(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮影条件設定部は、前記入力部を介して前記設定対象のスキャン種の設定項目のうちの関連性を有する特定の設定項目の項目値が入力された場合、前記入力された項目値を、前記設定対象のスキャン種以外のスキャン種の前記特定の設定項目に入力する、ことを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記撮影条件設定部は、前記入力部を介して前記設定対象のスキャン種の設定項目のうちの関連性を有する特定の設定項目の項目値が入力された場合、前記設定対象のスキャン種以外のスキャン種の前記特定の設定項目への項目値の入力を制限する、ことを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記撮影条件設定部は、前記入力部を介したユーザからの指示に従って選択された複数のスキャン種の組み合わせを1組のスキャン種として登録する、ことを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記スキャン制御部は、前記入力部を介したユーザからの開始指示を受けて前記造影前スキャンを開始し、前記造影前スキャンの終了後、前記入力部を介したユーザからの開始指示を受けて前記モニタリングスキャンと前記造影後スキャンとを実行する、ことを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記スキャン制御部は、前記入力部からの開始指示を受けて前記造影前スキャン、前記モニタリングスキャン、及び前記造影後スキャンを順番に自動的に実行する、ことを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線コンピュータ断層撮影装置を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、架台10、コンソール30、及び造影剤注入器60を備えている。架台10は、円筒形状を有する回転フレーム11を回転軸Z回りに回転可能に支持している。回転フレーム11には、回転軸Zを挟んで対向するようにX線発生部13とX線検出部15とが取り付けられている。回転フレーム11の開口部内にFOV(field of view)が設定される。回転フレーム11の開口部内には、天板17が挿入される。天板17には被検体Sが載置される。天板17に載置された被検体Sの撮像部位がFOV内に含まれるように天板17が位置決めされる。回転フレーム11は、回転駆動部19からの動力を受けて回転軸Z回りに一定の角速度で回転する。回転駆動部19は、架台制御部21からの制御信号に従って回転フレーム11を回転させるための動力を発生する。
【0012】
X線発生部13は、架台制御部21からの制御信号に従ってX線を発生する。具体的には、X線発生部13は、X線管131と高電圧発生器133とを有する。X線管131は、高電圧発生器133からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。高電圧発生器133は、架台制御部21からの制御信号に従う高電圧をX線管131に印加し、架台制御部21からの制御信号に従うフィラメント電流をX線管131に供給する。
【0013】
X線検出部15は、X線発生部13から発生され被検体Sを透過したX線を検出し、検出されたX線の強度に応じたデジタルデータを生成する。具体的には、X線検出部15は、X線検出器151とデータ収集回路153とを有する。
【0014】
X線検出器151は、X線管131から発生されたX線を検出する。X線検出器151は、2次元状に配列された複数のX線検出素子を搭載する。各X線検出素子は、X線管131からのX線を検出し、検出されたX線の強度に応じた電気信号を発生する。
【0015】
データ収集回路153は、各X線検出素子から電気信号をビュー毎に収集し、収集された電気信号をデジタルデータに変換する。変換後のデジタルデータは、生データと呼ばれている。生データは、コンソール30に供給される。
【0016】
架台制御部21は、コンソール30内のスキャン制御部43による指示に従って、架台10に搭載された各種機器の制御を統括する。例えば、架台制御部21は、本実施形態に係る造影剤が注入された被検体Sを対象としたCTスキャンを実行するためにX線発生部13、X線検出部15、及び回転駆動部19を制御する。回転駆動部19は、架台制御部21による制御に従って一定の角速度で回転する。X線発生部13の高電圧発生器133は、架台制御部21による制御に従って、予め設定された管電圧値を有する管電圧をX線管131に印加する。X線検出部15のデータ収集回路153は、架台制御部21による制御に従って、X線曝射タイミングに同期して生データをビュー毎に収集する。
【0017】
造影剤注入器60は、被検体Sに造影剤を注入するための機器である。造影剤注入器60は、ユーザにより手動操作により造影剤を被検体Sに注入しても良いし、コンソール30内のスキャン制御部43からの注入開始信号の受信に同期して注入しても良い。また、造影剤注入器60は、ユーザの手動操作による造影剤の注入に同期してスキャン制御部43に曝射開始信号を送信しても良い。曝射開始信号を受けたスキャン制御部43は、X線の曝射を開始するため架台制御部21に曝射開始信号を送信する。
【0018】
コンソール30は、前処理部31、再構成部33、画像処理部35、撮影計画部37、関連性記憶部39、ROI設定部41、スキャン制御部43、表示部45、入力部47、主記憶部49、及びシステム制御部51を備える。
【0019】
前処理部31は、架台10からの生データに対数変換等の前処理を施す。前処理後の生データは投影データと呼ばれている。前処理としては、対数変換やX線強度補正、オフセット補正等の各種の補正処理を含む。
【0020】
再構成部33は、投影データに基づいて被検体Sに関するCT値の空間分布を表現するCT画像を発生する。より詳細には、再構成部33は、撮影計画部37により設定された再構成条件に従ってCT画像に画像再構成処理を施す。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法やCBP(convolution back projection)法等の解析学的画像再構成法や、ML−EM(maximum likelihood expectation maximization)法やOS−EM(ordered subset expectation maximization)法等の統計学的画像再構成法等の既存の画像再構成アルゴリズムが用いられれば良い。
【0021】
画像処理部35は、CT画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理部35は、二つのCT画像に差分処理を施して差分画像を発生する。
【0022】
撮影計画部37は、入力部47を介したユーザからの指示に従って撮影計画を実行する。撮影計画においては検査プロトコルの構築が行われる。検査プロトコルは、一単位として纏めて実行される複数のスキャン種により構成される。本実施形態に係るスキャン種としては、例えば、参照画像収集スキャン、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャン等の既存の如何なるスキャン種であっても良い。また、スキャン種としては、造影検査における任意の造影剤流入相におけるスキャンが含まれても良い。例えば、造影剤流入相におけるスキャンとしては、例えば、早期流入相スキャン、ピーク流入相スキャン、後期流入相スキャン等が知られている。実行対象の検査プロトコルを構成するスキャン種の組合せは、予め設定されていても良いし、ユーザにより入力部47を介して設定されても良い。検査プロトコルに含まれるスキャン種が決定されると、当該検査プロトコルに関する撮影条件や再構成条件の条件設定が行われる。具体的には、撮影計画部37は、設定対象の検査プロトコルの撮影条件及び再構成条件に含まれる複数の設定項目の項目値を、関連性記憶部39に記憶されている当該検査プロトコルに関する関連性を利用して、入力部47を介したユーザからの指示に連動して設定する。
【0023】
関連性記憶部39は、複数の検査プロトコルの各々について、検査プロトコル各々の撮影条件及び再構成条件に含まれる複数の設定項目のスキャン種間の関連性を記憶する。関連性は、例えば、LUT(look up table)やデータベース等により規定される。以下、関連性はLUTにより規定されているとし、当該LUTを関連性テーブルと呼ぶことにする。関連性テーブルは、ある検査プロトコルに含まれるスキャン種間の設定項目の関連性を規定している。関連性テーブルは、検査プロトコル毎に設けられている。関連性テーブルの内容は、ユーザにより入力部47を介して任意に設定/変更可能である。
【0024】
図2は、サブトラクションプロトコルに関するスキャン種間の設定項目の関連性の一例を示す図である。後述するように、サブトラクションプロトコルは、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンにより構成される。
図2に示すように、設定項目は、撮影条件に関する設定項目と再構成条件に関する設定項目とに分類される。撮影条件に関する設定項目としては、例えば、管電圧や管電流、回転フレーム11の回転速度、天板移動速度等が挙げられる。再構成条件に関する設定項目としては、例えば、画像再構成アルゴリズムや再構成関数等が挙げられる。
図2における「○」は関連性が有ることを示し、「×」は関連性が無いことを示している。例えば、
図2に示すように、設定項目「管電圧」は、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの間で関連性を有する。また、設定項目「管電流」は、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの間で関連性を有さない。設定項目「再構成関数」は、造影前スキャンと造影後スキャンとの間で関連性を有し、造影前スキャンとモニタリングスキャンとの間、造影後スキャンとモニタリングスキャンとの間で関連性を有さない。
【0025】
関連性が有る設定項目について、撮影計画部37は、複数のスキャン種間の当該設定項目を連動して設定する。関連性が無い設定項目について、撮影計画部37は、複数のスキャン種間の当該設定項目を個別に設定する。
【0026】
ROI設定部41は、入力部47を介したユーザからの指示に従って、CT画像にROI(関心領域)を設定する。ROIは、モニタリングスキャンにおいて用いられる。
【0027】
スキャン制御部43は、CTスキャンを実行するための架台制御部21と造影剤注入器60とを制御する。例えば、スキャン制御部43は、撮影計画部37により設定された撮影条件に従って架台制御部21を制御する。また、スキャン制御部43は、入力部47を介してユーザから曝射開始指示が入力されたことを契機として曝射開始信号を架台制御部21に供給したり、入力部47を介してユーザから曝射停止指示が入力されたことを契機として曝射停止信号を架台制御部21に供給したりする。曝射開始信号の供給を受けて架台制御部21は、高電圧発生器133を制御し、X線管131からのX線の曝射を開始する。曝射停止信号の供給を受けて架台制御部21は、高電圧発生器133を制御し、X線管131からのX線の曝射を停止させる。また、スキャン制御部43は、入力部47を介してユーザから注入開始指示が入力されたことを契機として注入開始信号を造影剤注入器60に供給したり、入力部47を介してユーザから注入停止指示が入力されたことを契機として注入停止信号を造影剤注入器60に供給したりする。注入開始信号の供給を受けて架台制御部21は、造影剤注入器60を制御し、造影剤の注入を開始する。注入停止信号の供給を受けて架台制御部21は、造影剤注入器60を制御し、造影剤の注入を停止させる。
【0028】
表示部45は、CT画像や撮影計画の設定画面等を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0029】
入力部47は、入力機器によるユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。例えば、ユーザは、撮影条件及び再構成条件を設定するための指示を入力機器を介して入力する。また、ユーザは、曝射開始指示や曝射停止指示、注入開始指示、注入停止指示を入力機器を介して入力しても良い。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。
【0030】
主記憶部49は、種々の情報を記憶する記憶装置である。例えば、主記憶部49は、投影データやCT画像を記憶する。また、主記憶部49は、本実施形態に係る撮影計画プログラムや検査プロトコル実行プログラム等を記憶する。
【0031】
システム制御部51は、X線コンピュータ断層撮影装置の中枢として機能する。システム制御部51は、本実施形態に係る撮影計画プログラムを主記憶部49から読み出し、当該撮影計画プログラムに従って各種構成要素を制御する。これにより、本実施形態に係る撮影計画処理が行われる。また、システム制御部51は、本実施形態に係る検査プロトコル実行プログラムを主記憶部49から読み出し、当該検査プロトコル実行プログラムに従って各種構成要素を制御する。これにより、本実施形態に係る検査プロトコル実行処理が実行される。
【0032】
次に、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作例について説明する。まずは、本実施形態に係る撮影計画処理について説明する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る撮影計画部37により行われる撮影計画処理の典型的な流れを示す図である。本実施形態に係る撮影計画は、複数のスキャン種を含む検査プロトコルについて行われる。検査プロトコルを構成する全てのスキャン種について条件設定を行う必要がある。本実施形態に係る撮影計画は、検査プロトコルを構成する全てのスキャン種について一括して条件設定が行われる。
【0034】
図3に示すように、撮影計画処理の開始指示がユーザにより入力部47を介して入力されることを契機としてシステム制御部51は、撮影計画部37に撮影計画処理を開始させる。まず撮影計画部37は、検査プロトコルの構築を行う(ステップSA1)。ステップSA1において撮影計画部37は、検査対象の検査プロトコルに含めるスキャン種を、予め定められた複数のスキャン種の中から選択する。例えば、ステップSA1において表示部45は、複数のスキャン種の一覧を表示する。ユーザは、表示された一覧の中から検査プロトコルに含めるべき複数のスキャン種を、入力部47を介して選択する。ユーザは、検査内容に応じて必要な任意の複数のスキャン種を選択可能である。例えば、参照画像収集スキャン、造影前スキャン、モニタリングスキャン、造影後スキャン等の既知の種類のスキャン種の中から任意に選択される。撮影計画部37は、入力部47を介して選択された複数のスキャン種の組を検査対象の検査プロトコルとして登録する。
【0035】
ステップSA1が行われると撮影計画部37は、条件設定処理を行う(ステップSA2)。ステップSA2において撮影計画部37は、関連性記憶部39に記憶されている当該検査プロトコルについての関連性に従って、当該検査プロトコルの撮影条件及び再構成条件に含まれる複数の設定項目の項目値を、入力部47を介したユーザからの指示に連動して設定する。
【0036】
図4は、ステップSA2において撮影計画部37により行われる条件設定処理の典型的な流れを示す図である。なお、
図4の説明においては検査プロトコルとしてサブトラクションプロトコルが登録されたものとする。上述のように、サブトラクションプロトコルは、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンにより構成される。
【0037】
まず、撮影計画部37は、入力部47を介したユーザからの指示に従って設定項目の入力対象のスキャン種を選択する(ステップSA2−1)。サブトラクションプロトコルにおいては、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの何れかのスキャン種が選択される。なおステップSA2−1において選択されたスキャン種を選択スキャン種と呼ぶことにする。
【0038】
ステップSA2−1が行われると撮影計画部37は、ユーザにより入力部47を介して、選択スキャン種の設定項目への項目値の入力がなされることを待機する(ステップSA2−2)。例えば、ステップSA2−1において造影前スキャンが選択された場合、造影前スキャンの設定項目「管電圧」の項目値「80kV」等が入力される。
【0039】
項目値の入力がなされた場合(ステップSA2−2:YES)、撮影計画部37は、ステップSA2−2において入力された項目値を、選択スキャン種の当該設定項目に設定する(ステップSA2−3)。例えば、ステップSA2−1において造影前スキャンが選択され、ステップSA2−2において設定項目「管電圧」の項目値「80kV」が入力された場合、ステップSA2−3において、造影前スキャンの「管電圧」が「80kV」に設定される。
【0040】
ステップSA2−3において撮影計画部37は、関連性記憶部39から関連性テーブルを読み出し、ステップSA2−2において項目値が入力された設定項目が関連項目であるか否かを判定する(ステップSA2−4)。ステップSA2−4において撮影計画部37は、関連性テーブルを参照し、当該設定項目が造影前スキャンと造影後スキャンとの間で関連性を有するか否かを判定する。関連性を有する項目は関連項目であると判定される。関連性を有さない項目は関連項目で無いと判定される。例えば、設定項目「管電圧」は、
図2に示すように、造影前スキャンと造影後スキャンとの間で関連性を有している。従って設定項目「管電圧」は、関連項目であると判定される。また、設定項目「R波からの曝射待ち時間」は、
図2に示すように、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの間で関連性を有していない。従って設定項目「R波からの曝射待ち時間」は、関連項目で無いと判定される。
【0041】
ステップSA2−4において設定項目が関連項目であると判定された場合(ステップSA2−4:YES)、撮影計画部37は、当該設定項目が制約条件を満足しているか否かを判定する(ステップSA2−5)。制約条件は、項目値の入力を制限するための条件である。例えば、制約条件として、各設定項目には項目値の許容範囲が設定される。撮影計画部37は、ステップSA2−2において入力された項目値が許容範囲にあるか否かを判定し、入力された項目値が許容範囲にある場合、制約条件を満たすと判定する。一方、撮影計画部37は、入力された項目値が許容範囲に無い場合、制約条件を満たさないと判定する。また、他の制約条件として、ステップSA2−6における連動設定により既に項目値が入力された設定項目について、新たな項目値の入力が制限される。この場合、撮影計画部37は、ステップSA2−2において項目値が入力された設定項目が、既にステップSA2−6における連動設定により入力された項目であるか否かを特定し、当該設定項目が入力済みの項目の場合、制約条件を満たすと判定する。一方、撮影計画部37は、当該設定項目が入力済みの項目で無い場合、制約条件を満たさないと判定する。
【0042】
ステップSA2−5において制約条件を満足すると判定された場合(ステップSA2−5:YES)、撮影計画部37は、非選択スキャン種の同一設定項目を連動設定する(ステップSA2−6)。具体的には、撮影計画部37は、選択スキャン種との間で関連性を有する全ての非選択スキャン種について、同一設定項目に、ステップSA2−2において入力された項目値を設定する。例えば、ステップSA2−1において造影前スキャンが選択され、ステップSA2−2において設定項目「管電圧」の項目値「80kV」が入力された場合、造影後スキャンとモニタリングスキャンとの設定項目「管電圧」に同じ項目値「80kV」が設定される。また、ステップSA2−1において造影前スキャンが選択され、ステップSA2−2において設定項目「再構成関数」の項目値「3」が入力された場合、造影後スキャンの同一設定項目「再構成関数」に同じ項目値「3」が設定され、モニタリングスキャンの同一設定項目「再構成関数」には「3」が設定されず、初期値が維持される。
【0043】
ステップSA2−5において制約条件を満足しないと判定された場合(ステップSA2−5:NO)、撮影計画部37は、ステップSA2−2における入力操作を取り消す(ステップSA2−7)。すなわち、ステップSA2−3において設定された項目値が取り消され、設定前の値あるいは初期値に再設定される。
【0044】
ステップSA2−4において設定項目が関連項目でないと判定された場合(ステップSA2−4:NO)、ステップSA2−6が行われた場合、又はステップSA2−7が行われた場合、撮影計画部37は、入力部47を介して条件設定処理を終了する旨の指示がなされたか否かを判定する(ステップSA2−8)。条件設定処理を終了する旨の指示がなされない場合(ステップSA2−8:NO)、撮影計画部37は、再びステップSA2−2に進み、ユーザにより入力部47を介して、選択スキャン種の設定項目への項目値の入力がなされることを待機する。
【0045】
このようにして、全ての設定項目について条件設定が行われ、入力部47を介して条件設定処理を終了する旨の指示がなされた場合(ステップSA2−8:YES)、撮影計画部37は、条件設定処理を終了する(ステップSA2−9)。
【0046】
上記の条件設定処理は、検査対象の検査プロトコルに含まれる全てのスキャン種の全ての設定項目に項目値が設定されるまで、各スキャン種について繰り返し実行される。検査対象の検査プロトコルに含まれる全てのスキャン種の全ての設定項目に項目値が設定されると、検査対象の検査プロトコルの撮影計画処理(具体的には、条件設定処理)が完了する。
【0047】
図3に示すように、ステップSA2が行われると撮影計画部37は、検査対象の検査プロトコルの撮影計画を登録する(ステップSA3)。登録された撮影計画は、主記憶部49に記憶される。
【0048】
上記の通り、本実施形態に係る撮影計画処理によれば、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンを一括して条件設定することが可能となる。従って効率的サブトラクションプロトコルの条件設定を効率的に行うことができる。また、関連項目について連動して条件設定をしたり、制約を与えたりすることにより、正確且つ簡便に条件設定を行うことができる。
【0049】
次に、本実施形態に係る検査プロトコルの動作例につい説明する。本実施形態に係る検査プロトコルは、造影検査において臨床上有益なサブトラクションプロトコルであるとする。
【0050】
図5は、システム制御部51の制御のもとに行われる本実施形態に係る造影検査の典型的な流れを示す図である。
図5に示すように、まず、参照画像収集スキャンが行われる(ステップSB1)。参照画像収集スキャンは、モニタリングスキャンのためのROIの設定に用いられる参照画像を収集するためのスキャンである。システム制御部51は、予め設定された参照画像スキャンのための撮影条件を主記憶部49から読み出し、スキャン制御部43に供給する。また、システム制御部51は、予め設定された参照画像スキャンのための再構成条件を主記憶部49から読み出し、再構成部33に供給する。スキャン制御部43は、当該撮影条件を架台制御部21に伝送する。また、スキャン制御部43は、入力部47を介して曝射開始指示が入力されることを契機として曝射開始信号を架台制御部21に伝送する。架台制御部21は、曝射開始信号が供給されたことを契機として、撮影条件に従ってX線発生部13とX線検出部15とを制御し、参照画像収集スキャンを実行する。参照画像収集スキャンにおいてデータ収集回路153により収集された生データに基づいて再構成部33は、参照画像収集スキャンのための再構成条件に従ってCT画像(以下、参照画像と呼ぶ)を発生する。参照画像は、主記憶部49に記憶される。
【0051】
ステップSB1が行われると、サブトラクションプロトコルの撮影計画が決定される(ステップSB2)。ステップSB2において撮影計画部37は、上記の撮影計画処理により、サブトラクションプロトコルの撮影計画を決定する。上記の通り、本実施形態に係る撮影計画処理により、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの撮影条件及び再構成条件を一括で設定することができる。また、連動設定機能により、複数のスキャン種の間で関連項目の項目値を連動して設定することが可能となる。従って、関連項目の項目値を複数のスキャン種の間で確実に一致させることができる。決定されたサブトラクションプロトコルの撮影計画は、主記憶部49に記憶される。
【0052】
ステップSB2が行われると、ROI設定部41によりROI設定処理が行われる(ステップSB3)。ROI設定処理においてROI設定部41は、ユーザからの入力部47を介した指示に従って、参照画像にモニタリングスキャンのためのROIを設定する。設定されたROI内の画素値がモニタリングスキャンにおいて監視される。以下、モニタリングスキャンのためのROIを監視領域と呼ぶことにする。
【0053】
ステップSB3が行われるとスキャン制御部43は、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンを単一の検査プロトコルとして順番に実行するようにX線発生部13とX線検出部15とを制御する。
【0054】
具体的には、まず造影前スキャンが行われる(ステップSB4)。造影前スキャンは、被検体の撮像部位が造影剤により造影される前に行われる当該撮像部位を対象とするスキャンである。システム制御部51は、ステップSB2において設定された造影前スキャンのための撮影条件、モニタリングスキャンのための撮影条件、及び造影後スキャンのための撮影条件を主記憶部49から読み出し、スキャン制御部43に供給する。また、システム制御部51は、造影前スキャンのための再構成条件、モニタリングスキャンのための再構成条件、及び造影後スキャンのための再構成条件を主記憶部49から読み出し、再構成部33に供給する。スキャン制御部43は、当該撮影条件を架台制御部21に伝送する。また、スキャン制御部43は、入力部47を介して曝射開始指示が入力されることを契機として曝射開始信号を架台制御部21に伝送する。架台制御部21は、曝射開始信号が供給されたことを契機として、造影前スキャンのための撮影条件に従ってX線発生部13とX線検出部15とを制御し、造影前スキャンを実行する。造影前スキャンにおいてデータ収集回路153により収集された生データに基づいて再構成部33は、造影前スキャンのための再構成条件に従ってCT画像(以下、造影前CT画像を呼ぶ)を発生する。造影前CT画像は、主記憶部49に記憶される。
【0055】
ステップSB4が行われるとスキャン制御部43は、モニタリングスキャンを実行する(ステップSB5)。モニタリングスキャンは、被検体Sの撮像部位が造影剤により適切に強調されたタイミングで造影後スキャンを行うために、当該タイミングを検出するために行われるスキャンである。モニタリングスキャンの実行前に被検体Sに造影剤が注入される。具体的には、スキャン制御部43は、モニタリングスキャンのための撮影条件を架台制御部21に伝送する。また、スキャン制御部43は、入力部47を介して曝射開始指示が入力されることを契機として曝射開始信号を架台制御部21に伝送する。架台制御部21は、モニタリングスキャンのための撮影条件に従ってX線発生部13とX線検出部15とを制御し、モニタリングスキャンを実行する。モニタリングスキャンにおいては、典型的には造影前スキャンや造影後スキャンよりも低線量で連続的にX線が曝射される。モニタリングスキャンにおいて再構成部33は、モニタリングスキャンのための再構成条件に従って、データ収集回路153からの投影データに基づいてCT画像(以下、モニタリング画像と呼ぶ)を繰り返し発生する。
【0056】
モニタリングスキャンにおいてスキャン制御部43は、モニタリング画像のうちのステップSB3において設定された監視領域内の複数の画素の画素値の統計値をモニタリング画像毎に算出し、算出された統計値を閾値に対して比較する。統計値は、例えば、複数の画素の画素値の平均値や最大値、最小値、中間値等に設定される。閾値は、造影剤により十分に造影された血管部位に対応する画素の典型的な画素値に設定されれば良い。閾値は、ユーザによる入力部47を介した指示に従って任意に設定可能である。統計値が閾値よりも低いと判断した場合、スキャン制御部43は、引き続きモニタリングスキャンを実行するようにX線発生部13とX線検出部15とを制御する。そして統計値が閾値よりも高いと判断した場合、スキャン制御部43は、モニタリングスキャンを停止するようにX線発生部13とX線検出部15とを制御する。
【0057】
ステップSB5が行われるとスキャン制御部43は、造影後スキャンを実行する(ステップSB6)。造影後スキャンは、被検体の撮像部位が造影剤により適切に造影されている最中に行われる当該撮像部位を対象とするスキャンである。具体的には、スキャン制御部43は、造影後スキャンのための撮影条件に従ってX線発生部13とX線検出部15とを制御し、造影後スキャンを実行する。造影後スキャンによりCT画像(以下、造影後CT画像と呼ぶ)が発生される。造影後スキャンにおいてデータ収集回路153により収集された生データに基づいて再構成部33は、造影後スキャンのための再構成条件に従ってCT画像(以下、造影後CT画像と呼ぶ)を発生する。
【0058】
モニタリングスキャンは、手動的に開始されても良いし自動的に開始されても良い。以下、手動的に開始される場合を実施例1、自動的に開始される場合を実施例2として説明する。
【0059】
実施例1:
図6は、実施例1に係る造影検査のスキャンシーケンスの典型的な流れを模式的に示す図である。
図6の左縦軸は管電流に規定され、右縦軸は造影剤濃度に規定され、横軸は時間に規定される。前述のように、造影前スキャンの前段においてモニタリングスキャンのためのROI(監視領域)が設定される。造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンが単一の検査プロトコル(サブトラクションプロトコル)として順番に実行される。造影前スキャンは、ユーザによる入力部47を介した手動的な指示に従ってスキャン制御部43により開始される。造影前スキャンについて既定回数のX線曝射が行われた後、造影前スキャンがスキャン制御部43により自動的に停止される。造影前スキャンの停止後、ユーザにより被検体Sに造影剤が注入される。その後、ユーザによる入力部47を介した手動的な指示に従ってスキャン制御部43によりモニタリングスキャンが開始される。なお造影剤が造影剤注入器60により自動的に注入されても良い。すなわち、造影前スキャンの停止後、スキャン制御部43は、造影剤注入器60に注入開始信号を送信し、造影剤注入器60は、当該注入開始信号を受けて自動的に被検体Sに造影剤を注入する。造影剤注入器60への注入開始信号の送信に同期してスキャン制御部43は、架台制御部21に曝射開始信号を送信する。あるいは、ユーザによる造影剤注入器60に対する注入操作に同期して造影剤注入器60が曝射開始信号をスキャン制御部43に送信し、曝射開始信号の受信に応答してスキャン制御部43が架台制御部21に曝射開始信号を送信しても良い。これにより、造影剤の注入とモニタリングスキャンにおけるX線曝射とを連動させることが可能となる。モニタリングスキャンが行われ、造影剤濃度(すなわち、監視領域内の複数の画素の画素値に基づく統計値)が閾値に到達したことを契機としてモニタリングスキャンが停止され、所定期間経過後、造影後スキャンが自動的に開始される。造影後スキャンについて既定回数のX線曝射が行われた後、造影後スキャンがスキャン制御部43により自動的に停止される。
【0060】
上記の通り、実施例1によれば、造影前スキャンからモニタリングスキャンへ手動的に移行される。従って後述の実施例2に比して、サブトラクションプロトコルの開始タイミング等を確実に図ることが可能となる。
【0061】
実施例2:
図7は、実施例2に係る造影検査のスキャンシーケンスの典型的な流れを模式的に示す図である。
図6と同様に、造影前スキャンの前段においてモニタリングスキャンのためのROI(監視領域)が設定される。造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンが単一の検査プロトコル(サブトラクションプロトコル)として順番に実行される。造影前スキャンの開始前にユーザにより造影剤が注入される。その後、ユーザによる入力部47を介した手動的な指示に従って、造影前スキャンがスキャン制御部43により開始される。造影前スキャンについて既定回数のX線曝射が行われた後、造影前スキャンがスキャン制御部43により自動的に停止される。なお造影剤は、造影剤注入器60により注入されても良い。すなわち、スキャン制御部43は、造影剤注入器60に注入開始信号を送信し、造影剤注入器60は、当該注入開始信号を受けて自動的に被検体Sに造影剤を注入する。造影剤注入器60への注入開始信号の送信に同期してスキャン制御部43は、架台制御部21に曝射開始信号を送信する。あるいは、ユーザによる造影剤注入器60に対する注入操作に同期して造影剤注入器60が曝射開始信号をスキャン制御部43に送信し、曝射開始信号の受信に応答してスキャン制御部43が架台制御部21に曝射開始信号を送信しても良い。これにより、造影剤の注入とモニタリングスキャンにおけるX線曝射とを連動させることが可能となる。造影前スキャンの停止後から所定の待機時間の経過後、スキャン制御部43によりモニタリングスキャンが自動的に開始される。当該待機時間は、任意に設定可能である。なお当該待機時間が設けられず、造影前スキャンの停止の直後にモニタリングスキャンが開始されても良い。モニタリングスキャンが行われ、造影剤濃度(すなわち、監視領域内の複数の画素の画素値に基づく統計値)が閾値に到達したことを契機としてモニタリングスキャンが停止され、所定期間経過後、造影後スキャンが自動的に開始される。造影後スキャンについて既定回数のX線曝射が行われた後、造影後スキャンがスキャン制御部43により自動的に停止される。
【0062】
上記の通り、実施例2によれば、造影前スキャンからモニタリングスキャンへ自動的に移行される。従って実施例1に比して、ユーザによるサブトラクションプロトコルの手間が削減され、また、検査時間が短縮される。
【0063】
ステップSB6が行われると本実施形態に係る造影検査が終了する。
【0064】
造影検査が終了すると画像処理部35は、造影前CT画像と造影後CT画像とに基づいて差分画像を発生する。差分画像は、表示部45により表示される。
【0065】
従来例においてモニタリングスキャンは、造影後スキャンのためのスキャンであった。従って、モニタリングスキャンと造影後スキャンとを一組の検査プロトコルと見做して継ぎ目なく当該2スキャンが行われていた。しかしながら、造影前スキャンとモニタリング/造影後スキャンとは完全に個別のスキャンとして考えられていた。従って、
図12や
図13に示すように、モニタリングスキャンと造影後スキャンとのための条件設定処理と、造影前スキャンのための条件設定処理とは個別に行われていた。すなわち、
図12や
図13に示すように、モニタリングスキャンと造影後スキャンとの条件設定処理や監視領域の設定処理は、造影前スキャンの終了後、モニタリングスキャンの開始前に行われていた。従って、造影前スキャンの終了からモニタリングスキャンの開始まで長時間を要し、この間に被検体が動いてしまう場合があった。この場合、造影前CT画像と造影後CT画像との差分画像には造影剤の影響以外にも体動の影響等が画像化されてしまい、差分画像の画質が良好ではなくなる。
【0066】
本実施形態に係る発明者達は、モニタリングスキャンの役割を改めた。すなわち、本実施形態に係る発明者達は、モニタリングスキャンを造影前スキャンと造影後スキャンとを繋ぐスキャンとして位置づけた。これにより差分画像を収集するために効率化された新規のサブトラクションプロトコルが構築されるに至った。
【0067】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、この新規のサブトラクションプロトコルの構築により、当該サブトラクションプロトコルのスキャンシーケンスを最適化することを実現した。具体的には、スキャン制御部43は、予め設定された撮影条件及び再構成条件に従って造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンを単一の検査プロトコルとして順番に実行する。造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンを単一の検査プロトコルとして順番に実行するため、撮影計画部37は、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの条件設定処理を一括して造影前スキャンの前段に行う。これにより、造影前スキャンとモニタリングスキャンとの間に条件設定処理や監視領域の設定処理を行う必要が無くなるので、造影前スキャンの開始から造影後スキャンの終了までの検査時間が短縮する。具体的には、造影前スキャンの開始から造影後スキャンの終了まで、一呼吸分の時間で完了することができる。これにより、被検体の体動を最小限に抑えることができる。すなわち、本実施形態によれば、造影前スキャンからモニタリングスキャンへの移行時間を、従来例に比して短縮することができる。また、差分画像において、被検体の体動等の造影剤以外の差分の影響を最小限に抑制することができる。また、撮影計画部37は、連動設定機能により、造影前スキャンやモニタリングスキャン、造影後スキャンの撮影条件及び再構成条件の内容を揃えて連動的に設定する。従って、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの条件設定処理に係る作業時間を短縮することができる。
【0068】
かくして、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンの3種のスキャンを実行するX線コンピュータ断層撮影装置において、造影前スキャンからモニタリングスキャンへの移行時間の短縮が可能となる。
【0069】
(応用例)
上記の実施形態の通り、サブトラクションプロトコルにより造影前CT画像と造影後CT画像とが発生され、造影前CT画像と造影後CT画像とに差分処理が施されて差分画像が発生される。換言すれば、差分画像を得るためにサブトラクションプロトコルが行われる場合がある。差分処理には対象部位に応じて様々な条件(以下、差分条件と呼ぶ)が存在する。しかしながら、サブトラクションプロトコルの撮影条件や再構成条件によっては当該撮影条件や再構成条件が所望の差分処理に関する差分条件に適合せず、サブトラクションプロトコルを実行しても当該差分処理を実行できない場合がある。この場合、サブトラクションプロトコルの撮影条件や再構成条件を設定し直して、再度サブトラクションプロトコルを実行する必要がある。サブトラクションプロトコルの実行し直しは、医療従事者及び被検体の双方に様々な損害を与える。
【0070】
本実施形態の応用例に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、サブトラクションプロトコルの実行前に差分処理の実行の可否を判定する。以下、応用例に係るX線コンピュータ断層撮影装置について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0071】
図8は、応用例に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
図8に示すように、応用例に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、さらに判定部53と差分条件記憶部55とを有する。
【0072】
判定部53は、造影前スキャンと造影後スキャンとの撮影条件及び再構成条件に関する設定項目の項目値と、実行対象の差分処理に関する実行条件とに基づいて当該差分処理の実行の可否を判定する。実行条件は、造影前スキャンと造影後スキャンとの撮影条件及び再構成条件に関する設定項目の項目値についての当該差分処理を実行するうえでの許容範囲を規定する。以下、差分処理に関する実行条件を差分条件と呼ぶことにする。より詳細には、判定部53は、差分条件記憶部55に記憶された差分条件に従い判定処理を実行する。判定処理の詳細については後述する。
【0073】
差分条件記憶部55は、複数種類の差分処理の各々について、当該差分処理に関する差分条件を記憶する。差分条件は、例えば、LUTやデータベース等により規定される。以下、差分条件はLUTにより規定されているとし、当該LUTを差分条件テーブルと呼ぶことにする。
【0074】
図9は、差分条件テーブルの一例を示す図である。
図9に示すように、差分処理の種類は、例えば、差分処理の対象部位に応じて区分される。例えば、対象部位は、人体の如何なる部位でも良く、例えば、心臓や頭部、下肢が挙げられる。差分条件は、造影前スキャンと造影後スキャンとについて設定される撮影条件及び再構成条件の設定項目の項目値の許容範囲に規定される。設定項目としては、例えば、
図9に示すように、拡大率や再構成範囲、オーバラップ範囲が挙げられる。拡大率は、実寸に対する画像の寸法の倍率に規定される。再構成範囲は、再構成される範囲のZ軸に関する長さに規定される。オーバラップ範囲は、造影前スキャンに関する再構成範囲と造影後スキャンに関する再構成範囲とのオーバラップ範囲のZ軸に関する長さに規定される。例えば、ID1の差分処理は、対象部位が心臓であり、拡大率の許容範囲が50mmから500mmまでの範囲であり、再構成範囲の許容範囲が400mmより小さい範囲である。なお、差分条件の値(許容範囲)は、ユーザにより入力部47を介して任意に変更可能である。
【0075】
次に、応用例に係るシステム制御部51の制御のもとに行われる造影検査の流れを説明する。
図10は、応用例に係るシステム制御部51の制御のもとに行われる造影検査の典型的な流れを示す図である。
【0076】
図10に示すように、まず、参照画像収集スキャンが行われる(ステップSC1)。ステップSC1における参照画像収集スキャンは、
図5のステップSB1における参照画像収集スキャンと略同一であるので説明を省略する。
【0077】
ステップSC1が行われると、サブトラクションプロトコルの撮影計画が決定される(ステップSC2)。ステップSC2において撮影計画部37は、上記の撮影計画処理により、サブトラクションプロトコルの撮影計画を決定する。また、撮影計画部37は、差分処理の種類を、ユーザからの入力部47を介した指示に従って決定する。例えば、ユーザは、下肢について差分処理を行う場合、差分処理の種類として下肢を指定する。典型的には、差分処理の種類とサブトラクションプロトコルの撮像対象部位とは一致する。
【0078】
ステップSC2が行われるとROI設定部41によりROI設定処理が行われる(ステップSC3)。ステップSC3におけるROI設定処理は、
図5のステップSB3におけるROI設定処理と略同一であるので説明を省略する。
【0079】
ステップSC3が行われると判定部53により判定処理が行われる(ステップSC4)。ステップSC4において判定部53は、ステップSC2において設定された造影前スキャンと造影後スキャンとの撮影条件及び再構成条件に関する設定項目の項目値と、ステップSC2において指定された種類の差分処理に関する差分条件(許容範囲)とを比較して当該差分処理の実行の可否を判定する。より詳細には、判定部53は、設定項目の項目値が許容範囲にある場合、差分処理を実行可能であると判定し、設定項目の項目値が許容範囲にない場合、差分処理を実行不能であると判定する。例えば、判定部53は、複数の設定項目のうちのユーザ指定の設定項目の項目値に基づいて差分処理の実行の可否を判定する。設定項目の種類は、入力部47を介して任意に設定可能である。
【0080】
図11は、判定部53による判定処理を説明するための図である。
図11においては差分処理の種類は
図9に示す心臓であり、比較対象の設定項目として、
図9に示す拡大率を例示している。すなわち、差分条件(許容範囲)は、50mmから500mmまでの範囲である。ここで、あるサブトラクションプロトコル(ID1)の拡大率は600mmであり、他のサブトラクションプロトコル(ID2)の拡大率は400mmであるとする。判定部53は、ID1のサブトラクションプロトコルに関する拡大率「600mm」が拡大率の許容範囲内にあるか否かを判定する。この場合、サブトラクションプロトコルに関する拡大率「600mm」が許容範囲「50mmから500mmまでの範囲」にないので、差分処理を実行不能であると判定する。同様に、判定部53は、ID2のサブトラクションプロトコルに関する拡大率「400mm」が拡大率の許容範囲内にあるか否かを判定する。この場合、ID2のサブトラクションプロトコルに関する拡大率「400mm」が許容範囲「50mmから500mmまでの範囲」にあるので、差分処理を実行可能であると判定する。
【0081】
なお、上記の処理内容は判定処理の一例であって、本実施形態に係る判定処理は、上記処理内容のみに限定されない。例えば、判定部53は、複数の設定項目の各々について項目値と許容範囲との比較を行い、複数の設定項目のうちの何れか一つの項目値が許容範囲にない場合、差分処理を実行不能と判定しても良い。あるいは、複数の設定項目のうちの何れか一つの優先的な設定項目の項目値が許容範囲にある場合にのみ、他の設定項目の項目値と許容範囲との比較が行われても良い。例えば、オーバラップ範囲が一定値以上狭い場合、差分処理を行うことができない。従って、オーバラップ範囲は優先的な設定項目に設定されると良い。この場合、判定部53は、まず、オーバラップ範囲の項目値が許容範囲にあるか否かを判定し、オーバラップ範囲の項目値が許容範囲にある場合のみ、拡大率等の他の設定項目の項目値と許容範囲とを比較すると良い。これにより、判定処理の精度を維持しながら処理効率を高めることができる。あるいは、判定部53は、複数の設定項目のうちの何れか一つの項目値が許容範囲にある場合、差分処理を実行可能と判定しても良い。これにより、判定処理の処理効率をさらに高めることができる。
【0082】
ステップSC4が行われると表示部45は、ステップSC4における判定処理の判定結果を表示する(ステップSC5)。ステップSC5において表示部45は、判定結果に応じたメッセージを表示する。差分処理を実行可能と判定された場合、表示部45は、例えば、「撮影条件及び再構成条件は差分処理に適しています」等のメッセージを表示する。差分処理を実行不能と判定された場合、表示部45は、例えば、「撮影条件及び再構成条件が差分処理に適していません」等のメッセージを表示する。
【0083】
ステップSC5が行われるとシステム制御部51は、ユーザによる入力部47を介した差分処理の実行の有無の指示を待機する(ステップSC6)。例えば、表示部45は、ステップSC5において判定結果に応じたメッセージとともに、撮影ボタンと条件再設定ボタンとを表示すると良い。ユーザは、判定結果を確認し、再度、条件を設定すると判断した場合、入力部47を介して条件再設定ボタンを押下する。条件再設定ボタンが押下された場合(ステップSC6:NO)、システム制御部51は、ステップSC2に進み、再びステップSC2からステップSC6が繰り返される。
【0084】
そして、ステップSC2において設定した条件で撮影を開始すると判断した場合、ユーザは、入力部47を介して撮影ボタンを押下する。撮影ボタンが押下された場合(ステップSC6:YES)、スキャン制御部43は、造影前スキャン、モニタリングスキャン、及び造影後スキャンを単一の検査プロトコルとして順番に実行するようにX線発生部13とX線検出部15とを制御する。
【0085】
具体的には、まず被検体Sの撮像部位を対象とした造影前スキャンが行われる(ステップSC7)。造影前スキャンにより収集された投影データに基づいて再構成部33は、造影前スキャンのための再構成条件に従って造影前CT画像を発生する。ステップSC7における造影前スキャンは、
図5のステップSB4における造影前スキャンと略同一であるので説明を省略する。
【0086】
ステップSC7が行われるとスキャン制御部43は、ステップSC3において設定された監視領域を対象としたモニタリングスキャンを実行する(ステップSC8)。ステップSC8におけるモニタリングスキャンは、
図5のステップSB5におけるモニタリングスキャンと略同一であるので説明を省略する。
【0087】
ステップSC8が行われるとスキャン制御部43は、被検体Sの撮像部位を対象とした造影後スキャンを実行する(ステップSC9)。造影後スキャンにより収集された投影データに基づいて再構成部33は、造影後スキャンのための再構成条件に従って造影後CT画像を発生する。ステップSC9における造影後スキャンは、
図5のステップSB6における造影後スキャンと略同一であるので説明を省略する。
【0088】
ステップSC9が行われると応用例に係る造影検査が終了する。
【0089】
造影検査が終了すると画像処理部35は、造影前CT画像と造影後CT画像とに基づいて差分画像を自動的に発生する。発生された差分画像は、表示部45により表示される。
【0090】
上記の通り、応用例に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、サブトラクションプロトコルの実行前において、当該サブトラクションプロトコルの撮影条件及び再構成条件が実行対象の差分処理の差分条件に適合するか否かを判定することができる。従って、撮影条件及び再構成条件の不適合に起因するサブトラクションプロトコルの再実行を防止することができる。これにより、造影検査の効率が向上する。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。