【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様に従って、発光ポリマーを含む発光層、およびこの発光層上にあり、電子輸送材料を含む電子輸送層を有する有機発光デバイスが提供され、ここで電子輸送材料(Tg(ETM))および発光ポリマー(Tg(LEP))の℃単位で測定されたガラス転移温度は以下の不等式を満たし:
Tg(ETM)+Tg(LEP)>270
ここで電子輸送材料のガラス転移温度は、140℃を超える。
【0015】
140℃を超える電子輸送材料(「ホスト」としても既知)のガラス転移温度(Tg)は、この材料のより嵩高い性質の現れであるので、発光ポリマーのTgに近い温度にあっても発光ポリマーへのその拡散を低減する。故に電子輸送層(ETL)のホスト分子のサイズは、OLEDの熱安定性を決定するのに重要な役割を果たし得る。
【0016】
好ましくは、電子輸送材料のガラス転移温度は、155℃を超え、より好ましくは175℃を超える。
【0017】
好ましくは、電子輸送材料は、非ポリマー性分子ホスト、有利なことにはET1である。ET1およびET2分子ホスト(「小分子」ホストとしても既知)の化学構造を以下に示す:
【化1】
【0018】
ジルコニウムキノリノレートET1は、例えばZhurnal Neorganitcheskoi Khimii 1961,vol.6,p.1338−1341に記載される手順により、ET2は、例えばCS150747に記載される手順によって得ることができる。
【0019】
ET1ホストのより嵩高い性質はまたTgの差から証明される−ET2についての105℃と比較してET1については179℃。より大きな物理的寸法のために、より嵩高い小分子ホストは、発光ポリマーに拡散する可能性が少ないと考えられる。
【0020】
電子輸送層はさらに、電子供与材料を含んでいてもよい。有利なことには、電子供与材料は、非ポリマー性分子(「小分子」とも呼ばれる)ドーパント、好ましくはND1である。小分子ドーパントは、十分な電子が電子輸送層内に最適な電荷輸送のために生じることを確実にする高度に反応性の化合物である。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、発光ポリマーを含む発光層、および発光層上にあり、電子輸送材料を含む電子輸送層を有する有機発光デバイスが提供され、ここで電子輸送材料(Tg(ETM))および発光ポリマー(Tg(LEP))のガラス転移温度は、以下の不等式を満たし:
Tg(ETM)+Tg(LEP)>280
発光ポリマーのガラス転移温度は、180℃を超える。
【0022】
通常、非晶質ポリマーのガラス転移は、ポリマーの加熱時、硬質または固体状態から軟化した粘稠状態への可逆性転移である。この転移は、ポリマー構造において顕著な変化を伴わない、ポリマーの粘度における滑らかな変化を含む。Tgは、DSC(示差走査熱量測定)を用いて測定した。
【0023】
本明細書で与えられたTg値は、Perkin Elmer Pyris 1示差走査熱量計を用いて測定されるものである。本明細書において与えられるTg値は、半Cp補外法(比熱容量)である。
【0024】
Tg値を測定するために、サンプルは、アルミニウムパンに計量し、アルミニウム蓋で密閉し、測定は空のパンおよび蓋に対して行い、窒素パージガスを用いて加熱および冷却した。
【0025】
サンプルを、40.00℃/分の速度で30.00℃から300.00℃まで加熱し、1.0分保持し、300.00℃から30.00℃に40.00℃/分の速度で冷却し、次いでさらに1.0分保持した後、プロセスを2回以上繰り返した。
【0026】
Tg値は、第2の加熱後に与えられるものであり、第3の加熱からの値に対して検証した。
【0027】
180℃を超えるガラス転移温度を有し、約80℃〜120℃にてベークされた発光ポリマーは、その粘度変化を生じ得ない。結果として、発光層上に直接堆積されたいずれかの小分子、ホストまたはドーパント分子のいずれかは、ベーキング工程中に発光ポリマーに拡散することがなく、ベーキング工程後に測定される場合にPLの完全性およびOLEDの操作電圧が保持され得る。
【0028】
好ましくは、発光ポリマーは、200℃を超える、より好ましくは220℃を超える、なおより好ましくは240℃を超える、さらにより好ましくは260℃を超えるTgを有するように選択または適合される。
【0029】
発光ポリマーは、ホモポリマーまたは2つ以上の異なる繰り返しユニットを含むコポリマーであってもよい。好ましくは発光ポリマーはコポリマーである。
【0030】
発光ポリマーは、共役または非共役ポリマーであってもよい。例示的な非共役ポリマーは、ポリビニルカルバゾール(PVK)である。
【0031】
発光ポリマーは、好ましくは隣接繰り返しユニットと共役した繰り返しユニットを含む骨格を有する共役ポリマーである。
【0032】
発光ポリマーは、好ましくはアリーレン繰り返しユニットを含む。例示的なアリーレン繰り返しユニットとしては、フェニレン繰り返しユニットおよびフルオレン繰り返しユニットが挙げられる。
【0033】
例示的なフェニレン繰り返しユニットは、非置換であってもよく、または1つ以上の置換基で置換されてもよい1,4−連結されたフェニレン繰り返しユニットである。例示的な置換基としては、C
1−20アルキルが挙げられ、ここでC
1−20アルキルの1つ以上の非隣接C原子は、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール、好ましくは非置換フェニルまたは1つ以上のC
1−10アルキル基;O;S;置換N;C=O;または−COO−で置換されたフェニルで置き換えられてもよく;C
1−20アルキルの1つ以上のH原子は、Fで置き換えられてもよい。存在する場合、置換されたNは、ヒドロカルビル基、例えばC
1−10アルキル、非置換フェニルまたは1つ以上のC
1−10アルキル基で置換されたフェニルであってもよい。
【0034】
例示的なフルオレン繰り返しユニットは、式(I)を有する:
【化2】
【0035】
式中、各出現時において、R
8は、同一または異なって、置換基であり、ここで2つの基R
8は、環を形成するために連結されてもよく;R
7は、置換基であり;dは、0、1、2または3である。
【0036】
好ましくは各dは0である。
【0037】
少なくとも1つの基dが1、2または3である場合、各R
7は、場合によりアルキル、例えばC
1−20アルキルからなる群から選択され、ここで1つ以上の非隣接C原子は、O、S、C=Oおよび−COO−;場合により置換されたアリール;および場合により置換されたヘテロアリールで置き換えられてもよい。存在する場合、R
7は、好ましくは、C
1−20アルキルおよび置換または非置換アリール、例えば非置換フェニルまたは1つ以上のC
1−20アルキル基で置換されたフェニルから選択される。
【0038】
各R
8は、独立に、以下からなる群から選択されてもよい:
−アルキル、場合によりC
1−20アルキルであって、ここで1つ以上の非隣接C原子は、場合により置換されたアリールまたはヘテロアリール、O、S、C=Oまたは−COO−で置き換えられてもよく、1つ以上のH原子はFで置き換えられてもよいアルキル;および
−式−(Ar
7)
rの基であって、ここで各Ar
7は、独立に、非置換または置換アリールまたはヘテロアリール基であり、好ましくは非置換または置換フェニルであり、rは少なくとも1であり、場合により1、2または3である。1つ以上のAr
7基が置換される場合、その置換基またはそれぞれの置換基は、C
1−20アルキル(ここで1つ以上の非隣接C原子は、O、S、C=Oおよび−COO−で置き換えられてもよい)からなる群から選択される置換基R
1であってもよい。好ましくはR
1は、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシまたはアルコキシエーテル基である。アルコキシエーテル基は、式−O(CH
2O)n−R
2を有していてもよく、ここでR
2は、C
1−5アルキル基であり、nは1、2または3である。
【0039】
式(I)の1つ以上の繰り返しユニットの1つまたは両方の置換基R
8は、発光ポリマーの高いガラス転移温度、好ましくは180℃を超えるガラス転移温度を提供するように選択されてもよい。
【0040】
高いガラス転移温度ポリマーは、式(I)の繰り返しユニットを、場合により少なくとも10mol%、20mol%、30mol%、40mol%または50mol%の式(I)の繰り返しユニットで含み、ここで1つまたは両方の基R
8は、以下から選択される基である:
−以下の式から選択される基:
【化3】
【0041】
式中、*は、式(I)のフルオレンユニットに対する結合点を表し、式中R
1は、上記で記載される通りであり、好ましくはC
1−5アルキルまたはC
1−5アルコキシ基またはアルコキシエーテル基である、
および
−C
1−5アルキル。
【0042】
発光ポリマーは、アリールアミン繰り返しユニットを含んでいてもよい。好ましくは発光ポリマーの繰り返しユニットは、アリーレン繰り返しユニット、より好ましくはフルオレン繰り返しユニット、およびアリールアミン繰り返しユニットを含む。
【0043】
場合により、ポリマーの繰り返しユニットは、1つ以上のアリーレン繰り返しユニット、好ましくは1つ以上のフルオレン繰り返しユニット、および1つ以上のアリールアミン繰り返しユニットからなる。
【0044】
アリールアミン繰り返しユニットは、式(II)を有していてもよい:
【化4】
【0045】
式中、Ar
8、Ar
9およびAr
10は、各出現時において、独立に、置換または非置換アリールまたはヘテロアリールから選択され、gは0または整数、好ましくは0または1であり、R
13は置換基であり、c、dおよびeは、それぞれ独立に1、2または3、好ましくは1であり、式(II)の同じN原子に直接連結したAr
8、Ar
9、Ar
10およびR
13のいずれか2つは、直接結合または二価基によって連結されてもよい。
【0046】
gが少なくとも1である場合に各出現時において同一または異なっていてもよいR
13は、好ましくはアルキル、例えばC
1−20アルキル、Ar
11、または分岐もしくは線状鎖のAr
11基からなる群から選択され、ここでAr
11は、各出現時において、独立に場合により置換されたアリールまたはヘテロアリールである。例示的な基R
13はC
1−20アルキル、フェニルおよび1つ以上のC
1−20アルキル基で置換されたフェニルである。
【0047】
式(II)の好ましい繰り返しユニットは、下位式1〜3を有する:
【化5】
【0048】
好ましくは、Ar
8、Ar
9、Ar
10およびAr
11は、芳香族基であり、そのそれぞれは、非置換であってもよく、または1つ以上の置換基で置換されてもよい。
【0049】
場合により、式1のAr
8、Ar
10およびAr
11は、フェニルであり、そのそれぞれは、独立に、非置換であってもよく、または1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0050】
場合により、式1のAr
9は、非置換もしくは置換フェニル、または非置換もしくは置換多環式芳香族基、例えば国際公開第2005/049546号および国際公開第2013/108022号に記載されるものであり、これらの内容は参考として組み込まれる。
【0051】
場合により、式2および3のAr
8、Ar
9およびAr
11は、フェニルであり、そのそれぞれは、独立に、非置換であってもよく、または1つ以上の置換基で置換されてもよい。
【0052】
アリールアミン繰り返しユニットは、約0.5mol%から約50mol%まで、場合により40mol%まで、場合により30mol%まで、場合により10mol%の範囲においてモル量において提供されてもよい。
【0053】
Ar
8、Ar
9、Ar
10およびAr
11の好ましい置換基は、存在する場合、C
1−20ヒドロカルビル基、場合によりC
1−20アルキル基である、
好ましくは、電子輸送材料は、非ポリマー性分子ホスト、有利なことにはET1である。180℃を超えるTgを有する発光ポリマーとの嵩高い分子ホストの調整は、小分子ホスト材料の発光層への拡散を実質的に低減できる。
【0054】
電子輸送層は、電子供与材料をさらに含んでいてもよい。有利なことには、電子供与材料は、非ポリマー性(「小分子」とも称される)分子ドーパント、好ましくはND1である。
【0055】
本発明の第3の態様に従って、有機発光デバイスを形成する方法が提供され、この方法は、発光ポリマーを含む溶液を堆積させて発光層を形成する工程;および発光層上に電子輸送材料および電子供与材料を蒸着させることによって共堆積させて、混合電子輸送層を形成する工程を含む。
【0056】
発光層および電子輸送層をそれぞれ堆積させるために溶液堆積および蒸着方法の組み合わせを使用することにより、例えば発光ポリマーを架橋することにより、発光層を不溶性にする必要性を緩和する。
【0057】
好ましくは、発光ポリマーを含む溶液を堆積させることは、スピンコーティング、インクジェット印刷、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、ノズル印刷、ロール・ツー・ロール印刷、グラビア印刷およびフレキソ印刷によって行われる。
【0058】
本発明は、添付の図面を参照して、例示のためだけに記載する。