特許第6605307号(P6605307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6605307-ビード部材製造方法 図000002
  • 特許6605307-ビード部材製造方法 図000003
  • 特許6605307-ビード部材製造方法 図000004
  • 特許6605307-ビード部材製造方法 図000005
  • 特許6605307-ビード部材製造方法 図000006
  • 特許6605307-ビード部材製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605307
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】ビード部材製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/48 20060101AFI20191031BHJP
【FI】
   B29D30/48
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-224742(P2015-224742)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-87693(P2017-87693A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賀貴
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−045786(JP,A)
【文献】 特開2006−076217(JP,A)
【文献】 特開平11−105155(JP,A)
【文献】 特開2012−020430(JP,A)
【文献】 特開2007−076233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00−30/72
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形面上に固定した環状のビードコアの外周側にビードフィラーを成形してビード部材を製造するビード部材製造方法であって、
前記ビードコアの断面形状が、前記ビードコアの外周面のうち前記成形面に対向する幅方向側面と前記成形面との間に空間ができる断面形状である場合において、
前記ビードコアの外周側に押出機の口金の先端を接近させた後、前記成形面を回転させながら前記口金から吐出された第1のゴムを前記ビードコアの幅方向側面と前記成形面との間の空間隙間なく注入して環状の第1ビードフィラー部を成形する工程と、
前記成形面を回転させながら前記第1ビードフィラー部及び前記成形面の上に第2のゴムを供給して環状の第2ビードフィラー部を成形してビードフィラーを成形する工程と、を備えることを特徴とするビード部材製造方法。
【請求項2】
前記ビードコアの外周面は、径方向最外方にあるコア上面と、コア上面の幅方向両側にあるコア側面とで構成されており、
前記第1のゴムは、前記コア側面と前記成形面との間の空間に注入されることを特徴とする請求項1に記載のビード部材製造方法。
【請求項3】
前記口金の先端は、前記コア上面と前記成形面とのなす角よりも小さいテーパ角を有するテーパ状であることを特徴とする請求項2に記載のビード部材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形面上に固定した環状のビードコアの外周側にビードフィラーを成形してビード部材を製造するビード部材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのビード部には、環状のビードコアが設けられ、そのビードコアのタイヤ径方向外側にビードフィラーが設けられている。空気入りタイヤの成形方法として、予めビードコアとビードフィラーを一体化してビード部材を製造しておき、このビード部材を他のタイヤ構成部材と組み合わせて成形する方法がある。
【0003】
ビード部材は、図6に示すように、成形テーブルの成形面300に固定したビードコア100の外周側に、押出機の口金から吐出されたゴムを巻き付けてビードフィラー200を成形して製造される。このとき、例えば、図6のようにビードコア100の断面形状が六角形の場合、ビードコア100の幅方向側面100aと成形面300との間の狭い空間には、ゴムが入り込みにくく、ビードコア100の幅方向側面100aとビードフィラー200との間に隙間を生じやすい。その結果、空気入りタイヤを成形する際に、エア入りやビードコアとビードフィラーの接着不良といった問題を引き起こす。
【0004】
下記特許文献1には、ビードコア及びビードフィラーを組付けてビード部を形成するタイヤの製造方法において、リボン状のビードフィラーゴムを巻回して、ビードコアの幅方向内側の領域のうちの前記ビードコアと接触する部分のみに、第一のビードフィラー領域を形成する工程と、形成された第一のビードフィラー領域に対し、ビードコアを幅方向外側から幅方向内側に向かって移動させて、第一のビードフィラー領域の幅方向外側にビードコアを組み付ける工程と、リボン状のビードフィラーゴムを巻回して、残りのビードフィラー領域を形成する工程と、を含むタイヤの製造方法が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、環状のビードコアおよび環状のビードフィラーが一体化されたビードコア組立体の成形方法において、ビードフィラーは第1ゴム体および第2ゴム体を含み、リボン状ゴム材を支持部材上で巻回して環状の第1ゴム体を成形する第1成形工程と、リボン状ゴム材をビードコア上で巻回して環状の第2ゴム体を成形する第2成形工程と、第1成形工程後にビードコアおよび第2ゴム体を支持部材上の第1ゴム体と一体化する一体化工程と、を含むビードコア組立体の成形方法が記載されている。
【0006】
特許文献1及び2の方法によれば、予め成形した第一のビードフィラー領域又は第1ゴム体の上にビードコアを組み付けるため、ビードコアの幅方向側面とビードフィラーとの間の隙間を理論上無くすことができる。しかしながら、第一のビードフィラー領域又は第1ゴム体の形状に沿わしてビードコアを正確に配置するのは難しく、ビードコアの幅方向側面とビードフィラーとの間に隙間を生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5577172号公報
【特許文献2】特許第4588594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、ビードコアの幅方向側面とビードフィラーとの間の隙間をなくしたビード部材を製造することができるビード部材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明のビード部材製造方法は、成形面上に固定した環状のビードコアの外周側にビードフィラーを成形してビード部材を製造するビード部材製造方法であって、
前記ビードコアの外周側に押出機の口金の先端を接近させた後、前記成形面を回転させながら前記口金から吐出された第1のゴムを前記ビードコアの外周面と前記成形面との間に注入して環状の第1ビードフィラー部を成形する工程と、
前記成形面を回転させながら前記第1ビードフィラー部及び前記成形面の上に第2のゴムを供給して環状の第2ビードフィラー部を成形してビードフィラーを成形する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るビード部材製造方法において、前記ビードコアの外周面は、径方向最外方にあるコア上面と、コア上面の幅方向両側にあるコア側面とで構成されており、前記第1のゴムは、前記コア側面と前記成形面との間の空間に注入されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るビード部材製造方法において、前記口金の先端は、前記コア上面と前記成形面とのなす角よりも小さいテーパ角を有するテーパ状であることが好ましい。
【0012】
かかる構成によるビード部材製造方法の作用効果を説明する。この構成によれば、ビードコアの外周側に押出機の口金の先端を接近させて、ビードコアの外周面と成形面との間に第1のゴムを注入するため、ビードコアの幅方向側面と成形面との間の空間にゴムを充填でき、ビードコアの幅方向側面とビードフィラーとの間の隙間をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ビード部材の断面図
図2】ビード部材製造装置の概略構成を示す側面図
図3図2のビード部材製造装置の要部拡大図
図4】ビード部材の製造工程を説明するための説明図
図5】別実施形態に係るビード部材の断面図
図6】従来技術によって製造されたビード部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1はビード部材の断面図である。本発明に係るビード部材は、環状のビードコア1の外周側に環状のビードフィラー2を成形することにより製造される。
【0015】
本実施形態のビードコア1は、断面形状が六角形となっている。本実施形態では、図1に示すような断面六角形状のビードコア1の外周側、具体的には外周面1aに接するようにビードフィラー2を成形する例を示す。ビードコア1の外周面1aは、径方向最外方にあるコア上面11と、コア上面11の幅方向両側にあるコア側面12,13とで構成されている。なお、ビードコア1の外周面1aとは、ビードコア1の最大幅位置よりも径方向外方にある面とする。また、ビードコア1の内周面1bとは、ビードコア1の最大幅位置よりも径方向内方にある面とする。
【0016】
ビードフィラー2は、断面形状が略三角形となっている。ビードフィラー2は、第1ビードフィラー部21と第2ビードフィラー部22とで構成されている。第1ビードフィラー部21は、コア側面12よりも幅方向外方域を含む領域に成形される。本実施形態の第1ビードフィラー部21は、コア上面11の一部にも接している。第2ビードフィラー部22は、ビードフィラー2のうち第1ビードフィラー部21以外の部分である。
【0017】
図2はビード部材製造装置の概略構成を示す側面図であり、一部を断面図で示している。図3図2の製造装置の要部を示す拡大図である。製造装置は、回転自在の成形テーブル3と、押出機4とを備えている。成形テーブル3は、略円盤状をしており、図2に矢印で示すように回転軸31の周りを回転することができる。成形テーブル3は、不図示のモータにより回転駆動され、モータの回転数を制御することで成形テーブル3の回転数を自在に制御することができる。また、成形テーブル3は、本実施形態のように水平面内で回転するものに限定されず、鉛直面内で回転するようにしてもよい。
【0018】
成形テーブル3には、環状のビードコア1が固定される。成形テーブル3の成形面3aの上には、ビードコア1を固定するためのセグメント32が設けられている。セグメント32は、平面視で円弧状をしており、成形面3aの周方向に沿って等間隔に複数設けられている。セグメント32は、不図示のエアシリンダーによって成形面3aの径方向に沿って移動可能であり、セグメント32が径方向外側に向かって移動することで、ビードコア1の内周面1bを押圧して固定することができる。一方、セグメント32が径方向内側に向かって移動することで、ビードコア1の固定が解除される。セグメント32の外周面は、ビードコア1の内周面1bに対応した形状となっている。
【0019】
押出機4は、不図示の押出機駆動手段により、成形テーブル3に対する相対位置が変更される。押出機4は、公知の構成であり詳細な説明は省略するが、主として、ゴム材料が投入されるホッパーと、ゴム材料に熱を与えながら前方に送り出すスクリューと、スクリューを内蔵する円筒状のバレルと、スクリューを駆動する駆動装置とを備える。スクリューの駆動及び回転速度は制御装置により制御され、ゴムの押出速度を制御することができる。
【0020】
押出機4は、先端に第1の口金41を備えている。第1の口金41は、その先端に形成された吐出口から第1のゴムR1が吐出される。第1の口金41の先端は、テーパ角θを有するテーパ状である。テーパ角θは、ビードコア1のコア上面11と成形面3aのなす角αよりも小さくなるように設定されている。これにより、第1の口金41の先端をビードコア1の外周側に接近させることができる。
【0021】
次に、ビード部材の製造方法について説明する。図4にビード部材を製造する工程を概略的に示す。
【0022】
まず、図4(a)に示すように、セグメント32によりビードコア1を成形テーブル3の成形面3a上に固定する。
【0023】
次いで、図4(b)に示すように押出機4を成形テーブル3に前進させ、ビードコア1の外周側に第1の口金41の先端を接近させる。より具体的には、第1の口金41の先端は、コア上面11と成形面3aに挟まれた領域に挿入される。これにより、第1の口金41の吐出口をコア側面12と成形面3aとの間の空間に接近させることができる。
【0024】
第1の口金41の吐出口をビードコア1の外周側に接近させた後、図4(c)に示すように、成形面3aを回転させながら第1の口金41の吐出口から吐出された第1のゴムR1をコア側面12と成形面3aとの間の空間に注入して環状の第1ビードフィラー部21を成形する。第1ビードフィラー部21を成形後、押出機4を後退させる。
【0025】
次いで、図4(d)に示すように第2の口金42を成形テーブル3に接近させる。第2の口金42は、押出機4とは別の押出機(不図示)の先端に接続されている。
【0026】
第2の口金42を成形テーブル3に接近させた後、図4(e)に示すように、成形面3aを回転させながら第1ビードフィラー部21及び成形面3aの上に第2のゴムR2を供給して環状の第2ビードフィラー部22を成形してビードフィラー2を成形する。なお、第2の口金42の先端は、ビードコア1、第1ビードフィラー部21及び成形面3aとともに、第2ビードフィラー部22の断面形状に対応する空間を形成し、第2の口金42の吐出口から吐出された第2のゴムR2を所望の断面形状を有する第2ビードフィラー部22に成形できる。最後に、第2ビードフィラー部22を成形後、第2の口金42を後退させる。
【0027】
<別実施形態>
(1)前述の実施形態では、ビードコア1の断面形状を六角形としているが、円形、楕円形、台形等としてもよい。ただし、ビードフィラー2は、ビードコア1の外周面との間に隙間が生じないような形状に成形される。
【0028】
(2)前述の実施形態では、ビードコア1のコア上面11が成形面3aに垂直な方向から径方向外側に傾斜しているが、ビードコア1の配置はこれに限定されず、ビードコア1のコア上面11が成形面3aに対して垂直となるように配置してもよい。
【0029】
(3)前述の実施形態では、ビードフィラー2が第1ビードフィラー部21と第2ビードフィラー部22とを備えているが、ビードフィラー2は、図5に示すような第3ビードフィラー部23を更に備えてもよい。また、第1ビードフィラー部21、第2ビードフィラー部22、第3ビードフィラー部23は、すべて同じゴムで成形されても、すべて異なるゴムで成形されてもよい。
【0030】
(4)前述の実施形態では、第1の口金41の先端をテーパ状としているが、これに限定されない。第1の口金41の先端は、先端の吐出口をビードコア1の外周側に接近させて第1のゴムR1をコア側面12と成形面3aとの間の空間に注入することができれば、ストレート状等でも構わない。
【符号の説明】
【0031】
1 ビードコア
1a ビードコアの外周面
2 ビードフィラー
3a 成形面
11 コア上面
12 コア側面
13 コア側面
21 第1ビードフィラー部
22 第2ビードフィラー部
41 第1の口金
R1 第1のゴム
R2 第2のゴム

図1
図2
図3
図4
図5
図6