(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エラストマー組成物からなるシート状の誘電層と、導電材料を含有する導電性組成物からなり、前記誘電層の表面及び裏面のそれぞれに前記誘電層を挟んで少なくとも一部が対向するよう形成された第1電極層及び第2電極層とを有し、前記第1電極層及び第2電極層の対向する部分を検出部とし、前記誘電層の表裏面の面積が変化するように可逆的に変形するセンサ本体と、
前記センサ本体の周囲を覆うように形成された被覆部材と、を備え、
前記被覆部材は、シリコーンゴムを含有するシリコーン組成物からなり、前記センサ本体の厚さ方向において、前記センサ本体の前記検出部と重なる領域の厚さが相対的に薄くなっていることを特徴とする静電容量型センサシート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る静電容量型センサシート(以下、センサシートともいう)及びセンサ装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願図面において、各図面の記載は発明の把握を容易にすべく模式的に記載したものであり、各部材の厚さと平面寸法の比率、各部材の厚さの比率等は現実のものとは異なる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るセンサ装置の一例を示す概略図である。
図2(a)は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサシートを構成するセンサ本体の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
図3(a)は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサシートの一例を示す斜視図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図4は、
図3(a)に示す静電容量型センサシートの分解斜視図である。
【0020】
本発明の実施形態に係るセンサ装置1は、
図1に示すように、センサシート2と、センサシート2と電気的に接続された計測器3と、計測器3での計測結果を表示するための表示器4とを備える。
センサシート2は、
図3(a)(b)に示すように、センサ本体10と、センサ本体10の表側及び裏側を含む周囲全体を覆うように形成された被覆部材20とを含む。
【0021】
センサ本体10は、
図2(a)(b)に示すように、エラストマー組成物からなるシート状の誘電層11と、誘電層11の表面(おもて面)に形成された表側電極層12Aと、誘電層11の裏面に形成された裏側電極層12Bと、表側電極層12Aに連結された表側配線13Aと、裏側電極層12Bに連結された裏側配線13Bとを備える。
更に、センサ本体10は、樹脂シート17の上面に銅箔からなる2つの電極接続部16A、16Bが形成されたシート状の接続部材18を備え、表側配線13Aと電極接続部16A、及び、裏側配線13Bと電極接続部16B、がそれぞれ導電性接着剤14A、14Bを介して電気的に接続されている。
また、誘電層11の表側及び裏側のそれぞれには、表側電極層12A及び裏側電極層12Bを覆うように表側保護層15A及び裏側保護層15Bが形成されている。また、電極接続部16A、16Bのそれぞれには、計測器3と接続するためのリード線19が半田付けされている。
【0022】
センサ本体10において、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは、同一の平面視形状を有しており、誘電層11を挟んで表側電極層12Aと裏側電極層12Bとは全体が対向している。センサ本体10では、表側電極層12Aと裏側電極層12Bとの対向した部分が検出部となる。
なお、本発明の実施形態に係るセンサシートにおいて、センサ本体が備える表側電極層と裏側電極層とは、必ずしも誘電層を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していればよい。
センサ本体10では、表側電極層12Aが第1電極層に、裏側電極層12Bが第2電極層に、それぞれ相当する。
【0023】
センサ本体10では、誘電層11がエラストマー組成物からなるため、面方向に変形(伸縮)可能であり、誘電層11が面方向に変形した際には、その変形に追従して表側電極層12A及び裏側電極層12B、並びに、表側保護層15A及び裏側保護層15B(以下、両者を合わせて単に保護層ともいう)が変形する。
そして、センサ本体10の変形に伴い、上記検出部の静電容量が誘電層11の変形量(電極層の面積変化)と相関をもって変化する。よって、センサ装置1では、上記検出部の静電容量の変化を検出することで、センサシート2の変形量を検出することができる。
【0024】
センサシート2は、
図3(a)、(b)及び
図4に示すように、シリコーンゴムを含有するシリコーン組成物からなる被覆部材20を備えている。被覆部材20は、センサ本体10の周囲を覆うように形成されている。そのため、使用時にセンサ本体10を汗や水(洗濯液)から保護することができる。
また、被覆部材20は、シリコーン組成物からなるため伸縮性に優れ、センサ本体10の伸縮に追従して伸縮する。
【0025】
センサシート2において、被覆部材20は、
図3(a)に示すように、センサ本体10の厚さ方向において、センサ本体10の検出部と重なる領域(図中、20a)では厚さが相対的に薄く、前記検出部と重なる領域の両端部の領域(図中、20b)に向かって厚さが徐々に厚くなるように形成されている。
これにより、センサシート2において、センサ本体10の検出部の伸縮が阻害されることをより確実に回避するとともに、使用時に把持又は固定されることとなるセンサシート2の伸縮方向の両端部の強度を高めることができる。
【0026】
計測器3は、静電容量Cを周波数信号Fに変換するためのシュミットトリガ発振回路3a、周波数信号Fを電圧信号Vに変換するF/V変換回路3b、電源回路(図示せず)を備えており、センサシート2の検出部で検出された静電容量Cを周波数信号Fに変換した後、更に電圧信号Vに変換し、表示器4に送信する。なお、後述するように、計測器3の構成はこのような構成に限定されるわけではない。
【0027】
表示器4は、モニター4a、演算回路4b、記憶部4cを備えており、計測器3で測定された検出部の静電容量Cの変化をモニター4aに表示させるとともに、上記静電容量Cの変化を記録データとして記憶する。
また、表示器4には、計測器3から受信した電圧信号Vに基づいて測定対象物の変形量を演算回路4bで算出し、モニター4aに測定対象物の変形量を表示してもよい。
表示器4としては、CPU、RAM、ROM、HDD等の記憶部、モニター、各種入出力インターフェイス等を備えたコンピュータを用いることができる。
【0028】
このようなセンサ装置1は、センサシート2を測定対象物に貼り付けて使用することができる。
そのため、センサシート2は、センサシート2を測定対象物に貼り付けるための粘着層が最外層に形成されていてもよい。
【0029】
センサ装置1は、例えば、センサシート2を生体表面に貼り付けて使用することにより、生体表面の変形を追跡することができる。このとき、センサシート2は、生体表面に直接貼り付けてもよいし、衣服やサポーター、包帯等の生体表面を被覆する被覆材を介して生体表面に間接的に貼り付けてもよい。
【0030】
センサシート2を皮膚等の生体表面に貼り付けて使用した場合、上記生体表面の変形(伸長・萎縮、膨張・収縮など)に追従して上記センサシートが伸縮するため、生体表面の変形量に応じて検出部の静電容量が変化する。そのため、センサ装置1は、上記検出部の静電容量を計測することにより、生体表面の変形量を測定することができる。そして、生体表面の変形量を測定することにより、生体表面の変形と相関する生命活動情報や生体の運動情報を取得することができる。
【0031】
本発明の実施形態に係るセンサ装置では、上記生命活動情報として、例えば、脈拍数(心拍数)、呼吸数、呼吸の大きさ等を測定することができる。
また、上記生体の運動情報は特に限定されず、運動時の筋肉の収縮によって、生体表面が伸縮する運動であればその運動状態を上記センサ装置により測定することができる。具体的には、例えば、関節を曲げた際の曲げ量(曲げ角度)や、発音・発声時の頬の動き、表情筋の動き、肩甲骨の動き、臀筋の動き、背中の動き、腰の曲がり具合、胸の膨らみ、筋肉の収縮による太ももやふくらはぎの収縮の大きさ、飲み込み時の喉の動き、足の動き、手の動き、指の動き、足裏の動き、まばたきの動き、皮膚の伸び易さ(しなやかさ)等を測定することができる。
【0032】
上記センサ装置により、脈拍数(心拍数)を測定する場合には、センサシートを生体表面の脈が触れるところ(例えば、橈骨動脈や頚動脈等)に貼り付け、所定の時間、静電容量を測定し続けることで心拍数を取得することができる。脈拍に合わせて皮膚が伸縮することとなり、その伸縮回数が脈拍数となるからである。
【0033】
上記センサ装置により、呼吸数を測定する場合には、センサシートを生体表面の胸の部分等に貼り付け、所定の時間、静電容量を測定し続けることで呼吸数を取得することができる。呼吸に合わせて胸部の皮膚が伸縮し、その伸縮回数が呼吸数と一致するからである。
【0034】
上記センサ装置により、関節の曲げ量を測定する場合には、センサシートを測定対象部位に貼り付け、測定対象部位を動かしつつ静電容量を測定することで測定対象部位の曲げ量を取得することができる。測定対象部位の動きに合わせてその部分の皮膚が伸縮することとなり、その伸縮量より測定対象部位の曲げ量を算出することができるからである。
【0035】
また、上記センサシートを口に周囲(頬等)に貼り付け、その状態で発声しながら(又は、実際には発声できない状態にあっても発声を試みながら)、静電容量を測定した場合には、発声音の種類に応じて口の周囲の皮膚が変形するため、その皮膚の変形に合わせて静電容量が変化することとなる。そのため、発声時の口の周囲の皮膚の動きと、静電容量の値やその変化の仕方との相関情報を得ることができる。
これにより、例えば、以下のことが可能となる。
表情筋のトレーニングとして、例えば、左右対称にセンサシートを貼り付けることで皮膚の動きを定量的に計測したり、リアルタイムに可視化したりすることができる。そのため、左右の信号波形を見ながら、信号が重なるように意識してトレーニングしたり、左右対称な自然な表情に機能回復させるリハビリトレーニングをしたりすることができる。
【0036】
また、上記センサシートを足首や足の甲に貼り付け、その状態で、「足踏みする」、「ジャンプする」、「つま先立ちする」、「静止する」等の運動を行いながら、静電容量を測定した場合には、足の動きに応じて皮膚が変形し、この皮膚の変形に応じて静電容量が変化することとなる。そのため、静電容量の値やその変化の仕方に基づいて足の動きを特定することができる。
【0037】
また、上記センサシートを手の平や手の甲に貼り付け、その状態で、「手を開く」、「手を閉じる」、「任意の指を立てる」、「じゃんけんをする」等の運動を行いながら、静電容量を測定した場合には、手の動きに応じて皮膚が変形し、この皮膚の変形に応じて静電容量が変化することとなる。そのため、静電容量の値や変化の仕方に基づいて手の動きを特定することができる。
【0038】
このように、上記センサ装置では、センサシートを皮膚等の生体表面に貼り付けて使用することにより、種々の生命活動情報や生体の運動情報を計測することができる。
上記センサ装置を用いて生命活動情報や生体の運動情報を計測する場合には、予め運動の種類と静電容量の値やその変化の仕方との関係を測定対象となる生体ごと校正情報として取得しておくことが好ましい。個体差があってもより正確に測定することができるからである。
【0039】
また、センサシート2を衣類やサポーター等の被覆材を介して貼り付けて使用した場合には、被覆材の変形情報を計測することもできる。
例えば、上記センサシートをトレーニング用アンダーウエアに貼り付け、その状態で運動を行った場合、身体の動きに追従してトレーニング用アンダーウエアの生地が伸ばされたり元の状態に戻されたりと生地が変形する。そのため、この生地の変形(伸縮)に応じて静電容量が変化することとなる。よって、上記センサ装置では、静電容量の値や変化の仕方に基づいてトレーニング用アンダーウエア(被覆材)の変形を計測することができる。
【0040】
上記センサ装置は、複数のセンサシートを備えていてもよい。この場合、同時に異なる箇所で同種の情報を取得してもよいし、同時に異なる種類の情報を取得してもよい。
また、上記センサシートを2個以上備える場合には、例えば、身体に左右対称(例えば、右足の甲と左足の甲)にセンサシートを貼り付け、その状態で足踏みを行うことにより、左右の足の動きのバランスを計測することができる。
また、例えば、左右の足首、膝関節、股関節にそれぞれセンサシートを貼り付け、その状態で歩行を行うことにより、左右の足の動きのバランス、各可動部位の曲げ量、各可動部位の動きのリズムを測定することができる。更には、例えば、靴形状やマット形状の圧力分布センサ製品等の既存の歩行計測機器と併用して用いることで、より高度な歩行運動の情報を得ることもできる。
これらの情報はスポーツトレーニングやリハビリトレーニングのメニューを決定する情報として有効である。
【0041】
また、上述したような生命活動情報や生体の運動情報の計測は、水中で行うこともできる。上記センサ装置は、センサシートがシリコーン組成物からなる被覆部材を備え、耐水性に優れるからである。
また、上記センサ装置では、センサシートを作業者に直接又は衣服を介して貼り付けて作業者の運動状態を計測することにより労働情報を取得することもできる。この場合、得られた労働情報は、例えば、労働管理等に役立てることもできる。
【0042】
勿論、本発明の実施形態に係るセンサ装置の使用方法は上述した生体表面に貼り付ける方法に限定されるわけではない。上記センサ装置は、例えば、エキスパンダーやリハビリチューブ、ゴムボール、ゴム風船、エアバック等の伸縮物や、クッションや靴底インナー等の柔軟物などを測定対象物とし、この測定対象物に上記センサシートを貼り付けて、測定対象物の変形を計測するためのセンサ装置として使用することもできる。
また、本発明の実施形態に係るセンサ装置では、上記センサシートを電動義手義足の筋電センサのインターフェイスの代替品として利用することができる。
また、本発明の実施形態に係るセンサ装置では、上記センサシートが、重度心身障害者の入力インターフェイスの入力端末としても使用することができる。
また、本発明の実施形態に係るセンサ装置では、上記センサシートを手袋の指部に貼り付けて、この手袋をバーチャル機器等のグローブ型インターフェイスとして使用することもできる。
【0043】
更に、本発明の実施形態に係るセンサ装置は、上記センサシートをベッドのシーツやマットレス、枕、クッションなど長時間身体に触れ、汗による被水する可能性がある用具に貼り付けて使用することもできる。この場合、シーツやマットレス、枕、クッション等の変形に基づいて取得された情報を、例えば、在床・離床の情報や、使用者の位置情報の取得に役立てることもできる。
【0044】
(第2実施形態)
本発明の実施形態に係る静電容量型センサシートでは、第1実施形態に静電容量型センサシートにおいて、更に、シート状の非伸縮性部材を備えていてもよい。
図5(a)は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサシートの別の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)に示した静電容量型センサシートのC−C線断図である。
図6は、
図5(a)に示す静電容量型センサシートの分解斜視図である。
【0045】
図5に示すセンサシート102は、センサ本体10と、センサ本体10の周囲に形成された被覆部材20と、センサ本体10と被覆部材20との間に設けられたPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる非伸縮性部材21A〜21Cとを含む。
センサシート102において、センサ本体10及び被覆部材20は、第1実施形態のセンサシートにおけるセンサ本体及び被覆部材のそれぞれと同様である。
【0046】
非伸縮性部材21A(第1の非伸縮性部材)は、センサ本体10の裏側であって、センサ本体10の厚さ方向(
図5(a)中、上下方向)においてセンサ本体10の電極接続部16A及び16Bと重なる位置に設けられている、平面視した際に接続部材18よりも少し大きなサイズを有している。
非伸縮性部材21Aを設けることにより、使用時における電極接続部16A及び16Bの破損をより確実に回避することができる。
また、非伸縮性部材21Aは、平面視した際にセンサ本体10の検出部と重ならない位置に設けられている。検出部の伸縮を阻害しないためである。
更に、非伸縮性部材21Aは、センサ本体10及び被覆部材20のそれぞれに接着剤層(図示せず)を介して固定されている。
【0047】
また、センサ本体10では、センサ本体10の裏側であって、センサ本体10の検出部を挟んで、非伸縮性部材21Aと反対側の位置に非伸縮性部材21B(第2の非伸縮性部材)が設けられている。この非伸縮性部材21Bは、センサ本体10の厚さ方向においてセンサ本体10の検出部と重ならない位置に設けられている。非伸縮性部材21Bによって、検出部の伸縮が阻害されないためである。
更に、非伸縮性部材21Bは、センサ本体10及び被覆部材20のそれぞれに接着剤層(図示せず)を介して固定されている。
【0048】
このような非伸縮性部材21A、21Bを備えたセンサシート102では、センサ本体10の両端が非伸縮性部材21A、21Bを介して被覆部材20に固定されている。このように、センサ本体10の両端が非伸縮性部材21A、21Bを介して被覆部材20に固定されていると、センサシート102の伸縮時に、被覆部材20とセンサ本体10との界面でズレが生じることが無く、被覆部材20の伸縮に、センサ本体10がより確実に追従することができる。
【0049】
更に、センサ本体10では、センサ本体10の表側であって、センサ本体10の厚さ方向において表側配線13A及び裏側配線13Bと重なる位置にも、接着剤層(図示せず)を介して非伸縮性部材21Cが形成されている。
非伸縮性部材21Cを設けることにより、表側配線13A及び裏側配線13B、並びに、導電性接着剤14A、14Bを保護し、この部分の伸縮を抑制することができる。
その結果、センサ本体10が伸縮する際に、表側配線13Aや裏側配線13Bと、導電性接着剤14A、14Bとの接合部分での破断を防止することができる。
また、非伸縮性部材21Cは、平面視した際にセンサ本体10の検出部と重ならない位置に設けられている。検出部の伸縮を阻害しないためである。
【0050】
本発明の実施形態に係るセンサシートは、非伸縮性部材を有することにより、上述した効果を享受することができる。
特に、センサ本体10の厚さ方向においてセンサ本体10の電極接続部16A及び16Bと重なる位置に非伸縮性部材21Aを形成することは、センサシートの耐久性を向上させる点で有用である。
【0051】
(第3実施形態)
本実施形態に係る静電容量型センサシートは、センサ本体として、誘電層(第1誘電層)及びその両面に形成された第1電極層及び第2電極層に加えて、第2誘電層及び第3電極層を備えたセンサ本体を備える以外は、第1実施形態に係る静電容量型センサシートと同様である。
以下、本実施形態のセンサシートが備えるセンサ本体について説明する。
図7(a)は、本発明の実施形態に係る静電容量型センサシートを構成するセンサ本体の別の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のD−D線断面図である。
【0052】
図7(a)及び(b)に示すセンサ本体40は、エラストマー組成物からなるシート状の第1誘電層41Aと、第1誘電層41Aの表面(おもて面)に形成された第1電極層42Aと、第1誘電層41Aの裏面に形成された第2電極層42Bと、第1誘電層41Aの表側に第1電極層42Aを覆うように積層された第2誘電層41Bと、第2誘電層41Bの表面に形成された第3電極層42Cとを備える。
また、センサ本体40は、第1電極層42Aに連結された第1配線43Aと、第2電極層42Bに連結された第2配線43Bと、第3電極層42Cに連結された第3配線43Cとを備える。
更に、センサ本体40は、センサ本体40は、上面に銅箔からなる3つの電極接続部46A、46B、46Cが樹脂シート47上に形成された接続部材48を備え、第1配線43Aと電極接続部46A、第2配線43Bと電極接続部46B、及び、第3配線43Cと電極接続部46Cがそれぞれ導電性接着剤44A、44B、44Cを介して電気的に接続されている。
また、センサ本体40では、第1誘電層41Aの裏側及び第2誘電層41Bの表側のそれぞれに裏側保護層45B及び表側保護層45Aが形成されている。また、また、電極接続部46A、46B、46Cのそれぞれには、計測器3と接続するためのリード線49が半田付けされている。
【0053】
ここで、第1電極層42A〜第3電極層42Cは、同一の平面視形状を有している。また、第1電極層42Aと第2電極層42Bとは第1誘電層41Aを挟んで全体が対向しており、第1電極層42Aと第3電極層42Cとは第2誘電層41Bを挟んで全体が対向している。センサ本体40では、第1電極層42Aと第2電極層42Bとの対向した部分、及び、第1電極層42Aと第3電極層42Cとの対向した部分が検出部となり、第1電極層42Aと第2電極層42Bとの対向した部分の静電容量と第1電極層42Aと第3電極層42Cとの対向した部分の静電容量との和が検出部の静電容量となる。
【0054】
センサ本体40を備えたセンサシートは、ノイズによる測定誤差を排除し、より正確に静電容量の変化を測定するのに適している。
これについてもう少し詳しく説明する。本発明の実施形態に係るセンサ装置を用いて生体表面の変形を追跡する場合、生体表面は導体であるため、センサ本体(電極層)が生体と近接していること自体がノイズの発生原因となることがある。
これに対して、センサ本体40を有するセンサシートを備えたセンサ装置では、ノイズによる測定誤差をより確実に排除することができる。
本実施形態のセンサシートでは、第2実施形態に係るセンサシートと同様、非伸縮性部材を備えていてもよい。
【0055】
以下、本発明の実施形態に係る静電容量型センサシートが備える各部材について説明する。
<センサ本体>
<<誘電層>>
上記誘電層はエラストマー組成物からなるシート状物であり、その表裏面の面積が変化するように可逆的に変形することができる。上記センサ本体において、シート状の誘電層の表裏面とは、誘電層の表(おもて)面及び裏面を意味する。
上記エラストマー組成物としては、エラストマーと、必要に応じて他の任意成分とを含有するものが挙げられる。
上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらのなかでは、ウレタンゴム、シリコーンゴムが好ましい。永久歪み(または永久伸び)が小さいからである。更に、シリコーンゴムに比べ、カーボンナノチューブとの密着性に優れる点から、ウレタンゴムが特に好ましい。
【0056】
上記ウレタンゴムは、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分とが反応してなるものである。具体例としては、例えば、オレフィン系ポリオールをポリオール成分とするオレフィン系ウレタンゴム、エステル系ポリオールをポリオール成分とするエステル系ウレタンゴム、エーテル系ポリオールをポリオール成分とするエーテル系ウレタンゴム、カーボネート系ポリオールをポリオール成分とするカーボネート系ウレタンゴム、ひまし油系ポリオールをポリオール成分とするひまし油系ウレタンゴム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、上記ウレタンゴムは、2種以上の上記ポリオール成分を併用したものであってもよい。
【0057】
上記オレフィン系ポリオールとしては、例えば、エポール(出光興産社製)等が挙げられる。
また、上記エステル系ポリオールとしては、例えば、ポリライト8651(DIC社製)等が挙げられる。
また、上記エーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、PTG−2000SN(保土谷化学工業社製)、ポリプロピレングリコール、プレミノールS3003(旭硝子社製)、パンデックスGCB−41(DIC社製)等が挙げられる。
【0058】
上記イソシアネート成分としては特に限定されず、従来公知のイソシアネート成分を用いることができる。
また、上記ウレタンゴムを合成する際には、その反応系中に必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、触媒、加硫促進剤等を加えてもよい。
【0059】
また、上記エラストマー組成物は、エラストマー以外に、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電性フィラー等を含有してもよい。
【0060】
上記誘電層の平均厚さは、静電容量Cを大きくして検出感度の向上を図る観点、及び、測定対象物への追従性の向上を図る観点から、10〜1000μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
【0061】
上記誘電層は、一軸方向において、長さが無伸長状態から30%以上増大するように変形可能であることが好ましい。このような誘電層は、測定対象物に貼り付けて使用する場合に、測定対象物の変形に追従して変形するのに適している。
ここで、長さが30%以上増大するように変形可能であるとは、荷重をかけて誘電層を伸長させた場合、長さを30%増大させても(伸長率30%としても)破断することがなく、かつ、荷重を解放すると元の状態に復元する(即ち、弾性変形範囲にある)ことを意味する。
上記誘電層の一軸方向における伸長可能な伸長率は、50%以上であることがより好ましく、100%以上であることが更に好ましく、200%以上であることが特に好ましい。
上記誘電層の一軸方向における伸長可能な伸長率は、誘電層の設計(材質や形状等)によって制御することができる。
【0062】
上記誘電層の常温における比誘電率は、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。誘電層の比誘電率が2未満であると、静電容量Cが小さくなり、センサシートとして充分な感度が得られないおそれがある。
【0063】
上記誘電層のヤング率は、0.1〜10MPaであることが好ましい。ヤング率が0.1MPa未満であると、誘電層が軟らかすぎ、高品質な加工が難しく、充分な測定精度が得られないことがある。一方、ヤング率が10MPaを超えると、誘電層が硬すぎ、測定対象物が変形しようとした際に、その変形を阻害するおそれがある。
【0064】
上記誘電層の硬さは、JIS K 6253に準拠したタイプAデュロメータを用いた硬さ(JIS A硬さ)で、0〜30°であるか、又は、JIS K 7321に準拠したタイプCデュロメータを用いた硬さ(JIS C硬さ)で10〜55°が好ましい。
誘電層が軟らかすぎると高品質な加工が難しく、充分な測定精度を確保することができない場合がある。一方、誘電層が硬すぎると、測定対象物が変形しようとした際に、その変形を阻害するおそれがある。
【0065】
上記誘電層の引張特性は、破断伸びが200%以上で、100%伸長時の引張応力が0.05MPa以下が好ましい。破断伸びが小さいと測定可能範囲が小さくなり、また、100%引張応力が大きいと、測定対象物自体の変形を阻害してしまうことがある。
上記誘電層の引張特性は、JIS K 6251に準拠した試験方法で測定する。具体的には、誘電層の組成と同一の組成で、厚さ2mmがウレタンシートを作製し、このシートを3号形ダンベル状に打ち抜いて試験片とし、この試験片を引張試験機で測定する。
【0066】
なお、上記センサシートが、複数の誘電層を有する場合、各誘電層は必ずしも同一組成のエラストマー組成物から構成されている必要はないが、同一組成のエラストマー組成物から構成されていることが好ましい。伸縮時に同様の挙動を示すからである。
【0067】
<<電極層>>
上記電極層は、導電材料を含有する導電性組成物からなる。
ここで、各電極層のそれぞれは、同一組成の導電性組成物から構成されていてもよいし、異なる組成の導電性組成物から構成されていてもよい。但し、同一組成の導電性組成物から構成されていることが好ましい。
上記導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、導電性高分子等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記導電材料としては、カーボンナノチューブが好ましい。誘電層の変形に追従して変形する電極層の形成に適しているからである。
【0068】
上記カーボンナノチューブとしては公知のカーボンナノチューブを使用することができる。上記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよいし、2層カーボンナノチューブ(DWNT)又は3層以上の多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよい(本明細書では、両者を合わせて単に多層カーボンナノチューブと称する)。更には、層数の異なるカーボンナノチューブを2種以上併用してもよい。
また、各カーボンナノチューブの形状(平均長さや繊維径、アスペクト比)も特には限定されない。よって、カーボンナノチューブは、センサ装置の使用目的や、センサシートに要求される導電性や耐久性、更には電極層を形成するための処理や費用を総合的に判断して適宜選択すればよい。
【0069】
上記カーボンナノチューブの平均長さは、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。このような繊維長さが長いカーボンナノチューブを用いて形成された電極層は、導電性に優れ、誘電層の変形に追従して変形した際(特に伸長した際)に電気抵抗がほとんど増大せず、更に、繰り返し伸縮しても電気抵抗のバラツキが小さい、との優れた特性を有するからである。
これに対し、カーボンナノチューブの平均長さが10μm未満では、電極層の変形に伴って電気抵抗が増大したり、電極層を繰返し伸縮させた際に電気抵抗のバラツキが大きくなったりする場合がある。特に、センサシート(誘電層)の変形量が大きくなった場合にこのような不都合が発生しやすくなる。
【0070】
上記カーボンナノチューブの平均長さの好ましい上限は1000μmである。平均長さが1000μmを超えるカーボンナノチューブは、現時点では、その製造、入手が困難である。また、後述するように、カーボンナノチューブの分散液を塗布して電極層を形成する場合に、カーボンナノチューブの分散性が不充分なため導電パスが形成されにくく、結果的に電極層の導電性が不充分となることが懸念される。
【0071】
上記カーボンナノチューブの平均長さの下限は100μmがさらに好ましく、上限は600μmがさらに好ましい。上記カーボンナノチューブの平均長さが上記範囲内にあると、導電性に優れ、伸長時に電気抵抗がほとんど増大せず、繰り返し伸縮時に電気抵抗のバラツキが小さい、との優れた特性を高いレベルでより確実に確保することができる。
【0072】
上記カーボンナノチューブの繊維長さは、カーボンナノチューブを電子顕微鏡で観察し、その観察画像から測定すればよい。
また、その平均長さは、例えば、カーボンナノチューブの観察画像から無作為に選んだ10箇所のカーボンナノチューブの繊維長さに基づき平均値を算出すればよい。
【0073】
上記カーボンナノチューブの平均繊維径は特に限定されないが、0.5〜30nmが好ましい。
上記繊維径が0.5nm未満では、カーボンナノチューブの分散が悪くなり、その結果、導電パスが広がらず、電極層の導電性が不充分になることがあり、一方、30nmを超えると、同じ重量でもカーボンナノチューブの本数が少なくなり、導電性が不充分になることがある。カーボンナノチューブの平均繊維径は5〜20nmがより好ましい。
【0074】
上記カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブの方が単層カーボンナノチューブよりも好ましい。
単層カーボンナノチューブを用いた場合、上述した好ましい範囲の平均長さを有するカーボンナノチューブを用いた場合でも、電気抵抗が高くなったり、伸長時に電気抵抗が大きく増大したり、繰り返し伸縮時に電気抵抗が大きくばらついたりすることがある。
これについては次のように推測している。
単層カーボンナノチューブは、通常、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとの混合物として合成されるため、この半導体性カーボンナノチューブの存在が、電気抵抗が高くなったり、伸長時に電気抵抗が大きく増大したり、繰り返し伸縮時に電気抵抗が大きくばらついたりする原因となっていると推測している。
なお、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとを分離し、平均長さの長い金属性の単層カーボンナノチューブを用いれば、平均長さの長い多層カーボンナノチューブを用いた場合と同様の電気特性を備えた電極層を形成することができる可能性がある。しかしながら、金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブとの分離は容易ではなく(特に、繊維長さの長いカーボンナノチューブにおいて)、両者の分離には煩雑な作業が必要となる。そのため、電極層を形成する際の作業容易性、及び、経済性の観点からも上述した通り、上記カーボンナノチューブとしては多層カーボンナノチューブが好ましい。
【0075】
上記カーボンナノチューブは、炭素純度が99重量%以上であることが好ましい。カーボンナノチューブは、製造工程において、触媒金属や分散剤等が含まれることがあり、このようなカーボンナノチューブ以外の成分(不純物)を多量に含有するカーボンナノチューブを用いた場合、導電性の低下や、電気抵抗のバラツキを引き起こすことがある。
【0076】
上記カーボンナノチューブの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法で製造されたものであればよいが、基板成長法により製造されたものが好ましい。
基板成長法は、CVD法の1種であり、基板上に塗布した金属触媒に炭素源を供給することで成長させてカーボンナノチューブを製造する方法である。基板成長法は、比較的繊維長さが長く、かつ、繊維長さの揃ったカーボンナノチューブを製造するのに適した製造方法である。そのため、上記導電性組成物に使用するカーボンナノチューブとして適している。
上記カーボンナノチューブが基板製造法により製造されたものである場合、カーボンナノチューブの繊維長さは、CNTフォレストの成長長さと実質的に同一である。よって、電子顕微鏡を用いて繊維長さを測定する場合は、CNTフォレストの成長長さを測定すればよい。
【0077】
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料以外に、例えば、バインダー成分を含有していてもよい。
上記バインダー成分はつなぎ材料として機能し、上記バインダー成分を含有させることにより、誘電層との密着性、及び、電極層自体の強度を向上させることができ、更に、後述の方法で電極層を形成する際にカーボンナノチューブ等の導電材料の飛散を抑制することができるため、電極層を形成する際の安全性も高めることができる。
【0078】
上記バインダー成分としては、例えば、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。
また、上記バインダー成分としては、生ゴム(未加硫の天然ゴム及び合成ゴム)も使用することができ、このように比較的弾性の弱い材料を用いることで、誘電層の変形に対する電極層の追従性も高めることができる。
上記バインダー成分は、特に、誘電層を構成するエラストマーと同種のものが好ましい。誘電層と電極層との密着性を顕著に向上させることができるからである。
【0079】
上記導電性組成物は、カーボンナノチューブ等の導電材料及びバインダー成分以外に、更に各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、導電材料の分散性を高めるための分散剤、バインダー成分のための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、更には、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。
上記センサシートでは、上記導電材料がカーボンナノチューブである場合、電極層が実質的にカーボンナノチューブのみで形成されていてもよい。この場合も誘電層との間で密着性を確保することができる。このとき、カーボンナノチューブと誘電層とはファンデルワールス力等により強固に密着することとなる。
【0080】
上記電極層中のカーボンナノチューブの含有量は導電性が発現する濃度であれば特に限定されず、バインダー成分を含有する場合にはバインダー成分の種類によっても異なるが、電極層の全固形成分に対して0.1〜100重量%であることが好ましい。
また、カーボンナノチューブの含有量を高めれば、電極層の導電性を向上させることができる。そのため、電極層を薄くしても要求される導電性を確保することができ、その結果、電極層を薄くしたり、電極層の柔軟性を確保したりすることがより容易になる。
【0081】
上記電極層の平均厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。この場合、電極層が誘電層の変形に対してより優れた追従性を発揮することができる。
一方、上記平均厚さが0.1μm未満では、導電性が不足し、センサシートとしての測定精度が低下するおそれがある、一方、上記平均厚さが、10μmを超えるとカーボンナノチューブ等の導電材料の補強効果によりセンサシートが硬くなり、センサシートの伸縮性が低下し、生体表面に直接又は被覆材を介して貼り付けた際に生体表面の変形が阻害されることがある。
【0082】
本発明の実施形態に係るセンサシートにおいて、「電極層の平均厚さ」は、例えば、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製、VK−9510)を用いて測定することができる。具体的には、誘電層の表面を電極層の厚さ方向を0.01μm刻みでスキャンし、その3D形状を測定した後、誘電層上の電極層が積層されている領域及び積層されていない領域において、それぞれ縦200×横200μmの矩形領域の平均高さを計測し、その平均高さの段差を電極層の平均厚さとすればよい。
【0083】
<<接続部材>>
上記接続部材は、シート状の基材と、上記基材の上面に形成された複数の電極接続部とからなる。
上記シート状の基材としては、例えば、樹脂フィルムや樹脂板、不織布等の布生地等を使用することができる。また、上記基材は、金属や繊維等からなるメッシュであってもよい。
上記樹脂フィルムや樹脂板の樹脂材料としては特に限定されず、PET等のポリエステル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
【0084】
上記電極接続部としては、例えば、銅箔等の金属箔からなるもの等が挙げられる。更に、上記電極接続部は銅箔以外にも、例えば、金属材料からなる印刷層やメッキ層であってもよい。
また、上記電極接続部は、例えば、接着剤などを介して、上記基材に固定されている。
【0085】
上記電極接続部は、誘電層に積層され、電極層に接続された配線(表側配線や裏側配線、第1〜第3配線)と導電性接着剤を介して電気的に接続されている。
上記導電性接着剤としては特に限定されず、従来公知の導電性接着剤を使用することができ、市販品も使用することができる。
【0086】
<被覆部材>
本発明の実施形態に係るセンサシートでは、センサ本体の周囲に被覆部材が形成されており、これにより上記センサシートに優れた耐水性を付与している。
加えて、上記被覆部材を形成させることにより、上記センサシートは下記の効果を奏することとなる。
既に説明した通り、上記センサシートが備えるセンサ本体において、電極層はカーボンナノチューブのみからなる場合がある。この場合、誘電層と電極層との密着性は、電極層がバインダー成分を含有する場合に比べて劣ることとなる。そして、誘電層と電極層との密着性が劣る場合、センサシートの使用時、特に、測定対象物に貼り付けたセンサシートを剥がす際に、誘電層と電極層のとの間で剥離が発生してしまう可能性が高まる。
これに対して、上記被覆部材を備えたセンサシートでは、被覆部材が、センサ本体を周囲から押さえつけているため、誘電層と電極層との間での剥離がより発生しにくくなる。
そのため、上記センサシートを繰り返し使用した場合にも、センサシートの性能が劣化することを回避することができる。
【0087】
上記被覆部材は、シリコーンゴムを含有するシリコーン組成物からなる。
上記シリコーンゴムとしては、付加型シリコーンゴム、縮合型シリコーンゴム及び過酸化物型シリコーンゴムのいずれも使用することができる。
上記シリコーンゴムとしては、市販品を使用することもができる。
具体的は、例えば、X−32−2428−4、KE−1308,1241(いずれも信越化学工業社製)、TSE3562(MOMENTIVE社製)、VP7550、SILPURAN2110,2120,2130(いずれも旭化成ワッカーシリコーン社製)、MDX4−4210、Q7−9120(いずれも東レ・ダウコーニング社製)等を使用することができる。
【0088】
上記第シリコーン組成物は、シリコーンゴム以外に、シリコーンオイル、増粘剤、希釈剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、プライマー等を含有していてもよい。
【0089】
上記被覆部材をセンサ本体の伸縮を阻害しないことが好ましく、その点でもシリコーン組成物からなる被覆部材は好適である。
被覆部材の好ましい伸縮特性は、センサ本体や被覆部材の形状やサイズにもよるため、一概にはいえないが、例えば、被覆部材とセンサ本体とが下記の関係にあることが好ましい。
即ち、センサ本体のみを任意の伸長率(但し、弾性変形範囲内に伸長率)で伸長させた際の引張応力と、被覆部材のみをセンサ本体と同一の伸長率で伸長させた際の引張応力が近いことが好ましく、センサ本体の引張応力に対する被覆部材の引張応力の割合が、20〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。
また、上記の関係は、特にセンサシートの伸長率が5〜100%の範囲において満たされることが好ましい。
【0090】
上記被覆部材(シリコーン組成物の成形物)の具体的な引張特性について、破断伸びは200%以上が好ましく、100%伸長時の引張応力は0.05MPa以下が好ましい。
破断伸びが小さいとセンサシートの測定可能範囲が小さくなり、また、100%引張応力が大きいと、測定対象物自体の変形を阻害してしまうことがある。
また、上記被覆部材がセンサシートに占める割合(体積基準)は、誘電層(及び保護層)がセンサシートに占める割合(体積基準)に比べて、例えば、10倍程度となることがある。
このような場合、上記被覆部材(シリコーン組成物の成形物)の100%伸長時の引張応力は0.01MPa以下がより好ましい。
【0091】
上記被覆部材(シリコーン組成物の成形物)は、荷重を掛けて100%伸長させた状態を15分間維持し、その後、荷重を解除した際の伸長方向の長さが、荷重を掛ける前の長さの100〜105%であることが好ましい。つまり、永久ひずみ(JIS K 6273に準拠)が5%以下であることが好ましい。
105%を超えると、センサシートを繰り返し使用した際に、センサ性能(測定精度)が大きく低下することがある。
上述した伸長後の長さは、伸長前の長さの100%の近いほど好ましい。
【0092】
上記被覆部材(シリコーン組成物の成形物)は、成形物を水中に48時間浸漬させた後の引張強度、及び破断伸びのそれぞれの変化率(水中に浸漬する前の成形物に対する変化率)の絶対値が10%以下であることが好ましい。
上記変化率が10%を超えると、上記被覆部材は耐水性に劣り、汗に触れた際や、洗濯した際にセンサ性能(測定精度)の低下を引き起こすことがある。
上記変化率は、小さければ小さいほど好ましい。
【0093】
<<非伸縮性部材>>
本発明の実施形態に係るセンサシートは、非伸縮性部材を備えていてもよい。
上記非伸縮性部材を備える場合、第2実施形態で説明したように、3箇所に備えていても良いが、必ずしも3箇所で備えている必要はなく、1箇所又は2箇所のみが備えていてもよい。例えば、第2の伸縮性部材と第3の伸縮性部材のみ備えても良い。しかしながら、本発明の実施形態に係るセンサシートでは、少なくとも第1の非伸縮性部材を備えていることが好ましく、第1の非伸縮性部材と第2の非伸縮性部材とを備えていることがより好ましく、第2実施形態のように3箇所に備えていることが特に好ましい。
また、4箇所以上に非伸縮性部材を備えていても良く、例えば、第2実施形態の3箇所に加えて、センサ本体の表側であって、センサ本体の電極接続部側と反対側の端部にも備えていてもよい。
【0094】
上記非伸縮性部材は、非伸縮性の材料からなるものであれば特に限定されず、例えば、非伸縮性の布生地、非伸縮性の樹脂シート等が挙げられる。
ここで、非伸縮性とは、引張応力3.5MPa程度で実質的に伸長しない性質のこといる。上記センサシートにおいて、伸長時の想定される好ましい最大引張応力は3.5MPa程度だからである。そのため、上記非伸縮性部材は、例えば、10MPa程度の応力によって伸長・破断しても構わない。
より具体的には、上記非伸縮性部材は、降伏応力が3.5MPa以上で、3.5MPaの力をかけられた時の伸びが1%以下であることが好ましい。上記センサシートにおいて、非伸縮性部材の役割を確実に果たすことができるからである。上記非伸縮性部材の引張強度及び破断伸びは、JIS K 7127に準じて測定すればよい。
【0095】
上記非伸縮性の樹脂シートとしては、例えば、PET等のポリエステル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等からなる樹脂シートが挙げられる。これらの中では、PETが好ましい。
上記樹脂シートの厚さは、4〜20μmが好ましい。センサシートを皮膚や衣服に貼り付ける際に、上記非伸縮性部材が屈曲可能であれば、貼付箇所の形状に追従しやすくなる。
【0096】
また、本発明の実施形態に係るセンサシートが上記第1の非伸縮性部材を備える場合、この第1の非伸縮性部材は、上記接続部材の基材を兼ねていてもよい。即ち、上記第1の非伸縮性部材の上面に直接電極接続部が形成されていてもよい。
【0097】
<<その他>>
上記センサ本体は、
図2、7に示した例のように、必要に応じて、表側及び/又は裏側の最外層に保護層が積層されていてもよい。上記保護層を設けることにより、センサシートの導電性を有する箇所(電極層等)を保護したり、センサシートの強度や耐久性を高めたりすることができる。
上記保護層の材質は特に限定されず、その要求特性に応じて適宜選択すればよい。その具体例としては、例えば、上記誘電層の材質と同様のエラストマー組成物等が挙げられる。
【0098】
上記センサシートは、センサシートの裏側の最外層に粘着層が形成されていてもよい。これにより、粘着層を介して上記センサシートを生体表面等の測定対象物に貼り付けることができる。
上記粘着層としては特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着材、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等からなる層が挙げられる。
ここで、各粘着剤は、溶剤型であってもよいし、エマルジョン型であってもよいし、ホットメルト型でもよい。上記粘着剤は、センサ装置の使用態様等に応じて適宜選択して用いればよい。ただし、上記粘着層は、上記誘電層の伸縮を阻害しない柔軟性が必要である。
【0099】
上記センサシートは、無伸長状態から一軸方向に100%伸長させた後、無伸長状態に戻すサイクルを1サイクルとする伸縮を1000サイクル繰返した際に、2サイクル目の100%伸長時の上記電極層の電気抵抗に対する、1000サイクル目の100%伸長時の上記電極層の電気抵抗の変化率([1000サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]−[2サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]の絶対値〕/[2サイクル目、100%伸長時の電気抵抗値]×100)が小さいことが好ましい。具体的には、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0100】
ここで、1サイクル目ではなく、2サイクル目の以降の電極層の電気抵抗を評価対象としている理由は、未伸長状態から伸長させた1回目(1サイクル目)の伸長時には、伸長時の電極層の挙動(電気抵抗の変動の仕方)が2回目(2サイクル目)以降の伸縮時と大きく異なるからである。この理由については、センサシートを作製した後、1回伸長させることによって初めて電極層を構成するカーボンナノチューブ等の状態が安定化するからだと推測している。
【0101】
次に、本発明の実施形態に係るセンサシートの製造方法について説明する。
上記センサシートは、例えば、下記工程を経ることにより製造することができる。ここでは、カーボンナノチューブを含む導電性組成物を用いて電極層を形成する場合を例に説明する。
(1)エラストマー組成物からなる誘電層を作製する工程(工程(1))、及び、
(2)カーボンナノチューブ及び分散媒を含む組成物を誘電層に塗布し、電極層を形成する工程(工程(2))、
(3)工程(1)及び(2)を経て作製したセンサ本体の周囲を被覆部材で覆う工程(工程(3))
を経ることより製造することができる。
【0102】
[工程(1)]
本工程では、エラストマー組成物からなる誘電層を作製する。
まず、原料組成物としてエラストマー(又はその原料)に、必要に応じて、鎖延長剤、架橋剤、加硫促進剤、触媒、誘電フィラー、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤を配合した原料組成物を調製する。次に、この原料組成物を成形することにより誘電層を作製する。なお、成形方法としては従来公知の手法を採用することができる。
【0103】
具体的には、例えば、ウレタンゴムを含む誘電層を成形する場合には下記の方法等を用いることができる。
まず、ポリオール成分、可塑剤及び酸化防止剤を計量し、加熱、減圧下において一定時間撹拌混合し、混合液を調製する。次に、混合液を計量し、温度を調整した後、触媒を添加しアジター等で撹拌する。その後、所定量のイソシアネート成分を添加し、アジター等で撹拌後、即座に混合液を
図8に示す成形装置に注入し、保護フィルムでサンドイッチ状にして搬送しつつ架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのシートを得る。その後、炉で一定時間後架橋させることで誘電層を製造することができる。
【0104】
図8は、誘電層の作製に使用する成形装置の一例を説明するための模式図である。
図8に示した成形装置30では、原料組成物33を、離間して配置された一対のロール32、32から連続的に送り出されるポリエチレンテレフタレート(PET)製の保護フィルム31の間隙に流し込み、その間隙に原料組成物33を保持した状態で硬化反応(架橋反応)を進行させつつ、加熱装置34内に導入し、原料組成物33を一対の保護フィルム31間で保持した状態で熱硬化させ、シート状の誘電層35を成形する。
【0105】
上記誘電層は、原料組成物を調製した後、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレードなどの汎用の成膜装置や成膜方法を用いて作製してもよい。
【0106】
[工程(2)]
本工程では、カーボンナノチューブ及び分散媒を含む組成物(カーボンナノチューブ分散液)を塗布し、その後、乾燥処理にて分散媒を除去することにより、上記誘電層と一体化された電極層を形成する。
【0107】
具体的には、まず、カーボンナノチューブを分散媒に添加する。このとき、必要に応じて、バインダー成分(又は、バインダー成分の原料)等の上述した他の成分や分散剤を更に添加してもよい。
次に、カーボンナノチューブを含む各成分を湿式分散機を用いて分散媒中に分散(又は溶解)させることより塗布液(カーボンナノチューブ分散液)を調製する。ここでは、例えば、超音波分散機、ジェットミル、ビーズミルなど既存の分散機を用いて分散させればよい。
【0108】
上記分散媒としては、例えば、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アルコール類、水等が挙げられる。これらの分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0109】
上記塗布液において、カーボンナノチューブの濃度は、0.01〜10重量%が好ましい。上記濃度が0.01重量%未満では、カーボンナノチューブの濃度が薄すぎて繰返し塗布する必要が生じる場合がある。一方、10重量%を超えると、塗布液の粘度が高くなりすぎ、また再凝集によりカーボンナノチューブの分散性が低下し、均一な電極層を形成することが困難となる場合がある。
【0110】
続いて、スプレーコート等により上記誘電層の表面の所定の位置に塗布液を塗布して乾燥させる。このとき、必要に応じて、誘電層表面の電極層を形成しない位置をマスキングしてから上記塗布液を塗布してもよい。
上記塗布液の乾燥条件は特に限定されず、分散媒の種類やエラストマー組成物の組成等に応じて適宜選択すればよい。
また、上記塗布液を塗布する方法は、スプレーコートに限定されるわけではなく、その他、例えば、スクリーン印刷法、インクジエット印刷法等も採用することができる。
【0111】
上記(1)及び(2)の工程を経て誘電層及び電極層を形成した後には、更に、必要に応じて、上記電極層と接続された配線を形成する。
上記電極層と接続された配線の形成は、例えば、上記電極層の形成と同様の方法を用いて、所定の箇所に上記カーボンナノチューブ分散液(塗布液)を塗布し、乾燥させること等により行うことができる。また、上記配線の形成は上記電極層の形成と同時に行ってもよい。
【0112】
その後、上記電極層と外部の計測器との接続を仲介するための電極接続部やリード線を形成する。
具体的には、例えば、まず、樹脂シートの上面に銅箔等を貼り付けて電極接続部を形成することにより、接続部材を作製し、この接続部材をセンサ本体の裏側端部に取り付ける。その後、上記配線と上記電極接続部とを導電性接着剤で接続し、更に、リード線を電極接続部に半田付けする。
【0113】
また、
図7に示したような構成を備えたセンサ本体を製造する場合には、まず、上記工程(1)の方法により、エラストマー組成物からなる誘電層を2枚作製する。次に、上記工程(2)の方法により、一方の誘電層には両面に電極層を形成し、他方の誘電層には片面に電極層を形成する。その後、それぞれに電極層が形成された2枚の誘電層を電極層同士が重ならない向きで貼りあわせる。その後、必要に応じて、上記電極層と接続された配線を形成すればよい。
【0114】
また、上記電極層を形成し、必要に応じて上記配線や上記接続部を形成した後には、更に、表側及び/又は裏側の最外層に保護層を形成してもよい。
上記保護層の形成は、例えば、上記(1)の工程と同様の方法を用いてエラストマー組成物からなるシート状物を作製した後、所定のサイズに裁断し、それをラミネートすること等により行えばよい。
また、保護層を備えたセンサシートを作製する場合は、裏側の保護層から出発し、その上に順次構成部材(第2電極層、第1誘電層、第1電極層、(第2誘電層、第3電極層)、表側保護層)を積層することにより、センサ本体を作製してもよい。
このような工程を経ることにより、センサ本体を製造することができる。
【0115】
[工程(3)]
この工程では、工程(1)及び(2)を経て作製したセンサ本体の周囲を覆う被覆部材を形成する。
ここでは、まず、シリコーンゴムを調製するための主剤及び硬化剤、更に必要に応じて、触媒や各種添加剤を含有する被覆部材用原料組成物を調製する。
その後、上記被覆部材用原料組成物を成型し、硬化又は半硬化状態のシリコーン組成物からなるシート状物を作製する。
次に、得られたシート状物を金型内に配置し、その上にセンサ本体を載置するともに、必要に応じて非伸縮性部材を載置した後、被覆部材用原料組成物を注型する。
その後、金型内で被覆部材用原料組成物を硬化させることにより、センサ本体の周囲を覆うシリコーン組成物からなる被覆部材を形成する。
なお、上記被覆部材用原料組成物の硬化条件は特に限定されず、上記被覆部材用原料組成物の組成や、被覆部材のサイズ等に応じて適宜選択すればよい。
【0116】
このような工程を経ることにより、センサ本体の周囲が被覆部材で覆われた本発明の実施形態に係るセンサシートを製造することができる。
【0117】
図2、7に示したセンサ本体は、検出部を1つ備えたものであるが、本発明の実施形態に係るセンサシートにおいて、センサ本体の検出部の数は1つに限定されるわけではなく、複数の検出部を備えたものであってもよい。
具体的には、例えば、表側電極層及び裏側電極層として複数列の帯状の電極層が誘電層の表面及び裏面に形成され、かつ、平面視した際に、表側電極層の列と裏側電極層の列とが直交するように配置されたセンサ本体が挙げられる。このようなセンサ本体では表側電極層及び裏側電極層が誘電層を挟んで対向する複数の部分が検出部となり、その検出部が格子状に配置されていることとなる。
【0118】
<計測器>
上記計測器は、上記センサシート(上記センサ本体)と電気的に接続されており、上記誘電層の変形に応じて変化する上記検出部の静電容量Cを測定する機能を有する。上記静電容量Cを測定する方法としては従来公知の方法を用いることができ、上記計測器は、そのために必要となる静電容量測定回路、演算回路、増幅回路、電源回路等を備えている。
上記静電容量Cを測定する方法(回路)としては、例えば、自動平衡ブリッジ回路を利用したCV変換回路(LCRメータなど)、反転増幅回路を利用したCV変換回路、半波倍電圧整流回路を利用したCV変換回路、シュミットトリガ発振回路を用いたCF発振回路、シュミットトリガ発振回路とF/V変換回路を組み合わせて用いる方法等が挙げられる。
【0119】
本発明の実施形態に係るセンサ装置において、上記センサシートと上記計測器との接続は下記のように行うことが好ましい。
(1−1)上記センサ本体が、
図7に示したような2層の誘電層(第1及び第2誘電層)と各誘電層の両面に電極層(第1〜第3電極層)を有するセンサ本体であり、計測器がシュミットトリガ発振回路のような、検出部の静電容量Cと抵抗Rで発振して静電容量の変化を計測するCF発振回路を用いた計測器である場合。
この場合には、第1電極層を発振ブロック(検出ブロック)に接続し、第2電極層及び第3電極層を接地することが好ましい。
このようにセンサ本体と計測器とを接続することにより、センサ本体の表側及び裏側のいずれを生体等の測定対象物に近接するように接続してもノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0120】
(1−2)上記センサ本体が、
図7に示したような2層の誘電層と各誘電層の両面に電極層を有するセンサ本体であり、計測器が、半波倍電圧整流回路や反転増幅回路、自動平衡ブリッジ回路のような別のブロック(例えば、交流印加装置)で生成した交流信号を、センサ本体に通し、センサ本体の静電容量変化による交流インピーダンス変化を計測又はインピーダンス変化を利用して電圧変化を生成する方式のCV変換回路を用いた計測器である場合。
この場合には、第1電極層を検出ブロックに接続し、第2電極層及び第3電極層を交流信号を生成するブロックに接続することが好ましい。
このようにセンサ本体と計測器とを接続することにより、センサ本体の表側及び裏側のいずれを生体等の測定対象物に近接するように接続してもノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0121】
(2−1)上記センサ本体が、
図2に示したような1層の誘電層とその両面の電極層(表側電極層及び裏側電極層)とを有するセンサ本体であり、計測器が、シュミットトリガ発振回路のようなCF変換回路を用いた計測器である場合。
この場合には、表側電極層を計測器内の発振ブロック(検出ブロック)に接続し、裏側電極層を接地し、かつ、上記センサ本体を裏面側が生体等の測定対象物に近接するように貼り付けることが好ましい。
このような向きでセンサ本体を生体等に貼り付け、上記のようにセンサ本体と計測器とを接続することにより、ノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0122】
(2−2)上記センサ本体が、
図2に示したような1層の誘電層とその両面の電極層(表側電極層及び裏側電極層)とを有するセンサ本体であり、計測器が、半波倍電圧整流回路や反転増幅回路、自動平衡ブリッジ回路のようなCV変換回路を用いた計測器である場合。
この場合には、表側電極層を計測器内の検出ブロックに接続し、裏側電極層を交流信号を生成するブロックに接続し、かつ、上記センサ本体を裏面側が生体等の測定対象物に近接するように貼り付けることが好ましい。
このような向きでセンサ本体を生体等に貼り付け、上記のようにセンサ本体と計測器とを接続することにより、ノイズの影響を排除し、より正確に静電容量の変化を計測することができる。
【0123】
なお、本発明の実施形態において、接地するとは、単に大地とアースをとるということばかりではなく、所定の電位(例えば、0V)に固定する場合も包含する概念である。
各電極層を接地する場合には、例えば、計測器のGND端子等に接続すればよい。
【0124】
<表示器>
本発明の実施形態に係るセンサ装置は、
図1に示した例のように表示器を備えていてもよい。これにより上記センサ装置のユーザーは、測定対象物の変形による静電容量Cの変化に関する情報をリアルタイムで確認することができる。上記表示器は、そのために必要となるモニター、演算回路、増幅回路、電源回路等を備えている。
【0125】
また、上記表示器は、
図1に示した例のように静電容量Cの測定結果を記憶するために、RAM、ROM、HDD等の記憶部を備えていてもよい。
例えば、上記センサ装置をスポーツトレーニングやリハビリトレーニングの実施者に使用する場合、生体の運動情報等に関する静電容量Cの変化に基づく情報をトレーニング後に確認することができる。そのため、実施者はトレーニングの達成度を確認することができ、実施者の励みにもなる。また、トレーニングの達成度を確認することにより、その情報を新たなトレーニングメニューに作製に生かすことができる。
上記記憶部は、上記計測器が備えていてもよい。
上記表示器としては、パソコン、スマートフォン、タブレット等の端末機器を利用してもよい。
【0126】
また、
図1に示したセンサ装置1において、測定器3と表示器4との接続は有線で行われているが、本発明の実施形態に係るセンサ装置においてこれらの接続は必ずしも有線で行われている必要はなく、無線で接続されていてもよい。センサ装置の使用態様によっては、測定器と表示器とが物理的に分離されている方が使用しやすい場合もある。
【実施例】
【0127】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0128】
<被覆部材の耐洗濯性の検証>
(1)下記の方法により、被覆部材用原料組成物A及びBを調製した。
(1−1)被覆部材用原料組成物Aの調製
液状のシリコーンゴム(信越化学工業社製、商品名「KE−1308」)を減圧、脱泡し、ここに硬化剤(信越化学工業社製、商品名「CAT−1300L−4」)をシリコーンゴムの質量に対して6%添加し、両者を混合撹拌して被覆部材用原料組成物Aを調製した。
(1−2)被覆部材用原料組成物Bの調製
液状のシリコーンゴム(信越化学工業社製、商品名「X−32−2428−4」)を減圧、脱泡し、ここに硬化剤(信越化学工業社製、商品名「CX−32−2428−4」)をシリコーンゴムの質量に対して5%添加し、両者を混合撹拌して被覆部材用原料組成物Bを調製した。
【0129】
(2)被覆部材原料組成物A及びBをそれぞれ下記の手法で成型し、厚さ2mmのシート状物を作製した。その後、シート状物を打ち抜き、シリコーン組成物(シリコーンゴム)からなる検証用サンプルA及びB(形状:3号形 ダンベル状、JIS K 6251準拠)を作製した。
被覆部材原料組成物Aの成型は、100℃に加熱した金型に原料組成物を注型し、100℃で30分間加熱することにより行った。
被覆部材用原料組成物Bの成型は、金型に原料組成物を注型し、常温で12時間放置することにより行った。
【0130】
(3)耐洗濯性の評価
上記(2)で作製した検証用サンプルA及びBについて、下記の方法により耐洗濯性を評価した。
(3−1)未処理の検証用サンプルについて、50%モジュラス(M50)、100%モジュラス(M100)、150%モジュラス(M150)及び200%モジュラス(M200)を測定した。
モジュラスの測定は、サンプルの長さ方向の両端20mmをチャックで挟持し、万能引張圧縮試験機(インストロン1175型)を用いて、引張速度500mm/minで測定し、モジュラスを算出した。
【0131】
(3−2)各評価用サンプルを、生理食塩水(0.9%食塩水)、洗剤(0.5mol/%NaOH溶液)及び漂白剤(花王社製、商品名「キッチンハイター」の0.01vol%溶液)のそれぞれに48時間浸漬した後、サンプル表面の溶液をキムワイプで拭き取り、ウェス上で24時間自然乾燥させた。その後、上記(3−1)と同様の方法を用いて、M50、M100、M150及びM200を測定した。
その後、浸漬後に測定した各サンプルのモジュラスと、浸漬前に測定したモジュラスとに基づいて、浸漬後のモジュラスの変化率を算出した。結果を表1に示した。
ここで、モジュラスの変化率の算出は、下記式(1)で算出した。
モジュラスの変化率(%)=[(浸漬後のモジュラス−浸漬前のモジュラス)/浸漬前のモジュラス]×100・・・(1)
【0132】
【表1】
【0133】
<静電容量型センサシートの作製>
<<センサ本体の作製>>
図9(a)〜(c)は、実施例におけるセンサ本体の作製工程を説明するための斜視図である。ここでは、
図2に示したセンサ本体を作製した。
(1)誘電層の作製
ポリオール(パンデックスGCB−41、DIC社製)100質量部に対して、可塑剤(ジオクチルスルホネート)40重量部と、イソシアネート(パンデックスGCA−11、DIC社製)17.62重量部とを添加し、アジターで90秒間撹拌混合し、誘電層用の原料組成物を調製した。次に、原料組成物を
図7に示した成形装置30に注入し、保護フィルム31でサンドイッチ状にして搬送しつつ、炉内温度70℃、炉内時間30分間の条件で架橋硬化させ、保護フィルム付きの所定厚みのロール巻シートを得た。その後、70℃に調節した炉で12時間後架橋させ、ポリエーテル系ウレタンエラストマーからなるシートを作製した。得られたウレタンシートを14mm×80mm×厚さ100μmに裁断し、更に、角部の一か所を7mm×20mm×厚さ100μmのサイズで切り落とし、誘電層を作製した。
【0134】
また、作製した誘電層について、破断時伸び(%)及び比誘電率を測定したところ、破断時伸び(%)は505%、比誘電率は5.8であった。
ここで、上記破断時伸びは、JIS K 6251に準拠して測定した。上記比誘電率は、20mmΦの電極で誘電層を挟み、LCRハイテスタ(日置電機社製、3522−50)を用いて計測周波数1kHzで静電容量を測定し、電極面積と測定資料の厚さから比誘電率を算出した。
【0135】
(2)電極層材料の調製
基板成長法により製造した多層カーボンナノチューブである、大陽日酸社製の高配向カーボンナノチューブ(層数4〜12層、繊維径10〜20nm、繊維長さ150〜300μm、炭素純度99.5%)30mgをイソプロピルアルコール(IPA)30gに添加し、ジェットミル(ナノジェットパル JN10−SP003、常光社製)を用いて湿式分散処理を施し、2倍に希釈して濃度0.05重量%のカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0136】
(3)保護層の作製
上述した(1)誘電層の作製と同様の方法を用いて、ポリエーテル系ウレタンエラストマー製で、14mm×80mm×厚さ50μmの裏側保護層と、14mm×60mm×厚さ50μmの表側保護層とを作製した。
【0137】
(4)接続部材の作製
14mm×10mm×厚さ0.05mmのポリイミドからなる樹脂シートを用意した。また、これとは別に、2mm×5mm×厚さ0.05mmの銅箔を2枚用意した。
次に、上記銅箔を両面粘着テープにより、樹脂シートの表面に貼り付け、接続部材とした。
【0138】
(5)センサ本体の作製
まず、上記(3)の工程で作製した裏側保護層15Bの片面(表面)に、離型処理されたPETフィルムに所定の形状の開口部が形成されたマスク(図示せず)を貼り付けた。
上記マスクには、裏側電極層及び裏側配線に相当する開口部が設けられており、開口部のサイズは、裏側電極層に相当する部分が幅10mm×長さ50mm、裏側配線に相当する部分が幅5mm×長さ20mmである。
【0139】
次に、上記(2)の工程で調製したカーボンナノチューブ分散液を単位面積(cm
2)あたりの塗布量が0.223gとなるように、10cmの距離からエアブラシを用いて塗布した。続いて、100℃で10分間乾燥させ、裏側電極層12B及び裏側配線13Bを形成した。その後、マスクを剥離した(
図9(a)参照)。
【0140】
次に、裏側電極層12Bの全体及び裏側配線13Bの一部を被覆するように、上記(1)の工程で作製した誘電層11を裏側保護層15B上に貼り合わせることにより積層した。
更に、誘電層11に表側に、裏側電極層12B及び裏側配線13Bの形成と同様の方法を用いて、表側電極層12A及び表側配線13Aを形成した(
図9(b)参照)。
【0141】
次に、表側電極層12A及び表側配線13Aを形成した誘電層11の表側に、表側電極層12Aの全体及び表側配線13Aの一部を被覆するように、上記(3)の工程で作製した表側保護層15Aをラミネートにより積層した。
更に、表側保護層15Bの端部と、接続部材18の一部が重なり合うように、接続部材18を表側保護層15Bの裏側に積層し、その後、表側配線13Aと電極接続部16A、及び、裏側配線13Bと電極接続部16B、それぞれを導電性接着剤を介して接続した。
その後、電極接続部16A及び電極接続部16Bにリード線19を半田で固定し、センサ本体10とした(
図9(c)参照)。
【0142】
<<非伸縮性部材の準備>>
厚さ20μmのPETシートを裁断し、20mm×25mmのPETシートA、20mm×25mmのPETシートB、20mm×5mmのPETシートCを作製した。
なお、後述する工程において、PETシートAは非伸縮性部材21Aに、PETシートBは非伸縮性部材21Bに、PETシートCは非伸縮性部材21Cに使用した。
【0143】
<<被覆部材の形成>>
耐洗濯性の検証で使用した被覆部材用原料組成物Aを使用して下記の方法で被覆部材を形成し、
図2に示したセンサシート2を作製した。
(1)被覆部材用原料組成物Aを金型内で100℃、15分の条件で硬化させ、24mm×110mm×厚さ0.3mmの硬化状態のシート状物を作製した。
【0144】
(2)次に、得られた硬化状態のシート状物を別の金型内に移し替え、その後、シート状物上の所定の位置に、PETシートA(非伸縮性部材21A)及びPETシートB(非伸縮性部材21B)とセンサ本体10とを載置し、さらに、センサ本体10上(表側配線13A及び裏側配線13B上)にPETシートC(非伸縮性部材21C)を載置した。続いて、被覆部材用原料組成物Aを注型し、100℃、15分の条件で被覆部材用原料組成物Aを完全に硬化させ、
図5に示した形状(肉薄部分(厚さ方向において検出部と重なる部分)の厚さが10mm、肉厚部分(肉薄部分の両端部)の厚さが23mm)のセンサシートを完成した。
このとき、PETシートA〜Cには、金型内に載置する前に予め接着剤を塗布しておいた。即ち、各PETシートのセンサ本体側の面には、シリコーン接着剤(信越化学工業株式会社製、KE1800TA/TB)を塗布し、被覆部材側の面には、セメダイン社製、(商品名)PPXを塗布した後、金型内に載置した。
【0145】
(センサシートの評価)
(1)使用時の剥離の有無
作製したセンサシートの裏面に厚さ100μmの接着剤(セメダイン社製、商品名「BBX」)層を形成した。
次に、上記接着剤層を介して、センサシートをガラス板に貼り付け、剥離する操作を10回繰り返し行った。
その後、センサシートにおける層間剥離(誘電層と保護層、保護層とシリコーンゴムの剥離)の有無を目視にて観察した。その結果、層間剥離は観察されなかった。
【0146】
(2)繰り返し変形時の静電容量の変化
センサシートを万能引張圧縮試験機(インストロン1175型)に取り付け、センサシートを無伸長(0%伸長)から200%伸長(検出部の伸長方向の長さが3倍になる)まで伸長させ、その後、元の状態(無伸長状態)に戻す伸縮操作を100回繰り返し、そのときの静電容量の変化を測定した。結果を表2に示した。
なお、静電容量の測定は、センサシートを静止させた状態で、LCRハイテスタ(日置電機社製、3522−50)を用いて測定周波数5000Hzで測定した。
【0147】
【表2】
【0148】
(3)センサシートの耐水性の評価
センサシートを生理食塩水中に浸漬させ、浸漬前、浸漬中(24時間浸漬時及び72時間浸漬時)及び浸漬後(72時間浸漬し、更に自然乾燥させた後)におけるセンサシートの特性(抵抗及び静電容量)を測定した。結果を表3及び表4に示した。
ここで、抵抗及び静電容量は、LCRハイテスタ(日置電機社製、3522−50)を用いて測定した。また、測定時の測定周波数は、1000Hz、2000Hz、5000Hz、10000Hz、20000Hz、50000Hz及び100000Hzとした。
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
表3、4に示したように、上記センサシートは、生理食塩水に浸漬することで、抵抗が最大で13%程度低下したり、静電容量が最大で10%程度増加したりすることがあるものの、乾燥により浸漬前の抵抗及び静電容量にほぼ戻ることが明らかとなった。