(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生油路に設けられ、当該回生油路を通じて前記回生装置に導入される作動油の流量である回生流量を制限するように変化可能な開口面積を有する回生弁と、この回生弁の開口面積を変化させることにより前記回生流量を制御する回生流量制御装置と、をさらに備える、作業機械の油圧駆動装置。
請求項2記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生装置は当該回生装置に導入される作動油の流量について許容流量を有し、前記回生流量制御装置は、前記回生流量が前記許容流量以下になるように前記回生弁を調節する、作業機械の油圧駆動装置。
請求項3記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生流量制御装置は、前記回生弁を通過する作動油の流量である回生弁流量を検出する回生弁流量検出器と、この回生弁流量検出器により検出される回生弁流量が前記許容流量以下になるように当該回生弁の開口面積を調節する回生弁操作部と、を含む、作業機械の油圧駆動装置。
請求項3記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生流量制御装置は、前記回生弁の前後差圧を検出する差圧検出器と、この差圧検出器により検出される前記前後差圧に基いて前記回生弁の開口面積の目標値を決定し、当該目標値に基いて当該回生弁の開口面積を調節する回生弁操作部と、を含む、作業機械の油圧駆動装置。
請求項2記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生装置は当該回生装置に導入される作動油の圧力である回生圧力について許容圧力を有し、前記回生流量制御装置は、前記回生圧力を検出する回生圧力検出器と、この回生圧力検出器により検出される回生圧力が前記許容圧力以上である場合に前記回生弁を閉じさせる回生弁操作部と、を含む、作業機械の油圧駆動装置。
請求項7記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生装置は当該回生装置に導入される作動油の流量について許容流量を有し、前記回生弁操作部は、前記回生圧力が前記許容圧力未満である領域において前記許容流量を目標回生流量に設定して実際の回生流量を当該目標回生流量に近づけるように前記回生弁の開口面積を調節する制御を行う、作業機械の油圧駆動装置。
請求項8記載の作業機械の油圧駆動装置であって、前記回生弁操作部は、さらに、前記回生圧力が前記許容圧力未満のときに当該許容圧力に近づくに従って前記目標回生流量が前記許容流量から減少するような特性に基いて当該目標回生流量を決定し、前記回生流量が前記目標回生流量に近づくように前記回生弁を調節する、作業機械の油圧駆動装置。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン等の作業機械に設けられる油圧駆動装置として、特許文献1に記載されるものが知られている。この装置は、作動油を吐出する油圧ポンプと、クレーンのウインチに接続される油圧モータと、方向切り換え弁と、カウンタバランス弁と、アキュムレータと、を備える。
【0003】
前記油圧モータは、一対のポートを有し、当該一対のポートのうちの一方のポートに前記油圧ポンプが吐出する作動油が供給されることにより回転して前記ウインチを巻上げまたは巻下げ方向に駆動するとともに、他方のポートから作動油を吐出する。巻下げ時には、前記ウインチの吊り荷に作用する重力によって当該ウインチから巻下げ方向の回転駆動力を受ける。
【0004】
前記方向切り換え弁は、前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間に設けられ、当該油圧ポンプから当該油圧モータへの作動油の供給のため油路を切り換える。具体的には、前記油圧モータを巻上げ方向に回転させるための油路と、巻下げ方向に回転させるための油路との切換を行う。
【0005】
前記カウンタバランス弁は、巻下げ時に前記油圧モータの下流側となる油路に設けられ、当該巻下げ時における前記油圧ポンプの吐出圧をパイロット圧として開閉作動する。具体的には、巻下げ時において前記吐出圧が一定以下の場合に閉弁することにより前記油圧モータの上流側の圧力を一定以上に保持し、これにより、当該巻下げ時における当該油圧モータの上流側でのキャビテーションの発生を防ぐ。
【0006】
前記アキュムレータは、前記カウンタバランス弁の下流側の油路から分岐する油路に接続され、巻上げ時に前記油圧ポンプから前記油圧モータに供給される作動油の一部の流入を受け入れて蓄圧を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記巻下げ時における前記油圧モータから吐出される作動油すなわち戻り作動油は、吊り荷の位置エネルギー等を含む高いエネルギーを保有するが、従来の装置では当該エネルギーを有効に回収することができない。
【0009】
前記特許文献1に記載されるアキュムレータは、前記ウインチの巻上げ時に作動油の供給油路となる巻上げ用油路に接続されて当該巻上げ時に蓄圧を行うためのものに過ぎず、巻下げ駆動時の戻り作動油のエネルギーを回収することはできない。当該巻下げ時には、当該アキュムレータが接続される油路は戻り油路としてタンクに連通されるため、前記アキュムレータによる蓄圧は不可能である。
【0010】
このような課題は、前記ウインチの巻下げ時に限らず、負荷に接続される油圧アクチュエータに対して当該負荷から当該油圧アクチュエータを駆動するエネルギーが付与されるような駆動時に広く生じ得るものである。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、前記作業機械の負荷から当該負荷を駆動するための油圧アクチュエータに付与されるエネルギーを有効に回生することが可能なものを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により提供されるのは、
吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うウインチを備えた作業機械であるクレーンに設けられ
て少なくとも前記ウインチの巻下げ駆動を行う油圧駆動装置であって、作動油を吐出する油圧ポンプと、入口ポート及び出口ポートを有する油圧
モータであって、前記油圧ポンプから前記入口ポートへの作動油の供給により前記
ウインチを前記吊り荷の巻下げ方向に駆動するとともに当該
ウインチを介して前記吊り荷のもつ位置エネルギー及び運動エネルギーの付与を受けて前記出口ポートから作動油を排出するように
前記ウインチに接続されるものと、前記油圧ポンプが吐出する作動油を前記油圧
モータの入口ポートに導く供給油路と、前記油圧
モータの
前記出口ポートから排出される作動油をタンクに導く排出油路と、前記排出油路に設けられ、前記油圧
モータの入口ポートに吸入される作動油の圧力を予め設定された圧力に保つとともに当該油圧
モータの駆動力に釣り合う保持圧を当該油圧
モータの出口ポートに生じさせ
て前記吊り荷の自由落下を防ぐように、前記油圧ポンプから前記油圧
モータの入口ポートに供給される作動油の圧力に応じて開閉作動する安全弁と、前記油圧
モータの出口ポートから排出されて前記排出油路を流れる戻り作動油のエネルギーを回生するための回生装置と、前記排出油路において前記安全弁と前記タンクとの間の位置に設けられる圧力制御弁であって、タンク圧よりも高くかつ前記保持圧よりも低い範囲で定められる設定圧を有し、当該圧力制御弁の一次圧を前記設定圧に保つように開閉作動するものと、前記安全弁から排出される前記戻り作動油を前記回生装置に導くように前記安全弁と前記圧力制御弁との間の位置で前記排出油路から分岐して前記回生装置に至る回生油路と、を備える。
【0013】
この装置によれば、安全弁のさらに下流側に設けられた圧力制御弁が当該圧力制御弁の一次圧をタンク圧よりも高い設定圧に保持するので、前記安全弁から排出される戻り作動油は、前記圧力制御弁よりも上流側の位置で前記排出油路から分岐する回生油路を通じて、当該圧力制御弁の前記設定圧を上限とする回生圧力でもって前記回生油路を通じて前記回生装置に導入されることができる。これにより、当該戻り作動油のもつエネルギーが前記回生装置によって有効に回生される。しかも、前記設定圧は前記安全弁による保持圧よりも低い範囲で設定されるので、当該設定圧が当該保持圧を上回る場合と異なり、当該保持圧よりも大きい圧力が油圧
モータの出口ポートに作用して油圧ポンプの負荷を増大させることが、防がれる。
【0014】
この装置は、さらに、前記回生油路に設けられ、当該回生油路を通じて前記回生装置に導入される作動油の流量である回生流量を制限するように変化可能な開口面積を有する回生弁と、この回生弁の開口面積を変化させることにより前記回生流量を制御する回生流量制御装置と、を備えることが、好ましい。当該回生弁及び当該回生流量制御装置は、前記回生装置に対して過度の流量で作動油が導入されるのを防いで当該回生装置を保護することが可能である。
【0015】
例えば、前記回生装置が当該回生装置に導入される作動油の流量について許容流量を有する場合、前記回生流量制御装置は、前記回生流量が前記許容流量以下になるように前記回生弁を調節することにより、当該回生装置を有効に保護することができる。
【0016】
具体的に、当該回生流量制御装置の好ましい態様としては、例えば、i)前記油圧
モータの出口ポートから排出される作動油の流量である排出流量を検出する排出流量検出器と、この排出流量検出器により検出される排出流量が前記許容流量以上となったときに前記回生弁を閉じさせる回生弁操作部と、を含むもの、ii)前記回生弁を通過する作動油の流量である回生弁流量を検出する回生弁流量検出器と、この回生弁流量検出器により検出される回生弁流量が前記許容流量以下になるように当該回生弁の開口面積を調節する回生弁操作部と、を含むもの、あるいは、iii)前記回生弁の前後差圧を検出する差圧検出器と、この差圧検出器により検出される前記前後差圧に基いて前記回生弁の開口面積の目標値を決定し、当該目標値に基いて当該回生弁の開口面積を調節する回生弁操作部と、を含むもの、が挙げられる。
【0017】
また、前記回生装置が当該回生装置に導入される作動油の圧力である回生圧力について許容圧力を有する場合、前記回生流量制御装置は、前記回生圧力を検出する回生圧力検出器と、この回生圧力検出器により検出される回生圧力が前記許容圧力以上である場合に前記回生流量が前記許容流量以下になるように前記回生弁を閉じさせる回生弁操作部と、を含むことにより、当該回生装置を過剰の回生圧力から有効に保護することができる。
【0018】
さらに、前記回生装置が前記許容圧力に加えて当該回生装置に導入される作動油の流量について許容流量を有する場合、前記回生弁操作部は、前記回生圧力が前記許容圧力未満である領域において前記許容流量を目標回生流量に設定して実際の回生流量を当該目標回生流量に近づけるように前記回生弁の開口面積を調節する制御を行うことにより、回生装置を過大な回生圧力と過大な回生流量の双方から保護することができる。
【0019】
この場合、回生流量制御装置は、さらに、前記回生圧力が前記許容圧力未満のときに当該許容圧力に近づくに従って前記目標回生流量が前記許容流量から減少するような特性に基いて当該目標回生流量を決定し、前記回生流量が前記目標回生流量に近づくように前記回生弁を調節することにより、前記回生圧力が前記許容圧力に達したときに前記回生弁を全閉にすることによるショックを有効に緩和することができる。
【0020】
また
本発明は、
作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、作動油を吐出する油圧ポンプと、入口ポート及び出口ポートを有する油圧アクチュエータであって、前記油圧ポンプから前記入口ポートへの作動油の供給により前記作業機械の負荷を駆動するとともに当該負荷からエネルギーの付与を受けて前記出口ポートから作動油を排出するように当該負荷に接続されるものと、前記油圧ポンプが吐出する作動油を前記油圧アクチュエータの入口ポートに導く供給油路と、前記油圧アクチュエータの出口ポートから排出される作動油をタンクに導く排出油路と、前記排出油路に設けられ、前記油圧アクチュエータの入口ポートに吸入される作動油の圧力を予め設定された圧力に保つとともに当該油圧アクチュエータの駆動力に釣り合う保持圧を当該油圧アクチュエータの出口ポートに生じさせるように、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータの入口ポートに供給される作動油の圧力に応じて開閉作動する安全弁と、前記油圧アクチュエータの出口ポートから排出されて前記排出油路を流れる戻り作動油のエネルギーを回生するための回生装置と、前記排出油路において前記安全弁と前記タンクとの間の位置に設けられる圧力制御弁であって、タンク圧よりも高くかつ前記保持圧よりも低い範囲で定められる設定圧を有し、当該圧力制御弁の一次圧を前記設定圧に保つように開閉作動するものと、前記安全弁から排出される前記戻り作動油を前記回生装置に導くように前記安全弁と前記圧力制御弁との間の位置で前記排出油路から分岐して前記回生装置に至る回生油路と、前記回生油路に設けられ、当該回生油路を通じて前記回生装置に導入される作動油の流量である回生流量を制限するように変化可能な開口面積を有する回生弁と、前記回生弁の開口面積を変化させることにより前記回生流量を制御する回生流量制御装置と、を備えるものを提供する。この装置において、前記回生流量制御装置は、前記回生弁を流れる作動油の流量である回生弁流量についての目標値である目標回生弁流量を決定する目標回生弁流量決定部と、前記圧力制御弁の設定圧と前記回生装置に導入される作動油の圧力である回生圧力との差に基いて目標回生弁差圧を決定する目標回生弁差圧決定部と、前記目標回生弁流量及び目標回生弁差圧に基いて前記回生弁の目標開口面積を決定し、この目標開口面積に基いて前記回生弁の開口面積を調節する回生弁操作部と、を備え
る。この回生流量制御装置は、実際の回生弁流量を前記目標回生弁流量に近づけながら、当該回生弁の前後差圧を前記目標回生弁差圧に近づける制御を行うことにより、前記圧力制御弁の一次圧すなわち安全弁の二次圧を安定させて当該二次圧の大きな変動による安全弁の不安定挙動を防ぐことができる。
【0021】
前記圧力制御弁の設定圧は、固定されたものでもよいし、可変のものでもよい。後者の場合
として、
本発明は、作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、作動油を吐出する油圧ポンプと、入口ポート及び出口ポートを有する油圧アクチュエータであって、前記油圧ポンプから前記入口ポートへの作動油の供給により前記作業機械の負荷を駆動するとともに当該負荷からエネルギーの付与を受けて前記出口ポートから作動油を排出するように当該負荷に接続されるものと、前記油圧ポンプが吐出する作動油を前記油圧アクチュエータの入口ポートに導く供給油路と、前記油圧アクチュエータの出口ポートから排出される作動油をタンクに導く排出油路と、前記排出油路に設けられ、前記油圧アクチュエータの入口ポートに吸入される作動油の圧力を予め設定された圧力に保つとともに当該油圧アクチュエータの駆動力に釣り合う保持圧を当該油圧アクチュエータの出口ポートに生じさせるように、前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータの入口ポートに供給される作動油の圧力に応じて開閉作動する安全弁と、前記油圧アクチュエータの出口ポートから排出されて前記排出油路を流れる戻り作動油のエネルギーを回生するための回生装置と、前記排出油路において前記安全弁と前記タンクとの間の位置に設けられる圧力制御弁であって、タンク圧よりも高くかつ前記保持圧よりも低い範囲で定められる設定圧を有し、当該圧力制御弁の一次圧を前記設定圧に保つように開閉作動するものと、前記安全弁から排出される前記戻り作動油を前記回生装置に導くように前記安全弁と前記圧力制御弁との間の位置で前記排出油路から分岐して前記回生装置に至る回生油路と、前記油圧アクチュエータの出口側圧力であって前記安全弁の一次圧を検出する圧力検出器と、前記圧力制御弁の設定圧が前記圧力検出器により検出される圧力以下の圧力になるように当該設定圧を調節する設定圧調節器と、
を備える
ものを提供する。このような設定圧の調節は、作業条件によって前記圧力検出器により検出される圧力すなわち前記安全弁による保持圧が大きく変動しても、当該保持圧を前記圧力制御弁の設定圧が上回ることを防ぎ、これにより、当該保持圧を上回る圧力が油圧アクチュエータに作用して油圧ポンプの負荷を増大させることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、作業機械に設けられる油圧駆動装置であって、前記作業機械の負荷から当該負荷を駆動するための油圧アクチュエータに付与されるエネルギーを有効に回生することが可能なものが、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態に係る装置は、いずれも、吊り荷2の巻上げ及び巻下げを行うウインチ4を備えたクレーンに設けられる油圧駆動装置であって、少なくとも当該ウインチ4の巻下げ駆動を行うものであるが、本発明に係る油圧駆動装置が設けられる作業機械はクレーンに限られない。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す。この装置は、油圧ポンプ10と、油圧モータ12と、供給油路14と、排出油路16と、安全弁18と、圧力制御弁20と、アキュムレータ22と、回生油路24と、回生弁26と、回生流量制御装置と、を備える。
【0026】
前記油圧ポンプ10は、図略のエンジンに連結され、このエンジンにより回転駆動されることにより、タンク内の作動油を吸い込んで吐出する。
【0027】
前記油圧モータ12は、前記ウインチ4に接続され、当該ウインチ4の巻下げ方向の駆動を行う。具体的に、当該油圧モータ12は、第1ポート12a及び第2ポート12bを有し、前記油圧ポンプ10から前記第1ポート12aへの作動油の供給により回転作動して前記ウインチ4を巻下げ方向に駆動するとともに、当該ウインチ4を介して前記吊り荷2のもつ位置エネルギー及び運動エネルギーの付与を受け、前記第2ポート12bから作動油を排出する。前記供給油路14は、前記油圧ポンプ10が吐出する作動油を前記油圧モータ12の第1ポート12aに導き、前記排出油路16は、前記油圧モータ12の第2ポート12bから排出される作動油をタンクに導く。
【0028】
図1には、巻下げ方向の駆動のための回路、つまり負荷に作用する外力(吊り荷2に作用する重力)と同方向にウインチを動かすための回路、のみが示されている。しかし、本発明に係る油圧駆動装置は、当該外力に抗する向きに負荷を動かす機能を併せもつものであってもよい。例えば、
図1に示される回路に、前記油圧ポンプ10と前記油圧モータ12との間に介在するコントロールバルブが付加され、このコントロールバルブが、前記油圧ポンプ10からの作動油を前記油圧モータ12の第2ポート12bに導いて当該油圧モータ12を巻上げ方向に回す油路と、前記油圧ポンプ10からの作動油を前記油圧モータ12の第1ポート12aに導いて当該油圧モータ12を巻下げ方向に回す油路と、の切換を行うものであってもよい。この場合、後者の油路について本発明が有効に適用される。
【0029】
前記安全弁18は、いわゆるカウンタバランス弁であり、前記油圧モータ12の入口ポートである第1ポート12aに吸入される作動油の圧力を予め設定された圧力に保つとともに当該油圧モータ12の駆動力に釣り合う保持圧を当該油圧モータ12の出口ポートである第2ポート12bに生じさせるように、前記供給油路14内の圧力すなわち前記油圧ポンプ10から前記油圧モータ12の第1ポート12aに供給される作動油の圧力、いわゆるポンプ圧、に応じて開閉作動する。具体的には、前記ポンプ圧が一定以上の場合にのみ開弁し、一定未満の場合は閉弁状態を保つ。
【0030】
前記圧力制御弁20は、前記排出油路16において前記安全弁18と前記タンクとの間の位置に設けられ、当該圧力制御弁20の一次圧を予め与えられた設定圧Psに保つように開閉作動する。具体的に、当該圧力制御弁20は、その一次圧すなわち前記安全弁18の二次圧が前記設定圧Psよりも低いときは閉弁状態を保ち、当該圧力制御弁20の一次圧が当該設定圧Ps以上になると開弁する。この設定圧Psは、タンク圧よりも高くかつ前記安全弁18により保持される油圧モータ12の出口側圧力である保持圧Phよりも低い圧力(例えば当該保持圧Phの90%の圧力)に設定されている。
【0031】
前記アキュムレータ22は、前記油圧モータ12の第2ポート12bから排出されて前記排出油路16を流れる戻り作動油の導入を受け入れて蓄圧するものであり、当該戻り作動油のエネルギーを回生するための回生装置に相当する。このアキュムレータ22には、その構造上、許容流量Qaが設定されている。この許容流量Qaは、前記アキュムレータ22に導入される作動油の流量である回生流量Qrについて設定された流量であり、当該アキュムレータ22を支障なく運転するために許容される回生流量Qrの上限値である。
【0032】
前記回生油路24は、前記安全弁18と前記圧力制御弁20との間の位置で前記排出油路16から分岐して前記アキュムレータ22に至ることにより、前記安全弁18から排出される前記戻り作動油を前記アキュムレータ22に導く。
【0033】
なお、本発明に係る回生装置は前記アキュムレータ22に限定されない。当該回生装置は、例えば、戻り作動油の供給を受けて作動することにより当該戻り作動油のエネルギーを運動エネルギー(機械エネルギー)に変換する油圧アクチュエータであってもよい。これは他の実施の形態についても同様である。
【0034】
前記回生弁26は、前記回生油路24に設けられる流量制御弁である。具体的に、当該回生弁26は、外部からの流量指令信号の入力を受けることにより、当該開弁26の開口面積を変化させるように開閉作動する。この開口面積の調節により、前記回生油路24を通じて前記アキュムレータ22に導入される作動油の流量である前記回生流量Qrの制限が可能である。
【0035】
前記回生流量制御装置は、前記回生弁26の開口面積Arを変化させることにより前記回生流量Qrを制御するものである。この実施の形態に係る回生流量制御装置は、
図1に示される排出流量検出器28と、コントローラ30と、を備える。
【0036】
前記排出流量検出器28は、前記油圧モータ12の第2ポート12bから排出される作動油の流量である排出流量Qdを検出する。具体的に、当該排出流量検出器28は、当該排出流量Qdに対応した電気信号である排出流量検出信号を生成し、これを前記コントローラ30に入力する。
【0037】
前記コントローラ30は、前記回生弁26に前記流量指令信号を入力することにより当該回生弁26の開口面積Arを調節する回生弁操作部を含む。具体的に、当該コントローラ30の回生弁操作部は、前記排出流量検出器28により検出される排出流量Qdが前記許容流量Qa未満の場合は前記回生弁26を開弁させる、つまりその開口面積を0よりも大きくする一方、前記排出流量Qdが前記許容流量Qa以上の場合は前記回生弁26を閉弁する、つまりその開口面積を0にする。
【0038】
前記排出流量Qdが前記許容流量Qa未満の領域における当該排出流量Qdに対する前記回生弁開口面積Arの特性は、適宜設定されることが可能である。例えば、
図2に実線で示されるように、前記領域では前記回生弁開口面積Arが常に最大値Amaxに保たれてもよいし、
図2に破線で示されるように、前記排出流量Qdが前記許容流量Qaに近づくに従って前記回生弁開口面積Arが前記最大値Amaxから次第に減少する特性が設定されてもよい。後者の場合、前記コントローラ30は、その設定された特性を記憶し、当該特性に基いて前記開口面積Arの調節を行う。この特性は、前記回生弁26の閉弁動作を滑らかにして当該閉弁の際のショックを有効に緩和する。
【0039】
次に、この油圧駆動装置の作用を説明する。
【0040】
前記油圧ポンプ10から作動油が吐出されると、この作動油は前記油圧モータ12にその第1ポート12aを通じて流入し、当該油圧モータ12を回転させる。当該油圧モータ12は、当該作動油の供給により前記ウインチ4を吊り荷2の巻下げ方向に駆動するとともに、当該油圧モータ12の第2ポート12bから作動油を排出し、この作動油は戻り作動油として排出油路16を通じてタンクに流される。この排出油路16において、安全弁18は、前記供給油路14内の作動油の圧力に応じて開閉作動する、具体的には当該作動油の圧力が一定以上の場合にのみ開弁する、ことにより、前記油圧モータ12の入口側の圧力を予め設定された一定の圧力に保って当該油圧モータ12の出口側の圧力を当該油圧モータ12の駆動力に釣り合う保持圧Phに保ち、これにより、前記油圧モータ12の上流側でのキャビテーションの発生を防ぎ、ひいては前記吊り荷2の自由落下を防ぐ。
【0041】
このような巻下げ駆動の際、降下する前記吊り荷2の位置エネルギー及び運動エネルギーがウインチ4を介して前記油圧モータ12に付与される。従って、当該油圧モータ12の第2ポート12bから排出される作動油すなわち戻り作動油は高いエネルギーを保有する。そして、この戻り作動油のエネルギーは、従来装置と異なり、回生装置であるアキュムレータ22によって有効に回収されることが可能である。
【0042】
具体的に、この装置では、前記安全弁18に加えてその下流側に設けられた圧力制御弁20が当該圧力制御弁20の一次圧をタンク圧よりも高い設定圧Psに保持するので、前記安全弁18から排出される戻り作動油は、前記圧力制御弁20よりも上流側の位置で前記排出油路16から分岐する回生油路24を通じて、当該設定圧Psを上限とする回生圧力Prでもって前記アキュムレータ22に導入されることが可能である。アキュムレータ22は、その導入された戻り作動油を受け入れて蓄圧することにより、当該戻り作動油のもつエネルギーの有効な回生を可能にする。
【0043】
さらに、この装置では、前記設定圧Psが前記安全弁18による保持圧Phよりも低い範囲で設定されるので、優れた省エネ効果が発揮される。すなわち、前記圧力制御弁20の設定圧Psが前記安全弁18による保持圧Phよりも高いと、前記油圧モータ12には前記保持圧Phよりも高い圧力が作用し、これにより油圧ポンプ10の負荷を増大させてしまうのに対し、前記設定圧Psを前記の範囲に設定すること、すなわちタンク圧よりも高くて保持圧Phよりも低い値に設定すること、が、前記省エネ効果を図りながら前記アキュムレータ22による回生を行うことを可能にする。
【0044】
さらに、この装置では、前記回生油路24に回生弁26が設けられ、コントローラ30は排出流量検出器28により検出される排出流量Qdがアキュムレータ22の許容流量Qa以上であるときに前記回生弁26を強制的に閉弁させるので、アキュムレータ22に過度の回生流量で作動油が導入されるのを防いで当該アキュムレータ22を有効に保護することが可能である。
【0045】
このようにアキュムレータ22を過大な回生流量から保護するための構成は、前記排出流量検出器28を具備するものに限られない。その他の例を第2の実施の形態及び第3の実施の形態として以下に説明する。
【0046】
図3は、第2の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す。この装置は、前記排出流量検出器28に代えて、回生流量検出器40を備える。回生流量検出器40は、前記回生弁26を流れる作動油の流量である回生弁流量Qvを検出し、当該回生弁流量Qvに相当する電気信号である回生弁流量検出信号を生成してコントローラ30に入力する。コントローラ30は、その検出される回生弁流量Qvが前記アキュムレータ22の許容流量Qa以下になるように当該回生弁26の開口面積Arを調節する回生弁操作部を含む。具体的に、コントローラ30の回生弁操作部は、検出される前記回生弁流量Qvを前記許容流量Qa以下の目標流量に近づけるようなフィードバック制御(例えばPID制御)を行うことにより、アキュムレータ22を過大な回生流量から有効に保護する。
【0047】
図4は、第3の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す。この装置は、
図1に示される前記排出流量検出器28に代えて、差圧検出器42を備える。差圧検出器42は、前記回生弁26の前後差圧である回生弁差圧ΔPvすなわち当該回生弁26の上流側圧力と下流側圧力との差を検出し、当該回生弁差圧ΔPvに相当する電気信号である差圧検出信号を生成してコントローラ30に入力する。コントローラ30は、その検出される回生弁差圧ΔPvに基いて前記回生弁26の開口面積Arの目標値を決定し、当該目標値に基いて当該回生弁26の開口面積Arを調節する回生弁操作部を含む。
【0048】
前記コントローラ30の回生弁操作部は、例えば、
図5に示すような前記回生弁差圧ΔPvに対する回生弁開口面積Arの特性を記憶し、この特性に基いて、前記回生弁差圧ΔPvに対応する目標開口面積Artを決定する。前記特性は、次の関係式に基いて設定されることが可能である。
【0049】
Qr=Cv×Ar×√ΔPv …(1)
ここで、Cvは流量係数である。この式によれば、実際の回生流量Qrを許容流量Qaに近づけるための開口面積Arは次式により与えられる。
【0050】
Ar=(Qa/Cv)/√ΔPv …(2)
図5に示される特性では、目標開口面積Artとして、回生弁開口面積Arの最大値Amaxと(2)式により与えられる開口面積Arのうち低位のものが採用されている。
【0051】
図6は、第4の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す。この油圧駆動装置は、
図1,
図3及び
図4に示される各検出器に代え、回生圧力検出器44を備える。
【0052】
回生圧力検出器44は、回生装置であるアキュムレータ22に導入される作動油の圧力である回生圧力Prを検出し、当該回生圧力Prに対応する電気信号である回生圧力検出信号を生成してコントローラ30に入力する。コントローラ30は、前記回生圧力検出器44により検出される回生圧力Prが、前記アキュムレータ22について予め設定された許容圧力Pa、つまり当該アキュムレータ22を支障なく運転するために許容される回生圧力の上限値、以上である場合に前記回生弁26を強制的に閉じるように、当該回生弁26を操作する。この操作は、前記アキュムレータ22を過剰の回生圧力から有効に保護することを可能にする。
【0053】
この装置において、前記回生圧力Prが前記許容圧力Pa未満である低圧領域での回生弁26の開口面積については、適宜設定されることが可能である。
【0054】
例えば、前記アキュムレータ22について前記許容圧力Paに加えて前記の許容流量Qaが設定されている場合、前記コントローラ30は、
図7に実線で示すように、前記低圧領域において前記許容流量Qaを目標回生流量Qrtに設定し、
図3または
図4に示される手段によって実際の回生流量Qrを前記目標回生流量Qrtすなわち前記許容流量Qaに近づける制御を行うことにより、前記アキュムレータ22を過大な回生圧力及び過大な回生流量の双方から有効に保護することができる。
【0055】
さらに、コントローラ30は、
図7に破線で示すように、回生圧力Prが許容圧力Paに近づくにつれて前記目標回生流量Qrtが前記許容流量Qaから減少するような特性に基いて回生流量の制御を行うことにより、前記回生圧力Prが前記許容圧力Paに達したときに前記回生弁26を全閉にすることによるショックを有効に緩和することができる。
【0056】
本発明の第5の実施の形態を説明する。この第5の実施の形態に係る装置は、
図1に示される安全弁18の二次側の圧力を安定させることにより、当該安全弁18の挙動を安定させる機能を有する。
【0057】
具体的に、この第5の実施の形態に係る装置は、
図1に示される構成要素と、
図6に示される回生圧力検出器44と、を併有する。さらに、この第5の実施の形態に係るコントローラ30は、
図8に示されるような目標回生弁流量決定部32と、目標回生弁差圧決定部34と、回生弁操作部36と、を有する。
【0058】
前記目標回生弁流量決定部32は、前記回生弁26を流れる作動油の流量である回生弁流量Qvについての目標値である目標回生弁流量Qvtを決定する。この目標回生弁流量Qvtは、例えば、
図1に示される排出流量検出器28により検出される排出流量Qdと、アキュムレータ22の許容流量Qaと、の間での低位選択によって決定されることが可能である。
【0059】
前記目標回生弁差圧決定部34は、前記圧力制御弁20の設定圧Psと回生圧力Prとの差に基いて、前記回生弁26の前後差圧である回生弁差圧ΔPvの目標値である目標回生弁差圧ΔPvt(=Ps−Pr)を決定する。
【0060】
前記回生弁操作部36は、前記目標回生弁流量Qvt及び前記目標回生弁差圧ΔPvtに基いて前記回生弁26の目標開口面積Artを決定し、この目標開口面積Artに基いて前記回生弁26の開口面積Arを調節する。当該目標開口面積Artは、
図5に示される目標開口面積Artと同様、前記(1)式に基いて設定されることが可能である。
【0061】
具体的に、実際の回生弁流量Qv及び回生弁差圧ΔPvをそれぞれ前記目標回生弁流量Qvt及び前記目標回生弁差圧ΔPvtに近づけるための開口面積Arは次の(3)式によって与えられる。
【0062】
Ar=(Qrt/Cv)/√ΔPvt …(3)
従って、目標回生弁差圧ΔPvtに対する目標開口面積Artの特性として、例えば
図9に示すような特性が設定される。この特性では、
図5に示される特性と同様、最終の目標開口面積Artとして、回生弁開口面積Arの最大値Amaxと(3)式により与えられる目標開口面積Artのうち低位のものが採用されている。
【0063】
この装置によれば、回生弁26において、常に前記目標回生弁差圧ΔPvtまたはこれに近い前後差圧を発生させることが可能であり、これにより、安全弁18の二次圧を安定させることができる。このことは、当該二次圧の大きな変動による安全弁18の不安定挙動を防ぐことを可能にする。
【0064】
この第5の実施の形態に係る制御は、第1〜第4の実施の形態に係る制御と同時に実行されることも可能である。この場合、第1〜第4の実施の形態に係る制御に基いて決定される目標開口面積Artと、例えば
図9に示される特性に基いて決定される目標開口面積Artのうちの低位のものが選択されるのが、よい。
【0065】
以上説明した実施の形態に係る装置は、いずれも、回生弁26を具備するが、当該回生弁26は仕様によっては適宜省略が可能である。例えば、アキュムレータ22またはこれに代わる回生装置の許容流量及び許容圧力に比べて運転時に想定される実際の回生流量及び回生圧力が十分に低い場合は、前記回生弁を省略しても前記回生装置の良好な使用が可能である。この場合、当該回生弁に代えて回生装置から排出油路への逆流を防ぐチェック弁が回生油路に設けられることが、好ましい。
【0066】
図10は、本発明の第6の実施の形態に係る装置を示す。この装置は、
図1に示される装置と同様に油圧ポンプ10、油圧モータ12、安全弁18、圧力制御弁20、アキュムレータ22及び回生油路24を備えるのに加え、前記安全弁18の一次圧である保持圧Phがウインチ4等の運転状態に応じて大きく変動する場合でも圧力制御弁20の設定圧Psを前記保持圧Phよりも低い圧力に保つ機能を有する。
【0067】
具体的に、この第6の実施の形態に係る装置は、前記機能を実現するための次の構成を具備する。
【0068】
A)圧力制御弁20の設定圧Psが可変である。具体的に、
図10に示される圧力制御弁20は、ソレノイド21を含み、当該ソレノイド21に対してこれを励磁する設定圧調節信号が入力されることにより、当該圧力制御弁20の設定圧Psの調節が可能である。
【0069】
B)当該装置は、圧力検出器46と、コントローラ50と、をさらに備える。前記圧力検出器46は、前記油圧モータ12の出口側圧力であって前記安全弁18の一次圧である圧力、つまり前記保持圧Phに相当する圧力、を検出する。前記コントローラ50は、前記圧力制御弁20の設定圧Psが前記圧力検出器46により検出される圧力以下の圧力になるように前記ソレノイド21に設定圧調節信号を入力する設定圧調節器として機能する。
【0070】
前記コントローラ50による前記圧力制御弁20の設定圧Psの調節は、作業条件によって前記圧力検出器46により検出される圧力すなわち前記安全弁18による保持圧Phに相当する圧力が大きく変動しても、当該保持圧Phを前記設定圧Psが上回ることを防ぎ、これにより、当該保持圧を上回る圧力が油圧モータ12に作用することによる油圧ポンプ10の負荷の増大を防ぐことを可能にする。
【0071】
なお、
図10に示される圧力制御弁20は、ソレノイド21を具備する電磁式のものであるが、入力されるパイロット圧によって設定圧が変わるパイロット式のものでもよい。この場合、前記設定圧調節器は、前記圧力制御弁のパイロットポートとパイロット油圧源との間に介在する電磁比例減圧弁と、この電磁比例減圧弁に電気信号を入力するコントローラと、を有することにより、前記と同様の設定圧の調節を行うことが可能である。