特許第6605207号(P6605207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 神町電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6605207-不活性ガス循環式ブラスト装置 図000002
  • 特許6605207-不活性ガス循環式ブラスト装置 図000003
  • 特許6605207-不活性ガス循環式ブラスト装置 図000004
  • 特許6605207-不活性ガス循環式ブラスト装置 図000005
  • 特許6605207-不活性ガス循環式ブラスト装置 図000006
  • 特許6605207-不活性ガス循環式ブラスト装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605207
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】不活性ガス循環式ブラスト装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 9/00 20060101AFI20191031BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   B24C9/00 L
   B24C11/00 Z
   B24C9/00 E
   B24C9/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-36531(P2015-36531)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-155208(P2016-155208A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年10月31日に、TRAFAM(技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構)東北大学仙台分室に納品
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594092669
【氏名又は名称】神町電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】小 関 陽 一
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−176565(JP,A)
【文献】 特開2013−202737(JP,A)
【文献】 特開昭63−022272(JP,A)
【文献】 特開2001−138242(JP,A)
【文献】 米国特許第06364748(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第103465172(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 9/00
B24C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工品を収容するキャビネットと、
前記キャビネット内に収容した加工品に対してショット材を気流によって投射する投射部と、
前記ショット材を付勢する気流を生じさせる送風機と、
キャビネット内の気体を吸引して、当該気体中の粉塵を収集する集塵装置とから成るブラスト装置であって、
前記キャビネット内には不活性ガスが充填されており、当該不活性ガスは前記送風機、キャビネット、及び集塵装置を含む装置内全体を循環し、
前記投射されたショット材によって解砕された加工品の解砕物は、少なくともその一部がショット材として利用され、
前記キャビネット内で生じた加工品の解砕物を、前記送風機から吐出される気体内に投入する混合器を備えており、
前記ショット材として利用される粉砕物は、前記送風機から出力された気体と混合器で混合され、当該気体によって、ショット材として投射部に移送される事を特徴とする不活性ガス循環式ブラスト装置。
【請求項2】
前記キャビネットの下方には、キャビネット内に蓄積した加工品の解砕物を収容する為のメディア収容タンクが設けられている、請求項1に記載の不活性ガス循環式ブラスト装置。
【請求項3】
前記キャビネット内で生じた加工品の解砕物の出口側、または前記メディア収容タンクにおける前記解砕物の入口側の少なくとも何れかには、回転することで解砕物の流量を制御する弁装置であるロータリーバルブが設けられている、請求項1又は2に記載の不活性ガス循環式ブラスト装置。
【請求項4】
前記キャビネット内で生じた加工品の解砕物を、大きさ、形状、及び重量の少なくとも何れかで分級する分級部と、分級した解砕物を収容する複数のメディア収容タンクを備えており、
該複数のメディア収容タンクは、並列又は直列に並べて設置されている、請求項1〜3の何れかに記載の不活性ガス循環式ブラスト装置。
【請求項5】
前記送風機から吐出される気体は、前記混合器を通って前記投射部に至る第一系統と、前記混合器を通らずにキャビネット内に供給される第二系統に分岐されており、
前記キャビネット内における集塵機に向かう気体の吸引口は、前記第二系統のキャビネット内への供給口よりも、キャビネット内に収容された加工品の近くに存在する請求項1〜4の何れか一項に記載の不活性ガス循環式ブラスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショット材を加工品(ワーク)に投射し、表面研削等の加工を施すブラスト装置に関し、特に加工品の解砕物を有効的に再利用可能で、簡易且つ安全に粉塵爆発対策を講じることができる不活性ガス循環式ブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブラスト処理は、ショット材と呼ばれる粒体を投射して加工品(ワーク)に衝突させて、ワークの加工等を行う表面加工方法として知られている。そして、このブラスト処理は、主にワークのバリ除去、表面研削、梨地加工等を施す目的で工業的に広く利用されている。
【0003】
ショット材には、アルミや亜鉛といった金属系の粒子や、アルミナ、炭化ケイ素等のセラミック系の粒子、或いはナイロンやポリカーボネート等の樹脂粒子が、それぞれの使用目的及び加工目的に応じて、適宜、選択使用されている。
【0004】
しかし、従来よりブラスト処理を実施する際には、投射した粒子や、処理した加工品から生じた粒子が粉塵となって空中に舞い上がり、浮遊した状態で静電気等が要因となって粉塵爆発が発生する危険があった。粉塵爆発が起きる条件としては、可燃物(ここでは粉塵)、酸素及び発火源が存在し、各々が様々な条件下で接触することで発生する。特に、アルミやマグネシウムといった金属素材をショット材及び/又はワークに使用した場合には、該金属素材が発火源となる静電気等を起こし易い性質を併せ持つために、粉塵爆発を発生させる危険性が大きかった。
【0005】
そこで従前においては、このような粉塵爆発を回避する為に、ショット材を変更したり、水とショット材の混合液を噴射する等によって防爆対策を講じる技術が種々提案されている。
【0006】
例えば特許文献1(特開平10−249733号公報)では、アルミダイカスト等の外観が白色の金属製品の研削材として、被研削体の表面の外観を損ねず、且つ安全性の高いショットを提供する技術を提案している。即ち。融点以上に加熱して、溶融状態としたスズの湯を落下させながら、該湯に空気を噴射して液状油の中に分散させて得る粒状のスズショット及びその製造方法を提案している。
【0007】
また、特許文献2(特開2013−158884号公報)では、研磨を行わない領域に、砥粒などが浸入するのを防止できると共に、装置内部を清浄に保つことができる基板研磨装置を提案している。即ち、砥粒と液体との混合用液体を圧縮気体によりミスト状にして基板に噴射する噴射手段と、前記基板状の処理を行わない箇所の一部又は全部に保護用液体を供給することにより液体層を形成して、前記ミスト状の混合用液体から基板を保護する基板保護手段と、噴射後の前記混合用液体及び前記保護用液体を吸引する吸引回収手段と、前記噴射手段による前記ミスト状の混合用液体の噴射量、前記基板保護手段による保護用液体供給量、前記吸引回収手段による前記混合用液体等の吸引量を制御する第1制御手段とを備えることを特徴とする基板処理装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−249733号公報
【特許文献2】特開2013−158884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の通り、従前においてもショット材を変更したり、水とショット材の混合液を噴射する等によって、防爆対策を講じる技術については種々提案されている。しかしながら、前記特許文献1においては、防爆対策としてある特定したショット材(特許文献1ではスズ)しか使用できないという問題が生じた。即ち、ブラスト処理を行う上では、加工目的及びワークの素材によっては様々なショット材が用いられることもある。その為に、ショット材の素材が限定された場合には、加工できるワークの素材、並びにブラスト処理後のワークの形状が制限されてしまい、要望通りの加工を施すことが困難になっていた。
【0010】
また、特許文献2で示すような湿式のブラスト処理を行うに当たっては、金属のワークを使用した場合には、ワークが濡れてしまい、錆びてしまったり、水の後処理の手間が煩雑といった問題があった。
【0011】
そこで本発明では、使用できるショット材及びワークの素材を限定すること無く、簡易且つ安全に粉塵爆発対策を講じることができる不活性ガス循環式ブラスト装置を提供することを第1の課題とする。
【0012】
また、近年においては金属粉末等を用いた3D積層造形技術にも注目が集まり、様々な機関で研究開発・技術開発並びに実用化に力が注がれている。かかる金属粉末を用いた3D積層造形技術は、レーザービームや電子ビームなどのエネルギーを照射して、金属粉末を選択的に溶融・凝固させた層を積層させて3次元の造形物を作製するものであり、中でも電子ビームをエネルギー源として用いた3D積層造形技術では、様々な金属粉末を使用することができる。
【0013】
しかしながら、電子ビームを用いた3D積層造形技術では、金属粉末の余熱時か又は溶融・凝固時に、3次元造形物の周りには、金属粉末同士が溶融でも焼結でもない状態で存在する仮焼結体が生じる。よって、この仮焼結体を解砕する技術が必要になる。また、電子ビームを用いた3D積層造形技術以外であっても、金属粉末による造形物に対して、造形物の表面状態を改善する為にブラスト処理が行われることもある。そして、仮焼結体だけを効果的に解砕する為、金属粉末の造形物の造形精度を改善する為、或いは表面状態を改善する為には、ショット材としてできるだけ微細粒径の金属或いは合金を使用するのが望ましかった。しかし、微細粒径の金属或いは合金等の素材をショット材として使用した場合には、より粉塵爆発を発生させる危険性が高まおそれがあった。
【0014】
そこで本発明では、ショット材として微細粒径の金属、或いは合金等を使用したとしても、粉塵爆発を未然に防止することができるようにした、不活性ガス循環式ブラスト装置を提供することを第2の課題とする。
【0015】
さらに、前述のとおり、電子ビームを使用して金属粉末を溶融・凝固させる際には、造形物の周りには余熱か又は溶融によって、溶融でも焼結でもない仮焼結体が形成される。そこで、ブラスト処理によって、この仮焼結体を解砕し除去するのだが、材料の無駄をなくす上では、解砕した仮焼結体を有効に利用するのが望ましい。これは、金属材料が高価な場合に、特に顕著となる。また、このような仮焼結体の解砕に際しては、金属粉末が多く発生し、これが舞い上がって浮遊することから、粉塵爆発の危険性も高まることが予想される。
【0016】
そこで、本発明では粉塵爆発の危険性を低く抑えた上で、ブラスト処理における加工品の解砕物を有効に再利用できるよう工夫した不活性ガス循環式ブラスト装置を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では加工品の解砕物を有効に再利用できると共に、ブラスト装置内部空間の酸素濃度を低くすることで、簡易且つ安全に粉塵爆発対策を講じることができる不活性ガス循環式ブラスト装置を提供する。
【0018】
即ち、本発明は加工品を収容するキャビネットと、前記キャビネット内に収容した加工物に対してショット材を気流によって投射する投射部と、前記ショット材を付勢する気流を生じさせる送風機と、キャビネット内の気体を吸引して、当該気体中の粉塵を収集する集塵装置とから成るブラスト装置であって、前記キャビネット内には不活性ガスが充填されており、当該不活性ガスは前記送風機、キャビネット、及び集塵装置を循環する事を特徴とする不活性ガス循環式ブラスト装置を提供するものである。
【0019】
前記加工品とは金属やセラミック、ガラス、プラスチック等の硬質素材で形成された構造物や、ゴムといった軟質素材で形成された構造物等を広く含み、素材、大きさ、形状或いは重量等に大きな制限は無い。しかし、装置内に設置してブラスト処理を施す目的を鑑みれば、容易に持ち運び及び/又は設置が可能な形状であることが望ましく、装置に破損等が生じない程度の重量のものを使用するのが望ましい。特に本発明にかかるブラスト装置は、前記加工品が粉塵爆発の要因となり得る発火源(静電気等)を発生し易い素材である金属或いは合金等でできた構造物である場合に、より一層顕著な効果を奏する事ができる。また、金属粉末が多く発生する場合に有効であり、よって電子ビームによって形成した3次元造形物の仮焼結体を解砕する目的において有用である。よって、本発明にかかるブラスト装置で加工する加工品は、電子ビームによって形成した3次元造形物である場合に、最大の効果を発揮することができる。
【0020】
またショット材は、金属系やセラミック系、或いは樹脂系などの様々な素材からなるショット材が適宜使用可能であるが、本発明における粉体爆発の危険性を回避するための作用効果を考慮すれば、アルミや亜鉛、又は合金、フリント、グリッド、鋳鋼等の金属或いは合金の素材からなるショット材を使用する場合に特に有効である。さらに言えば、ショット材は加工品と同じ材料のものを使用するのが望ましい。本発明にかかるブラスト装置を、金属粉末を電子ビームで溶融・凝固させて形成した3次元造形物の仮焼結体を解砕する目的で使用する場合に、解砕物を再利用できるようにするためである。かかる解砕物は、再度、3次元造形物を形成するための造形材料(金属粉末)として利用する他、ショット材として利用することもできる。
【0021】
よって、本発明にかかるブラスト装置は、加工品の解砕物の少なくともその一部をショット材又は加工品の造形材料として再利用する事が望ましく、そのために、ショット材として加工品と同じ材料の物を使用し、高価な材料費用等を節約するのが望ましい。
【0022】
前記キャビネットは、前記加工品を収容すると共に、ブラスト処理を実施する空間として機能する。キャビネットを形成する素材及び大きさに制限は無いが、防錆性も鑑みてステンレス製の素材で形成するのが望ましく、また解砕物をショット材又は造形材料として使用する場合には、その汚染を阻止する為に、ショット材(及び造形材料)よりも硬い材料か、あるいはショット材(及び造形材料)と同じ材質で内壁面が形成されている事が望ましい。また、キャビネットの内部(内壁)は、ショット材或いは解砕物の堆積や付着を防ぐ為にも、極力段差や凹凸を設けず、滑らかな平面構造とするのが望ましい。また、加工品の解砕物を下方向に落下させて1か所に集めることができるように、キャビネットの下部は下方向に向けて窪むように勾配を設けるのが望ましい。さらに、ブラスト作業に際して、キャビネット内に手を挿入して作業できるように、キャビネットの側面に開口部を設けたり、照明装置を設置したり、加工品の出入用のメンテナンス用ドアや、装置制御用の電装機器類を配置した制御ボックス等を、使用目的に応じて適宜配置しても良い。
【0023】
但し、キャビネットの側面に開口部等を設ける場合は、キャビネット内の気体が外に漏れないよう密閉構造にし、気体の循環に支障が無い構造とするのが望ましい。また、キャビネットの上部や側部(但し、作業者が作業する側以外の側部)には、仮に粉塵爆発が生じた場合に備え、圧力を拡散し作業者を守る為の爆発圧力拡散口を設けるのも良い。さらに、キャビネット内の下部側には、篩網等の解砕物分別手段を設けるのも望ましい。これは、大きな解砕物が、後述するメディア収容タンクに入っていくのを防ぐと共に、回収した大きな解砕物をショット材又は加工品の造形材料として再利用する為に、所定範囲を超える大きさの解砕物を取り除く為である。なお、この解砕物分別手段は、更に取り除いた大きな解砕物を細かく砕くための粉砕手段を設けても良い。かかる粉砕手段としては、ボールミルや高圧粉砕ロール等の周知の粉砕手段を用いることができる。
【0024】
ここで、前記キャビネットは、キャビネット内の気体を吸引して当該気体中の粉塵を収集する集塵装置と繋がっている。かかる集塵装置は、粉塵の捕集に適したものを使用することができる。例えば、遠心分離によって集塵するサイクロンとダストコレクターから構成される装置が一般的であるが、布袋式集塵装置や湿式集塵装置等を用途に合わせて使用しても構わない。但し、超微粒子のショット材を使用する場合等には、集塵装置を単独で使用しても粉塵の完全な捕集が達成できない可能性もある為、その際は様々な集塵装置を複数設置するなどしても構わない。
【0025】
また、前記集塵装置によって粉塵が取り除かれた気体は、前記送風機に移送される。この送風機は、ショット材を付勢する気流を生じさせる為の装置であり、送風ファン、コンプレッサー、或いはルーツ式のロータリーブロアを使用することができる。但し、ルーツ式のロータリーブロアが望ましい。これは、ファンを用いた方式とは異なり、空気の吸入側と吐出側が常に完全に仕切られる構造の為、停止状態でも吐出側の高圧空気が吸入側に漏れない構造である為、エネルギー効率が良い為である。また、ロータリーブロアの回転制御によって送風量の調整が容易となり、潤滑油を使用しないため送風空気中に油分が混入することはない。更に、吸気と排気とが同時になされる為、多風量に対応できるなどブラスト装置に好適な空気供給装置を構成できる為である。当該送風機によって気流を生じさせ、付勢した気流によってショット材を付勢し、スプレーガン等を用いて形成された前記投射部からショット材を投射して、加工品に対してブラスト処理を行う。
【0026】
ここで、本発明にかかるブラスト装置ではキャビネット内、及び配管系を全て密閉し、装置内部に窒素やアルゴン等の不活性ガスを導入・充填させ、前記送風機を利用して当該不活性ガスを循環させる。即ち、装置内の気体を不活性ガスで置換することで、内部の酸素濃度を粉塵爆発限界値よりも低くし、粉塵爆発の発生要因を未然に防止できる構造としている。具体的には、装置内の酸素濃度を5%未満(特に3%未満)に設定するのが望ましく、ある一定の酸素濃度が検知された場合には再度不活性ガスが導入され、不活性ガス置換を実施するように構成するのが望ましい。上記不活性ガス置換動作は自動制御で行うこともでき、規定の酸素濃度に達しなければブラスト動作が機能しないインターロック機能等を具備するなどして、より安全面を考慮した構造としても良い。
【0027】
上記構成によれば、装置内部の酸素濃度を常時、粉塵爆発限界値よりも低い酸素濃度に維持することが可能な為、加工品及び/又はショット材に微細粒径の金属或いは合金等の素材を用いた場合でも、効果的に且つ安全に粉塵爆発対策を講じることができる。また、用途によってはドライアイスをショット材として使用しても構わない。ドライアイスをショット材として使用した場合についても、本発明においては不活性ガスを供給していることで、単独のドライアイスショットと比較し内部の湿度が低く抑えられる為、より効果的な加工品の洗浄が可能となる。即ち、ショット材及び加工品に使用できる素材や粒径の制限が無くなる為、より広範囲(広分野)でのブラスト装置の利用が可能になる。更に、静電気等の発火源を生じさせる可能性を大幅に減じることができる。
【0028】
また、前記キャビネットの下方には、キャビネット内に蓄積した加工品の解砕物を収容する為のメディア収容タンクを設けるのが望ましい。当該メディア収容タンクを形成する素材及び形状については用途に応じて適宜設定可能であるが、長時間ブラスト処理を実施することも鑑みた上で、加工品の解砕物を多く収容できる容量に設定するのが望ましい。特に金属粉末を電子ビームで溶融・凝固させて形成した3次元造形物の仮焼結体を解砕する目的で使用する場合であって、解砕物を造形材料又はショット材として利用する場合には、解砕物とショット材とが貯留される事から、その容量は大きく確保するのが望ましい。
【0029】
さらに、前記キャビネット内で生じた加工品の解砕物の出口側、または前記メディア収容タンクにおける解砕物の入口側の少なくとも何れかには、ロータリーバルブを設けるのが望ましい。これは、ロータリーバルブを設けることで、回転作用で解砕物の流量を調整及び制御することが可能になる為、多量の解砕物の落下を防ぐことができ、前記メディア収容タンクの入口側の目詰まり等を発生させる危険性を大幅に減じることができる為である。また、ロータリーバルブを使用することにより、当該ロータリーバルブの両側に存在する空間同士の気圧に関係なく解砕物を送り出すことができる。
【0030】
また、加工品の解砕物を大きさ、形状、及び重量の少なくとも何れか分級できる分級部を備えても良い。当該分級部は従前において粉粒物を分級する為に使用されているものであればよく、篩機や遠心分離式のサイクロン、或いは液体サイクロン等、用途に応じて適宜使用することができる。例えば、解砕物を複数に分級したい場合には、前記メディア収容タンクを複数使用し、これら複数のメディア収容タンクを並列又は直列に並べて設置して、それぞれのメディア収容タンクに仕分ける分級部を設けることで、粒径等によってショット材、加工品の造形材料、或いはその他の材料として分級し、それぞれを再利用に供することも可能になる。
【0031】
さらに、前記分級部の他に、ショット材、或いはその他の用途に利用できる粒体を形成する為に、加工品の解砕物を更に細かく粉砕する粉砕手段を設けるのも望ましい。かかる粉砕手段を別途設けることにより、より多くの解砕物の再利用が可能になり、材料の節約にも繋がる。
【0032】
ここで、前記メディア収容タンクの下方又は側方には、前記キャビネット内で生じた加工品の解砕物を、前記送風機から吐出される気体内に投入する為の混合器が設けられる。混合器を設けることで、前記分級部或いは解砕手段によって細かく解砕された加工品の解砕物は送風機から送り出された気体に混入され、ショット材として投射可能になる。即ち、新たにショット材を投入すること無く、加工品の解砕物をショット材として再利用可能になる為、永続的なブラスト加工が可能になる。特にショット材として、加工品と同じ材料で形成したものを使用すれば、キャビネット内に存在する粉体は、単に分級するだけでショット材として使用することができる。
【0033】
また、前記送風機から吐出される気体は、前記混合器を通って前記投射部に至る第一系統と、前記混合器を通らずにキャビネット内に供給される第二系統に分岐するよう設けるのが望ましく、特に前記キャビネット内における集塵機に向かう気体の吸引口は、前記第二系統のキャビネット内への供給口よりも、キャビネット内に収容された加工品の近くに存在するよう設けるのが望ましい。これは、前記送風機から吐出される気体を分岐することによってキャビネット内の気体圧力を調整し、気体の循環を効率良く行う為である。また、キャビネット内において、集塵機に向かう気体の吸引口を、第二系統の供給口よりも加工品の近くに存在させることにより、加工品の近くにおいては、集塵機に向かう気体の吸気量を、投射部における気体の吐出量よりも多くすることができる。これにより、キャビネット内の吸塵効果を高めることができる。
【0034】
上記構成にかかれば、分級された解砕物は混合器を通ってショット材として再利用可能になる為、ショット材を補充する必要を無くしてブラスト加工が可能になる。即ち、高価な金属或いは合金素材をショット材及び/又は加工品に使用した場合にも、新たに部材を投入する必要性が限りなく少なくなる為、部材及び人件費の節約に繋がる。また、分級された比較的大きな解砕物は加工品の造形材料として再利用可能になる為、加工品の原材料費用の節約にも繋げることができる。
【発明の効果】
【0035】
上記発明によれば、装置内に不活性ガスを充填し、送風機を利用して当該不活性ガスを循環させていることで、内部の酸素濃度を粉塵爆発限界値よりも低くし、粉塵爆発の発生を未然に防止できる。
【0036】
また、粉塵爆発対策を講じていることから、ショット材及び加工品の素材として微細粒径の金属、或いは合金等を使用したとしても、粉塵爆発の危険性を大幅に減じることができる。即ち、ショット材及びワークの素材を限定すること無く、効果的にブラスト処理を実施することができる。
【0037】
さらに、投射されたショット材によって解砕された加工品の解砕物は、少なくともその一部をショット材又は加工品の造形材料として有効に再利用が可能な為、材料の節約にも繋がる。
【0038】
さらに、分級された解砕物は混合器を通ってショット材として再利用可能になる為、連続的にブラスト加工が可能になり、新たに部材を投入する必要性が限りなく少なくなる為、部材及び人件費の節約にも繋がる。
【0039】
特に、金属粉末を電子ビームで溶融・凝固させて形成した3次元造形物(加工品)の仮焼結体を解砕する場合には、その解砕物をショット材又は造形材料として再利用でき、高価な金属材料の節約ができる為、大きなコストメリットが見出せる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】第1の実施形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態にかかる送風機(ルーツ式ロータリーブロア)の内部構造を示す縦断面略図である。
図3】第2の実施形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置の全体構成を示すブロック図である。
図4】第3の実施形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置の全体構成を示すブロック図である。
図5】第4の実施形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置の全体構成を示すブロック図である。
図6】他の実施の形態にかかる分離部(ルーバー式ダスト分離装置)を示す縦断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置を具体的に説明する。但し、本発明にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置は、本実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することが可能である。
【0042】
図1は第1の実施形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置の全体構成を示すブロック図であり、この不活性ガス循環式ブラスト装置Bは、加工品11を収容する空間部を区画するキャビネット12と、キャビネット12内に収容した加工品11に対してショット材14を投射する投射部13と、ショット材14を付勢する気流を生じさせる送風機26と、キャビネット12内の気体を吸引して粉塵を収集する集塵装置17(サイクロン15+ダストコレクター16)とから構成されており、各々を配管18で繋いでいる。
【0043】
前記キャビネット12はブラスト作業状態を目視確認できるように、正面に大きな窓部32を形成しており、窓部32の下部には作業時に手を挿入してブラスト作業できるよう開口部30を設けている。この開口部にはゴムやシリコンなどの柔軟性を有する材料で形成された手袋が装着されており、当該開口部における気体流通を阻止している。また、加工品11の解砕物を下方向に落下させ易いようにキャビネット12の下部は下方向に向かって窄むように勾配を設けて形成しており、内部には篩網34を設け、大きな解砕物(大)25Aを選別している。また、前記キャビネット12の下方には解砕物を収容する分級部23を備えたメディア収容タンク22Aを設け、さらにその下方にはより細かい解砕物を収容するメディア収容タンク22Bを設けている。
【0044】
即ち、キャビネット12内に蓄積した加工品11の解砕物から、まず前記篩網34によって大きな解砕物(大)25Aを除去し、それ以外の解砕物を下方に落とす。そして分級部23によって解砕物をさらに細かいものと分級し、分級した比較的大きな解砕物(中)25Bをメディア収容タンク22Aに収容する。分級部23によって分級した細かい解砕物(小)25Cはメディア収容タンク22Bに収容され、ショット材14として再利用可能な構成としている。そして解砕物(大)25Aと解砕物(中)25Bは回収して、加工品11の造形材料として再利用することができる。つまり、本実施の形態においては、解砕物を再利用する為に、ショット材14及び加工品11の造形材料は同じ材料を使用している。
【0045】
以上の構成により、大きな解砕物(大)25Aはキャビネット内の篩網34によって篩取られて、メディア収容タンク22Aに侵入する事は無い。そしてこの篩網34を通過した解砕物は、分級部23によって分級され、メディア収容タンク22Aとメディア収容タンク22Bに分けて収容されることになる。なお、篩網34は、キャビネット内ではなくメディア収容タンク22A内に設置し、当該メディア収容タンク22Aにおいて、解砕物を分級する事もできる。また本実施の形態では、メディア収容タンク22Aとメディア収容タンク22Bとは、直列に配置しているが、並列に設置する事もでき、この場合には、分級した解砕物を、各メディア収容タンク(22A又は22B)に夫々分けて収容することができる。
【0046】
更に、前記分級部23の他に、別途、粉砕手段を設け、解砕物(大)25Aと解砕物(中)25Bを更に細かく解砕し、ショット材14として再利用できるよう構成しても良い。また、前記キャビネット12の出口側、及び/又はメディア収容タンク22Bの解砕物の入口側には、ロータリーバルブ24を設け、解砕物の流量の制御を行っても良い。ロータリーバルブを設ける事により、その両側に存在する空間の気圧が異なっていても、解砕物を移送することができる。
【0047】
また、細かい解砕物(小)を収容したメディア収容タンク22Bの下方には、混合器27を設けている。当該混合器27は、前記細かい解砕物(小)を送風機26から吐出される気体内に投入する部材である。即ち、上記構成によって細かく解砕された加工品の解砕物(小)25Cは、送風機27から吐出される気体に混ざって、当該気体の流体エネルギーによってショット材14として投射することができる。
【0048】
つまり上記構成にかかれば、分級された解砕物(小)25Cは混合器27を通ってショット材14として再利用可能になる為、永続的にブラスト加工が可能になる。その結果、高価な金属或いは合金素材をショット材14及び/又は加工品11に使用した場合にも、新たにショット材14を投入する必要性が限りなく少なくなる為、部材及び人件費の節約に繋げることができる。
【0049】
ここで、本実施の形態にかかるブラスト装置における気体の流向21及び流路を説明すると、まず前記キャビネット12内に存在する投射部13より投射されたショット材14を含む気体は、キャビネット12上部のフィルター36を備えた吸引口35よりサイクロン15に導かれる。そしてサイクロン15の遠心分離作用により気体中からショット材14が分離され、ショット材14が除去された気体は、送風機26の吸気を利用したダストコレクター16に導かれ、気体中に含まれたブラスト粉塵が濾過された上で送風機26に移送される。
【0050】
ここで、図2に示すように本実施の形態では送風機26にルーツ式ロータリーブロアを使用している。このルーツ式ロータリーブロアは、2葉(又は3葉)の相等しい形状の2つのローター37をケーシング38内に収容し、モータ等の動力を利用してローター37を相反する方向に同一速度で回転駆動させることにより、吸気口39から吸気した気体をケーシング38及びローター37に囲まれた空間で昇圧して排気口40から吐出する構成となっている。送風機26にルーツ式ロータリーブロアを使用すれば、回転制御によって送風量の調整が容易となり、潤滑油を使用しないため送風空気中に油分が混入することなく、吸気と排気とが同時になされる為、多風量に対応できるなどブラスト装置に好適な空気供給装置を構成することができる。
【0051】
そして送風機26より排出された気体は、前記混合器27を通って前記投射部13に至る第一系統28と、前記混合器27を通らずにキャビネット12の下部に形成された供給口より気体を供給する第二系統29に分岐されている。また、キャビネット12内における集塵装置17に向かう気体の吸引口35は、第二系統29のキャビネット12内への供給口33よりも、キャビネット12内に収容された加工品11の近くに存在するよう設けている。これは、送風機26から吐出される気体を分岐することによってキャビネット内の気体圧力を調整し、気体の循環を効率良く行う為である。本実施の形態において、当該第二系統29の開口は、キャビネット内における解砕物の貯留する領域に存在しているが、当該第二系統29の開口は、気体の吸引口35よりも加工品との距離が遠ければ良いのであるから、任意の場所に設けることができる。但し、望ましくはキャビネット内の下方に堆積した解砕物を吹き上げる事の無い位置であることが望ましい。
【0052】
なお、分岐された第二系統29の気体の流れを利用して、メディア収容タンク22A内に収容される解砕物を、離れた場所に存在する材料タンクなどに移送するように配管する事もできる。かかる構成においては、移送先の材料タンクにおいても気体中から解砕物を集める分離装置を設けるのが望ましく、解砕物を取り除いた気体は、再びキャビネット内等、送風機26の上流側に戻すことができる。
【0053】
さらに、本実施の形態にかかるブラスト装置においては、キャビネット12内、及び配管18系を全て密閉し、装置内部に窒素やアルゴン等の不活性ガスを導入・充填させ、前記送風機26を利用して当該不活性ガスを循環させる。本実施の形態では集塵装置17から送風機26に至る配管18を介して不活性ガスボンベ19を用いて装置内に不活性ガスを供給している。
【0054】
即ち、装置内の気体を不活性ガスで置換することで、内部の酸素濃度を粉塵爆発限界値よりも低くし、粉塵爆発の発生を未然に防止できる構造としている。具体的には、装置内の酸素濃度が3%未満に達するまで不活性ガスを導入する。キャビネット上部の酸素濃度計31によって酸素濃度を検知する(特に望ましくは酸素濃度計31は数箇所に設置するのが望ましい)のが望ましい。そして、酸素濃度が3%以下に達した段階で不活性ガスの導入を停止し、送風機26を始動させることで不活性ガスを装置内に循環させる。そして、設定時間内(作業時間内)で酸素濃度が4%を超えて検知された場合には再度不活性ガスを導入し、不活性ガス置換を実施する。上記不活性ガス置換動作は自動制御で行っており、酸素濃度が5%台になるとアラームを出し、6%以上でブラスト動作が機能しないインターロック機能を具備しても良い。その他、不活性ガスボンベからの供給圧力が低下した際には、警報を出して装置を停止させる機能等を具備すれば尚良い。
【0055】
上記構成にかかれば装置内部の酸素濃度を常時、粉塵爆発限界値よりも低い酸素濃度に維持することが可能な為、加工品11及び/又はショット材14に微細粒径の金属或いは合金等の素材を用いた場合でも、効果的に且つ安全に粉塵爆発対策を講じることができる。
【0056】
図3図5では、他の実施形態にかかるブラスト装置を示している。即ち、図3に示す不活性ガス循環式ブラスト装置B2では、基本的な構成は第1の実施形態と同様であるが、解砕した解砕物(中)25Bを収容したメディアタンク収容タンク22Aの側部に配管を設け、別に設置されている3D積層造形技術装置41に繋いでいる。即ち、解体した解砕物(中)25Bを、送風機26から出力される気体の流通エネルギーを利用して3D積層造形技術装置41に搬送する手段を用いている。図面には示していないが、3D積層造形技術装置41では、搬送された気体から解砕物だけを分離して取り出すサイクロン式粉体分離装置等を使用して、気体と解砕物を分離する。そして解砕物は、3D積層造形技術装置41における加工材料として利用し、気体はブラスト装置に戻すことができる。
【0057】
3D積層造形技術装置41に解砕物(中)25Bを搬送した後、解砕物が分離・取出された気体は、サイクロン15とダストコレクター16の間の配管に戻されるよう構成している。よって上記構成にかかれば、ブラストによって解砕された解砕物(中)25Bを、人手をかけて回収する手間が無くなり、送風機から出力される気体を利用して3D積層造形技術装置41に搬送できる為、ブラスト及び3D積層造形にかかる製造工程を同時に実施することができる。即ち、効率の良く動作・機能する為、人件費の削減及び工期の削減等の製造メリットが見出せる。
【0058】
また、図4に示す実施形態にかかる不活性ガス循環式ブラスト装置B3では、メディア収容タンク22A及びメディア収容タンク22Bを、キャビネット12の下部側ではなく、横に並設している。これは複数のメディア収容タンクをキャビネット12の下部側に直列に並べて設置するよりも、横に並設することでブラスト装置全体の高さを低く保つことができる為である。ブラスト装置全体の高さを低く構成できれば、地震等の自然災害が起きた場合の装置の安定性や、作業者がブラスト作業を実施する上で台等に乗って作業する必要が無くなる為、安全性も確保できる。即ち、装置並びに作業者の安全性も鑑みた装置設計が可能になる。特に、加工物が金属材料からなる造形物である場合には、大きさ次第では相当な質量となる事から、キャビネットまでの揚程を低く抑える事で、作業能率を向上させることができる。
【0059】
また、この実施の形態では、ブラストによって解砕された解砕物(中)25Bを、横に並設した分離部42(分離装置)に搬送している。当該分離部42は、気体中から解砕物を分離して取り出す構成であり、望ましくは気体流通に圧力損失を生じさせないか、圧力損失が少ない装置が使用される。本実施の形態では、複数のルーバー43を利用して気体と解砕物(中)25Bとを分離(又は分級)するルーバー式ダスト分離装置を使用している。特に本実施の形態にかかるルーバー式ダスト分離装置では、ルーバー43間を通過せずに落下した解砕物は、下方の収容空間47内に落下し、蓄積されることになる。そこで、この収容空間47内に入り込んだ気体が、サイクロンに向かう配管に流入することがないように、当該ルーバー43間を通過する気体と、下方に下りてきた気体とを隔離する壁46を形成し、収容空間47を区画している。これにより解砕物が落下する空間(収容空間47)は閉じられて、意図しない気体流により、分離した解砕物が吹き上げられる事態を無くすことができる。また、このルーバー43内に存在する分離空間の下端側には、解砕物の落下口が存在するところ、この落下口には、図6に示す様に、塵埃の巻き上がりを防止すると共に、落下した解砕物が逆流することに無いように、円錐形状の逆止部材48を設けるのも望ましい。かかる逆止部材を設ける事により、分離空間内、或いは収容空間内に存在する解砕物が、再び分離空間内に舞い込む恐れを減じることができる。
【0060】
そして分離された解砕物(中)25Bは、当該分離部42の下部側に設けられたメディア収容タンク22Aに落下し、メディア収容タンク22A内の分級部23によって更に小さい解砕物(小)に分級される。そして、小さい解砕物(小)は混合器27で送風機から出力された気体と混合され、ショット材14として投射部13に移送される。当該分離部42で分離された気体は集塵装置17に移送され、その後、送風機26によって付勢される気流のエネルギー源として循環される。
【0061】
さらに、図5で示す不活性ガス循環式ブラスト装置B4のように、キャビネット12内における気体の流れをコントロールし、当該キャビネット内に塵埃が滞留しにくいように構成する事もできる。即ち、この図5に示す不活性ガス循環式ブラスト装置B4は、基本的な構成は図4に示した第3の実施形態と同様であるが、送風機26から吐出される気体を、前記混合器27を通って前記投射部13に至る第一系統28と、前記混合器27を通らずにキャビネット12の上部より気体を供給する第二系統44に分岐させて構成している。かかる構成によれば、第二系統44を通じてキャビネット12の上部に移送した気体は、その気流を加工品11に向かって吐出させることができる。そして、キャビネット内の気体は下側から排出されていることから、キャビネット12内には、上から下に向かう気流を生じさせ、ブラスト作業によってキャビネット12内に生じる粉塵を効果的に排出させることができる。その結果、キャビネット内における塵埃の浮遊を極力減じ、ブラスト作業における視界を良好に確保できる。視界が良好に確保できれば、より安全且つ確実なブラスト作業を実施することができ、高精度な加工品11を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
B1、B2、B3、B4 不活性ガス循環式ブラスト装置
11 加工品
12 キャビネット
13 投射部
14 ショット材
15 サイクロン
16 ダストコレクター
17 集塵装置
18 配管
19 不活性ガスボンベ
20 不活性ガスの流向
21 気体の流向
22A、22B メディア収容タンク
23、42 分級部
24 ロータリーバルブ
25A 解砕物(大)
25B 解砕物(中)
25C 解砕物(小)
26 送風機
27 混合器
28 第一系統
29、44 第二系統
30 開口部
31 酸素濃度計
32 窓部
33 供給口
34 篩網
35 吸引口
36 フィルター
37 ローター
38 ケーシング
39 吸気口
40 排気口
41 3D積層造形技術装置
42 分離部
43 ルーバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6