(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605283
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】水性皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20191031BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20191031BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20191031BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/86
A61K8/81
A61Q19/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-196613(P2015-196613)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-66116(P2017-66116A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166959
【氏名又は名称】御木本製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 倫英
【審査官】
星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−067585(JP,A)
【文献】
特開2004−359627(JP,A)
【文献】
特開2010−006715(JP,A)
【文献】
特開2005−336133(JP,A)
【文献】
特開2016−113439(JP,A)
【文献】
特開2006−256987(JP,A)
【文献】
特開2014−144921(JP,A)
【文献】
特開平08−165225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 9/00−9/72,47/00−47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−アスコルビン酸2−グルコシドと、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体と、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルを含有した水性皮膚外用剤。
【請求項2】
ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルの酸化アルキレン基の炭素数が2〜4で、平均付加モル数が、5〜20モルである請求項1に記載の水性皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分の経皮吸収がよい水性皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤において、皮膚老化防止効果や美白効果等の機能が発揮されるためには、有効成分を皮膚に十分に浸透させる必要がある。しかしながら、多くの水溶性有効成分は、いずれも肌に対し高い効果を有しているものの、皮膚吸収性が低いという問題を有する。
また、従来より、有効な美白剤として、L−アスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩が用いられている。これらL−アスコルビン酸類は、メラノサイトが、メラニン色素を生成する過程で、中間産物のドーパキノンがドーパクロムを形成する反応を抑制することで、メラニンの生成を抑え、その沈着を防ぐ効果がある。さらに、酸化されて濃くなった酸化型メラニンを、薄くて目立ちにくい還元型メラニンに還元する作用を有しており、シミ・ソバカスの改善、老人性色素斑、肝斑等の治療・改善に有効な薬剤として知られている。しかしながら、L−アスコルビン酸類は化学的に不安定であり、酸化による変色で水性皮膚外用剤などの外観を著しく損なうとともに、シミ、ソバカスなどを改善又は予防するという美白効果が低減するという欠点を有する。
L−アスコルビン酸類の経皮吸収に関する文献としては、α−D−グルコピラノシルグリセロール、L−アスコルビン酸、グリセリンおよび/またはソルビット、経皮吸収促進成分、グリチルリチン酸及びその誘導体から選ばれる一種又は二種以上、水とで構成する皮膚外用剤(特許文献1)、リン脂質およびグリコールエーテルを含有することにより、ビタミンA類、特定のビタミンC類およびキサンチン誘導体の経皮吸収性に優れた皮膚外用剤が得られるため、ビタミンA類、特定のビタミンC類およびキサンチン誘導体の肌への効率的な浸透を期待することができる(特許文献2)、などがある。
しかしながら、これらの薬効成分を単独で含有した医薬品、医薬部外品および化粧品では、薬効成分の効果が十分でないために所期の薬効が得られない場合が多く、その改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−227386号公報
【特許文献2】特開2006−213696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体を含有する水性皮膚外用剤において、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体の経皮吸収量を高め、シミやくすみの改善効果を十分に発揮することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体を含有する水性皮膚外用剤において、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルと、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有した水性溶液とすることで、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体の経皮吸収量が増加することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(3)に示す水性皮膚外用剤である。
(1)L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、を含有する水性皮膚外用剤。
(2)L−アスコルビン酸誘導体が、L−アスコルビン酸2−グルコシドである(1)に記載の水性皮膚外用剤。
(3)ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルの酸化アルキレン基の炭素数が2〜4で、平均付加モル数が、5〜20モルである(1)又は(2)のいずれかに記載の水性皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体の経皮吸収量が顕著に向上した水性皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、L−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸誘導体を含有する水性皮膚外用剤において、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルと、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有した水性溶液に関する。
【0009】
<1>本発明の必須成分であるL−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸誘導体
本発明の水性皮膚外用剤は、必須成分としてL−アスコルビン酸及びL−アスコルビン酸誘導体を、水性皮膚外用剤全量に対して、0.01〜10重量%含有することが好ましい。前記L−アスコルビン酸誘導体としては、L−アスコルビン酸2−グルコシド、3−O−エチルアスコルビン酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウムなどがある。中でも、L−アスコルビン酸2−グルコシド(商品名:AA2G、株式会社林原)のようなL−アスコルビン酸配糖体が好ましい。これは、この誘導体が経時安定性に特に優れるためである。含有量は水性皮膚外用剤の用途等に応じて決定することもできるが、水性皮膚外用剤全量に対して0.1〜5重量%が好ましい。これは、この範囲内で優れた美白効果を有するからである。
【0010】
<2>本発明の必須成分であるポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル
ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルとしては、酸化アルキレン基の炭素数が2〜4で、平均付加モル数が5〜20モルが好ましい。
市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、プロピレンオキサイド(PO)で平均付加モル数が9であるPPG−9ジグリセリル(商品名:SY−DP9、阪本薬品工業株式会社製、商品名:ユニルーブDGP−700、日油株式会社製)、POの平均付加モル数が14であるPPG−14ジグリセリル(商品名:SY−DP14、阪本薬品工業株式会社製、商品名:ユニルーブDGP−950、日油株式会社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。このポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルの含有量は、水性皮膚外用剤全量に対して0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。
【0011】
<3>本発明の必須成分であるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とは、アクリル酸モノマーから誘導される構成単位と、メタクリル酸アルキルモノマーから誘導される構成単位の共重合体であり、その構成比率は、好ましくは1:99〜99:1であり、メタクリル酸アルキルモノマーのアルキルの炭素数は10〜30が好ましい。
これらアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体には以下のような市販品があり、これを1以上選択して利用する。
ペミュレンTR−1、ペミュレンTR−2、カルボポールR1342、カルボポールR1382(いずれも、Lubrizol Advanced Materials社製)など。
このアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量は水性皮膚外用剤の目的やアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の種類、他の含有物の種類や量、水性皮膚外用剤のpHによって大きく変わるが、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜1重量%がさらに好ましい。
【0012】
このほか必要に応じて原料を選択して水性溶液を作成する。例えば、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、金属封鎖剤、色材、水性成分、各種の皮膚栄養剤や薬剤等を必要に応じて適宜含有することができる。水性溶液の剤形としては、液状、水性ジェル状、O/W型又はW/O/W型エマルジョン等の中から任意の剤形を選択する。
なお、油性原料も勿論配合可能であるが、配合量はその種類や他の配合原料の種類等、水性溶液の剤形によって異なるが10重量%以下が好ましく、3重量%以下がさらに好ましい。
【実施例】
【0013】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。(なお数値は重量部で示した)
【0014】
実施例1「美白化粧水」
L−アスコルビン酸2−グルコシド 2.00
ポリオキシプロピレン(14モル)ジグリセリルエーテル 5.00
(商品名:SY−DP14、阪本薬品工業株式会社製)
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.60
(商品名:ペミュレンTR−1、Lubrizol Advanced Materials社製)
濃グリセリン 5.00
1,3−ブチレングリコール 5.00
水酸化カリウム 0.75
パラオキシ安息香酸メチル 0.25
精製水 81.40
【0015】
比較例1「比較化粧水1」
L−アスコルビン酸2−グルコシド 2.00
ポリオキシプロピレン(14モル)ジグリセリルエーテル 5.00
(商品名:SY−DP14、阪本薬品工業株式会社製)
濃グリセリン 5.00
1,3−ブチレングリコール 5.00
水酸化カリウム 0.75
パラオキシ安息香酸メチル 0.25
精製水 82.00
【0016】
比較例2「比較化粧水2」
L−アスコルビン酸2−グルコシド 2.00
濃グリセリン 5.00
1,3−ブチレングリコール 5.00
水酸化カリウム 0.38
パラオキシ安息香酸メチル 0.25
精製水 87.37
【0017】
確認試験−1
採取後−80℃で保存したユカタンミニブタ皮膚(5ヶ月齢のメス;日本チャールズリバー)を室温で解凍した豚皮(2cm×2cm)に実施例1 14mgを塗布した。
この豚皮を、生理的食塩水を含ませたろ紙の上に置き、32℃で4時間放置した。
対照として、豚皮(2cm×2cm)に比較例1 2.8mgを塗布し、32℃で4時間放置したものと、豚皮(2cm×2cm)に比較例2 2.8mgを塗布し、32℃で4時間放置したものをそれぞれ用意した。
その後、豚皮表面をワイプで拭き取り、テープストピッリングを3回行う。その後、豚皮表面を60℃で70〜80秒加熱し、表皮をピンセットで採取した。(表皮の重さを計った)
採取した表皮を5mLのHPLCの移動相に入れて、17時間振とう抽出(120rpm)を行った。この抽出液のL−アスコルビン酸2−グルコシドを下記の条件のHPLCで測定した。
【0018】
・HPLC測定条件
カラム:Mightysil RP−18GP 4.6mm×250mm(5μm)
移動相:テトラブチルアンモニウム‐リン酸二水素カリウムの水溶液/アセトニトリル(9:1)の混液
機器設定条件:流速 0.8mL/min、検出波長 260nm、カラム温度 40℃
表皮の重さ1g当たりのL−アスコルビン酸2−グルコシドの重さを算出し、対照と比較した実施例の結果を
図1に示した。
【0019】
確認試験−1より、水性溶液に含有したL−アスコルビン酸2−グルコシドは、水性溶液に含有したアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体およびポリオキシアルキレンジグリセリルエーテルによって経皮吸収が大きくなる傾向を示した。