特許第6605310号(P6605310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605310
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】放送受信装置及び放送受信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20191031BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20191031BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20191031BHJP
   H04N 21/442 20110101ALI20191031BHJP
   H04H 60/12 20080101ALI20191031BHJP
   H04H 20/22 20080101ALI20191031BHJP
【FI】
   H04B1/16 G
   H04B7/08 020
   H04N21/438
   H04N21/442
   H04H60/12
   H04H20/22
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-230389(P2015-230389)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-98814(P2017-98814A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】浜口 友也
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−102799(JP,A)
【文献】 特開2007−60624(JP,A)
【文献】 特開2007−288631(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131637(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04B 7/08
H04H 20/22
H04H 60/12
H04N 21/438
H04N 21/442
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送を受信する放送受信装置であって、
放送を受信する第1の受信系と、
放送を受信する第2の受信系と、
前記第1の受信系と第2の受信系とを用いて放送のダイバーシティ受信を行うダイバーシティ受信部と、
受信した放送の内容を出力する出力手段と、
制御部とを有し、
前記制御部は、動作モードとして第1の動作モードと第2の動作モードを有し、
前記第1の動作モードにおいて、制御部は、前記第1の受信系と前記第2の受信系の一方を現用受信系とし他方をバックグランド受信系として、前記現用受信系に受信対象の放送を受信させ、前記現用受信系が受信した放送の内容を前記出力手段に出力させると共に、前記バックグランド受信系に前記受信対象の放送と同じ内容を放送している各放送の受信状態を検出させ、所定の契機で、受信対象の放送を、当該放送と同じ内容を放送している受信状態の良好な放送のいずれかに変更し、
前記第2の動作モードにおいて、制御部は、前記ダイバーシティ受信部に、前記第1の受信系と第2の受信系とを用いた受信対象の放送のダイバーシティ受信を行せると共に、前記ダイバーシティ受信部が受信した放送の内容を前記出力手段に出力させ、
かつ、
前記制御部は、動作モードが第1の動作モードにあるときに、前記現用受信系における受信対象の放送の受信状態が予め定めた第1レベルより劣化した場合に、前記バックグランド受信系が検出した受信状態が予め定めた第2レベルより良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送候補が存在しない場合に、動作モードを第2の動作モードに切り替え、前記代替放送候補が存在する場合に、動作モードを第1の動作モードに維持し、
かつ、
当該制御部は、動作モードが第1の動作モードにあるときに、前記現用受信系における受信対象の放送の受信状態が予め定めた第1レベルより劣化していない場合には、動作モードを第1の動作モードに維持することを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
請求項1記載の放送受信装置であって、
前記第1の動作モードにおいて、制御部は、前記受信対象の放送の前記現用受信系における受信状態よりも受信状態が良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送が前記バックグランド受信系で検出されたことを前記所定の契機として、受信対象の放送を、当該代替放送に変更することを特徴とする放送受信装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の放送受信装置であって、
前記制御部は、動作モードが第2の動作モードにあるときに、当該第2の動作モードの継続時間が所定時間を経過した場合と、前記ダイバーシティ受信部のダイバーシティ受信によって受信対象の放送を正常に受信できなくなった場合とのうちの少なくとも一方の場合に、動作モードを第1の動作モードに切り替えることを特徴とする放送受信装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の放送受信装置であって、
前記放送は、FMオーディオ放送またはデジタルオーディオ放送であることを特徴とする放送受信装置。
【請求項5】
放送を受信する第1の受信系と、放送を受信する第2の受信系と、前記第1の受信系と第2の受信系とを用いて放送のダイバーシティ受信を行うダイバーシティ受信部と、受信した放送の内容を出力する出力手段とを備えた放送受信装置において、放送の受信を制御する放送受信制御方法であって、
前記放送受信装置が、動作モードとして第1の動作モードが設定されている期間中、前記第1の受信系と前記第2の受信系の一方を現用受信系とし他方をバックグランド受信系として、前記現用受信系に受信対象の放送を受信させ、前記現用受信系が受信した放送の内容を前記出力手段に出力させると共に、前記バックグランド受信系に前記受信対象の放送と同じ内容を放送している各放送の受信状態を検出させ、所定の契機で、受信対象の放送を、当該放送と同じ内容を放送している受信状態の良好な放送のいずれかに変更するステップと
前記放送受信装置が、動作モードとして第2の動作モードが設定されている期間中、前記ダイバーシティ受信部に、前記第1の受信系と第2の受信系とを用いた受信対象の放送のダイバーシティ受信を行せると共に、前記ダイバーシティ受信部が受信した放送の内容を前記出力手段に出力させるステップと、
前記放送受信装置が、動作モードが第1の動作モードにあるときに、前記現用受信系における受信対象の放送の受信状態が予め定めた第1レベルより劣化した場合に、前記バックグランド受信系が検出した受信状態が予め定めた第2レベルより良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送候補が存在しない場合に、動作モードを第2の動作モードに切り替え、前記代替放送候補が存在する場合に、動作モードを第1の動作モードに維持するステップとを有し、
前記放送受信装置は、動作モードが第1の動作モードにあるときに、前記現用受信系における受信対象の放送の受信状態が予め定めた第1レベルより劣化していない場合には、動作モードを第1の動作モードに維持することを特徴とする放送受信制御方法。
【請求項6】
請求項5記載の放送受信制御方法であって、
前記放送受信装置が、前記第1の動作モードが設定されている期間中に、前記受信対象の放送の前記現用受信系における受信状態よりも受信状態が良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送が前記バックグランド受信系で検出されたことを前記所定の契機として、受信対象の放送を、当該代替放送に変更するステップとを有することを特徴とする放送受信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置において、受信中の放送サービスから、当該放送サービスと同内容の放送を行っている放送サービスに、受信する放送サービスを切り替える技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放送受信装置において、受信中の放送サービスから、当該放送サービスと同内容の放送を行っている放送サービスに、受信する放送サービスを切り替える技術としては、DAB(デジタルオーディオ放送:Digital Audio Broadcasting)を受信するラジオ放送受信装置において、受信中のDABのサービスから、当該DABのサービスと同内容の放送を行っているDABのサービスに受信対象とする放送サービスを切り替える技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、DABとFM放送とを受信するラジオ放送受信装置において、受信中のDABのサービスから、当該DABのサービスと同内容の放送を行っているFM放送のステーションに受信対象とする放送サービスを切り替える技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【0004】
また、ラジオ放送受信装置において、受信品質を向上する技術としては、MRC(最大比合成:Maximum Ratio Combining)法に基づくダイバーシティ受信の技術が知られている(たとえば、特許文献3、4)。MRC法は、基本的には、各アンテナに対応する受信系で受信した放送信号の位相を同期させ、その受信レベルに応じた重み付けを行って放送信号の合成を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10 -200499号公報
【特許文献2】特開平11 -340853号公報
【特許文献3】特開2015- 29164号公報
【特許文献4】特開2010-226233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DABを受信する受信系を2系統備えたラジオ受信装置において、一方の受信系をDABのサービスの受信に用いると共に、他方の受信系を受信中のDABのサービスと同内容の放送を行っているDABのサービスのサーチに用いつつ、受信中のDABのサービスよりも受信状態のよい他のDABのサービスが発見されたときに、当該他のDABのサービスに受信対象とするDABのサービスを切り替えるDABフォロー動作を行うことが考えられる。
【0007】
また、このようなラジオ受信装置において、受信中のDABのサービスの受信品質が劣化したときに、2系統の受信系を用いてダイバーシティ受信を行って、受信中のDABのサービスの受信品質を向上することが考えられる。
【0008】
しかし、このようにすると、MRC法に基づくダイバーシティ受信を行っている期間中は、受信中のDABのサービスと同内容の放送を行っているDABのサービスのサーチを行うことができなくなるため、上述したDABフォロー動作の有益性を阻害する以下のような問題が生じる。
【0009】
すなわち、ダイバーシティ受信を行っている期間中に、受信中のDABのサービスと同内容の放送を行っている、より良い受信状態で受信できる他のDABのサービスが発生しても、すみやかに、当該他のDABのサービスに受信対象とするDABのサービスを切り替えることができない。
【0010】
また、この場合には、たとえば、ダイバーシティ受信によっても正常にDABのサービスを受信できくなった等の理由によりダイバーシティ受信を終了した後に、受信中のDABのサービスよりも受信状態のよい他のDABのサービスのサーチを開始することとなるため、ダイバーシティ受信を終了時点から当該他のDABのサービスを発見するまでの間、DABのサービスの受信が中断してしまうこととなる。
【0011】
そこで、本発明は、放送サービスを受信する受信系を2系統備え、一方の受信系を放送サービスの受信に用い、他方の受信系を受信中の放送サービスと同内容の放送を行っている放送サービスのサーチに用いつつ、受信中の放送のサービスよりも受信状態のよい他の放送サービスに受信対象とする放送サービスを切り替える放送サービスフォロー動作を行う放送受信装置において、当該放送サービスフォロー動作の有益性をできるだけ損なわないようにダイバーシティ受信を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題達成のために、本発明は、放送を受信する放送受信装置に、放送を受信する第1の受信系と、放送を受信する第2の受信系と、前記第1の受信系と第2の受信系とを用いて放送のダイバーシティ受信を行うダイバーシティ受信部と、受信した放送の内容を出力する出力手段と、制御部とを備えたものである。ここで、前記制御部は、動作モードとして第1の動作モードと第2の動作モードを有し、前記第1の動作モードにおいて、制御部は、前記第1の受信系と前記第2の受信系の一方を現用受信系とし他方をバックグランド受信系として、前記現用受信系に受信対象の放送を受信させ、前記現用受信系が受信した放送の内容を前記出力手段に出力させると共に、前記バックグランド受信系に前記受信対象の放送と同じ内容を放送している各放送の受信状態を検出させ、所定の契機で、受信対象の放送を、当該放送と同じ内容を放送している受信状態の良好な放送のいずれかに変更し、前記第2の動作モードにおいて、制御部は、前記ダイバーシティ受信部に、前記第1の受信系と第2の受信系とを用いた受信対象の放送のダイバーシティ受信を行せると共に、ダイバーシティ受信部が受信した放送の内容を前記出力手段に出力させる。また、前記制御部は、動作モードが第1の動作モードにあるときに、前記現用受信系における受信対象の放送の受信状態が予め定めた第1レベルより劣化した場合に、前記バックグランド受信系が検出した受信状態が予め定めた第2レベルより良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送候補が存在しない場合に、動作モードを第2の動作モードに切り替え、前記代替放送候補が存在する場合に、動作モードを第1の動作モードに維持する。
【0013】
ここで、このような放送受信装置は、前記第1の動作モードにおいて、制御部が、前記受信対象の放送の前記現用受信系における受信状態よりも受信状態が良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送が前記バックグランド受信系で検出されたことを前記所定の契機として、受信対象の放送を、当該代替放送に変更するように構成してもよい。
【0014】
また、以上の放送受信装置は、前記制御部において、動作モードが第2の動作モードにあるときに、当該第2の動作モードの継続時間が所定時間を経過した場合と、前記ダイバーシティ受信部のダイバーシティ受信によって受信対象の放送を正常に受信できなくなった場合とのうちの少なくとも一方の場合に、動作モードを第1の動作モードに切り替えるように構成してもよい。
【0015】
また、以上の放送受信装置において、前記放送は、たとえば、FMオーディオ放送またはデジタルオーディオ放送であってよい。
以上のような放送受信装置によれば、放送を受信する受信系として第1の受信系と第2の受信系との2系統の受信系備え、一方の受信系を受信対象の放送の受信に用い、他方の受信系を受信対象の放送と同内容の放送を行っている放送のサーチに用いつつ、所定の契機で放送のサーチで検出された受信状態のよい他の放送に受信対象とする放送を切り替える第1の動作モードを備えた放送受信装置において、第1の動作モードで動作中に、受信対象の放送の受信状態が第1のレベルより劣化したときに、前記サーチで第2のレベルより良好な前記受信対象の放送と同じ内容を放送している放送である代替放送候補が検出されていない場合にのみ、第2の動作モードに遷移して、第1の受信系と第2の受信系とを用いたダイバーシティ受信を開始し、代替放送候補が検出されている場合には、第1の動作モードを維持する。
【0016】
ここで、代替放送候補は、第2のレベルを適切に設定することにより、近い将来に良好に受信可能となる放送であることが期待できる放送とすることができる。したがって、本発明によれば、近い将来に良好に受信可能となることが期待できる放送がある場合に、当該放送の受信状態が良好となったときの当該放送への受信対象の放送の切り替えの待機を、ダイバーシティ受信の開始よりも優先して行うことができる。そして、このような動作により、ダイバーシティ受信の実行中に、受信対象放送と同内容を放送している受信状態が良好な放送が発生して、上述したような問題が発生してしまうことが抑制されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、放送サービスを受信する受信系を2系統備え、一方の受信系を放送サービスの受信に用い、他方の受信系を受信中の放送サービスと同内容の放送を行っている放送サービスのサーチに用いつつ、受信中の放送のサービスよりも受信状態のよい他の放送サービスに受信対象とする放送サービスを切り替える放送サービスフォロー動作を行う放送受信装置において、当該放送サービスフォロー動作の有益性をできるだけ損なわないようにダイバーシティ受信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るラジオ放送受信装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るモード切替処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態にラジオ放送受信装置の受信動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るラジオ放送受信装置の構成を示す。
ここで、本実施形態に係るラジオ放送受信機は、自動車に搭載されるラジオ受信機やポータブルラジオ受信機などの、ラジオ放送受信機の位置が変動するラジオ放送受信機である。
そして、図示するように、ラジオ放送受信機は、第1DABチューナ1、第2DABチューナ2、FMチューナ3、出力セレクタ4、アンプ5、スピーカ6、制御部7、表示部8、操作部9を備えている。
【0020】
ここで、第2DABチューナ2は、DABの放送規格によるラジオ放送を受信する受信部であり、制御部7から受信サービスとして設定されたサービスが放送されている周波数チャネルの放送信号を検出し、受信信号として出力するDABフロントエンド21、DABフロントエンド21が受信した受信信号から受信サービスの音声信号をデコードし、出力セレクタ4に出力するデコーダ22を備えている。ここで、デコーダ22は、受信信号に含まれる制御情報を抽出し制御部7に送る処理も行う。
なお、DABでは、一つの周波数チャネルで複数の音声放送を放送することができ、一つの音声放送が一つのサービスに対応する。
【0021】
また、第1DABチューナ1は、DABの放送規格によるラジオ放送を受信する受信部であり、制御部7から受信サービスとして設定されたサービスが放送されている周波数チャネルの放送信号を検出し、受信信号として出力するDABフロントエンド11、デコーダ12、ダイバーシティ受信処理部13、セレクタ14を備えている。そして、ダイバーシティ受信処理部13は、DABフロントエンド11が出力する受信信号と第2チューナのDABフロントエンド21がが出力する受信信号とのMRC法に基づく合成を行い、合成した受信信号を出力する。そして、セレクタ14は、DABフロントエンド11が出力する受信信号とダイバーシティ受信処理部13の出力する受信信号とのうちの一方をデコーダ12に出力し、デコーダ12はセレクタ14から出力された受信信号から、受信サービスの音声信号をデコードし、出力セレクタ4に出力する。また、デコーダ12は、受信信号に含まれる制御情報を抽出し制御部7に送る処理も行う。
【0022】
また、FMチューナ3は、FM放送の放送規格によるラジオ放送を受信する受信部であり、制御部7から受信ステーションとして設定されたステーションの周波数チャネルを受信するFMフロントエンド31、FMフロントエンド31で受信した受信信号から音声信号を復調し、出力セレクタ4に出力するFM復調部32、音声信号に多重化されて送信されたデータ信号から制御情報をデコードし制御部7に送るRDSデコーダ33を備えている。
【0023】
なお、FM放送では、一つの周波数チャネルで一つの音声放送を行っており、一つの音声放送が一つのステーションに対応する。
そして、出力セレクタ4は、制御部7の制御に従って、第1DABチューナ1、第2DABチューナ2、FMチューナ3が各々出力する音声信号のいずれかを選択しアンプ5に出力し、アンプ5はセレクタ14から出力された音声信号を増幅しスピーカ6に出力する。
【0024】
ここで、第1DABチューナ1のDABフロントエンド11やデコーダ12と、第2DABチューナ2のDABフロントエンド21やデコーダ22は、受信電界強度やSN比や受信データの誤り率などの、受信中のDABのサービスの受信品質に係る情報を制御部7に通知する。また、FMチューナ3の、FMフロントエンド31は、受信電界強度やSN比などの、受信中のステーションの受信品質に係る情報を制御部7に通知する。
【0025】
そして、制御部7は、第1DABチューナ1や第2DABチューナ2から通知されたDABのサービスの受信品質に係る情報から、第1DABチューナ1や第2DABチューナ2が受信動作を行っているDABのサービスの受信品質を算定し、FMチューナ3のFMフロントエンド31から通知されたFM放送の受信品質に係る情報から、FMチューナ3が受信動作を行っているFM放送のステーションの受信品質を算定する。
【0026】
次に、第1DABチューナ1のデコーダ12や第2DABチューナ2のデコーダ22が制御部7に送る制御情報には、受信中のサービスの識別を示すSIDや、同内容のプログラム(番組)を放送しているDABサービスやFM放送のステーションを示すサービスリンキング情報やフォローイング情報等が含まれる。また、FMチューナ3は、RDSデコーダ33が制御部7に送る制御情報には、受信中の周波数チャネルのステーションからFM放送されるプログラム(番組)の識別子となるプログラム識別子PIや、同内容のプログラム(番組)を放送しているFM放送のステーションを示すAFなどが含まれる。
【0027】
そして、制御部7は、これら第1DABチューナ1、第2DABチューナ2、FMチューナ3から送られる、これらの制御情報に基づいて、同内容のプログラムを放送しているDABのサービスや、FM放送のステーションを識別する。
【0028】
さて、このようなラジオ放送受信装置は、制御部7によって制御される動作モードとして、DABシングル受信モードと、DABダイバーシティ受信モードと、FM受信モードとを備えている。
【0029】
そして、DABシングル受信モードを設定している期間中、制御部7は、第1DABチューナ1と第2DABチューナ2のうちの一方を現用チューナに、他方をバックグランドチューナに設定し、現用チューナに、受信対象のサービスを受信サービスとして設定することにより、受信対象のサービスの受信を行わせると共に、出力セレクタ4に現用チューナが出力する音声信号をアンプ5を介してスピーカ6に出力させる。また、制御部7は、受信対象のサービスと同内容のプログラムを放送しているDABのサービスを受信サービスとしてバックグランドチューナに巡回的に設定することにより、受信対象のサービスと同内容のプログラムを放送しているDABのサービスの各々の受信品質を検出するDABサーチを行う。なお、DABシングル受信モードにおいて、第1DABチューナ1のセレクタ14は、DABフロントエンド11が出力する受信信号をデコーダ12に出力するように設定する。
【0030】
また、制御部7は、DABシングル受信モードを設定している期間中に、バックグランドチューナを用いたDABサーチによって、現用チューナで受信中のサービスと同内容のプログラムを放送している、現用チューナで受信中のサービスよりも受信品質の良い他のサービスが発見されたならば、受信対象のサービスを発見された他のサービスに切り替えるDABフォロー制御動作を行う。なお、DABフォロー制御動作は、現用チューナの受信サービスを発見された他のサービスに更新することにより行ってもよいし、バックグランドチューナに発見された他のサービスの受信を開始させた上で、バックグランドチューナと現用チューナとを、スピーカ6の出力音声が切り替え前後でシームレスに連続するように交換することにより行ってもよい。
【0031】
また、DABシングル受信モードを設定している期間中、制御部7は、受信対象のサービスと同内容のプログラムを放送しているFM放送のステーションを受信ステーションとしてFMチューナ3に巡回的に設定することにより、受信対象のサービスと同内容のプログラムを放送しているFM放送のステーションの各々の受信品質を検出するFMサーチを行う。
【0032】
次に、DABダイバーシティ受信モードを設定している期間中、制御部7は、第1DABチューナ1と第2DABチューナ2の双方に受信対象のサービスの受信を行わせ、第1DABチューナ1のセレクタ14に、ダイバーシティ受信処理部13が出力する受信信号をデコーダ12に出力させ、出力セレクタ4に第1DABチューナ1が出力する音声信号をアンプ5を介してスピーカ6に出力させることにより、受信対象のサービスのダイバーシティ受信を行う。
【0033】
また、DABダイバーシティ受信モードを設定している期間中、制御部7は、FMチューナ3を用いて、上述したFMサーチを行う。
【0034】
次に、FM受信モードを設定している期間中、制御部7は、FMチューナ3に受信対象のステーションの受信を行わせ、出力セレクタ4にFMチューナ3にが出力する音声信号をアンプ5を介してスピーカ6に出力させる。
【0035】
また、FM受信モードを設定している期間中、制御部7は、第2DABチューナ2をバックグランドチューナに設定し、バックグランドチューナを用いて、受信対象のステーションと同内容のプログラムを放送しているDABのサービスの各々の受信品質を巡回的に検出するDABサーチを行う。
【0036】
以下、このような動作モードの切り替えを行うために制御部7が行うモード切替処理について説明する。ここで、このモード切替処理は、ユーザから、放送受信の開始の指示を受け付けたときに開始される。
【0037】
図2に、このモード切替処理の手順を示す。
図示するようにこの処理では、DABシングル受信モードを設定し(ステップ202)、ユーザから指定されたサービスや前回最後に受信対象としていたサービスを受信対象のサービスに設定し、受信対象のサービスの受信を開始する(ステップ204)。
【0038】
そして、上述した現用チューナにおける受信対象のサービスの受信品質QCRが所定のしきい値Th1より劣化するのを監視し(ステップ206)、受信品質QCRが所定のしきい値Th1より劣化したならば、代替DABサービス候補が存在するかどうかを調べる(ステップ208)。
【0039】
ここで、しきい値Th1は、サービスを正常に受信可能でなくなる受信品質に所定のマージンを加えた値を予め設定する。
また、代替DABサービス候補とは、現用チューナにおける受信対象のサービスと同内容のプログラムを放送しているDABのサービスであって、上述のDABサーチで検出された受信品質が、レベルQa以上であるサービスである。また、レベルQaの値としては、サービスを正常に受信可能な受信品質の最低の値、または、サービスを正常に受信可能な受信品質の最低の値に近い値を予め設定する。
【0040】
そして、代替DABサービス候補が存在する場合には(ステップ208)、ステップ206からの処理に戻る。
一方、代替DABサービス候補が存在しない場合には、動作モードをDABダイバーシティ受信モードに切り替え(ステップ210)、上述したように現用チューナで受信していた受信対象のサービスのダイバーシティ受信を開始する。
【0041】
そして、ダイバーシティ受信を開始したならば、DABダイバーシティ受信モードの継続時間がT1(たとえば、240秒)以上となる状態の発生(ステップ212)と、第1DABチューナ1または第2DABチューナ2における受信対象のサービスの受信品質QCRが所定のしきい値Th0より良好である状態の発生(ステップ214)と、受信品質QCRが所定のしきい値Th3未満となる状態の発生と(ステップ216)、受信品質QCRが所定のしきい値Th2未満となる状態の発生と(ステップ218)を監視する。
【0042】
ここで、Th0>Th1>Th2>Th3であり、Th0はサービスを充分に良好に受信可能な受信品質の最低値であり、Th2はダイバーシティ受信によってもサービスの受信に障害が発生し得る受信品質の最高値であり、Th3はサービスを受信できていないことを示す受信品質である。
【0043】
そして、DABダイバーシティ受信モードの継続時間がT1(たとえば、240秒)以上となる状態(ステップ212)と、第1DABチューナ1または第2DABチューナ2における受信対象のサービスの受信品質QCRが所定のしきい値Th0より良好である状態(ステップ214)と、受信品質QCRが所定のしきい値Th3未満となる状態(ステップ216)とのいずれかが発生したならば、動作モードをDABシングル受信モードに復帰し(ステップ226)、ステップ206からの処理に戻る。
【0044】
一方、受信品質QCRが所定のしきい値Th2未満となる状態が発生した場合には(ステップ218)、代替FMステーションが存在するかどうかを調べる(ステップ220)。ここで、代替FMステーションとは、ダイバーシティ受信している受信対象のサービスと同内容のプログラムを放送しているFM放送のステーションのうちの、上述のFMサーチで検出された受信品質が正常受信可能なレベルのステーションである。
【0045】
そして、代替FMステーションが存在しない場合には、動作モードをDABシングル受信モードに復帰し(ステップ226)、ステップ206からの処理に戻る。
一方、代替FMステーションが存在する場合には、動作モードとしてFM受信モードを設定し、代替FMステーションを受信対象のステーションに設定し、FMチューナ3に受信対象のステーションを受信ステーションとして設定し、代替FMステーションの受信を開始する(ステップ222)。
【0046】
そして、FM受信モードを設定したならば、代替DABサービスの発生を待ち(ステップ224)、代替DABサービスが発生したならば、動作モードをDABシングル受信モードに復帰し(ステップ226)、代替DABサービスを受信対象のサービスに設定し、現用チューナに受信対象のサービスを受信サービスとして設定し、ステップ206からの処理に戻る。
【0047】
ここで代替DABサービスとは、FMチューナ3で受信している受信対象のステーションと同内容のプログラムを放送しているDABのサービスのうちの、上述のDABサーチで検出された受信品質が充分に良好なレベルのサービスである。
【0048】
以上、制御部7が行うモード切替処理について説明した。
ここで、このようなモード切替処理によるラジオ放送受信装置の受信動作の例を図3に示す。
いま、図3bに示すように、時刻T0において動作モードとしてDABシングル受信モードが、受信対象のサービスとしてサービスS1が設定されているものとする。また、サービスS1とサービスS2は、同内容のプログラムを放送しているDABのサービスであるものとする。
【0049】
このような状況において、図3aに示すように、サービスS1の受信品質が時間経過と共に劣化していき、サービスS2の受信品質が時間経過と共に向上していった場合、時刻T1において、受信対象のサービスS1の受信品質がしきい値Th1より劣化すると、代替DABサービス候補の有無が調査される。時刻T1の時点では、サービスS2の受信品質はレベルQa以上まで向上しているので、サービスS2は代替DABサービス候補となり、この時点では、動作モードの切り替えは行われず、DABシングル受信モードと、現用チューナにおけるサービスS1の受信対象のサービスとしての受信と、バックグランドチューナにおけるDABサーチとが継続される。
【0050】
そして、その後、時刻T2において、DABサーチによって、サービスS2の受信品質が受信対象のサービスS1の受信品質より良好となったことが検出されると、受信対象のサービスがサービスS1からサービスS2に切り替えられる。
【0051】
そして、その後、時刻T3において、受信対象のサービスS2の受信品質がしきい値Th1より良好となると、以降、受信対象のサービスS2の受信が安定的に行われることとなる。
ここで、図3cは、比較例として、時刻T1において受信対象のサービスS1の受信品質がしきい値Th1より劣化したときに、動作モードをDABダイバーシティ受信モードに切り替えた場合の動作を示したものである。
【0052】
図示するように、時刻T1において動作モードをDABダイバーシティ受信モードに切り替えた場合には、時刻T1から第1DABチューナ1と第2DABチューナ2を用いた受信対象のサービスS1のダイバーシティ受信が開始され、バックグランドでのDABサーチは行われなくなる。
【0053】
そして、時刻T4において、受信対象のサービスS1の受信品質がしきい値Th3より劣化して受信不可能になると、動作モードがDABシングル受信モードに復帰し、バックグランドチューナによるDABサーチが再開される。
【0054】
そして、DABサーチで、受信対象のサービスS1より受信品質が良好なサービスS2が検出されたならば、受信対象のサービスがサービスS1からサービスS2に切り替えられ、サービスS2の受信が開始される。
【0055】
ここで、図示するように、図3cの例では、動作モードをDABシングル受信モードに復帰してから受信対象のサービスがサービスS2に切り替えられるまでには、DABサーチによるサービスS2の発見に要する時間Tdを要し、この時間Tdの間はサービスを受信しユーザに対して出力することができなくなる。
【0056】
一方、本実施形態によれば、図3aの状況に対しては、図3bに示したようにサービスを受信しユーザに対して出力することができなくなる状況は発生しない。
なお、図3aに示した状況において、受信対象のサービスS1と同内容の番組を放送しているサービスS2が存在していない場合には、時刻T1において、即座に動作モードがDABダイバーシティ受信モードに切り替えられ、時刻T1から第1DABチューナ1と第2DABチューナ2を用いた受信対象のサービスS1のダイバーシティ受信が開始されることとなる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態は、DAB(Digital Audio Broadcasting)のダイバーシティ受信と同内容の番組を放送している放送サービスへの自動切替(フォロー)を行う場合について示したが、本実施形態は、RDSによるデータ放送を伴うFM放送やデジタルテレビ放送などの、DAB以外の他の放送のダイバーシティ受信とフォローを行う場合についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…第1DABチューナ、2…第2DABチューナ、3…FMチューナ、4…出力セレクタ、5…アンプ、6…スピーカ、7…制御部、8…表示部、9…操作部、11…DABフロントエンド、12…デコーダ、13…ダイバーシティ受信処理部、14…セレクタ、21…DABフロントエンド、22…デコーダ、31…FMフロントエンド、32…FM復調部、33…RDSデコーダ。
図1
図2
図3