特許第6605348号(P6605348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605348
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】圧縮空気貯蔵発電装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 1/05 20060101AFI20191031BHJP
   F02C 6/16 20060101ALI20191031BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20191031BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20191031BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20191031BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   F02C1/05
   F02C6/16
   F01K27/02 A
   H02J3/38 130
   H02J3/38 160
   H02J3/38 120
   H02J3/28
   H02J15/00 E
   H02J15/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-22122(P2016-22122)
(22)【出願日】2016年2月8日
(65)【公開番号】特開2017-141696(P2017-141696A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋平
(72)【発明者】
【氏名】戸島 正剛
(72)【発明者】
【氏名】猿田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】松隈 正樹
(72)【発明者】
【氏名】坂本 佳直美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/017639(WO,A1)
【文献】 特開2011−012659(JP,A)
【文献】 特開2013−064350(JP,A)
【文献】 特開2001−115859(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0148922(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 27/02
F02C 1/05
F02C 6/16
H02J 3/28
H02J 3/38
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを用いて発電した電力により駆動される電動機と、
前記電動機により駆動される油冷式圧縮機と、
前記油冷式圧縮機により圧縮された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、
前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機により駆動される発電機と、
前記油冷式圧縮機で発生した熱を潤滑油と熱媒とに回収する圧縮側熱交換部と、
前記圧縮側熱交換部で熱を回収した前記潤滑油と前記熱媒とを蓄える蓄熱部と、
前記蓄熱部で蓄えられた前記潤滑油と前記熱媒とにより前記膨張機に供給される前記圧縮空気を加熱する膨張側熱交換部と
を備える、圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項2】
前記圧縮側熱交換部は、前記油冷式圧縮機で発生した熱を前記潤滑油に回収する潤滑油熱回収部を備え、
前記膨張側熱交換部は、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される前記圧縮空気と前記蓄熱部から前記油冷式圧縮機に供給される前記潤滑油とで熱交換する膨張側第1熱交換器を備える、請求項1に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項3】
前記圧縮側熱交換部は、前記油冷式圧縮機から前記蓄圧部に供給される前記圧縮空気と前記膨張側熱交換部から前記蓄熱部に供給される前記熱媒とで熱交換する圧縮側熱交換器と、
前記膨張側熱交換部は、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される前記圧縮空気と前記蓄熱部から前記圧縮側熱交換部に供給される前記熱媒とで熱交換する膨張側第2熱交換器を備える、請求項2に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項4】
前記膨張側第1熱交換器および前記膨張側第2熱交換器のうち、前記膨張側第1熱交換器が前記蓄圧部から前記膨張機に向かう前記圧縮空気の流れにおいて上流側に設けられ、前記膨張側第2熱交換器が前記蓄圧部から前記膨張機に向かう前記圧縮空気の流れにおいて下流側に設けられている、請求項3に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項5】
前記潤滑油および前記熱媒は同じ流体であり、前記膨張側第1熱交換器および前記膨張側第2熱交換器は同じ一つの熱交換器である、請求項3または請求項4に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【請求項6】
前記膨張機の排気口の下流に加熱部を備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気貯蔵発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した発電は、気象条件に依存するため、出力が変動し安定しないことがある。このような出力変動に対し、出力を平準化するシステムとして圧縮空気貯蔵(Compressed Air Energy Storage:CAES)システムが知られている。
【0003】
このCAESシステムを利用した圧縮空気貯蔵(CAES)発電装置は、電力プラントのオフピーク時間中に電気エネルギーを圧縮空気として蓄圧タンクに蓄え、高電力需要時間中に圧縮空気により膨張機を駆動して発電機を動作させて電気エネルギーを生成して出力を平準化する。また、発電効率を向上させるために、圧縮熱を蓄熱媒体に回収し、蓄熱タンク等に貯蔵し、回収した圧縮熱を用いて膨張前の圧縮空気を加熱するシステムが知られている。これにより、圧縮時の動力増加を防止し、膨張時の回収動力を増加させると同時に、蓄圧タンク貯蔵時の熱放出を防止するものがある。
【0004】
このようなCAES発電装置として、例えば特許文献1には、熱エネルギー貯蔵システムを利用したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013−509530号公報
【0006】
空気圧縮機には潤滑油が混入したままで空気を圧縮する油冷式と呼ばれるものと、潤滑油を用いないタイプのオイルフリー式と呼ばれるものがある。特許文献1には圧縮機の種類についての記載がないものの、CAESシステムには、圧縮空気の取り扱い易さの面からオイルフリー式圧縮機が用いられることが多い。油冷式圧縮機ないし油冷式膨張機を用いた場合、運転には潤滑油を要するが、特許文献1は、潤滑油を利用したCAES発電装置の充放電効率向上について特段の示唆を含んでいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、油冷式圧縮機を使用した圧縮空気貯蔵発電装置における充放電効率の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、再生可能エネルギーを用いて発電した電力により駆動される電動機と、前記電動機により駆動される油冷式圧縮機と、前記油冷式圧縮機により圧縮された圧縮空気を蓄える蓄圧部と、前記蓄圧部から供給される圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機により駆動される発電機と、前記油冷式圧縮機で発生した熱を潤滑油と熱媒とに回収する圧縮側熱交換部と、前記圧縮側熱交換部で熱を回収した前記潤滑油と前記熱媒とを蓄える蓄熱部と、前記蓄熱部で蓄えられた前記潤滑油と前記熱媒とにより前記膨張機に供給される前記圧縮空気を加熱する膨張側熱交換部とを備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、油冷式圧縮機における圧縮熱や摩擦熱などを圧縮側熱交換部により蓄熱部に回収し、膨張側熱交換部により膨張前の圧縮空気を加熱することで充放電効率を向上できる。具体的には、圧縮側熱交換部において蓄圧部への圧縮空気の貯蔵前に熱媒で圧縮熱を回収することで、貯蔵する圧縮空気の温度が低下して密度が増加するため、蓄圧部内の圧縮空気量が増加し、充電効率(圧縮効率)が向上している。さらに、圧縮熱を回収した熱媒および摩擦熱を回収した潤滑油を膨張側熱交換部において膨張前の圧縮空気の加熱に使用することで発電効率(膨張効率)が向上している。
【0010】
前記圧縮側熱交換部は、前記油冷式圧縮機で発生した熱を潤滑油に回収する潤滑油熱回収部を備え、前記膨張側熱交換部は、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される圧縮空気と前記蓄熱部から前記油冷式圧縮機に供給される潤滑油とで熱交換する膨張側第1熱交換器を備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、潤滑油を媒体として、潤滑油熱回収部において油冷式圧縮機で発生した熱を回収し、回収した熱を膨張側第1熱交換器において膨張前の圧縮空気の加熱に利用できるため、充放電効率を向上できる。
【0012】
前記圧縮側熱交換部は、前記油冷式圧縮機から前記蓄圧部に供給される前記圧縮空気と前記膨張側熱交換部から前記蓄熱部に供給される前記熱媒とで熱交換する圧縮側熱交換器を備え、前記膨張側熱交換部は、前記蓄圧部から前記膨張機に供給される前記圧縮空気と前記蓄熱部から前記圧縮側熱交換部に供給される前記熱媒とで熱交換する膨張側第2熱交換器を備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、熱媒を媒体として、圧縮側熱交換器において油冷式圧縮機で発生した熱を回収し、回収した熱を膨張側第2熱交換器において膨張前の圧縮空気の加熱に利用できるため、充放電効率を向上できる。
【0014】
前記膨張側第1熱交換器および前記膨張側第2熱交換器のうち、前記膨張側第1熱交換器が前記蓄圧部から前記膨張機に向かう前記圧縮空気の流れにおいて上流側に設けられ、前記膨張側第2熱交換器が前記蓄圧部から前記膨張機に向かう前記圧縮空気の流れにおいて下流側に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、膨張側熱交換部において熱媒と潤滑油とを用いて膨張前の圧縮空気を加熱する際、先に潤滑油の熱交換を行うことで潤滑油温度をより低下させている。従って、油冷式圧縮機での効率的な潤滑油の再利用が可能となる。特に、潤滑油と熱媒とでは、潤滑油の方が油冷式圧縮機の機能に直接作用するため、潤滑油の温度を低下させることが好ましいためである。
【0016】
潤滑油および熱媒は同じ流体であり、前記膨張側第1熱交換器および前記膨張側第2熱交換器は同じ一つの熱交換器であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、潤滑油と熱媒が同じ流体であることから潤滑油と熱媒を混合して使用できる。そのため、膨張側熱交換部を一つの熱交換器から構成でき、膨張側熱交換部の構成を簡易化できる。
【0018】
前記膨張機の排気口の下流に加熱部を備えることが好ましい。
【0019】
油冷式圧縮機は、オイルフリー式圧縮機に比べて吐出する圧縮空気の温度が低い。そのため、油冷式圧縮機では圧縮側熱交換部を通じて圧縮熱を高温で熱媒に回収できないため、蓄熱部における蓄熱温度がオイルフリー式圧縮機に比べて低下する。蓄熱温度が低いため、膨張側熱交換部を通じて膨張前の圧縮空気を高温に加熱することができない。そのため、膨張後の空気は、膨張吸熱によりゼロ度以下の低温となる場合があり、膨張機の排気口で空気中の水分が氷結し、排気口を閉塞する場合がある。従って、加熱部で排気口を加熱することで除霜し、閉塞を防止する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、油冷式圧縮機における圧縮熱や摩擦熱などを圧縮側熱交換部により蓄熱部に回収し、膨張側熱交換部により膨張前の圧縮空気を加熱することで、油冷式圧縮機を使用した圧縮空気貯蔵発電装置において充放電効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
図2】本発明の第2実施形態に係る圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
図3図2の変形例の圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
図4図2の他の変形例の圧縮空気貯蔵発電装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0023】
(第1実施形態)
圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置2は、再生可能エネルギーを利用する発電装置4の出力変動を平準化して電力系統6に電力を供給するとともに、電力系統6における電力需要の変動に合わせた電力を供給する。
【0024】
図1を参照して、CAES発電装置2の構成を説明する。本実施形態のCAES発電装置2は、空気流路8a〜8d(破線で示す)と熱媒流路10a〜10d(実線で示す)と潤滑油流路12a〜12e(一点鎖線で示す)とを有する。
【0025】
空気流路8a〜8dについて説明する。
【0026】
空気流路8a〜8dには、モータ(電動機)14で駆動される油冷式圧縮機(以降、単に圧縮機という場合がある)16、油分離器18a,18b、蓄圧タンク(蓄圧部)20、発電機24を駆動する膨張機22、圧縮側熱交換部26、および膨張側熱交換部28が設けられている。
【0027】
再生可能エネルギーを利用する発電装置4はモータ14と電気的に接続されており(二点鎖線で示す)、発電装置4により発電された電力はモータ14に供給され、モータ14が駆動される。モータ14は、圧縮機16に機械的に接続されており、圧縮機16を駆動する。
【0028】
圧縮機16は、油冷式であり、潤滑油の供給により冷却および潤滑される。圧縮機16は、モータ14によって駆動されると、空気流路8aを介して吸気口16aより空気を吸気し、内部で圧縮して吐出口16bより圧縮空気を吐出する。圧縮機16の吐出口16bは空気流路8bを通じて蓄圧タンク20と流体的に接続されており、吐出口16bから吐出された圧縮空気は、空気流路8bを通じて蓄圧タンク20に圧送される。空気流路8bにはバルブ30aが設けられており、バルブ30aの開閉により圧縮機16から蓄圧タンク20への圧縮空気の供給を許容又は遮断できる。なお、圧縮機16の種類は油冷式であれば特に限定されず、例えば、スクリュ式、スクロール式、ターボ式、およびレシプロ式などであってもよい。
【0029】
圧縮機16の吐出口16bから蓄圧タンク20に延びる空気流路8bには、油分離器18aが介設されている。油冷式圧縮機16を使用すると、吐出口16bから油分を含む圧縮空気が吐出される。油分離器18aは、吐出された圧縮空気から油分を分離する。
【0030】
また、油分離器18aは、空気流路8b内を流れる圧縮空気から分離した油分の蓄積部である油溜まり(図示せず)を備え、この油溜まりは後述の潤滑油流路12aに流体的に接続されている。油分離器18aで圧縮空気から分離された油は潤滑油として潤滑油流路12aに供給される。
【0031】
圧縮機16の吐出口16bから蓄圧タンク20に延びる空気流路8bには冷却器として圧縮側熱交換器26aが介設されている。圧縮側熱交換器26aは本発明の圧縮側熱交換部26に含まれる。圧縮側熱交換器26aに供給される圧縮空気は圧縮の際に生じる圧縮熱により高温となる。圧縮側熱交換器26aでは、熱媒と圧縮空気の間の熱交換により圧縮空気を冷却し、熱媒を加熱している。
【0032】
蓄圧タンク20は、圧縮空気を蓄えてエネルギーとして蓄積できる。蓄圧タンク20には、上述のように油分離器18aにより油分が分離された圧縮空気が供給される。蓄圧タンク20は、空気流路8cを通じて膨張機22と流体的に接続されており、蓄圧タンク20から送出された圧縮空気は空気流路8cを通じて膨張機22に供給される。空気流路8cにはバルブ30bが設けられており、バルブ30bの開閉により蓄圧タンク20から膨張機22への圧縮空気の供給を許容又は遮断できる。
【0033】
また、蓄圧タンク20から膨張機22の給気口22aに延びる空気流路8cには、膨張側第1熱交換器28aおよび膨張側第2熱交換器28bが介設されている。膨張側第1熱交換器28aおよび膨張側第2熱交換器28bは、本発明の膨張側熱交換部28を構成する。膨張側第1熱交換器28aでは、潤滑油と圧縮空気の間の熱交換により、圧縮空気が加熱され潤滑油が冷却されている。膨張側第2熱交換器28bでは、熱媒と圧縮空気の間の熱交換により圧縮空気が加熱され熱媒が冷却されている。
【0034】
膨張機22は、油冷式であり、潤滑油の供給により冷却および潤滑される。膨張機22は、発電機24と機械的に接続されており、給気口22aから圧縮空気を給気された膨張機22は、給気された圧縮空気により作動し、発電機24を駆動する。発電機24は電力系統6に電気的に接続されており(二点鎖線で示す)、発電機24で発電した電力は電力系統6に供給される。また、膨張機22で膨張された空気は、排気口22bから空気流路8dを通じて排気される。空気流路8dには油分離器18bが設けられており、排気口22bから排出された空気は油分離器18bによって油分が除去される。膨張機22の種類は、例えば、スクリュ式、スクロール式、ターボ式、およびレシプロ式などであってもよい。さらに言えば、膨張機22は油冷式に限定されず、オイルフリー式であってもよい。
【0035】
空気流路8dには、除霜用のヒータ(加熱部)32が設けられている。ヒータ32は、本実施形態では電力を供給されて発熱する電気式であるが、熱媒流路10a〜10d中の熱媒および潤滑油流路12a〜12e中の潤滑油のような高温の熱源と熱交換する熱交換式であってもよい。
【0036】
CAES発電装置2の圧縮機16をオイルフリー式ではなく本実施形態のように油冷式とした場合、圧縮機16内に注油される潤滑油が圧縮時の熱を奪うため、吐出口16bから吐出される圧縮空気はオイルフリー式の場合と比べて温度が低い。潤滑油の温度は吐出される圧縮空気と概ね同程度となることから、オイルフリー式のような高温の熱回収ができない。そのため、高温の熱媒が得られず膨張前の空気を高温に加熱できないため、膨張機22で膨張された空気は大気放出される段階では氷点下となることがある。従って膨張機22の排気口22bで空気中の水分が氷結し、排気口22bを閉塞する場合がある。これを解決するために、本実施形態では除霜用のヒータ32が設けられている。
【0037】
熱媒流路10a〜10dについて説明する。
【0038】
熱媒流路10a〜10dには、圧縮側熱交換器26a、高温熱媒タンク(蓄熱部)34、膨張側第2熱交換器28b、および低温熱媒タンク36が順に設けられている。熱媒はこれらの間で循環して流動している。熱媒の種類は特に限定されておらず、例えばグリコール系の熱媒を使用してもよい。
【0039】
圧縮側熱交換器26aでは、油冷式圧縮機16から蓄圧タンク20に延びる空気流路8b内の圧縮空気と、低温熱媒タンク36から高温熱媒タンク34に延びる熱媒流路10d,10a内の熱媒とで熱交換している。具体的には、空気流路8b内を流れる圧縮空気は、圧縮機16での圧縮の際に生じる圧縮熱により高温となっており、圧縮側熱交換器26aでの熱交換により、圧縮空気を冷却している。即ち、圧縮側熱交換器26aでは圧縮空気の温度は低下し、熱媒の温度は上昇する。圧縮側熱交換器26aは熱媒流路10aを通じて高温熱媒タンク34と流体的に接続されており、温度上昇した熱媒は高温熱媒タンク34に供給され蓄えられる。
【0040】
高温熱媒タンク34は、圧縮側熱交換器26aから供給された高温の熱媒を保温して蓄える。そのため、高温熱媒タンク34は断熱されていることが好ましい。高温熱媒タンク34は、熱媒流路10bを通じて膨張側第2熱交換器28bに流体的に接続されており、高温熱媒タンク34で蓄えられた熱媒は熱媒流路10bを通じて膨張側第2熱交換器28bに供給される。
【0041】
膨張側第2熱交換器28bでは、蓄圧タンク20から膨張機22に延びる空気流路8c内の圧縮空気と、高温熱媒タンク34から低温熱媒タンク36に延びる熱媒流路10b,10c内の熱媒とで熱交換している。具体的には、高温熱媒タンク34内の高温の熱媒を利用して膨張機22による膨張の前に圧縮空気の温度を上昇させて膨張効率を向上させている。即ち、膨張側第2熱交換器28bでは、圧縮空気の温度は上昇し、熱媒の温度は低下する。膨張側第2熱交換器28bは熱媒流路10cを通じて低温熱媒タンク36に流体的に接続されており、温度低下した熱媒は熱媒流路10cを通じて低温熱媒タンク36に供給され蓄えられる。
【0042】
低温熱媒タンク36は、膨張側第2熱交換器28bから供給された低温の熱媒を蓄える。低温熱媒タンク36は熱媒流路10dを通じて圧縮側熱交換器26aに流体的に接続されており、低温熱媒タンク36で蓄えられた熱媒は熱媒流路10dを通じて圧縮側熱交換器26aに供給される。
【0043】
このように熱媒流路10a〜10dでは、熱媒が循環している。熱媒の循環は、熱媒流路10dに介設されたポンプ38aによりなされている。本実施形態では、ポンプ38aは低温熱媒タンク36の下流に設けられているが、その位置は特に限定されない。
【0044】
潤滑油流路12a〜12eについて説明する。
【0045】
潤滑油流路12a〜12eには、圧縮機16、高温潤滑油タンク(蓄熱部)40、膨張側第1熱交換器28a、および低温潤滑油タンク42が順に設けられている。潤滑油はこれらの間で循環して流動している。潤滑油の種類は特に限定されておらず、例えば鉱物油系の潤滑油を使用してもよい。
【0046】
膨張側第1熱交換器28aでは、蓄圧タンク20から膨張機22に延びる空気流路8c内の圧縮空気と、高温潤滑油タンク40から低温潤滑油タンク42に延びる潤滑油流路12b,12c内の潤滑油とで熱交換している。具体的には、空気流路8c内を流れる圧縮空気は、潤滑油との熱交換により加熱されている。即ち、膨張側第1熱交換器28aでは圧縮空気の温度は上昇し、潤滑油の温度は低下する。膨張側第1熱交換器28aは潤滑油流路12cを通じて低温潤滑油タンク42と流体的に接続されており、温度低下した熱媒は低温潤滑油タンク42に供給され蓄えられる。
【0047】
低温潤滑油タンク42は、膨張側第1熱交換器28aから供給された低温の潤滑油を蓄える。低温潤滑油タンク42は、潤滑油流路12dを通じて膨張機22に流体的に接続されており、低温潤滑油タンク42で蓄えられた熱媒は潤滑油流路12dを通じて膨張機22に供給される。
【0048】
膨張機22では、潤滑油流路12dを通じて供給された低温の潤滑油によって内部の膨張要素が潤滑および冷却される。本実施形態ではスクリュ式の膨張機22を使用しているため、例えば内部の膨張要素はスクリュロータ(図示せず)である。ここで、潤滑及び加熱に使用された潤滑油は、膨張要素における冷熱等を受けて温度が低下する。膨張機22で使用された潤滑油は、潤滑油流路12dを通じて再び低温潤滑油タンク42に戻される。なお、膨張機22が油冷式でない場合、膨張機22と低温潤滑油タンク42とを流体的に接続する潤滑油流路12dは省略される。
【0049】
また、低温潤滑油タンク42は、潤滑油流路12eを通じて圧縮機16に流体的に接続されており、低温潤滑油タンク42で蓄えられた熱媒は潤滑油流路12eを通じて圧縮機16に供給される。
【0050】
圧縮機16では、潤滑油流路12eを通じて供給された低温の潤滑油によって内部の圧縮要素が潤滑および冷却される。本実施形態ではスクリュ式の圧縮機16を使用しているため、例えば内部の圧縮要素はスクリュロータ(図示せず)である。ここで、潤滑及び冷却に使用された潤滑油は、圧縮要素における暖熱等を受けて温度が上昇する。このように、本実施形態では、圧縮機16は圧縮側熱交換部26に含まれる本発明の潤滑油熱回収部を構成する。圧縮機16は潤滑油流路12aを通じて高温潤滑油タンク40に流体的に接続されており、圧縮機16で温度上昇した潤滑油は潤滑油流路12aを通じて高温潤滑油タンク40に供給される。
【0051】
高温潤滑油タンク40は、圧縮機16から供給された高温の潤滑油を保温して蓄える。そのため、高温潤滑油タンク40は断熱されていることが好ましい。高温潤滑油タンク40は、潤滑油流路12bを通じて膨張側第1熱交換器28aに流体的に接続されており、高温潤滑油タンク40で蓄えられた熱媒は潤滑油流路12bを通じて膨張側第1熱交換器28aに供給される。
【0052】
このように潤滑油流路12a〜12eでは、潤滑油が循環している。潤滑油の循環は、潤滑油流路12d,12eに介設されたポンプ38b,38cによりなされている。本実施形態では、ポンプ38b,38cは低温潤滑油タンク42の下流に設けられているが、その位置は特に限定されない。
【0053】
本実施形態のCAES発電装置2の構成によれば、油冷式圧縮機16における圧縮熱や摩擦熱などを圧縮側熱交換部26により高温熱媒タンク34および高温潤滑油タンク40に回収し、膨張側熱交換部28により膨張前の圧縮空気を加熱することで充放電効率を向上できる。具体的には、圧縮側熱交換部26において蓄圧タンク20への圧縮空気の貯蔵前に熱媒で圧縮熱を回収することで、貯蔵する圧縮空気の温度が低下して密度が増加するため、蓄圧タンク20内の圧縮空気量が増加し、充電効率(圧縮効率)が向上している。さらに、圧縮熱を回収した熱媒および摩擦熱を回収した潤滑油を膨張側熱交換部28において膨張前の圧縮空気の加熱に使用することで発電効率(膨張効率)が向上している。
【0054】
また、潤滑油を媒体として、潤滑油熱回収部において油冷式圧縮機16で発生した熱を回収し、回収した熱を膨張側第1熱交換器28aにおいて膨張前の圧縮空気の加熱に利用できるため、充放電効率を向上できる。
【0055】
また、熱媒を媒体として、圧縮側熱交換器26aにおいて油冷式圧縮機16で発生した熱を回収し、回収した熱を膨張側第2熱交換器28bにおいて膨張前の圧縮空気の加熱に利用できるため、充放電効率を向上できる。
【0056】
特に、空気流路8cにおける膨張側第1熱交換器28aおよび膨張側第2熱交換器28bの配置については、潤滑油用の膨張側第1熱交換器28aが上流に設置され、熱媒用の膨張側第2熱交換器28bが下流に設置されている。
【0057】
この構成によれば、膨張側熱交換部28において熱媒および潤滑油を用いて膨張前の圧縮空気を加熱する際、先に潤滑油の熱交換を行うことで潤滑油温度をより低下させている。特に、潤滑油と熱媒では、潤滑油の方が油冷式圧縮機16の機能に直接作用するため、潤滑油の温度を低下させることが好ましいためである。
【0058】
(第2実施形態)
図2に示す第2実施形態のCAES発電装置2では、熱媒と潤滑油とに同じ流体が使用されている。本実施形態は、この点を除いて図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、図1に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。以降、熱媒と潤滑油の両方の記載を使用するが本実施形態では熱媒と潤滑油は区別されないものとする。
【0059】
本実施形態のCAES発電装置2は、高温熱媒タンク34および高温潤滑油タンク40が一体となった高温蓄熱タンク(蓄熱部)46を備える。即ち、高温蓄熱タンク46中では、熱媒と潤滑油が混合されて蓄えられている。上述のように、本実施形態では、熱媒と潤滑油とは同じ流体であるため両流体を混合して使用できるためである。
【0060】
高温蓄熱タンク46は、第1実施形態における熱媒流路10b(図1参照)と潤滑油流路12b(図1参照)が一体となった合流流路11aを通じて三方弁44aと流体的に接続されている。三方弁44aは、潤滑油流路12fを通じて膨張側第1熱交換器28aと流体的に接続され、熱媒流路10eを通じて膨張側第2熱交換器28bと流体的に接続されている。従って、三方弁44aにより高温蓄熱タンク46から膨張側第1熱交換器28aまたは膨張側第2熱交換器28bのいずれに熱媒(潤滑油)を供給するかを切り替え可能である。
【0061】
この構成によれば、潤滑油と熱媒が同じ流体であることから潤滑油と熱媒が混合されて使用されても問題がない。そのため、膨張側熱交換部28を1つの膨張側第3熱交換器28cから構成でき、膨張側熱交換部28の構成を簡易化できる。
【0062】
図3は、図2に示す第2実施形態のCAES発電装置2の変形例を示している。本変形例では、図2に示す第2実施形態のCAES発電装置2の膨張側第1熱交換器28a(図2参照)と膨張側第2熱交換器28b(図2参照)とが一体となった膨張側第3熱交換器(膨張側熱交換部)28cが設けられている。これに伴い、三方弁44bの配置も図2に示す第2実施形態のCAES発電装置2の三方弁44aの配置と異なっている。
【0063】
具体的には、高温蓄熱タンク46は、合流流路11aを通じて膨張側第3熱交換器28cと流体的に接続されている。さらに、膨張側第3熱交換器28cは、合流流路11bを通じて三方弁44bと流体的に接続されている。三方弁44bは、潤滑油流路12gを通じて低温潤滑油タンク42と流体的に接続され、熱媒流路10fを通じて低温熱媒タンク36と流体的に接続されている。
【0064】
このように、熱媒と潤滑油とが同じ流体の場合、膨張側熱交換部28を一つの膨張側第3熱交換器28cで構成することもできる。
【0065】
図4は、図2に示す第2実施形態のCAES発電装置2の他の変形例を示している。本変形例では、図3に示すCAES発電装置2と同様に膨張側第3熱交換器28cが設けられている。さらに、本変形例では、低温熱媒タンク36(図2参照)と低温潤滑油タンク42(図2参照)とが一体となった低温蓄熱タンク48が設けられている。これに伴い、三方弁44cの配置も図2および図3に示す第2実施形態のCAES発電装置2と異なっている。
【0066】
具体的には、膨張側第3熱交換器28cは、合流流路11bを通じて低温蓄熱タンク48と流体的に接続されている。低温蓄熱タンク48は、合流流路11cを通じて三方弁44cと流体的に接続されている。三方弁44cは、潤滑油流路12hを通じて圧縮機16と流体的に接続され、熱媒流路10gを通じて圧縮側熱交換器26aと流体的に接続されている。
【0067】
このように、熱媒と潤滑油とが同じ流体の場合、低温熱媒タンク36(図2参照)と低温潤滑油タンク42(図2参照)とを一つの低温蓄熱タンク48で構成することもできる。
【0068】
以上より、本発明の具体的な実施形態やその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0069】
また、発電に利用できる再生可能エネルギーは、例えば、風力、太陽光、太陽熱、波力又は潮力、流水又は潮汐、及び地熱等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充されるエネルギーの全てを含む。
【符号の説明】
【0070】
2 圧縮空気貯蔵発電装置(CAES発電装置)
4 再生可能エネルギーを利用する発電装置
6 電力系統
8a,8b,8c,8d 空気流路
10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g 熱媒流路
11a,11b,11c 合流流路
12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h 潤滑油流路
14 モータ(電動機)
16 油冷式圧縮機(圧縮機)(潤滑油熱回収部)(圧縮側熱交換部)
16a 吸気口
16b 吐出口
18a,18b 油分離器
20 蓄圧タンク(蓄圧部)
22 膨張機
22a 給気口
22b 排気口
24 発電機
26 圧縮側熱交換部
26a 圧縮側熱交換器(圧縮側熱交換部)
28 膨張側熱交換部
28a 膨張側第1熱交換器(膨張側熱交換部)
28b 膨張側第2熱交換器(膨張側熱交換部)
28c 膨張側第3熱交換器(膨張側熱交換部)
30a,30b バルブ
32 ヒータ(加熱部)
34 高温熱媒タンク(蓄熱部)
36 低温熱媒タンク
38a,38b,38c ポンプ
40 高温潤滑油タンク(蓄熱部)
42 低温潤滑油タンク
44a,44b,44c 三方弁
46 高温蓄熱タンク(蓄熱部)
48 低温蓄熱タンク
図1
図2
図3
図4