(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るフォーカルプレンシャッタについて説明する。
【0014】
本実施形態に係るフォーカルプレンシャッタは、撮像素子を有する撮像装置、電子機器等に搭載される。撮像装置は、例えば、デジタルカメラ、監視カメラ等である。また、電子機器は、例えば、撮像機能を有するスマートフォン等の携帯端末、ラップトップ型またはノート型パーソナルコンピュータである。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Couples Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のイメージセンサである。
【0015】
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係るフォーカルプレンシャッタ100の構成を説明する。なお、
図1の正面側(手前側)が被写体側(撮影レンズ側)であり、
図1の背面側が撮像素子側であるとして説明する。
【0016】
本実施の形態に係るフォーカルプレンシャッタ100は、
図1に示すように、シャッタ地板10、先羽根20、後羽根30、先羽根駆動機構、後羽根駆動機構、セット部材60、規制機構、先羽根用電磁石81、後羽根用電磁石82、を備える。
【0017】
シャッタ地板10は、合成樹脂等を用いて略矩形の平板状に作られており、その略中央部には、横長の長方形の露光開口10aが形成されている。また、シャッタ地板10の背面側には、先羽根20を収容する羽根室を画定する中間板(不図示)と、後羽根30を収容する羽根室を画定する補助地板(不図示)とが、所定の間隔をおいて取り付けられている。中間板と補助地板には、それぞれの略中央部に、露光開口10aの形状と類似する形状の開口が形成されている。被写体光を通過させるためのシャッタユニットとしての露光開口の形状は、これらの開口と露光開口10aを重ね合わせることにより形成される。本実施の形態では、開口の形状が露光開口10aの形状と同一であるものとして説明する。
【0018】
シャッタ地板10の露光開口10aの左側の領域には、円弧状の2つの長孔10b,10cが形成されている。また、長孔10bの下端と長孔10cの下端には、平面形状が略C字状であるゴム製の緩衝部材12と緩衝部材13がそれぞれ取り付けられている。中間板と補助地板の長孔10b,10cと重なる領域には、長孔10b,10cと略同一形状の長孔がそれぞれ形成されている。
【0019】
シャッタ地板10の正面、すなわち被写体側の面には、支軸11a,11b,11c,11d,11e,11fが立設されている。また、シャッタ地板10の背面、すなわち撮像素子側の面には、支軸11g,11h,11i,11jが立設されている。これらの支軸のうち、支軸11gは支軸11aと、支軸11hは支軸11cと、それぞれ、同心上に立設されている。
【0020】
なお、シャッタ地板10の正面には、実際には、このほかにも、複数の柱が立設されている。これらの柱には、シャッタ地板10側から順に、支持板とプリント配線板とが取り付けられている。
【0021】
先羽根20は、シャッタ地板10と中間板との間の羽根室内を移動(走行)するメカニカル方式の先幕シャッタ(先羽根部材)である。先羽根20は、一端が支軸11g周りに回転可能に取り付けられた先羽根アーム25と、一端が支軸11i周りに回転可能に取り付けられた先羽根アーム26と、これらの自由端である他端に向けて順に枢支された4枚の先羽根本体21,22,23,24とから構成される。ここで、先羽根本体24は、スリット(隙間)を形成するスリット形成羽根である。また、後述する先羽根用第1駆動部材41の駆動ピン41cの先端部は、先羽根アーム25に形成された図示しない長孔に嵌合されている。
【0022】
また、シャッタ地板10の支軸11iには、図示しない先羽根用セットばねが嵌装されている。先羽根用セットばねは、捩りコイルばねであって、その一端がシャッタ地板10に設けられた図示しないばね掛け部に掛けられ、他端が先羽根アーム26の孔(符号なし)に掛けられている。これにより、先羽根用セットばねは、先羽根アーム26を反時計回りに回転させるように付勢している(第1付勢力)。また、先羽根用セットばねは、先羽根20を介して間接的に先羽根用第1駆動部材41を反時計回りに回転させるように付勢していることになる。なお、この付勢力は、後述する先羽根用第2駆動部材42を反時計回りに回転させるように付勢する先羽根用駆動ばねの付勢力よりも弱く設定されている。
【0023】
後羽根30は、中間板と補助地板との間の羽根室内を移動(走行)するメカニカル方式の後幕シャッタ(後羽根部材)である。後羽根30は、一端が支軸11h周りに回転可能に取り付けられた後羽根アーム35と、一端が支軸11j周りに回転可能に取り付けられた後羽根アーム36と、これらの自由端である他端に向けて順に枢支された4枚の後羽根本体31,32,33,34とから構成される。ここで、後羽根本体34は、スリット(隙間)を形成するスリット形成羽根である。また、後述する後羽根用駆動部材51の駆動ピン51cの先端部は、後羽根アーム35に形成された図示しない長孔に嵌合されている。
【0024】
また、シャッタ地板10の支軸11jには、図示しない後羽根用セットばねが嵌装されている。後羽根用セットばねは、捩りコイルばねであって、その一端がシャッタ地板10に設けられた図示しないばね掛け部に掛けられ、他端が後羽根アーム35の孔(符号なし)に掛けられている。これにより、後羽根用セットばねは、後羽根アーム35を時計回りに回転させるように付勢している。また、後羽根用セットばねは、後羽根30を介して間接的に後羽根用駆動部材51を時計回りに回転させるように付勢している。なお、この付勢力は、後述する後羽根用駆動部材51に掛けられる後羽根用駆動ばねの付勢力よりも弱く設定されている。
【0025】
先羽根駆動機構は、先羽根20を駆動させるための機構である。先羽根駆動機構は、先羽根用第1駆動部材41、先羽根用第2駆動部材42、ブレーキ部材45、を含んで構成されている。
【0026】
先羽根用第1駆動部材41は、露光開口10aを閉鎖するように先羽根20を長孔10bの下端から上端に走行(戻り動作)させるための部材である。先羽根用第1駆動部材41は、支軸11a周りに回転可能に取り付けられている。また、先羽根用第1駆動部材41は、前述したように、先羽根セットばねによって反時計回りに回転するように付勢されている。先羽根用第1駆動部材41は、被係止部41a、被係合部41b、駆動ピン41c、を有する。
【0027】
被係止部41aは、先羽根用第1駆動部材41の先端部の側面に設けられ、後述する規制部材71の係止部71aに係止される部位である。被係止部41aは、先羽根20のシャッタ動作(先羽根シャッタ動作)時に、先羽根用第1駆動部材41が先羽根用第2駆動部材42と結合した状態で長孔10bの上端近傍から下端近傍に移動した後、規制部材71の係止部71aに係止される。これにより、先羽根用第1駆動部材41は、長孔10bの下端近傍に保持され、先羽根セットばねの付勢力による反時計回りの回転が抑止される。
【0028】
被係止部41aは、後述する先羽根用第2駆動部材42が有する係合部材43の第2被押動部43cを押動する部位でもある。被係止部41aは、先羽根用第1駆動部材41が先羽根セットばねの付勢力によって反時計回りに回転するとき、その回転終了直前に、第2被押動部43cを押動する。これにより、係合部材43は、付勢ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転させられる。
【0029】
被係合部41bは、後述する先羽根用第2駆動部材42が有する係合部材43の係合部43aによって係合される部位である。被係合部41bは、先羽根用第1駆動部材41の先端部の正面側の一部が係合部43aの形状に対応して切り欠かれて形成されている。先羽根用第1駆動部材41が先羽根セットばねの付勢力によって反時計回りに回転するとき、その回転終了時に、係合部43aに係合される。これにより、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とは一体的に結合された状態になる。
【0030】
駆動ピン41cは、先羽根用第1駆動部材41の先端部の背面側に配置されており、シャッタ地板10の長孔10bに挿入され、その先端部が先羽根アーム25に形成された図示しない長孔に嵌合されている。これにより、先羽根用第1駆動部材41は、シャッタ地板10と中間板との間の羽根室内で先羽根20に連結されている。また、駆動ピン41cの基端部は、その断面が略円状に形成されており、長孔10bの下端に設けられた緩衝部材12に当接し得るようになっている。
【0031】
先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用第1駆動部材41を従動回転させて露光開口10aを閉鎖するように先羽根20にシャッタ動作(露光動作)をさせるための部材である。先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用第1駆動部材41と同様、支軸11a周りに回転可能に取り付けられている。先羽根用第2駆動部材42は、先羽根シャッタ動作時に、先羽根用駆動ばねの付勢力(第2付勢力)により、先羽根用第1駆動部材41と結合した状態で時計回りに回転し、先羽根用第1駆動部材41の駆動ピン41cが長孔10bの下端に設けられた緩衝部材12に当接したときに先羽根用第2駆動部材42の回転が停止する。先羽根用第2駆動部材42は、取付部42a、被係止部42b、被制動部42c、支軸42d、係合部材43、を有する。
【0032】
取付部42aは、被写体側に部厚く形成され、その内部に、図示しない圧縮ばねを介在させて鉄片部材44を取り付けるための部位である。鉄片部材44は、軸部44aを有し、この軸部44aの一端には円盤状の頭部44bが形成され、その他端には鉄片部44cが取り付けられている。鉄片部材44は、取付部42a内で軸部44aに嵌装されている上記の圧縮ばねによって、鉄片部44cを取付部42a内から突き出すように付勢されている。
【0033】
被係止部42bは、セット部材60の第1係止部60aに押動および係止される部位である。被係止部42bは、セット部材60がセット動作において反時計回りに回転するとき、第1係止部60aに押動される。これにより、先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転させられ、長孔10bの下端近傍から上端近傍に移動する。また、被係止部42bは、セット部材60がセット動作において反時計回りの回転を停止したとき、第1係止部60aに係止される。これにより、先羽根用第2駆動部材42は、長孔10bの上端近傍に保持され、先羽根用駆動ばねの付勢力による時計回りの回転が抑止される。
【0034】
被制動部42cは、ブレーキ部材45の制動部45aに摺接される部位である。被制動部42cは、先羽根用第2駆動部材42が先羽根用第1駆動部材41と結合した状態で先羽根用駆動ばねの付勢力よって時計回りに回転するとき、その回転終了直前に、制動部45aに摺接される。これにより、先羽根用第2駆動部材42および先羽根用第1駆動部材41の時計回りの回転は制動される。
【0035】
支軸42dは、先羽根用第2駆動部材42の背面側に立設され、後述する係合部材43を回転可能に支持する部材である。
【0036】
係合部材43は、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とを結合するための部材である。係合部材43は、先羽根用第2駆動部材42の背面側に配置され、支軸42dに回転可能に取り付けられている。また、係合部材43は、図示しない付勢ばねによって時計回りに回転するように付勢されている。係合部材43は、係合部43a、第1被押動部43b、第2被押動部43c、を有する。
【0037】
係合部43aは、先羽根用第1駆動部41の被係合部41bに係合する部位である。係合部43aは、先羽根用第1駆動部材41が先羽根セットばねの付勢力によって反時計回りに回転するとき、その回転終了時に、被係合部41bに係合する。これにより、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とは一体的に結合された状態になる。
【0038】
第1被押動部43bは、規制部材41が取り付けられた支軸11eに押動される部位である。第1被押動部43bは、先羽根用第2駆動部材42が先羽根用第1駆動部材41と結合した状態で先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計回りに回転するとき、その回転の終了直前に、支軸11eに押動される。これにより、係合部材43は、付勢ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転する。係合部材43が反時計回りに回転することにより、係合部43aと被係合部41bとの係合が解除され、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42は、分離して個別に動作することができるようになる。
【0039】
第2被押動部43cは、先羽根用第1駆動部材41が先羽根用セットばねの付勢力によって反時計回りに回転するとき、その回転の終了直前において、先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aに押動される部位である。
【0040】
ブレーキ部材45は、先羽根用第2駆動部材42が先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計回りに回転するとき、その回転の終了前において、先羽根用第2駆動部材42の回転を制動するための部材である。ブレーキ部材45は、支軸11b周りに回転可能に取り付けられ、図示しない付勢ばねによって時計回りに回転するように付勢されている。なお、ブレーキ部材45がシャッタ地板10の正面に配置された図示しないストッパと係合することにより、所定の回転限界位置においてブレーキ部材45の時計回りの回転が規制される。ブレーキ部材45は、制動部45aを有する。
【0041】
制動部45aは、先羽根用第2駆動部材42の被制動部42cに摺接する部位である。前述したストッパによってブレーキ部材45の付勢ばねの付勢力による時計回りの回転が規制され、先羽根シャッタ動作前には、制動部45aは、被制動部42cに摺接して先羽根用第2駆動部材42に制動力を与え得る先羽根用第2駆動部材42の走行軌道内に進入した位置に配置される。先羽根シャッタ動作開始に伴って先羽根用第2駆動部材42が先羽根用第1駆動部材41と結合した状態で先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計回りに回転するとき、その回転の終了前に、制動部45aは、先羽根用第2駆動部材42の被制動部42cに摺接し、先羽根用第2駆動部材42の回転を妨げる方向(反時計回り)に摩擦力を発生させる。これにより、先羽根用第2駆動部材42の回転を制動するとともに、先羽根用第2駆動部材42と結合された先羽根用第1駆動部材41の回転を制動させることができる。制動部45aが被制動部42cに摺接する際、先羽根用第2駆動部材42の走行軌道内に進入していた制動部45aは被制動部42cに押され、ブレーキ部材45は、付勢ばねの付勢力に抗して反時計回りにわずかに回転する。これにより、制動部45aは、先羽根用第2駆動部材42の走行軌道外に退避させられる。しかし、制動部45aと被制動部42cとの接触が解かれた後は、ブレーキ部材45は付勢ばねの付勢力によって時計回りに回転し、制動部45aは、先羽根用第2駆動部材42の走行軌道内に進入した状態に復帰することができる。なお、ブレーキ部材45の制動部45と先羽根用第2駆動部材42の被制動部42cとの接触状態を確保して先羽根用第2駆動部材42により効率的に制動力を与えるために、所定の回転限界位置においてブレーキ部材45に係合してブレーキ部材45の反時計回りの回転を規制するストッパをシャッタ地板10の正面に設けてもよい。
【0042】
後羽根駆動機構は、後羽根30を駆動させるための機構である。後羽根駆動機構は、後羽根用駆動部材51から構成されている。
【0043】
後羽根用駆動部材51は、露光開口10aを閉鎖するように後羽根30にシャッタ動作(露光動作)をさせるための部材である。後羽根用駆動部材51は、支軸11c周りに回転可能に取り付けられている。後羽根用駆動部材51は、後羽根30のシャッタ動作(後羽根シャッタ動作)時に、後羽根用駆動ばねの付勢力により、時計回りに回転し、駆動ピン51cが長孔10cの下端に設けられた緩衝部材13に当接したときに回転が停止する。後羽根用駆動部材51は、取付部51a、被係止部51b、駆動ピン51c、を有する。
【0044】
取付部51aは、被写体側に部厚く形成され、その内部に、図示しない圧縮ばねを介在させて鉄片部材52を取り付けるための部位である。鉄片部材52は、軸部52aを有し、この軸部52aの一端には円盤状の頭部52bが形成され、その他端には鉄片部52cが取り付けられている。鉄片部材52は、取付部51a内で軸部52aに嵌装されている上記の圧縮ばねによって、鉄片部52cを取付部51a内から突き出すように付勢されている。
【0045】
被係止部51bは、セット部材60の第2係止部60bに押動および係止される部位である。被係止部51bは、セット部材60がセット動作において反時計回りに回転するとき、第2係止部60bに押動される。これにより、後羽根用駆動部材51は、後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転させられ、長孔10cの下端近傍から上端近傍に移動する。また、被係止部51bは、セット部材60がセット動作において反時計回りの回転を停止したとき、第2係止部60bに係止される。これにより、後羽根用駆動部材51は、長孔10cの上端近傍に保持され、後羽根用駆動ばねの付勢力による時計回りの回転が抑止される。
【0046】
駆動ピン51cは、後羽根用駆動部材51の先端部の背面側に配置されており、シャッタ地板10の長孔10cに挿入され、その先端部が後羽根アーム35に形成された図示しない長孔に嵌合されている。これにより、後羽根用駆動部材51は、中間板と補助地板の間の羽根室内で先羽根30に連結されている。また、駆動ピン51cの基端部は、その断面が略円状に形成されており、長孔10cの下端に設けられた緩衝部材13に当接し得るようになっている。
【0047】
セット部材60は、先羽根駆動機構および後羽根駆動機構に含まれる各種部材をそれぞれ所定のシャッタ動作前のセット位置にセットするための部材である。セット部材60は、支軸11d周りに回転可能に取り付けられ、図示しない付勢ばねによって反時計回りに回転するように付勢されている。セット部材60は、第1係止部60a、第2係止部60b、を有する。
【0048】
セット部材60は、図示しない撮像装置本体の駆動機構の駆動力によって、
図4〜
図6に示す初期位置(先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51から離反した状態)から付勢ばねの付勢力に抗して時計回りに回転することにより、第1係止部60aが被係止部42bを押動するとともに、第2係止部60bが被係止部51bを押動し、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51を反時計回りに回転させてシャッタ動作前のセット位置にセットするセット動作を行う。セット動作が終了すると、セット部材60は、
図1および
図3に示すように、撮像装置本体の駆動機構によって押圧されてセット位置に保持される。また、セット部材60は、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51(の鉄片部44c,52c)が先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持された状態において、撮像装置本体の駆動機構による押圧が解除されると、付勢ばねの付勢力により反時計回りに回転してセット位置から初期位置に戻ることにより、第1係止部60aが被係止部42bから離脱するとともに、第2係止部60bが被係止部51bから離脱し、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51の時計回りの回転を許容する。
【0049】
第1係止部60aは、セット部材60のセット動作において、先羽根用第2駆動部材42の被係止部42bを押動および係止する部位である。第1係止部60aは、セット部材60がセット動作において反時計回りに回転するとき、被係止部42bを押動して先羽根用第2駆動部材42を先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転させる。また、第1係止部60aは、セット部材60がセット動作において反時計回りの回転を停止したとき、被係止部42bを係止して、先羽根用第2駆動部材42の先羽根用駆動ばねの付勢力による時計回りの回転を抑止する。
【0050】
第2係止部60bは、セット部材60のセット動作において、後羽根用駆動部材51の被係止部51bを押動および係止する部位である。第2係止部60bは、セット部材60がセット動作において反時計回りに回転するとき、被係止部51bを押動して後羽根用駆動部材51を後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転させる。また、第2係止部60bは、セット部材60がセット動作において反時計回りの回転を停止したとき、被係止部51bを係止して、後羽根用駆動部材51の先羽根用駆動ばねの付勢力による時計回りの回転を抑止する。
【0051】
規制機構は、先羽根用第1駆動部材41の先羽根セットばねの付勢力による回転を規制する機構である。規制機構は、規制部材71、電磁アクチュエータ72、を含んで構成される。
【0052】
規制部材71は、先羽根用第1駆動部材41を長孔10bの下端近傍に保持して、先羽根セットばねの付勢力による反時計回りの回転を抑止する部材である。規制部材71は、支軸11e周りに回転可能に取り付けられている。規制部材71は、係止部71a、連結部71b、を有する。
【0053】
係止部71aは、先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aを係止する部位である。係止部71aは、先羽根シャッタ動作の終了直前に先羽根用第2駆動部材42との結合が解除された先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aを係止する。これにより、先羽根用第1駆動部材41は、先羽根セットばねによる反時計回りの回転が抑止される。
【0054】
連結部71bは、電磁アクチュエータ72のロータ73が有する連結ピン73aが連結される略U字形の部位である。連結部71bが連結ピン73aを介してロータ73の回転に従動することにより、規制部材71は支軸11e周りに回転する。
【0055】
電磁アクチュエータ72は、ノーマリーオープンモードとノーマリークローズモードとを切り換えるために規制部材71を駆動する機構を備える装置である。電磁アクチュエータ72は、ロータ73、ヨーク74、コイル75、を備える。
【0056】
ロータ73は、支軸11f周りに回転可能に取り付けられ、コイル75の通電状態に応じて所定の角度範囲を回転する回転子である。ロータ73には連結ピン73aが接続されており、この連結ピン73aを介して、ロータ73の回転は規制部材71に伝達される。
【0057】
ヨーク74は、ロータ73を挟むように対向する一対の磁極を有する略コの字状の鉄心部材である。
【0058】
コイル75は、ヨーク74の周りに電線を巻回して形成された励磁用のコイルである。コイル75が一方向に通電されると、ヨーク74の磁極間に磁束が発生し、ロータ73は時計回りに回転する。ロータ73の時計回りの回転は、ロータ73に接続された連結ピン73aを介して規制部材71に伝達され、規制部材71は反時計回りに回転する。これにより、規制部材71の係止部71aが先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aを係止し、先羽根用第1駆動部材41の反時計回りの回転が抑止される。一方、コイル75が逆方向に通電されると、ロータ73が反時計回りに回転し、これに伴って規制部材71は時計回りに回転する。これにより、規制部材71の係止部71aと先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aとは離反し、先羽根用第1駆動部材41の反時計回りの回転が許容される。
【0059】
先羽根用電磁石81と後羽根用電磁石82は、先羽根用第2駆動部材42と後羽根用駆動部材51をそれぞれ磁気的に吸着保持する部材である。先羽根用電磁石81は、前述の支持板に保持されており、先羽根用第2駆動部材42の鉄片部材44に接触して、長孔10bの上端近傍において先羽根用第2駆動部材42を磁気的に吸着保持する。また、後羽根用電磁石82は、前述の支持板に保持されており、後羽根用駆動部材51の鉄片部材52に接触して、長孔10cの上端近傍において後羽根用駆動部材51を磁気的に吸着保持する。
【0060】
先羽根用電磁石81は、略U字形の2つの脚部の先端を磁極部とした鉄芯部材81a、鉄芯部材81aの一方の脚部に嵌装されたボビンに巻回された励磁用のコイル(不図示)等を有する。コイルの通電により鉄芯部材81aが励磁され、鉄芯部材81aに発生した磁気的吸引力によって先羽根シャッタ動作前のセット位置(長孔10bの上端近傍)にセットされた先羽根用第2駆動部材42の鉄片部材44が鉄芯部材81aに吸引される。これにより、先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用駆動ばねの付勢力に抗してセット位置に保持される。一方、コイルの通電の停止により、先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用駆動ばねの付勢力による反時計回りの回転を許容される。
【0061】
後羽根用電磁石82は、先羽根用電磁石81と同様、略U字形の2つの脚部の先端を磁極部とした鉄芯部材82a、鉄芯部材82aの一方の脚部に嵌装されたボビンに巻回された励磁用のコイル(不図示)等を有する。コイルの通電により鉄芯部材82aが励磁され、鉄芯部材82aに発生した磁気的吸引力によって後羽根シャッタ動作前のセット位置(長孔10cの上端近傍)にセットされた後羽根用駆動部材51の鉄片部材52が鉄芯部材82aに吸引される。これにより、後羽根用駆動部材51は、後羽根用駆動ばねの付勢力に抗してセット位置に保持される。一方、コイルの通電の停止により、後羽根用駆動部材51は、後羽根用駆動ばねの付勢力による時計回りの回転を許容される。
【0062】
次に、フォーカルプレンシャッタ100の動作について説明する。フォーカルプレンシャッタ100は、ユーザの選択に応じて、ノーマリーオープンモード(ノーマリーオープン方式の撮影)とノーマリークローズモード(ノーマリークローズ方式の撮影)の2つのモードのいずれかで動作可能である。
【0063】
まず、ノーマリーオープンモードにおけるフォーカルプレンシャッタ100の動作について説明する。ノーマリーオープンモードにおいて、フォーカルプレンシャッタ100は、
図2(A)に示すように、初期状態から、先羽根ロック解除、先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合、先羽根シャッタ動作、先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合の解除、先羽根ロック、後羽根シャッタ動作、セット動作、の順に動作して初期状態に戻る。
【0064】
(初期状態)
図1は、ノーマリーオープンモードにおいて、セット部材60によるセット動作が完了した後の初期状態を示す。
図1に示すように、先羽根用第1駆動部材41は、長孔10bの下端近傍において規制部材71により係止されている。したがって、先羽根20は、露光開口10aが開放状態となるように畳まれた状態で露光開口10aの下方に位置している。先羽根用第2駆動部材42は、長孔10bの上端近傍においてセット部材60により係止されている。すなわち、先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、先羽根20に露光開口10aを開放させるシャッタ動作を行うための駆動力がチャージされた状態である。後羽根用駆動部材51は、長孔10cの上端近傍においてセット部材60により係止されている。すなわち、後羽根用駆動部材51は、後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、後羽根30に露光開口10aを閉鎖させるシャッタ動作を行うための駆動力がチャージされた状態である。また、後羽根30は、露光開口10aが開放状態となるように畳まれた状態で露光開口10aの上方に位置している。セット部材60は、先羽根用第2駆動部材42を先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して係止するとともに、後羽根用駆動部材51を後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して係止している。
【0065】
(撮影開始)
初期状態においてフォーカルプレンシャッタ100を備える撮像装置のレリーズボタンが押下されると、先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82に通電され、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51は、先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持される。
【0066】
(先羽根ロック解除)
続いて、
図4に示すように、電磁アクチュエータ72が動作し、規制部材71は反時計回りに回転させられる。規制部材71の回転によって、先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aから規制部材71の係止部71aが離反され、規制部材71による先羽根用第1駆動部材41の係止(ロック)が解除される。先羽根用第1駆動部材41は、先羽根用セットばねによって反時計回りに付勢されているため、支軸11a周りに反時計回りに回転し、先羽根用第1駆動部材41の駆動ピン41cが長孔10bの下端から上端に移動する。これにより、先羽根20は、露光開口10aを覆うように上方向に移動しながら広がり、露光開口10aを閉鎖する。
【0067】
(先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合)
先羽根用第1駆動部材41の反時計回りの回転の終了直前において、先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aが第2被押動部43cを押動することにより、係合部材43は付勢ばねの付勢力に抗して支軸42dを中心に反時計回りに回転する。先羽根用第1駆動部材41は係合部材43を押動しながら回転を続け、駆動ピン41cが長孔10bの上端に到達して回転を終了したときに、係合部材43が付勢ばねの付勢力によって時計回りに回転し、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと係合部材43の係合部43aとが係合する。これにより、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とが一体的に結合された状態になる。
【0068】
(セット部材退避)
次に、セット部材60は、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51が先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持された状態において、付勢ばねの付勢力によって、反時計回りに回転してセット位置から初期位置に戻る。これにより、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51の係止が解除される。このとき、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51は、先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持された状態が維持されているため、時計回りの回転が抑止される。
【0069】
(先羽根シャッタ動作)
次に、先羽根用電磁石81の通電が停止され、先羽根用第2駆動部材42に対する先羽根用電磁石81の磁気的吸引力が失われることにより、先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の抑止が解除される。先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の抑止が解除されると、
図4に示すように、先羽根用駆動ばねによって時計回りに付勢されている先羽根用第2駆動部材42は、支軸11aを中心に時計回りに回転する。このとき、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと係合部材43の係合部43aとが係合しているため、先羽根用第1駆動部材41は先羽根用第2駆動部材42と一体的に移動する。これに伴って、先羽根用第1駆動部材41の駆動ピン41cが、長孔10bの上端から下端に走行する。これにより、先羽根20は、露光開口10aを開くように下方向に移動しながら畳まれ、露光開口10aを開放する。先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の終了前において、先羽根用第2駆動部材42の被制動部42cがブレーキ部材45の制動部45aに摺接され、摩擦力によって先羽根用第2駆動部材42の回転は制動される。また、先羽根用第1駆動部材41は先羽根用第2駆動部材42と結合されているため、先羽根用第2駆動部材42に及ぶブレーキ作用は先羽根用第1駆動部材41にも及ぶ。
【0070】
(先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合解除)
先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の終了直前に、先羽根用第2駆動部材42が有する係合部材43の第1被押動部43bは支軸11eに押動される。これにより、係合部材43は反時計回りに回転し、先羽根用第2駆動部材42の係合部43aは先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bから離反し、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと先羽根用第2駆動部材42が有する係合部材43の係合部43aとの係合が解除される。すなわち、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42との結合は解除され、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42は、分離して個別に動作することができるようになる。
【0071】
(先羽根ロック)
先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42との結合が解除された直後、電磁アクチュエータ72の動作により、規制部材71は時計回りに回転させられ、規制部材71の係止部71aが先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aを係止(ロック)する位置に移動する。これにより、先羽根用セットばねの付勢力による先羽根用第1駆動部材41の反時計回りの回転は抑止され、先羽根用第1駆動部材41および先羽根20は、長孔10bの下端近傍に保持される。
【0072】
(後羽根シャッタ動作)
続いて、先羽根用電磁石81の通電の停止から所定時間経過後、後羽根用電磁石82の通電が停止され、後羽根用駆動部材51に対する後羽根用電磁石82の磁気的吸引力が失われることにより、後羽根用駆動部材51の回転の抑止が解除される。後羽根用駆動部材51の回転の抑止が解除されると、後羽根用駆動ばねによって時計回りに付勢されている後羽根用駆動部材51は、
図6に示すように、支軸11cを中心に時計回りに回転する。これにより、後羽根用駆動部材51の駆動ピン51cが長孔10cの上端から下端に走行する。後羽根用駆動部材51の駆動ピン51cの走行により、後羽根30は、露光開口10aを覆うように下方へ移動しながら広がり、露光開口10aを閉鎖する。
【0073】
(セット動作)
次に、セット部材60は、次の撮影に備え、先羽根用第2駆動部材42と後羽根用駆動部材51のそれぞれに駆動力を与えて係止するセット動作を行う。セット部材60は、図示しない駆動機構の駆動力によって、付勢ばねの付勢力に抗して時計回りに回転する。セット部材60の回転に伴い、先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転する。また、後羽根用駆動部材51は、後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転する。後羽根用駆動部材51の回転により、後羽根30は、露光開口10aを開くように上方向に移動しながら畳まれ、露光開口10aを開放する。セット部材60は、セット位置に到達すると、駆動機構により反時計回りの回転を停止してセット位置に保持される。このように、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51はシャッタ動作前のセット位置にセットされ、先羽根および後羽根にシャッタ動作をさせるための駆動力がチャージされる。
【0074】
セット部材60のセット動作が終了すると、フォーカルプレンシャッタ100は、
図1に示す初期状態に戻る。
【0075】
次に、ノーマリークローズモードにおけるフォーカルプレンシャッタ100の動作について説明する。ノーマリークローズモードにおいて、フォーカルプレンシャッタ100は、
図2(B)に示すように、初期状態から、先羽根シャッタ動作、先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合の解除、先羽根ロック、後羽根シャッタ動作、セット動作、先羽根ロック解除、先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合、の順に動作して初期状態に戻る。このように、ノーマリークローズモードにおけるフォーカルプレンシャッタ100は、先羽根ロック解除および先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合のタイミングを除いては、前述したノーマリーオープンモードと概ね同様に動作する。
【0076】
(初期状態)
図3は、ノーマリークローズモードにおいて、セット部材60によるセット動作が完了した後の初期状態を示す。
図3に示すように、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと係合部材43の係合部43aとが係合しており、先羽根用第1駆動部材41は、先羽根用第2駆動部材42と結合された状態である。先羽根用第2駆動部材42は、シャッタ動作前のセット位置においてセット部材60により係止されている。したがって、先羽根20は、露光開口10aが閉鎖状態となるように開いた状態で露光開口10aを覆っている。後羽根用駆動部材51は、シャッタ動作前のセット位置においてセット部材60により係止されている。したがって、後羽根30は、露光開口10aが開放状態となるように畳まれた状態で露光開口10aの上方に位置している。セット部材60は、先羽根用第2駆動部材42を先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して係止するとともに、後羽根用駆動部材51を後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して係止している。
【0077】
(撮影開始)
初期状態においてフォーカルプレンシャッタ100を備える撮像装置のレリーズボタンが押下されると、先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82に通電され、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51は、先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持される。
【0078】
(セット部材退避)
先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51が先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持された状態において、セット部材60は、付勢ばねの付勢力によって反時計回りに回転し、セット位置から初期位置に戻る。これにより、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51の係止が解除されるものの、先羽根用電磁石81および後羽根用電磁石82によって吸着保持された状態が維持されているため、時計回りの回転が抑止される。
【0079】
(先羽根シャッタ動作)
次に、先羽根用電磁石81の通電が停止されることにより、先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の抑止が解除され、先羽根用第2駆動部材42は、
図5に示すように、支軸11aを中心に時計回りに回転する。このとき、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと係合部材43の係合部43aとが係合しているため、先羽根用第1駆動部材41は先羽根用第2駆動部材42と一体的に移動する。これにより、先羽根20は、露光開口10aを開くように下方向に移動しながら畳まれ、露光開口10aを開放する。先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の終了前において、先羽根用第2駆動部材42の被制動部42cがブレーキ部材45の制動部45aに摺接され、摩擦力によって先羽根用第2駆動部材42の回転は制動される。また、先羽根用第1駆動部材41は先羽根用第2駆動部材42と結合されているため、先羽根用第2駆動部材42に及ぶブレーキ作用は先羽根用第1駆動部材41にも及ぶ。
【0080】
(先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合解除)
先羽根用第2駆動部材42の時計回りの回転の終了直前において、先羽根用第2駆動部材42が有する係合部材43の第1被押動部43bは支軸11eに押動され、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと先羽根用第2駆動部材42の係合部43aとの係合が解除される。これにより、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42との結合が解除され、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42は、分離して個別に動作することができるようになる。
【0081】
(先羽根ロック)
先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42との結合が解除された直後、電磁アクチュエータ72の動作により、規制部材71は時計回りに回転させられ、規制部材71の係止部71aが先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aを係止する位置に移動する。これにより、先羽根用セットばねの付勢力による先羽根用第1駆動部材41の反時計回りの回転が抑止され、先羽根用第1駆動部材41および先羽根20は、長孔10bの下端近傍に保持される。
【0082】
(後羽根シャッタ動作)
続いて、先羽根用電磁石81の通電の停止から所定時間経過後、後羽根用電磁石82の通電が停止されることによって、後羽根用駆動部材51の回転の抑止が解除される。これにより、後羽根用駆動ばねによって時計回りに付勢されている後羽根用駆動部材51は、
図6に示すように、支軸11cを中心に時計回りに回転し、後羽根用駆動部材51の駆動ピン51cが長孔10cの上端から下端に走行する。後羽根用駆動部材51の駆動ピン51cの走行により、後羽根30は、露光開口10aを覆うように下方に移動しながら広がり、露光開口10aを閉鎖する。
【0083】
(セット動作)
次に、セット部材60は、次の撮影に備え、先羽根用第2駆動部材42と後羽根用駆動部材51のそれぞれに駆動力を与えて係止するセット動作を行う。セット部材60は、図示しない駆動機構の駆動力によって、付勢ばねの付勢力に抗して時計回りに回転する。セット部材60の回転に伴い、先羽根用第2駆動部材42は、先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転する。また、後羽根用駆動部材51は、後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計回りに回転する。後羽根用駆動部材51の回転により、後羽根30は、露光開口10aを開くように上方向に移動しながら畳まれ、露光開口10aを開放する。セット部材60は、駆動機構により所定角度回転したところで反時計回りの回転を停止させられてセット位置に保持される。このように、先羽根用第2駆動部材42および後羽根用駆動部材51はシャッタ動作前のセット位置にセットされ、先羽根および後羽根にシャッタ動作をさせるための駆動力がチャージされる。
【0084】
(先羽根ロック解除)
セット部材60によるセット動作が完了した後、電磁アクチュエータ72が動作し、規制部材71は反時計回りに回転させられる。規制部材71の回転によって、規制部材71による先羽根用第1駆動部材41の係止が解除される。規制部材71による係止が解除された先羽根用第1駆動部材41は、反時計回りに回転し、先羽根用第1駆動部材41の駆動ピン41cが長孔10bの下端から上端に移動する。これにより、先羽根20は、露光開口10aを覆うように上方向に移動しながら広がり、露光開口10aを閉鎖する。
【0085】
(先羽根用第1駆動部材と先羽根用第2駆動部材の結合)
先羽根用第1駆動部材41の反時計回りの回転の終了直前において、先羽根用第1駆動部材41の被係止部41aが第2被押動部43cを押動することにより、係合部材43は付勢ばねの付勢力に抗して支軸42dを中心に反時計回りに回転する。先羽根用第1駆動部材41は係合部材43を押動しながら回転を続け、駆動ピン41cが長孔10bの上端に到達して回転を終了したときに、係合部材43が付勢ばねの付勢力によって時計回りに回転し、先羽根用第1駆動部材41の被係合部41bと係合部材43の係合部43aとが係合する。これにより、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とが一体的に結合された状態になる。
【0086】
先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とが結合されると、フォーカルプレンシャッタ100は、
図3に示す初期状態に戻る。
【0087】
以上説明したように、フォーカルプレンシャッタ100は、先羽根用第2駆動部材42に先羽根用第1駆動部材41と係合する係合部材43が設けられており、先羽根シャッタ動作の際に、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とが結合されて一体的に動作するように構成されている。このため、先羽根シャッタ動作(先羽根用第2駆動部材42の先羽根用駆動ばねの付勢力による回転)の終了前において、ブレーキ部材45によるブレーキ作用が先羽根用第2駆動部材42に及ぶと、先羽根用第2駆動部材42と結合された先羽根用第1駆動部材41にもその作用が及ぶ。前述したとおり、シャッタ羽根のバウンドを防止するためには、例えば、制動部材において駆動部材にブレーキ作用を与える接触面を長くするなどして、急激に外力を与えることなく2つの駆動部材を制動させて分離動作を抑制することが考えられるが、シャッタが大型化するという欠点も生じ得るため効果的な対策とはいえない。しかし、本実施形態にフォーカルプレンシャッタ100は、先羽根用第2駆動部材42に摩擦ブレーキがかかることによって、先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42とはともに制動されるため、フォーカルプレンシャッタ100を大型化させることなく先羽根のバウンドを抑制することができる。このように、フォーカルプレンシャッタ100は、先羽根用第1駆動部材41および先羽根用第2駆動部材42を効率的に制動させることができる。
【0088】
また、ノーマリーオープン方式の撮影では、先羽根シャッタ動作終了後に規制機構によって先羽根シャッタ動作終了位置に先羽根用第1駆動部材(従駆動部材)を保持しない従来のフォーカルプレンシャッタとは異なり、フォーカルプレンシャッタ100では、ノーマリーオープン方式の撮影とノーマリークローズ方式の撮影のいずれにおいても、先羽根シャッタ動作(先羽根用第2駆動部材42の先羽根用駆動ばねの付勢力による回転)の終了直前に先羽根用第1駆動部材41と先羽根用第2駆動部材42との結合が解除された直後に、電磁アクチュエータ72の動作により、規制部材71が先羽根用第1駆動部材41を先羽根シャッタ動作終了位置である長孔10bの下端近傍に保持し、先羽根用第1駆動部材41の戻り動作が抑止される。そして、ノーマリーオープン方式の撮影では撮影開始時に、ノーマリークローズ方式の撮影ではセット部材60のセット動作終了後に、先羽根用第1駆動部材41の保持を解除して戻り動作を許容する。このように、フォーカルプレンシャッタ100は、各部材が概ね同様に動作することによって、安定的にノーマリーオープン方式の撮影とノーマリークローズ方式の撮影を切り換えて実行することができる。
【0089】
以上の実施の形態および変形例は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。