヒンジハウジング210内に挿入されて第1のカム220と結合され、他端は、ヒンジハウジング210の外部に露出してトップカバー12に固定・結合される。
【0096】
ヒンジハウジング210は、一側面が開口された筒状からなり、内部には、弾性部材241、第1のカム220、第2のカム230、区分部材又はピストン250及びオイルが備えられる。ヒンジハウジング210の外周面には、リッド20'に突き合わせられ、締結部材(図示せず)によってリッド20'と締結される支持板212が形成される。支持板212には、締結部材が通過する複数の締結孔213が形成される。
【0097】
支持板212は、ハウジング本体211の上下左右の周面のうちいずれか一つの周面中央から突出形成され、ハウジング本体211が前後方向に対称をなすことができる。ハウジング本体211は、左右及び前後方向に対称形状からなり、リッド20'の左右側のいずれの位置にも設置が可能である。
【0098】
ハウジングカバー215は、ハウジング本体211の開口された面を遮蔽し、締結部材244によって締結される。ハウジングカバー215の一端はハウジング本体211に挿入され、ハウジングカバー215の挿入部とハウジング本体211との間には、オイルの漏れを防止するためにハウジング本体211とハウジングカバー215との間を気密するOリング245を設置することができる。
【0099】
第1のカム220及び第2のカム230のうち少なくとも一つは、円周方向に沿って高さ差を有するように形成される接触面を含む。第2のカム230がリッド20'と連動して回転し、このとき、第1のカム220と第2のカム230の相互間の接触が維持される。したがって、両カム220、230のうち少なくとも一つに形成された接触面の形状に応じて、いずれか一つのカム230が自身の回転中心(又は、回転軸線)に沿って移動する。
【0100】
上述した実施例と同様に、第1のカム220の傾斜面220aは、正傾斜面及び逆傾斜面を有することができ、第2のカム230の傾斜面230aも、傾斜面220aに対応する形状からなる正傾斜面及び逆傾斜面を有することができる。
【0101】
第2のカム230は、リッド20'の回転時に共に回転し、このとき、第2のカム230の接触面230aと第1のカム220の接触面220aとが相互作用することによって、第2のカム230の直線運動が行われながらピストン250が移動する。
【0102】
ピストン250の移動によって弾性部材241の変形が行われる。弾性部材241の一端はピストン250に結合することができ、他端はハウジング本体211に結合することができる。弾性部材241が配置されたハウジング本体211の内部空間50には、所定の粘性を有する流体(例えば、オイル)が充填される。弾性部材241は、第2のカム230とピストン250の直線往復運動時に圧縮又は伸張される。弾性部材241が提供する弾性力によって第2のカム230が反撥されながら第1のカム220と相互作用し、このときの弾性力は、最終的にはリッド20'が開放される方向にトルクを発生させる。
【0103】
一方、ピストン250とオイルは、リッド20'が閉鎖されるときに抵抗として作用し、閉鎖速度を減速させるダンパーとしての機能をする。このような抵抗力は、主に、所定の粘性を有する流体中でピストン250が移動するときの摩擦力と、ピストン250の移動によって圧縮された流体から作用する反力である。
【0104】
ピストン250の周面には、オイルの漏れを防止するためにピストン250とヒンジハウジング210との間を気密するOリング242を備えることができる。
【0105】
前記のように構成された本発明の実施例に係るヒンジ部200の動作を説明すると、次に示す通りである。
【0106】
まず、リッド20'が開放された状態で閉鎖されるとき、リッド20'と連動して第2のカム230の回転が行われ、このとき、第2のカム230は、第1のカム220との相互作用によって直線移動する。第2のカム230の移動方向にピストン250の移動も行われ、その結果、弾性部材241が圧縮される。
【0107】
圧縮された弾性部材241から作用する弾性力又は復元力は、第1のカム220と第2のカム230との間に強い斥力を作用させる。
【0108】
第2のカム230の移動方向にピストン250も共に移動し、ハウジング本体211内のオイルを圧縮させる。弾性部材241が提供する弾性力によって第2のカム230が反撥されながら第1のカム220と相互作用し、このときの弾性力は、最終的にはリッド20'が開放される方向にトルクを発生させる。その結果、リッド20'が閉鎖される速度が減少し、リッド20'がトップカバー12と衝突するときに発生する衝撃騷音が低減する。
【0109】
リッド20'の左右両側には同一の作用をするヒンジ部200が設置されるので、リッド20'の左右両側に同一の量の抵抗、又はダンピング力が作用する。したがって、リッド20'の両側に均一でないダンピング力が作用し、リッド20'がねじれるという従来の問題が発生せず、また、リッド20'の閉鎖時に左側及び右側のいずれか一側が浮き上がる現象を防止することができる。
【0110】
一方、リッド20'が閉鎖された状態で開放される場合、第2のカム230は、リッド20'の閉鎖時とは反対に移動し、このときも、弾性部材241によって提供される弾性力は、リッド20'が開放される方向へのトルクを発生させるのに寄与するので、使用者がリッド20'を開放するのに必要な力を減少させることができる。
【0111】
また、リッド20'の左右両側に同一のヒンジ部200が設置され、左右両側に同一の回転力又はダンピング力を提供するので、リッド20'の荷重は均等にそれぞれのヒンジ部200に加えられる。その結果、リッド20'の変形(例えば、ねじれ)を防止することができ、耐久性が向上する。
【0112】
いくつかの例示的な実施例を参照して実施例を説明してきたが、当然のことながら、本開示の原則の範囲や思想内に含まれる分野における通常の知識を有する者により多数の別の変更及び実施が提案されることが可能である。特に、本開示、図面及び添付した特許請求の範囲内で、構成要素及び/又は対象の組み合わせ構造(subject combination arrangement)において様々な変形及び変更が可能である。上記構成要素及び/又は構造の変形及び変更に加えて、代案的利用も当業者にとっては明らかであろう。
【符号の説明】
【0113】
10 本体
11 キャビネット
12 トップカバー
16 コントロールパネル
20 リッド
21 リッドフレーム
22 視窓
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13