(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605208
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】編組ワイヤを介した信号伝送を備えるマルチアーム・カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0408 20060101AFI20191031BHJP
A61B 5/0478 20060101ALI20191031BHJP
A61B 5/0492 20060101ALI20191031BHJP
A61B 5/044 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
A61B5/04 300J
A61B5/04 314K
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-42162(P2015-42162)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-167864(P2015-167864A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2018年1月12日
(31)【優先権主張番号】14/197,775
(32)【優先日】2014年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−036040(JP,A)
【文献】
特開2003−210427(JP,A)
【文献】
実開昭57−128805(JP,U)
【文献】
米国特許第06292703(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0088244(US,A1)
【文献】
米国特許第06088610(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01393674(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
患者身体内へ挿入するための挿入チューブと、
前記挿入チューブの遠位端に取り付けられる複数のアームであって、それぞれのアームが、前記アームを横断するワイヤの編組を備える、複数のアームと、
複数の電極であって、前記複数のアームに連結され、前記編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続されて、前記ワイヤを介して前記患者身体の外部のシステムと信号を交換するように構成される、複数の電極と、を備え、
前記複数の電極のうちの1つ又は2つ以上が、測定された電気生理学的(EP)電位に反応して前記信号を生成するように構成され、前記編組の第1ワイヤに電気的に接続された第1の電気生理学的(EP)マッピング電極および前記編組の第2ワイヤに電気的に接続された第2の電気生理学的(EP)マッピング電極を備え、
前記編組の第3ワイヤに電気的に接続されて、前記患者身体内の位置を示す位置信号を生成し、前記位置信号を前記第3ワイヤを介して伝達するように構成される、位置センサを備え、
前記第1の電気生理学的(EP)マッピング電極、前記第2の電気生理学的(EP)マッピング電極、及び、前記位置センサは、前記複数のアームの各々に埋め込まれており、各アームに埋め込まれている前記第1ワイヤ、前記第2ワイヤ、及び前記第3ワイヤは、互いに絶縁されている、医療用プローブ。
【請求項2】
前記複数の電極のうちの1つ又は2つ以上が、アブレーション信号に反応して組織のアブレーションを実行するように構成されるアブレーション電極を備える、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
前記複数のアームが、バスケット構成に展開可能である、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
それぞれのアーム内の前記編組が、らせん状に巻かれている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して侵襲性医療用装置に関し、特にマルチアーム医療用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用プローブの遠位端には、位置決め、マッピング、及び/又は治療用途のための多種多様な診断用及び治療用センサ並びに電極が位置する場合がある。プローブの遠位端にあるセンサ又は電極は、典型的には、プローブを横断するワイヤを介して外部システムに接続される。
【0003】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,881,769号は、生体管腔に対して医療手術を行うためのカテーテルであって、細長い部材と、細長い部材の遠位端に位置する医療手術要素と、遠位端に位置する電磁界検出器と、電磁界検出器を医療用位置決めシステムと連結する配線とを含み、医療用位置決めシステムが遠位端の位置及び配向を判断する、カテーテルについて記載している。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0182014号は、近位端、遠位端、及び近位端と遠位端との間で延在する管腔を有する細長い可撓性部材と、細長い可撓性部材の遠位端に固着されたソレノイドコイルとを含み、ソレノイドコイルが複数のワイヤ巻回を有し、ソレノイドコイルが可撓性部材の長さに沿って近位側に延在するリード線の撚線対に接続された、磁気共鳴イメージング装置について記載している。コネクタが細長い可撓性部材の近位端に配設され、コネクタは、リード線の撚線対に動作可能に連結される。代替実施形態では、管腔を含む細長い可撓性部材の代わりに同軸ケーブルを用いる。
【0005】
いくつかの医療用プローブは、複数のアーム及び/又は複数の電極を備える遠位端を有する。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,722,402号は、身体内に位置する複数の電極の配列内で移動可能な電極を誘導するためのシステム及び関連方法を記載している。このシステム及び方法は、移動可能な電極、又は配列上の複数の電極のうちの少なくとも1つを採用して、既定の様式で電気又は音波エネルギーを生成してから、次いで、感知して、配列内で移動可能な電極を示す出力を生成する。
【0006】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,574,492号は、心臓の生理学的信号を測定するためのカテーテルを記載している。このカテーテルは、カテーテルの遠位端に構造体を備え、構造体が複数のアームを有し、それぞれのアームに電極が固定され、それぞれのアーム上には位置情報を生成するためのデバイスが位置する。アームは、心臓内部にカテーテルを挿入中はカテーテルの長軸付近に位置し、アームは、構造体が心臓内部にあるとき、カテーテルの長軸から離れる方向に別々に展開することができる。
【0007】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,226,580号は、医療用プローブを操作するための方法を記載している。この方法は、中心軸から外向きに斜めに延在し、それぞれの位置変換器が連結された1つ又は2つ以上のアームを含む医療用プローブの遠位端を、アームが表面に圧力を加え、その圧力に反応して中心軸に対して曲がるようにするように、体内の表面に押し当てることを含む。アームに連結されたそれぞれの位置変換器の位置が測定され、アームによって加えられた圧力が、測定された位置に反応可能に推定される。
【0008】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,089,045号は、心室細動の診断の可能性のためにプルキンエ線維をマッピングするためのカテーテルを記載している。カテーテルは、近位端と遠位端とを有する細長いカテーテル本体と、そこを通って縦方向に延在する少なくとも1つの管腔とを備える。このカテーテル本体の遠位端には少なくとも2つのとげ状突起を有するマッピングアセンブリが搭載され、それぞれのとげ状突起は、カテーテル本体の遠位端に取り付けられた近位端と、自由遠位端とを有する。それぞれのとげ状突起は、好ましくは先端電極である少なくとも1つの電極と、少なくとも1つのリング電極とを備える。とげ状突起は、それぞれのとげ状突起がカテーテル本体から半径方向に外向きに延在する展開型の配列に配置されてもよいし、それぞれのとげ状突起がカテーテル本体の長手方向軸にほぼ沿って配設される集中型の配列に配置されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載する本発明の一実施形態は、患者身体内へ挿入するための挿入チューブと、挿入チューブの遠位端に取り付けられる複数のアームとを含む医療用プローブを提供する。それぞれのアームは、アームを横断するワイヤの編組を含む。複数の電極が、アームに連結され、編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続される。電極は、ワイヤを介し患者身体の外部のシステムと信号を交換するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態において、電極のうちの1つ又は2つ以上は、測定された電気生理学的(EP)電位に反応して信号を生成するように構成される電気生理学的(EP)マッピング電極を含む。一実施形態において、電極のうちの1つ又は2つ以上は、アブレーション信号に反応して組織のアブレーションを実行するように構成されるアブレーション電極を含む。別の実施形態において、医療用プローブは、1つ又は2つ以上の位置センサを含み、位置センサは、アームに連結され、編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続されて、患者身体内のそれぞれの位置を示す位置信号を生成し、位置信号をワイヤを介して伝達するように構成される。
【0011】
また別の実施形態において、複数のアームは、バスケット構成に展開可能である。更に別の実施形態において、それぞれのアーム内のワイヤの編組は、らせん状に巻かれている。例示的実施形態において、編組の選択されたワイヤは、電気的に絶縁される。
【0012】
加えて、本発明の一実施形態に従い、挿入チューブと、挿入チューブの遠位端に取り付けられた複数のアームとを含む医療用プローブを患者身体内へ挿入することを含む方法が提供される。アームは、アームを横断するワイヤのそれぞれの編組と、編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続される複数の電極とを含む。信号は、電極と、患者身体の外部のシステムとの間で、ワイヤを介して交換される。
【0013】
更に、本発明の一実施形態に従い、患者身体内へ挿入するための挿入チューブを提供することを含む方法が提供される。複数のアームは、挿入チューブの遠位端に取り付けられ、複数のアームのそれぞれのアームは、アームを横断するワイヤの編組を含む。複数の電極がアームに連結され、電極は、ワイヤを介して患者身体の外部のシステムと信号を交換するように、編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続される。
【0014】
本発明は、以下の詳細な実施形態の説明を、図面と併せ読むことによって、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテル追跡システムの概略絵画図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、展開位置にあるマルチアーム・カテーテルの概略絵画図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、編組ワイヤを介して接続された位置センサとマッピング電極とを備えるマルチアーム・カテーテルのアームを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、
図3のカテーテルを使用して、電位をマッピングするための方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概論
カテーテルなどの医療用プローブは、様々な治療的及び診断的医療処置で使用される。プローブの遠位端は、電気生理学的(EP)マッピング電極及び/又は位置センサなど、多種多様な電極及びセンサを備えることができる。センサ及び電極によって感知される信号は、典型的には、適切なワイヤを使用して遠位端から送信される。いくつかの種類のプローブ、例えば、マルチアーム・カテーテルでは、センサ及び電極の数(したがって、ワイヤの数)は多数の場合がある。
【0017】
本明細書の以下に記載する本発明の実施形態は、マルチアーム・プローブの遠位端から電気信号を伝達するための向上した技術を提供する。いくつかの実施形態において、遠位端は複数のアームを備え、それぞれのアームは、1つ又は2つ以上のEPマッピング電極と1つ又は2つ以上の位置センサとを備える。
【0018】
それぞれのアームは更に、アームのために構造機械的支持を提供すること、並びにセンサ及び電極によって感知された信号を、遠位端からシステムの制御コンソールへ伝達することという二重の目的を果たすワイヤの編組を備える。典型的には、それぞれのセンサ又は電極は、対応するアームの編組ワイヤの中から選択されたそれぞれの対のワイヤによって、制御コンソールビアに接続される。
【0019】
開示する技術は信号伝送用に既存の編組ワイヤを再使用するので、カテーテル管腔を横断する追加のケーブル布線、及び追加の遮蔽が不要になる。このような体積の削減は、他の目的のためにカテーテル管腔を空けるため、又はカテーテルの直径を低減するために使用することができる。
【0020】
開示する技術は、典型的には多数の電極及びセンサを備える、マルチアーム・カテーテルにおいて特に重要である。プローブの直径が制約されるため、プローブの中央管腔を通じて延びるワイヤを介して信号を伝送させなければならないことは、電極及びセンサの可能な数を大幅に制限する。開示する技術は、この制限を排除し、プローブの直径にほとんど、又は全く影響を与えずに、任意の所望の数の電極及びセンサの使用を可能にする。
【0021】
開示する技術は、展開型バスケットカテーテル、又は任意の他の好適な構成など、多様なマルチアーム構造で使用することができる。その上、開示する技術は、位置センサ及びマッピング電極に限定されない。例えば、編組ワイヤは、アブレーション信号をアブレーション電極へ伝達するために使用することができる。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテル追跡システム20の概略絵画図である。システム20は、本実施例では心臓カテーテルであるプローブ22と、制御コンソール24とを含む。本明細書に記載する実施形態では、カテーテル22は、心臓26内の組織のアブレーション、及び、例えば心臓不整脈など、心臓の機能不全を診断するための心電信号のマッピングなど、任意の好適な治療及び/又は診断目的に使用されてもよい。
【0023】
コンソール24は、カテーテル22からの信号を受信するため及び本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ42を備える。プロセッサ42は、システムによって使用される機能を実行するためにソフトウェアにプログラムされてもよく、プロセッサはソフトウェアのためのデータをメモリ50に記憶する。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードするか、又は光学的、磁気的又は電子的記録媒体などの、非一時的な実体のある媒体上に提供されてもよい。代替的に、プロセッサ42の機能の一部又はすべてが、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0024】
オペレータ30(インターベンション治療を行う心臓専門医など)は、テーブル29に横たわった患者28の脈管系を通じて、カテーテル22を挿入する。カテーテル22は、挿入チューブと、遠位端40の一部であるマルチアームとを備える。オペレータ30は、
図1の挿入図に示されるように、カテーテルの近位端付近にあるマニピュレータ32を用いてカテーテル22を操作することによって、カテーテル22の遠位端40を心臓26の標的領域の近傍で動かす。カテーテル22の近位端は、プロセッサ42のインターフェース回路に接続される。
【0025】
心臓腔内におけるプローブの遠位端の位置は、一般的に、カテーテル追跡システム20の磁気位置感知によって測定される。この場合、コンソール24は駆動回路34を備え、この駆動回路34は、テーブル29に横たわった患者28の体外における既知の位置、例えば患者の胴体の下に位置する、磁界発生器36を駆動する。
【0026】
遠位端40は典型的には、複数のアームを備え、それぞれが1つ又は2つ以上の磁界センサと、1つ又は2つ以上のマッピング電極とを備える(以下の
図2及び3に図示)。遠位端が心臓の内面と接触するようになると、マッピング電極は、感知された電位に反応して、電位勾配信号を生成し、位置センサは、感知された外部の磁界に反応して、位置信号を生成し、これによって、プロセッサ42が、心臓腔内部の位置の関数として、電位をマッピングすることが可能になる。
【0027】
遠位端40内の複数の磁気位置センサ及びマッピング電極は、カテーテル近位端のプロセッサ42のインターフェース回路に接続される。オペレータ30は、ユーザディスプレイ46上の心臓26の画像44で、カテーテル遠位端40の位置を見ることができる。
【0028】
この位置検知法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムにおいて実行されており、その詳細は米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、PCT特許公開WO 96/05768、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号及び同第2004/0068178 A1号に開示されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
信号伝送のためのカテーテル編組ワイヤの使用
図2は、本発明の一実施形態による、カテーテル22の遠位端40の概略絵図である。この実施形態において、遠位端40(カテーテルの挿入チューブに接続される)は、複数のアーム54を備える。カテーテルの挿入中、アームは、畳み込まれた位置にまとめられる。所望の心臓腔内へ挿入後、アームは、
図2に示されるように展開位置に調整される。
【0030】
それぞれのアーム54は、1つ又は2つ以上のマッピング電極58、1つ又は2つ以上の位置センサ62、又は任意の他の種類のセンサ若しくは電極など、埋め込まれたセンサ又は電極を備える。展開位置で、アーム54のうちの1つ又は2つ以上は、心臓組織から信号を収集するために、心臓の内面に取り付けられる。それぞれのアームは、ワイヤの編組55を備え、それぞれの編組は、複数の導電性ワイヤを備えて、編組に機械的支持及び可撓性を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、電極58及びセンサ62は、編組の選択された対のワイヤに電気的に接続され、これらのワイヤは、電極及びセンサからの信号を伝達するために使用される。この編組の二重の使用は、それぞれのアーム54の低減された直径を可能にし、それによって、より薄型かつより小型の遠位端40を可能にする。
【0032】
代替実施形態において、電極のうちの1つ又は2つ以上は、アブレーション電極又は他の種類の電極を備えてもよい。加えて又は別法として、位置センサ62に加えて又は代わりに、多種多様なセンサを使用することができる。
【0033】
図2に示される展開位置構成は、場合によっては、バスケットカテーテルと呼ばれる。しかしながら、開示する技術はバスケットカテーテルに限定されず、PentaRay(登録商標)などのマルチアーム・カテーテルの他の構成でも使用することができる。
【0034】
以下に示す実施形態において、編組55内の複数のワイヤは、らせん状に巻かれている。しかしながら、一般的に、ワイヤは、メッシュに織られても、らせんコイルに巻かれても、又は任意の他の好適なパターンに構成されてもよい。本特許出願の文脈において、また請求項において、「編組」及び「編組ワイヤ」という用語は、様々なメッシュ状及びコイル状の構成を含む、ワイヤの任意の好適な構成を指す。
【0035】
要約すると、遠位端40は、複数のアーム54を有し、それぞれのアーム54は、ワイヤの編組55によって包囲され、それぞれのアーム54は、電位マッピングのための1つ又は2つ以上のマッピング電極58と、遠位端の位置決め及び配向のための1つ又は2つ以上の位置センサ62とを備える。開示する技術は、操作中、機械的支持及び信号伝送という、編組55ワイヤの二重の用途を実現する。信号伝送のための編組ワイヤの使用の所定の態様は、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、2014年1月17日出願の米国特許出願第14/157,739号にも記載されている。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態による、マルチアームのうちの単一のアーム54の遠位端40のワイヤを模式的に示す図である。編組55は、複数のワイヤを備える。それぞれの位置センサ62及びそれぞれのマッピング電極58は、編組55の複数のワイヤから選択されたそれぞれのワイヤ対に接続される。センサ及び電極を接続するために使用されるワイヤは、電気的に絶縁され、絶縁は、電極又はセンサをワイヤに接続するために適切な場所で露出される。
【0037】
例えば、
図3において、1つのマッピング電極58は、1対のワイヤ81に接続され、位置センサ62は、1対のワイヤ83に接続され、追加のマッピング電極58は、1対のワイヤ82に接続される。これらのワイヤのそれぞれは、編組55の他のワイヤから電気的に絶縁される。
【0038】
編組55のワイヤは典型的には、カテーテルの全長に沿って延びる。近位端で、ワイヤは、コンソール24に接続される。このように、センサ62及び電極58によって生成される電気信号は、選択されたワイヤを介してコンソール24へ伝達される。
【0039】
代替実施形態において、1つ又は2つ以上のアブレーション電極又は他の種類の電極及びセンサなどの追加の装置は、1つ又は2つ以上のアーム54に埋め込み、選択された編組ワイヤを使用してコンソール24に接続することができる。代替実施形態において、遠位端は、任意の好適な数のアーム54を備えてもよく、アームは、バスケット構成又は任意の他の適切な構成に配置されてもよい。それぞれのアーム54は、任意の所望の数のマッピング電極、位置センサ、及び/又は任意の所望の数の他の種類のセンサ若しくは電極を有してもよい。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態による、
図3のカテーテル22を使用して電位をマッピングするための方法を模式的に示すフローチャートである。方法は、挿入工程200で、オペレータ30が、カテーテル22を挿入することから開始する。
【0041】
展開工程210で、オペレータは、カテーテルのマルチアーム遠位端40を展開する。装着工程220で、オペレータは、マルチアーム遠位端40を患者の心臓の所望の場所の内面に取り付ける。印加工程230で、磁界生成器36からの磁界を患者の身体28に印加する。測定工程240で、システムは、位置センサ62を使用して位置を、マッピング電極58を使用して電位を測定する。
【0042】
信号伝達工程250で、プロセッサ42は、アーム54の編組ワイヤを介して、位置センサ及びマッピング電極から信号を読み取る。代替実施形態において、編組55ワイヤは、アブレーション電極、又は患者の身体内で別の診断若しくは治療処置を実施する任意の他の適切な装置を接続するために使用することができる。処理工程260において、プロセッサ42は、電気生理学的マップを生成し、ユーザディスプレイ46に心臓26の画像44にマップを表示するように、多様な位置センサ及びマッピング電極からの信号を処理する。
【0043】
本明細に記載される実施形態は、主として心臓学に関するが、本明細に記載される方法及びシステムは、耳鼻咽喉(ENT)など他の用途にも用いることができる。
【0044】
したがって、上述の実施形態は一例として引用したものであり、また本発明は上記に具体的に図示及び記載したものに限定されないことは認識されるであろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことによって当業者には想到されるであろう、先行技術において開示されていない変形例及び改変例も含まれるものである。参照により本特許出願に援用される文書は本出願の一部をなすものとみなされるべきであるが、これらの援用される文書において、いずれかの用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされる定義と矛盾するように定義される限りは、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
患者身体内へ挿入するための挿入チューブと、
前記挿入チューブの遠位端に取り付けられる複数のアームであって、それぞれのアームが、前記アームを横断するワイヤの編組を備える、複数のアームと、
複数の電極であって、前記アームに連結され、前記編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続されて、前記ワイヤを介して前記患者身体の外部のシステムと信号を交換するように構成される、複数の電極と、を備える、医療用プローブ。
(2) 前記電極のうちの1つ又は2つ以上が、測定された電気生理学的(EP)電位に反応して前記信号を生成するように構成される電気生理学的(EP)マッピング電極を備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 前記電極のうちの1つ又は2つ以上が、アブレーション信号に反応して組織のアブレーションを実行するように構成されるアブレーション電極を備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(4) 前記アームに連結され、前記編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続されて、前記患者身体内のそれぞれの位置を示す位置信号を生成し、前記位置信号を前記ワイヤを介して伝達するように構成される、1つ又は2つ以上の位置センサを備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(5) 前記複数のアームが、バスケット構成に展開可能である、実施態様1に記載の医療用プローブ。
【0046】
(6) それぞれのアーム内のワイヤの前記編組が、らせん状に巻かれている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(7) 前記編組の前記選択されたワイヤが、電気的に絶縁される、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(8) 方法であって、
医療用プローブを患者身体内へ挿入することであって、該医療用プローブが、挿入チューブと、前記挿入チューブの遠位端に取り付けられた複数のアームであって、前記アームを横断するワイヤのそれぞれの編組を備える、複数のアームと、前記編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続される複数の電極とを備える、挿入することと、
前記電極と前記患者身体の外部のシステムとの間で、前記ワイヤを介して信号を交換することと、を含む、方法。
(9) 前記電極のうちの1つ又は2つ以上が、電気生理学的(EP)マッピング電極を備え、前記信号を交換することが、測定されたEP電位に反応して前記信号を生成することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記電極のうちの1つ又は2つ以上が、アブレーション電極を備え、前記信号を交換することが、組織のアブレーションを実行するためのアブレーション信号を送信することを含む、実施態様8に記載の方法。
【0047】
(11) 前記医療用プローブが、1つ又は2つ以上の位置センサを更に備え、該位置センサが、前記アームに連結され、前記編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続され、前記信号を交換することが、前記患者身体内のそれぞれの位置を示す位置信号を前記ワイヤを介して伝達することを含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記医療用プローブを挿入することが、前記複数のアームをバスケット構成に展開することを含む、実施態様8に記載の方法。
(13) それぞれのアーム内のワイヤの前記編組が、らせん状に巻かれている、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記編組の前記選択されたワイヤが、電気的に絶縁される、実施態様8に記載の方法。
(15) 方法であって、
患者身体内へ挿入するための挿入チューブを提供することと、
前記挿入チューブの遠位端に複数のアームを取り付けることであって、それぞれのアームが、前記アームを横断するワイヤの編組を備える、取り付けることと、
前記ワイヤを介して前記患者身体の外部のシステムと信号を交換するように、前記アームに複数の電極を連結し、前記電極を前記編組のそれぞれ選択されたワイヤに電気的に接続することと、を含む、方法。