特許第6605293号(P6605293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605293緊張材および歪計測用光ファイバーケーブルの端末処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605293
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】緊張材および歪計測用光ファイバーケーブルの端末処理方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/00 20060101AFI20191031BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20191031BHJP
   G02B 6/245 20060101ALI20191031BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   G02B6/00 B
   G02B6/44 316
   G02B6/245
   G01D5/353 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-206124(P2015-206124)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-78765(P2017-78765A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021119
【氏名又は名称】ヒエン電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 道男
(72)【発明者】
【氏名】山本 徹
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
(72)【発明者】
【氏名】大窪 一正
(72)【発明者】
【氏名】千桐 一芳
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊之
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】山田 眞人
(72)【発明者】
【氏名】松原 喜之
(72)【発明者】
【氏名】中上 晋志
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229992(JP,A)
【文献】 特開2000−258670(JP,A)
【文献】 特開2003−147746(JP,A)
【文献】 特開平10−104475(JP,A)
【文献】 特開2000−046527(JP,A)
【文献】 特開平08−286084(JP,A)
【文献】 実開昭57−166293(JP,U)
【文献】 特開昭60−118805(JP,A)
【文献】 米国特許第09074462(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0077740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00−6/036
G02B 6/44
G01D 5/353
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼線を撚り合わせた緊張材であって、
歪計測用光ファイバーケーブルが、隣り合うPC鋼線の間に沿わせて配置され、
前記歪計測用光ファイバーケーブルは、
歪計測に用いる光ファイバーと、
前記光ファイバーを被覆する被覆材と、
前記被覆材の外側に隣接して設けられる樹脂製の外皮と、
を有
長手方向と直交する方向の断面が、3辺を直線状とする略三角形状であり、前記断面の頂点が前記緊張材の中心に向くように配置され、
前記外皮の内部の前記光ファイバーの近傍に、外皮引裂き用の線材が設けられ、前記線材が前記歪計測用光ファイバーケーブルの端面から突出していることを特徴とする緊張材
【請求項2】
前記外皮として変性低密度ポリエチレンを用いることを特徴とする請求項1に記載の緊張材
【請求項3】
請求項1記載の歪計測用光ファイバーケーブルの前記線材を前記歪計測用光ファイバーケーブルの外側へと引張ることにより前記外皮を引裂き、前記被覆材で被覆された前記光ファイバーを取り出すことを特徴とする歪計測用光ファイバーケーブルの端末処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪計測用光ファイバーケーブル、緊張材および歪計測用光ファイバーケーブルの端末処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC鋼撚り線による緊張力の管理のため、PC鋼撚り線に光ファイバーケーブルを取り付けることがある。BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)やFBG(Fiber Bragg Grating)等の既知の手法により光ファイバーの歪を計測することで、当該歪からPC鋼撚り線の緊張力を得ることが可能になる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-318011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような歪計測用の光ファイバーケーブルとして、光ファイバーを被覆材で覆い、さらにこの被覆材を外皮で覆って構成したものがある。
【0005】
歪計測を行うためには光ファイバーケーブルを歪計測用の計測機器に接続する必要があり、その際の光ファイバーケーブルの端末処理として、光ファイバーケーブルの外皮を剥ぎ、被覆材付きの光ファイバーを取り出してむき出しの状態にしなければならない。しかしながら、従来一体成型された両者から被覆材付きの光ファイバーだけを取り出すことは困難であった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、端末処理が容易な歪計測用光ファイバーケーブル等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、PC鋼線を撚り合わせた緊張材であって、歪計測用光ファイバーケーブルが、隣り合うPC鋼線の間に沿わせて配置され、前記歪計測用光ファイバーケーブルは、歪計測に用いる光ファイバーと、前記光ファイバーを被覆する被覆材と、前記被覆材の外側に隣接して設けられる樹脂製の外皮と、を有長手方向と直交する方向の断面が、3辺を直線状とする略三角形状であり、前記断面の頂点が前記緊張材の中心に向くように配置され、前記外皮の内部の前記光ファイバーの近傍に、外皮引裂き用の線材が設けられ、前記線材が前記歪計測用光ファイバーケーブルの端面から突出していることを特徴とする緊張材である。
【0009】
前記外皮として変性低密度ポリエチレンを用いることが望ましい。また歪計測用光ファイバーケーブルは、長手方向と直交する方向の断面が略三角形状であることが望ましい。
【0012】
の発明は、第1の発明の歪計測用光ファイバーケーブルの前記線材を前記歪計測用光ファイバーケーブルの外側へと引張ることにより前記外皮を引裂き、前記被覆材で被覆された前記光ファイバーを取り出すことを特徴とする歪計測用光ファイバーケーブルの端末処理方法である。
【0013】
本発明では、歪計測用光ファイバーケーブルが、端末処理時に被覆材付きの光ファイバーを取り出しやすくする機構とされている。すなわち、外皮内に線材を設けることで、線材を歪計測用光ファイバーケーブルの外側へと引張ることにより外皮を引裂き、被覆材で被覆された光ファイバーを容易に取り出すことができる
【0014】
また、外皮として変性低密度ポリエチレンを用いることで、歪計測用光ファイバーケーブルを押出成型により高精度に製造できる。また、歪計測用光ファイバーケーブルの長手方向と直交する方向の断面を略三角形状とすると、PC鋼線を撚り合わせて緊張材とする場合に、PC鋼線の間に歪計測用光ファイバーケーブルを収まりよく配置できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、端末処理が容易な歪計測用光ファイバーケーブル等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】緊張材1を示す図
図2】歪計測用光ファイバーケーブル20を示す図
図3】歪計測用光ファイバーケーブル20の端末処理方法を示す図
図4】歪計測用光ファイバーケーブル20aを示す図
図5】歪計測用光ファイバーケーブル20aの端末処理方法を示す図
図6】歪計測用光ファイバーケーブル20a’を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る歪計測用光ファイバーケーブル20(以下、ケーブルということがある)を取り付けた緊張材1の端部を示す図である。図1(a)は緊張材1を側方から見た図であり、図1(b)は緊張材1の長手方向と直交する方向の断面を見た図である。
【0019】
本実施形態では、緊張材1として、中心のPC鋼線10の周囲に6本のPC鋼線10を螺旋状に撚り合わせたPC鋼撚り線が用いられる。歪計測用光ファイバーケーブル20は、隣り合うPC鋼線10の間に沿わせて緊張材1の外面で螺旋状に配置され、緊張材1の長手方向に沿って取り付けられる。ケーブル20は、BOTDR (Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)等の既知の手法により光ファイバーの長手方向の歪の分布を計測するために用いられる。
【0020】
各PC鋼線10の長手方向と直交する方向の断面は略円形であり、ケーブル20の長手方向と直交する方向の断面は略三角形状となっている。ケーブル20は、断面の略三角形の頂点を中心のPC鋼線10に向けることで、隣接するPC鋼線10の間の隙間に収まりよく配置でき、図1(b)の点線で示す緊張材1の外接六角形内にうまく収めることができる。
【0021】
図2は歪計測用光ファイバーケーブル20の断面構成を示す図である。ケーブル20は、光ファイバー21、被覆材22、外皮(以下、フィラーという)23を有する。
【0022】
光ファイバー21は歪計測用の光ファイバーであり、ガラスやプラスチックが用いられる。
【0023】
被覆材22は光ファイバー21を直接覆うものである。被覆材22としては、ガラス繊維をプラスチックで固めたものや、熱可塑性ポリエステルエラストマー、難燃性エラストマー、難燃性ポリエチレン等を用いることができる。
【0024】
フィラー23は被覆材22の外側に隣接して設けられ、被覆材22を直接覆うものである。本実施形態では、被覆材22の融点よりフィラー23の融点が低いものとする。フィラー23は、例えば被覆材22より低い融点を有する樹脂で形成でき、その材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等が挙げられる。
【0025】
ここで、被覆材22あるいはフィラー23の融点とは、元の固体形状が維持できなくなる温度をいうものとする。例えば、ガラス繊維をプラスチックで固めたものを被覆材22に用いた場合、その融点は当該プラスチックの融点である。
【0026】
この歪計測用光ファイバーケーブル20は押出成型で製作でき、フィラー23として例えば無水マレイン酸等による所定の変性処理を経た変性低密度ポリエチレンを用いることで、押出成型時の形状保持、捻じれの防止、寸法のばらつき軽減等の効果があり、高精度にケーブル20を製造できる。
【0027】
(2.歪計測用光ファイバーケーブル20の端末処理方法)
次に、歪計測用光ファイバーケーブル20を歪計測用の計測機器に接続する際の端末処理方法について説明する。
【0028】
歪計測用光ファイバーケーブル20を計測機器に接続する際は、図3(a)に示すようにケーブル20を緊張材1から取り外し、ケーブル20の端部を、フィラー23の融点以上且つ被覆材22の融点未満の温度で加熱する。例えば、熱可塑性ポリエステルエラストマーであるハイトレル(登録商標)を被覆材22として用い被覆された光ファイバー21を、変性低密度ポリエチレンによるフィラー23で被覆した場合、ハイトレル(登録商標)の融点が212℃程度、変性低密度ポリエチレンの融点が120℃程度であるので、130〜140℃程度を加熱温度とする。なお、ケーブル20の加熱にはドライヤー等を用いることができる。
【0029】
上記のようにケーブル20を加熱するとフィラー23のみが軟化し、図3(b)に示すように被覆材22で覆われた光ファイバー21を容易に取り出すことができる。この光ファイバー21を計測機器に接続し、歪計測を行うことができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態では、歪計測用光ファイバーケーブル20が、端末処理時に被覆材22付きの光ファイバー21を取り出しやすくする機構とされている。すなわち、フィラー23の融点を被覆材22の融点より低くすることで、ケーブル20をフィラー23の融点以上且つ被覆材22の融点未満の温度で加熱してフィラー23を軟化させ、被覆材22付きの光ファイバー21を容易に取り出すことができる。
【0031】
またフィラー23として変性低密度ポリエチレンを用いることで、ケーブル20を押出成型により高精度に製造することができる。さらに、ケーブル20の長手方向と直交する方向の断面が略三角形状なので、PC鋼線10を撚り合わせて緊張材1とする場合に、PC鋼線10の間にケーブル20を収まりよく配置できる。
【0032】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば歪計測用光ファイバーケーブル20はPC鋼線10を撚り合わせた緊張材1に使用するものに限らず、緊張材1としてPC鋼棒等を用いる場合も、その長手方向に沿って取り付けて用いることができる。ケーブル20の断面形状も略三角形に限ることはない。被覆材22やフィラー23の材料についても上記したものに限らない。
【0033】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る歪計測用光ファイバーケーブル20aの断面構成を示したものである。第2の実施形態の歪計測用光ファイバーケーブル20aは第1の実施形態と同様に緊張材1に取付けて用いるものであるが、フィラー23内の光ファイバー21の近傍にフィラー引裂き用の鋼線24(線材)が埋設される点で第1の実施形態と主に異なる。鋼線としては鋼繊維などによる直径0.2mm以下の極細高硬線材等を用いることができる。なお、第2の実施形態では被覆材22とフィラー23の融点の大小関係は特に問わない。
【0034】
図5は歪計測用光ファイバーケーブル20aの端末処理方法を示す図である。本実施形態では、図5(a)に示すように鋼線24が光ファイバーケーブル20aの端面から突出しており、前記と同様にして光ファイバーケーブル20aを緊張材1から取外した後、図5(b)に示すように鋼線24をケーブル20aの外側に引張ってフィラー23を引裂く。これにより第1の実施形態と同様、簡単に被覆材22付きの光ファイバー21を露出させ、これを取り出すことができる。
【0035】
なお、図6のケーブル20a’に示すように鋼線24はケーブル20a’の端面から突出して無くともよく、この場合はカッター等でフィラー23を一部切り込んで鋼線24を引き出せばよい。また、フィラー23の引裂きが可能であれば鋼線24以外の線材を用いてもよい。さらに、第1の実施形態のケーブル20において同様の鋼線24を設けることもでき、場合に応じて加熱あるいは鋼線24によるフィラー引裂きのいずれの方法でも光ファイバー21の取り出しが容易にできるので便利である。
【0036】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0037】
1;緊張材
10;PC鋼線
20、20a、20a’;歪計測用光ファイバーケーブル
21;光ファイバー
22;被覆材
23;フィラー
24;鋼線
図1
図2
図3
図4
図5
図6