特許第6605282号(P6605282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605282
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】窯芯検知装置および窯芯検知方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 41/00 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   C10B41/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-195652(P2015-195652)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-216700(P2016-216700A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-99666(P2015-99666)
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊司
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−051585(JP,A)
【文献】 実開平03−018152(JP,U)
【文献】 特開平09−176654(JP,A)
【文献】 特開平03−043491(JP,A)
【文献】 特開平05−094516(JP,A)
【文献】 特開平04−215010(JP,A)
【文献】 特開2008−024869(JP,A)
【文献】 特開昭52−063903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 41/00
G01B 11/00−11/30
G05D 3/00− 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉が備える移動機の移動時に所望の窯番号の窯の窯芯を検知する窯芯検知装置であって、
前記コークス炉の各窯の外部に設置され、窯番号に応じて開口が形成されたターゲット部材と、
前記移動機に設置され、前記ターゲット部材に光を照射する光源と、
前記移動機に設置され、前記光源の光を反射する反射部材と、
前記移動機に設置され、前記ターゲット部材を撮像する撮像装置と、を備え、
前記光源および前記撮像装置は、当該光源の光軸と水平面とのなす角、および、当該撮像装置の光軸と水平面とのなす角が互いに異なるように配置され、
前記光源と前記撮像装置が前記ターゲット部材の前方に配置され
前記反射部材が前記ターゲット部材の後方に配置されている、窯芯検知装置。
【請求項2】
前記光源および前記撮像装置の周囲を覆うフードを有し、
前記フードは、
遮光性材料で形成され、
前記光源から前記ターゲット部材までの空間を覆うように設けられ、
前記移動機の移動時において前記ターゲット部材が通過可能なターゲット部材通過口が形成されている、請求項1に記載の窯芯検知装置。
【請求項3】
前記ターゲット部材に向けて気体を噴出する、前記ターゲット部材通過口に設けられた噴出ノズルを備えた気体噴出機構と、
前記フード内に気体を供給する気体供給機構が設けられている、請求項2に記載の窯芯検知装置。
【請求項4】
コークス炉が備える移動機の移動時に所望の窯番号の窯の窯芯を検知する窯芯検知方法であって、
窯番号に応じて開口が形成されたターゲット部材の前面に光を照射し、
前記移動機に設置された、光源の光を反射する反射部材によって、前記ターゲット部材を通り抜けた光を反射させ、
前記光源の光軸と水平面とのなす角、および、撮像装置の光軸と水平面とのなす角が互いに異なるように配置された撮像装置を用いて前記ターゲット部材の前面を撮像し、
撮像された画像の明暗部に基づいて所望の窯番号の窯芯を検知する、窯芯検知方法。
【請求項5】
前記光源、前記撮像装置、および、前記光源から前記ターゲット部材までの空間を遮光性材料から成るフードで覆い、
前記フードに、前記移動機の移動時において前記ターゲット部材が通過可能なターゲット部材通過口を形成して、窯芯検知を実施する、請求項4に記載の窯芯検知方法。
【請求項6】
前記ターゲット部材通過口において、前記ターゲット部材に向けて気体を噴出させると共に、前記フード内に気体を供給し、前記フードの内部圧力を前記フードの外部圧力よりも大きくして窯芯検知を実施する、請求項5に記載の窯芯検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉が備える複数の窯(炭化室)の窯芯を検知する窯芯検知装置および窯芯検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉では、装入車、コークス押出機、コークガイド車、消火車等の多数の移動機が使用されている。近年、これらの移動機による作業は自動化、無人化が進んでおり、これに伴い、移動機を窯芯の位置に精度良く停止させるための技術開発が進んでいる。
【0003】
移動機を窯芯に合わせて停止させるためには、移動機の移動中において窯芯の位置を正確に検知することが必要となる。そのような窯芯を検知するための装置として特許文献1〜4に記載された装置がある。
【0004】
特許文献1〜4の窯芯検知装置は、各窯の外部にそれぞれターゲット板が取り付けられている。各ターゲット板には、各窯の窯番号等の窯情報に応じてそれぞれ形状が異なるスリットが形成されている。また、移動機には、光源と撮像装置が取り付けられており、光源は、移動機の移動中にターゲット板と窯との間を通過するような位置に設けられている。
【0005】
このような窯芯検知装置では、移動機が移動する際にターゲット板の背面(窯側の面)に光が照射され、撮像装置によってターゲット板の前面(移動機側の面)が撮像される。このとき撮像される画像は、ターゲット板のスリットを通過する光とターゲット板の前面に遮られる光によって明部と暗部(以下、「明暗部」という)が現れた画像となっている。窯芯検知装置は、この画像の明暗パターンに基づいて所望の窯番号の窯であるか否かを検知する。また、撮像装置の視野中心とターゲット板の幅中心とのずれ量も検知し、窯芯の位置を特定する。このようにして得られた情報により、所望の窯番号の窯芯に移動機を停止させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−94516号公報
【特許文献2】特開平6−248271号公報
【特許文献3】特開平6−322372号公報
【特許文献4】特開平7−55420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コークス炉の周囲は高温状態であることに加え、粉塵や噴煙、水蒸気が漂う環境となっている。このため、ターゲット板と窯との間を通過する光源は、そのような過酷な環境に曝されることになり、光源の故障や製品本来の寿命を縮めてしまうといった問題が生じていた。特に、近年は蛍光灯タイプの光源に代えて、より長寿命、低消費電力のLED光源の採用が進んでいるが、LED光源は熱に弱いことから、上記の問題が生じやすくなってしまう。
【0008】
一方で、コークス炉の周囲を冷却する冷却機構や、噴煙等を排気する排気機構を設けることも考えられるが、設備の導入コストや維持コストがかかると共にコークス炉の構造が複雑になってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コークス炉の窯芯検知装置において、光源の故障発生や低寿命化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、コークス炉が備える移動機の移動時に所望の窯番号の窯の窯芯を検知する窯芯検知装置であって、前記コークス炉の各窯の外部に設置され、窯番号に応じて開口が形成されたターゲット部材と、前記移動機に設置され、前記ターゲット部材に光を照射する光源と、前記移動機に設置され、前記光源の光を反射する反射部材と、前記移動機に設置され、前記ターゲット部材を撮像する撮像装置と、を備え、前記光源および前記撮像装置は、当該光源の光軸と水平面とのなす角、および、当該撮像装置の光軸と水平面とのなす角が互いに異なるように配置され、前記光源と前記撮像装置が前記ターゲット部材の前方に配置され、前記反射部材が前記ターゲット部材の後方に配置されていることを特徴としている。
【0012】
別の観点による本発明は、コークス炉が備える移動機の移動時に所望の窯番号の窯の窯芯を検知する窯芯検知方法であって、窯番号に応じて開口が形成されたターゲット部材の前面に光を照射し、前記移動機に設置された、光源の光を反射する反射部材によって、前記ターゲット部材を通り抜けた光を反射させ、前記光源の光軸と水平面とのなす角、および、撮像装置の光軸と水平面とのなす角が互いに異なるように配置された撮像装置を用いて前記ターゲット部材の前面を撮像し、撮像された画像の明暗部に基づいて所望の窯番号の窯芯を検知することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の窯芯検知装置に比べて光源の位置を窯から遠ざけることができる。これにより、光源の故障発生や低寿命化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一般的なコークス炉の概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る窯芯検知装置の概略構成を示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る窯芯検知装置の概略構成を示す平面図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る窯芯検知装置の概略構成を示す側面図である。
図5】本発明の別の実施形態に係る窯芯検知装置の概略構成を示す側面図である。
図6図5に示す構成の窯芯検知装置におけるターゲット板前面の明暗部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、コークス炉30は、窯31の上部から石炭を装入する装入車32や、窯内の赤熱コークスを押し出すコークス押出機33、赤熱コークスを消火塔まで搬送する消火車34、窯内から押し出された赤熱コークスを消火車34に案内するコークガイド車35といった複数の移動機を備えている。各移動機は、走行方向Tに沿って移動可能に構成されている。
【0017】
本実施形態に係る窯芯検知装置1は、上記の各移動機に設けることが可能である。以下の説明においては、コークガイド車35に窯芯検知装置1を設けた場合を例に挙げて説明する。
【0018】
図2図3に示すように、窯芯検知装置1は、各窯31の外部に設けられたターゲット板2と、ターゲット板2に光を照射するラインレーザー3と、ターゲット板2を撮像する撮像装置4を備えている。本実施形態においては、ラインレーザー3と撮像装置4が、コークガイド車35に取り付けられており、ラインレーザー3と撮像装置4は、ターゲット板2の前方に配置されている。
【0019】
ターゲット板2には、従来のように複数のスリット(不図示)が形成されており、各スリットの形状や間隔は、窯番号等の窯情報に応じてそれぞれ異なっている。ターゲット板2は、レーザー光が当たる前面2a(移動機側の面)が鉛直面に対して平行となるような状態で下面が支持されている。
【0020】
図2に示すように、ラインレーザー3は、レーザー光がターゲット板2の前面(移動機側の面)に対して垂直に入射するように、光軸が水平に固定されている。また、図3に描かれたレーザー照射範囲(一点鎖線内領域)が示すように、ラインレーザー3の照射幅は、ターゲット板2の設置位置においてターゲット板2の幅よりも大きくなっている。ラインレーザー3の照射幅がこのような状態となるように、ラインレーザー3の製品仕様に応じてラインレーザー3からターゲット板2までの距離が適宜定められる。なお、ラインレーザー3は、低価格、高寿命の観点から赤色光(波長:620〜700nm)を発する仕様のものを用いることが好ましい。
【0021】
図2に示すように、撮像装置4は、ラインレーザー3の上方に設けられている。図2に描かれた撮像範囲(二点鎖線内領域)が示すように、撮像装置4は、ターゲット板2の全体を撮像できるように配置されている。即ち、本実施形態における撮像装置4は、レンズの光軸と水平面とのなす角が所定の角度(例えば10°程度)となるように下向きに固定されている。
【0022】
また、図3に描かれた撮像範囲(二点鎖線内領域)が示すように、撮像装置4の撮像幅は、ターゲット板2の設置位置においてターゲット板2の幅よりも大きくなっている。撮像装置4の撮像幅がこのような状態となるように、撮像装置4の製品仕様に応じて撮像装置4からターゲット板2までの距離が適宜定められる。なお、本実施形態においては、撮像装置4としてCMOSエリアセンサカメラが用いられている。
【0023】
図2図3に示すように、ラインレーザー3および撮像装置4の周囲には、耐水性を有する金属製のフード5が設けられている。フード5は、ラインレーザー3や撮像装置4の設置位置からターゲット板2が通過する位置までの空間の周囲(上方、下方、側方)も覆っている。また、図2に示すように、フード5の先端部においては、ターゲット板2がフード5の中を通過できるように、フード5の上面のみが窯側に張り出したような形状となっている。即ち、ターゲット板2の設置位置においては、フード5の側方および下方が開口した状態となっている(以下の説明においては、この開口部を「ターゲット部材通過口5a」という)。また、図3に示すように、フード5は、撮像範囲全体を覆うようにしてコークガイド車35から窯31に向けて、幅が広がっていく形状となっている。
【0024】
なお、本実施形態におけるフード5は遮光性材料で形成されている。これにより、太陽光等の外部からの光を遮断し、撮像される画像の明暗部をより鮮明にすることができる。これにより、検知性能が更に向上する。
【0025】
図3に示すように、フード5のターゲット部材通過口5aには、窯側に向けて圧縮空気等の気体を噴出させる気体噴出ノズル6が設けられている。また、図2に示すように、撮像装置4とラインレーザー3の間には、フード内に向けて圧縮空気等の気体を供給する気体供給ノズル7が設けられている。
【0026】
また、図2に示すように、ターゲット板2の後方には、レーザー光の透過を防ぐ材料で形成されたレーザーガード8が設けられている。レーザーガード8は、ターゲット板2の後方を作業員が通るようなコークス炉30の構造の場合に、作業員をレーザー光から保護することができる。なお、レーザーガード8は、レーザー光の反射を抑える吸光材で形成されていることが好ましい。これにより、ターゲット板2の前面2aと、レーザーガード8の受光面8aとの反射率に差が生じ、撮像される画像の明暗部をより鮮明にすることができる。
【0027】
本実施形態における窯芯検知装置1は以上のように構成されている。当該装置を用いた窯芯検知方法は、以下の手順で行われる。
【0028】
まず、コークガイド車35が走行方向Tに沿って走行する。続いて、コークガイド車35が窯31に近づくと、気体噴出ノズル6から噴出される圧縮空気等により、ターゲット板2に付着した水滴や粉塵等が除去される。なお、ターゲット板2は、その後フード内を通過することになるため、ターゲット板2には水滴や粉塵等が再付着しにくい。
【0029】
続いて、ターゲット板2の前方からレーザー光が照射される。このとき、ターゲット板2のスリット部分をレーザー光が通過する一方で、ターゲット板2のスリット以外の部分ではレーザー光が反射する。これにより、ターゲット板前面における輝度に差が生じ、明暗部が現れる。
【0030】
そして、このときのターゲット板2を撮像装置4で撮像し、撮像された画像の明暗パターンに応じて所望の窯番号のターゲット板2であるか否かを判定する。また、ターゲット板2の幅中心と、撮像装置4の視野中心とのずれ量に基づいて窯芯も検知する。本実施形態における窯芯検知装置1は、このようにして所望の窯番号の窯芯を検知する。
【0031】
前述の通り、本実施形態の窯芯検知装置1は、光源としてのラインレーザー3がターゲット板2の前方に配置されている。即ち、光源が従来のようなターゲット板2の後方に配置されていない。これにより、従来の窯芯検知装置に対して光源の位置を窯31から遠ざけることができる。その結果、光源が窯付近の劣悪環境(高温、粉塵等)に曝されることがなくなり、光源の故障発生や低寿命化を抑制することが可能になる。
【0032】
なお、コークス炉30の構造によっては、スリットを通過したレーザー光がターゲット板2の後方にある部材に反射して、ターゲット板2の背面側から再度スリットを通過することも懸念される。この場合、ラインレーザー3の光軸上でターゲット板2を撮像していると、撮像された画像の輝度の差が小さくなり、明暗部が不鮮明になることがある。
【0033】
しかし、本実施形態においては、ラインレーザー3の光軸と水平面とのなす角、および、撮像装置4の光軸と水平面とのなす角が互いに異なるように構成されているため、ターゲット板2の後方に抜けるレーザー光の反射は、ターゲット板2の前面2aからの反射とは異なる位置で撮像されることになる。これにより、ターゲット板2の前面2aからの反射とターゲット板2の後方に抜けるレーザー光の反射とを区別することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態によれば、ターゲット板2を覆うフード5が設けられ、ターゲット板2に向けて気体を噴出する気体噴出ノズル6が設けられていることにより、水滴や粉塵等に起因する光の進行阻害を防ぐことができる。即ち、撮像される画像の明暗部をより鮮明にすることができる。これにより、検知性能を更に向上させることができると共に、雨天時においても安定した検知性能を発揮することができる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、気体供給ノズル7によりフード内に圧縮空気等を供給することができ、フード5の内部圧力をフード5の外部圧力よりも大きくすることができる。このため、窯周辺に漂う噴煙、粉塵、水蒸気等のフード内への侵入を防ぐことができる。これにより、光の進行阻害を抑制することができ、撮像される画像の明暗部をより鮮明にすることができる。即ち、検知性能を更に向上させることができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0037】
例えば、上記実施形態では、窯31の外部に設けられるターゲット板2の下面を支持するように窯芯検知装置1を構成したが、図4に示すようにターゲット板2の上面を支持するように構成しても良い。即ち、ターゲット板2は、窯31の外部に設けられていれば良く、上記実施形態のように各窯31の外壁に取り付けられる構成に限定されない。また、ターゲット板2は板状の部材でなくても良い。ターゲット板2に形成される開口の形状もスリット形状に限定されない。
【0038】
また、フード5のターゲット部材通過口5aの形状は、ターゲット板2の形状や取り付け構造により適宜変更されるものである。即ち、移動機の移動時において、ターゲット部材が通過可能なターゲット部材通過口5aがフード5に形成されていれば良い。一方でフード5は設けなくても良い。この場合であっても、ターゲット板2の明暗画像に基づいて窯芯を検知することは可能である。
【0039】
また、気体供給ノズル7の本数や配置等は、上記実施形態で説明したものに限定されない。また、気体供給機構は、ノズルを備える機構に限定されない。また、ターゲット部材通過口5aに設けられる気体噴出ノズル6は、フード5の外壁ではなく内壁に設けても良い。また、気体供給ノズル7と同様に、気体噴出ノズル6の本数や配置等も上記実施形態で説明したものに限定されず、気体供給機構もノズルを備える機構に限定されない。
【0040】
また、上記実施形態では、撮像装置4をラインレーザー3の上方に設けたが、ラインレーザー3の下方に設ける構成であっても良い。ただし、撮像装置4を上向きに設置すると、撮像装置4のレンズに粉塵等の飛散物が堆積する場合があるため、撮像装置4はラインレーザー3の上方に設けることが好ましい。また、撮像装置4は、上記実施形態で説明したエリアセンサカメラに限定されず、例えばラインセンサカメラであっても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、ラインレーザー3を光軸が水平となるように設けたが、ラインレーザー3と撮像装置4の配置はこれに限定されない。例えば、撮像装置4の光軸を水平とし、ラインレーザー3の光軸が下向きとなるような構成であっても良い。また、ラインレーザー3と撮像装置4の双方に角度をつけるように配置しても良い。即ち、ラインレーザー3と撮像装置4は、ラインレーザー3の光軸と水平面とのなす角、および、撮像装置4の光軸と水平面とのなす角が互いに異なるように配置されていれば良い。
【0042】
ただし、ターゲット板2と移動機との距離は、窯31の変形や移動機のレール変形等により変動することがある。この場合、ラインレーザー3が角度の付いた状態で固定されていると、ターゲット板2のスリット部分がレーザー照射範囲から外れてしまうことが懸念される。このため、角度を付けてラインレーザー3を配置する場合には、ラインレーザー3とターゲット板2との距離の変動を考慮して設置位置や角度を設定することが好ましい。同様に、撮像装置4として用いるラインセンサカメラを角度の付いた状態で配置する場合には、ラインレーザー3の光軸の角度やターゲット板2との距離の変動を考慮し、ターゲット板前面におけるスリット部分の明暗部を撮像可能なように設置位置や角度を設定することが好ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、レーザーガード8を、レーザー光の反射を抑える吸光材で形成することとしたが、レーザーガード8の材料はこれに限定されない。例えば、SUS製のレーザーガード8の受光面8aに反射率の低い塗料(例えば黒色塗料)で塗装処理を施すことによりレーザー光の反射を抑えても良い。この場合であっても、レーザーガード8の受光面8aとターゲット板2の前面2aとの反射率の差によってターゲット板前面における輝度に差が生じ、撮像画像の明暗部を鮮明にすることができる。
【0044】
また、ターゲット板2をレーザーガード8よりも反射率の小さい材料で形成しても良い。また、例えばターゲット板2の前面2aに黒色塗装を施し、レーザーガード8の受光面8aに白色塗装を施すことにしても良い。このように、ターゲット板2の前面2aの反射率がレーザーガード8の受光面8aの反射率より小さい場合であっても撮像画像の明暗部を鮮明にすることが可能である。
【0045】
なお、上記実施形態では、光源としてラインレーザー3を用いたが、光源はレーザーに限定されず、LEDやその他の光源であっても良い。また、光源の設置位置は、光源の光度に応じてターゲット板2に近づけても良い。このため、光度の弱い光源であっても、ターゲット板2の明暗画像を撮像することは可能である。
【0046】
ここで、上記実施形態の変形例として、図5に示す構成の窯芯検知装置1について説明する。本変形例に係る窯芯検知装置1は、撮像装置4の光軸が水平となり、ラインレーザー3の光軸が下向きとなるような構成を有している。撮像装置4としてはラインセンサカメラを用いており、ラインセンサカメラ4は、視野Fがターゲット板2のスリット長手方向の中央部となるように設定されている。また、ターゲット板2の後方にはレーザーガード8が設けられている。
【0047】
このような構成の場合、ラインレーザー3から入射するレーザー光は、ターゲット板2で進行が阻害されることになるが、一部のレーザー光は、ターゲット板2のスリット部分およびターゲット板2の幅方向(T方向と同一方向)の外側を通り抜けて、ターゲット板2の後方に向かう。この光はレーザーガード8に当たり、一部の光はレーザーガード8で反射してターゲット板2の後方に向かう。この反射したレーザー光は、ターゲット板2のスリット部分およびターゲット板2の幅方向外側を再度通り抜け、ラインセンサカメラ4に向かう。
【0048】
このときのターゲット板2の前方から見た明暗部のイメージを図6に示す。本変形例の場合、ターゲット板2の前方では、ターゲット板2の上部で反射する光とレーザーガード8で反射する光が確認される。一方、ラインセンサカメラの視野Fは、スリット長手方向の中央部に設定されていることから、ターゲット板2の上部で反射したレーザー光は視野内に入りにくい。このため、ラインセンサカメラ4の撮像画像では、スリット周辺において明暗部が形成され、窯番号に応じて形成されたスリットのパターンを識別することが可能となる。
【0049】
そして、窯芯検知装置1は、ラインセンサカメラの視野中心Cと、ターゲット板2の幅中心C(即ち、窯中心)とのずれを検知し、そのずれがなくなる位置まで移動機を移動させるような制御を行う。これにより、所望の窯番号の窯芯に移動機を移動させることができる。
【0050】
なお、仮にターゲット板2の上部で反射した光がラインセンサカメラ4の視野に入ってきたとしても、その光とレーザーガード8で反射したレーザー光は反射位置が互いに異なることから、両者の反射輝度には撮像装置で識別可能な程度の輝度差が生じる。したがって、スリットの明暗部を識別することは可能である。また、明暗部を鮮明にするために、ターゲット板2の前面2aとレーザーガード8の受光面8aの反射率の差を大きくするようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、コークス炉の移動機に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 窯芯検知装置
2 ターゲット板
2a ターゲット板の前面
3 ラインレーザー
4 撮像装置
5 フード
5a ターゲット部材通過口
6 気体噴出ノズル
7 気体供給ノズル
8 レーザーガード
8a レーザーガードの受光面
30 コークス炉
31 窯
32 装入車
33 コークス押出機
34 消火車
35 コークガイド車
ラインセンサカメラの視野中心
ターゲット板の幅中心
F ラインセンサカメラの視野
T 走行方向
V 鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6