特許第6605256号(P6605256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605256綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605256
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット
(51)【国際特許分類】
   B65H 65/00 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   B65H65/00 D
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-163437(P2015-163437)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44077(P2016-44077A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2018年6月13日
(31)【優先権主張番号】10 2014 012 419.3
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ライマン
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091936(JP,A)
【文献】 特開平05−213530(JP,A)
【文献】 特開平11−217161(JP,A)
【文献】 特開昭57−209174(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0217462(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010049515(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102014009203(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 65/00
B65H 67/00−73/00
B65H 77/00−79/00
B65H 54/00−54/553
B65H 54/56−54/88
D01H 1/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット(1)であって、巻取り装置(4)が設けられていて、該巻取り装置(4)は、巻取りパッケージ(5)の綾巻きパッケージ巻管(40)を回転可能に保持する、旋回可能に支持されたパッケージフレーム(11)と、前記巻取りパッケージ(5)が巻取りプロセス中に接触しているローラ(34)と、糸吸込み装置(21)とを有しており、該糸吸込み装置(21)は、前記ローラ(34)に対して上側の成形金属薄板(22)と、可動に支持された、前記ローラ(34)に対して下側の成形金属薄板(23)とを有している、作業ユニット(1)において、
前記糸吸込み装置(21)は、負圧を供給可能な吸込み開口(28)を有していて、確定されて制御可能なフレキシブルなスライダ(7)が設けられていて、該スライダ(7)は糸収容開口(20)を備えており、前記糸収容開口(20)を用いて、繰出しボビン(2)から延びていて空気力によって供給された下糸(29)のコントロールされた引渡しのために、該下糸(29)が、前記糸吸込み装置(21)を通して、前記パッケージフレーム(11)に保持された綾巻きパッケージ巻管(40)の領域における最終ポジションにまで運ばれるように、前記スライダ(7)は可動に支持されていることを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット。
【請求項2】
前記スライダ(7)はその糸収容開口(20)が、糸吸込み装置(21)の吸込み開口(28)の前に位置決め可能であり、前記スライダ(7)の糸収容開口(20)が前記吸込み開口(28)の前に位置決めされると、前記下糸(29)は前記スライダ(7)の前記糸収容開口(20)及び前記吸込み開口(28)を通して、前記糸吸込み装置(21)の吸気管片(14)内に滑り込み、前記糸吸込み装置(21)の前記吸込み開口(28)内に吸い込まれかつ前記吸気管片(14)の端部側において空気力によって固定された下糸(29)は、上方に向かって滑動する前記スライダ(7)の前記糸収容開口(20)を用いて、前記綾巻きパッケージ巻管(40)の領域における前記最終ポジションに運ばれるようになっている、請求項1記載の作業ユニット。
【請求項3】
前記スライダ(7)は、ばね鋼から製造されていて、前記糸吸込み装置(21)の領域において、前記下糸(29)が前記ローラ(34)と前記糸吸込み装置(21)の前記上側の成形金属薄板(22)との間を貫いて前記綾巻きパッケージ巻管(40)の領域に引き渡されるように案内されている、請求項2記載の作業ユニット。
【請求項4】
前記スライダ(7)の上側のポジションは、前記綾巻きパッケージ巻管(40)の領域に引き渡される前記下糸(29)が、前記繊維機械の前記作業ユニット(1)を自動的に操作する綾巻きパッケージ交換ユニットによって収容可能であるように配置されている、請求項3記載の作業ユニット。
【請求項5】
前記スライダ(7)の上側のポジションは、前記綾巻きパッケージ巻管(40)の領域に引き渡される前記下糸(29)が、操作員によって手動で収容可能であるように配置されている、請求項3記載の作業ユニット。
【請求項6】
前記スライダ(7)に、操作員によって又は前記綾巻きパッケージ交換ユニットによって操作可能な駆動装置(38,39)が接続されている、請求項1記載の作業ユニット。
【請求項7】
前記駆動装置は、レバー装置(39)として形成されている、請求項6記載の作業ユニット。
【請求項8】
前記駆動装置は、ステップモータ(38)として形成されている、請求項6記載の作業ユニット。
【請求項9】
前記駆動装置は、ニューマチックシリンダとして形成されている、請求項6記載の作業ユニット。
【請求項10】
前記スライダ(7)は、巻取りプロセス中、休止位置において位置決めされていて、該休止位置において前記糸吸込み装置(21)の吸込み開口(28)は前記スライダ(7)によって閉鎖されている、請求項1記載の作業ユニット。
【請求項11】
前記糸吸込み装置(21)の前記吸込み開口(28)は、前記吸気管片(14)を介して、前記繊維機械の負圧系に接続されている、請求項2記載の作業ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットであって、巻取り装置が設けられていて、該巻取り装置は、巻取りパッケージの綾巻きパッケージ巻管を回転可能に保持する、旋回可能に支持されたパッケージフレームと、巻取りパッケージが巻取りプロセス中に接触しているローラと、糸吸込み装置とを有しており、該糸吸込み装置は、可動に支持された上側の成形金属薄板と、可動に支持された下側の成形金属薄板とを有している、作業ユニットに関する。好適な実施の形態では、糸吸込み装置は、巻成過程中に繰出しボビンと巻取りパッケージとの間に位置する糸走路を取り囲む糸案内通路の終端部材を形成している。
【背景技術】
【0002】
綾巻きパッケージオートワインダとしても公知である、綾巻きパッケージを製造するこのような繊維機械の作業ユニットにおいて、例えばリング精紡機である、作業プロセスにおいて前置された繊維機械において製造され、かつそれぞれ比較的少量の糸材料しか有していない、例えば紡績コップである繰出しボビンは、綾巻きパッケージに巻き返される。著しく大きな糸体積を有するこのような綾巻きパッケージは、繊維工業において、後続の作業機械、例えば織機において必要になる。
【0003】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットは、種々様々な態様において公知であり、特許文献において数多くの刊行物に部分的に極めて詳しく記載されている。
【0004】
例えば特許文献1によって公知の綾巻きパッケージオートワインダでは、その作業ユニットは、糸走路を取り囲んでいて複数部分から成る各1つの糸案内通路を有しており、この糸案内通路は、繰出し部に位置決めされた繰出しボビンとこの作業ユニットの巻取り装置との間において延在している。この糸案内通路には、必要な場合に負圧が供給可能であり、このとき、糸案内通路内おける負圧流の流れ方向は、予め確定して設定することができる。
【0005】
このような糸案内通路を用いて、巻取り中断後に、比較的簡単にかつ確実に、例えば糸切れ又はコントロールされたクリアラ切断によって生じた、下糸の糸端部と上糸の糸端部とを、糸案内通路の領域に配置された糸継ぎ装置に引き渡すことを、保証することができる。
【0006】
このような糸案内通路には、それぞれ、糸継ぎ装置用の収容ハウジング以外に、種々様々な糸監視装置及び糸処理装置用の、なお多くの別の収容ハウジングもしくは収容部分が組み込まれている。これらの糸監視装置及び糸処理装置を用いて、走行する糸は、巻返し過程中に、場合によっては存在する糸欠陥を監視され、糸欠陥は、それが所定の限界値を上回っている場合には切除される。次いで両糸端部は、ほぼ糸に等しい、空気力式に形成された糸継ぎ部によって互いに結合される。すなわち、このような綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニットは、通常それぞれ、下糸センサ、糸テンショナ、糸切断装置を備えた糸クリアラ、糸張力センサ、糸捕捉ノズル、及びしばしばパラフィン塗布装置を備えている。
【0007】
このような糸案内通路では、上端部材は通常それぞれ、糸吸込み装置として形成されており、これに対して糸案内通路の下端部は、例えば鉛直方向移動可能に支持された吸込み基部として形成された繰出し補助装置を有している。
【0008】
このような綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニットは、さらにそれぞれ巻取り装置を有しており、この巻取り装置は、多くの場合いわゆる綾巻きパッケージである巻取りパッケージの巻管を回転可能に保持する旋回可能なパッケージフレームと、巻取りパッケージを回転させかつ巻き取られる糸を綾振りする装置とを有している。すなわち巻取り装置はしばしば、綾巻きパッケージを回転させると同時に巻き取られる糸を綾振りする駆動可能な糸ガイドドラムを備えている。
【0009】
これら公知の綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニットでは、糸走路を取り囲む糸案内通路に糸監視装置及び糸処理装置を組み込むことによって、巻き返される糸を巻取り過程中に、その糸走路の大部分において周囲環境に対して隔絶するということが保証され、このことは特に、綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニットにおける塵埃発生に関して極めてポジティブに作用する。
【0010】
しかしながら、それ自体好適なこれら公知の作業ユニットには、糸ガイドドラムの領域に配置された糸吸込み装置の構成が比較的高コストでかついくらか故障しやすいという、若干の欠点がある。
【0011】
そこで後で公開された特許文献2には、特許文献1に基づいて公知の、作業ユニットの糸吸込み装置が若干変更されている。
【0012】
特許文献2に開示された糸吸込み装置は、巻取り装置の領域において糸案内通路の端部側に定置に配置された装置であり、この装置は、可動に支持されていて確定されて制御可能な上側の旋回金属薄板と、可動に支持されていて確定されて制御可能な下側の旋回金属薄板とを有している。両旋回金属薄板はそれぞれ、パッケージ駆動ローラを中心にして可動に支持されかつ位置決め可能であり、巻取りパッケージの表面の領域において上糸を収容するために、両旋回金属薄板の間において、負圧を供給可能な吸込みノズル輪郭を形成するようになっている。
【0013】
しかしながらそれ自体極めて好適なこの糸吸込み装置には、次のような欠点がある。すなわちこの公知の糸吸込み装置では、このように構成された装置によって、確かに、糸切れ又はコントロールされたクリアラ切断に起因する巻取り中断後においては、吸込みノズル輪郭の領域に存在する吸気流の最適化、ひいては巻取りパッケージからの上糸の確実な収容を保証することができるが、しかしながら給糸ボビンから延びる下糸を、パッケージフレームに位置決めされた巻取りパッケージに直に引き渡す必要があるロット交換時には、この新しい下糸を糸吸込み装置を通してセットすることは、幾分複雑であり、かつ時間がかかる。すなわち、ほぼ閉鎖された糸案内通路の端部側に配置されていて旋回金属薄板によって形成されている、このような糸吸込み装置では、繰出しボビンから延びる下糸を新しい巻取りパッケージの空管に整然と引き渡すことは、かなり時間がかかりかつ困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010049515号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102014009203号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上に述べた従来技術を出発点として、本発明の課題は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットを改良して、繰出しボビンから延びる下糸を、糸吸込み装置を通して巻取りパッケージの空管の領域に簡単かつ確実に引き渡すことができるように構成された、糸吸込み装置を備えた作業ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1記載のように構成された、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットによって解決される。
【0017】
本発明の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る構成では、糸吸込み装置は、負圧を供給可能な吸込み開口を有していて、確定されて制御可能なフレキシブルなスライダが設けられていて、該スライダは糸収容開口を備えており、糸収容開口を用いて、繰出しボビンから延びていて空気力によって供給された下糸のコントロールされた引渡しが、糸吸込み装置を通して、パッケージフレームに保持された綾巻きパッケージ巻管の領域における最終ポジションにまで保証されるように、スライダは可動に支持されている。このように構成された本発明は、給糸ボビンの表面から繰り出された下糸が、糸案内通路における負圧流を用いて問題なく糸吸込み装置の領域に引渡し可能であり、かつそこで確実に糸吸込み装置の吸込み開口内に吸込み可能である、という利点を有するのみならず、下糸を次いで、上方に向かって移動するスライダの糸収容開口を用いて確実に、糸吸込み装置を通して巻取りパッケージの巻管の領域に移動させ、かつそこで問題なく、例えば操作員によって引き受けることができる、ということによっても傑出しており、好適である。
【0019】
好適な態様では、スライダはその糸収容開口が、糸吸込み装置の吸込み開口の前に位置決め可能であり、これによって下糸はスライダの糸収容開口及び糸吸込み装置の吸込み開口を通して、吸気管片内に吸込み可能である。吸い込まれた下糸は次いで、吸気管片内において確実に空気力によって固定され、次に、上方に向かって滑動するスライダを用いて確実に、糸吸込み装置を通して、パッケージフレームに保持された巻取りパッケージの巻管の領域に引き渡すことができる。すなわち、このような構成によって、一方では、空気力によって供給された下糸の糸端部を常に確実に吸気管片内において保持し、かつ他方では走出するスライダによって、下糸を糸吸込み装置を通して移動させることが保証されている。このようにして、パッケージフレームに保持された巻管の領域への下糸の整然とした搬送が保証されている。
【0020】
スライダの糸収容開口によって、下糸はこの搬送時にさらにセンタリングされる。すなわち、下糸はその搬送後に糸吸込み装置を通して常に正確に位置決めされ、ひいては操作員又は操作ユニットのために容易に収容可能である。
【0021】
好ましくは、スライダは、ばね鋼から製造されていて、糸吸込み装置の領域において、下糸を、ローラと糸吸込み装置の上側の成形金属薄板との間を通して、綾巻きパッケージの巻管の領域に引き渡すように案内されている。
【0022】
ばね鋼から製造されたこのようなスライダは、耐用寿命の長い弾性部材であり、常に最適に、糸吸込み装置の内部において与えられた空間状況に適合し、かつ比較的簡単に、糸吸込み装置を通して下糸を確実に搬送することができる。
【0023】
好適な態様では、スライダによって巻取りパッケージの領域に引き渡された下糸は、機械的に、公知のように繊維機械の作業ユニットを自動的に操作する綾巻きパッケージ交換ユニットによって収容可能であるか、又は下糸は、繊維機械を監視する操作員によって手動で収容可能である。
【0024】
両方の場合において、本発明のように構成されかつ案内されるスライダの使用によって、ロット交換後に、綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニットを再び迅速かつ問題なく運転開始できることが保証されている。すなわち両方の場合において、糸吸込み装置の下側の成形金属薄板の相応の制御によって新しい巻取りパッケージの巻管に下糸を固定した後で、自動的に、例えば糸ガイドドラムの糸ガイド溝への新しい糸の問題のない挿入が、自動的に行われる。
【0025】
好適な態様ではさらに、スライダに、操作員によって又は綾巻きパッケージ交換ユニットによって操作可能な駆動装置が接続されている。
【0026】
駆動装置は、例えば、必要な場合に綾巻きパッケージ交換ユニットの相応の操作機構によって機械的に又は繊維機械の操作員によって手動で操作することができるリンク機構もしくはレバー装置として形成されていてよい。
【0027】
駆動装置としては、しかしながらレバー装置の代わりに、例えばステップモータ又はニューマチックシリンダのような、確定されて制御可能なアクチュエータを使用することも可能である。
【0028】
ステップモータ及びニューマチックシリンダは、繊維機械構造において実地において多くの使用例で良好であることが認められ、しかも市場において比較的安価に入手することができる部材である。
【0029】
別の好適な態様では、さらに、スライダは、巻取りプロセス中、下側の作業位置において、糸吸込み装置の吸込み開口が閉鎖され、ひいては糸吸込み装置が空気力的に繊維機械の負圧系から切り離されるように位置決め可能である。
【0030】
このような態様は、走行する糸が巻取り運転中に糸吸込み装置において、不要な横方向の流れの影響によって付加的に押圧されることを確実に阻止する。すなわち、糸吸込み装置の吸込み開口及び吸気管片を介して有効な、繊維機械の負圧系は、それが実際に必要な場合にだけ、糸吸込み装置において作用する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】巻取り装置の領域において、閉鎖された糸案内通路の端部側に配置された、本発明のように形成された糸吸込み装置を備えた、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットの好適な第1の実施の形態を示す図である。
図2】巻取り装置の領域に配置された、本発明のように形成された糸吸込み装置を備えた、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニットの別の実施の形態を示す図である。
図3】糸吸込み装置の領域に配置されたスライダの駆動装置の特殊な実施の形態を示す斜視図であって、このときスライダがまだその所属の駆動ローラに固定されていない状態を示す斜視図である。
図4図4a〜図4eは、スライダの種々異なる作業位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳説する。
【0033】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット1の好適な第1の実施の形態が示されており、この作業ユニット1は、その巻取り装置4の領域に本発明にように形成された糸吸込み装置21を有している。この糸吸込み装置21は、糸走路を取り囲むほぼ閉鎖された糸案内通路6の端部に配置されている。
【0034】
公知のように、綾巻きパッケージを製造する繊維機械、例えば綾巻きパッケージオートワインダは、通常、同一に形成された多数の作業ユニット1を有しており、これらの作業ユニット1において、給糸ボビン2、通常はリング精紡機において製造された、比較的僅かな糸材料だけを有する紡績コップが、大きな体積の巻取りパッケージ、通常は綾巻きパッケージに巻き返される。
【0035】
完成した綾巻きパッケージ5は、次いで操作員によって取り出されるか又は、自動作動式のサービスユニット、いわゆる綾巻きパッケージ交換装置を用いて、機械長さにわたって延在する綾巻きパッケージ搬送装置49(図2参照)に引き渡され、この綾巻きパッケージ搬送装置49によって、機械端部側に配置されたパッケージチャージステーション又はこれに類した箇所に搬送される。
【0036】
このような綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニット1は、幾つかの紡績コップが蓄えられている円形マガジンを備えているか、又は綾巻きパッケージオートワインダは、特に図2に示すように、ボビン・巻管搬送システム43として形成された補給装置(Logistikeinrichtung)を有している。
【0037】
自体公知のこのようなボビン・巻管搬送システム43において、鉛直に立てられて搬送皿48に配置された紡績コップ2もしくは繰出し済みの空管が循環する。
【0038】
図1及び図2に略示するように、リング精紡機から供給された給糸ボビン2は、作業ユニット1の領域においてそれぞれ繰出し部ASに位置決めされ、そこで次いで巻き返されて綾巻きパッケージ5を形成する。
【0039】
個々の作業ユニット1は、そのために種々様々な糸監視装置もしくは糸処理装置を有しており、これらの装置は、給糸ボビン2の糸29が巻返し過程中に糸欠陥を監視され、そして糸29が巻取りパッケージ5に巻き取られる前に、検知された糸欠陥が除去されることを保証する。
【0040】
このような綾巻きパッケージオートワインダの作業ユニット1は、例えば巻取り装置4、好ましくは空気作動式の糸スプライシング装置として形成された糸継ぎ装置8、糸テンショナ9、糸クリアラ10及び糸張力センサ35を有している。
【0041】
追加的にこのような作業ユニット1は、さらにパラフィン塗布装置(図示せず)を備えていてよい。
【0042】
巻取り装置4は、通常、各1つのパッケージフレーム11及び綾巻きパッケージ駆動装置を有しており、このときパッケージフレーム11は、旋回軸線30を中心にして可動に支持されている。
【0043】
本実施の形態において、綾巻きパッケージ駆動装置はそれぞれローラ34として、好ましくはいわゆる糸ガイドドラムとして形成されており、この糸ガイドドラムは、回転軸線24を中心にして回転可能に支持されていて、綾巻きパッケージ5を摩擦によって回転させ、かつ同時に、巻取りパッケージ5に巻き取られる糸29を綾振りするために役立つ。
【0044】
図1から分かるように、糸ガイドドラム34はさらに、確定されて制御可能な駆動装置37に接続されている。
【0045】
図1に示した、特に好適な第1の実施の形態によれば、繰出し部ASに位置決めされた給糸ボビン2と巻取り装置4との間には、糸走路をほぼ取り囲む糸案内通路6が延在しており、この糸案内通路6には、必要な場合に確定されて負圧が供給可能であり、かつそのために糸案内通路6は、機械固有の負圧系の吸気通路17に接続されている。
【0046】
糸案内通路6は、入口側に繰出し補助装置3を備えており、この繰出し補助装置3は例えば、テレスコープ式に伸縮可能に形成された吸込み基部19として形成されている。
【0047】
すなわち吸込み基部19は、鉛直方向において移動可能に支持されていて、必要な場合に、駆動装置(単に双方向矢印36を用いて略示)を用いて、例えば下糸の糸端部を収容するために、少なくとも部分的に、給糸ボビン2の上に降下させることができる。
【0048】
糸走行方向Fにおいて吸込み基部19の下流側に、糸案内通路6は、糸テンショナ9のための収容部分33を有し、かつこの収容部分33に接続して、糸継ぎ装置8のための比較的大きな収容ハウジング18を有している。糸案内通路6はさらに収容部分32,31を備えており、これらの収容部分32,31は糸走行方向Fにおいて収容ハウジング18の下流側に配置されていて、収容部分32,31内には、糸クリアラ10もしくは糸張力センサ35が設けられている。
【0049】
この領域において、さらにパラフィン塗布装置のための収容ハウジング(図示せず)が、糸案内通路6に組み込まれていてもよい。
【0050】
糸案内通路6の出口側には、本発明のように形成された糸吸込み装置21が接続されており、この糸吸込み装置21は、旋回可能に支持された上側の成形金属薄板22と、旋回可能に支持された下側の成形金属薄板23とを有しており、これらの成形金属薄板22,23はそれぞれ、例えばステップモータである駆動装置(図示せず)を用いて確定されて旋回可能である。
【0051】
図1からさらに分かるように、糸吸込み装置21は、吸気管片14が接続されている吸込み開口28を介して、繊維機械の機械長さにわたって延在する吸気通路17に接続されている。
【0052】
吸気管片14には、糸継ぎ装置8の収容ハウジング18を吸気通路17に接続する吸気管片12,13のように、例えば孔付プレート(Blendenscheibe)15を介して、必要な場合に、負圧を供給可能である。すなわち回転可能に支持された孔付プレート15は、確定されて位置決め可能な複数の吸込み開口16を有しており、これらの吸込み開口16は、孔付プレート15の位置に応じて、吸気管片12,13,14のうちの単数又は複数を吸気通路17に、通気接続するために役立つ。
【0053】
図1に示した孔付プレート15の代わりに、吸気管片12,13,14との関連において、もちろん別の制御装置を使用することも可能である。例えば吸気管片12,13,14それぞれが、別個の弁装置又はこれに類したものを介して吸気通路17に接続されるような構成も可能である。
【0054】
糸吸込み装置21の吸込み開口28の領域には、ほぼ鉛直方向に可動に、フレキシブルなスライダ7が支持されており、このスライダ7は、糸収容開口20を有している。好ましくは薄いばね鋼から製造されたこのスライダ7は、駆動ローラ26に支持されかつ固定されていて、駆動ローラ26と一致する駆動装置38,39を用いて確定されて種々異なった位置において位置決めされ得るようになっている。
【0055】
駆動装置としては例えば、リンク機構もしくはレバー装置39又は、例えばステップモータ又はニューマチックシリンダのようなアクチュエータ38を使用することができる。
【0056】
スライダ7は、その駆動装置38,39を用いて、例えば図4aに示すように、吸気管片14の吸込み開口28が閉鎖されるように、位置決めすることができる。スライダ7のこのような操作位置によって、走行する糸が巻取り運転継続中に、横方向に作用する負圧流によって不都合な影響を受けることが、確実に回避される。
【0057】
ロット交換後にスライダ7は、その糸収容開口20が正確に糸吸込み装置21の吸込み開口28の前、ひいては吸気管片14の吸込み開口28の前に位置するように位置決めされる。糸案内通路6を介して空気力によって供給される下糸29を、スライダ7のこの運転位置において、負圧を供給される吸気管片14内に確実に吸い込むことができる(図4bもしくは図4c参照)。
【0058】
次いでスライダ7は、図4dに示すように、上方に向かって移動させられ、このとき、糸端部が吸気管片14内において固定されていてさらにスライダ7の糸収容開口20を貫通している下糸29を、糸吸込み装置21を貫通させて、巻取りパッケージ5の領域もしくは綾巻きパッケージ空管40の領域における最終ポジションに運ぶ。続いて下糸29は、操作員又は自動作動式の操作ユニットによって引き受けられ、例えば巻取りパッケージの綾巻きパッケージ空管40に固定される(図4e)。
【0059】
上において既に示唆したように、スライダ7が支持されかつ固定されている駆動ローラ26を回転させるためには、もちろん、他の駆動装置を使用することもできる。
【0060】
図1に示したステップモータ38又はニューマチックシリンダ(図示せず)の代わりに、例えば図3に示すようなレバー装置39を使用することも可能である。
【0061】
このようなレバー装置39は、巻取り運転中、自動作動式の操作ユニットの機構によって切り換えること、又は操作員によって手動で操作することができる。つまりこのようなレバー装置39を用いても、スライダ7を、確定して種々異なった位置に位置決めすることができる。
【0062】
図2には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業ユニット1の可能な別の実施の形態が側面図で略示されている。図面から分かるように、糸吸込み装置21も、図1の実施の形態による糸吸込み装置との比較において幾分変更されている。
【0063】
図示のように、作業ユニット1は、端部側に糸吸込み装置が接続されている、糸走路をほぼ取り囲んでいて負圧を供給可能な糸案内通路を有しておらず、可動の構成エレメントから成っている特殊な糸引渡し装置を有しており、この糸引渡し装置は、巻取り装置4の領域に定置に配置された変更された糸吸込み装置21と対応もしくは一致する。
【0064】
糸引渡し装置のこれらの可動の構成エレメントは、主として、旋回可能に支持された吸込みノズル51と、同様に旋回可能に支持されたグリッパ管52である。
【0065】
図1に示した実施の形態との関連において既に示唆したように、綾巻きパッケージを製造するこのような繊維機械は、しばしば、ボビン・巻管搬送システム43として形成された補給装置を有しており、このボビン・巻管搬送システム43においては搬送皿48に載置されて、紡績コップ2もしくは空管が循環する。
【0066】
ボビン・巻管搬送システム43のうち、図2には、コップ供給区間44、可逆式に駆動可能な貯え区間45、作業ユニット1に通じる横搬送区間46及び巻管戻し区間47が示されている。
【0067】
図面から分かるように、供給された紡績コップ2は、それぞれ作業ユニット1における横搬送区間46の領域に位置している繰出し部ASにおいて、大きな体積の綾巻きパッケージ5に巻き返される。
【0068】
さらにこのような繊維機械は、通常、中央制御ユニットを備えており、この中央制御ユニットは、通常のように、機械バスを介して、個々の作業ユニット1の作業ユニット計算機56に接続されている。
【0069】
個々の作業ユニット1はさらに、公知であるがゆえに単に略示されているように、それぞれ、これらの作業ユニット1の適正な運転を保証する種々様々な別の装置を有している。
【0070】
糸吸込み装置21、吸込みノズル51及び下糸を収容するグリッパ管52のような上において既に述べた装置の他に、このような繊維機械の作業ユニット1は、通常それぞれ、巻取り装置4、空気力式の糸継ぎ装置8、糸テンショナ9並びに、糸クリアラ、パラフィン塗布装置、糸切断装置、糸張力センサ及び下糸センサのようなその他の装置(図示せず)を有している。
【0071】
全体を符号4で示された巻取り装置は、通常のように、パッケージフレーム11から成っており、このパッケージフレーム11は、旋回軸線30を中心にして可動に支持されていて、綾巻きパッケージ巻管を回転可能に保持するための装置を有している。パッケージフレーム11に保持された綾巻きパッケージ5は、巻取りプロセス中、その表面が、例えば糸ガイドドラムである駆動可能なローラ34に接触しており、そしてこの糸ガイドドラムもしくはローラ34により摩擦によって回転させられる。糸ガイドドラムは同時に、綾巻きパッケージ5に巻き取られる糸を綾振りする。
【0072】
糸ガイドドラム34の領域に定置に配置された糸収容装置21は、吸込みノズル51のための吸気接続部25と、吸気管片14が接続されている吸込み開口28と、を有している。
【0073】
さらに糸収容装置21の領域には、可動に支持されたフレキシブルなスライダ7が設けられており、このスライダ7は、糸収容開口20を有している。
【0074】
スライダ7の相応の移動によって、糸収容開口20を吸込み開口28の上に位置決めすることができ、これによって糸収容装置21は、吸気管片14を介して、繊維機械の負圧系に接続されて、糸収容装置21には負圧が供給されるようになる。
【0075】
吸気接続部25には、回転軸線54を中心にして旋回可能に支持されている管状の吸込みノズル51が連結可能である。好ましくは吸込みノズル51には、旋回駆動装置(図示せず)が対応配置されており、この旋回駆動装置は、吸込みノズル51の確定された旋回運動を可能にする。すなわち吸込みノズル51は、この吸込みノズル51の自由端部が糸吸込み装置21の吸気接続部25に接続されるように、旋回することができる。
【0076】
また吸込みノズル51は、例えば、その回転軸線54の領域に配置された弁装置(図示せず)又はこれに類したものを介して、繊維機械の負圧系に接続されている。
【0077】
実地においては一方では、糸切れ後に綾巻きパッケージ5に巻き上げられた上糸の糸端部を捕捉して、綾巻きパッケージ5の表面から持ち上げることができるように、糸吸込み装置21に連結された吸込みノズル51を介して、糸吸込み装置21に負圧を供給することができる。この上糸は次いで、下方に向かって旋回する吸込みノズル51によって糸継ぎ装置8内に挿入され、そこで、グリッパ管52によってもたらされた下糸の糸端部と空気力によって糸継ぎすることができる。
【0078】
また他方では、ロット交換時に、例えばグリッパ管52によって準備された、給糸ボビン2の下糸を、吸込みノズル51によって引き受けて、糸吸込み装置21に運ぶことができる。
【0079】
すなわち下糸は、負圧を供給された吸込みノズル51によって、糸吸込み装置21に引き渡され、この糸吸込み装置21自体は、吸込み開口28を介して吸気管片14に接続されていて、これによって糸吸込み装置21には負圧が供給される。
【0080】
スライダ7はこのとき、その糸収容開口20が糸吸込み装置21の吸込み開口28の前に位置するように位置決めされている。
【0081】
吸込みノズル51が無圧に切り換えられるや否や、下糸29は、吸込みノズル51から糸吸込み装置21内に移動させられ、スライダ7の糸収容開口20及び吸込み開口28を通って吸気管片14内に滑り込み、そこで直ちに空気によって固定される。
【0082】
次いで下糸29は、上方に向かって移動するスライダ7の糸収容開口20を通して、糸吸込み装置21を貫いて、パッケージフレーム11に保持された綾巻きパッケージ空管40の領域における最終ポジションに運ばれ、そこで操作員によってか又は操作ユニットによって引き受けられることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 作業ユニット、 2 給糸ボビン(紡績コップ)、 3 繰出し補助装置、 4 巻取り装置、 5 巻取りパッケージ、 6 糸案内通路、 7 スライダ、 8 糸継ぎ装置、 9 糸テンショナ、 10 糸クリアラ、 11 パッケージフレーム、 12,13,14 吸気管片、 15 孔付プレート、 17 吸気通路、 18 収容ハウジング、 19 吸込み基部、 20 糸収容開口、 21 糸吸込み装置、 22,23 成形金属薄板、 26 駆動ローラ、 28 吸込み開口、 29 下糸、 30 旋回軸線、 31,32,33 収容部分、 34 ローラ(糸ガイドドラム)、 35 糸張力センサ、 36 双方向矢印、 38,39 駆動装置(アクチュエータ、レバー装置)、 40 綾巻きパッケージ空管、 43 ボビン・巻管搬送システム、 44 コップ供給区間、 45 貯え区間、 46 横搬送区間、 47 巻管戻し区間、 49 綾巻きパッケージ搬送装置、 51 吸込みノズル、 52 グリッパ管
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】