(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に装備される複数の摩擦ブレーキ装置と、要求ブレーキ力に応じ前記各摩擦ブレーキ装置に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段を有する上位制御装置とを備え、前記摩擦ブレーキ装置は、ブレーキロータ、摩擦材、およびこの摩擦材を前記ブレーキロータに押付ける摩擦材操作手段を有するブレーキアクチュエータと、前記ブレーキ力配分手段から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段の出力を制御する個別ブレーキ制御装置とを備える摩擦ブレーキシステムにおいて、
前記各摩擦ブレーキ装置の前記ブレーキロータと摩擦材との摩擦係数を前記各摩擦ブレーキ装置個別に推定するブレーキ摩擦係数推定手段を設け、前記ブレーキ力配分手段に、前記各摩擦ブレーキ装置に配分する目標となるブレーキ押圧力を、前記ブレーキ摩擦係数推定手段で推定された各摩擦ブレーキ装置の前記摩擦係数を反映させて算出する機能を有する摩擦ブレーキシステム。
請求項1に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ摩擦係数推定手段が、前記ブレーキ力配分手段から配分するブレーキ押圧力を摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する推定用配分調整部と、前記配分の変更されたブレーキ押圧力と前記車両の減速度との関係から前記摩擦係数を推定する推定演算部とを有する摩擦ブレーキシステム。
車両に装備される複数の摩擦ブレーキ装置と、要求ブレーキ力に応じ前記各摩擦ブレーキ装置に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段を有する上位制御装置とを備え、前記摩擦ブレーキ装置は、ブレーキロータ、摩擦材、およびこの摩擦材を前記ブレーキロータに押付ける摩擦材操作手段を有するブレーキアクチュエータと、前記ブレーキ力配分手段から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段の出力を制御する個別ブレーキ制御装置とを備える摩擦ブレーキシステムにおいて、
前記各摩擦ブレーキ装置の前記ブレーキロータと摩擦材との摩擦係数を推定するブレーキ摩擦係数推定手段を有し、このブレーキ摩擦係数推定手段は、前記ブレーキ力配分手段から配分するブレーキ押圧力を摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する推定用配分調整部と、前記配分の変更されたブレーキ押圧力と前記車両の減速度との関係から前記摩擦係数を推定する推定演算部とを有することを特徴とする摩擦ブレーキシステム。
請求項2または請求項3に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ摩擦係数推定手段の前記推定演算部が、演算要素として、前記摩擦係数と、前記摩擦材を押し付けるブレーキ押圧力と、車両減速度と、これら全ての演算要素を用いた等式を成立させるための車両諸元に基づく所定係数と、からなる等式の演算に基づいて算出するものであり、前記等式が、前記摩擦係数推定演算部で前記摩擦係数を推定する前記摩擦ブレーキ装置の個数と同じ複数の線形独立式に基づいて構成される摩擦ブレーキシステム。
請求項4に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ摩擦係数推定手段の前記推定演算部は、前記複数の線形独立式におけるブレーキ押圧力を含むフルランク行列の行列式の演算結果の絶対値が所定値を下回る場合において、前記行列式を用いて導出した摩擦係数推定結果について、前記所定値を上回る場合に導出された他の摩擦係数推定結果よりも最終的に導出する摩擦係数推定結果への影響が小さくなるか、または推定結果より除外するようにした摩擦ブレーキシステム。
請求項4または請求項5に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ摩擦係数推定手段の前記推定演算部は、前記複数の線形独立式が、前記要求ブレーキ力の変化量の絶対値が所定値以上である場合において変更されたブレーキ配分から取得される摩擦ブレーキシステム。
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ力配分手段は、前記ブレーキ摩擦係数推定手段の推定結果に基づいて、所望の制動トルクを発揮し得る前記ブレーキ押圧力を算出し、この算出したブレーキ押圧力を目標として前記摩擦ブレーキ装置へ与える摩擦ブレーキシステム。
請求項2ないし請求項6の何れか1項に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ摩擦係数推定手段の前記推定演算部は、前記要求ブレーキ力および前記ブレーキ押圧力のいずれか一方または両方が所定値以上で、かつ前記摩擦ブレーキシステムの搭載車両の車速または前記摩擦ブレーキ装置によって制動される各車輪の車輪速の最低値が所定値以上である場合に、摩擦係数の推定を実行する摩擦ブレーキシステム。
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の摩擦ブレーキシステムにおいて、前記摩擦ブレーキ装置が、前記摩擦材操作手段を駆動する電動のモータを有し、前記個別制御装置が、前記ブレーキ力配分手段から配分された前記ブレーキ押圧力を目標値に対して追従するよう前記モータを制御する機能を有する電動摩擦ブレーキ装置である摩擦ブレーキシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4のような四輪の制動力を独立制御可能な摩擦ブレーキ装置において、安価な構成で高精度なブレーキ力制御を実現する手法として、特許文献3のように油圧ブレーキの液圧に相当する摩擦材の押圧力を制御する手法が一般に知られている。
この手法では、実際に発生する制動力は摩擦材とブレーキロータの摩擦係数に依存して発生するため、摩擦材の摩擦係数のばらつきによって予期せぬヨーモーメントが発生し、ブレーキフィーリングが悪化する可能性がある。
例えば、特許文献4に記載のような、ヨーレートを打ち消すよう制御する手法を適用した場合、実際にヨーレートを検出した後でなければ是正する制御を適用することができず、車両挙動が振動的になる可能性がある。また、振動やノイズの影響を完全に除去できなかった場合、車両挙動が振動的になる可能性がある。
【0005】
この発明の目的は、摩擦係数を推定した上で各ブレーキの配分が可能となり、摩擦ブレーキ装置における安定した制動時の車両挙動およびブレーキフィーリングを高精度に実現することができる摩擦ブレーキシステムを提供することである。
この発明の他の目的は、摩擦ブレーキ装置の摩擦係数を精度良く推定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における第1の摩擦ブレーキシステムは、車両1に装備される複数の摩擦ブレーキ装置3と、要求ブレーキ力に応じ前記各摩擦ブレーキ装置3に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段12を有する上位制御装置6とを備え、前記摩擦ブレーキ装置3は、ブレーキロータ31、摩擦材32、およびこの摩擦材32を前記ブレーキロータ31に押付ける摩擦材操作手段33を有するブレーキアクチュエータ4と、前記ブレーキ力配分手段12から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段33の出力を制御する個別ブレーキ制御装置5とを備える摩擦ブレーキシステムにおいて、
前記各摩擦ブレーキ装置3の前記ブレーキロータ31と摩擦材32との摩擦係数を
前記各摩擦ブレーキ装置個別に推定するブレーキ摩擦係数推定手段14を設け、前記ブレーキ力配分手段12が、前記各摩擦ブレーキ装置3に配分する目標となるブレーキ押圧力を、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14で推定された各摩擦ブレーキ装置3の前記摩擦係数を反映させて算出する機能を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によると、摩擦係数を推定した上で、要求ブレーキ力に応じた各摩擦ブレーキ装置へのブレーキ押圧力の配分が可能となり、摩擦ブレーキ装置における安定した制動時の車両挙動およびブレーキフィーリングを高精度に実現することができる。
【0008】
前記第1の摩擦ブレーキシステムにおいて、このブレーキ摩擦係数推定手段14は、前記ブレーキ力配分手段12から配分するブレーキ押圧力を摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する推定用配分調整部15と、前記配分の変更されたブレーキ押圧力と前記車両の減速度との関係から前記摩擦係数を推定する推定演算部17とを有するようにしても良い。
この構成の場合、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14は、ブレーキ力配分手段12から配分するブレーキ押圧力を、摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する。推定演算部17は、この所定の組み合わせで変更したブレーキ押圧力で制動したときに、発生した制動力から各車輪2のブレーキロータ31と摩擦材32の摩擦係数を推定する。そのため、推定演算部17により、各車輪2のブレーキロータ31と摩擦材32の摩擦係数を精度良く推定することができる。
【0009】
この発明の他の摩擦ブレーキシステムは、車両1に装備される複数の摩擦ブレーキ装置3と、要求ブレーキ力に応じ前記各摩擦ブレーキ装置3に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段12を有する上位制御装置6とを備え、前記摩擦ブレーキ装置3は、ブレーキロータ31、摩擦材32、およびこの摩擦材32を前記ブレーキロータ31に押付ける摩擦材操作手段33を有するブレーキアクチュエータ4と、前記ブレーキ力配分手段12から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段33の出力を制御する個別ブレーキ制御装置5とを備える摩擦ブレーキシステムにおいて、
前記各摩擦ブレーキ装置3の前記ブレーキロータ31と摩擦材32との摩擦係数を推定するブレーキ摩擦係数推定手段14を有し、このブレーキ摩擦係数推定手段14は、前記ブレーキ力配分手段12から配分するブレーキ押圧力を摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する推定用配分調整部15と、前記配分の変更されたブレーキ押圧力と前記車両の減速度との関係から前記摩擦係数を推定する推定演算部17とを有する。
【0010】
この構成によると、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14は、ブレーキ力配分手段12から配分するブレーキ押圧力を、摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する。推定演算部17は、この所定の組み合わせで変更したブレーキ押圧力で制動したときに、発生した制動力から各車輪2のブレーキロータ31と摩擦材32の摩擦係数を推定する。そのため、推定演算部17により、各車輪2のブレーキロータ31と摩擦材32の摩擦係数を推定することができる。
このように各車輪2のブレーキロータ31と摩擦材32
の摩擦係数が推定できれば、ブレーキ力配分手段12が配分するときに、その推定した摩擦係数を用いることで、車両1の個々の摩擦ブレーキ装置3の摩擦係数が摩耗等によって変わっていても、摩擦係数に応じた適切な配分が行え、左右の車輪2の制動力差等によって車両の進行方向のずれ等が発生することが回避される。
【0011】
この発明において、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の前記推定演算部17が、演算要素として、前記摩擦係数と、前記摩擦材を押し付けるブレーキ押圧力と、車両減速度と、これら全ての演算要素を用いた等式を成立させるための車両諸元に基づく所定係数と、からなる等式の演算に基づいて算出するものであり、前記等式が、前記摩擦係数推定演算部で前記摩擦係数を推定する前記摩擦ブレーキ装置の個数と同じ複数の線形独立式(例えば、
図4のステップS6のブレーキ押圧量Fmを示す式や、同図のステップS8の摩擦係数μを求める式)に基づいて構成されるようにしても良い。
前記ブレーキ摩擦係数推定手段14は、このようにして、前記摩擦係数の推定を実現することができる。
なお、前記「車両諸元」は、車両を構成する各物理量であり、例えばブレーキロータ有効径や車両の総重量、各量の単位を合わせる事項等である。
【0012】
この場合に、前記摩擦係数推定演算部17は、前記複数の線形独立式におけるブレーキ押圧力を含むフルランク行列の行列式の演算結果の絶対値(| det(Fb)|)が所定値を下回る場合において(
図7のステップW2)、前記行列式を用いて導出した摩擦係数推定結果について、前記所定値を上回る場合に導出された他の摩擦係数推定結果よりも最終的に導出する摩擦係数推定結果への影響が小さくなるか、または推定結果より除外するようにしても良い。
このように、線形独立性が低くノイズや推定誤差の影響を受け易い推定結果を省くことで、摩擦係数の推定値の信頼性を向上させることができる。
【0013】
また、前記推定演算部17は、前記複数の線形独立式が、前記要求ブレーキ力の変化量の絶対値が所定値以上である場合において変更されたブレーキ配分から取得されるようにしても良い。(
図6のステップU2〜U4)
これにより、摩擦係数の推定結果が誤差を含む場合の、配分変化による減速度変化を目立たなくしてフィーリングを向上させることができる。
【0014】
この発明において、前記ブレーキ力配分手段12は、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の摩擦係数の推定結果に基づいて所望の制動トルクを発揮し得る前記ブレーキ押圧力を算出し、この算出したブレーキ押圧力を目標として前記摩擦ブレーキ装置へ与えるようにしても良い。
ブレーキ力配分手段12が上記のように摩擦係数の推定結果に基づいて配分する構成とすることで、摩擦係数誤差による各輪の制動力誤差の是正することができる。
なお、前記「所望の制動トルク」は、前記要求ブレーキ力に応じて各摩擦ブレーキ装置3へ配分すべきトルクである。
【0015】
この発明において、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の前記推定演算部17は、前記要求ブレーキ力および前記ブレーキ押圧力のいずれか一方または両方が所定値以上で、かつ前記摩擦ブレーキシステムの搭載車両の車速または前記摩擦ブレーキ装置3によって制動される各車輪2の車輪速の最低値が所定値以上である場合に、摩擦係数の推定を実行するようにしても良い。
これにより、減速度に誤差を含み易い極低速領域を推定の対象から除外し、摩擦係数の推定の精度や信頼度を高めることができる。
【0016】
この発明において、前記摩擦ブレーキ装置3が、前記摩擦材操作手段33を駆動する電動のモータ34を有し、前記個別ブレーキ制御装置5が、前記ブレーキ力配分手段12から配分された前記ブレーキ押圧力を目標値として追従するよう前記モータを制御する機能を有する電動摩擦ブレーキ装置であっても良い。
前記摩擦ブレーキ装置3が電動摩擦ブレーキ装置である場合、個々の摩擦ブレーキ装置3の制御を精度良く行えるため、この発明の摩擦ブレーキシステムによる摩擦係数の推定結果を用いる制御が効果的に行える。
【0017】
参考提案例に係る摩擦ブレーキシステムを説明すると、この摩擦ブレーキシステムは、車両1に装備される複数の電動摩擦ブレーキ装置3と、要求ブレーキ力に応じ前記各電動摩擦ブレーキ装置3に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段12を有する上位制御装置6とを備え、前記電動摩擦ブレーキ装置3は、ブレーキロータ31、摩擦材32、およびこの摩擦材を前記ブレーキロータ31に押付ける摩擦材操作手段33を有するブレーキアクチュエータ34と、前記ブレーキ力配分手段12から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段33の出力を制御する個別ブレーキ制御装置5とを備え、前記摩擦材操作手段33の駆動源を電動モータ34とした電動摩擦ブレーキ装置3からなる電動摩擦ブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキロータ31と前記摩擦材32との摩擦係数を推定するブレーキ摩擦係数推定手段14を設けたこと特徴とする。
この構成の場合、摩擦ブレーキ装置3が電動ブレーキ装置であるため、応答性良く、かつ精度良くブレーキ力が調整できる。そのため、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14により、ブレーキロータ31と前記摩擦材32との摩擦係数を精度良く推定することができる。また、その推定した摩擦係数を、各摩擦ブレーキ装置3へのブレーキ押圧力の配分等に使用することで、安定した制動時の車両挙動およびブレーキフィーリングを高精度に実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の第1の摩擦ブレーキシステムは、車両に装備される複数の摩擦ブレーキ装置と、要求ブレーキ力に応じ前記各摩擦ブレーキ装置に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段を有する上位制御装置とを備え、前記摩擦ブレーキ装置は、ブレーキロータ、摩擦材、およびこの摩擦材を前記ブレーキロータに押付ける摩擦材操作手段を有するブレーキアクチュエータと、前記ブレーキ力配分手段から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段の出力を制御する個別ブレーキ制御装置とを備える摩擦ブレーキシステムにおいて、前記各摩擦ブレーキ装置の前記ブレーキロータと摩擦材との摩擦係数を
前記各摩擦ブレーキ装置個別に推定するブレーキ摩擦係数推定手段を設け、前記ブレーキ力配分手段に、前記各摩擦ブレーキ装置に配分する目標となるブレーキ押圧力を、前記ブレーキ摩擦係数推定手段で推定された各摩擦ブレーキ装置の前記摩擦係数を反映させて算出する機能を有するため、摩擦係数を推定した上で各ブレーキの配分が可能となり、摩擦ブレーキにおける安定した制動時の車両挙動およびブレーキフィーリングを高精度に実現することができる。
【0019】
この発明における他の摩擦ブレーキシステムは、車両に装備される複数の摩擦ブレーキ装置と、要求ブレーキ力に応じ前記各摩擦ブレーキ装置に目標となるブレーキ押圧力を配分するブレーキ力配分手段を有する上位制御装置とを備え、前記摩擦ブレーキ装置は、ブレーキロータ、摩擦材、およびこの摩擦材を前記ブレーキロータに押付ける摩擦材操作手段を有するブレーキアクチュエータと、前記ブレーキ力配分手段から配分されたブレーキ押圧力に応じて前記摩擦材操作手段の出力を制御する個別ブレーキ制御装置とを備える摩擦ブレーキシステムにおいて、前記各摩擦ブレーキ装置の前記ブレーキロータと摩擦材との摩擦係数を推定するブレーキ摩擦係数推定手段を有し、このブレーキ摩擦係数推定手段は、前記ブレーキ力配分手段から配分するブレーキ押圧力を摩擦係数の推定のために所定の組み合わせで変更する推定用配分調整部と、前記配分の変更されたブレーキ押圧力と前記車両の減速度との関係から前記摩擦係数を推定する推定演算部とを有するため、各車輪の摩擦ブレーキ装置の摩擦係数を精度良く推定できて、摩擦係数を推定した上で各ブレーキの配分が可能となることで、摩擦ブレーキ装置における安定した制動時の車両挙動およびブレーキフィーリングを高精度に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の第1の実施形態を
図1ないし
図7と共に説明する。
図1は、四輪の自動車等の車両に適用した例を示す。この車両1は、フロント側(
図1の上側)およびリア側の左右の各車輪2に対して、摩擦ブレーキ装置3が設けられている。走行駆動源(図示せず)は、内燃機関または電動のモータまたはその両方である。摩擦ブレーキ装置3は、この実施形態では電動摩擦ブレーキ装置であり、機構的な部分であるブレーキアクチュエータ4と、このブレーキアクチュエータ4を制御する個別ブレーキ制御装置5とで構成される。
【0023】
ブレーキアクチュエータ4は、例えば
図2に示すように、ブレーキロータ31、摩擦材32、およびこの摩擦材32を前記ブレーキロータ31に押付ける摩擦材操作手段33を有し、またブレーキアクチュエータ4の状態量を検出するセンサ37が設けられている。ブレーキロータ31は、車輪2と一体に固定され回転する。摩擦材操作手段33は、駆動源となる電動のモータ34と、このモータ34の回転を摩擦材32の往復直線動作に変換する直動機構35と、モータ34の回転を前記直動機構35に伝達するギヤ列等の減速機36とで構成される。
【0024】
モータ34は、ブラシレスDCモータを用いると小型で高速な電動サーボシステムを実現できて好適と考えられるが、ブラシ付DCモータや誘導モータ等を用いても良い。直動機構35は、例えば各種ねじ機構やボールランプ機構等を用いることができる。また、減速機36は、平歯車を用いると安価で好適と考えられるが、ウォーム歯車や遊星歯車等を用いることもできる。
【0025】
前記センサ37は、例えば、モータ34についての状態量を検出するモータ角度センサまたはモータ電流センサを用いても良く、またブレーキアクチュエータ4の出力の結果等を検出するブレーキ押圧力センサや、直動機構35の進退位置を検出する位置センサ等を用いても良い。このような検出を行うセンサ37を設けることで、高精度・高速な電動ブレーキ制御系を構築でき、そのため好適と考えられる。角度センサはエンコーダやレゾルバ、電流センサはシャント抵抗やホール素子、また前記ブレーキ押圧力センサはホール素子や歪センサ、等により安価かつ省スペースに実装可能であるため、これらを用いると好適と考えられる。なお、この摩擦ブレーキシステムは、特別なセンサ素子を用いない推定、すなわちセンサレス推定による作動を行うようにしても良い。
【0026】
図1において、各摩擦ブレーキ装置3のブレーキアクチュエータ4は、上位制御手段である上位ECU6に設けられたブレーキ統合制御手段7、および前記個別ブレーキ制御装置5により制御される。上位ECU6は、車両1の全体の協調制御や統括制御、およびアクセル操作手段(図示せず)の操作量に応じた車両1の駆動源(図示せず)の制御等を行う電気制御ユニットであり、VCUと呼ばれることもある。ブレーキ統合制御手段7は、上位ECU6が備えるブレーキ制御に係る各制御手段を纏めて示している。
【0027】
図3は、上位ECU6と、複数の個別ブレーキ制御装置5およびアクチュエータ4からなるブレーキシステムの構成例を示す。同図は、電動のモータ34及び直動機構35を用いた電動の摩擦ブレーキ装置3を適用する例を示す。この構成を用いると、各車輪2の摩擦ブレーキ装置3を容易かつ高速・高精度に制御可能であり、この実施形態の摩擦ブレーキシステムを適用するに当たり好適なシステム構成と考えられる。
【0028】
同図において、各摩擦ブレーキ装置3の前記個別ブレーキ制御装置5は、上位ECU6のブレーキ力配分手段12より入力されるブレーキ押圧力に対して、実際のブレーキ押圧力を追従制御するブレーキ押圧力制御手段5aと、このブレーキ押圧力制御手段5aの演算結果に基づいて電動モータ34に電力を投入するモータドライバ5bとを備える。前記ブレーキ押圧力制御手段5aは、例えばマイコン、ACIC、FPGA,DSP等を用いると、複雑な演算を行える制御装置を安価に構成できて好適と考えられる。モータドライバ5bは、例えばMOSFET等のスイッチング素子を用いて構成すると安価で好適と考えられ、前記スイッチング素子を瞬時に駆動するためのプリドライバを含んでも良い。
【0029】
上位ECU6は、前記ブレーキ統合制御手段7を構成する各手段として、ブレーキ操作手段8により操縦者が要求するブレーキ力を推定する要求ブレーキ力推定手段11と、各摩擦ブレーキ装置3への目標ブレーキ押圧力を決定するブレーキ力配分手段12と、前記車両1である電動ブレーキシステム搭載車両の車両挙動に基づくブレーキ制御を行う車両制御演算手段13と、各摩擦ブレーキ装置3の摩擦材32とブレーキロータ31(
図2)との摩擦係数を推定するブレーキ摩擦係数推定手段14とを備える。なお、ブレーキ統合制御手段7は、上位ECU6とは独立した専用のECU等に設けても良いが、例えば強力な高速の演算装置である車両の上位ECU6等に実装されると好適と考えられる。
【0030】
前記ブレーキ操作手段8は、例えばブレーキペダルであるが、ペダル形式以外の操作手段であっても良い。ブレーキ操作手段8は、この他に、上位ECU6等に設けられて車両制御を目的としたブレーキ力の生成手段で合っても良い。
要求ブレーキ力推定手段11は、ブレーキ操作手段8に備えられた操作量の検出センサの出力から、前記操縦者が要求するブレーキ力の推定を行う。
ブレーキ力配分手段12は、基本的には、ブレーキ操作手段8の操作量、つまり要求ブレーキ力推定手段11により推定された要求ブレーキ力に応じ、定められた規則に従って各摩擦ブレーキ装置3へ荷重指令値を配分するが、前記車両制御演算手段13および前記ブレーキ摩擦係数推定手段14によって、配分の調整がなされる。
【0031】
前記車両制御演算手段13は、例えば前後重量配分等の車両特性や前後加速度に応じたブレーキ前後配分、旋回等に応じたブレーキ左右配分、横滑り防止制御、その他摩擦ブレーキ装置3を用いた各種車両制御の中のいずれか一つまたは複数を含む機能を有する。また、後述するブレーキ摩擦係数推定手段14による摩擦係数の推定結果に基づいて、前記所定量配分されたブレーキトルクを、ブレーキ有効径及びブレーキ摩擦係数から各輪のブレーキ押圧力に換算して出力すると、ブレーキ摩擦係数の誤差の影響を受けない制動力配分が実現できて好適と考えられる。
前記車両制御演算手段13は、上記の機能の他に、例えば前後重量配分等の車両特性や前後加速度に応じたブレーキ前後配分、旋回等に応じたブレーキ左右配分、横滑り防止制御、その他ブレーキを用いた各種車両制御、等を含む機能を有していても良い。
【0032】
ブレーキ力配分手段12は、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の摩擦係数の推定結果に基づいて所望の制動トルクを発揮し得る前記ブレーキ押圧力を算出し、この算出したブレーキ押圧力を目標値として前記摩擦ブレーキ装置3へ与える。前記「所望の制動トルク」は、前記要求ブレーキ力に応じて各摩擦ブレーキ装置3へ配分すべきトルクである。
この場合に、前記配分するブレーキトルクを、ブレーキ有効径及びブレーキ摩擦係数等から各車輪2のブレーキ押圧力に換算して出力するようにしても良い。
ブレーキ力配分手段12が上記のように摩擦係数の推定結果に基づいて配分する構成とされることで、摩擦係数誤差による各輪の制動力誤差を是正することができる。
【0033】
前記ブレーキ摩擦係数推定手段14は、前記ブレーキロータ31と摩擦材32との摩擦係数であるブレーキ摩擦係数の推定を行う手段であり、推定用配分調整部15と、データ取得部16と、推定演算部17とを備える。
【0034】
推定用配分調整部15は、前記ブレーキ力配分手段12から配分するブレーキ押圧力を前記摩擦係数の推定のために、後述の行列式等による所定の組み合わせで変更する手段である。前記データ取得部16は、前記摩擦係数の推定のためのデータを取得する手段である。前記推定演算部17は、データ取得部16により取得データに基づいてブレーキ摩擦係数の推定演算を行う手段であり、前記配分の変更されたブレーキ押圧力と前記車両の減速度との関係から前記摩擦係数を推定する。
【0035】
前記推定用配分調整部15は、推定演算部17で摩擦係数を推定するために前記ブレーキ力配分手段12により配分する前記荷重指令値の配分を変更する。前記摩擦係数推定演算部17は、摩擦ブレーキ装置3の前記ブレーキロータ31と摩擦材32との摩擦係数を推定する。また、摩擦係数推定演算部17は、前記配分の変更された前記荷重指令値と前記車両の減速度との関係から、摩擦係数を推定する機能を有する。
【0036】
上記構成による作用効果、および前記各手段の具体的な構成例を、
図4〜
図7の流れ図と共に説明する。
図4のステップS1は、
図3の要求ブレーキ力推定手段11が行い、同図の他の各ステップS2〜S9は、
図3のブレーキ摩擦係数推定手段14の摩擦係数推定演算部17が行う。
ステップS1:ブレーキ操作手段8により出力されるブレーキペダル操作量や、上位ECU6で生成される車両制御を目的としたブレーキ力、或いはその双方を含む結果に基づいて、操縦者ないし車両1より求められる要求ブレーキ力Bを推定する。
【0037】
ステップS2:要求ブレーキ力Bを所定値と比較し、要求ブレーキ力Bが所定値以上である場合、以降のブレーキ摩擦係数推定を実行する(ステップS3)。例えばブレーキ力の弱い領域であって発生し得る減速度が微弱である場合、後述するブレーキ摩擦係数推定の信頼性が低下する場合があり、また前記のブレーキ力が弱い領域においては、ブレーキ摩擦係数の誤差による車両挙動への影響もまた極めて小さいため、以下の処理を行うことが好適と考えらえる。
【0038】
ステップS4:ブレーキ摩擦係数推定に使用するブレーキ配分行列dを決定する。この時、配分行列dは、この摩擦ブレーキシステムの有する摩擦ブレーキ装置3の個数nのフルランク正方行列(例えば4輪自動車の場合、大きさ4×4、かつランク4の行列)であることが、推定を行うための必要十分条件である。この条件を満たす配分を予めテーブル等で規定しておくと演算負荷を軽減できて好適と考えられる。
【0039】
ステップS5:配分行列dの1行ごとのデータを取得するため、データ数を管理する変数mを設け、このmの値を初期化する。
【0040】
ステップS6:各車輪2のブレーキ押圧力Fを次のように設定する。各車輪2のブレーキ押圧力Fは、〔制動輪のブレーキトルク〕÷〔ブレーキ摩擦係数〕÷〔ブレーキ有効径〕により求められる。この時、ブレーキ摩擦係数は、例えば前回推定時の値を用いる。ただし、例えば初回推定時などの前回推定値を用いることができない所定条件においては、予め設定されたノミナル値を用いても良い。
【0041】
ステップS7:前記配分条件(ステップS4で定めたブレーキ配分行列)における目標となる各ブレーキ押圧Fと、そのときの車両減速度を1行分のデータとして取得する。その際、目標ブレーキ押圧力Fに対して実際のブレーキ力押圧力Fbは、電動モータ6やバルブ43(
図8)等の慣性等の影響で遅延し、実際のブレーキ押圧力Fbに対して実際の車両減速度Gは、車輪2の慣性等の影響で遅延するため、これらの影響を除去するフィルタ(図示せず)等を介した値を推定用データとして用いても良い。
【0042】
ステップS8:記載の式、μ=r−1Fb−1G、によりブレーキ摩擦係数μを求める。尚、単位系については各パラメータにおいて合わせるよう処理されているものとする。ブレーキ摩擦係数μを求めたら、その後、摩擦係数推定を終了する(ステップ9)
。
【0043】
このように、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の前記推定演算部17が、演算要素として、前記摩擦係数と、前記摩擦材32を押し付けるブレーキ押圧力と、車両減速度と、これら全ての演算要素を用いた等式を成立させるための車両諸元に基づく所定係数と、からなる等式の演算に基づいて算出するものであり、また前記等式が、前記摩擦係数推定演算部で前記摩擦係数を推定する前記摩擦ブレーキ装置の個数と同じ複数の線形独立式に基づいて構成されるようにしても良い。
前記ブレーキ摩擦係数推定手段14は、このようにして、前記摩擦係数の推定を実現することができる。
なお、前記「車両諸元」は、車両を構成する各物理量であり、例えば車輪2の有効径や車両の総重量等である。
【0044】
図5は、
図4に記載の一連の処理であるブレーキ摩擦係数推定中に要求ブレーキ力が所定値より下回るか、あるいは下回りそうな場合において、推定を中断する場合の手法を示す。
摩擦係数推定中か否かを判定し(ステップT1)、推定中である場合に以下の処理を行う。要求ブレーキ力を所定値(任意に設定され)と比較し(ステップT2)、要求ブレーキ力が所定値以下である場合は、摩擦係数の推定を中断し(ステップT4)、摩擦係数の推定に用いる各データを初期化して(ステップT5)、処理を終了する。
前記要求ブレーキ力と所定値との比較(ステップT2)により、要求ブレーキ力の方が大きい場合は、実ブレーキ力と所定値と比較する(ステップT3)。実ブレーキ力が所定値以下である場合は、要求ブレーキ力を下回りそうな場合であるため、要求ブレーキ力が所定値以下である場合と同様に、摩擦係数の推定を中断し(ステップT4)、各データを初期化して(ステップT5)、処理を終了する。
ステップT3の判定時に要求ブレーキ力の方が大きい場合は、摩擦係数推定の処理を継続する(ステップT6)。
【0045】
図5に一例を示すように、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の前記推定演算部17は、前記要求ブレーキ力および前記ブレーキ押圧力のいずれか一方または両方が所定値以上で、かつ前記摩擦ブレーキシステムの搭載車両の車速または前記摩擦ブレーキ装置によって制動される各車輪2の車輪速の最低値が所定値以上である場合に、摩擦係数の推定を実行するようにしても良い。
これにより、減速度に誤差を含み易い極低速領域を推定の対象から除外し、摩擦係数の推定の精度や信頼度を高めることができる。
【0046】
図6は、要求ブレーキ力が所定量以上変化する場合において、
図4に記載のブレーキ摩擦係数推定を行う例を示す。
ブレーキ摩擦係数推定を行う間に、
図4のステップS4に示すようにブレーキ配分が変更されることにより、ブレーキ摩擦係数推定の誤差に依存したブレーキ力変動が発生する。その際、操縦者がブレーキ力を一定に保つ意図を有している場合と比較して、ブレーキ力を変化させようとしている場合の方が、一般に前記ブレーキ力変動の体感度合が小さくて済むと考えられる。尚、ブレーキ摩擦係数推定を頻繁に行い、かつ推定精度が大きく誤差を持たないと仮定する場合は、本図の処理を行う必要はなく、必要に応じて適宜適用されるものでも良い。
【0047】
図6の処理をステップ順に説明する。m(取得データ数管理変数)番目のデータの取得が完了したか否かを判定し(ステップU1)、取得が完了していない場合は、摩擦係数推定を継続する(ステップU5)。取得が完了している場合は、要求ブレーキ力Bの単位時間当たりの変化量(dB/dt)の絶対値を所定値(任意に設定される)と比較し(ステップU2)、変化量が所定値以下である場合も、摩擦係数推定を継続する(ステップU5)。変化率が所定値よりも大きい場合は、取得データ数管理変数mを1だけ加算し(ステップU3)、次のブレーキ押圧力Fmを更新して(ステップU4)、摩擦係数推定を継続する(ステップU5)。
【0048】
このようにして、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の推定演算部17は、前記複数の線形独立式(
図4のステップS6の各式等)が、前記要求ブレーキ力の変化量の絶対値が所定値以上である場合において変更されたブレーキ配分から取得されるようにしても良い。
これにより、摩擦係数の推定結果が誤差を含む場合の、配分変化による減速度変化を目立たなくしてフィーリングを向上させることができる。
【0049】
図7は、
図4の摩擦係数の推定が完了した後、推定の際に用いた行列式の絶対値が所定値を下回る際、前記推定結果を破棄する処理を行う例を示す。前記行列式が零に近いほど行列Fbの線形独立性が低く、ノイズ等の誤差による影響を強く受け易くなるため、本図のような処理を用いるか、或いは所定の忘却係数を介して複数の推定結果を複合して使用する場合において、予め強い忘却係数を適用する処理を行うと、推定結果の信頼性向上の観点から好適と考えられる。
【0050】
図7の例では、摩擦係数推定が完了した否か、すなわち
図4の一連の処理が完了したか否かを判定し(ステップW1)、完了した場合、行列式の絶対値(| det(Fb)|
)と所定値(任意に定める)とを比較する(ステップW2)。行列式の絶対値が所定値を下回る場合は、前記摩擦係数の推定結果を破棄する(ステップW3)。
このように、前記ブレーキ摩擦係数推定手段14の推定演算部17は、前記複数の線形独立式におけるブレーキ押圧力を含むフルランク行列の行列式の演算結果の絶対値(| det(Fb)|)が所定値を下回る場合において、前記行列式を用いて導出した摩擦係数推定結果について、前記所定値を上回る場合に導出された他の摩擦係数推定結果よりも最終的に導出する摩擦係数推定結果への影響が小さくなるか、または推定結果より除外するようにしても良い。
このようにして、線形独立性が低くノイズや推定誤差の影響を受け易い推定結果を抽出することで、摩擦係数の推定値の信頼性を向上させることができる。
【0051】
なお、上記の実施形態において、さらに次の処理を加えても良い。例えば前記ブレーキ摩擦係数推定を行った後の経過時間を計測するカウンタ等を設け、前記カウンタが所定値以上となった場合のみブレーキ摩擦係数推定を実行するように、ブレーキ摩擦係数推定に既定の頻度の制限値を設けても良い。また、前記の処理におけるブレーキ配分を変更する際、ブレーキの急峻な応答を回避するため、緩やかに配分が変更されるよう処理を行っても良い。
【0052】
この実施形態によると、このように、摩擦係数を推定した上で各摩擦ブレーキ装置3の配分が可能となることで、摩擦ブレーキ装置3における安定した制動時の車両挙動およびブレーキフィーリングを高精度に実現することができる。
【0053】
図8は、摩擦ブレーキ装置3が液圧式である場合の例を示す。液圧式の場合、各車輪2に共通の液圧を生成するマスタシリンダ41と、各車輪2にそれぞれ設けられたバルブ43により、各車輪2(
図1参照)の摩擦ブレーキ装置3の液圧を独立制御するブレーキシステムとなる。マスタシリンダ41は、ブレーキペダル等のブレーキ操作手段8により液圧が制御される。
摩擦ブレーキ装置3は、そのブレーキアクチュエータ4の駆動源として、油圧シリンダ44を備える。ブレーキ制御装置5は、バルブ操作量制御装置45と、ソレノイドバルブ等からなる前記バルブ43とを備える。各バルブ操作量制御装置45と前記マスタシリンダ41とに、それぞれ液圧センサ46,47が設けられている。
図8の例において、特に説明した事項の他は、
図1〜
図7と共に前述した第1の実施形態と同様である。
【0054】
摩擦ブレーキ装置3が上記のような液圧式である場合、電動式の摩擦ブレーキ装置3を用いた摩擦ブレーキシステムと比較して、制御性や静粛性が課題となる可能性がある反面、比較的安価に構成することができる。
【0055】
なお、
図3および
図8は、摩擦ブレーキシステムの概略図として、これらの実施形態に必要な構成を抜粋したものであり、例えば冗長機能等やその他の機能は、システム構成時の要求に応じて適宜追加され得るものとする。
【0056】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。