(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。
【0012】
本発明の気体の微細化装置(以下、「微細化装置」と略記する)の一実施の形態の概略断面図を、
図1に示す。
図1に示す微細化装置10は、圧電素子11と、この圧電素子11の上側に重ねて配置された多孔振動板12を有して成る。
圧電素子11には、図中右端部に、圧電素子11に電圧を印加するための配線ケーブル14が接続されている。
多孔振動板12には、多数の微細な貫通孔13が形成されている。
【0013】
圧電素子11としては、従来から公知の構成の圧電素子、例えば、セラミック製の圧電素子を使用することができる。
多孔振動板12の材料としては、金属材料を使用することができる。多孔振動板12に使用される金属材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、プラチナ族金属(パラジウム等)又はその合金(例えば、パラジウムとニッケルの合金)、金又はその合金、等が挙げられる。
多孔振動板12は、圧電素子11に接着や半田付けで固定される。
【0014】
また、微細化装置10は、その本体が基材15によって構成されている。
基材15の中央部には、基材15の下部から上へ、縦に長く上端に開口を有する空間が形成されている。そして、基材15の上部には横に広い空間が形成されており、この空間に圧電素子11及び多孔振動板12が配置されており、基材15が圧電素子11及び多孔振動板12を収容する収容部となっている。
また、基材15の図中右側に、気体を多孔振動板12の下に供給する供給部16が設けられている。この供給部16は、基材15の外縁から基材15の中央部の空間への通路から成り、基材15の外縁において微細化装置10の外部から原料を供給する原料供給管(
図3の原料供給管18を参照)に接続される。
基材15の材料としては、丈夫で化学的に安定した材料、例えば、ステンレス等の金属やエポキシ樹脂等の樹脂、又はシリコーンやゴム等の樹脂を使用することができる。
【0015】
図1の微細化装置10の圧電素子11及び多孔振動板12の平面図を、
図2に示す。
図1及び
図2に示すように、圧電素子11は、中央に円形の開口11Aを有するドーナツ形状の円板とされている。
多孔振動板12は、ドーナツ形状の圧電素子11と一部が重なる円板である。多孔振動板12の貫通孔13は、多孔振動板12の中心付近の領域に形成され、圧電素子11の開口11Aに対応する部分に開口11Aの縁から内側に離れて形成されている。
【0016】
そして、本実施の形態の微細化装置10を使用する際には、基材15の供給部16から原料である気体を多孔振動板12の下に供給して、圧電素子11に電圧を印加して圧電素子11を振動させる。
これにより、圧電素子11に接続された多孔振動板12が振動して、多孔振動板12の貫通孔13から、気泡が多孔振動板12上の液体に供給される。
【0017】
本実施の形態の微細化装置10では、特に、圧電素子11及び多孔振動板12と、基材15との隙間を、封止材21で封止している。
封止材21は、圧電素子11又は多孔振動板12と接触し、圧電素子11及び多孔振動板12と基材15との隙間を埋めて形成されている。
封止材21は、圧電素子11の下面の一部と、多孔振動板12の上面の一部とにそれぞれ接触している。
それぞれの封止材21は、圧電素子11の開口11A側の端部(内周端部)に位置している。
そして、封止材21は、図示しないが、圧電素子11及び多孔振動板12と基材15との間を封止するために、圧電素子11の円形の開口11Aに沿って全周に形成されている。
【0018】
多孔振動板12とその上方の基材15との間の封止材21によって、多孔振動板12の液体側が封止されている。また、圧電素子11とその下方の基材15との間の封止材21によって、圧電素子11の気体側が封止されている。
【0019】
圧電素子11のうち、封止材21との接触部よりも外の部分は、圧電素子11の外周端部まで空間に露出しており、圧電素子11の外周端部が自由端となっている。これにより、圧電素子11の封止材21との接触部よりも外の部分を十分に振動させることができる。
一方、圧電素子11の封止材21との接触部は、固定端となっているので、圧電素子11の振動の際には節となる。
【0020】
封止材21の材料としては、各種の樹脂やシリコーン、ゴム等を使用することができる。
さらに、封止材21は、強い振動や衝撃に対しても圧電素子11及び多孔振動板12との接触の状態を安定して保つことができるように、ある程度弾性を有していることが、より好ましい。このような弾性を有する材料としては、シリコーンやゴム等の弾性樹脂が適しており、上述したように基材15の材料としてシリコーンやゴム等の樹脂を使用すれば、封止材21を基材15と一体に形成することができる。
【0021】
続いて、本実施の形態の微細化装置10の使用状態の一例を、
図3に示す。
図3に示すように、水等の液体101が貯められた水槽100内の底部に、本実施の形態の微細化装置10が沈められている。
そして、原料である気体を、水槽100の外部から微細化装置10に供給する原料供給管18と、圧電素子11に電圧を印加するための配線ケーブル14が、水槽100内の微細化装置10に接続されている。
配線ケーブル14には、圧電素子11に印加する交流電圧を発振する、発振機17が接続されている。
原料供給管18には、圧力を調整する調圧器19を介して、原料容器20が接続されている。気体を原料として微細化装置10で気泡を作製する場合には、原料容器20にガスボンベ等を使用することができる。
【0022】
この状態で、原料容器20から調圧器19と原料供給管18を通じて、原料となる気体を微細化装置10に供給し、発振機17で発振された交流電圧を、配線ケーブル14を介して圧電素子11に印加する。これにより、多孔振動板12の貫通孔から気泡を発生させて、水槽100の液体101内に、気泡を供給することができる。
【0023】
このように微細化装置10を使用することにより、微細化装置10本体を小型化しても、水槽100の液体101内に十分な量の気泡を供給することが可能になる。
また、使用後に、微細化装置10を水槽100から取り出して、別の水槽に微細化装置10を沈めて使用することもできる。
【0024】
微細化装置10に気泡を供給する場合に、原料となる気体としては、空気の他、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素等を使用することが可能である。
【0025】
上述の本実施の形態の微細化装置10によれば、圧電素子11及び多孔振動板12と接触して、圧電素子11及び多孔振動板12の液体側及び気体側をそれぞれ封止する封止材21を設けたことにより、液体に対して十分な封止が得られる。
また、封止材21により、圧電素子11と配線ケーブル等との接続部への液体の浸入を防ぐことができるので、絶縁性も実現することができる。
さらに、封止材21は、圧電素子11の開口側の端部(内周端部)に位置しているので、圧電素子11及び多孔振動板12の振動が抑制されることなく、微細な気泡を十分な量発生させることが可能になる。
【0026】
本発明の気体の微細化装置10に用いられる圧電素子11には、表面に電極(一般に、銀又は銀を主とするペーストを焼成して形成された厚膜電極)が形成されている。この電極は、電解性の液中では、圧電素子11の駆動のための電界がかかることにより、腐食が起こりやすい。
この為、本実施の形態の微細化装置10では、圧電素子11の上側(液体側)に多孔振動板12を重ねて配置して、封止材21で多孔振動板12の液体側を封止したことにより、圧電素子11の電極が直接液体に曝されることを回避できるので、腐食信頼性を高めることができる。
なお、汚濁水の浄化、発酵等の用途では、電解性が高い液体と接触させることから、特に腐食信頼性を高める効果が発揮される。
【0027】
また、本実施の形態の微細化装置10は、多孔振動板12を用いているため、目的とする気泡のみを微細化でき、供給先の液体に負荷をかけない。そのため、例えば、供給先の液体内の微生物等に悪影響を与えないで、気泡を発生させることが可能になる。
【0028】
また、本実施の形態の微細化装置10は、基本的に、基材15と圧電素子11と多孔振動板12と封止材21で微細化装置10を構成することができる。そして、圧電素子11及び多孔振動板12は直径1cm〜数cm程度の大きさでも、気体の微細化には十分であるため、微細化装置10を小型化することができる。
そして、微細化装置10を多数並べることにより、スケールアップも可能になる。
【0029】
図1では、封止材21が圧電素子11の下面及び多孔振動板12の上面に接触した構成であったが、封止材21が接触する対象は、この組み合わせに限定されない。封止材21により、多孔振動板12の液体側が封止されており、かつ、圧電素子11の開口11A側の端部に封止材21が位置している構成であればよい。例えば、圧電素子11及び多孔振動板12の上側に設ける封止材21が、多孔振動板12の上面から圧電素子11の上面にわたって接触する構成としても良い。
【0030】
また、圧電素子11及び多孔振動板12は、封止材21によって基材15との間を封止することが可能である限り、様々な形状の構成を採用することができる。
例えば、圧電素子11の開口11Aは円形に限定されず、四角形等その他の形状でも良い。
また、
図2では、多孔振動板12の貫通孔13が圧電素子11の開口11Aの縁から内側に離れて形成されていたが、例えば、多孔振動板12の貫通孔13を圧電素子11の開口11A内に均等に形成してもよい。
【0031】
図1では、多孔振動板12の上側(液体側)の封止材21と、圧電素子11の下側(気体側)の封止材21とを、同じ構成としていた。
圧電素子11及び多孔振動板12から成る振動素子の上から水圧がかかる際には、水圧によって振動素子が下方に変位する。この為、水圧による振動素子の変位に対応して、振動素子の上下の封止材21を異なる構成とした方がよい。例えば、振動素子の上の封止材21を振動素子の下の封止材21よりも長くした構成や、振動素子の下の封止材21よりも振動素子の上の封止材21が低い硬度とした構成が考えられる。
【0032】
図1〜
図2に示した実施の形態の微細化装置10では、封止材21が圧電素子11及び多孔振動板12に接触した構成であった。本発明の微細化装置において、封止材21の形状や振動素子(圧電素子及び多孔振動板)と封止材との接触状態は、
図1〜
図2に示した実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0033】
次に、振動素子の液体側に設ける封止材の各種形態を、
図4A〜
図4B、
図5、
図6に、それぞれ示す。なお、これら各図において、気泡1と基材15と圧電素子11と多孔振動板12は
図1と同じ符号を使用している。
【0034】
図4Aに示す形態は、振動素子との接触部を細い二重の円筒表面とした、封止材41を使用したものである。
図4Bに示す形態は、
図1と同じ封止材21を、弾性接着樹脂からなる接着材42で振動素子の多孔振動板12に固着したものである。この
図4Bに示す形態のように、封止材21の接触部を弾性接着樹脂からなる接着材42で固着すれば、振動素子に対する接触幅を増やしたり、封止の耐圧を高めたりするなど、封止性を向上させることができるため、振動効率が高い状態で封止性(防水性)を維持することができる。
【0035】
図5に示す形態は、振動素子の上側を
図1と同じ封止材21として、振動素子の下側を、振動素子と接触して下から保持するだけで封止しない、保持材43とした構成である。振動素子の上側は液体側であるので封止が必要であるが、振動素子の下側は気体側であるので封止していなくても構わない。
図5では、振動素子の圧電素子11が保持材43の上に載置されている。
また、基材15は、上側の基材15Aと下側の基材15Bとがボルト50を用いて接合されている。基材15がこのような構成であるため、上下の基材15A,15Bを組み立てる際に、振動素子がずれないように、保持材43を活用することも考えられる。
【0036】
図6に示す形態は、振動素子の上側は
図4Bと同様に、封止材21を接着材42で振動素子に固着しており、
図5に示した保持材43を不要にしたものである。
【0037】
この形態では、振動素子と基材15との間に隙間があり、振動素子は基材15とは接していない。この為、振動素子を自由に振動しやすくすることができる。また、気体の微細化装置の構造や組み立てにとって設計の自由度が高まる。
【0038】
上述した
図4A〜
図4B、
図5、
図6に示した各形態は、いずれも、
図1〜
図2に示した微細化装置10と同様に、圧電素子11の開口11A側の端部に封止材21が位置している。
【0039】
次に、本発明の微細化装置の他の実施の形態の概略断面図を、
図7に示す。
図7に示す微細化装置30は、
図1〜
図2の微細化装置10の封止材21の代わりに、Oリングを使用して、封止材45を構成している。
封止材45は、多孔振動板12の上側(液体側)と圧電素子11の下側(気体側)に設けられていて、多孔振動板12の液体側と圧電素子11の気体側を封止している。それぞれの封止材45は、圧電素子11の開口11A側の端部(内周端部)に位置している。
そして、Oリングからなる封止材45は、図示しないが、圧電素子11の円形の開口11Aに沿ってリング状に全周に形成されている。
【0040】
また、
図7に示す微細化装置30は、圧電素子11の外側の基材15の上に、小さい径のOリング46を介して、上部の基材48を配置している。また、配線ケーブル14は、基材15に開けた穴に通して、穴を充填材47で埋めている。
その他の構成は、
図1〜
図2に示した実施の形態の微細化装置10と同様であるので、重複説明を省略する。
【0041】
本実施の形態の微細化装置30によれば、圧電素子11及び多孔振動板12と接触して、圧電素子11及び多孔振動板12の液体側及び気体側をそれぞれ封止する封止材45を設けたことにより、液体に対して十分な封止が得られる。
また、封止材45により、圧電素子11と配線ケーブル等との接続部への液体の浸入を防ぐことができるので、絶縁性も実現することができる。
さらに、封止材45は、圧電素子11の開口11A側の端部(内周端部)に位置しているので、圧電素子11及び多孔振動板12の振動が抑制されることなく、微細な気泡を十分な量発生させることが可能になる。
【0042】
本発明の微細化装置のさらに他の実施の形態の概略断面図を、
図8に示す。
図8に示す微細化装置40は、
図1〜
図2の微細化装置10に対して、圧電素子11と多孔振動板12の上下を逆にして、圧電素子11を多孔振動板12の上側、即ち液体側に重ねて配置している。
【0043】
封止材21は、圧電素子11の上面の一部と、多孔振動板12の下面の一部とにそれぞれ接触している。
圧電素子11とその上方の基材15との間の封止材21によって、圧電素子11の液体側が封止されている。また、多孔振動板12とその下方の基材15との間の封止材21によって、多孔振動板12の気体側が封止されている。
【0044】
本実施の形態の微細化装置40では、圧電素子11を液体側に配置しているため、圧電素子11の開口側の端部(特に、圧電素子11の上面の内周端部や開口の側面)が液体に露出している。そのため、圧電素子11のうち液体に露出している部分では、圧電素子の電極の腐食を防ぐために、電極を当該部分には設けないことや、液体が直接電極に触れないように当該部分に厚さ数μm〜数十μmの絶縁性のオーバーコートを設けることが考えられる。オーバーコートの材料としては、ガラス、耐水性樹脂が用いられる。
なお、このオーバーコートは、その剛性が振動の抵抗になり、振動効率を下げる原因となりうる。従って、圧電素子11の液体に露出していない部分には、オーバーコートを設けないことが望ましい。
【0045】
その他の構成は、
図1〜
図2に示した実施の形態の微細化装置10と同様であるので、重複説明を省略する。
【0046】
本実施の形態の微細化装置40によれば、圧電素子11及び多孔振動板12と接触して、圧電素子11及び多孔振動板12の液体側及び気体側をそれぞれ封止する封止材21を設けたことにより、液体に対して十分な封止が得られる。
また、封止材21により、圧電素子11と配線ケーブル等との接続部への液体の浸入を防ぐことができるので、絶縁性も実現することができる。
さらに、封止材21は、圧電素子11の開口11A側の端部(内周端部)に位置しているので、圧電素子11及び多孔振動板12の振動が抑制されることなく、微細な気泡を十分な量発生させることが可能になる。
【0047】
なお、
図1に示した微細化装置10のように、圧電素子11の上側(液体側)に多孔振動板12を重ねて配置して、封止材21で多孔振動板12の液体側を封止した場合には、圧電素子11の電極が直接液体に曝されることを回避できる。従って、
図1に示した微細化装置10のように多孔振動板12を液体側に配置した場合には、圧電素子11にオーバーコートが形成されていない構成や、圧電素子11に薄いオーバーコートが形成されている構成であっても、腐食信頼性を高めることができる。
【0048】
上述の各実施の形態の微細化装置10,30,40では、圧電素子11の右端部の上下に配線ケーブル14を接続し、配線ケーブル14を圧電素子11の右側の基材15に通していた。本発明の微細化装置において、圧電素子と配線ケーブルの接続位置や配線ケーブルの基材への通し方は、これらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0049】
本発明の微細化装置の使用形態は、
図3に示したように水槽100等の液体槽内の底部に沈めた形態に限定されるものではない。
例えば、特許文献1の構成のように、本発明の微細化装置を液体槽の側面に設けてもよい。
この場合、振動素子の圧電素子及び
多孔振動板のうち、液体側の方が液体槽の内側に配置され、気体側の方が液体槽の外側に配置される。
微細化装置を液体槽の側面に設けた構成としては、基材を液体槽の側面に取り付けた構成や、液体槽の側面が基材を兼ねる構成が考えられる。いずれの構成の場合も、本発明の微細化装置を液体槽の側面に設けることにより、振動素子の液体側が封止材で封止されているので、液体槽の側面に直接多孔振動板を接続した特許文献1の構成と比較して、液体側の封止を確実に行うことができる。
【0050】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。