(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、乗員の身体に装着されるウェビングを袋状に構成し且つウェビングに内蔵部品を内蔵する場合に、上記のウェビングの構造を適用すると、以下のような問題がある。すなわち、上記ウェビング構造では、2枚のウェビングを後加工で縫製して袋状(2層)に形成しているため、2枚のウェビングの幅方向両端面が露出される。また、2枚のウェビングを縫製する縫製糸の目が浮いて、当該縫製糸とウェビングとの同一感を損ねる可能性がある、さらに、縫製糸のテンション等によって2層のウェビングが歪む場合がある。以上により、ウェビングの見栄えを損ねるという問題がある。このため、乗員に装着されるウェビングでは、ウェビングの見栄えを損なわずに、内蔵部品の接続部材をウェビングの外部へ良好に導出させることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、袋体ウェビングの見栄えを損なわずに内蔵部品を内蔵することができると共に、内蔵部品の接続部材を袋体ウェビングの外部へ良好に導出させることができるシートベルト装置用ウェビング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のシートベルト装置用ウェビング構造は、
幅方向両端部が製織されることにより長尺袋状に形成され、巻取装置から延出されて乗員の身体に装着されると共に、先端
側において前記製
織によって形成された開口部を有する袋体ウェビングと、
前記袋体ウェビングに内蔵され、車両の制御部に電気的に接続される接続部材を有する内蔵部品と、
前記袋体ウェビングの先端部に別体で設けられ、車体に固定されたアンカの連結孔に挿入されて前記袋体ウェビングと前記アンカとを連結し、前記連結孔の内周縁によって折り返された折返し部と、厚み方向に重合された重合部に形成された縫合部と、を含んで構成された連結ウェビング部と、
前記開口部によって構成され、前記折返し部に対して前記袋体ウェビングの基端側の位置において前記接続部材を前記袋体ウェビングの外部へ導出する導出部と、
を備え、
前記導出部が前記縫合部と前記アンカとの間に配置され、
前記連結ウェビング部の長手方向両端部が、前記縫合部において前記袋体ウェビングと縫合され、
前記袋体ウェビングに内蔵された前記接続部材が、前記縫合部の上下方向に亘って前記縫合部を避けるように
前記袋体ウェビングに内蔵されて配設されている。
【0007】
請求項1に記載のシートベルト装置用ウェビング構造では、長尺袋状を成す袋体ウェビングが、巻取装置から延出されて、乗員の身体に装着される。そして、袋体ウェビングは、先端
側の幅方向端部において
前記製織がされないことによって形成された開口部を有しており、袋体ウェビングには、内蔵部品が内蔵されている。
【0008】
また、袋体ウェビングの先端部には、袋体ウェビングとは一体又は別体で構成された連結ウェビング部が設けられている。そして、車体に固定されたアンカの連結孔に連結ウェビング部が挿入されて、連結ウェビング部が、折返し部の部位において連結孔の内周縁によって折り返されている。また、連結ウェビング部の厚み方向に重なる重合部に縫合部が形成されている。これにより、袋体ウェビングが連結ウェビング部及びアンカを介して車体に連結される。
【0009】
ここで、袋体ウェビングは製織によって長尺袋状に形成されている。このため、従来技術のように2枚のウェビングを後加工で縫製してウェビングを袋状に形成する形態と比べて、袋体ウェビングの見栄えを良好にすることができる。これにより、袋体ウェビングの見栄えを損なわずに内蔵部品を内蔵することができる。
【0010】
またここで、袋体ウェビングには、内蔵部品の接続部材を袋体ウェビングの外部へ導出する導出部が形成されており、導出部は袋体ウェビングの開口部によって構成されている。すなわち、袋体ウェビングの製織時に予め形成された開口部によって導出部が構成されている。このため、例えば、後加工によって袋体ウェビングにスリット等を形成して、当該スリットを導出部とする場合に比べて、袋体ウェビングの強度を確保することができる。さらに、導出部が、折返し部に対して袋体ウェビングの基端側の位置に配置されている。すなわち、折返し部に対して袋体ウェビングの基端側の位置において接続部材が袋体ウェビングの外部へ導出される。このため、接続部材を折返し部まで配策する必要がなくなる。つまり、接続部材を連結ウェビング部と共に折返し部で折り返す必要がなくなるため、接続部材に対する負荷を軽減することができる。したがって、接続部材を袋体ウェビングの外部に良好に導出させることができる。
また、縫合部とアンカとの間から接続部材が袋体ウェビングの外部へ導出される。このため、車体側により近い位置で接続部材を接続処理することができる。
さらに、連結ウェビング部が袋体ウェビングとは別体で構成されている。このため、例えば、連結ウェビング部を1層(1枚)のウェビングで構成することができる。これにより、連結ウェビング部をアンカの連結孔に容易に挿入させることができ、連結ウェビング部を折返し部において容易に折り返すことができる。
【0011】
本発明の別の態様のシートベルト装置用ウェビング構造は、請求項1に記載のシートベルト装置用ウェビング構造において、前記導出部が前記縫合部に対して前記袋体ウェビングの基端側の位置に配置されている。
【0012】
本発明の別の態様のシートベルト装置用ウェビング構造では、縫合部に対して袋体ウェビングの基端側で接続部材が袋体ウェビングの外部へ導出される。このため、接続部材による影響を抑制しつつ、連結ウェビング部に縫合部を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の袋体ウェビング巻取装置によれば、袋体ウェビングの見栄えを損なわず内蔵部品を内蔵することができると共に、内蔵部品の接続部材を袋体ウェビングの外部へ良好に導出させることができる。
また、車体側により近い位置で接続部材を接続処理することができる。
さらに、連結ウェビング部をアンカに連結させるときの作業性を向上できる。
【0018】
また、本発明の別の態様の袋体ウェビング巻取装置によれば、接続部材による影響を抑制しつつ、連結ウェビング部に縫合部を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
以下、
図1〜
図5を用いて、第1の実施の形態に係るシートベルト装置用ウェビング構造S1について説明する。シートベルト装置用ウェビング構造S1は、車両(自動車)Vに搭載されるシートベルト装置10の袋体ウェビング20に適用されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車両Vの車両前方を示し、矢印RHは車幅方向一方側である車両右方を示し、矢印UPは車両上方を示している。
【0023】
図2には、車両Vの右部に配置された車両用シートSに対応するシートベルト装置10の全体が車両前方から見た模式図で示されている。この図に示されるように、シートベルト装置10は、車両用シートSに着座した着座乗員Pの身体を拘束するためのものであり、所謂3点式のシートベルト装置として構成されている。具体的には、シートベルト装置10は、「巻取装置」としてのリトラクタ12と、着座乗員Pの身体を拘束する袋体ウェビング20と、袋体ウェビング20に内蔵された「内蔵部品」としてのヒーター50(
図4参照)と、を含んで構成されている。
【0024】
リトラクタ12は、車両用シートSの車両幅方向外側(車両右側)に設けられると共に、車両VのセンターピラーCPの内側に配置されている。このリトラクタ12は、リトラクタ12の外郭を構成するフレーム14を備えており、フレーム14がセンターピラーCPに固定されている。これにより、リトラクタ12が車体に固定される。
【0025】
このフレーム14の内側には、スプール16が設けられている。スプール16は、全体として略円筒形状に形成されると共に、略車両前後方向を軸方向として配置されて、フレーム14に回転可能に支持されている。このスプール16には、後述する袋体ウェビング20の基端部が連結固定されている。そして、スプール16を巻取方向へ回転させると、袋体ウェビング20が自身の基端側からスプール16の外周部に巻取られる。一方、袋体ウェビング20をその先端側から引っ張れば、これに伴いスプール16が引出方向へ回転しながら袋体ウェビング20が引出されるようになっている。
【0026】
袋体ウェビング20は、長尺帯状に形成されている。そして、袋体ウェビング20の基端部が、前述したスプール16に連結固定されており、袋体ウェビング20がリトラクタ12から上側へ延出されている。また、リトラクタ12から延出された袋体ウェビング20は、車両VのショルダアンカSA内を挿通されており、袋体ウェビング20の長手方向中間部がショルダアンカSAによって下側へ折り返されている。さらに、袋体ウェビング20の先端部はアンカ18を介して車体フロアに連結されている。なお、袋体ウェビング20とアンカ18との連結については後述する。
【0027】
また、袋体ウェビング20には、タングTが設けられている。具体的には、タングTの挿通孔(図示省略)内に袋体ウェビング20が挿通されており、タングTは袋体ウェビング20の長手方向に移動可能に構成されている。このタングTは、車両用シートSの車幅方向中央側(車両左側)に設けられたバックル装置Bに係合可能に構成されており、タングTがバックル装置Bに係合されることで、袋体ウェビング20が着座乗員Pの身体に装着されるようになっている。そして、袋体ウェビング20において、主として着座乗員Pの上半身を拘束する部分がショルダ側ウェビング部20Aとされており、主として着座乗員Pの腰部を拘束する部分がラップ側ウェビング部20Bとされている。
【0028】
次に、袋体ウェビング20の構造について説明する。
図3に示されるように、袋体ウェビング20は、袋体ウェビング20の少なくとも先端側が開口された長尺袋状に形成されている。すなわち、袋体ウェビング20が2層構造にされている。そして、以下の説明では、一方の層のウェビングを第1ウェビング22と称し、他方の層のウェビングを第2ウェビング24と称する。また、袋体ウェビング20では、縦糸及び横糸をダブルニードル織機よって製織することで、袋体ウェビング20が袋状に形成されている。つまり、第1ウェビング22及び第2ウェビング24の幅方向両端部において、袋体ウェビング20を構成する縦糸が第1ウェビング22及び第2ウェビング24を接結する接結糸26として構成されている。一方、第1ウェビング22及び第2ウェビング24の幅方向中間部(詳しくは、幅方向両端部を除く部分)では、袋体ウェビング20を構成する縦糸が第1ウェビング22又は第2ウェビング24の縦糸として構成されている。このため、袋体ウェビング20は、製織された第1ウェビング22及び第2ウェビング24を、後から縫製によって袋状に形成する形態とは異なる形態となっている。なお、
図3に図示された接結糸26は、便宜上模式的に図示している。
【0029】
また、
図4に示されるように、ショルダ側ウェビング部20Aの幅方向中間部には、接結糸28が袋体ウェビング20の長手方向に沿って延在されている。つまり、ショルダ側ウェビング部20Aとラップ側ウェビング部20Bでは、接結糸の個数が接結糸28の個数分だけショルダ側ウェビング部20Aの方が多くなっている。また、本実施の形態では、接結糸28が2本とされており、当該接結糸28はショルダ側ウェビング部20Aの幅方向に並んで形成されている。具体的には、接結糸28が袋体ウェビング20の幅方向中心線CLから幅方向外側へ同じピッチP分ずれて配置されている。また、接結糸28は上述した接結糸26と同様に構成されている。すなわち、袋体ウェビング20を構成する2本の縦糸が、ショルダ側ウェビング部20Aにおいて、第1ウェビング22及び第2ウェビング24の幅方向中間部を接結するように構成されている。これにより、ショルダ側ウェビング部20Aでは、第1ウェビング22及び第2ウェビング24の幅方向中間部が接結糸28によって一体化されている。なお、
図4では、ショルダ側ウェビング部20Aとラップ側ウェビング部20Bとの境界部を、便宜上2点鎖線で図示している。
【0030】
また、
図3に示されるように、袋体ウェビング20(ラップ側ウェビング部20B)の先端部では、幅方向一端部において、接結糸26が第1ウェビング22又は第2ウェビング24の縦糸として構成されている。つまり、袋体ウェビング20の先端部における幅方向一端部では、第1ウェビング22と第2ウェビング24とが接結糸26によって接結されて(繋がって)おらず、当該幅方向一端部には、袋体ウェビング20の幅方向一方側へ開口された「開口部」としてのスリット30が製織によって形成されている。なお、袋体ウェビング20の先端においても、袋体ウェビング20の先端側へ開口された「開口部」としての先端側開口部32が製織によって形成されており、先端側開口部32とスリット30とは連通されている。
【0031】
そして、
図1(A)及び(B)に示されるように、袋体ウェビング20(ラップ側ウェビング部20B)の先端部がアンカ18に連結されている。アンカ18は、鋼板により製作されると共に、車両Vの車体フロアに固定されている。このアンカ18には、連結孔18Aが貫通形成されており、連結孔18Aは、長手方向をアンカ18の幅方向とした略矩形状に形成されている。また、連結孔18Aの長手方向の寸法は、袋体ウェビング20の幅方向の寸法よりも小さく設定されている。
【0032】
そして、袋体ウェビング20の幅方向両端部を幅方向内側へ折り曲げて、袋体ウェビング20の先端部が自身の長手方向に沿って連結孔18A内に挿入されている。また、連結孔18A内に挿入された袋体ウェビング20は、連結孔18A内の内周縁によって袋体ウェビング20の基端側(
図1の車両上側)へ折り返されて(折り曲げられて)、袋体ウェビング20が厚み方向に重合されている(詳しくは、第1ウェビング22及び第2ウェビング24によって4枚のウェビングが重合されている)。そして、袋体ウェビング20において厚み方向に重合する部分の全体が連結ウェビング部34とされている。また、連結ウェビング部34において連結孔18A内の内周縁によって折り返された(折り曲げられた)部分が折返し部36とされている。
【0033】
また、連結ウェビング部34において厚み方向に互いに重合された部分(詳しくは、アンカ18を除く部分)が重合部38とされており、重合部38は縫合部40によって縫合されている。これにより、袋体ウェビング20がアンカ18を介して車体フロアに連結されている。
【0034】
また、連結ウェビング部34が縫合部40において縫合された状態では、連結ウェビング部34の重合部38に対して袋体ウェビング20の基端側の位置にスリット30の一部が配置されるようになっている。すなわち、スリット30の一部によって、袋体ウェビング20の内部と外部とが連通されており、この連通された部分が導出部42とされている。これにより、導出部42が、袋体ウェビング20の長手方向において重合部38と隣接されている。
【0035】
一方、
図4に示されるように、「内蔵部品」としてのヒーター50は、ラップ側ウェビング部20Bに内蔵されている。このヒーター50は、一例として、一対の不織布によって電熱ヒーターを挟み込む構成にされて、ラップ側ウェビング部20Bの長手方向に沿って配置されている。そして、ヒーター50は、図示しない位置でラップ側ウェビング部20Bに共縫い等によって固定されている。また、
図1(A)及び(B)に示されるように、ヒーター50は、「接続部材」としてのハーネス52を有しており、ハーネス52はヒーター50から袋体ウェビング20の先端側へ延出されている。そして、ハーネス52は、前述した袋体ウェビング20の導出部42に配策されて導出部42からラップ側ウェビング部20Bの外部へ導出されている。
【0036】
また、ハーネス52の先端部には、コネクタ54が設けられている。このコネクタ54には、中継ケーブル(図示省略)が接続されており、ハーネス52が中継ケーブルを介して車両Vの制御部60に電気的に接続されている。これにより、制御部60の制御によってヒーター50が作動するように構成されている。
【0037】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
上記のように構成されたシートベルト装置10では、袋状の袋体ウェビング20がリトラクタ12から延出されている。そして、袋体ウェビング20の先端部では、袋体ウェビング20の連結ウェビング部34がアンカ18の連結孔18Aに挿入されており、連結ウェビング部34が折返し部36の部位において袋体ウェビング20の基端側へ折り返されている。そして、連結ウェビング部34が縫合部40で縫合されて、袋体ウェビング20がアンカ18を介して車体フロアに連結されている。
【0039】
また、シートベルト装置10は、所謂3点式のシートベルト装置として構成されている。すなわち、袋体ウェビング20が着座乗員Pの身体に装着された状態では、袋体ウェビング20のショルダ側ウェビング部20Aが主として着座乗員Pの上半身を拘束し、袋体ウェビング20のラップ側ウェビング部20Bが主として着座乗員Pの腰部を拘束する。
【0040】
さらに、ラップ側ウェビング部20Bには、ヒーター50が内蔵されている。そして、制御部60の制御によってヒーター50が作動すると、ラップ側ウェビング部20Bがヒーター50によって暖められると共に、着座乗員Pの腰部がラップ側ウェビング部20Bによって暖められる。
【0041】
ここで、袋体ウェビング20は、製織によって袋状に形成されている。具体的には、袋体ウェビング20がダブルニードル織機によって袋状に製織されている。このため、従来技術のように2枚のウェビングを後から縫製することで袋状のウェビングを形成する形態と比べて、袋体ウェビング20の見栄えを良好にすることができる。具体的には、袋体ウェビング20の幅方向両端部が接結糸26によって良好に接結されているため、従来技術のような2枚のウェビングの幅方向両端面が露出することを抑制でき、第1ウェビング22及び第2ウェビング24を良好に一体化することができる。これにより、袋体ウェビング20の見栄えを損なわずにヒーター50を内蔵することができる。
【0042】
またここで、袋体ウェビング20には、ヒーター50のハーネス52が挿通される導出部42が形成されており、導出部42はスリット30によって構成されている。すなわち、袋体ウェビング20の製織時に予め形成されたスリット30によって導出部42が構成されている。このため、例えば、袋体ウェビング20に後加工によってスリット等を形成して、当該スリットを導出部42とする場合と比べて、袋体ウェビング20の強度を確保することができる。
【0043】
さらに、導出部42は折返し部36に対して袋体ウェビング20の基端側の位置に配置されている。すなわち、折返し部36に対して袋体ウェビング20の基端側の位置でハーネス52が袋体ウェビング20の外部へ導出される。このため、ハーネス52を折返し部36まで配策する必要がなくなる。つまり、ハーネス52を折返し部36で折り返す必要がないため、ハーネス52に対する負荷を軽減することができる。その結果、ハーネス52の断線等を防止することができる。以上により、ヒーター50のハーネス52を袋体ウェビング20の外部に良好に導出させることができる。
【0044】
以下、この点について
図5に示される比較例を用いて具体的に説明する。なお、
図5に示される比較例では、本実施の形態と同様に構成されている箇所には、同一の符号を付している。
図5(A)及び(B)に示される比較例1及び比較例2では、袋体ウェビング20にスリット70を後加工によって形成している。具体的には、比較例1では、スリット70が袋体ウェビング20の長手方向に沿って形成され、比較例2では、スリット70が袋体ウェビング20の幅方向に沿って形成されている。そして、当該スリット70からハーネス52が袋体ウェビング20の外部へ導出されている。このため、袋体ウェビング20の横糸又は縦糸がスリット70において切断されるため、袋体ウェビング20の強度が低くなるという問題がある。また、袋体ウェビング20の横糸又は縦糸がほつれるため、袋体ウェビング20の見栄えを損ねるという問題が生じる。
【0045】
また、
図5(C)に示される比較例3では、ハーネス52を連結ウェビング部34と共に折返し部36の部位で袋体ウェビング20の基端側へ折り返し、ハーネス52を袋体ウェビング20の先端から袋体ウェビング20の外部に導出している。このため、比較例3では、ハーネス52の折り返された部分に負荷がかかり、ハーネス52が断線する虞がある。
【0046】
また、
図5(D)に示される比較例4では、アンカが、一対のアンカ18を形成するように断面U字形に形成されている。そして、袋体ウェビング20の先端部を第1ウェビング22と第2ウェビング24とに分離させて、第1ウェビング22を一方のアンカ18に連結し、第2ウェビング24を他方のアンカ18に連結する。そして、ハーネス52を一対のアンカ18の間から袋体ウェビング20の外部へ導出している。このため、アンカ自体が大型化されると共に、袋体ウェビング20におけるアンカ18への連結部分が大きくなる。
【0047】
これに対して、本実施の形態によれば、上述したように、袋体ウェビング20の強度を確保することができると共に、ハーネス52に対する負荷を軽減することができる。また、袋体ウェビング20におけるアンカ18との連結部分の体格が大きくなることを抑制できる。以上により、ヒーター50のハーネス52を袋体ウェビング20の外部へ良好に導出させることができる。
【0048】
また、連結ウェビング部34には、折返し部36に対して袋体ウェビング20の基端側に縫合部40が形成されており、縫合部40に対して袋体ウェビング20の基端側に導出部42が配置されている。このため、導出部42に配策されるハーネス52による影響を抑制しつつ連結ウェビング部34を縫合部40において縫合することができる。具体的には、ハーネス52と重合部38とが袋体ウェビング20の厚み方向にラップしないため、縫合部40の幅寸法をハーネス52の位置によらずに設定することができる。換言すると、縫合部40を連結ウェビング部34の幅方向に亘って形成することができる。これにより、縫合部40の縫合面積が確保されるため、連結ウェビング部34の縫合部40における強度を確保することができる。また、縫合部40に対して袋体ウェビング20の基端側にハーネス52が配置されるため、袋体ウェビング20の長手方向においてハーネス52とアンカ18とを離間させることができる。これにより、例えば、ハーネス52がアンカ18と車体フロアとの間に挟み込まれること等を防止することができる。
【0049】
また、ショルダ側ウェビング部20Aの幅方向中間部には、第1ウェビング22及び第2ウェビング24を接結する2本の接結糸28が袋体ウェビング20の長手方向に沿って延在されている。このため、袋体ウェビング20において、スプール16に主に巻き取られるショルダ側ウェビング部20Aをスプール16によって良好に巻取ることができる。
【0050】
すなわち、袋体ウェビング20がスプール16に巻取られるときには、第1ウェビング22と第2ウェビング24がスプール16の径方向に積層される。このため、袋体ウェビング20がスプール16に巻取られた状態では、スプール16の径方向内側に配置される層(ここでは、第1ウェビング22とする)と、径方向外側に配置される層(ここでは、第2ウェビング24とする)とでは、スプール16の周方向における長さが異なる。すなわち、第1ウェビング22の方が第2ウェビング24よりもスプール16の周方向における長さが短くなる。一方、袋体ウェビング20がスプール16から引出された状態では、第1ウェビング22及び第2ウェビング24の長手方向の長さは同じである。このため、仮に接結糸28を省略したショルダ側ウェビング部20Aをスプール16によって巻取ると、第1ウェビング22と第2ウェビング24がスプール16の周方向(袋体ウェビング20の長手方向)に相対的にずれる。これにより、第1ウェビング22に皺(弛み)が発生する。その結果、スプール16によってショルダ側ウェビング部20Aを良好に巻取ることができなくなる虞がある。
【0051】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、ショルダ側ウェビング部20Aの幅方向中間部には、第1ウェビング22及び第2ウェビング24を接結する2本の接結糸28が袋体ウェビング20の長手方向に沿って延在されている。このため、ショルダ側ウェビング部20Aにおいて、第1ウェビング22及び第2ウェビング24が袋体ウェビング20の長手方向にずれることが抑制される。これにより、ショルダ側ウェビング部20Aがスプール16に巻取られるときには、第1ウェビング22に生じる皺(弛み)が2本の接結糸28によって分散されて、第1ウェビング22に皺(弛み)が発生することを抑制できる。その結果、スプール16によってショルダ側ウェビング部20Aを良好に巻取ることができる。
【0052】
なお、第1の実施の形態では、袋体ウェビング20の先端部において、スリット30と先端側開口部32とが連通されて、1つの開口部が形成されているが、袋体ウェビング20の先端部において、スリット30及び先端側開口部32の2つの開口部を形成するように構成してもよい。具体的には、
図6(A)に示されるように、袋体ウェビング20の先端部の幅方向一端部において、スリット30と先端側開口部32とを区画するように、第1ウェビング22と第2ウェビング24とを接結糸26によって接結してもよい。すなわち、スリット30に対して袋体ウェビング20の先端側において、第1ウェビング22と第2ウェビング24とが接結糸26によって接結される。これにより、袋体ウェビング20の先端部には、スリット30及び先端側開口部32の2つの開口部が形成される。
【0053】
そして、
図6(B)に示されるように、連結ウェビング部34が縫合部40において縫合された状態では、連結ウェビング部34の重合部38に対して袋体ウェビング20の基端側の位置にスリット30が配置されて、スリット30によって導出部42が形成される。これにより、スリット30に対して袋体ウェビング20の先端側において、袋体ウェビング20が袋状に形成されるため、袋体ウェビング20の見栄えを一層良好にすることができると共に、連結ウェビング部34の重合部38を縫合部40において縫合するとき等における作業性を向上することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下、
図7を用いて、第2の実施の形態に係るシートベルト装置用ウェビング構造S2について説明する。第2の実施の形態では、袋体ウェビング20の先端部の構成を除いて、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0055】
すなわち、第2の実施の形態では、連結ウェビング部34が袋体ウェビング20とは別体のウェビングとして構成されている。具体的には、連結ウェビング部34が、1枚のウェビングとして構成されている。そして、連結ウェビング部34の幅方向両端部を幅方向内側に折り曲げた状態で、連結ウェビング部34が長手方向一端側からアンカ18の連結孔18A内に挿入されている。また、連結ウェビング部34の長手方向中間部が連結孔18Aの内周縁において折り返されて(折り曲げられて)、連結ウェビング部34に折返し部36及び重合部38が形成されている。
【0056】
また、連結ウェビング部34の重合部38は、袋体ウェビング20の先端部を厚み方向に挟み込んでおり、この状態で重合部38に縫合部40が形成されている。また、袋体ウェビング20では、第1の実施の形態のスリット30が省略されている。すなわち、袋体ウェビング20の先端部における幅方向両端部では、第1ウェビング22と第2ウェビング24とが接結糸26によって接結されている。さらに、縫合部40の幅寸法が、第1の実施の形態に比べて小さく設定されており、縫合部40に対して袋体ウェビング20の幅方向両側に、袋体ウェビング20の内部と外部とを連通する一対の導出部42が形成されている。これにより、第2の実施の形態では、導出部42が先端側開口部32によって構成されている。
【0057】
そして、ヒーター50のハーネス52が、一対の導出部42の一方からアンカ18側へ導出されている。また、導出部42からアンカ18側へ導出されたハーネス52は、アンカ18と袋体ウェビング20との間において、連結ウェビング部34の幅方向一方側へ延出されている。
【0058】
これにより、第2の実施の形態においても、袋体ウェビング20が製織によって袋状に形成されると共に、折返し部36に対して袋体ウェビング20の基端側の位置においてハーネス52が袋体ウェビング20の外側へ導出される。このため、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、見栄えを損なわずに袋体ウェビング20にヒーター50を内蔵することができると共に、ハーネス52を袋体ウェビング20の外部へ良好に導出させることができる
【0059】
また、第2の実施の形態では、連結ウェビング部34が、袋体ウェビング20とは別体に構成されている。このため、袋体ウェビング20をアンカ18の連結孔18Aに挿入させて縫合部40を形成する第1の実施の形態と比べて、縫合部40を形成するときの作業性を向上することができる。すなわち、袋体ウェビング20は2層(袋状)のウェビングで構成されているため、第1の実施の形態では、2層の袋体ウェビング20の幅方向両端部を幅方向内側へ折り曲げつつ、2層の袋体ウェビング20をアンカ18の連結孔18Aに挿入させる必要がある。そして、袋体ウェビング20を折り返した状態で、袋体ウェビング20同士を縫合する。これに対して、第2の実施の形態では、連結ウェビング部34が1層(1枚)のウェビングで構成されているため、連結ウェビング部34をアンカ18の連結孔18Aに容易に挿入させることができると共に、容易に折り返すことができる。そして、折り返された連結ウェビング部34の間に袋体ウェビング20を配置して、連結ウェビング部34及び袋体ウェビング20を縫合することができる。つまり、第2の実施の形態では、2層(袋状)に構成された袋体ウェビング20を折返しつつ縫合する必要がなくなるため、連結ウェビング部34及び袋体ウェビング20を容易に縫合することができる。したがって、縫合部40を形成するときの作業性を向上することができる。
【0060】
また、第2の実施の形態では、連結ウェビング部34が、袋体ウェビング20とは別体の連結ウェビング部34によって構成されているため、既存のウェビングによって連結ウェビング部34を構成することができる。すなわち、既に強度が確保された既存のウェビングを用いて連結ウェビング部34を構成することができる。
【0061】
なお、第2の実施の形態では、縫合部40に対して袋体ウェビング20の基端側の位置にヒーター50のハーネス52が袋体ウェビング20の外側へ導出されている。これに代えて、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、袋体ウェビング20の製織時にスリット30を形成して、縫合部40に対して袋体ウェビング20の基端側にハーネス52を導出させる導出部42を形成してもよい。
【0062】
また、第2の実施の形態では、縫合部40が一箇所形成されており、縫合部40に対して袋体ウェビング20の幅方向外側に導出部42を形成されている。これに代えて、
図8に示されるように、縫合部40を袋体ウェビング20の幅方向に並ぶ一対の縫合部40で構成して、一対の縫合部40の間に導出部42を形成してもよい。
【0063】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、ショルダ側ウェビング部20Aの幅方向中間部が、2本の接結糸28によって接結されているが、接結糸28の個数は任意に設定することができる。例えば、接結糸28を1本に設定して、当該接結糸28をショルダ側ウェビング部20Aの幅方向中央部に配置してもよい。また、接結糸28を3本に設定して、当該接結糸28をショルダ側ウェビング部20Aの幅方向に等間隔毎に配置してもよい。
【0064】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、ラップ側ウェビング部20Bにヒーター50が内蔵されているが、ラップ側ウェビング部20Bに内蔵される部品はこれに限らない。例えば、車両Vの制御部60と電気的に接続されるセンサ等をラップ側ウェビング部20Bに内蔵してもよい。