【実施例1】
【0012】
(眼科装置1の構成)
以下、本願発明に係る眼科装置を、実施例に基づいて具体的に説明する。
図1は、本願発明の実施例1に係る眼科装置1の外観を示す概略図であり、
図2は眼科装置1の光学図であり、
図3は眼科装置1のシステム構成を示すブロック図である。
【0013】
実施例1の眼科装置1は、眼屈折力測定装置であり、基本的に被検眼E(
図2参照)の眼屈折力を測定する装置である。眼科装置1は、他覚測定により被検眼Eの眼屈折力を含む光学特性(眼特性)を測定する他覚測定機能と、自覚検査により被検眼Eの眼屈折力を含む光学特性(眼特性)を検査する自覚検査機能とを有する。
【0014】
図1に示すように、実施例1に係る眼科装置1は、ベース部2と、このベース部2に対して前後左右に移動可能な架台3と、この架台3と一体に設けられたヘッド部4と、ベース部2と一体に設けられた顔受け部5とを有して構成されている。
【0015】
架台3には、操作レバー6が設けられ、ヘッド部4はこの操作レバー6により被検者に対して前後左右(
図1のZ軸方向とX軸方向)に移動される。また、ヘッド部4は、操作レバー6をその軸に対して回転させることにより上下方向(
図1のY軸方向)に移動される。
【0016】
顔受け部5には、顎受け部7aと額当て7bとが設けられている。被検者は、顎受け部7aに顎を置き、額当て7bに額を当てた状態で検査を受ける。
【0017】
ヘッド部4には、
図1〜
図3に示すように、光学系8と、制御部9と、表示部10としての液晶表示装置(LCDモニタ)と、合焦レンズ駆動部18と、VCCレンズ駆動部19と、チャート板駆動部20とが設けられている。
【0018】
表示部10はタッチパネル式の表示画面10aを有している。表示画面10aには、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)の画像(前眼部像E’)や各種の操作画面や測定結果等が表示される。
【0019】
制御部9は、CPUや、RAM、ROM、HDD、フラッシュメモリ等からなる記憶部等を有して構成されている。CPUは、ROMに予め記憶されているプログラムに従って、RAMをワークメモリとして用いて、眼科装置1全体の動作を制御する。また、制御部9は、光学系8からの測定情報に基づいて、眼屈折力等の算出、表示部10への表示等を行う。HDDやフラッシュメモリには、測定情報等が記憶される。
【0020】
制御部9には、
図1、
図2に示すように、外部装置としての眼鏡レンズ測定装置11が接続され、被検者が装用する眼鏡レンズの測定データとしてのレンズ度数等が入力可能となっている。外部装置は、眼鏡レンズ測定装置11に限定されることはなく、記録媒体に対して情報を読み書きする装置等を用いることができる。
【0021】
(光学系8の構成)
光学系8は、
図2に示すように、観察系12と、固視標投影系13と、他覚式測定系14と、自覚式測定系15と、アライメント系16,17とを有している。実施例1では、固視標投影系13と自覚式測定系15とは、各光学系を構成する光学素子が共用されている。
【0022】
(観察系12の構成)
観察系12は、被検眼Eの前眼部を観察する機能を有している。観察系12は、対物レンズ12aと、ダイクロイックフィルタ12bと、ハーフミラー12cと、リレーレンズ12dと、ダイクロイックフィルタ12eと、結像レンズ12fと、撮像素子(CCD)12gとを有して構成されている。撮像素子12gからの画像信号の出力は、制御部9に入力される。制御部9は、撮像素子12gから入力された画像信号に基づいて、表示部10に前眼部像E’を表示させる。
【0023】
対物レンズ12aの周囲には、ケラト板12hと、ケラトリング光源12h’とが設けられている。ケラト板12hは、角膜形状を測定するために用いられ、ケラトリング光源12h’により形成されるリング状光束を角膜Ecに投影する。角膜Ecにより反射されたリング状光束は、ダイクロイックフィルタ12bを透過し、リング状の像(ケラトリング像)を撮像素子12g上に形成する。
【0024】
(アライメント系16)
アライメント系16は、観察系12の光軸に沿う方向(前後方向:
図1のZ軸方向)の位置合わせ(アライメント)を行う機能を有している。アライメント系16は、ケラト板12hの後方(撮像素子12g側)に設けられている。アライメント系16は、アライメント光源16aと、投影レンズ16bとを有して構成されている。投影レンズ16bは、アライメント光源16aから出力された光束を平行光束に変換して角膜Ecに投影する。角膜Ecにより反射された光束は、ダイクロイックフィルタ12bを透過し、前眼部像E’と、虚像(図示せず)と、輝点とを撮像素子12g上に形成する。角膜Ec上の左右2輝点の間隔とケラトリング光源12h’の点灯によるケラトリング像の直径の比から、Z軸方向の位置を検出することができる。そして、左右2輝点の間隔と、ケラトリング像の径の比率が所定範囲になるようにヘッド部4の位置を調整することによって、前後方向のアライメントを行う。
【0025】
(アライメント系17)
アライメント系17は、観察系12の光軸に直交する上下方向(
図1のY軸方向)、及び左右方向(
図1のX軸方向)のアライメントを行う機能を有している。アライメント系17は、ハーフミラー12cを介して観察系12から分岐した光路を形成し、アライメント光源17aと、投影レンズ17bとを有して構成されている。投影レンズ17bは、アライメント光源17aから出力された光束を屈折する。この光束は、ハーフミラー12cにより反射され、ダイクロイックフィルタ12bを透過した後、対物レンズ12aによって平行光束に変換される。このようにしてアライメント系17からの光束は、観察系12の光路を通じて平行光束として角膜Ecに投影される。角膜Ecにより反射された光束は、ダイクロイックフィルタ12bを透過し、前眼部像E’と、虚像(図示せず)と、輝点像Brとを撮像素子12g上に形成する。表示画面10aには、
図2に示すように、前眼部像E’とともに、アライメントマークALと輝点像Brとが表示される。アライメント系17により角膜Ecに投影された像(輝点像Br)に基づいて、検者が手動で、又は制御部9が自動で、ヘッド部4を上下方向及び左右方向に移動させることにより上下方向及び左右方向のアライメントを行う。
【0026】
なお、本実施例では、前後方向のアライメントは、アライメント系16によって行っているが、他の異なる実施例として、例えば、アライメント光源17aによる輝点像Brのピントが合うようにヘッド部4の位置を調整することにより行うこともできる。
【0027】
検者が手動でアライメントを行う場合、検者は、例えば、表示画面10aに表示されている画像情報を参照しつつ操作レバー6を操作してヘッド部4の位置調整を行う。このとき、制御部9は、たとえば、上記比率からアライメントのずれ量を算出し、このずれ量を表示画面10aに表示させることができる。
【0028】
制御部9が自動でアライメントを行う場合、制御部9は、例えば上記比率からアライメントのずれ量を算出し、このずれ量がキャンセルされるように電動の駆動部を制御してヘッド部4を移動させる。この駆動部は、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をヘッド部4に伝達する部材とを有して構成することができる。
【0029】
(固視標投影系13、自覚式測定系15の構成)
固視標投影系13は、被検眼Eに固視標を提示する機能を有している。固視標投影系13は、白色光を発生するLED光源13aと、色補正フィルタ13bと、コリメータレンズ13b’と、チャート板13cと、ハーフミラー13d、リレーレンズ13eと、反射ミラー13fと、合焦レンズ(移動レンズ)13gと、リレーレンズ13hと、フィールドレンズ13iと、収差補正部材としてのバリアブルクロスシリンダーレンズ(以下「VCCレンズ」という)13jと、反射ミラー13kと、ダイクロイックフィルタ13m,12bと、対物レンズ12aとを有して構成されている。
【0030】
自覚式測定系15は、被検眼Eに自覚式の視標を提示し、自覚検査を行う機能を有している。自覚式測定系15は、固視標投影系13と共通の光学素子を有するとともに、被検眼Eにグレア光を照射するグレア光源13nを有して構成されている。
【0031】
VCCレンズ13jは、
図2、
図3に示すように、正及び負の一対のシリンダーレンズ13ja,13jbから構成されている。シリンダーレンズ13ja,13jbは、固視標投影系13の光路の光軸を中心として、それぞれ独立して回転可能となっている。VCCレンズ13jは、被検眼Eの屈折特性に起因する収差のうち、円柱度数(乱視度数)及び軸角度(乱視軸角度)を補正(矯正)する機能を有している。
【0032】
シリンダーレンズ13ja,13jbは、互いに逆方向に回転することで、乱視度数を変更し、同じ方向に一体的に回転することで、乱視軸角度を変更する。VCCレンズ13jは、制御部9の制御下でVCCレンズ駆動部19によって駆動される。
【0033】
チャート板13cには、固視標と、視標チャートとが形成されている。固視標は、被検眼Eを固視させるための視標である。実施例1では、固視標として、風景チャートを用いている。視標チャートは、被検眼Eの視力値や矯正度数(遠用度数、近用度数等)を自覚的に検査するための視標である。実施例1では、複数の視標チャートがチャート板13cに形成されている。実施例1では、チャート板13cは、円盤型に形成され、制御部9の制御下でチャート板駆動部20によって回転駆動されることで、光路内に各チャート(指標)を切替えて表示する。
【0034】
(他覚式測定系14の構成)
他覚式測定系14は、被検眼の眼底Efに測定パターンを投影する機能と、眼底被検眼Eの眼底Efに投影された測定パターンの像を検出する機能を有している。他覚式測定系14は、投光系としてのリング状光束投影系14Aと、受光系としてのリング状光束受光系14Bとを有して構成されている。リング状光束投影系14Aは、リング状の測定パターン(測定のための光束の一例)を被検眼Eの眼底Efに投影(投光)する。リング状光束受光系14Bは、被検眼Eの眼底Efにおいて反射されたリング状の測定パターンの像(反射光の一例)を検出(受光)する。
【0035】
リング状光束投影系14Aは、レフ測定ユニット部14aと、リレーレンズ14bと、瞳リング14cと、フィールドレンズ14dと、穴開きプリズム14eと、ロータリープリズム14fと、ダイクロイックフィルタ13mと、ダイクロイックフィルタ12bと、対物レンズ12aとを有して構成されている。
【0036】
レフ測定ユニット部14aは、レフ測定用のLED光源14hと、コリメータレンズ14iと、円錐プリズム14jと、リング状の測定パターンの形成板14kとを有して構成されている。
【0037】
リング状光束受光系14Bは、対物レンズ12aと、ダイクロイックフィルタ12b,13mと、ロータリープリズム14fと、穴開きプリズム14eと、フィールドレンズ14mと、反射ミラー14nと、リレーレンズ14pと、合焦レンズ(移動レンズ)14qと、反射ミラー14rと、ダイクロイックフィルタ12eと、結像レンズ12fと、撮像素子(CCD)12gとを有して構成されている。
【0038】
合焦レンズ駆動部18は、電動モータ等を有してなり、固視標投影系13の合焦レンズ13gと、レフ測定ユニット部14aと、合焦レンズ14qとを光軸に沿って連動して移動させる。
【0039】
VCCレンズ駆動部19は、電動モータ等を有してなり、固視標投影系13の光路の光軸を中心として、VCCレンズ13jの一対のシリンダーレンズ13ja,13jbを相対的に回転させる。
【0040】
チャート板駆動部20は、電動モータ等を有してなり、光軸を中心としてチャート板13cを回転駆動し、他覚測定、自覚検査など、測定内容に応じて風景チャートや指標チャートを入れ替える。チャート(指標)はチャート板13cに限定されることはなく、LCDやELなどのような電子表示器であっても構わない。この場合は表示内容を電子的に切り替えることでチャートが切り替わるので、チャート板13cを回転して切り替える機構は不要となる。
【0041】
図2、
図3に示すように、LED光源13a、グレア光源13n、LED光源14h、アライメント光源16a,17a、ケラトリング光源12h’、表示部10、合焦レンズ駆動部18、VCCレンズ駆動部19、及びチャート板駆動部20等は、制御部9に電気的に接続され、制御部9によって制御される。
【0042】
ここで、被検眼Eの屈折特性に起因する収差、具体的には乱視による他覚式測定系14を用いたレフ測定の測定精度への影響について、
図4を参照しながら説明する。
図4の紙面上図は、乱視が弱い場合(以下、「弱乱視眼」ということがある)、紙面下図は乱視が強い場合(以下、「強度乱視眼」ということがある)の経線ごとの乱視度数の変化の一例を示すグラフである。
【0043】
図4の上図には、弱乱視眼として、0°(水平)方向では−2D(ディオプタ)、90°方向では−3Dであり、乱視度数としては1Dを例示した。
図4の下図には、強度乱視眼として、0°方向では0D、90°方向では−5Dであり、乱視度数としては5Dを例示した。
【0044】
眼屈折力の測定にあたり、まず合焦レンズ13gを0D位置に配置し、固視標の風景チャートを固視させ、他覚式測定系14を用いて眼屈折力のラフ測定(前測定)行う。ラフ測定とは、被検眼Eの概略の眼屈折力を把握し、合焦レンズ13gの移動量を決定するために、予備的に測定することをいう。得られた球面度数S、円柱度数C(乱視度数)、軸角度Ax(乱視軸角度)に基づいて、合焦レンズ13gを等価球面度((S+C/2)D)の位置へ移動する。
【0045】
弱乱視眼の被検者の場合は、球面度数S=−2、円柱度数C=−1を(S+C/2)Dに代入し、(−2)+(−1)/2=−2.5Dの位置へ合焦レンズ13gを移動させる。この位置(雲霧前合焦レンズ位置)では、被検者は風景チャート像のなかで最大0.5D分、ボケた像を見ることになり、
図4上図に示すように、45°、135°方向のみがピントが合っている。
【0046】
次に、本測定に際して、雲霧状態とするため、合焦レンズ13gを+1.5D分移動させて、−1D位置に配置する(雲霧後合焦レンズ位置)。この雲霧後の状態では、弱乱視眼の被験者はすべての経線方向においてボケた像を視認することとなる。そのため、被検眼Eを調節休止状態で眼屈折力の本測定が行える。
【0047】
これに対して、強度乱視眼の被検者の場合は、球面度数S=0、円柱度数C=−5を(S+C/2)Dに代入し、(0)+(−5)/2=−2.5Dの位置へ合焦レンズ13gを移動する。この位置(雲霧前合焦レンズ位置)では、
図4下図に示すように、雲霧前は45°、135°方向のみピントが合っている。
【0048】
そして、雲霧のために合焦レンズ13gを+1.5D分移動して、−1.0D位置に移動させる(雲霧後合焦レンズ位置)。強度乱視眼の場合、雲霧後の状態でも、
図4下図に波線丸印で示すように、26°、153°近傍ではピントが合っている。そのため、風景チャートにおいて、26°、153°の方向に、線状のパターンがあると、この部分に調節をしてしまい、調節が取りきれない(調節休止の状態とならない)ことがある。また、乱視が過度に強いと、固視標自体を視認することも困難な場合がある。このような状態では、充分な調節の誘導が行えず、眼屈折力の測定精度に影響してしまう。
【0049】
合焦レンズ13gを、3Dを超える位置に移動させれば、全方向でピントが合わない状態とすることも可能である。しかし、光路が長くなって駆動制御に手間や時間がかかることや眼科装置1の大型化を招くことがある。また、実施例1の眼科装置1のようにレフ測定系の投影系と、固視系の移動レンズとが連動して移動する場合、固視系の移動レンズを大きく移動すると、レフ測定系の投影・受光系も大きく移動し、撮像素子で受光した信号において、移動側(マイナス側)の経線方向の信号がボケてしまい、S/N比が劣化し、眼屈折力の測定精度に影響してしまうことがある。
【0050】
そこで、本願の実施例1の眼科装置1では、本測定の前のラフ測定によって予め測定した屈折特性(眼屈折力)に基づいて、固視標投影系13に於いてその屈折特性に起因する収差(乱視)を補正(矯正)し、固視標を提示している。乱視を矯正した状態で固指標を提示して眼屈折力を測定することで、強度乱視眼であっても、雲霧時に合焦レンズ13gを過度に移動させることなく、被検眼Eを雲霧(調節休止)の状態とすることができ、眼屈折力の正確な測定が可能となる。
【0051】
(眼科装置1の動作)
以上のような構成の実施例1に係る眼科装置1の眼科測定の動作の一例を、
図5、
図6のフローチャートを用いて具体的に説明する。実施例1の眼科装置1では、
図5に示すように、固視標の配置(ステップS1)、アライメント(ステップS2)、被検眼Eの角膜形状(曲率半径)を測定するケラト測定(ステップS3)、被検眼Eの眼屈折力(球面度数、乱視度数、乱視軸角度等)を測定するレフ測定(ステップS4)、自覚検査(ステップS5)、及び測定結果表示(ステップS6)が順次行われる。
【0052】
実施例1では、まず被検者の一方の被検眼Eに対してステップS1〜ステップS4の他覚測定を実行した後、ステップS5の自覚検査を続けて実行し、その後、他方の被検眼Eに対して、他覚測定と自覚検査を実行する。しかし、本願がこれに限定されることはなく、片眼ずつ他覚測定を実行した後に、片眼ずつ自覚検査を行うような手順とすることもでき、公知のいずれの手順で実行してもよい。
【0053】
また、実施例1の眼科装置1を用いて、少なくともレフ測定を行えばよく、ケラト測定や自覚検査は、必要に応じて実行することができる。また、処理の順番が実施例1の順番に限定されることはなく、例えば、ケラト測定をレフ測定の後に行うこともできる。また、各処理における検査の手順等も実施例1に限定されることもない。また、測定結果表示も、実施例1のように検査終了後にまとめて行うだけでなく、検査ごとに表示する構成とすることもできる。
【0054】
眼科装置1の電源スイッチを投入すると、制御部9は、例えば、表示部10の表示画面10aに、他覚測定モード又は自覚検査モードを選択する選択画面を表示する。被検者が顎受け部7aに顎を置き、額当て7bに額を当てた状態で、選択画面において検者が他覚検査モードを選択する。
【0055】
他覚測定モードが選択されると、ステップS1の固視標の呈示が実行される。制御部9は、チャート板駆動部20を駆動して、チャート板13cを回転させて、固視標投影系13の光路上に、固視標としての風景チャートを配置する。このとき、合焦レンズ13gは0D(初期位置)に配置する。この状態で被検者に風景チャートを固視させることにより、当該被検者の視線を固定する。
【0056】
次に、ステップS2のアライメントでは、制御部9は、アライメント光源16a,17aを点灯させる。このアライメント光源16a,17aの点灯によって角膜Ecに投影される像等に基づいて、上述したようにベース部2に対して、手動又は自動でヘッド部4の上下方向(Y軸方向)、左右方向(X軸方向)、及び前後方向(Z軸方向)のアライメントが行われる。
【0057】
アライメントが完了すると、ステップS3のケラト測定が実行される。制御部9はアライメントステップが完了するまではケラト測定に進まずにアライメントステップを繰り返し、アライメントステップが完了したら、表示部10にケラト測定ステップを開始するように制御することができる。
【0058】
ステップS3のケラト測定では、制御部9は、ケラトリング光源12h’を点灯させて、ケラト板12hによってリング状光束を被検眼Eの角膜Ecに投影する。角膜Ecで反射されたリング状光束は、観察系12により撮像素子12g上にケラトリング像を結像する。撮像素子12gは、取得した画像に基づく画像信号を制御部9に出力する。
【0059】
制御部9は、入力された画像信号に基づいて、公知の手法を用いて角膜Ecの形状を測定する。このとき、ケラトリング像の画像を表示部10に表示させるように制御することもできる。
【0060】
次に、ステップS4のレフ測定について、
図5のフローチャートを用いて説明する。レフ測定では、まずは眼屈折力のラフ測定(前測定)が行われる。合焦レンズ13gが0D位置に配置されている状態で、制御部9は、LED光源14hを点灯させる(ステップS41)。なお、合焦レンズ13gが0D位置にない場合は、合焦レンズ駆動部18を制御して、合焦レンズ13gを0D位置に移動させる。
【0061】
合焦レンズ13gが0D位置に配置された状態で、被検者に引き続き風景チャートを固視させる。被検眼Eが強度の屈折異常眼である場合には、ピントが合わず風景チャートを明瞭に視認できないことがあるが、ラフ測定の場合は、このような状態でも構わない。
【0062】
LED光源14hの点灯によって、レフ測定ユニット部14aからリング状の測定パターンが出射される。リング状の測定パターンは、
図2に示すリレーレンズ14b、瞳リング14c、フィールドレンズ14dを経由して、穴開きプリズム14eの反射面14e’により反射され、ダイクロイックフィルタ13mに導かれる。測定パターンは、ダイクロイックフィルタ13mにより反射された後、ダイクロイックフィルタ12bを経由して、対物レンズ12aに導かれ、眼底Efに投影される。
【0063】
眼底Efに形成されたリング状の測定パターンの像は、対物レンズ12aにより集光され、ダイクロイックフィルタ12b,13m、ロータリープリズム14f、穴開きプリズム14eの穴部14e’’、フィールドレンズ14m、反射ミラー14n、リレーレンズ14p、合焦レンズ14q、反射ミラー14r、ダイクロイックフィルタ12e、結像レンズ12fを経由して撮像素子12gに結像される。撮像素子12gは、リング状の測定パターンの像を検出し、取得した画像に基づく画像信号を制御部9に出力する。
【0064】
制御部9は、撮像素子12gで検出された反射光の変位に基づいて、すなわちリング状の測定パターンの像を解析することで、被検眼Eの眼屈折力としての球面度数S、円柱度数C(乱視度数)、軸角度Ax(乱視軸角度)を測定(計算)する(ステップS42)。眼屈折力(球面度数S、円柱度数C、軸角度Ax)の測定の詳細については、公知であるのでその詳細な説明は省略する。以降の本測定でも同様である。
【0065】
次に、制御部9は、測定した円柱度数C(乱視度数)が、閾値3Dよりも大きいか否かを判定する(ステップS43)。3Dよりも大きい場合は(ステップS43の判定がYES)、被検眼Eの乱視が比較的強く、固視標の視認がうまく行われずに測定結果に影響することがある。そのため、ステップS44に進んで乱視矯正を行う。なお、乱視の矯正は、強度乱視眼に限らず全ての乱視眼で実施する(即ち、強弱によらず乱視があったらステップS44に進む)ことも可能である。しかしながら、VCCレンズ13jの回転などに時間を要するため、本実施例のように影響の大きな強度乱視眼に限定して乱視矯正することがより好ましく、測定時間を短縮して効率的な測定が可能となる。また、本実施例では、閾値を3Dとしているが、これに限定されることはなく、3D以外の任意の値に設定することも可能である。
【0066】
一方、3D以下の場合は(ステップS43の判定がNO)、被検眼Eに乱視がないか、乱視が比較的弱く、乱視矯正を行なわずに通常の測定が可能である。そのため、ステップS44の乱視矯正をスキップして、ステップS45に進む。
【0067】
ステップS44では、乱視矯正のため、制御部9は、ラフ測定での眼屈折力の測定結果に応じて、VCCレンズ駆動部19を駆動してVCCレンズ13jを制御することで、乱視度数又は乱視軸角度を変更する。これにより、被検眼Eの乱視が矯正されて、本測定の際には、被検者は、より明瞭に風景チャートを視認することが可能となる。
【0068】
本測定では、まず、制御部9は、ラフ測定での眼屈折力の測定結果に基づいて、等価球面度(S+C/2)Dの位置にレフ測定ユニット部14aと合焦レンズ14qを移動させる。この移動に連動して、合焦レンズ13gも等価球面度(S+C/2)Dの位置に移動する(ステップS45)。この合焦レンズ13gの位置では、乱視のない被検者又は弱い乱視の被検者は風景チャートを鮮明に視認することができる。強度の乱視の場合でも、VCCレンズ13jにより乱視が矯正されているので(円柱度数C=0となり、合焦レンズ13gの位置は(S+C/2)D=SDとなる)、風景チャートの鮮明な視認が可能となる。
【0069】
なお、合焦レンズ13gを、レフ測定ユニット部14a及び合焦レンズ14qと独立して移動可能な構成とすることもできる。この場合も、乱視矯正を行っているため、合焦レンズ13gを、より最適な位置(SD)に配置することができる。一方、合焦レンズ13gとは別個に、レフ測定ユニット部14aと合焦レンズ14qを、測定パターンの投影と測定パターンの像の結像とを高精度に行うことが可能な等価球面度(S+C/2)Dの位置に移動させることができる。
【0070】
次に制御部9は、合焦レンズ駆動部18を制御して、ピントが合わない位置(実施例1では+1.5Dの位置)に合焦レンズ13gを移動させ、被検眼Eを雲霧状態とする(ステップS46)。
【0071】
制御部9は、この雲霧状態において、移動レンズ14q及び光源ユニット14aの移動量と撮像素子12gで検出されたリング状の測定パターンの像を解析することで、被検眼Eの眼屈折力としての球面度数S、円柱度数C(乱視度数)、軸角度Ax(乱視軸角度)の本測定(計算)を行う(ステップS47)。
【0072】
以上により、レフ測定(本測定)が完了する。制御部9は、この時点でレフ測定の結果を表示部10に表示させるように制御することもできる。なお、実施例1における雲霧の際の合焦レンズ13gの移動位置(+1.5D)、矯正対象の乱視度数の閾値(3D)、合焦レンズ13gの移動位置(0D、(S+C/2)D)は、例示にすぎなく、使用形態等に応じて他の値とすることもできる。
【0073】
以上のようにレフ測定(眼屈折力の測定)が完了し、表示部10の操作画面等で検者が自覚検査モードを選択した場合には、ステップS5の自覚検査が実行される。
【0074】
自覚検査モードが選択されると、制御部9は、LED光源13aを点灯する。LED光源13aの点灯により、色補正フィルタ13bを介してチャート板13cが照明される。また、制御部9は、合焦レンズ駆動部18を制御して、ステップS4でのレフ測定結果に応じた位置に合焦レンズ13gを配置する。また、同様に、VCCレンズ駆動部19を制御して、眼屈折力の測定結果に応じて、被検眼Eの乱視を矯正するようにVCCレンズ13jを制御する。
【0075】
検者又は制御部9によって視標(チャート)が選択されると、制御部9は、チャート板駆動部20を制御して、チャート板13cを回転し、選択された指標を自覚式測定系15の光路に配置する。この視標を経由した光束は、ハーフミラー13d、リレーレンズ13e、反射ミラー13f、合焦レンズ13g、リレーレンズ13h、フィールドレンズ13i、VCCレンズ13j、反射ミラー13k、ダイクロイックフィルタ13m,12b、対物レンズ12aを経由して眼底Efに投影される。
【0076】
被検者は、提示された視標に対する応答を行う。視標の選択とそれに対する応答が、検者又は制御部9の判断により繰り返し行われる。検者又は制御部9は、被検者からの応答に基づいて処方値を決定する。また、グレア検査を行う場合は、制御部9はグレア光源13nを点灯させる。これにより、グレア検査が自覚的に行われる。自覚検査の詳細については、公知であるのでその詳細な説明は省略する。
【0077】
すべての検査が終了したら、制御部9は、測定結果を表示部10に表示させる(ステップS6)。また、測定結果を、プリントアウトするように構成することもできるし、測定結果をHDDやフラッシュメモリ等の記憶部に記憶するように構成することもできる。
【0078】
以上、実施例1の眼科装置1では、屈折特性としての眼屈折力の測定(レフ測定)の際に、予め眼屈折力を概略的に測定(ラフ測定)している。この測定結果から、被検眼Eに強い乱視があったときは、固視標投影系13に設けられたVCCレンズ13jを用いて乱視をある程度矯正(屈折特性に起因する収差を補正)した後に、眼屈折力を測定(本測定)している。従って、被検眼Eによる風景チャートの視認をより明瞭に行うとともに、雲霧によって調節を誘導し被検眼Eを調節休止させた状態での測定が可能となり、被検眼Eの屈折特性に影響されることなく、眼屈折力の測定を正確に行うことができる。
【0079】
また、固視標投影系13に備えられたVCCレンズ13jを、乱視の矯正(収差の補正)のための収差補正部材に兼用していることで、部品点数やコスト等を増大させることなく眼科装置1を提供することができる。特に、実施例1のように、雲霧を生じさせる合焦レンズ13gと、レフ測定ユニット部14aとを連動して移動させるタイプの眼科装置1では、乱視を補正することで、雲霧のために合焦レンズ13gを過大に移動させる必要がない。そのため、レフ測定ユニット部14a及び合焦レンズ14qの移動量も適切となり、撮像素子12gでのリング状の測定パターンの像のS/Nの劣化による検出精度への影響を抑制して、眼屈折力を高精度に測定することが可能となる。また、眼科装置1の簡易化や小型化も可能となる。
【0080】
また、実施例1の眼科装置1は、自覚式測定系15を用いた自覚検査機能を有している。この場合も、正確に測定された眼屈折力に基づいて、VCCレンズ13jにより乱視を矯正することで、高精度に自覚検査を実施することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれる。