(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力要素と、中間要素と、出力要素と、前記入力要素と前記中間要素との間に配置される第1弾性体と、前記中間要素と前記出力要素との間に配置されて前記第1弾性体と直列に作用する第2弾性体と、前記第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と並列に作用することができる第3弾性体とを含むダンパ装置において、
前記中間要素に設けられており、少なくとも前記入力要素と前記出力要素との間でトルクが伝達されていないときに前記第3弾性体の両端部を支持する弾性体支持部と、
前記入力要素および前記出力要素の一方に設けられており、少なくとも前記入力要素と前記出力要素との間でトルクが伝達されていないときに前記第3弾性体の端部に当接せず、前記入力要素と前記出力要素との間でトルクが伝達されているときに前記入力要素および前記出力要素の前記一方と前記中間要素との相対捩れ角が増加するのに伴って前記第3弾性体の一方の端部に当接する弾性体当接部と、
を備え、
前記第3弾性体は、前記第1、第2および第3弾性体を前記ダンパ装置の周方向に沿ってみたときに前記第1および第2弾性体と重ならないように配置されるダンパ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示のダンパ装置10を含む発進装置1を示す概略構成図であり、
図2は、発進装置1の要部を示す断面図である。これらの図面に示す発進装置1は、駆動装置としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載されるものであり、ダンパ装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結されて当該エンジンからのトルクが伝達される入力部材としてのフロントカバー(図示省略)や、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ装置10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8等を含む。
【0011】
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
【0012】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定される図示しないポンプシェルと、ポンプシェルの内面に配設された複数のポンプブレード(図示省略)とを有する。タービンランナ5は、
図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6(
図1参照)が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレードを有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ60により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ60を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0013】
ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチとして構成されており、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7とを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除する。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定されたセンターピースにより軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、クラッチドラム81と、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の側壁部の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、クラッチドラム81の内周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート(セパレータプレート)84とを含む。
【0014】
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側に位置するように、すなわちロックアップピストン80よりもダンパ装置10およびタービンランナ5側に位置するようにフロントカバー3の図示しないセンターピースに取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリングとを含む(何れも図示省略)。図示するように、ロックアップピストン80とフランジ部材とは、図示しない係合油室を画成し、当該係合油室には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。係合油室への係合油圧を高めることで、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。なお、ロックアップクラッチ8は、油圧式単板クラッチとして構成されてもよい。
【0015】
ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、回転要素として、ドライブ部材(入力要素)11と、中間部材(中間要素)14と、ドリブン部材(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素(トルク伝達弾性体)として、ドライブ部材11と中間部材14との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第1スプリング(第1弾性体)SP1と、それぞれ対応する第1スプリングSP1と直列に作用して中間部材14とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第2スプリング(第2弾性体)SP2と、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクを伝達する複数(本実施形態では、例えば3個)の第3スプリングSP3とを含む。
【0016】
本実施形態では、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに第3スプリングSP3として、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されている。これにより、アークコイルスプリングを用いた場合に比べて、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに第3スプリングSP3を軸心に沿ってより適正に伸縮させることができる。この結果、ドライブ部材11(入力要素)とドリブン部材15(出力要素)との相対変位が増加していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクと、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対変位が減少していく際に第2スプリングSP2等からドリブン部材15に伝達されるトルクとの差すなわちヒステリシスを低減化することが可能となる。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2並びに第3スプリングSP3の少なくとも何れかとして、アークコイルスプリングが採用されてもよい。また、本実施形態において、第1および第2スプリングSP1,SP2は、互いに異なるばね定数を有する。ただし、第1および第2スプリングSP1,SP2のばね定数は、同一であってもよい。
【0017】
図2に示すように、ダンパ装置10のドライブ部材11は、ダンパハブ7により回転自在に支持されると共にロックアップクラッチ8に近接するように配置される環状の第1入力プレート12と、当該第1入力プレート12よりも小さい内径を有すると共にタービンランナ5に近接するように配置される環状の第2入力プレート13とを含む。第1および第2入力プレート12,13は、複数のリベット90を介してダンパ装置10の軸方向に沿って互いに対向するように連結されると共にロックアップクラッチ8のクラッチドラム81に連結される。これにより、ドライブ部材11、すなわち第1および第2入力プレート12,13は、クラッチドラム81と一体に回転可能となり、ロックアップクラッチ8の係合によりフロントカバー3(エンジン)とダンパ装置10のドライブ部材11とが連結されることになる。
【0018】
図2および
図3に示すように、第1入力プレート12は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓12wiと、それぞれ円弧状に延びると共に各内側スプリング収容窓12wiの径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓(入力側収容窓)12woと、複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部12ciと、複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部(弾性体当接部)12coとを有する。内側スプリング当接部12ciは、周方向に沿って互いに隣り合う内側スプリング収容窓12wiの間に1個ずつ設けられる。外側スプリング当接部12coは、各外側スプリング収容窓12woの周方向における両側に1個ずつ設けられる。また、各外側スプリング収容窓12woは、第3スプリングSP3の自然長よりも長い周長を有し、対応する内側スプリング当接部12ciの径方向外側に設けられる。
【0019】
更に、第1入力プレート12は、各内側スプリング収容窓12wiの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部12aと、各内側スプリング収容窓12wiの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部12bと、各外側スプリング収容窓12woの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部12eと、各外側スプリング収容窓12woの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部12fとを有する。
【0020】
第2入力プレート13は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング収容窓13wiと、それぞれ円弧状に延びると共に各内側スプリング収容窓13wiの径方向外側に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)の外側スプリング収容窓(入力側収容窓)13woと、複数(本実施形態では、例えば3個)の内側スプリング当接部13ciと、複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部(弾性体当接部)13coとを有する。
図3に示すように、内側スプリング当接部13ciは、周方向に沿って互いに隣り合う内側スプリング収容窓13wiの間に1個ずつ設けられる。外側スプリング当接部13coは、各外側スプリング収容窓13woの周方向における両側に1個ずつ設けられる。また、各外側スプリング収容窓13woは、
図3に示すように、第3スプリングSP3の自然長よりも長い周長を有し、対応する内側スプリング当接部13ciの径方向外側に設けられる。
【0021】
更に、第2入力プレート13は、各内側スプリング収容窓13wiの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部13aと、各内側スプリング収容窓13wiの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部13bと、各外側スプリング収容窓13woの内周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部13eと、各外側スプリング収容窓13woの外周縁に沿って延びる複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング支持部13fとを有する。
【0022】
中間部材14は、板状の環状部材であり、発進装置1の外周に近接するように第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置される。
図2および
図3に示すように、中間部材14は、周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば3個)のスプリング収容窓(中間側収容窓)14wと、内周部から周方向に間隔をおいて径方向内側に突出する複数(本実施形態では、例えば120°間隔で3個)の内側スプリング当接部14ciと、複数(本実施形態では、例えば6個)の外側スプリング当接部(弾性体支持部)14coとを有する。各スプリング収容窓14wは、第3スプリングSP3の自然長に応じた周長を有する。また、外側スプリング当接部14coは、各スプリング収容窓14wの周方向における両側に1個ずつ設けられる。
【0023】
ドリブン部材15は、板状の環状部材であり、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定されると共に、中間部材14により包囲されるように第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置される。
図2および
図3に示すように、ドリブン部材15は、外周部から周方向に間隔をおいて径方向内側に延出された複数(本実施形態では、例えば120°間隔で3個)のスプリング当接部15cを有する。
【0024】
第1および第2スプリングSP1,SP2は、ダンパ装置10の周方向に沿って交互に並ぶように、第1および第2入力プレート12,13により保持される。すなわち、第1および第2入力プレート12,13の互いに対向する内側スプリング収容窓12wiおよび13wiの各々には、第1および第2スプリングSP1,SP2が対をなすように(直列に作用するように)1個ずつ配置される。また、第1入力プレート12の複数のスプリング支持部12aは、
図2からわかるように、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップクラッチ8側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング支持部12bは、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップクラッチ8側の側部を外周側から支持(ガイド)する。更に、第2入力プレート13の複数のスプリング支持部13aは、
図2からわかるように、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する。複数のスプリング支持部13bは、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ5側の側部を外周側から支持(ガイド)する。
【0025】
また、ダンパ装置10の取付状態(ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていない状態)において、ドライブ部材11(第1および第2入力プレート12,13)の互いに対向する内側スプリング当接部12ciおよび13ciは、それぞれ互いに異なる内側スプリング収容窓12wi,13wiに配置されて対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。更に、ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各内側スプリング当接部14ciは、共通の内側スプリング収容窓12wi,13wiに配置されて互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、各第1スプリングSP1の一端部は、ドライブ部材11の対応する内側スプリング当接部12ci,13ciと当接し、各第1スプリングSP1の他端部は、中間部材14の対応する内側スプリング当接部14ciと当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2の一端部は、中間部材14の対応する内側スプリング当接部14ciと当接し、各第2スプリングSP2の他端部は、ドライブ部材11の対応する内側スプリング当接部12ci,13ciと当接する。
【0026】
更に、ドリブン部材15の各スプリング当接部15cは、ダンパ装置10の取付状態において、ドライブ部材11の内側スプリング当接部12ci,13ciと同様に、対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1の上記一端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部15cとも当接し、各第2スプリングSP2の上記他端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部15cとも当接する。この結果、ドリブン部材15は、複数の第1スプリングSP1と、中間部材14と、複数の第2スプリングSP2とを介してドライブ部材11に連結され、互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、中間部材14の内側スプリング当接部14ciを介して直列に連結される。なお、本実施形態において、それぞれ複数の第1および第2スプリングSP1,SP2は、
図3に示すように、同一円周上に配列され、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第1スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1等の軸心と各第2スプリングSP2の軸心との距離とが等しくなっている。
【0027】
また、中間部材14の各スプリング収容窓14wには、第3スプリングSP3が配置される。ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各外側スプリング当接部14coは、第3スプリングSP3の対応する端部と当接する。従って、各第3スプリングSP3の両端部は、ダンパ装置10の取付状態において、対応する外側スプリング当接部14coにより支持される。また、本実施形態において、第1および第2スプリングSP1,SP2よりもダンパ装置10の径方向における外側に当該径方向からみて、第1および第2スプリングSP1,SP2と重なるように配置される。これにより、ダンパ装置10ひいては発進装置1の軸長をより短縮化することが可能となる。
【0028】
更に、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3のロックアップクラッチ8側の側部は、第1入力プレート12の対応する外側スプリング収容窓12woの周方向における中央部付近に位置し、第1入力プレート12のスプリング支持部12e,12fにより支持(ガイド)される。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3のタービンランナ5側の側部は、第2入力プレート13の対応する外側スプリング収容窓13woの周方向における中央部付近に位置すると共に、第2入力プレート13のスプリング支持部13e,13fにより支持(ガイド)される。
【0029】
これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第3スプリングSP3と、その両側に位置するドライブ部材11(第1および第2入力プレート12,13)の外側スプリング当接部12co,13coとの間には、
図3に示すように、予め定められた周方向の間隔が形成され、両者が当接することはない。従って、各第3スプリングSP3の両側に位置する外側スプリング当接部12coおよび13coの一方は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されているときに当該ドライブ部材11および中間部材14の相対捩れ角が増加するのに伴って第3スプリングSP3の一方の端部に当接することになる。本実施形態において、ダンパ装置10の取付状態における第3スプリングSP3の端部とドライブ部材11の外側スプリング当接部12co,13coとの周方向の間隔は、エンジンからドライブ部材11に伝達される入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の値)よりも小さい予め定められたトルク(第1の値)T1に達した段階で、ドライブ部材11等の主回転方向(車両前進時(エンジン)の回転方向、
図3における太線矢印参照)における後側に位置する外側スプリング当接部12co,13coが対応する第3スプリングSP3の一方(回転方向後側)の端部に当接するように定められる。
【0030】
また、ダンパ装置10は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制する回転規制ストッパとして、中間部材14とドリブン部材15との相対回転を規制する第1ストッパ(出力側ストッパ)21と、ドライブ部材11と中間部材14との相対回転を規制する第2ストッパ(入力側ストッパ)22とを含む。本実施形態において、第1ストッパ21は、中間部材14の内周部に周方向に間隔をおいて形成された複数のストッパ当接部14sと、ドリブン部材15に形成された複数のストッパ当接部15sとにより構成される。ドリブン部材15のストッパ当接部15sは、各スプリング当接部15cの外周部から周方向における両側に延出される。ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各ストッパ当接部14sと、それに対応するドリブン部材15のストッパ当接部15sとの間には、予め定められた周方向の間隔が形成される。そして、中間部材14とドリブン部材15とが相対回転するのに伴ってストッパ当接部14sとストッパ当接部15sとが当接すると、中間部材14とドリブン部材15との相対回転および各第2スプリングSP2の撓みが規制されることになる。
【0031】
第2ストッパ22は、ドライブ部材11の第1および第2入力プレート12,13を連結する複数のリベット90と、各リベット90に装着されたローラ95と、互いに隣り合うスプリング収容窓14wの周方向における間で円弧状に延在するように中間部材14に形成された複数(本実施形態では、例えば3個)の開口部14oとにより構成される(
図3参照)。これにより、第2ストッパ22は、
図3に示すように、中間部材14の内周部に形成されたストッパ当接部14sとドリブン部材15のストッパ当接部15sとを含む第1ストッパ21よりもダンパ装置10の径方向における外側に配置される。ダンパ装置10の取付状態において、中間部材14の各開口部14oには、複数のリベット90およびローラ95が当該開口部14oを画成する両側の内壁面と当接しないように配置される。そして、ドライブ部材11と中間部材14とが相対回転するのに伴ってローラ95が開口部14oの一方の内壁面と当接すると、ドライブ部材11と中間部材14との相対回転および各第1スプリングSP1の撓みが規制されることになる。
【0032】
本実施形態において、第1ストッパ21は、エンジンからドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達した段階で中間部材14とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成される。また、第2ストッパ22は、ドライブ部材11への入力トルクが最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2に達した段階でドライブ部材11と中間部材14との相対回転を規制するように構成される。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。なお、第2ストッパ22は、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制するものであってもよい。
【0033】
続いて、
図1および
図4等を参照しながら、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
【0034】
発進装置1では、ロックアップクラッチ8によるロックアップが解除されている際、
図1からわかるように、エンジンからフロントカバー3に伝達されたトルク(動力)が、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ドリブン部材15およびダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。これに対して、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されると、エンジンからフロントカバー3およびロックアップクラッチ8を介してドライブ部材11に伝達されたトルクは、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1に達するまで、複数の第1スプリングSP1、中間部材14および複数の第2スプリングSP2を介してドリブン部材15およびダンパハブ7に伝達される。この間、直列に作用する第1および第2スプリングSP1,SP2により、エンジンからのトルクの変動が減衰(吸収)される。
【0035】
また、ドライブ部材11への入力トルクが上記トルクT1になると、上述のように、第1ストッパ21により、中間部材14とドリブン部材15との相対回転および各第2スプリングSP2の撓みが規制される。また、入力トルクが上記トルクT1以上になると、ドライブ部材11の上記主回転方向における後側の外側スプリング当接部12co,13coが対応する第3スプリングSP3の一方の端部に当接する。これにより、各第3スプリングSP3は、
図4に示すように、中間部材14の上記主回転方向における前側の外側スプリング当接部14coとドライブ部材11の上記主回転方向における後側の外側スプリング当接部12co,13coとの間で伸縮しながら、対応する第1スプリングSP1と並列に作用してドライブ部材11と中間部材14との間でトルクを伝達する。
【0036】
この結果、第1ストッパ21により中間部材14とドリブン部材15との相対回転および各第2スプリングSP2の撓みが規制された状態では、エンジンからのトルクが、
図4に示すように、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、並列に作用する第1スプリングSP1および第3スプリングSP3、中間部材14、撓みが規制された第2スプリングSP2、第1ストッパ21、ドリブン部材15およびダンパハブ7という経路を介して変速装置の入力軸ISへと伝達される。そして、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT1からトルクT2までの範囲に含まれる間、フロントカバー3に入力されるトルクの変動は、並列に作用する第1スプリングSP1および第3スプリングSP3により減衰(吸収)されることになる。
【0037】
上述のように、発進装置1のダンパ装置10では、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されているときにドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角が増加するのに伴って当該ドライブ部材11の外側スプリング当接部12co,13coが第3スプリングSP3の端部に当接すると、当該第3スプリングSP3が第1スプリングSP1と並列に作用するようになる。これにより、第1スプリングSP1と第3スプリングSP3とにより、ドライブ部材11に伝達された大きなトルク変動を吸収することができる。
【0038】
また、ダンパ装置10では、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないときに第3スプリングSP3の両端部を支持する外側スプリング当接部(弾性体支持部)14coが中間部材14に設けられる。これにより、ダンパ装置10の取付状態やドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないときの外側スプリング当接部12co,13coと第3スプリングSP3の一方の端部との間隔は、ドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角に応じて定まることになる。
【0039】
従って、ダンパ装置10では、第3スプリングSP3の両端部を支持する弾性体支持部がドライブ部材11およびドリブン部材15の一方に設けられる場合(例えば、上記特許文献1参照)に比べて、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないときの外側スプリング当接部12co,13coと第3スプリングSP3の端部との間隔を短くすることが可能となる。この結果、第3スプリングSP3を第1スプリングSP1と並列に作用させるために、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対捩れ角を小さくする必要がなくなるので、ドリブン部材15に対するドライブ部材11の最大捩れ角θmaxを大きくしてダンパ装置10を低剛性化することができる。
【0040】
更に、ダンパ装置10では、ドライブ部材11と中間部材14との相対回転を規制する第2ストッパ22が中間部材14とドリブン部材15との相対回転を規制する第1ストッパ21よりもダンパ装置10の径方向における外側に配置される。このように、第1および第2ストッパ21,22をダンパ装置10の径方向にずらして配置することで、ドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角および中間部材14とドリブン部材15との相対捩れ角の双方をより大きくとることができる。これにより、ドリブン部材15に対するドライブ部材11の最大捩れ角をθmaxより大きくして、ダンパ装置10をより低剛性化することが可能となる。
【0041】
更に、第1ストッパ21は、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT1以上になると中間部材14とドリブン部材15との相対回転を規制し、第2ストッパ22は、入力トルクが当該トルクT1よりも大きいトルクT2になるとドライブ部材11と中間部材14との相対回転を規制する。また、第3スプリングSP3は、第1および第2スプリングSP1,SP2よりもダンパ装置10の径方向における外側に配置され、ドライブ部材11の外側スプリング当接部(弾性体当接部)12co,13coは、入力トルクがトルクT1以上になると第3スプリングSP3の一方の端部に当接する。これにより、ドライブ部材11とドリブン部材15との間でトルクが伝達されていないときの外側スプリング当接部12co,13coと第3スプリングSP3の端部との間隔を充分に確保することができるので、ドライブ部材11と中間部材14との相対捩れ角をより大きくし、ドリブン部材15に対するドライブ部材11の最大捩れ角θmaxをより大きくすることが可能となる。
【0042】
また、ダンパ装置10において、ドライブ部材11は、ダンパ装置10の軸方向に沿って互いに対向すると共に互いに連結される第1および第2入力プレート12,13を含み、ドリブン部材15は、第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置される。更に、中間部材14は、第3スプリングSP3を収容するスプリング収容窓14wを有すると共に、ドリブン部材15を包囲するように第1および第2入力プレート12,13の軸方向における間に配置される。また、第1および第2入力プレート12,13は、第3スプリングSP3の側部を収容する外側スプリング収容窓12wo,13woをそれぞれ有する。そして、外側スプリング当接部14coは、スプリング収容窓14wのダンパ装置10の周方向における両側に設けられ、外側スプリング当接部12co,13coは、外側スプリング収容窓12wo,13woの当該周方向における両側に設けられる。これにより、ダンパ装置10の軸長の短縮化を図りつつ、中間部材14に外側スプリング当接部14coを設けると共に、ドライブ部材11に外側スプリング当接部12co,13coを設けることが可能となる。
【0043】
更に、上記ダンパ装置10において、中間部材14は、隣り合うスプリング収容窓14wの周方向における間に形成された複数の開口部14oを有し、第2ストッパ22は、中間部材14の複数の開口部14oと、それぞれ開口部14oに挿通されると共に第1および第2入力プレート12,13を連結する複数のリベット90(およびローラ95)とにより構成される。これにより、中間部材14の外径ひいてはダンパ装置10の径方向の寸法の増加を抑制しつつ、第2ストッパ22を構成することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本開示のダンパ装置は、入力要素(11)と、中間要素(14)と、出力要素(15)と、前記入力要素(11)と前記中間要素(14)との間に配置される第1弾性体(SP1)と、前記中間要素(14)と前記出力要素(15)との間に配置されて前記第1弾性体(SP1)と直列に作用する第2弾性体(SP2)と、前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)の少なくとも何れか一方と並列に作用することができる第3弾性体(SP3)とを含むダンパ装置(10)において、前記中間要素(14)に設けられており、少なくとも前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクが伝達されていないときに前記第3弾性体(SP3)の両端部を支持する弾性体支持部(14co)と、前記入力要素(11)および前記出力要素(15)の一方に設けられており、少なくとも前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクが伝達されていないときに前記第3弾性体(SP3)の端部に当接せず、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクが伝達されているときに前記入力要素(11)および前記出力要素(15)の前記一方と前記中間要素(14)との相対捩れ角が増加するのに伴って前記第3弾性体(SP3)の一方の端部に当接する弾性体当接部(12co,13co)とを備えるものである。
【0045】
このダンパ装置の中間要素は、少なくとも入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときに第3弾性体の両端部を支持する弾性体支持部を有する。また、入力要素および出力要素の一方は、少なくとも入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときに第3弾性体の端部に当接しない弾性体当接部を有する。そして、当該弾性体当接部は、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されているときに入力要素および出力要素の一方と中間要素との相対捩れ角が増加するのに伴って第3弾性体の一方の端部に当接する。これにより、入力要素および出力要素の一方の弾性体当接部が第3弾性体の端部に当接すると、当該第3弾性体が第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と並列に作用するようになるので、第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と第3弾性体とにより、入力要素に伝達された大きなトルク変動を吸収することができる。また、上記弾性体支持部を中間要素に設けることで、少なくとも入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときの上記弾性体当接部と第3弾性体の一方の端部との間隔は、入力要素および出力要素の一方と中間要素との相対捩れ角に応じて定まることになる。これにより、このダンパ装置では、上記弾性体支持部が入力要素および出力要素の一方に設けられる場合に比べて、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときの弾性体当接部と第3弾性体の一方の端部との間隔を短くすることが可能となる。従って、第3弾性体を第1および第2弾性体の少なくとも何れか一方と並列に作用させるために、入力要素と出力要素との相対捩れ角を小さくする必要がなくなるので、出力要素に対する入力要素の最大捩れ角を大きくしてダンパ装置を低剛性化することができる。この結果、より大きなトルク変動を吸収可能としつつ、出力要素に対する入力要素の最大捩れ角を大きくしてダンパ装置を低剛性化することが可能となる。
【0046】
また、前記ダンパ装置(10)は、前記入力要素(11)と前記中間要素(14)との相対回転を規制する入力側ストッパ(22)と、前記中間要素(14)と前記出力要素(15)との相対回転を規制する出力側ストッパ(21)とを更に備えてもよく、前記入力側ストッパ(22)および前記出力側ストッパ(21)の一方は、他方よりも前記ダンパ装置(10)の径方向における外側に配置されてもよい。このように、入力側ストッパおよび出力側ストッパをダンパ装置の径方向にずらして配置することで、入力要素と中間要素との相対捩れ角および中間要素と出力要素との相対捩れ角の双方をより大きくとることができるので、出力要素に対する入力要素の最大捩れ角をより大きくして、ダンパ装置をより低剛性化することが可能となる。
【0047】
更に、前記出力側ストッパ(21)は、前記入力要素(11)への入力トルクが第1の値(T1)になると前記中間要素(14)と前記出力要素(15)との相対回転を規制してもよく、前記入力側ストッパ(22)は、前記出力側ストッパ(21)よりも前記ダンパ装置(10)の径方向における外側に配置されると共に、前記入力トルクが前記第1の値(T1)よりも大きい第2の値(T2)になると前記入力要素(11)と前記中間要素(14)との相対回転を規制してもよく、前記第3弾性体(SP3)は、前記第1および第2弾性体(SP1,SP2)よりも前記ダンパ装置(10)の径方向における外側に配置されてもよく、前記弾性体当接部(12co,13co)は、前記入力要素(11)に設けられ、前記入力トルクが前記第1の値(T1)以上になると前記第3弾性体(SP3)の前記一方の端部に当接してもよい。これにより、入力要素と出力要素との間でトルクが伝達されていないときの弾性体当接部と第3弾性体の一方の端部との間隔を充分に確保することができるので、入力要素と中間要素との相対捩れ角をより大きくし、出力要素に対する入力要素の最大捩れ角をより大きくすることができる。加えて、ダンパ装置に2段階の振動減衰特性をもたせることが可能となる。
【0048】
また、前記入力要素(11)は、前記ダンパ装置(10)の軸方向に沿って互いに対向すると共に互いに連結される2枚の入力プレート(12,13)を含んでもよく、前記出力要素(15)は、前記2枚の入力プレート(12,13)の前記軸方向における間に配置されてもよく、前記中間要素(14)は、前記第3弾性体(SP3)を収容する中間側収容窓(14w)を有すると共に、前記出力要素(15)を包囲するように前記2枚の入力プレート(12,13)の前記軸方向における間に配置されてもよく、前記2枚の入力プレート(12,13)は、前記第3弾性体(SP3)の側部を収容する入力側収容窓(12wo,13wo)をそれぞれ有してもよく、前記弾性体支持部(14co)は、前記中間側収容窓(14w)の前記ダンパ装置(10)の周方向における両側に設けられてもよく、前記弾性体当接部(12co,13co)は、前記入力側収容窓(12wo,13wo)の前記周方向における両側に設けられてもよい。これにより、ダンパ装置の軸長の短縮化を図りつつ、中間要素に弾性体支持部を設けると共に、入力要素に弾性体当接部を設けることが可能となる。
【0049】
更に、前記中間要素(14)は、周方向に間隔をおいて形成された複数の前記中間側収容窓(14w)と、隣り合う前記中間側収容窓(14w)の前記周方向における間に形成された複数の開口部(14o)とを有してもよく、前記入力側ストッパ(22)は、前記中間要素(14)の前記複数の開口部(14o)と、それぞれ前記開口部(14o)に挿通されると共に前記2枚の入力プレート(12,13)を連結する複数の連結部材(90)とにより構成されてもよい。これにより、中間要素の外径ひいてはダンパ装置の径方向の寸法の増加を抑制しつつ、入力側ストッパを構成することが可能となる。
【0050】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。