(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1駆動要素から駆動力を提供される車輪と、前記第2駆動要素から駆動力を提供される車輪とは、左右方向における位置が異なっている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乳母車。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図19は、一実施の形態による乳母車1を説明するための図である。このうち、
図1及び
図2は、それぞれ、一実施の形態による乳母車1を正面側及び背面側から示す斜視図である。
図1及び
図2に示す乳母車1では、乳母車本体2に、乳幼児を着座させるシートユニット8が支持されている。シートユニット8に着座した乳幼児を日差しや風から保護するよう、シートユニット8には、幌9が設けられている。
【0014】
なお、本明細書中において、乳母車1及びその構成要素に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車1を、ハンドル20を把持しながら操作する操作者を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」を意味する。さらに詳しくは、「前後方向d1」とは、
図1における紙面の左右方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、ハンドルを押す操作者が向く側であり、
図1における紙面の左側が前となる。一方、「上下方向d3」とは前後方向に直交するとともに接地面に直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向d3」とは鉛直方向をさす。また、「左右方向d2」とは幅方向でもあって、「前後方向d1」及び「上下方向d3」のいずれにも直交する方向である。
【0015】
乳母車本体2は、フレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20と、により構成されている。フレーム本体10において、複数の車輪4が支持されたベースフレーム11に、シートユニット8を支持する上部フレーム12が接続されている。上部フレーム12は、ベースフレーム11に対して傾いた状態で支持されている。上部フレーム12の前方部分とベースフレーム11の前方部分とが前方連結部材13を介して接続され、上部フレーム12の中間部分とベースフレーム11の後方部分とが中間連結部材14を介して接続されている。前方連結部材13及び中間連結部材14は、上部フレーム12がベースフレーム11に対して回動することを補助する。
【0016】
とりわけ、ベースフレーム11には、左右方向d2に離間して配置された左右の側ベースフレーム11a、11bが設けられている。左右の側ベースフレーム11a、11bの前端は、前方ベースフレーム11cにより連結されている。前方ベースフレーム11cに2つの前輪41が取り付けられ、各側ベースフレーム11a、11bに1つずつ後輪42が取り付けられている。本実施の形態では、各前輪41は、キャスター3を介して前方ベースフレーム11cに回転可能且つ旋回可能に支持されている。キャスター3は、回転軸線Ar1を中心として前輪41を回転可能に支持し、且つ、回転軸線Ar1と非平行、本実施の形態では直交する方向に平行な旋回軸線As1を中心として旋回可能である。すなわち、前輪41は、自転可能であると共にその向きを変更可能となるようにキャスター3によって支持されている。
【0017】
一方、前輪41よりも後方に位置する各後輪42は、キャスターによって旋回可能に支持されていない。本実施の形態において、各後輪42は、後述する駆動軸51b、52b(
図4参照)に回転可能に支持され、旋回可能にはなっていない。
【0018】
上部フレーム12を構成する要素として、左右方向d2に離間して配置された左右の側上部フレーム12a、12bが設けられている。左右の側上部フレーム12a、12bの間にシートユニット8が配置されている。とりわけ、各側上部フレーム12a、12bは、その中間部分で枢着されており、各枢着された地点を起点として折り畳み可能になっている。
【0019】
左右の側上部フレーム12a、12bの後端は、後方上部フレーム12dにより連結されている。後方上部フレーム12dには、ハンドル20が取り付けられている。ハンドル20は、操作者の手で操作される部分である。ハンドル20については、
図5乃至
図11を参照して後述する。
【0020】
左右の側上部フレーム12a、12bの前端は、前方上部フレーム12cにより連結されている。前方上部フレーム12cは、前方に突き出した湾曲した形状をもち、前方上部フレーム12cの中間部分に前方連結部材13の上方部分が枢着されている。前方連結部材13の下方部分は、前方ベースフレーム11cの中間部分に固定されている。
【0021】
なお、左右の中間連結部材14は、左右の側上部フレーム12a、12bの中間部分と左右の側ベースフレーム11a、11bの後方部分とに掛け渡されている。各中間連結部材14は、リンクとして機能し、側上部フレーム12a、12b及び側ベースフレーム11a、11bの両方に対して回動可能になっている。
【0022】
以上のようなフレーム構造をもつ乳母車1は、
図1及び
図2に示す展開状態から折畳状態に折り畳むことができる。
【0023】
まず、側上部フレーム12a、12bと中間連結部材14とのロックを解除し、ハンドル20を自重を利用して下方に下ろしていく。この動作によって、前方上部フレーム12cが前方連結部材13に対して
図1中時計回り方向に回動すると共に、中間連結部材14がベースフレーム11に対して
図1中時計回り方向に回動する。この回動動作に伴い、上部フレーム12がベースフレーム11に重なるように接近していく。回動動作が完了した後、左右の側上部フレーム12a、12bを各々の枢着地点を起点として折り畳む。
【0024】
以上の折り畳み動作の結果、ベースフレーム11と折り畳まれた上部フレーム12とが、乳母車1の側面視において接近して略平行に配置される。一方、乳母車1を折畳状態から、
図1及び
図2に示す展開状態に戻すためには、上述した折り畳み操作と逆の手順を踏めばよい。
【0025】
ところで、本実施の形態による乳母車1では、操作者の負担を軽減すべく、車輪4に駆動要素51、52が接続されている。ただし、背景技術の欄で説明したように、従来の乳母車はいわゆる自走式の乳母車として構成されていたため、意図した通りに乳母車を操作することは容易ではなかった。そこで、本実施の形態による乳母車1は、操作者の走行操作に応じて車輪4に駆動力を提供する補助駆動式の手押し乳母車として構成されている。
【0026】
図3に、車輪4の駆動を補助する機構をブロック図にて模式的に示す。
図3に示すように、複数の車輪4のうちのいくつかに、駆動要素51、52が接続されている。駆動要素51、52は、車輪4を駆動させる構成要素、換言すれば、車輪4に駆動力を提供する構成要素である。本実施の形態では、第1駆動要素51が左側の後輪42を駆動し、第2駆動要素52が右側の後輪42を駆動するようになっている。
【0027】
図4に、駆動要素51、52の構成の一例を示す。
図4に示すように、各駆動要素51、52は、対応する側の後輪42に接続された駆動軸51a、52aと、駆動軸51a、52aを駆動させる直流モータ51b、52bと、により構成されている。駆動軸51a、52aの一端は、対応する側の後輪42に接続され、当該後輪42を回転軸線Ar2を中心として回転可能となるように支持し、旋回可能には支持していない。駆動軸51a、52aの他端は、側ベースフレーム11a、11bに支持された直流モータ51b、52bの主軸に、不図示の動力伝達要素(例えばギア)を介して連結されている。なお、駆動軸51a、52aは、直流モータ51b、52bの主軸と一体に構成されていてもよいし、別個の部材として構成されていてもよい。
【0028】
図3に戻って、各駆動要素51、52は、対応する制御部7a、7bに接続され、当該制御部7a、7bにより制御される。各制御部7a、7bには、さらに検知要素6a、6bが接続されていて、検知要素6a、6bからの情報が入力として取り込まれる。そして、制御部7a、7bは、検知要素6a、6bからの情報に基づいて各駆動要素51、52を制御して、各駆動要素51、52から車輪4への駆動力を調整する。また、各制御部7a、7bは、電源75に接続されている。2つの制御部7a、7bにより制御装置7が構成されている。このような制御装置7は、例えば、中央処理装置(CPU)及びレジスタ(REGISTER)を供えたマイクロコントローラや、プログラマブルコントローラ(PLC)の形態として実現され得る。
【0029】
本実施の形態では、第1制御部7aが、第1検知要素6aからの情報に基づいて第1駆動要素51を制御して左側の後輪42を駆動し、第2制御部7bが、第2検知要素6bからの情報に基づいて第2駆動要素52を制御して右側の後輪42を駆動するようになっている。とりわけ、第1検知要素6aと第2検知要素6b並びに第1駆動要素51と第2駆動要素52は、それぞれ別個に設けられていて、第1制御部7aと第2制御部7bとは、相互に情報のやり取りを行わない。このため、第1制御部7a及び第2制御部7bは、別個独立して各々に対応する駆動要素51、52を制御するようになっている。
【0030】
また、
図4に示すように、収容ボックス70が、側ベースフレーム11a、11bに掛け渡されていて、制御装置7が、収容ボックス70内に収容されている。さらに、電源75が、収容ボックス70に取り外し自在に固定されていて、制御装置7及び2つの駆動要素51、52に電流を供給するようになっている。
【0031】
検知要素6a、6bは、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知するものである。検知要素6a、6bが検知する走行操作に関する情報は、操作者から乳母車本体2に入力される情報であれば特に限定されない。走行操作に関する情報の一例として、ハンドル20を操作する手からの荷重に関する情報や、操作者が乳母車1を走行させる速度及び速度に関連する車輪4の回転数に関する情報を検知してもよい。
【0032】
図2に戻って、本実施の形態による検知要素6a、6bは、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報、換言すれば、ハンドル20に加えられる荷重を特定することが可能な情報を検知するように構成されている。先ず、ハンドル20の構成について説明し、その後、ハンドル20に設けられた検知要素検知要素6a、6bについて説明していく。
【0033】
図5は、ハンドル20を拡大して示す斜視図である。
図5に示すように、ハンドル20には、操作者の手が掛けられる操作部材21が配置され、操作部材21と乳母車本体2とをハンドル本体22が連結している。ハンドル本体22は、上部フレーム12との連結箇所c1において、当該上部フレーム12に締結されている。ハンドル本体22を構成する要素として、後方上部フレーム12dに締結されたハンドルベース22aが配置されている。ハンドルベース22aに、左右方向d2に離間して配置された一対の湾曲バー22b、22cが支持され、一対の湾曲バー22b、22cは、左右方向d2に拡がるように湾曲した経路に沿って延びて、その先端の間で操作部材21を支持している。
図5に示す操作部材21は、軸状のグリップバーとして構成されている。
【0034】
本実施の形態では、左側の湾曲バー22bの基端寄りの領域に、第1検知要素6aが貼り付けられ、右側の湾曲バー22cの基端寄りの領域に、第2検知要素6bが貼り付けられている。この場合、第1検知要素6aは主として左手から操作部材21に加えられる荷重を検知し、第2検知要素6bは主として右手から操作部材21に加えられる荷重を検知するようになる。
【0035】
図6に、左側の湾曲バー22bに設けられた第1検知要素6aを拡大して示し、
図7に、第1検知要素6aの回路図を示す。なお、
図6及び
図7には、左側の湾曲バー22bに設けられた第1検知要素6aが示されているが、右側の湾曲バー22cに設けられた第2検知要素6bも同様に構成することができる。
図6及び
図7に示すように、検知要素6a、6bとしての複数の歪ゲージ61が、湾曲バー22b、22c内のインナー角材22jに貼り付けられている。複数の歪ゲージ61は、湾曲バー22b、22cの歪みを計測するようブリッジ回路を構成している。
図6に示す例では、角型のインナー角材22jの右側の面に2つの歪ゲージ61が配置され、インナー角材22jの左側の面に2つの歪ゲージ61が配置され、これら4つの歪ゲージ61は互いに同一に構成される。なお、図示するインナー角材22jは中空になっているが、中実であってもよい。
【0036】
図8に、歪ゲージ61が検知した歪みに応じて駆動要素51、52により提供される駆動力を決定する制御の一例をグラフとして示す。
図8のグラフにおいて、横軸は、歪ゲージ61が検知した歪みを示し、対象となる或る歪ゲージ61が延びた場合を正の値とし、対象となる或る歪ゲージ61が縮んだ場合を負の値としている。縦軸は、車輪4を駆動させる駆動力を示し、車輪4を前進方向に回転させる駆動力を正の値とし、車輪4を後退方向に回転させる駆動力を負の値としている。
【0037】
図8のグラフにおいて、各制御部7a、7bは、対応する検知要素6a、6bの歪ゲージ61が検知した荷重の大きさが大きくなるほど車輪4への駆動力が漸次増大するよう、対応する駆動要素51、52を制御する。ここでいう「駆動力が漸次増大する」とは、駆動力が常に増大するように変化し続けることだけではなく、少なくとも一部の区間において駆動力が変化しない場合も含む概念である。その一方で、「駆動力が漸次増大する」には、任意の領域において駆動力が減少するように変化することは含まれない。
【0038】
具体的には、歪ゲージ61が検知した荷重を示す歪みの大きさが下限値α1よりも小さい場合、制御部7a、7bは、駆動要素51、52による駆動力を車輪4に提供しないように制御する。これにより、外乱や意図しない操作が乳母車1に加えられても、乳母車1が意図せず動いてしまうことを防止することができる。
【0039】
歪ゲージ61が検知した荷重を示す歪みの大きさが下限値α1よりも大きくなると、制御部7a、7bは、駆動要素51、52による駆動力を、歪ゲージ61が検知した歪みの大きさに比例して車輪4に提供するように制御する。
図8のグラフでは、対象となる歪ゲージ61が延びた場合には、車輪4を前進方向に回転させる駆動力を提供し、対象となる歪ゲージ61が縮んだ場合には、車輪4を後退方向に回転させる駆動力を提供する。
【0040】
一方、ハンドル20に加えられる荷重を示す歪みの大きさが上限値α2よりも大きくなると、制御部7a、7bは、駆動要素51、52による駆動力を、上限駆動力Fとして車輪4に提供するように制御する。
【0041】
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について
図9乃至
図12を参照して説明する。
図9乃至
図12は、ハンドル20を操作したときの歪ゲージ61の作用を説明するための図である。なお、以下の説明では、インナー角材22jをその長手方向に平行な平面にて2つの部分に区画したときに、前側となる部分を前領域A1とし、後ろ側となる部分を後領域A2とする(
図6参照)。
【0042】
図9に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における前方に押し進めた場合、各検知要素6a、6bのインナー角材22jの前領域A1が縮み後領域A2が延びる。前領域A1が縮み後領域A2が延びた情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測される。典型的には、各検知要素6a、6bにて計測される歪みの大きさは同程度となる。各検知要素6a、6bにて計測された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が前方に押し進められたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52の直流モータ51b、52bに提供する。これにより、各駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を前進方向に回転させる。このようにして、駆動軸51a、52aが後輪42の回転を補助することにより、操作者が乳母車1を前方に押す負担が軽減される。
【0043】
一方、下り坂で乳母車1を押し進める場合には、
図10に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における後方に引き寄せる。この場合、
図9の場合とは逆に、インナー角材22jの前領域A1が延び後領域A2が縮む。前領域A1が延び後領域A2が縮んだ情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測され対応する制御部7a、7bに送られる。典型的には、各検知要素6a、6bにて計測される歪みの大きさは同程度となる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が後方に引かれたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52の直流モータ51b、52bに
図9の場合と逆向きに提供する。これにより、各駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を後退方向に回転させる。このようにして、駆動軸51a、52aが後輪42の回転を補助することにより、操作者が乳母車1を後方に引く負担が軽減される。
【0044】
次に、乳母車1を旋回させる際には、
図11に示すように、左右の手で操作部材21を前方に押す力に差異を生じさせることにより、乳母車1を旋回させることができる。
図11に示す例では、左手よりも右手から操作部材21に掛かる力を大きくすることにより、乳母車1を左回りに旋回させることができる。左右の手で操作部材21に異なる力を掛けても、
図9の場合と同様に、インナー角材22jの前領域A1が縮み後領域A2が延びる。前領域A1が縮み後領域A2が延びた情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測され制御部7a、7bに送られる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が前方に押し進められたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52に提供する。
【0045】
上述のように、左手よりも右手から操作部材21に掛かる力が大きいため、左側の湾曲バー22bに設けられた第1検知要素6aよりも、右側の湾曲バー22cに設けられた第2検知要素6bの方が大きな荷重を検知する。これに応じて、第1検知要素6aに繋がった第1駆動要素51よりも第2検知要素6bに繋がった第2駆動要素52の方が大きな駆動力を車輪4に提供する。この結果、第1駆動要素51に接続された内輪となる左側の後輪42よりも、第2駆動要素52に接続された外輪となる右側の後輪42を回転させ易くなり、旋回動作をスムーズに行うことができる。
【0046】
また、
図12に示すように、左右の手で操作部材21に反対向きの力を加えることによっても、乳母車1を旋回させることができる。
図12に示す例では、左手で操作部材21を後方に引き寄せると共に右手で操作部材21を前方に押し出す。これにより、左側の湾曲バー22b内のインナー角材22jの前領域A1が延び後領域A2が縮む一方で、右側の湾曲バー22c内のインナー角材の前領域A1が縮み後領域A2が延びる。左側の湾曲バー22b内のインナー角材22jが変形した情報は、第1検知要素6aの4つの歪ゲージ61にて計測され第1制御部7aに送られる一方で、右側の湾曲バー22c内のインナー角材22jが変形した情報は、第2検知要素6bの4つの歪ゲージ61にて計測され第2制御部7bに送られる。情報を受け取った第1制御部7aは、第1検知要素6aが計測した値に応じた電流を第1駆動要素51に提供し、左側の後輪42を後退方向に回転させる一方で、第2制御部7bは、第2検知要素6bが計測した値に応じた電流を第2駆動要素52に提供し、右側の後輪42を前進方向に回転させる。この結果、左右の後輪42逆向きに回転させ、乳母車1を旋回させることができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態による乳母車1は、乳母車本体2と、乳母車本体2に支持された複数の車輪4と、乳母車本体2に支持され、複数の車輪4のうちの少なくとも1つに駆動力を提供する第1駆動要素51と、複数の車輪4のうちの第1駆動要素51から駆動力を提供される車輪4とは異なる車輪4に駆動力を提供し、第1駆動要素51とは別個に設けられた第2駆動要素52と、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知する第1検知要素6aと、第1検知要素6aとは別個に設けられ、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知する第2検知要素6bと、第1検知要素6aが検知した情報に基づいて第1駆動要素51を制御して、第1検知要素6aから車輪4への駆動力を調整する第1制御部7a、並びに、第2検知要素6bが検知した情報に基づいて第2駆動要素52を制御して、第2検知要素6bから車輪4への駆動力を調整する第2制御部7bを有する制御装置7と、を備える。このような形態によれば、第1検知要素6aが検知した情報に基づいて第1駆動要素51を制御し、第2検知要素6bが検知した情報に基づいて第2駆動要素52を制御することにより、乳母車1の走行操作に応じて各駆動要素51、52から車輪4への駆動力を調整することができる。この結果、乳母車1を負担を軽減した態様で意図した通りに操作することが可能となる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、乳母車本体2は、複数の車輪4を支持するフレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20と、を有し、第1検知要素6a及び第2検知要素6bは、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を検知する。乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報として、ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を選択することで、利用者の走行操作に関する意図に応じて駆動要素51、52から車輪4に駆動力を提供することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、第1制御部7aは、第1検知要素6aが検知した荷重が大きくなるほど車輪4への駆動力が漸次増大するよう、第1駆動要素51を制御し、第2制御部7bは、第2検知要素6bが検知した荷重が大きくなるほど車輪4への駆動力が漸次増大するよう、第2駆動要素52を制御する。乳母車1を押し進ませる力が大きくなるほど、駆動要素51、52からの駆動力をより必要とすることから、このような制御によれば、乳母車1の走行操作に応じて操作者の負担をさらに軽減することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、複数の車輪4のうち、第1駆動要素51及び第2駆動要素52から駆動力を提供される車輪が後輪42であり、複数の車輪4のうちの前輪41は、キャスター3を介して乳母車本体2に支持されている。前輪41がキャスター3を介して乳母車本体2に支持されていることで、乳母車1の旋回操作をスムーズに行うことができる。また、利用者が操作するハンドル20が後方に位置することや、乳母車1に乗車する乳幼児の重心を考慮すると、後輪42は荷重が掛かり易く接地面に安定して接地するといえる。安定して接地した後輪42に駆動要素51、52からの駆動力が提供されることで、駆動要素51、52による駆動補助を安定して実現することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、第1駆動要素51から駆動力を提供される車輪4と、第2駆動要素52から駆動力を提供される車輪4とは、左右方向d2における位置が異なっている。この場合、旋回操作時に、2つの駆動要素51、52のうちの一方に接続された車輪4が内輪側となり、他方に接続された車輪4が外輪側となる。それゆえに、内輪側の車輪4よりも外輪側の車輪4に相対的に大きな駆動力を提供するように制御することで、外輪となる車輪4を相対的に回転させ易くし、旋回動作をスムーズに行うことができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0053】
例えば、上述した実施の形態では、検知要素6が歪ゲージ61からなる例を示したが、検知要素6の形態は、上述した例に限定されない。検知要素6は、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知することができる限り任意であり、他の例として、ハンドル本体22に取り付けられたトルクセンサや圧力センサや磁歪センサ等として構成されていてもよい。例えば、圧力センサとしては、ハンドル20に加えられる荷重を作動流体の圧力の変化として捉え、この圧力の変化をダイヤフラムを介して感圧素子で計測した後、電気信号として出力するタイプのものであってもよい。
【0054】
また、上述した実施の形態では、ハンドル本体22が一対の湾曲バー22b、22cを有する例を示したが、ハンドル本体22の構成は、上述した例に限定されない。
図13に、ハンドル本体22の他の構成例を示す。
【0055】
図13に示すように、ハンドル20には、操作者の手が掛けられる操作部材21が配置され、操作部材21と乳母車本体2とをハンドル本体22が連結している。ハンドル本体22を構成する要素として、後方上部フレーム12dから2つの支柱22d、22eが延び出し、2つの支柱22d、22eの延び出した先端と操作部材21との間に、グリップ側延出部22fが掛け渡されている。
【0056】
図13に示す例では、2つの支柱22d、22eは、左右方向d2に間隔を空けて並べられていて、後方上部フレーム12dとの連結箇所c1、c2において、当該上部フレーム12に締結されている。さらに、各支柱22d、22eは、後方に向かってみたときに、水平面に対して上側に傾斜している。
【0057】
図14に、ハンドル20を拡大して示す。
図14に示すように、操作部材21は、左右方向d2に間隔を空けて並べられた2つのグリップ21a、21bとして構成され、グリップ側延出部22fは、2つの支柱22d、22eの間となる領域から2つのグリップ21a、21bのいずれかの端部まで延びる3つの連結バー22g〜22iとして構成されている。とりわけ、左側連結バー22gが2つの支柱22d、22eの間となる領域から左側に位置するグリップ21aの左端に掛け渡され、中央側連結バー22hが2つの支柱22d、22eの間となる領域から2つのグリップ21a、21bの間に掛け渡され、右側連結バー22iが2つの支柱22d、22eの間となる領域から右側に位置するグリップ21bの右端に掛け渡されている。
【0058】
図13に示すように、本実施の形態において、グリップ側延出部22fを構成する3つの連結バー22g〜22iは、後方に向かってみたときに、水平面に対して下側に傾斜している。
【0059】
本実施の形態では、左右の支柱22d、22eのそれぞれに、検知要素6a、6bが設けられている。
図15に、支柱22dに第1検知要素6aが設けられた状態を示す。なお、
図15には、左側の支柱22dに設けられた第1検知要素6aが示されているが、右側の支柱22eに設けられた第2検知要素6bも同様に構成することができる。
図15に示すように、各検知要素6a、6bは、前述の
図7に示すようにしてブリッジ回路として接続された複数の歪ゲージ61を含んでいる。各検知要素6a、6bの複数の歪ゲージ61は、支柱22d、22e内のインナー角材22kに貼り付けられている。
【0060】
なお、
図13乃至
図15に示した変形例は、検知要素6a、6b、制御部7a、7b、並びに、駆動要素51、52の構成は、上述した形態と略同様であるが、制御部7a、7bが、操作部材21が下方に押し下げられた場合であっても前進方向に後輪42を駆動させる点で、上述した形態と異なる。
【0061】
とりわけ、
図13から理解されるように、各検知要素6a、6bを構成する4つの歪ゲージ61は、操作部材21よりも上下方向d3における上方に位置し、操作部材21は、連結箇所c1、c2よりも後方且つ下方となる位置に位置している。このような配置によれば、以下の
図16乃至
図18に示すように歪ゲージ61が作用する。
図16乃至
図18は、ハンドル20を操作したときの歪ゲージ61の作用を説明するための図である。なお、以下の説明では、インナー角材22kをその長手方向に平行な平面にて2つの部分に区画したときに、上側となる部分を上領域A3とし、下側となる部分を下領域A4とする。
【0062】
図16に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における前方に押し進めた場合、各支柱22e、22f内のインナー角材22kの上領域A3が延び下領域A4が縮む。上領域A3が延び下領域A4が縮んだ情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測される。典型的には、各検知要素6a、6bにて計測される歪みの大きさは同程度となる。各検知要素6a、6bにて計測された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52の直流モータ51b、52bに提供する。これにより、各駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を前進方向に回転させる。
【0063】
一方、下り坂で乳母車1を押し進める場合には、
図17に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における後方に引いた場合、
図16の場合とは逆に、インナー角材22kの上領域A3が縮み下領域A4が延びる。上領域A3が縮み下領域A4が延びた情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測され対応する制御部7a、7bに送られる。典型的には、各検知要素6a、6bにて計測される歪みの大きさは同程度となる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が後方に引かれたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52の直流モータ51b、52bに
図16の場合と逆向きに提供する。これにより、各駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を後退方向に回転させる。
【0064】
次に、乳母車1を旋回させる際には、
図18に示すように、左右の手で操作部材21を前方に押す力に差異を生じさせることにより、乳母車1を旋回させることができる。
図18に示す例では、左手よりも右手から操作部材21に掛かる力を大きくすることにより、乳母車1を左回りに旋回させることができる。左右の手で操作部材21に異なる力を掛けても、
図16の場合と同様に、インナー角材22kの上領域A3が延び下領域A4が縮む。上領域A3が延び下領域A4が縮んだ情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測され制御部7a、7bに送られる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52に提供する。
【0065】
上述のように、左手よりも右手から操作部材21に掛かる力が大きいため、左側の支柱22eに設けられた第1検知要素6aよりも、右側の支柱22fに設けられた第2検知要素6bの方が大きな荷重を検知する。これに応じて、第1検知要素6aと協働する第1駆動要素51よりも第2検知要素6bと協働する第2駆動要素52の方が大きな駆動力を車輪4に提供する。この結果、第1駆動要素51に接続された内輪となる左側の後輪42よりも、第2駆動要素52に接続された外輪となる右側の後輪42をより多く回転させることができ、旋回動作をスムーズに行うことができる。
【0066】
さらに、本変形例においては、走行面にある段差を乗り越える際にも、駆動要素51、52による駆動力を利用することが可能である。
図19に示すように、走行面に段差がある場合には、操作者は操作部材21を上下方向d3における下方に押し下げて、前輪41を浮かせて走行させようとする。この場合であっても、インナー角材22kの上領域A3が延び下領域A4が縮む。上領域A3が延び下領域A4が縮んだ情報は、各検知要素6a、6bの4つの歪ゲージ61にて計測される。典型的には、各検知要素6a、6bにて計測される歪みの大きさは同程度となる。各検知要素6a、6bにて計測された情報は、対応する制御部7a、7bに送られる。情報を受け取った各制御部7a、7bは、操作部材21が前方に押し進められたまたは下方に押し下げられたと認識し、対応する検知要素6a、6bが計測した値に応じた電流を、対応する駆動要素51、52の直流モータ51b、52bに提供する。これにより、各駆動要素51、52の直流モータ51b、52bが回転し、直流モータ51b、52bに接続された駆動軸51a、52aが後輪42を前進方向に回転させる。すなわち、本変形例によれば、段差を乗り越える動作中であっても、駆動要素51,52による駆動力の補助を受けながら乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
【0067】
以上のように、本変形例によれば、ハンドル20は、操作者の手が掛けられる操作部材21と、操作部材21と乳母車本体2とを連結するハンドル本体22と、を有し、各制御部7a、7bは、各々に対応する検知要素6a、6bによって、操作部材21が前方に押された情報または下方に押し下げられた情報が検知されると、各々に対応する駆動要素51、52に車輪4を前進させる駆動力を提供させ、各々に対応する検知要素6a、6bによって操作部材21が後方に引かれた情報が検知されると、各々に対応する駆動要素51、52に車輪4を後退させる駆動力を提供させる。このような形態によれば、操作者による操作部材21の操作に合わせて、駆動要素51、52による車輪4への駆動力を調整することができる。とりわけ、本実施の形態によれば、接地面の段差等を乗り越えるために前輪41を浮かせるよう操作部材21を下方に押し下げた場合であっても、駆動要素51、52が車輪4を前進させる駆動力を提供する。このため、段差を乗り越える動作中であっても、駆動要素51、52による駆動力の補助を受けながら乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、各検知要素6a、6bは、ハンドル20のハンドル本体22に取り付けられた複数の歪ゲージ61を含み、少なくとも1つの歪ゲージ61は、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると延び操作部材21が後方に引かれると縮む、または、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると縮み操作部材21が後方に引かれると延びるようになっている。このような形態によれば、検知要素6が歪ゲージ61によって実現されるため、操作者が操作部材21を操作する情報を、複雑な構造を回避しつつ安定して検知することができる。操作者が操作部材21を操作する情報をさらに安定して検知する観点から、操作部材21は、ハンドル本体22とフレーム本体10との連結箇所c1、c2よりも後方且つ下方となる位置または前方且つ上方となる位置に位置しているのがよい。
【0069】
とりわけ、本実施の形態によれば、操作部材21は、連結箇所c1、c2よりも後方且つ下方となる位置に位置し、各検知要素6a、6bの歪ゲージ61は、ハンドル本体22のうちの、操作部材21との接続箇所と連結箇所c1、c2との間となる部分に取り付けられている。この場合、操作者から操作部材21に加えられる荷重に連動して、ハンドル本体22のうちの歪ゲージ61が貼り付けられた部分が感度良く伸縮する。このため、歪ゲージ61によって、操作者が操作部材21を操作する情報をさらに精度良く検知することが可能となる。
【0070】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。