特許第6605206号(P6605206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605206離型塗料組成物およびこれを適用したコンクリート成形用枠体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605206
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】離型塗料組成物およびこれを適用したコンクリート成形用枠体
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/38 20060101AFI20191031BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20191031BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20191031BHJP
   E04G 9/00 20060101ALI20191031BHJP
   E04G 19/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B28B7/38
   C09D7/20
   C09D201/00
   E04G9/00 102
   E04G19/00 D
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-26912(P2015-26912)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-147469(P2016-147469A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243331
【氏名又は名称】本多産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502435454
【氏名又は名称】株式会社SNT
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】安 野 広 明
(72)【発明者】
【氏名】白 鳥 世 明
(72)【発明者】
【氏名】慶 奎 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀 田 芳 生
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−095361(JP,A)
【文献】 特開平06−071630(JP,A)
【文献】 特開平11−277517(JP,A)
【文献】 特開平11−268020(JP,A)
【文献】 特開昭62−079274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/34−7/38
C09D 7/20
C09D 201/00
E04G 9/00,19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート成形用枠体の表面に適用される離型塗料組成物であって、
(A)シランカップリング剤と、(B)前記のシランカップリング剤(A)を含有する離型性硬化膜を形成するための硬化成分と、(C)前記のシランカップリング剤(A)と前記の硬化成分(B)とを溶解させて液体組成物を形成するための溶媒とを含んでなり、 前記の溶媒(C)が少なくとも一種の120℃以上の沸点を有する溶媒(C1)を20〜99.8重量%含み、前記の液体組成物を前記のコンクリート成形用枠体の表面に塗布したのち、常温ないし非加熱下で乾燥することによって、前記の溶媒(C)が揮発することによって、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を常温ないし非加熱下で形成し得ることを特徴とする、コンクリートに対する離型性と反復使用耐久性の双方に優れた離型塗料組成物。
【請求項2】
前記の溶媒(C1)が、水溶性溶媒である、請求項1に記載の離型塗料組成物。
【請求項3】
前記の溶媒(C1)が、アルコール基またはケトン基のいずれかを有する溶媒である、請求項1または2に記載の離型塗料組成物。
【請求項4】
前記の溶媒(C)が、前記の溶媒(C1)と共に、(C2)炭化水素類、(C3)アルコール類、(C4)エステル類、(C5)ケトン類、(C6)セロソルブ類、(C7)グリコールエーテル類、(C8)エーテル類、(C9)塩化炭化水素類、(C10)含窒素類からなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の離型塗料組成物。
【請求項5】
前記の溶媒(C2)〜(C10)が、水溶性溶媒である、請求項4に記載の離型塗料組成物。
【請求項6】
前記の溶媒(C2)〜(C10)が、アルコール基またはケトン基のいずれかを有する溶媒である、請求項4または5に記載の離型塗料組成物。
【請求項7】
前記の平滑表面を有する離型性硬化塗膜は、表面の算術平均粗さRa(JIS B0601−2013)が5.0μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の離型塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の離型塗料組成物を水で希釈してなる、離型塗料組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の離型塗料組成物の乾燥物からなる離型性硬化塗膜を表面に有することを特徴とする、コンクリート成形用枠体。
【請求項10】
前記の離型性硬化塗膜が、請求項1〜のいずれか1項に記載の離型塗料組成物を、そのまま、あるいは水で希釈した後に、スプレー法、浸漬法、バーコート法、ロールコート法、はけ塗り法のいずれかの方法によって塗布した塗膜の乾燥物からなるものである、請求項に記載のコンクリート成形用枠体。
【請求項11】
枠体表面の算術平均粗さRa(JIS B0601−2013)が5.0μm以下である枠体表面に、請求項1〜のいずれか1項に記載の離型塗料組成物の乾燥物からなる離型性硬化塗膜を有する、請求項または10に記載のコンクリート成形用枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型塗料組成物、およびこの離型塗料組成物の乾燥物からなる塗膜を表面に有するコンクリート成形用の枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート成形体を得る際には、目的とするコンクリート成形体が得られるような型枠内に未硬化のコンクリートを充填し、この状態でコンクリートが適切な強度に達するまで乾燥および硬化させ、その後、この型枠を取り除くことが行われている。
【0003】
この型枠は、一回使用した後に廃棄されることもあるが、複数回にわたって再利用されるのが一般的である。特に、同一形状の規格化された成形体を大量に製造する場合には、数回〜数百回にわたって繰り返し再利用されるのが普通である。
【0004】
コンクリート成形用の型枠としては、木材やプラスチック、金属などが用いられている。特に、繰り返し再利用可能な型枠としては、強度や耐久性、コスト等の有用性から、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅等の金属材料を用いたものが広く用いられている。
【0005】
未硬化のコンクリートをこれらの型枠に充填する際には、所望の成形体を欠けやムラなく安定して成形するために、あるいはコンクリート硬化後に型枠を取り除く際の作業性や、型枠を再利用するときの利便性等を考慮して、硬化後のコンクリートの付着防止や、付着したコンクリートの除去ないし洗浄等を容易にするために、型枠の成形面の表面に鉱物油や鉱物油を主成分とする離型剤を塗布することが行われている。
【0006】
このような鉱物油等は、コストやコンクリート成形体の製造現場での塗布作業が容易である点で好ましいことから、従来から広く採用されている。しかし、このような鉱物油等は、離型効果の持続性が乏しいので、事実上、1回のコンクリート成形程度の耐久性しかないのが普通である。このようなことから、コンクリート成形を行う度毎に型枠表面に上記の鉱物油等を塗布することが行われている。
【0007】
このように、コンクリート成形を行う度毎に鉱物油等を塗布することは、作業効率やコストの点等で不利であることは言うまでもない。また、鉱物油等がコンクリート成形体の表面を汚染して着色やシミの原因になったり、コンクリートの硬化を阻害して硬化に長時間が必要になることがあって、用途によっては必ずしも満足できるものとは言いがたかった。
【0008】
また、近年、建設現場での作業性向上および工期の短縮のために、事前に工場で成形されたコンクリート部材を建設現場に運び込んでつなぎ合わせることが広く採用されるようになっている。この工法は、一般的にプレキャスト工法と呼ばれている。
【0009】
このようなプレキャスト工法では、それぞれのコンクリート成形体が、欠けや成形不良部分がなく、設計通りの寸法であることが特に重要となる。そして、近年、コンクリート成形体の表面の美観(例えば、表面に気泡や気泡痕がなく平滑であること、色ムラやシミがないこと等)についても、要求度が高まってきている。
【0010】
耐久性を向上させ複数回の使用を想定した離型剤としては、特開2003−236819号公報に記載されたものが提案されている。この離型剤は、特定のシランカップリング剤を含有するものであって、50〜150℃の温度に加熱して乾燥させることによって離型性被覆膜を形成するものと認められる。なお、そのいずれの実施例においても、離型剤の乾燥を100℃で10分間の加熱処理によって行っており、60−65℃の蒸気浴中で4時間の加熱によって加熱養生を行ったコンクリートについての効果が確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−236819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を、常温ないし非加熱下で形成し得る離型塗料組成物を提供することを目的とする。
【0013】
すなわち、本発明は、コンクリートに対する離型性と反復使用耐久性の双方に優れたものであって、離型性に優れ、かつ多数回の繰り返し使用が可能な耐久性に優れた、熱処理することなく、塗布面に固体皮膜を形成可能な離型塗料組成物および該組成物で表面処理した型枠を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によるコンクリートに対する離型性と反復使用耐久性の双方に優れた離型塗料組成物は、コンクリート成形用枠体の表面に適用される離型塗料組成物であって、
(A)シランカップリング剤と、(B)前記のシランカップリング剤(A)を含有する離型性硬化膜を形成するための硬化成分と、(C)前記のシランカップリング剤(A)と前記の硬化成分(B)とを溶解させて液体組成物を形成するための溶媒とを含んでなり、
前記の溶媒(C)が少なくとも一種の比較的高い沸点を有する溶媒(C)を含み、前記の液体組成物を前記のコンクリート成形用枠体の表面に塗布したのち、常温ないし非加熱下で乾燥することによって、前記の溶媒(C)がゆっくりと揮発することによって、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を常温ないし非加熱下で形成し得ること、を特徴とする。
【0015】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の溶媒(C)が水溶性溶媒であるもの、を包含する。
【0016】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の溶媒(C)が、アルコール基またはケトン基のいずれかを有する溶媒であるもの、を包含する。
【0017】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の溶媒(C)が、前記の溶媒(C)と共に、(C)炭化水素類、(C)アルコール類、(C)エステル類、(C)ケトン類、(C)セロソルブ類、(C)グリコールエーテル類、(C)エーテル類、(C)塩化炭化水素類、(C10)含窒素類からなる群から選ばれた少なくとも1種の溶媒を含むもの、を包含する。
【0018】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の溶媒(C)〜(C10)が、水溶性溶媒であるもの、を包含する。
【0019】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の溶媒(C)〜(C10)が、アルコール基またはケトン基のいずれかを有する溶媒であるもの、を包含する。
【0020】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の溶媒(C)が、100℃以上の沸点を有するものからなるもの、を包含する。
【0021】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記液体組成物の沸点が69℃以上のもの、を包含する。
【0022】
このような本発明による離型塗料組成物は、好ましくは、前記の平滑表面を有する離型性硬化塗膜は、表面の算術平均粗さRa(JIS B0601−2013)が5.0μm以下のものであるもの、を包含する。
【0023】
そして、本発明による離型塗料組成物は、前記の離型塗料組成物を水で希釈してなるもの、である。
【0024】
そして、本発明によるコンクリート成形用枠体は、前記の離型塗料組成物の乾燥物からなる塗膜を表面に有すること、を特徴とする。
【0025】
このような本発明によるコンクリート成形用枠体は、好ましくは、前記の塗膜が前記の離型塗料組成物を、そのまま、あるいは水で希釈した後にスプレー法、浸漬法、バーコート法、ロールコート法、はけ塗り法のいずれかの方法によって塗布した塗膜の乾燥物からなるもの、を包含する。
【0026】
このような本発明によるコンクリート成形用枠体は、好ましくは、枠体表面の算術平均粗さRa(JIS B0601−2013)が5.0μm以下である枠体表面に、前記の離型塗料組成物の乾燥物からなる塗膜を有するもの、を包含する。
【発明の効果】
【0027】
本発明による離型塗料組成物によれば、コンクリート成形用枠体の表面に、コンクリートに対する離型性と反復使用耐久性の双方に優れた平滑表面を有する離型性硬化塗膜を、常温ないし非加熱下で形成することができる。
【0028】
本発明においては、上記の通り、離型性硬化塗膜の形成に際して加熱を必須としない。このことから、(イ)離型性硬化塗膜の形成を、容易にかつ効率的に、低コストで行うことができる。一般に、コンクリート成形用枠体は、人力では移動や取り扱いが困難な程に大型で重量があるものである。このような大型で重量があるコンクリート成形用枠体を高温(例えば、100℃程度)に加熱すること、しかも所定の温度に所定時間、温度ムラなく加熱状態を維持することは、加熱設備や作業、コスト等の点で不利である。本発明では、離型性硬化塗膜の形成に際して加熱を必須としないので、上記のような加熱設備や、加熱作業(ならびに冷却作業)が一切不要である。このことから、加熱設備がない場所においても離型性硬化塗膜の形成ができる。したがって、離型性硬化塗膜の形成が、容易かつ効率的に低コストで、しかも安全に行うことができる。
【0029】
本発明による離型塗料組成物によれば、(ロ)離型性と反復使用耐久性の双方に優れた、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を、常温ないし非加熱下で得ることができる。離型性被覆膜の形成に高温での加熱を必須とする従来のシランカップリング剤系の離型剤では、もし高温加熱を行わない場合、離型性および反復使用耐久性が著しく低下することがあって、実用上の問題が懸念される。一方、高温での加熱(ならびに冷却)が不要な本発明によれば、硬化塗膜の形成途中ないし形成後の各段階において、塗膜形成対象であるコンクリート成形用枠体ならびに硬化塗膜の温度変化による物理的ないし化学的な特性変化(ないし劣化)が防止されている。このことは、形成された硬化塗膜の機械的・物理的ないし化学的な諸特性の劣化防止(例えば、クラック耐性の向上)に大きく寄与しているものと考えられる。事実、後記の実施例において確認されているように、常温ないし非加熱下で形成された本発明による離型性硬化塗膜は、離型性および反復使用耐久性に優れ、平滑性が良好なものである。このことから、繰り返してコンクリートの成形に付された後であっても、コンクリートの付着による成形異常や欠損等が効果的に抑制された、表面平滑性が良好な美観に優れたコンクリート製品を提供することができる。ここで、本発明において、「表面平滑性が良好」とは、主として、例えば、JIS B0601−2013による算術平均粗さRaが小さいこと(例えば、当該Raの値が5.0μm以下、特に、2.0μm以下であること)を言うものである。
【0030】
そして、(ハ)本発明による離型塗料組成物から形成された離型性硬化塗膜は、上述のように、反復使用耐久性が優れているので、コンクリート成形用枠体がコンクリート成形に付された後においても、枠体表面に強固に保持されている。このことから、コンクリート成形用枠体が、長期間にわたって、酸素や水(ならびに腐食性成分)の存在下に放置されたとしても錆びの発生および進行が効果的に抑制されている。従って、本発明による離型塗料組成物は、コンクリート成形の際の離型性硬化塗膜としての機能だけでなく、同時にコンクリート成形用枠体の腐蝕防止塗膜としての機能をも具備するものである。従来、通常、コンクリート成形後の枠体は、付着した離型剤やコンクリートを除去した後、防錆剤を施して保管されていたが、本発明では、そのような付着した離型剤やコンクリートの除去を必須とせずに、かつ別途防錆剤を施すことなく保管することが可能である。
【0031】
また、(ニ)従来、保管後の枠体を再度コンクリートの成形に用いる時は、防錆剤を除去した後に離型性膜の形成を再度行う必要があったが、本発明によれば、保管後に、そのまま、再びコンクリート成形に用いることができる。そして、従来のように、離型性被覆膜の形成に加熱が必須である場合には、枠体を加熱設備まで搬送することが必要になる場合があったが、本発明では加熱設備を用いないので搬送することなく保管場所において離型性硬化塗膜の形成が可能である。
【0032】
このような本発明による離型塗料組成物およびコンクリート成形用枠体によれば、コンクリート製品を製造する際に従来必要とされていた、作業工程、作業時間、設備、離型剤や防錆剤等の種類ならびに使用量、コスト等を大幅に低減させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の離型塗料組成物によって形成された離型性硬化塗膜(実施例11−1)の表面構造を示すレーザー顕微鏡写真。
図2】本発明の離型塗料組成物によって形成された離型性硬化塗膜(実施例11−2)の表面構造を示すレーザー顕微鏡写真。
図3】本発明の離型塗料組成物によって形成された離型性硬化塗膜(実施例11−3)の表面構造を示すレーザー顕微鏡写真。
図4】本発明の離型塗料組成物によって形成された離型性硬化塗膜(実施例11−4)の表面構造を示すレーザー顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0034】
下記に示す実施形態は例示であって、従って、発明の範囲はこれら具体的に開示された範囲内に限定されない。
【0035】
<離型塗料組成物>
本発明による離型塗料組成物は、コンクリートに対する離型性と反復使用耐久性の双方に優れた離型塗料組成物であって、具体的には、
コンクリート成形用枠体の表面に適用される離型塗料組成物であって、
(A)シランカップリング剤と、(B)前記のシランカップリング剤(A)を含有する離型性硬化膜を形成するための硬化成分と、(C)前記のシランカップリング剤(A)と前記の硬化成分(B)とを溶解させて液体組成物を形成するための溶媒とを含んでなり、
前記の溶媒(C)が少なくとも一種の比較的高い沸点を有する溶媒(C)を含み、前記の液体組成物を前記のコンクリート成形用枠体の表面に塗布したのち、常温ないし非加熱下で乾燥することによって、前記の溶媒(C)がゆっくりと揮発することによって、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を常温ないし非加熱下で形成し得ることを、特徴の一つとしている。
【0036】
このような本発明による離型塗料組成物は、上記の通り、必須成分として、
(A)シランカップリング剤と、
(B)前記のシランカップリング剤(A)を含有する離型性硬化膜を形成するための硬化成分と、
(C)前記のシランカップリング剤(A)と前記の硬化成分(B)とを溶解させて液体組成物を形成するための溶媒と、を含んでなる。
【0037】
なお、本発明による離型塗料組成物は、上記の(A)〜(C)の必須成分に加えて、必要に応じて、他の補助成分ないし材料を含むことができる。従って、本発明は、上記の必須成分(A)〜(C)および他の補助成分ないし材料を含んでなる離型塗料組成物を、発明の態様の一つとして包含するものである。
【0038】
この離型塗料組成物は、常温ないし非加熱下で乾燥することによって、前記の溶媒(C)がゆっくりと揮発することによって、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を常温ないし非加熱下で形成し得るものである。コンクリートに対する離型性および反復使用耐久性が優れた離型性硬化塗膜を形成させるためには、塗布前の離型塗料組成物(液体組成物)の沸点が、69℃以上のものが好ましく、特に83〜170℃、更に好ましくは130〜170℃、の範囲内であるもの、が好ましい。なお、本明細書において、沸点とは、特に明示がない場合、圧力1atmのもとでの沸点を意味する。
【0039】
このような沸点を有する離型塗料組成物は、この離型塗料組成物を構成する各成分(即ち、前記の成分(A)〜(C)や、必要に応じて用いられる他の成分)等の種類の選定、および各成分の配合比率の調整、これらの組み合わせの最適化等によって、得ることが可能である。
【0040】
<< シランカップリング剤(A) >>
本発明における第一の必須成分は、シランカップリング剤である。
【0041】
シランカップリング剤自体は公知であって、本発明では、例えばそのようなシランカップリング剤の中から、本発明の効果および目的の達成に特に適したものを適宜選択して用いることができる。
【0042】
本発明の好ましいシランカップリング剤としては、例えば、(イ)アルキル系のシランカップリング剤、(ロ)メタクリル系のシランカップリング剤、(ハ)スチリル系のシランカップリング剤、(ニ)ビニル系のシランカップリング剤、(ホ)アミノ系のシランカップリング剤、(ヘ)アクリル系のシランカップリング剤等を挙げることができる。
【0043】
このうち、疎水化処理の観点からは、(イ)アルキル系のシランカップリング剤および(ロ)メタクリル系のシランカップリング剤が特に好ましく、膜の平滑性の観点からは、(ロ)メタクリル系のシランカップリング剤が特に好ましい。
【0044】
なお、本発明においては、二種またはそれ以上の異なる種類のシランカップリング剤を併用することができる。
【0045】
本発明による離型塗料組成物におけるシランカップリング剤の存在量は、離型塗料組成物を塗布する段階において、0.1〜20.0重量%、好ましくは0.5〜10.0重量%、特に好ましくは0.8〜8.0重量%、である(離型塗料組成物の全体を100重量%とする)。シランカップリング剤の存在量が、上記範囲内であることによって、例えば疎水性および平滑性が良好な膜を形成可能な離型塗料組成物を得ることができる。
【0046】
<< 硬化成分(B) >>
本発明における第二の必須成分は、前記のシランカップリング剤(A)を含有する離型性硬化膜を形成するための硬化成分である。
【0047】
このような硬化成分としては、例えば、(イ)シリケート系のもの、(ロ)チタネート系のもの、(ハ)アルミネート系のもの、(ニ)ジルコネート系のもの、(ホ)ジンケート系のもの等を挙げることができる。
【0048】
このうち、膜の平滑性の観点からは、(イ)シリケート系のものが特に好ましく、膜の硬度の観点からは、(ロ)チタネート系のものが特に好ましい。
【0049】
なお、本発明においては、二種またはそれ以上の異なる種類の上記化合物を併用することができる。
【0050】
本発明による離型塗料組成物における、硬化成分(B)の存在量は、離型塗料組成物を塗布する段階において、0.1〜60.0重量%、好ましくは3.0〜40.0重量%、特に好ましくは5.0〜30.0重量%、である(離型塗料組成物の全体を100重量%とする)。硬化成分(B)の存在量が、上記範囲内であることによって、例えば平滑性および硬度が良好な膜を形成可能な離型塗料組成物を得ることができる。
【0051】
<< 溶媒(C) >>
本発明における溶媒は、前記のシランカップリング剤(A)と前記の硬化成分(B)とを溶解させて液体組成物を形成するための溶媒(C)であり、この溶媒(C)は、少なくとも一種の比較的高い沸点を有する溶媒(C)を含むものである。
【0052】
溶媒(C)の存在量は、20.0〜99.8重量%、好ましくは40.0〜85.0重量%、特に好ましくは50.0〜80.0重量%、である(離型塗料組成物の全体を100重量%とする)。溶媒(C)の存在量が、上記範囲内であることによって、例えば平滑性、硬度ならびに付着強度が優れた膜を形成可能な離型塗料組成物を得ることができる。
【0053】
本発明による離型塗料組成物は、コンクリート成形用枠体の表面に塗布したのち、常温ないし非加熱下で乾燥することによって、前記の溶媒(C)がゆっくりと揮発することによって、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を常温ないし非加熱下で形成し得るものであって、コンクリートに対する離型性と反復使用耐久性の双方に優れた離型塗料組成物を形成できるものである。
【0054】
このような点から、このような離型塗料組成物を提供するために、溶媒(C)は、揮発速度が、酢酸ブチルの揮発速度1とした相対揮発速度で表した場合で、0.001〜5.0、特に0.005〜2.5、とりわけ0.001〜2.0、であるものが好ましい。
【0055】
本発明では、前記の溶媒(C)の選定、とりわけ溶媒(C)の選定、によれば、離型塗料組成物(塗布前)の沸点を前述の温度範囲内に調整ないし維持することが容易である。このことから、溶媒(C)および溶媒(C)は、離型塗料組成物の沸点を考慮して定めることができる。
【0056】
溶媒(C)に含まれる溶媒(C)としては、水溶性溶媒が好ましい。ここで、水溶性溶媒とは、水と可溶である溶媒のことを言う。
【0057】
そして、この溶媒(C)に含まれる溶媒(C)としては、アルコール基またはケトン基のいずれかを有する溶媒が好ましい。この溶媒(C)は、1種類のみからなるものであっても、複数種類の溶媒(C)の混合物であってもよい。
【0058】
本発明において好適な溶媒(C)としては、沸点が100℃以上のもの、特に沸点が120〜250℃、更に好ましくは135〜190℃、の範囲内にあるもの、を挙げることができる。
【0059】
そのような溶媒(C)の特に好ましい具体例としては、ダイアセトンアルコール、2‐ブタノール、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、3‐メトキシ‐3‐メチル‐1‐ブタノール(商品名:ソルフィット)、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルイソブチルケトン、キシレン、トルエン、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブ、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルカルビトール、パークロロエチレン等を挙げることができる。
【0060】
溶媒(C)の存在量は、成分(C)の全量が成分(C)で占められている場合(即ち、成分(C)が溶媒(C)のみからなる場合)、前記と同様、20.0〜99.8重量%、好ましくは40.0〜85.0重量%、特に好ましくは50.0〜80.0重量%、である(離型塗料組成物の全体を100重量%とする)。溶媒(C)の存在量が、上記範囲内であることによって、例えば平滑性、硬度ならびに付着強度が優れた膜を形成可能な離型塗料組成物を得ることができる。
【0061】
また、本発明における溶媒(C)は、前記の溶媒(C)と共に、必要に応じて、溶媒(C)以外の他の溶媒を含むことができる。
【0062】
このような他の溶媒によれば、常温ないし非加熱下の条件における溶媒の揮発ならびに離型塗料組成物の乾燥を制御しやすくなって、離型性と反復使用耐久性の双方に優れた離型性硬化塗膜の形成を、より確実に安定的に行うことができるようになる。
【0063】
溶媒(C)以外の他の溶媒としては、水溶性溶媒が好ましい。ここで、水溶性溶媒とは、水と可溶である溶媒のことを言う。
【0064】
そして、溶媒(C)以外の他の溶媒としては、アルコール基またはケトン基のいずれかを有する溶媒が好ましい。
【0065】
この溶媒(C)以外の他の溶媒は、1種類のみからなるものであっても、複数種の溶媒を含む物であってもよい。
【0066】
溶媒(C)以外の他の溶媒としては、好ましくは、例えば、
(C)炭化水素類(好ましくは、ヘキサン等)、
(C)アルコール類(好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール等)、
(C)エステル類、
(C)ケトン類(好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン等)、
(C)セロソルブ類、
(C)グリコールエーテル類、
(C)エーテル類(好ましくは、THF(テトラヒドロフラン)等)、
(C)塩化炭化水素類(好ましくは、ジクロロメタン、トリクロロエチレン等)、
(C10)含窒素類(好ましくは、アセトニトリル、エチルアミン、アンモニア水等)、
を挙げることができる。
【0067】
溶媒(C)と他の溶媒との存在割合は、好ましくは、溶媒(C)については0.01〜100重量%、他の溶媒については0〜99.99重量%であり、特に好ましくは、溶媒(C)については1.0〜100重量%、他の溶媒については0〜99重量%である(溶媒(C)と他の溶媒との合計を100重量%とする)。
【0068】
<< その他の成分(任意成分) >>
本発明による離型塗料組成物においては、必要に応じて、上記以外の成分を含むことができる。そのような必要に応じて含むことができる成分としては、例えばポリエチレングリコール、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVB(ポリビニルブチラール)、PVA(ポリビニルアルコール)、クエン酸、塩酸、酢酸等を挙げることができる。
【0069】
そして、本発明による離型塗料組成物は、水を含むことができる。本発明による離型塗料組成物が水を含む場合、水の存在量は、離型塗料組成物を塗布する段階において、1.0〜99.0重量%、好ましくは10.0〜95.0重量%、特に好ましくは20.0〜90.0重量%、である(離型塗料組成物の全体を100重量%とする)。
【0070】
<< 離型塗料組成物 >>
本発明による離型塗料組成物は、前記の液体組成物を前記のコンクリート成形用枠体の表面に塗布したのち、常温ないし非加熱下で乾燥することによって、前記の溶媒(C)がゆっくりと揮発することによって、平滑表面を有する離型性硬化塗膜を常温ないし非加熱下で形成し得るものである。
【0071】
ここで、「常温」とは、−10℃以上、60℃未満の温度をいう。そして、「平滑表面」とは、表面のRa(JIS B0601−2013)が5.0μm以下であることをいう。
【0072】
離型塗料組成物の表面は、出来るだけ平滑である方がコンクリートの付着が少ないことから、表面のRaは、5.0μm以下、特に0.01〜4.0μm、とりわけ0.01〜3.0μm、が好ましい。この離型塗料組成物の表面Raは、コンクリートの成形回数を重ねるうちに次第に大きくなる傾向があるので、形成直後の離型性硬化塗膜の表面Raが小さい方が、離型性と反復使用耐久性が優れている場合が多い。
【0073】
<< コンクリート成形用枠体 >>
本発明によるコンクリート成形用枠体は、前記の離型塗料組成物の乾燥物からなる塗膜を表面に有すること、を特徴とする。
【0074】
ここで、コンクリート成形用枠体とは、生コンクリートを一定の形状で所定の時間保持して、硬化させる型枠をいうものである。その形状および大きさ等は、目的とするコンクリート成形体に応じて定めることができる。また、コンクリート成形用枠体の材料も適宜定めることができる。
【0075】
本発明では、従来のコンクリート成形用枠体と同様に、各種の金属材料ならびに各種の樹脂材料からなるコンクリート成形用枠体が対象になる。金属材料、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等からなるコンクリート成形用枠体は、本発明の好ましい具体例に含まれる。
【0076】
塗布前の枠体表面のRa(JIS B0601−2013)は、5.0μm以下、特に0.01〜4.0μm、とりわけ0.01〜3.0μm、が好ましい。
【0077】
上記のコンクリート成形用枠体に、前記の本発明による離型塗料組成物を塗布する方法は、適宜定めることができる。本発明では、前記の離型塗料組成物を、そのまま、あるいは水で希釈した後に、スプレー法、浸漬法、バーコート法、ロールコート法、はけ塗り法のいずれかの方法、およびこれらの組み合わせた方法によって塗布することが好ましい。
【0078】
本発明による離型塗料組成物の厚さは、乾燥後のコンクリートが投入可能な状態において、好ましくは0.01〜20.0μm、特に好ましくは0.01〜15.0μm、である。
【0079】
乾燥後の離型性硬化塗膜の厚さは、コンクリート成形用枠体の全面にわたって均一である必要はなく、部分的に異なることができる。例えば、コンクリート成形に際して、コンクリートとの接触機会や接触圧力が高い部分は他の部分より厚い離型性硬化塗膜を形成することができるし、また、コンクリートと接触機会が実質的に無い部分で単に防錆性のみが求められる部分には、離型性硬化塗膜の厚さを薄くすることができる。離型塗料組成物の塗布および離型性硬化塗膜の形成は、コンクリート成形用枠体の全表面にわたって行う必要はなく、コンクリートが接する(あるいは接する可能性が考えられる)部分ないし領域について行うことができる。
【0080】
水で希釈する場合、水の添加量は任意であって、例えば、具体的に採用される塗布方法、塗布装置ないし器具、塗布性、乾燥速度、液剤安定性、膜強度等を考慮して適宜定めることができる。
【0081】
また、本発明による離型塗料組成物を長期保存した際に、一部溶媒の揮発等によって粘度上昇や塗布性の低下が仮に発生したとしても、水で希釈することによって粘度の回復および塗布性の改善等を図ることができる。
【0082】
<離型塗料組成物の乾燥>
本発明による離型塗料組成物を乾燥させる温度は、常温(−10℃以上、60℃未満の温度)、好ましくは15〜50℃、特に好ましくは、15〜40℃、である。60℃以上の温度に外部から加熱することは、単にエネルギー的に損失になるばかりでなく、クラックの発生を招いて、塗膜の耐久性等を低下させることがあることから好ましくない。周囲温度より低い温度に積極的に冷却することによる有用性は、特に見当たらない。
【0083】
離型塗料組成物を乾燥させる温度は、上述の常温範囲内の特定温度に常に一定に保つ必要はなく、常温の範囲内で変動することができる。なお、一時的に、−10℃より低い温度になってもよい。また、本発明の目的・効果が認められるならば、60℃より高い温度条件で乾燥の一部が進行してもよい。
【0084】
上記の離型塗料組成物を乾燥する際の温度条件は、例えば、工場などの屋内や、コンクリートの成形現場などの屋外において、外部から積極的に加熱あるいは冷却することなく、既に充足されているのが普通である。
【0085】
本発明による離型塗料組成物は、常温雰囲気に放置することで硬化塗膜を形成可能なので、容易かつ効率的に低コストで形成できるものである。なお、常温の範囲内であれば、例えば乾燥の促進ないし効率向上などのために加熱を行うことができる。
【0086】
乾燥後の離型性硬化塗膜は、溶媒(C)ないしその成分を、通常、0.001〜90.0重量%、好ましくは0.001〜10.0重量%、含むことができる。
【実施例】
【0087】
<実施例1>
シランカップリング剤と金属アルコキシド(チタニウムブトキシド)を重量比で1:4に混合して得た液体をシランカップリング溶液(X)とする。
【0088】
シランカップリング溶液(X)に対して4.5倍の重量の「溶媒」(ヘキサン(沸点69℃)とダイアセトンアルコール(沸点168℃)を重量比で2:1に混合)を加え、溶液(Y)とする。
【0089】
溶液(Y)の重量の14%の重量の蒸留水を加え、溶液(Z)とする。
【0090】
溶液(Z)に、その重量の0.02%の重量の塩酸を反応触媒として加え得た液をコーティング液1とする。沸点は69〜168℃の範囲である。
【0091】
このコーティング液1を、3×3cm(表面Ra:2.0μm)の鋼板上にスプレー塗布し、常温(25℃)にて24時間放置することにより乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0092】
乾燥後の硬化塗膜の厚さは4.0μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は1.0μmであった。
【0093】
<実施例2>
実施例1と同様の手順で「溶媒」を2−ブタノール(沸点100℃)とダイアセトンアルコールを重量比で2:1に混合した液に置き換えて得た液をコーティング液2とする。沸点は100〜168℃の範囲である。
【0094】
このコーティング液2を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0095】
硬化塗膜の厚さは5.0μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.0μmであった。
【0096】
<実施例3>
実施例1と同様の手順で「溶媒」を酢酸ブチル(沸点126℃)とダイアセトンアルコールを重量比で2:1に混合した液に置き換えて得た液をコーティング液3とする。沸点は126〜168℃の範囲である。
【0097】
このコーティング液3を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0098】
硬化塗膜の厚さは5.3μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.5μmであった。
【0099】
<実施例4>
実施例1と同様の手順で「溶媒」をダイアセトンアルコールに置き換えて得た液をコーティング液4とする。
【0100】
このコーティング液4を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0101】
硬化塗膜の厚さは4.8μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.2μmであった。
【0102】
<実施例5>
実施例1と同様の手順で「溶媒」をエチルセロソルブ(沸点136℃)に置き換えて得た液をコーティング液5とする。
【0103】
このコーティング液5を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0104】
硬化塗膜の厚さは5.1μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.3μmであった。
【0105】
<実施例6>
実施例1と同様の手順で「溶媒」を3‐メトキシ‐3‐メチル‐1‐ブタノール(商品名:ソルフィット)(沸点174℃)に置き換えて得た液をコーティング液6とする。
【0106】
このコーティング液6を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0107】
硬化塗膜の厚さは5.8μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.7μmであった。
【0108】
<実施例7>
実施例1と同様の手順で「溶媒」をN,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)に置き換えて得た液をコーティング液7とする。
【0109】
このコーティング液7を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0110】
硬化塗膜の厚さは5.5μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.4μmであった。
【0111】
<比較例1>
市販の離型剤パネハクリ(コンドーテック製)を用い、3×3cmの鋼板(表面Ra:1.5μm)上にキャストし、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0112】
塗布膜の厚さは100μmであった。なお、塗布膜は液膜であることから、表面Raは測定不能であった。
【0113】
<比較例2>
市販の離型剤ノックスコート(株式会社ノックス製)を用いて3×3cmの鋼板(表面Ra:1.5μm)上にはけ塗りし、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0114】
硬化塗膜の厚さは200μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は0.4μmであった。
【0115】
<比較例3>
実施例1と同様の手順で「溶媒」をエタノール(沸点78℃)に置き換えて得た液をコーティング液8とする。
【0116】
このコーティング液8を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0117】
硬化塗膜の厚さは5.0μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は2.0μmであった。
【0118】
<比較例4>
実施例1と同様の手順で「溶媒」をテトラヒドロフラン(沸点66℃)に置き換えて得た液をコーティング液9とする。
【0119】
このコーティング液9を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0120】
硬化塗膜の厚さは20.0μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は5.0μmであった。
【0121】
<比較例5>
実施例1と同様の手順で「溶媒」をジクロロメタン(沸点40℃)に置き換えて得た液をコーティング液10とする。
【0122】
このコーティング液10を、実施例1と同様に、鋼板上にスプレー塗布、乾燥させて、コンクリート離型テストサンプルを得た。
【0123】
硬化塗膜の厚さは30.0μmであり、その表面のRa(JIS B0601−2013)は6.0μmであった。
【0124】
<コンクリート離型テスト>
コンクリート離型テスト用型枠「ヒットワン」(ダイヤリフォーム株式会社製)に、上記の実施例1〜7および比較例1〜5で得られた各サンプルを、静置し、生コンクリートを流し入れ24時間で硬化させた。
【0125】
硬化させたコンクリートからコンクリート離型テストサンプルを取り出し、サンプル表面へのコンクリート付着の様子とコンクリートの外観を観察した。
【0126】
その結果、沸点が100℃以下の溶媒を用いた比較例3、4、5においては良好な成膜が出来なかったためコンクリート離型性は不十分だった。
【0127】
沸点が100℃以上の溶媒を用いた実施例1、2、3、4、5、6、7において良好な成膜性を示し、コンクリート離型性を得られた。また、これらは、いずれも繰り返し使用も可能で、特に実施例2、3、4においては少なくとも6回の連続使用が可能だった。
【0128】
市販離型剤パネハクリを用いた比較例1は、鋼板表面がまだらになり、鋼板と接したコンクリート表面は泡のような穴があり、外観が悪くなった。繰り返し使用でコンクリートの付着は顕著だった。
【0129】
市販離型剤ノックスコートを用いた比較例2は鋼板表面からコーティングした膜が一部剥がれた。膜の残った部分は繰り返し使用は可能だったが、膜の剥がれた部分にはコンクリートが付着した。
【0130】
以上の結果を、まとめて下記表に示す。
【表1】
【0131】
表1の「防錆性」「成膜性」「離型性」の評価において、
Aは、目視で瑕疵が確認出来ないこと、
Bは、目視で80%以上の面積において瑕疵が確認出来ないこと、
Cは、目視で50%以上の面積において瑕疵が確認出来ないこと、
Dは、目視で20%以上の面積において瑕疵が確認出来ないこと、を示す。
【0132】
表1の「繰り返し使用」の評価において、
Aは、コンクリート離型テストで6回以上繰り返し使用可能なこと、
Bは、コンクリート離型テストで4回以上繰り返し使用可能なこと、
Cは、コンクリート離型テストで2回以上繰り返し使用可能なこと、
Dは、1回のコンクリート離型テストでコンクリートが付着すること、を示す。
【0133】
<実施例8および比較例6>
実施例2と同様にして得られたサンプル(実施例8)と、3×3cmの鋼板(比較例6)との両者について、下記のようにして塩水防錆試験を行った。
【0134】
塩水濃度は、海水の平均濃度を参考に、3.5%とした。2日間、この塩水に浸漬したところ、比較例6では錆が発生したものの、実施例8ではそのようなことがなく、錆の発生は目視ではほとんど観測されなかった。
【0135】
このことから、本発明による離型塗料組成物は、優れた防錆性を有していることが確認された。
【0136】
<実施例9および比較例7〜8>
実施例2と同様にしてコンクリート離型テストサンプル(実施例9)を得た。
【0137】
一方、実施例9と同じコーティング液2を用い、同様に3×3cmの鋼板上にスプレー塗布した。塗布後、80℃の温度に加熱して、その温度で24時間熱処理したコンクリート離型テストサンプル(比較例7)を得た。
【0138】
また、実施例9と同じコーティング液2を用い、同様に3×3cmの鋼板上にスプレー塗布した。塗布後、100℃の温度に加熱して、その温度で24時間熱処理したコンクリート離型テストサンプル(比較例8)を得た。
【0139】
上記の実施例9、比較例7、比較例8について、前記の<コンクリート離型テスト>を2回実施した。その結果、実施例9では、コンクリートの付着が見られなかったが、比較例7および比較例8では、いずれもコンクリートの付着が確認された。
【0140】
<実施例10および比較例9〜10>
実施例2と同様にしてコンクリート離型テストサンプル(実施例10)を得た。
【0141】
そして、前記の<コンクリート離型テスト>を実施したところ、このサンプルの表面にコンクリートの付着は見られなかった。
【0142】
一方、比較サンプルとして、表面塗膜を有さない3×3cmの鋼板(表面のRa(JIS B0601−2013)は5μm)を用いた(比較例9)。
【0143】
また、実施例10のサンプルの代わりに、3×3cmの鋼板に撥水剤((株)SNT社製、「ETW−T」(商品名))を塗布してサンプル(比較例10)を得た(表面のRa(JIS B0601−2013)は11.3μm)。
【0144】
比較例9と比較例10について、実施例10と同様に、コンクリート離型テストを実施したところ、比較例9および比較例10の両者とも、表面にコンクリートの付着が確認された。
【0145】
<実施例11>
<<実施例11−1>>
実施例2と同様にしてコンクリート離型テストサンプル(実施例11−1)を得た。
【0146】
そして、前記の<コンクリート離型テスト>を実施した。
【0147】
この操作を6回繰り返して行い、各回終了後のサンプル表面へのコンクリート付着の様子を確認した。
【0148】
6回目終了後のサンプルにおいても、コンクリートの付着面積は、全体の2%以下であった。
【0149】
1回目のコンクリート離型テストに付す前のサンプル(テスト前のサンプル)と、5回目のコンクリート離型テストを行った後のサンプル(5回成形後のサンプル)のそれぞれについて、レーザー顕微鏡によって表面構造観察と解析を行い、そして表面Raを測定した。
【0150】
結果は、表2および図1に示される通りである。
【0151】
<<実施例11−2〜実施例11−4>>
3×3cmの鋼板を三枚用意し、それぞれに対して実施例11−1と同様にしてコンクリート離型テストサンプル(実施例11−2〜実施例11−4)を得た。
【0152】
そして、実施例11−1と同様に、コンクリート離型テストおよび評価を行った。
【0153】
その結果、6回目終了後のサンプルにおいても、コンクリートの付着面積は、全体の2%以下であった。
【0154】
結果は、表2および図1図4に示される通りである。
【表2】
【0155】
<実施例12>
実施例2のコーティング液2をスプレー塗布する代わりにディップコーティングした以外は、実施例11−1〜実施例11−4と同様にして、コンクリート離型テストサンプル(実施例12−1〜実施例12−4)を得た。そして、実施例11−1と同様に、コンクリート離型テストおよび評価を行った。
【0156】
その結果、6回目終了後のいずれのサンプルにおいても、コンクリートの付着面積は、全体の2%以下であった。
図1
図2
図3
図4