(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2の蒸発器は、共に開放型である。開放型の蒸発器を使用して多量のドレン水を蒸発させる場合、ドレン水が蒸発器の外部に飛散または漏洩する可能性がある。
【0006】
本発明は、ドレン水の廃棄のための追加設備が不要であり、ドレン水が外部に飛散または漏洩することを防止できるオイルフリー空気圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオイルフリー空気圧縮機は、空気を吸気して圧縮して吐出する圧縮機本体と、前記圧縮機本体から吐出された圧縮空気を冷却し、冷却に際してドレン水が発生する冷却部と、前記冷却部と流体的に接続され、前記ドレン水を蒸発させる密閉容器型の蒸発器とを備え
、前記冷却部は、前記1段目圧縮機本体から吐出された圧縮空気を冷却し、前記蒸発器と第1電磁弁を介して流体的に接続された第1冷却器と、前記2段目圧縮機本体から吐出された圧縮空気を冷却し、前記蒸発器と第2電磁弁を介して流体的に接続された第2冷却器と、前記第2冷却器から流出した圧縮空気から水分を除去し、前記蒸発器と第3電磁弁を介して流体的に接続された除湿器とを備え、前記オイルフリー空気圧縮機は、前記第1電磁弁と前記第2電磁弁と前記第3電磁弁とをそれぞれ開弁するタイミングをずらすように制御する制御装置をさらに備える。
【0008】
この構成によれば、ドレン水を人為的に定期的に廃棄する人件費や、ドレン水の排出用のライン等の追加設備が不要となり、オイルフリー空気圧縮機のランニングコストが大幅に改善する。また、蒸発器が密閉容器型であるため、多量のドレン水を蒸発処理する場合でも、ドレン水が蒸発器の外部に飛散または漏洩することを防止できる。
また、ドレン水の排出は通常間欠的であり、ドレン水の排出に伴って圧縮空気も排出される。そのため、ドレン水が複数個所から同時に蒸発器に供給されると、ドレン水と共に供給される圧縮空気により蒸発器の蒸気側出口の流速が増加し、液滴が外部に飛散することが考えられる。しかし、上記のように制御することで、ドレン水を蒸発器に供給するタイミングをずらし、そのタイミングを固定できるため、複数個所からドレン水が同時に蒸発器に流入することを防止できる。これにより、蒸発器の蒸気側出口の流速が増加することを防止し、液滴が外部に飛散することを防止できる。
【0023】
前記制御装置は、前記第1電磁弁と前記第2電磁弁と前記第3電磁弁とをそれぞれ開弁する時間を、以下の式(1)で表される時間tc以下となるように制御することが好ましい。
【0024】
【数1】
S:前記蒸発器に溜められた前記ドレン水の水面より上側の密閉容器の伝熱面積
tw:密閉容器に付着できる水の平均水膜厚さ
Q:蒸発器への単位時間当たりのドレン噴射量
ρ:水の密度
【0025】
ドレン水の排出サイクルを短縮しているので、ドレン水が蒸発器に供給された際に高温の蒸発器内面に付着して蒸発する割合を増加させ、付着せずに蒸発器内に溜められているドレン水の水面に落下する割合を減少できる。これにより蒸発器の水面より上側の伝熱面(高温の蒸発器内面)をより有効に利用でき、蒸発器の性能が向上する。具体的には、1回に排出されるドレン水量Q×tc[kg]が、伝熱面に付着できる水量S×tw×ρ[kg]より少なければ、蒸発器に供給されたドレン水は水面より上側の伝熱面に付着して蒸発し得るため、伝熱面を有効に利用できることになる。よって、S×tw×ρ≧Q×tc となり、即ち式(1)に示すように、tcは(S×tw×ρ)/Q以下であることが好ましい。
【0026】
前記制御装置は、以下の式(2)に基づいて前記ドレン水の発生量Dを推定し、前記ドレン水の発生量D分だけ前記ドレン水を排出するように前記第1電磁弁と前記第2電磁弁と前記第3電磁弁とを開弁する時間を制御して開弁合計時間を最小化することが好ましい。ただし、以下の式(2)において、Dが負の値になる場合はDをゼロとして計算する。
【0027】
【数2】
M:周囲温度および周囲湿度から推定された絶対重量湿度[kg/kg(DA)]
A: 前記冷却部の最終段において、冷却された直後の空気の最低温度および圧力から推定された最終段での冷却直後の空気の飽和状態における絶対重量湿度[kg/kg(DA)]
V: 前記圧縮機本体の回転数および周囲温度、周囲湿度から推定される単位時間あたりの吸込空気中の乾き空気質量[kg(DA)/min]
【0028】
冷却部からのドレン水の排出処理量を最適化することで、ともに冷却部から排出される圧縮空気の損失を最小化できる。
【0029】
前記蒸発器への前記ドレン水の注入口は、前記蒸発器の上部に設けられていることが好ましい。
【0030】
通常、蒸発器内にはドレン水が溜まっており、伝熱面でのドレン水の蒸発量と蒸発器へのドレン水の供給量とが釣り合う位置で、蒸発器内の水位は維持されている。その水位より上側の部分にドレン水の注入口を設けているので、ドレン水とともに供給される圧縮空気によって蒸発器内に溜められているドレン水が蒸発器外に噴出されることを防止できる。
【0031】
前記蒸発器への前記ドレン水の前記注入口には、微粒化ノズルが設けられていることが好ましい。
【0032】
微粒化ノズルを使用してドレン水を細かい水滴として蒸発器内に噴霧することで、上述の伝熱面に広くドレン水を付着させることができ、蒸発器内の水面より上側の伝熱面を有効に利用でき、蒸発が促進される。
【0033】
前記注入口は、前記蒸発器の排出口に対して平面視において−90度から+90度の範囲内の向きで配置されていることが好ましい。
【0034】
ドレン水の注入方向に排出口が設けられていないため、蒸発器内に注入されたドレン水が蒸発されずに排出口を介して直接外気に排出されることを防止できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、オイルフリー空気圧縮機において、ドレン水の廃棄のために設備を追加不要であって、さらにドレン水が外部に飛散または漏洩することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のオイルフリー空気圧縮機1(以降、単に圧縮機と呼ぶ場合がある)は、圧縮機本体10と、蒸発器20と、冷却部30とを備える。まず、これらの構成要素について説明する。
【0039】
圧縮機本体10は、本実施形態ではオイルフリー式で且つ2段型のスクリュ式であり、1段目圧縮機本体11と2段目圧縮機本体12とを備える。1段目圧縮機本体11と2段目圧縮機本体12は、蒸発器20と、冷却部30の一部を構成するインタークーラ(第1冷却器)31とを介して流体的に接続されている。1段目圧縮機本体11と2段目圧縮機本体12は、それぞれ吸気口11a,12aから空気を吸気し、内部の図示しないスクリュで圧縮し、吐出口11b,12bから吐出する。1段目圧縮機本体11と2段目圧縮機本体12の内部のスクリュの回転数は、回転数センサ41a,41bによりそれぞれ測定されている。測定された回転数は、後述のように吐出空気量の算出に使用される。1段目圧縮機本体11が吸気する空気は、湿度センサ42と温度センサ43aにより、湿度と温度を測定できる。なお、このようなスクリュの回転数は、図示しないインバータの周波数から換算してもよい。
【0040】
図2Aに詳細を示すように、蒸発器20は、密閉容器21を備える密閉容器型である。密閉容器21は、上部ヘッダ21aと下部ヘッダ21bと側壁21cとによって閉じられた形状である。密閉容器21は、側壁21cの上部にドレン水が注入される注入口21dが設けられている。通常、蒸発器20内にはドレン水が溜まっており、蒸発器20の内面である伝熱面でのドレン水の蒸発量と蒸発器20へのドレン水の供給量とが釣り合う位置で、蒸発器20内の水位は維持されている。その水位より上側の部分にドレン水の注入口21dを設けているので、ドレン水とともに供給される圧縮空気によって蒸発器20内に溜められているドレン水が蒸発器20外に噴出されることを防止できる。
【0041】
蒸発器20の密閉容器21の下部には、ドレン水が溜められている。蒸発器20内には、図において上下方向に延びる複数本(例えば20〜30本)のチューブ24が設けられており、複数本のチューブ24は、一端が下部ヘッダ21bに接続され、他端が上部ヘッダ21aに接続されている。これに伴い、上部ヘッダ21aにはチューブ24と接続される空気出口21gが設けられ、下部ヘッダ21bにはチューブ24と接続される空気入口21fが設けられている。空気入口21gと空気出口21fの数は、チューブ24の数に対応して設けられている。そのため、複数本のチューブ24の内部には、1段目圧縮機本体11と2段目圧縮機本体12とからそれぞれ供給された高温の圧縮空気が混合されないように流れている。このように、蒸発器20の熱源として、圧縮機本体10から吐出された後で且つ冷却部30で冷却される前の圧縮空気が使用されている。
【0042】
図2Bに示すように、空気入口21gと空気出口21fは、必ずしもチューブ24の数に対応して設けられていなくてもよい。後述の第2実施形態のように、蒸発器20への圧縮空気の供給源が一箇所である場合、空気入口21gと空気出口21fはそれぞれ1つずつ設けられていればよい。
【0043】
図3に示すように、注入口21dには微粒化ノズル22が設けられている。微粒化ノズル22は、ドレン水を細かい水滴として蒸発器20内に噴霧するためのものである。微粒化ノズル22を使用してドレン水を細かい水滴として蒸発器20内に噴霧することで、上述の伝熱面に広くドレン水を付着させることができ、蒸発器20内の水面より上側の伝熱面を有効に利用でき、蒸発が促進される。
【0044】
また、蒸発器20には、蒸気を排出するための蒸気排出煙突23が併設されている。そのため、密閉容器21には、蒸気排出煙突23と流体的に連通する接続口(排出口)21eが設けられている。従って、密閉容器21は、注入口21dと接続口21e以外は閉じられた容器である。
【0045】
図4に破線で仮想的に示すように、注入口21dと接続口21eの位置関係は、注入口21dが接続口21eに対して平面視において−90度から+90度の範囲内で配置されていることが好ましい。
図4に示す本実施形態では、注入口21dから−90度の位置に接続口21eが配置されている。このようにドレン水の注入方向に排出口21eが設けられていないため、蒸発器20内に注入されたドレン水が蒸発されずに排出口21eを介して直接外気に排出されることを防止できる。
【0046】
このように蒸発器20を構成することで、蒸発器20の熱源として圧縮機本体10から吐出される高温の圧縮空気を利用し、ヒータ等の別の熱源を用意する必要がなく、即ちエネルギー効率を改善できる。また、蒸発器20において、圧縮空気はドレン水との熱交換により温度が低下するので、その後に圧縮空気を冷却する冷却部30の負荷が減少し、冷却部30を小型化できる。
【0047】
さらに、1段目圧縮機本体11と2段目圧縮機本体12の両方から吐出された圧縮空気を蒸発器20の熱源として利用しているので、蒸発器20の熱源が増加し、蒸発器20の蒸発性能が向上し、蒸発器20を小型化できる。また、圧縮機本体10を2段型とすることで1段型と比べて広範囲に吐出圧力を調整できる。
【0048】
蒸発器20では、チューブ24内を流れる圧縮空気とドレン水との間で熱交換が行われ、圧縮空気は冷却され、ドレン水は加熱されて蒸発する。蒸発したドレン水は、蒸気排出煙突23を介して外部に排出される。このように蒸発器20を設けていることによって、ドレン水を人為的に定期的に廃棄する人件費や、ドレン水の排出用のライン等の追加設備が不要となり、圧縮機1のランニングコストが大幅に改善する。また、蒸発器20が密閉容器型であるため、多量のドレン水を蒸発処理する場合でも、ドレン水が蒸発器20の外部に飛散または漏洩することを防止できる。
【0049】
蒸気排出煙突23は、オイルフリー空気圧縮機1の上部に上向きに設置され、蒸気排出煙突23の周囲にはダクト25が設けられている。また、蒸気排出煙突23の周囲の空気を流動させるためのファン26が、ダクト25の下部に設けられている。
【0050】
蒸気排出煙突23を設けているので、蒸気の排出口21eを圧縮機1から遠方に設置できる。そのため、排出した蒸気が再び圧縮機本体10に吸い込まれることを抑制し、それに伴う風量低下を抑制できる。また、蒸気排出煙突23により、排出する蒸気を図示しない電気系統から遠ざけることができ、蒸気の結露等による漏電を防止できる。また、蒸気排出煙突23を上部に上向きに設けているので、排出された高温の蒸気が周囲の風等により人が存在する可能性のある水平方向へ流動することを防止でき、安全性が向上する。さらにダクト25を設けているので、確実に上方向に蒸気を排出でき、一層安全性が向上する。
【0051】
図1に示すように、冷却部30は、インタークーラ(第1冷却器)31とアフタークーラ(第2冷却器)32とドライヤ(除湿器)33とを備える。インタークーラ31とアフタークーラ32は、圧縮空気を冷却するために設けられている。ドライヤ33は、アフタークーラ32で冷却された圧縮空気から水分を除去するために設けられている。インタークーラ31とアフタークーラ32とドライヤ33とにおいては、ドレン水が発生する。インタークーラ31は第1電磁弁34を介して蒸発器20の注入口21dと流体的に接続されており、アフタークーラ32は第2電磁弁35を介して蒸発器20の注入口21dと流体的に接続されており、ドライヤ33は第3電磁弁36を介して蒸発器20の注入口21dと流体的に接続されている。これらで発生するドレン水は、圧縮空気と共に蒸発器20に供給される。また、冷却部30を通過した圧縮空気の温度と圧力は、それぞれ温度センサ43b〜43dと圧力センサ44a〜44cとによって測定されている。冷却部の態様は特に限定されず、例えば、インタークーラ31とアフタークーラ32には空冷式熱交換器を使用でき、ドライヤ33には冷凍式ドライヤを使用できる。
【0052】
次に、オイルフリー空気圧縮機1における流体の流れについて説明する。ここで説明する流体の流れは空気とドレン水についてであるが、まず空気の流れについて説明する。
【0053】
図1に示すように、1段目圧縮機本体11は、吸気口11aから20℃程度の空気を吸気し(点P1)、吸気した空気を内部で圧縮し、吐出口11bから吐出する。吐出される空気は、圧縮の際に生じる圧縮熱により、200℃程度の高温となっている(点P2)。1段目圧縮機本体11の吐出口11bは蒸発器20と流体的に接続されており、吐出口11bから吐出された高温の圧縮空気は蒸発器20に供給される。
【0054】
1段目圧縮機本体11から蒸発器20に供給された圧縮空気は、蒸発器20内のチューブ24内を流れ(
図2A参照)、蒸発器20内でドレン水と熱交換して110℃程度まで冷却される(点P3)。蒸発器20はインタークーラ31と流体的に接続されており、ここで冷却された圧縮空気はインタークーラ31に供給される。
【0055】
インタークーラ31に供給された圧縮空気は、インタークーラ31で40℃程度まで冷却される(点P4)。インタークーラ31は2段目圧縮機本体12の吸気口12aと流体的に接続されており、ここで冷却された圧縮空気は2段目圧縮機本体12に供給される。
【0056】
2段目圧縮機本体12は、インタークーラ31で冷却された圧縮空気を吸気口12aから吸気し、吸気した空気を内部で圧縮し、吐出口12bから吐出する。吐出される空気は、圧縮の際に生じる圧縮熱により、200℃程度の高温となっている(点P5)。2段目圧縮機本体12の吐出口12bは蒸発器20と流体的に接続されており、吐出口12bから吐出された高温の圧縮空気は蒸発器20に供給される。
【0057】
2段目圧縮機本体12から蒸発器20に供給された圧縮空気は、蒸発器20内でドレン水と熱交換して110℃程度まで冷却される(点P6)。蒸発器20はアフタークーラ32と流体的に接続されており、ここで冷却された圧縮空気はアフタークーラ32に供給される。
【0058】
アフタークーラ32に供給された圧縮空気は、アフタークーラ32で40℃程度まで冷却される(点P7)。アフタークーラ32はドライヤ33と流体的に接続されており、ここで冷却された圧縮空気はドライヤ33に供給される。
【0059】
ドライヤ33に供給された圧縮空気は、内部の冷却機構において30℃程度まで冷却されると共に水分を除去され(点P8)、内部の加熱機構において加温された後に用途に応じた供給先に供給される(点P9)。供給先は、例えば工場のライン等である。
【0060】
次に、ドレン水の流れについて説明する。
【0061】
インタークーラ31とアフタークーラ32とドライヤ33とからは、ドレン水が発生する。発生するドレン水の温度は、20℃から30℃程度である(点P10)。インタークーラ31とアフタークーラ32とドライヤ33とで発生したドレン水は、蒸発器20に供給される。
【0062】
蒸発器20の注入口21dから微粒化ノズル22を介して蒸発器20内に噴霧されたドレン水は、102℃程度まで加熱されて蒸発し、蒸気排出煙突23から排出される(点P10)。
【0063】
また、本実施形態のオイルフリー空気圧縮機1は、制御装置40を備える。制御装置40は、上述の各種センサ41a〜44cからの測定値を受け、これらの測定値に基づいて3つの制御を行っている。
【0064】
第1に、制御装置40は、第1電磁弁34と第2電磁弁35と第3電磁弁36とをそれぞれ開弁するタイミングをずらすように制御する。例えば、第1電磁弁34をt1秒ごとにtd1秒開弁し、第2電磁弁35をt2秒ごとにtd2秒開弁し、第3電磁弁36をt3秒ごとにtd3秒開弁し、それぞれの開弁タイミングが重複しないように、これらの時間を設定し、間隔をあけて開弁する。
【0065】
ドレン水の排出は通常間欠的であり、ドレン水の排出に伴って圧縮空気も排出される。そのため、ドレン水が複数個所から同時に蒸発器20に供給されると、ドレン水と共に供給される圧縮空気により蒸発器20の排出口21eの流速が増加し、液滴が外部に飛散することが考えられる。しかし、上記のように制御することで、ドレン水を蒸発器20に供給するタイミングをずらし、そのタイミングを固定できるため、複数個所からドレン水が同時に蒸発器20に供給されることを防止できる。これにより、蒸発器20の排出口21eの流速が増加することを防止し、液滴が外部に飛散することを防止できる。
【0066】
第2に、制御装置40は、第1電磁弁34と第2電磁弁35と第3電磁弁36とをそれぞれ開弁する時間を、以下の式(1)で表される時間tc以下となるように制御する。
【0067】
【数1】
S:前記蒸発器に溜められた前記ドレン水の水面より上側の前記密閉容器の伝熱面積
tw:蒸発器の密閉容器に付着できる水の平均水膜厚さ
Q:蒸発器への単位時間当たりのドレン噴射量
ρ:水の密度
【0068】
ドレン水の排出サイクルを短縮しているので、ドレン水が蒸発器20に供給された際に蒸発器20の高温の内面に付着して蒸発する割合を増加させ、付着せずに蒸発器20内に溜められているドレン水の水面に落下する割合を減少できる。これにより蒸発器20の水面より上側の伝熱面(高温の蒸発器内面)をより有効に利用でき、蒸発器20の性能が向上する。具体的には、1回に排出されるドレン水量Q×tc[kg]が、伝熱面に付着できる水量S×tw×ρ[kg]より少なければ、蒸発器20に供給されたドレン水は水面より上側の伝熱面に付着して蒸発し得るため、伝熱面を有効に利用できることになる。よって、S×tw×ρ≧Q×tc となり、即ち式(1)に示すように、tcは(S×tw×ρ)/Q以下であることが好ましい。
【0069】
第3に、制御装置40は、以下の式(2)に基づいてドレン水の発生量Dを推定し、ドレン水の発生量Dの分だけドレン水を排出するように第1電磁弁34と第2電磁弁35と第3電磁弁36とを開弁する時間を制御することで開弁合計時間を最小化している。
【0070】
【数2】
M:周囲温度および周囲湿度から推定された絶対重量湿度[kg/kg(DA)]
A: 前記冷却部の最終段において、冷却された直後の空気の最低温度および圧力から推定された最終段での冷却直後の空気の飽和状態における絶対重量湿度[kg/kg(DA)]
V: 前記圧縮機本体の回転数および周囲温度、周囲湿度から推定される単位時間あたりの吸込空気中の乾き空気質量[kg(DA)/min]
【0071】
このように冷却部からのドレン水の排出処理量を最適化することで、ともに冷却部から排出される圧縮空気の損失を最小化できる。
【0072】
(第2実施形態)
図5に示す第2実施形態のオイルフリー空気圧縮機1は、圧縮機本体10が単段型である。本実施形態は、この点を除いて
図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、圧縮機本体10が単段型であるため、2段目圧縮機本体12と、回転数センサ41bと、インタークーラ31と、第1電磁弁34と、温度センサ43bと、圧力センサ44aとが、
図1に示す第1実施形態の圧縮機1から省略されている。
【0074】
このように、本発明は2段型だけでなく単段型の圧縮機1にも適用可能である。また、当然ながら3段型以上の圧縮機1に対しても適用可能である。
【0075】
(第3実施形態)
図6に示す第3実施形態のオイルフリー空気圧縮機1では、予熱部50が設けられている。本実施形態は、この点を除いて
図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0076】
本実施形態の予熱部50は、冷却部30で発生したドレン水を蒸発器20に供給する前に加熱している。予熱部50は、熱交換器であって、冷却部30から蒸発器20に供給されるドレン水と、蒸発器20からインタークーラ31に供給される圧縮空気との間で熱交換し、ドレン水を加熱し、圧縮空気を冷却している。
【0077】
このように、予熱部50で加熱しているので蒸発器20に流入するドレン水の温度が上昇し、その顕熱分だけ蒸発器20の負荷が減少し、蒸発器20を小型化できる。また、予熱部50に対して外部から電力を供給する必要がなく、圧縮機1の内部で発生する熱(圧縮熱)を有効に利用できる。また、圧縮空気が冷却部30に供給される前に予熱部50で予め冷却されるため、冷却部30の負荷が減少し、冷却部30を小型化できる。
【0078】
図7に示す第3実施形態の第1変形例のオイルフリー空気圧縮機1では、予熱部50の態様が変更されている。本変形例の予熱部50は、熱交換器であって、冷却部30から蒸発器20に供給されるドレン水と、1段目圧縮機本体11からインタークーラ31に供給される圧縮空気との間で熱交換し、ドレン水を加熱し、圧縮空気を冷却している。
【0079】
本変形例では、2段目圧縮機本体12のみが蒸発器20に流体的に接続されており、1段目圧縮機本体11は蒸発器20に流体的に接続されていない。そのため、蒸発器20では、2段目圧縮機本体12から吐出された高温の圧縮空気のみを加熱源として利用している。1段目圧縮機本体11から吐出された高温の圧縮空気は、蒸発器20で冷却されない場合でも、予熱部50に供給されるので、予熱部50でドレン水を加熱できる。よって、蒸発器20に流入するドレン水の温度が上昇し、その顕熱分だけ蒸発器20の負荷が減少し、蒸発器20を小型化できる。さらに予熱部50において、1段目圧縮機本体11から吐出された高温の圧縮空気を、インタークーラ31に供給する前に冷却しているので、インタークーラ31の負荷を軽減でき、インタークーラ31の小型化にも寄与する。
【0080】
本変形例では、1段目圧縮機本体11から吐出された圧縮空気を予熱部50に供給し、2段目圧縮機本体12から吐出された圧縮空気を蒸発器20に供給しているが、この関係は入れ替えられてもよい。即ち、1段目圧縮機本体11から吐出された圧縮空気を蒸発器20に供給し、2段目圧縮機本体12から吐出された圧縮空気を予熱部50に供給し、それぞれ加熱源として利用してもよい。
【0081】
また、
図8に示す第3実施形態の第2変形例のオイルフリー空気圧縮機1では、予熱部50が別の態様に変更されている。本変形例の予熱部50は、二点鎖線で示されている部分のようにインタークーラ31に併設されたファン51を有する熱交換器である。この予熱部50は、冷却部30から蒸発器20に供給されるドレン水と、ファン51によって送出されインタークーラ31で圧縮空気を冷却した後の空気との間で熱交換し、ドレン水を加熱し、圧縮空気を冷却している。なお、本変形例の予熱部50でのドレン水の加熱には、アフタークーラ32で圧縮空気を冷却した後の空気を使用してもよい。
【0082】
また、
図9に示す第3実施形態の第3変形例のオイルフリー空気圧縮機1では、予熱部50がまた別の態様に変更されている。本変形例の予熱部50は、電気ヒータであって、外部から電力を受けて、冷却部30から蒸発器20に供給されるドレン水を加熱する。このように、予熱部50は、熱交換器以外の態様であってもよい。
【0083】
以上より、本発明の具体的な実施形態やその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。