特許第6605338号(P6605338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605338
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】蓄冷機能付きエバポレータ
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20191031BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20191031BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20191031BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   F25B1/00 321C
   F28D20/00 B
   F25B39/02 Z
   B60H1/32 613C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-9899(P2016-9899)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-129326(P2017-129326A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】平山 貴司
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−040958(JP,A)
【文献】 特開2015−064136(JP,A)
【文献】 特開2014−126307(JP,A)
【文献】 特開2014−055763(JP,A)
【文献】 特開2014−24436(JP,A)
【文献】 特開2004−34864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
B60H 1/32
F25B 39/02
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた複数の扁平状冷媒流通管と、冷媒が貯められる冷媒貯蔵容器と、アウターフィンとを有する熱交換コア部を備え、熱交換コア部において、複数の冷媒流通管が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうちの一部でかつ複数の第1間隙に、冷媒貯蔵容器が冷媒流通管に接するように配置され、前記全間隙のうちの残りでかつ複数の第2間隙にアウターフィンが冷媒流通管に接するように配置されており、左右方向に隣り合う第1間隙どうしの間に少なくとも1つの第2間隙が存在し、第1間隙の左右両側の冷媒流通管のうち少なくともいずれか一方の冷媒流通管内と、冷媒貯蔵容器内とが通じさせられている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
熱交換コア部において、通風方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管からなる管組が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う管組どうしの間に間隙が形成されており、第1間隙の左右両側の管組のうち少なくともいずれか一方の管組における風下側の冷媒流通管内と、冷媒貯蔵容器内とが通じさせられている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
冷媒流通管および冷媒貯蔵容器にそれぞれ互いに通じる連通穴が形成されており、冷媒流通管と冷媒貯蔵容器とが少なくとも連通穴の周囲の部分において接合されている請求項1または2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
冷媒流通管および冷媒貯蔵容器に、互いに通じる複数の連通穴が上下方向に間隔をおいて形成されている請求項3記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
冷媒貯蔵容器の左右両側壁のうち少なくともいずれか一方に外方に膨出した凸部が設けられ、当該凸部の膨出端壁の少なくとも一部が冷媒流通管に接しており、当該凸部の膨出端壁における冷媒流通管に接した部分に連通穴が形成されている請求項3または4記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図面に矢印Xで示す通風方向の下流側から見た上下、左右(図1の上下、左右)を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた複数の扁平状冷媒流通管と、蓄冷材が封入された蓄冷材容器と、アウターフィンとを有する熱交換コア部を備え、熱交換コア部において、複数の冷媒流通管が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうちの一部でかつ複数の第1間隙に、蓄冷材が封入された蓄冷材容器が冷媒流通管に接するように配置され、前記全間隙のうちの残りでかつ複数の第2間隙にアウターフィンが冷媒流通管に接するように配置されている蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器の両側壁を経て蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に冷熱が蓄えられるようになっている。一方、圧縮機が停止した際には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、蓄冷材容器の両側壁を経て冷媒流通管に伝えられ、冷媒流通管を通って第1間隙の両隣の第2間隙に配置されたアウターフィンに伝えられ、アウターフィンから当該第2間隙を流れる空気に放冷されるようになっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、比較的高価な蓄冷材を用いているので、コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−61137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、コストを低減しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた複数の扁平状冷媒流通管と、冷媒が貯められる冷媒貯蔵容器と、アウターフィンとを有する熱交換コア部を備え、熱交換コア部において、複数の冷媒流通管が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうちの一部でかつ複数の第1間隙に、冷媒貯蔵容器が冷媒流通管に接するように配置され、前記全間隙のうちの残りでかつ複数の第2間隙にアウターフィンが冷媒流通管に接するように配置されており、左右方向に隣り合う第1間隙どうしの間に少なくとも1つの第2間隙が存在し、第1間隙の左右両側の冷媒流通管のうち少なくともいずれか一方の冷媒流通管内と、冷媒貯蔵容器内とが通じさせられている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
2)熱交換コア部において、通風方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管からなる管組が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う管組どうしの間に間隙が形成されており、第1間隙の左右両側の管組のうち少なくともいずれか一方の管組における風下側の冷媒流通管内と、冷媒貯蔵容器内とが通じさせられている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
3)冷媒流通管および冷媒貯蔵容器にそれぞれ互いに通じる連通穴が形成されており、冷媒流通管と冷媒貯蔵容器とが少なくとも連通穴の周囲の部分において接合されている上記1)または2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
4)冷媒流通管および冷媒貯蔵容器に、互いに通じる複数の連通穴が上下方向に間隔をおいて形成されている上記3)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
5)冷媒貯蔵容器の左右両側壁のうち少なくともいずれか一方に外方に膨出した凸部が設けられ、当該凸部の膨出端壁の少なくとも一部が冷媒流通管に接しており、当該凸部の膨出端壁における冷媒流通管に接した部分に連通穴が形成されている上記3)または4)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0017】
上記1)〜5)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた複数の扁平状冷媒流通管と、冷媒が貯められる冷媒貯蔵容器と、アウターフィンとを有する熱交換コア部を備え、熱交換コア部において、複数の冷媒流通管が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、全間隙のうちの一部でかつ複数の第1間隙に、冷媒貯蔵容器が冷媒流通管に接するように配置され、前記全間隙のうちの残りでかつ複数の第2間隙にアウターフィンが冷媒流通管に接するように配置されており、左右方向に隣り合う第1間隙どうしの間に少なくとも1つの第2間隙が存在し、第1間隙の左右両側の冷媒流通管のうち少なくともいずれか一方の冷媒流通管内と、冷媒貯蔵容器内とが通じさせられているので、圧縮機が作動している通常の冷房時に、カーエアコンを循環して蓄冷機能付きエバポレータの冷媒流通管を通過する冷媒の一部が冷媒貯蔵容器に入り、冷媒貯蔵容器内に蓄えられる。そして、圧縮機が停止した際には、冷媒貯蔵容器内に蓄えられている冷媒の有する冷熱が、冷媒貯蔵容器の両側壁を経て冷媒流通管に伝えられ、冷媒流通管を通って第1間隙の両隣の第2間隙に配置されたアウターフィンに伝えられ、アウターフィンから当該第2間隙を流れる空気に放冷される。その結果、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、冷媒貯蔵容器内に蓄えられた冷媒が有する冷熱を利用して車室内を冷却することが可能になり、エンジンが停止した際の冷房能力の急激な低下が抑制される。したがって、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータのように比較的高価な蓄冷材を用いる必要はなく、コストを低減することが可能になる。
【0018】
さらに、第1間隙の左右両側の冷媒流通管のうち少なくともいずれか一方の冷媒流通管内と、冷媒貯蔵容器内とが通じさせられているので、両者を通じさせる位置を適宜選択することによって、冷媒流通管内の冷媒圧力を部分的に下げることが可能になる。したがって、冷媒循環量を減らして各冷媒流通管内への冷媒流入量を均一化することができ、圧縮機が作動している通常の冷房時の性能を向上させることができる。
【0019】
上記2)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、次の効果を奏する。すなわち、通風方向に並んだ2つの冷媒流通管からなる管組においては、外部から流入した冷媒は、風上側冷媒流通管よりも先に風下側冷媒流通管内を流れるようになっており、風下側冷媒流通管を流れる冷媒は風上側冷媒流通管を流れる冷媒よりも多くの冷熱を有する。したがって、エンジンが停止した際の冷房能力の急激な低下が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を概略的に示す一部切り欠き斜視図である。
図2図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる冷媒貯蔵容器の左側面図である。
図3図1の蓄冷機能付きエバポレータに用いられる冷媒貯蔵容器の右側面図である。
図4図2のA−A線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0023】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2図4はその要部の構成を示す。
【0024】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製上ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製下ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0025】
上ヘッダタンク(2)は、風下側に位置する風下側上ヘッダ部(5)と、風上側に位置しかつ風下側上ヘッダ部(5)に一体化された風上側上ヘッダ部(6)とを備えている。風下側上ヘッダ部(5)の左端部に冷媒入口(7)が設けられ、風上側上ヘッダ部(6)の左端部に冷媒出口(8)が設けられている。下ヘッダタンク(3)は、風下側に位置する風下側下ヘッダ部(9)と、風上側に位置しかつ風下側下ヘッダ部(9)に一体化された風上側下ヘッダ部(11)とを備えている。
【0026】
熱交換コア部(4)には、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(12)が、左右方向(冷媒流通管(12)の厚み方向)に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、通風方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管(12)からなる複数の管組(13)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(12)よりなる管組(13)の隣り合うものどうしの間に間隙(14A)(14B)が形成されている。風下側の冷媒流通管(12)の上端部は風下側上ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は風下側下ヘッダ部(9)に接続されている。また、風上側の冷媒流通管(12)の上端部は風上側上ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は風上側下ヘッダ部(11)に接続されている。
【0027】
熱交換コア部(4)における全間隙(14A)(14B)のうち一部でかつ複数の第1間隙(14A)に、アルミニウム製冷媒貯蔵容器(15)が、各管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)に跨るように配置されて両冷媒流通管(12)にろう材を介して接合されている。以下、ろう材を介しての接合をろう付と称する。熱交換コア部(4)における全間隙(14A)(14B)のうち残りでかつ複数の第2間隙(14B)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアウターフィン(16)が、各管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)に跨るように配置されて両冷媒流通管(12)にろう付されている。左右方向に隣り合う2つの第1間隙(14A)どうしの間には少なくとも1つ、ここでは2つの第2間隙(14B)が存在している。左右方向に隣り合う2つの第1間隙(14A)どうしの間の第2間隙(14B)の数は3以上でもよく、その上限は7であることが好ましい。また、左右両端の管組(13)の外側にも、アウターフィン(16)が、管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)に跨るように配置されて両冷媒流通管(12)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(16)の外側にアルミニウム製サイドプレート(17)が配置されてアウターフィン(16)にろう付されている。
【0028】
そして、冷媒は、冷媒入口(7)を通ってエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出し、空気は、第2間隙(14B)を図面に矢印Xで示す方向に通過するようになっている。
【0029】
図2図4に示すように、冷媒貯蔵容器(15)は、長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を通風方向に向けた略縦長方形の扁平中空状であり、熱交換コア部(4)の通風方向の全幅の範囲内に位置している。冷媒貯蔵容器(15)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ一定幅を有する周縁の帯状部(18a)(19a)どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状のアルミニウム製容器構成板(18)(19)よりなる。
【0030】
冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)外面に、それぞれ上下方向に一定の流路長さを有するとともに上下両端が開口し、かつ凝縮水を上方から下方に流して下端開口から排水する複数の凝縮水排水溝(21)が通風方向に間隔をおいて形成されている。各凝縮水排水溝(21)は、冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)に設けられて外方に膨出した2つの排水溝用凸部(22)の間に形成されており、1つの凝縮水排水溝(21)を形成する2つの排水溝用凸部(22)のうち少なくともいずれか一方の排水溝用凸部(22)の長さは、冷媒貯蔵容器(15)の通風方向の幅よりも長くなっている。各冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)のすべての排水溝用凸部(22)の膨出高さは等しくなっており、すべての排水溝用凸部(22)の膨出端壁は同一垂直面上に位置している。また、排水溝用凸部(22)における第1間隙(14A)を形成する左右両管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)の通風方向の範囲内に位置する部分の膨出端壁が、冷媒流通管(12)に接触した状態でろう付されている。なお、隣り合う2つの凝縮水排水溝(21)は、両凝縮水排水溝(21)間に位置する排水溝用凸部(22)を共有している。左側壁(15a)の凝縮水排水溝(21)および排水溝用凸部(22)と、右側壁(15a)の凝縮水排水溝(21)および排水溝用凸部(22)とは、全体に重複しないように、同一水平面内において通風方向にずれて設けられている。これに代えて、左側壁(15a)の凝縮水排水溝(21)および排水溝用凸部(22)と、右側壁(15a)の凝縮水排水溝(21)および排水溝用凸部(22)とが、冷媒貯蔵容器(15)の左右方向の中心を通る垂直面を対称中心として面対称となるように設けられ、全体として重複していてもよい。なお、凝縮水排水溝(21)内を微量の空気も流れる。
【0031】
冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)の全排水溝用凸部(22)のうち少なくとも一部は、第1間隙(14A)の左右両側の管組(13)における風下側冷媒流通管(12)の通風方向の範囲内に存在する部分を有している。そして、風下側冷媒流通管(12)の通風方向の範囲内に存在する部分を有する全排水溝用凸部(22)のうちの少なくとも一部の膨出端壁における風下側冷媒流通管(12)に接した部分に、貫通状の連通穴(23)が形成されている。すなわち、冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)には、複数の連通穴(23)が上下方向に間隔をおいて形成されていることになる。また、第1間隙(14A)の左右両側の管組(13)の風下側冷媒流通管(12)に、複数の貫通状の連通穴(24)が、冷媒貯蔵容器(15)の連通穴(23)と合致するように上下方向に間隔をおいて形成されている。冷媒流通管(12)と冷媒貯蔵容器(15)の排水溝用凸部(22)の膨出端壁とは、少なくとも連通穴(23)(24)の周囲の部分においてろう付されており、これにより第1間隙(14A)の左右両側の管組(13)における風下側の冷媒流通管(12)内と、冷媒貯蔵容器(15)内とが通じさせられている。
【0032】
なお、凝縮水排水溝(21)および排水溝用凸部(22)は、冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)のうちいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0033】
冷媒貯蔵容器(15)内には、オフセット状のアルミニウム製インナーフィン(25)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(25)は、上下方向にのびる波頂部、上下方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部からなる波状帯板が、上下方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成され、上下方向に隣り合う2つの波状帯板の波頂部どうしおよび波底部どうしが通風方向に位置ずれしているものである。
【0034】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。圧縮機が作動している通常の冷房時には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出する。そして、カーエアコンを循環して蓄冷機能付きエバポレータ(1)を通過する冷媒が、冷媒流通管(12)内を流れる間に第2間隙(14B)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0035】
圧縮機が作動している通常の冷房時には、蓄冷機能付きエバポレータ(1)を通過する冷媒の一部が、風下側冷媒流通管(12)の連通穴(24)および冷媒貯蔵容器(15)の連通穴(23)を通って冷媒貯蔵容器(15)内に入り、冷媒貯蔵容器(15)内に蓄えられる。
【0036】
また、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒貯蔵容器(15)表面に凝縮水が発生し、当該凝縮水は凝縮水排水溝(21)内に入り、表面張力により凝縮水排水溝(21)の両側の排水溝用凸部(22)に沿うようにして凝縮水排水溝(21)内に溜まる。溜まった凝縮水が多くなると、溜まった凝縮水に作用する重力が表面張力よりも大きくなって、凝縮水排水溝(21)内を流下し、下方に排水される。
【0037】
圧縮機の停止時には、冷媒貯蔵容器(15)内に蓄えられている冷媒の有する冷熱が、冷媒貯蔵容器(15)の左右両側壁(15a)に設けられた排水溝用凸部(22)の膨出端壁を経て直接冷媒流通管(12)に伝わるとともに、インナーフィン(25)から左右両側壁(15a)における冷媒流通管(12)にろう付されていない部分および排水溝用凸部(22)の膨出端壁を経て冷媒流通管(12)に伝わり、さらに冷媒流通管(12)を通過して当該冷媒流通管(12)における冷媒貯蔵容器(15)とは反対側にろう付されている第2間隙(14B)のアウターフィン(16)に伝わる。アウターフィン(16)に伝わった冷熱は、冷媒貯蔵容器(15)が配置されている第1間隙(14A)の両隣の第2間隙(14B)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0038】
上述した実施形態においては、風下側冷媒流通管(12)内と冷媒貯蔵容器(15)内とが通じさせられているが、これに限定されるものではなく、風上側冷媒流通管(12)内と冷媒貯蔵容器(15)内、または風下側および風上側の両冷媒流通管(12)内と冷媒貯蔵容器(15)内とが通じさせられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0040】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(4):熱交換コア部
(12):熱交換管
(13):管組
(14A):第1間隙
(14B):第2間隙
(15):冷媒貯蔵容器
(16):アウターフィン
(22):排水溝用凸部
(23):冷媒貯蔵容器の連通穴
(24):冷媒流通管の連通穴
図1
図2
図3
図4