(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605281
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】車両用バッテリーの搭載フレーム体
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20191031BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M2/10 S
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-194066(P2015-194066)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65519(P2017-65519A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】川村 貴人
(72)【発明者】
【氏名】初見 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川口 聡
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−120642(JP,A)
【文献】
特開2011−255705(JP,A)
【文献】
特開2000−306564(JP,A)
【文献】
特開2012−151076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に配置した少なくとも2本の中空断面形状からなる第1フレームと、当該少なくとも2本の第1フレームの間に横方向に配置した複数の中空断面形状からなる第2フレームとを連結したフレーム枠と、
前記フレーム枠の底部に配設した底蓋とを備え、
前記第1及び第2フレームのうち、一方のフレームの側部に一対の上部フランジと下部フランジとからなる嵌合凹部を形成し、他方のフレームの中空断面端部を前記下部フランジ上に載置及び前記嵌合凹部内側に突き合せ連結してあり、前記嵌合凹部の内側下部を横方向に凹ませた配置収容部を有し、
前記配置収容部にシール部材を配設してあることを特徴とする車両用バッテリーの搭載フレーム体。
【請求項2】
前記フレーム枠は内周部にフレームから一体的に延在させた載置フランジを有し、
前記底蓋の外周縁部を前記載置フランジの上側に載置してあり、
前記載置フランジと底蓋の外周縁部との間にシール部材を配設してあることを特徴とする請求項1記載の車両用バッテリーの搭載フレーム体。
【請求項3】
前記載置フランジはシール部材の収容段差部を有することを特徴とする請求項2記載の車両用バッテリーの搭載フレーム体。
【請求項4】
前記底蓋は前記載置フランジよりも内部側にバッテリーを固定するための固定フランジを一体的に有することを特徴とする請求項2又は3記載の車両用バッテリーの搭載フレーム体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に駆動用バッテリーを搭載するためのフレーム体に関する。
特にバッテリーの保護効果が高く、被水に対する止水構造に係る。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等は、モーターを駆動源とし、このモーターに電力を供給するためのバッテリーが車両に搭載されている。
走行可能距離の長距離化に伴うバッテリー搭載量の増大、外部からの充電アクセス性、バッテリーの交換性等の要求から、バッテリーを例えば車両のフロア下側等の車室外に配置することも検討されている。
このような場合に、バッテリーは高電圧系統であり、外部からの雨水等の浸入を防ぎ、車両フロア付近が水に浸かる等のトラブルに対しても防水性を確保する必要がある。
【0003】
特許文献1には、底壁とこの底壁の周囲から起立する周壁とからなるトレーにバッテリーを搭載する技術を開示する。
しかし、同公報に開示するバッテリーの搭載構造は、トレーの外側を複数の外フレーム及び内フレーム等で支持するものであり、構造が複雑で部品点数が多く、大きな搭載スペースが必要でスペース的にもムダが多い。
特許文献2には、トレイの両端部を凹部に挿入固定し、バッテリー搭載部を閉断面部に形成したバッテリー搭載構造を開示するが、固定部から水が浸入する恐れが高い。
また、バッテリーを固定する場合に従来は、
図7に示すように底部115の中空部115aにボルト120の作用孔115eと挿通孔115cを設けていたが、作業孔やボルト挿通孔から水が浸入する恐れがあり、その部分のシール作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5652377号公報
【特許文献2】特開平7−323736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両への搭載バッテリーの外力に対する保護効果が高く、防水性に優れる車両用バッテリーの搭載フレーム体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用バッテリーの搭載フレーム体は、縦方向に配置した少なくとも2本の第1フレームと、当該少なくとも2本の第1フレームの間に横方向に配置した複数の第2フレームとを連結したフレーム枠と、前記フレーム枠の底部に配設した底蓋とを備え、前記第1及び第2フレームのうち、一方のフレームの側部にフランジを形成し、他方のフレームの端部を前記フランジ上に載置及び突き合せ連結してあり、前記突き合せ部に少なくとも下部に沿ってシール部材を介在配設してあることを特徴とする。
【0007】
ここで、搭載フレーム体の車両に対する取付方向や取付位置に制限がなく、本明細書では便宜上、フレーム部材の位置関係として一方を縦方向、それに交差する方向を横方向と表現する。
このように、他方のフレームの端部を一方のフランジに載置及び突き当てたので、他方のフレームの端部と一方のフレームの側部とでシール部材が圧縮され、外部からの水の浸入を防止する。
この場合に、突き合せ部であってシール部材が配設されていない部位、例えば突き合せ上部はフレーム同士が直接当接するので、シール部材の過圧縮破損を防止する。
そこで、下部側の突き合せ部はシール部材の配置収容部を有するようにすることで、シール部材の圧縮量を調整することもできる。
【0008】
本発明において、フレーム枠は内周部にフレームから一体的に延在させた載置フランジを有し、前記底蓋の外周縁部を前記載置フランジの上側に載置してあり、前記載置フランジと底蓋の外周縁部との間にシール部材を配設してあってもよい。
これにより、底蓋とフレーム枠との間が防水される。
この場合も載置フランジはシール部材の収容段差部を有するようにして、シール部材の圧縮量を調整することができる。
また、バッテリーを底蓋部の上面に固定する場合に、底蓋は前記載置フランジよりも内部側にバッテリーを固定するための固定フランジを有するようにすると、バッテリーの固定部のシールは不要になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るフレーム体は、複数のフレームを枠状に連結するとともに底蓋を底部に設けたので、その内側にバッテリーを固定することで外部からの変形力をフレーム体全体で吸収するので保護効果が高く、縦フレームと横フレームの連結部は、下部に沿って配置したシール部材が過圧縮されないように突き合せ部の上部等のシール部材が配設されていない突き合せ部は、フレーム同士が直接当接するようにしたので、シール部材の過圧縮による破損を防止でき、シール性が高い。
この場合にシール部材を有する部分以外は、直接的にフレーム同士が連結されているので、外力からの保護効果が安定して高い。
また、バッテリーを上面に固定する底蓋をフレーム枠の内周部の載置フランジに載置連結する際に、底蓋外周縁部と載置フランジの間にシール部材を配設したので、底蓋外周縁部の防水性も高い。
底蓋にバッテリーを固定するためのボルト挿通孔を形成する場合には、フレーム枠側の載置フランジよりも内部側に固定フランジを設けて、この固定フランジにてバッテリーをボルト固定できるようにすると、ボルト挿通孔の周囲をシールする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るフレーム体の外観斜視図を示す。
【
図2】第1フレームと第2フレームの連結構造例を示し、(a)は連結前、(b)は連結後を示す。
【
図3】フレームと底蓋の連結構造例を示し、(a)は連結前、(b)は連結後を示す。
【
図4】底蓋にボルト固定するための固定フランジを設けた例を示し、(a)は連結前、(b)は連結後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るフレーム体の構造例を以下図面に基づいて説明する。
図1は、縦方向に一対、対向配置した第1フレーム11,12との両端部付近の間に、横フレームとして一対の第2フレーム13,14を連結した例になっている。
例えば、第1フレーム11,12に取付フランジ11b,12bを設け、取付孔11c,12cを介して、車両のフロア下面の骨格部材に取り付ける例を示したが、横フレームに取付フランジを設けてもよく、また縦横両方のフレームに設けてもよい。
フレーム体は枠構造になっているので全体で外力を吸収するが、本実施例では
図1においてF方向からの側部外力が大きい場合を想定し、第1フレーム11,12の内側の側部に上下一対の上部フランジ11d,12dと、下部フランジ11e,12eを中空部11aを有する中空断面形状のフレームの上下から一体的に形成した例になっている。
2本の第1フレーム11,12は、内側に対向させた以外は同じであるので、
図2に示したA−A線断面図にて説明する。
第1フレーム11は、上壁と下壁との間を一対の側壁11f,11gで連結した中空部11aを有する中空断面形状からなり、上壁から内側に一体的に延在させた上部フランジ11dと下壁から内側に一体的に延在させた下部フランジ11eで、その間に嵌合凹部11iを形成してある。
一方、第2フレーム14は、上壁14aと下壁14bとの両側を側壁14c,14dでつなぎ、中空部14eを形成した中空断面形状になっており、この第2フレーム14の端部を下部フランジ11eの上に載置するように嵌合凹部11iに差し込み、突き合せ連結する。
嵌合凹部11iの底部の下部側をさらに横方向に凹ませて、シール部材の配置収容部11hを設けて、この配置収容部11hに圧縮弾性を有するシール部材S
1を配設してある。
このシール部材S
1は、少なくとも下部フランジ11eの根元部の全幅に沿って配置してある。
これにより、
図2(b)に示すように連結状態で、突き合せ部の下部は第2フレーム14の下端部14gがシール部材S
1を横方向から押圧圧縮し、シールされる。
この際に、シール部材S
1を有していない、例えば第2フレーム14の上端部14f等は、第1フレーム11の嵌合凹部の底部に直接当接するように突き当たるので、それ以上シール部材S
1が圧縮されない。
これにより、シール部材が過圧縮により破壊されるのを防止し、配置収容部11hの深さや幅により圧縮量を調整することができる。
また、フレーム同士は、シール部材の部分を除いて直接フレーム同士が当接しているので、剛性が高い。
なお、この配置収容部11は、第1フレーム11の側壁を凹ませることなく、第2フレーム14の下端部14g側を切り欠いて形成してもよい。
本実施例は、第1及び第2フレームともに中空断面形状の例を示したが、一方又は両方が異形状のソリッド断面でもよい。
また、フレームに形成するフランジも本実施の上部フランジ11d,12dと、下部フランジ11e,12eの凹部構造に限定されるものではなく、例えば
図5に第1フレーム11Aの断面を示すように下側にのみ下部フランジ11eを形成し、第2フレームの端部をこの下部フランジ11eの上に載置し、且つ第2フレームの端部を第1フレーム11Aの側部に突き合せてもよい。
フレーム枠構造も例えば
図6に示すように、複数の縦フレーム(11A,11B,11C),(12A,12B,12C)を横フレーム13A,14Aで連結する等、フレームの本数や枠形状に制限はない。
この場合に、補助フレーム16を設けたり、底蓋を複数の底蓋15A,15Bに分割してもよい。
【0012】
次に底蓋15とフレーム枠との連結構造例について説明する。
第1及び第2フレームにて形成されたフレーム枠の内周部の全周にわたって、例えば
図3に示すように載置フランジを形成してあり、この載置フランジの上面部に底蓋15の外周縁部を載置し、
図1に示すようにフレーム体を形成してある。
その構造例を
図3に示したB−B線断面図で説明する。
第2フレーム13は、上壁13aと下壁13bとを一対の側壁13c,13dでつなぎ、中空部13eを形成した中空断面形状になっており、下壁13bから内側に一体的に延在させた載置フランジ13fを有する。
載置フランジ13fは、さらに立上げ部13gを介して一段上の載置部13hを形成し、この段差部をシール部材の収容段差部としてシール部材S
2を配置してある。
これにより、
図3(b)に示すように底蓋15の外周縁部15bが上からシール部材S
2を圧縮しシールされるとともに、この外周縁部15bの下面が段差状の載置部13hの上面に当接することになり、シール部材S
2が過圧縮されるのを防止する。
なお、底蓋15は、必要に応じて中空部15aを有する中空断面形状となっている。
【0013】
底蓋15に搭載バッテリー1の固定部を設ける場合の構造例を
図4に示す。
底蓋15の外周縁部15bとは、内側の上部に別の固定フランジ15cを形成し、この固定フランジ15cにボルト20の挿入孔15dを形成し、この挿入孔15dを介してバッテリー1をボルト固定する。
これにより、
図4(b)に示すように、底蓋15は外周縁部15bと載置フランジ13fとの間がシール部材S
2でシールされるので、ボルト20と挿入孔15dとの間のシール処理が不要となる。
【符号の説明】
【0014】
1 バッテリー
11 第1フレーム
11a 中空部
11d 上部フランジ
11e 下部フランジ
12 第1フレーム
13 第2フレーム
13f 載置フランジ
14 第2フレーム
15 底蓋
S
1 シール部材