(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605250
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】電解システム用のタンク装置、電解システムおよび電解法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/20 20060101AFI20191031BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20191031BHJP
C25B 1/04 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
C25B9/20
C25B15/08 302
C25B1/04
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-156938(P2015-156938)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-37665(P2016-37665A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】10 2014 215 746.3
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ザウター
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−219277(JP,A)
【文献】
特開2003−277963(JP,A)
【文献】
特開平07−286293(JP,A)
【文献】
特開2013−185740(JP,A)
【文献】
特開2013−022343(JP,A)
【文献】
特開2001−130901(JP,A)
【文献】
特開2003−105578(JP,A)
【文献】
特開2009−191333(JP,A)
【文献】
特開2013−023717(JP,A)
【文献】
特開平09−003680(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0139469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 15/00−15/08
C25B 9/00
C01B 3/00− 3/58
F25B 43/00
C25B 1/00− 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解システム(2)用のタンク装置(1)であって、
蓄え容器(3,3−1,3−2)と、
蓄え容器(3,3−1,3−2)の下側に配置された制御可能な弁(4,4−1,4−2)と、
弁(4,4−1,4−2)および蓄え容器(3,3−1,3−2)に配置されていて、弁(4,4−1,4−2)の少なくとも一部を加熱しかつ蓄え容器(3,3−1,3−2)の少なくとも一部を加熱するように形成された加熱装置(5,5−1,5−2)と、
を備え、
前記蓄え容器(3,3−1,3−2)と前記弁(4,4−1,4−2)との間に配置されていて、前記蓄え容器(3,3−1,3−2)から前記弁(4,4−1,4−2)に流れ込む媒体の凝集状態を検出し、該検出された凝集状態を特徴づける測定信号(7)を送出するように形成されたセンサ(6)を備えることを特徴とする、電解システム用のタンク装置。
【請求項2】
センサ(6)は、容量センサとして形成されており、該容量センサは、蓄え容器(3,3−1,3−2)から弁(4,4−1,4−2)に流入する前記媒体の容量を検出し、該検出された容量を特徴づける測定信号(7)を送出するように形成されている、請求項1記載のタンク装置。
【請求項3】
センサ(6)は、伝導率センサとして形成されており、該伝導率センサは、蓄え容器(3,3−1,3−2)から弁(4,4−1,4−2)に流入する前記媒体の伝導率を検出し、該検出された伝導率を特徴づける測定信号(7)を送出するように形成されている、請求項1記載のタンク装置。
【請求項4】
センサ(6)に接続されていて、該センサ(6)から測定信号(7)を受け取り、該測定信号(7)が、液状の媒体を特徴づけている場合には、弁(4,4−1,4−2)を開放し、測定信号(7)が、ガス状の媒体を特徴づけている場合には、弁(4,4−1,4−2)を閉鎖するように構成された制御装置(8)を備える、請求項1から3までのいずれか1項記載のタンク装置。
【請求項5】
前記液状の媒体は、水(11)であり、前記ガス状の媒体は、水素または酸素である、請求項4記載のタンク装置。
【請求項6】
電解システム(2)であって、
請求項1から5までのいずれか1項記載の第1のタンク装置(1)と、
第1のタンク装置(1)に接続されていて、水素を発生させ、該発生させられた水素を第1のタンク装置(1)に案内するように形成された電解スタック(9)と、
を備えることを特徴とする、電解システム。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項記載の第2のタンク装置(1)を備え、
電解スタック(9)は、第2のタンク装置(1)にさらに接続されていて、酸素を発生させ、該発生させられた酸素を第2のタンク装置(1)に案内するように形成されている、請求項6記載の電解システム。
【請求項8】
電解スタック(9)と第2のタンク装置(1)との間に配置されていて、前記酸素と、該酸素中に含まれた水(11)とを分離し、前記酸素を第2のタンク装置(1)に案内し、水(11)を水循環路(12)に案内するように形成された分離装置(10)を備える、請求項7記載の電解システム。
【請求項9】
電解法であって、
請求項1から5までのいずれか1項記載の第1のタンク装置(1)と、該第1のタンク装置(1)に接続されていて、水素を発生させるように形成された電解スタック(9)とを用意するステップと、
電解スタック(9)内で電解を実施するステップと、
前記電解により発生させられた前記水素を第1のタンク装置(1)に案内するステップと、
を備えることを特徴とする、電解法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解システム用のタンク装置に関する。さらに、本発明は、電解システムおよび電解法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、内燃機関は数多くの用途に使用されている。内燃機関の主な使用分野の1つは、自動車である。
【0003】
ますます厳しくなる限界値ならびに環境に優しい車両を走らせたいという顧客の要望に基づき、内燃機関からの有害な排ガスのエミッションをますます削減することが試みられている。
【0004】
このために、今日、車両は、たとえば省エネルギ型のエンジンを備えている。このエンジンは、特に空気過多(空気過剰率λ>1)である燃焼状態で運転される。これによって、燃焼時に窒素酸化物が形成される。この窒素酸化物は触媒で還元されなければならない。
【0005】
この窒素酸化物を還元するために、今日では、2つの可能性が利用される。
【0006】
第1の可能性は、NSC(Nitrogen oxide storage catalyst)、つまり、窒素酸化物吸蔵触媒と呼ばれる。まず、この窒素酸化物吸蔵触媒が窒素酸化物を吸蔵する。その後、吸蔵体の充足時にまたは吸蔵中に、吸蔵された窒素酸化物が、リッチな排ガスを伴う運転状態(λ<1)で還元される。このとき、窒素酸化物が反応して、水と、二酸化炭素と、窒素とが形成される。このことは、リッチな運転状態で排ガス中に存在している水素と一酸化炭素とによって行われる。その後、エンジンマネージメントが、リーンな排ガスを伴う通常の走行運転に再び切り換えられる。
【0007】
また、第2の可能性は、選択的還元触媒(SCR)と呼ばれる。このSCRでは、排気系統に吹き込まれる尿素溶液からアンモニアが生成され、このアンモニアが特殊な触媒上で窒素酸化物と反応して、水と窒素とが形成される。この方法では、排ガスはリーン(λ>1)である。この触媒には、過度に高い調量に際して変換されなかったアンモニアが触媒から流出(スリップ)し、環境に達してしまうという欠点がある。また、尿素溶液は腐食性であり、手間のかかる処理を要してしまう。
【0008】
通常、ディーゼルエンジンの場合には、SCR法が使用される。なぜならば、ディーゼルエンジンは、有利には長時間、λ<1のリッチな状態で運転することができず、このリッチな状態では、極めて多くの煤を生成してしまうからである。
【0009】
NSCの場合のリッチ運転およびSCRの場合の尿素の調量に対して択一的に、NSCまたはSCRの上流側で水素が調量されて、窒素酸化物の還元のために利用されてもよい。
【0010】
水素は、小型の圧力タンク内で一緒に運ばれてもよいし、オンボードで蒸気改質または電解によって生成されてもよい。
【0011】
電解に用いられる水は、タンク内で一緒に運ばれなければならず、定期的に補充されなければならない。電解システムは、電解スタックと水素吸蔵タンクとの間に、通常、直列に複数のシステム構成要素を有している。これらのシステム構成要素は、水素ガスから水と水蒸気とを除去するために用いられる。
【0012】
典型的には、気液分離器と、液滴分離器と、冷却トラップと、収着ドライヤとが使用される。この収着ドライヤの上流側には、通常、水素中の酸素含分(典型的には<1)を変換して水蒸気を形成する酸化触媒が前置されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るタンク装置では、蓄え容器と、蓄え容器の下側に配置された制御可能な弁と、弁および/または蓄え容器に配置されていて、弁の少なくとも一部を加熱しかつ/または蓄え容器の少なくとも一部を加熱するように形成された加熱装置と、を備える。
【0014】
本発明に係るタンク装置の好ましい態様では、蓄え容器と弁との間に配置されていて、蓄え容器から弁に流れ込む媒体の凝集状態を検出し、該検出された凝集状態を特徴づける測定信号を送出するように形成されたセンサを備える。
【0015】
本発明に係るタンク装置の好ましい態様では、センサは、容量センサとして形成されており、該容量センサは、蓄え容器から弁に流入する前記媒体の容量を検出し、該検出された容量を特徴づける測定信号を送出するように形成されている。
【0016】
本発明に係るタンク装置の好ましい態様では、センサは、伝導率センサとして形成されており、該伝導率センサは、蓄え容器から弁に流入する前記媒体の伝導率を検出し、該検出された伝導率を特徴づける測定信号を送出するように形成されている。
【0017】
本発明に係るタンク装置の好ましい態様では、センサに接続されていて、該センサから測定信号を受け取り、該測定信号が、液状の媒体、特に水を特徴づけている場合には、弁を開放し、測定信号が、ガス状の媒体を特徴づけている場合には、弁を閉鎖するように形成された制御装置を備える。
【0018】
本発明に係るタンク装置の好ましい態様では、前記ガス状の媒体は、水素または酸素として形成されている。
【0019】
本発明に係る電解システムでは、本発明に係る第1のタンク装置と、第1のタンク装置に接続されていて、水素を発生させ、該発生させられた水素を第1のタンク装置に引き続き案内するように形成された電解スタックと、を備える。
【0020】
本発明に係る電解システムの好ましい態様では、本発明に係る第2のタンク装置を備え、電解スタックは、第2のタンク装置にさらに接続されていて、酸素を発生させ、該発生させられた酸素を第2のタンク装置に引き続き案内するように形成されている。
【0021】
本発明に係る電解システムの好ましい態様では、電解スタックと第2のタンク装置との間に配置されていて、前記酸素と、該酸素中に含まれた水とを分離し、前記酸素を第2のタンク装置に引き続き案内し、水を水循環路に引き続き案内するように形成された分離装置を備える。
【0022】
本発明に係る電解法では、本発明に係る第1のタンク装置と、該第1のタンク装置に接続されていて、水素を発生させるように形成された電解スタックとを用意するステップと、電解スタック内で電解を実施するステップと、前記電解により発生させられた前記水素を第1のタンク装置に引き続き案内するステップと、を備える。
【0023】
本発明の根底には、触媒内での処理のために、水素から水蒸気を完全に除去する必要はないという知見がある。
【0024】
本発明の根底にある思想は、この知見を考慮して、液状の水は水素循環路から除去するものの、水蒸気の残分は水素循環路内に残すという可能性を提案することである。
【0025】
このために、本発明は、電解システムに用いられるタンク装置が、蓄え容器を有しており、この蓄え容器の下側に弁が位置していることを提案している。
【0026】
蓄え容器内に導入されるガス状の媒体、たとえば水素中には、水蒸気が含まれており、この水蒸気が凝縮させられて、水が形成されると、この水は蓄え容器の下側の領域に集められる。
【0027】
その後、水を弁を介してタンクから流出させることができる。
【0028】
しかしながら、水は低い温度で凍結してしまうので、タンク装置は、さらに、加熱装置を有している。この加熱装置は、たとえばタンクの、水を集めることができる下側の領域と、弁とを加熱する。こうして、寒冷の際でも、水が凍結してしまうことを阻止することができ、水を蓄え容器から確実に流出させることができる。
【0029】
すなわち、本発明に係る電解システムは、極めて簡単なシステムを提供している。このシステムは水素を提供することができる。この水素は、確かに、水蒸気を含んでいるものの、それにもかかわらず、内燃機関に用いられる触媒に使用するために適している。
【0030】
すなわち、本発明による車両には、極めて効率よく作業し、その際、少ない手間で実現することができる排ガス浄化装置を提供することができる。
【0031】
有利な態様および改良態様は、従属請求項ならびに図面に関連した説明から明らかである。
【0032】
1つの態様では、タンク装置が、センサを有しており、このセンサが、蓄え容器と弁との間に配置されていて、蓄え容器から弁に流れ込む媒体の凝集状態を検出するように形成されている。これによって、蓄え容器内に主に液状の媒体があるのかどうかを確認することが可能となる。
【0033】
1つの態様では、センサが、容量センサとして形成されており、この容量センサが、蓄え容器から弁に流入する媒体の容量を検出し、この検出された容量を特徴づける測定信号を送出するように形成されている。液状の水と、ガス状の媒体、たとえば水素および酸素とは、その相対的な誘電率の点で劇的に異なっているので、これによって、弁の上方に、たとえば水があるのか否かを極めて簡単に確実に確認することができる。
【0034】
1つの態様では、センサが、伝導率センサとして形成されており、この伝導率センサが、蓄え容器から弁に流入する媒体の伝導率を検出し、この検出された伝導率を特徴づける測定信号を送出するように形成されている。液状の水と、ガス状の媒体、たとえば水素および酸素とは、その相対的な伝導率の点で劇的に異なっているので、これによって、弁の上方に、たとえば水があるのか否かを極めて簡単に確実に確認することができる。
【0035】
1つの態様では、タンク装置が、制御装置を有しており、この制御装置が、センサに接続されていて、このセンサから測定信号を受け取り、この測定信号が、液状の媒体、特に水を特徴づけている場合には、弁を開放し、測定信号が、ガス状の媒体を特徴づけている場合には、弁を閉鎖するように形成されている。こうして、液体循環路内に、相応の液体、たとえば水しか流出させられないことを確保することができる。弁の上方でガス状の媒体が検出されると、弁が閉鎖され、蓄え容器内には、もはや、ガス状の媒体しか存在していない。
【0036】
1つの態様では、ガス状の媒体が、水素または酸素として形成されている。これによって、本発明に係るタンク装置を、電解システムの水素循環路にも、酸素循環路にも使用することが可能となる。
【0037】
1つの態様では、電解システムが、第2のタンク装置を有しており、電解スタックが、さらに、第2のタンク装置に接続されていて、酸素を発生させ、この発生させられた酸素を第2のタンク装置に引き続き案内するように形成されている。これによって、電解時に発生させられた酸素を更なる利用のために蓄えることができる。
【0038】
1つの態様では、電解システムが、分離装置を有しており、この分離装置が、電解スタックと第2のタンク装置との間に配置されていて、酸素と、この酸素中に含まれた水とを分離し、酸素を第2のタンク装置に引き続き案内し、水を水循環路に引き続き案内するように形成されている。電解システムの酸素側では、通常、電解水が循環しているので、この電解水から酸素を分離するために、分離装置が必要となる。しかしながら、酸素は高い湿分を有しているので、第2のタンク装置内で凝縮させられる水は、本発明によって極めて簡単に除去することができる。
【0039】
1つの態様では、管路と蓄え容器とが、断熱されている。これによって、凝縮物形成を阻止することができるかまたは少なくとも減少させることができる。
【0040】
上述した態様および改良態様は、好適である限り、互いに任意に組み合わされてよい。本発明の更なる可能な態様、改良態様および実行態様には、本発明の前述した特徴または以下に実施の形態を参照しながら説明する特徴の、明示的には記載していない組合せも含まれている。特に当業者は、本発明の各基本態様に改善態様または補足態様として個々の態様をも付加する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明に係るタンク装置の実施の形態のブロック図である。
【
図2】本発明に係る電解システムの実施の形態のブロック図である。
【
図4】本発明に係るタンク装置の別の実施の形態のブロック図である。
【
図5】本発明に係る電解システムの別の実施の形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0043】
全ての図面において、同一のもしくは同機能のエレメントおよび装置には、何か他のことを記載しない限り、同じ符号が付してある。
【0044】
図1には、本発明に係るタンク装置1の実施の形態のブロック図が示してある。
【0045】
タンク装置1は蓄え容器3を有している。この蓄え容器3の下端には、水11が存在している。さらに、タンク装置1は、蓄え容器3の下端でこの蓄え容器3に接続された弁4を有している。
【0046】
破線によって、弁4と蓄え容器3の下側の領域とを取り囲む加熱装置5が図示してある。
【0047】
図1のタンク装置1では、蓄え容器3から弁4を介して水11を流出させることができる。
【0048】
弁4は、たとえば電気的に制御可能な弁4であってよい。この弁4は、1つの実施の形態では、制御装置8(
図1には示さず)によって制御される。しかしながら、弁4は、機械式の弁4であってもよい。この機械式の弁4は、たとえば、蓄え容器3の底に水11が集められた場合に、この水11によって持ち上げられる蓄え容器3内のフロートを介して制御される。このフロートの持上りによって、弁4を開放することができる。蓄え容器3内の水面レベルが低下して、フロートが再び沈むと、弁4は再び閉鎖される。
【0049】
加熱装置5は、水11が凍結点付近の温度で凍結して、蓄え容器3もしくは弁4を閉塞してしまうかまたは完全に害してしまうことを阻止している。これによって、タンク装置1を屋外で使用する、たとえば、冬場に凍結点未満の温度でも屋外に駐車されていることがある自動車に使用することが可能となる。
【0050】
加熱装置5は、たとえば、蓄え容器3と弁4とに接着される加熱シート5として形成されていてよい。択一的には、加熱装置5が、たとえば、タンクと弁4とに巻き付けられる加熱螺旋体5から成っていてよい。また、加熱装置5は、蓄え容器3の壁と弁4とに埋め込まれた加熱線材5から成っていてもよい。
【0051】
別の実施の形態では、加熱装置5が、たとえば蓄え容器3全体を取り囲んでいてよい。
【0052】
図2には、本発明に係る電解システム2の実施の形態のブロック図が示してある。
【0053】
電解システム2は、タンク装置1(個別には図示せず)に接続された電解スタック9を有している。この実施の形態では、この電解スタック9の水素出口が蓄え容器3の入口に接続されている。すなわち、電解により発生させられた水素が、電解スタック9から蓄え容器3内に搬送され、そこに蓄えられる。
【0054】
水11は、電解スタック9内に陽極側で流入し、そこで、水11の分解電圧を上回る電解電圧の印加により反応して、酸素と、陽子と、電子とを発生させる。陽子は、電解スタック9の陽極を電解スタック9の陰極から分離する電解スタック9の伝導性の膜を通って移動させられる。移動させられた陽子は、陰極において、外側の電流回路を通って搬送されてきた電子と反応して、水素を発生させる。
【0055】
電解スタック9の伝導性の膜は、陽子のほかに、水も案内する。この水は陰極側に水蒸気として形成される。したがって、電解後には、水素が水蒸気成分を含んでいる。電解スタック9は、通常、50℃〜80℃で作動させられ、蓄え容器3は、典型的には、周辺温度を有しているので、蓄え容器3内で水蒸気が凝縮させられ、水として蓄え容器3の底に落下する。その後、そこで、水11を弁4を介して流出させることができ、電解システム2の水循環路に再び供給することができる。
【0056】
図3には、自動車13の実施の形態のブロック図が示してある。
【0057】
自動車13は内燃機関14を有している。この内燃機関14は排気系統15に接続されている。この排気系統15内には、たとえば触媒(図示せず)が配置されていてよい。この触媒には、電解システム2から水素が供給され、これによって、内燃機関14の排ガス中の窒素酸化物の量が削減される。
【0058】
触媒は、たとえば窒素酸化物吸蔵触媒(NSC)または選択的還元触媒(SCR)として形成されていてよい。
【0059】
図4には、本発明に係るタンク装置1の別の実施の形態のブロック図が示してある。
【0060】
図4のタンク装置1は、
図1のタンク装置1をベースとしているものの、これと異なり、
図4の実施の形態では、蓄え容器3と弁4との間にセンサ6が設けられている。
【0061】
このセンサ6は、蓄え容器3と弁4との間の管路内に存在する媒体の凝集状態を検出し、この凝集状態を特徴づける測定信号7を送出する。
【0062】
この測定信号7は、引き続き、制御装置8によって評価される。この制御装置8は、評価した測定信号7をベースとして、電気的に制御可能な弁4として形成された弁4を制御する。
【0063】
制御装置8が測定信号7において、媒体が液状である、すなわち、たとえば水であることを認識すると、制御装置8は弁4を開放する。これによって、水11を流出させることができる。水11が十分に流出すると、蓄え容器3内の水面レベルが低下し、その後、センサ6に、水ではなく、水素が提供されることになる。このことが制御装置8によって認識されると、この制御装置8は弁4を再度閉鎖する。
【0064】
センサ6は、たとえば、蓄え容器3から弁4内に流れる媒体の容量を検出する容量センサ6として形成されていてよい。択一的には、センサ6が、たとえば伝導率センサ6として形成されていてもよい。
【0065】
図5には、本発明に係る電解システム2の別の実施の形態のブロック図が示してある。
【0066】
図5の電解システム2は、
図2の電解システム2と同様に、電解スタック9内で発生させられた水素のための蓄え容器3−1を有している。この蓄え容器3−1は、凝縮させられた水を導出しかつ電解システム2の水循環路12に供給することができる弁4−1に接続されている。さらに、水循環路12は、水11を電解スタック9内に圧送するポンプ21を有している。
【0067】
付加的に、
図5の電解システム2は、酸素循環路を有している。電解時に発生させられた酸素は、電解スタック9から分離装置10に供給される。この分離装置10は、ガス状の酸素を水11から分離する。
図5に示した変化形態では、酸素と水11とから成る混合物が、まず、気液分離器に供給され、その後、液滴分離器に供給される。
【0068】
得られた水11は、電解システム2の水循環路12に供給される。酸素は分離装置10から蓄え容器3−2内に案内され、そこに蓄えられる。水素タンクと同様に、酸素タンク3−2内では、酸素中に水蒸気として含まれている水11が凝縮させられるようになっている。引き続き、水11は酸素タンク3−2の底に集められる。そこには、同じく、凝縮させられた水11を水循環路12に供給することができる弁4−2が設けられている。この弁4−2と蓄え容器3−2とには、同じく加熱装置5−2が接続されており、これによって、水11の凍結を阻止することができる。
【0069】
図5に示した2つの蓄え容器3−1,3−2の各々は、その上側に弁20−1,20−2を有している。この弁20−1,20−2は、各蓄え容器3−1,3−2から水素もしくは酸素を取り出すために用いられる。
【0070】
別の実施の形態では、
図5のタンク装置が、たとえば複数の蓄えタンクまたは弁を有していてよい。
【0071】
図5の個々のタンク装置は、それぞれ1つの蓄え容器3−1,3−2および弁4−1,4−2しか有していない。この形態は、単に一例として解釈すべきものでしかない。
【0072】
当然ながら、
図5の電解システム2は、センサ6と制御装置8とを有する
図4に示したタンク装置1と共に使用されてもよい。また、本発明に係る電解システム2は、本発明に係るタンク装置1のあらゆる可能な形態を備えて形成されてもよい。
【0073】
本発明を複数の好適な実施の形態に基づき前述したにもかかわらず、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多種多様に変更可能である。特に本発明は、その要旨から逸脱することなしに、多種多様に変化させられてもよいし、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 タンク装置
2 電解システム
3,3−1,3−2 蓄え容器
4,4−1,4−2 弁
5,5−1,5−2 加熱装置
6 センサ
7 測定信号
8 制御装置
9 電解スタック
10 分離装置
11 水
12 水循環路
13 自動車
14 内燃機関
15 排気系統
20−1,20−2 弁
21 ポンプ