(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記造型工程において、前記吹き込み口と前記発泡樹脂模型とを連結する発泡樹脂部材を前記発泡樹脂模型とともに前記鋳物砂に埋設することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋳造方法。
前記鋳物砂を取り囲んで前記砂型を構成する金枠として、前記吹込み口となり得る多数の貫通孔が形成されている金枠を使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋳造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡樹脂模型を鋳物砂に埋設して砂型を造型し、この砂型内に注湯して発泡樹脂模型を溶湯で置換することにより鋳物製品を製造するフルモールド鋳造法が知られている。フルモールド鋳造法は、木型を用いて砂型を造型する鋳造法と比較して、木型や中子の作製に要していた造型工数の低減、鋳物製品の仕上げの簡略化などを図ることができる他、砂型造型用の木型が不要で、かつこの保管に必要な倉庫等も不要である等の点で有利である。また、最近における3Dプリンタ等の普及に伴って精密な発泡樹脂模型を安価に作製することができるようになり、複雑な構造の製品をフルモールド鋳造法により鋳造することも行われるようになっている。
【0003】
しかしながら、フルモールド鋳造法においては下記のような問題がある。
(1)注湯時において、発泡樹脂模型を構成する樹脂が気化するとともに空気と接触して燃焼し、そのときの激しい火炎と発煙により作業環境が著しく劣悪になる。
【0004】
(2)発泡樹脂模型の構成樹脂に由来する残滓(燃焼生成物)が鋳造品の介在物となり、鋳物製品の品質が損なわれる。
【0005】
このような問題を解決するため、消失性模型(発泡樹脂模型)の表面に塗型剤を層着したものを、減圧可能な枠内の粒子層(鋳物砂)の内部に埋入し、この粒子層を熱風導入管から導入した熱風により消失性模型の融点以上に加熱したのち枠内を減圧して消失性模型を分解、気化して消失させたうえ、枠内に形成された中空部に減圧状態のまま注湯する鋳造方法が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された鋳造方法においては、消失性模型を消失させる際に当該模型の分解、気化によって発生したガスが熱風(空気)と接触し、激しい火炎と発煙を伴って燃焼するため、この鋳造方法によっても作業環境の改善を図ることはできない。
また、特許文献1に記載された鋳造方法によっても、消失性模型の構成樹脂に由来する残滓が鋳造品の介在物となるために、鋳物製品の品質低下を防止することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、発泡樹脂模型を消失させる際に激しい火炎や発煙を伴わず、発泡樹脂模型の消失時および注湯時における作業環境が良好で、品質を損う介在物(発泡樹脂模型の構成樹脂に由来する残滓)を含まない鋳物製品を製造することができる新規な鋳造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の鋳造方法は、発泡樹脂模型を鋳物砂に埋設して砂型を造型する造型工程と、
前記砂型の外面の少なくとも1箇所に配置された吹込み口から、前記砂型の内部に過熱水蒸気90〜100質量%と空気10〜0質量%とを含むガスを導入して、前記発泡樹脂模型と接触させ、
300〜500℃の温度条件下に、前記発泡樹脂模型を構成する樹脂を分解・気化して当該発泡樹脂模型を実質的に消失させる模型消失工程と、
前記発泡樹脂模型の消失により形成された空洞に溶湯を注入する注湯工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
このような鋳造方法によれば、模型消失工程において、熱容量の高い過熱水蒸気を含む高温ガスが発泡樹脂模型と接触することにより、発泡樹脂模型を構成する樹脂を確実に分解・気化して当該発泡樹脂模型を実質的に消失させることができる。
また、発泡樹脂模型と接触させるガス中に含まれる空気(酸素)の割合が低いので、模型消失工程において、発泡樹脂模型の構成樹脂または分解ガスの燃焼(酸化)反応が抑制される。この結果、激しい火炎や発煙を伴わずに発泡樹脂模型を消失させることができるとともに、燃焼(酸化)反応により生成される残滓が鋳物製品の介在物となることを防止することができる。
また、注湯工程において、発泡樹脂模型の消失により形成された空洞に溶湯するので、この工程においても火炎や発煙は発生しない。
【0011】
(2)本発明の鋳造方法は、発泡樹脂模型を鋳物砂に埋設して砂型を造型する造型工程と、
前記砂型の外面の少なくとも1箇所に配置された吹込み口から、前記砂型の内部に過熱水蒸気を導入して前記発泡樹脂模型と接触させ、
300〜500℃の温度条件下に、前記発泡樹脂模型を構成する樹脂を分解・気化して当該発泡樹脂模型を実質的に消失させる模型消失工程と、
前記発泡樹脂模型の消失により形成された空洞に溶湯を注入する注湯工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
このような鋳造方法によれば、模型消失工程において、熱容量の高い過熱水蒸気が発泡樹脂模型と接触することにより、発泡樹脂模型を構成する樹脂を確実に分解・気化して当該発泡樹脂模型を実質的に消失させることができる。
また、過熱水蒸気の使用により、発泡樹脂模型の構成樹脂または分解ガスの燃焼(酸化)反応が防止される。この結果、火炎や発煙を伴わずに発泡樹脂模型を消失させることができるとともに、燃焼(酸化)反応により生成される残滓を発生させることはない。
また、注湯工程において、発泡樹脂模型の消失により形成された空洞に溶湯するので、この工程においても火炎や発煙は発生しない。
【0013】
(3)本発明の鋳造方法の前記造型工程において、前記吹き込み口と前記発泡樹脂模型とを連結する発泡樹脂部材を前記発泡樹脂模型とともに前記鋳物砂に埋設することが好ましい。
【0014】
このような鋳造方法によれば、模型消失工程において、吹込み口から導入されるガス(過熱水蒸気)を、発泡樹脂部材が消失した後に形成される空洞を通して発泡樹脂模型まで案内させることができる。
【0015】
(4)本発明の鋳造方法の前記模型消失工程において、前記発泡樹脂模型の内部に直接前記過熱水蒸気を導入することが好ましい。
【0016】
このような鋳造方法によれば、模型消失工程において、発泡樹脂模型を短時間で効率的に消失させることができる。
【0019】
(5)本発明の鋳造方法において、前記鋳物砂を取り囲んで前記砂型を構成する金枠として、前記吹込み口となり得る多数の貫通孔が形成されている金枠を使用することが好ましい。
【0020】
このような鋳造方法によれば、鋳物砂中における発泡樹脂模型の位置や形状などに応じた適当な位置において、1箇所または複数箇所の吹き込み口を配置することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の鋳造方法によれば、発泡樹脂模型を消失させる際に激しい火炎や発煙を伴わず、発泡樹脂模型の消失時および注湯時における作業環境が良好で、品質を損なわせるような介在物を含まない鋳物製品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の鋳造方法は、造型工程と、模型消失工程と、注湯工程とを含む。
【0024】
<造型工程>
造型工程は、発泡樹脂模型を鋳物砂に埋設して砂型を造型する工程である。
図1は、造型工程により得られる砂型を模式的に示しており、1は砂型、3は金枠、4は吹き込み口、5は鋳物砂、7は発泡樹脂模型、9は発泡樹脂部材を示している。
【0025】
本発明の製造方法に使用される発泡樹脂模型は、従来のフルモールド鋳造法などで使用されている発泡樹脂模型と同様のものを使用することができる。
発泡樹脂模型を構成する樹脂材料としては、砂型の内部に導入される過熱水蒸気を含むガスによって分解・気化される発泡樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、発泡ポリスチレン(EPS)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの発泡体を挙げることができる。
【0026】
発泡樹脂模型の発泡倍率としては、目的とする鋳物製品の形状等によっても異なるが、模型に供給される強度(鋳物砂に埋設する際の非変形性)を確保するとともに、模型消失工程において効率よく消失させることができるという観点から40〜80倍であることが好ましく、更に好ましくは50〜70倍である。
【0027】
本発明の製造方法に使用される砂型を構成する鋳物砂としては、従来公知の鋳造方法に使用されるものを好適に使用することができ、例えば、珪砂などの天然砂および球状骨材などの人工砂を例示することができる。
【0028】
尚、粒度が細かい鋳物砂を使用した際に、発泡樹脂模型が分解、気化して発生したガスが砂型の外部に排出されにくい場合は、砂型にガス排出用の穴を開けたり、砂型に減圧パイプを埋設する等の方法で対処することも可能である。
【0029】
本発明の製造方法において、砂型を構成する鋳物砂は、通常、鋳造(後述する注湯工程)に必要な強度を確保するために粘結剤により結着されている。ここに、粘結剤としては、特に限定されるものでなく、例えばフラン樹脂を挙げることができる。
鋳物砂に要求される強度としては、その抗圧力(破壊圧縮強度)が、通常15kg/cm
2 以上であることが好ましく、更に好ましくは20kg/cm
2 以上とされる。
【0030】
図1に示すように、砂型1を構成する鋳物砂5には、発泡樹脂模型7とともに発泡樹脂部材9が埋設されている。この発泡樹脂部材9は、金枠3に形成された吹き込み口4と発泡樹脂模型7とを連結するように配置されている。
発泡樹脂部材9を配置することによれば、後述する模型消失工程において、吹込み口4から導入されるガス(過熱水蒸気)によって最初に発泡樹脂部材9が消失して空洞が形成され、その後に吹込み口4から導入されるガス(過熱水蒸気)が、この空洞を通って発泡樹脂模型7に案内されるので、発泡樹脂模型7に対して当該ガスを効率的に接触することができる。
【0031】
発泡樹脂部材の横断面形状は特に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形、三角形、矩形などの多角形などを挙げることができる。
図1に示す発泡樹脂部材9は円錐台状に成型されている。なお、発泡樹脂部材は中空であってもよく、これにより、ガス(過熱水蒸気)を導入してから発泡樹脂部材が消失する(ガスの流路を形成する)までの時間を短縮することができる。
【0032】
<模型消失工程>
本発明の鋳造方法における模型消失工程は、前記砂型の外面(通常、鋳物砂を取り囲む金枠)の少なくとも1箇所に配置されている吹込み口から砂型の内部に一定以上の割合で過熱水蒸気を含有するガス、好ましくは過熱水蒸気のみを導入して発泡樹脂模型と接触させ、発泡樹脂模型を構成する樹脂を分解・気化して当該発泡樹脂模型を実質的に消失させる工程である。
【0033】
本発明の鋳造方法においては、注湯工程の前工程(この模型消失工程)において、過熱水蒸気を含有するガスを使用して発泡樹脂模型を消失させる点に特徴を有している。
発泡樹脂模型を消失させるために使用するガス中には、一定以上の割合で過熱水蒸気が含有されており、一定以下の割合で空気が含有されていてもよい。
【0034】
ここに、ガス中に含有される過熱水蒸気の割合としては、通常90質量%以上とされ、特に好ましくは100質量%である。
また、ガス中に含有される空気の割合としては、通常10質量%以下とされ、特に好ましくは0質量%である。
【0035】
ガス中に含有される過熱水蒸気の割合が90質量%未満であると、発泡樹脂模型を構成する樹脂を効率的に分解・気化することができない。
また、ガス中に含有される空気の割合が10質量%を超える場合には、発泡樹脂模型を構成する樹脂または分解ガスの燃焼(酸化)反応を十分に抑制することができず、本発明の課題を解決することができない。
【0036】
過熱水蒸気を生成する方法としては特に限定されるものではなく、例えば、ボイラで水蒸気を発生させ、この水蒸気を適宜の加熱方式により加熱する方法を挙げることができる。ここに、加熱方式としては、急速な昇温、降温操作を行うことができることから、誘導加熱方式によるものが好ましい。
【0037】
過熱水蒸気を含有するガスを発泡樹脂模型と接触させる際における当該ガスの温度(発泡樹脂模型を消失させる処理温度)としては、300〜500℃であることが好ましく、更に好ましくは350〜460℃とされる。
【0038】
この温度(処理温度)が低すぎる場合には、発泡樹脂模型を構成する樹脂を分解・気化して発泡樹脂模型を消失させることが困難となる。
他方、この温度(処理温度)が高すぎる場合には、例えば、鋳物砂を結着させるための粘結剤が劣化・分解・気化することにより砂型の強度が低下し、鋳造(後述する注湯工程)に必要な砂型の強度を維持することができなくなることがある。
【0039】
また、処理温度を上記のような好適な範囲とするために、過熱水蒸気を含有するガスを砂型の内部に導入する際における当該ガスの温度(導入温度)としては、例えば400〜600℃であることが好ましく、更に好ましくは400〜550℃とされる。
【0040】
過熱水蒸気を含有するガスの砂型の内部への導入流量としては、例えば、発泡樹脂模型1000cm
3 あたり2〜15kg/hrとされ、好ましくは6〜12kg/hrとされる。
【0041】
過熱水蒸気を含有するガスの砂型の内部への導入時間としては、当該ガスの導入温度などによっても異なるが、例えば3〜30分間とされ、好ましくは5〜10分間とされる。
【0042】
ガスの導入時間が短すぎる場合には、発泡樹脂模型を消失させることが困難となる。
一方、導入時間が長すぎる場合には、粘結剤の劣化・分解・気化によって砂型の強度が低下し、鋳造(後述する注湯工程)に必要な砂型の強度を維持することができなくなることがある。
【0043】
図1に示すように、過熱水蒸気を含有するガスを導入するための吹込み口4は、通常、鋳物砂5を取り囲んで砂型1を構成する金枠3に形成された貫通孔からなる。
この吹込み口4は、後述する注湯工程において、砂型1内に形成される空洞(発泡樹脂模型の消失により形成される空洞)に溶湯を注入する際の注湯口として使用することもできる。
【0044】
なお、
図1に示す砂型1における吹込み口4は1箇所のみであるが、吹込み口は複数箇所に形成されていてもよい。
鋳物砂中における発泡樹脂模型の位置や形状などに応じて、複数の吹込み口を配置することにより、当該模型全体に対して過熱水蒸気を含有するガスを接触させることができ、当該模型を消失させるためのガスの導入時間の短縮化を図ることができる。これにより、砂型の強度低下を防止することができる。
【0045】
なお、鋳物砂を取り囲んで砂型を構成する金枠として、
図2に示したように、吹込み口となり得る多数の貫通孔6が形成された金枠8を使用することもできる。
このような金枠8を使用することにより、鋳物砂中における発泡樹脂模型の位置や形状などに応じた適当な位置に開口する貫通孔を選択し、吹き込み口として使用することができる。
【0046】
模型消失工程において発泡樹脂模型が実質的に消失し、これによって、砂型内に空洞が形成される。
なお、発泡樹脂模型は完全に消失していることが望ましいが、その一部が消失することなく残存していてもよい。残存する発泡樹脂模型の一部は、次の注湯工程において完全に消失することができる。
なお、残存する発泡樹脂模型の一部が火炎や発煙を伴う燃焼を起こさないように、また、最終的に得られる鋳物製品の品質を損なわないように、模型消失工程を経た後における発泡樹脂模型の残存割合は、通常30%以下とされ、好ましくは15%以下とされる。
【0047】
模型消失工程終了後、次の注湯工程において注湯口として使用しない吹込み口は、適宜の封止部材によって封止する。
また、発泡樹脂部材(例えば、
図1に示す発泡樹脂部材9)の消失によって形成された空洞部分については、鋳物砂を充填したり、発泡樹脂部材と同形の封止部材を挿入するなどして、当該空洞部分に溶湯が流入することを防止することが好ましい。
【0048】
<注湯工程>
本発明の鋳造方法における注湯工程は、発泡樹脂模型の消失により形成された空洞に溶湯を注入する工程である。溶湯の注入は従来公知の方法に従って行うことができ、これにより、発泡樹脂模型と同一形状の鋳物製品を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
(1)造型工程:
図3A〜
図3Cに示すように、直方体状(150mm×150mm×50mm)の下部71と、立方体状(50mm×50mm×50mm)の中間部72と、直方体状(150mm×150mm×50mm)の上部73とからなり、発泡倍率が60%であるEPS(発泡ポリスチレン)から構成される発泡樹脂模型70を作製した。
次いで、この発泡樹脂模型70の表面に塗型剤「フランクリーン PC−260」(花王クエーカー(株)製)を塗布して塗型を形成した。
【0051】
図3Aおよび
図3Cにおいて、74は、下部71に形成したガス流路(直径10mm、長さ130mm)であり、
図3Bおよび
図3Cにおいて、75は、下部71、中間部72および上部73に形成され、上部73の上面において開口するとともに、ガス流路74に連通するガス流路(直径5mm、長さ130mm)である。
【0052】
このようにして得られた発泡樹脂模型70を、
図4に示すように、鋳物砂50に埋設して砂型10を造型した。
図4において、30は、鋳物砂50を取り囲むように配置されている金枠(300mm×300mm×6mm×4枚)、40は、金枠30に形成された吹込み口(口径20mm)、81は、吹込み口40と発泡樹脂模型70の内部(ガス流路74)とを連通するガス導入管(内径20mm)、82は、発泡樹脂模型70の内部(ガス流路75)と砂型10の外部とを連通するガス排出管(内径4mm)である。
【0053】
ここに、鋳物砂50としては、5号珪砂100質量部に対して、フラン樹脂(粘結剤)0.8質量部と硬化触媒0.24質量部とを添加することにより、当該5号珪砂を結着して硬化させたものを使用した。
【0054】
(2)模型消失工程:
誘導加熱方式による過熱水蒸気発生装置(第一高周波工業(株)製)により発生させた過熱水蒸気を、
図4に示した砂型10の吹込み口40から、ガス導入管81を経由して、砂型10内における発泡樹脂模型70の内部(ガス流路74および75)に導入した。
ここに、吹込み口40における過熱水蒸気の温度(導入温度)を約500℃に調整し、導入流量を約10〜15kg/hrとして12分間にわたり導入した。
この間(模型消失工程)において、火炎や発煙などは殆ど認められず、作業環境はきわめて良好であった。
【0055】
(3)注湯工程:
上記の模型消失工程終了後、発泡樹脂模型70の消失により形成された空洞に吹込み口40から溶湯を注入した。
この間(注湯工程)において、火炎や発煙などは殆ど認められず、作業環境はきわめて良好であった。
注入された溶湯を冷却して凝固させた後、鋳物砂50を砕いて砂型10から鋳造製品を取り出した。得られた鋳造製品には、発泡樹脂模型70の構成樹脂に由来する残滓などは認められず、良好な品質を有するものであった。
【0056】
<試験例1(好適な処理温度の検討1)>
実施例1(1)の造型工程と同様にして、
図4に示したような砂型10を造型した。
次いで、実施例1(2)の模型消失工程と同様にして、砂型10内の発泡樹脂模型70の内部(ガス流路74および75)に過熱水蒸気を導入した。
なお、この試験では、過熱水蒸気の導入を開始してから20分間にわたり、
図5Aに示した測定点711〜715および51、並びに
図5Bに示した測定点731〜735および52における温度変化を測定した。
発泡樹脂模型70の下部71における測定点711〜715、および下部71の近傍の鋳物砂50における測定点51での温度変化の測定結果を
図6Aに示し、また、発泡樹脂模型70の上部73における測定点731〜735、および上部73の近傍の鋳物砂50における測定点52での温度変化の測定結果を
図6Bに示す。
【0057】
上記のようにして、温度変化の測定を行った砂型について発泡樹脂模型70の消失状態を確認したところ、発泡樹脂模型70の下部71および中間部72は完全に消失していた。一方、発泡樹脂模型70の上部73についても殆どが消失していたが、上部73の構成樹脂の一部が空洞を区画する壁面に付着していた。
構成樹脂の一部が消失せずに残存した理由としては、
図6Bに示すように、上部73における温度は300℃に到達していない場合が多く、構成樹脂の分解・気化が十分に行われなかったからであると考えられる。
このことから、構成樹脂を完全に除去したい場合には、処理温度を300℃以上とすること、特に350℃以上とすることが望ましい。
【0058】
<試験例2(好適な処理温度の検討2)>
下記の3種類の鋳物砂の各々について、過熱水蒸気に曝されることによる抗圧力の変化を測定した。ここに、曝露温度は、350℃、400℃(5号珪砂のみ)、460℃、600℃の4通り、曝露時間は5分間および10分間とした。結果を下記表1に示す。
【0059】
・5号珪砂
・アルミナ系球状骨材「エスパール ♯40」(山川産業(株)製)
・アルミナ系球状骨材「エスパール ♯60」(山川産業(株)製)
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示す結果から、鋳物砂の強度を確保する観点からは、過熱水蒸気による処理温度は460℃以下にすることが望ましい。