(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1偏光板および前記第2偏光板のどちらか一方は、前記光軸に対する前記振動方向の角度を示す情報を有することを特徴とする請求項1に記載の層板骨観察用顕微鏡。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡の一部を模式的に示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による観察手順の概要を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式における各部の振動方向を模式的に示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式における各部の振動方向を模式的に示す図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式における各部の振動方向を模式的に示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡のポラライザとアナライザそれぞれの振動方向を模式的に示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡のポラライザとアナライザそれぞれの振動方向を模式的に示す図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡のポラライザとアナライザそれぞれの振動方向を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡のポラライザとアナライザそれぞれの回転角度と状態との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡によるクロスニコルおよびパラニコルそれぞれの白色光の干渉縞を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡によるクロスニコルおよびパラニコルそれぞれの単色光の干渉縞を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式においてポラライザおよびアナライザを基準位置から中間の方位に位置する際の骨切片を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡によるポラライザおよびアナライザをパラニコルの状態からアナライザを僅かに回転させてコントラストを変化させた際の骨切片を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、従来の偏光顕微鏡によるクロスニコル鋭敏色観察においてリタデーションが530nmの鋭敏色板を用いた際の骨切片を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式においてポラライザとアナライザとがパラニコルの状態において観察した際のクリソタイルを示す図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式においてポラライザとアナライザとがパラニコルの状態において観察した際の別のクリソタイルを示す図である。
【
図10C】
図10Cは、従来の偏光顕微鏡によるクロスニコル鋭敏色観察において観察した際のクリソタイルを示す図である。
【
図10D】
図10Dは、従来の偏光顕微鏡によるクロスニコル鋭敏色観察において観察した際の別のクリソタイルを示す図である。
【
図11A】
図11Aは、従来の偏光顕微鏡によるポラライザとアナライザとがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式においてポラライザとアナライザとがパラニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図12A】
図12Aは、従来の偏光顕微鏡によるポラライザとアナライザとがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式におけるポラライザとアナライザとがパラニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図12C】
図12Cは、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡による複式セナルモン方式におけるポラライザとアナライザとがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、従来の偏光顕微鏡によるポラライザとアナライザとがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、複式セナルモン方式においてポラライザとアナライザとがパラニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態1の変形例に係る層板骨観察用顕微鏡の一部を模式的に示す概略図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態2に係る層板骨観察用顕微鏡の一部を模式的に示す概略図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態2に係る層板骨観察用顕微鏡による観察手順の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は、各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
〔層板骨観察用顕微鏡の構成〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡(Lamellar bone microscope)の概略構成を示す模式図である。
図1に示す層板骨観察用顕微鏡1は、試料が載置されたプレパラート11を支持し、水平方向へ移動可能なXYステージ12と、XYステージ12を保持する顕微鏡本体部13と、試料に照明光を照射する照明光学系14と、試料を観察する観察光学系15と、を備える。なお、本実施の形態1では、試料として、微小なリタデーションを持つものとして骨切片を例に説明する。
【0013】
照明光学系14は、光源部141と、ミラー142と、ポラライザ143と、第1波長板144と、コンデンサレンズ145と、を備える。照明光学系14は、光源部141から、ミラー142、ポラライザ143、第1波長板144およびコンデンサレンズ145の順に配置されてなる。
【0014】
光源部141は、試料を照射する光を出射する。光源部141は、ハロゲンランプ、キセノンランプまたはLED(Light Emitting Diode)等を用いて構成され、光を発生する光源と、光源が発した光を集光して平行光に変換するレンズ群と、によって構成される。
【0015】
ミラー142は、光源部141から照射された光をポラライザ143に向けて反射する。なお、ミラー142と光源部141との光路上に、複数のリレーレンズを設けてもよい。
【0016】
ポラライザ143は、コンデンサレンズ145とミラー142との間の光路上にコンデンサレンズ145の光軸Xを中心に回転可能に配置されてなる。ポラライザ143は、光源部141が照射する照明光の1方向の偏光成分のみを透過させる。具体的には、ポラライザ143は、光源部141から照射された照明光を直線偏光に偏光する。ポラライザ143は、フィルタ等の光学素子の1つである偏光板を用いて構成される。また、ポラライザ143の外周側には、光軸Xに対する振動方向の角度(例えば45度)を示す情報、例えばマーク、ラインおよび印字のいずれかを有する。もちろん、この情報は、所定の角度毎(例えば、5度や10度毎)に設けてもよい。なお、本実施の形態1では、ポラライザ143が第1偏光板として機能する。
【0017】
第1波長板144は、1/4波長板を用いて構成される。第1波長板144は、ポラライザ143とコンデンサレンズ145との間の光路上に配置されてなる。また、ポラライザ143は、ポラライザ143を透過する光の偏光成分の振動方向と後述するアナライザ154を透過する光の偏光成分の振動方向とが平行となるパラニコル(平行ニコル)の状態時に、γ方向がポラライザ143の振動方向およびアナライザ154の振動方向それぞれに対して45度となるように光路上に配置されてなる。第1波長板144は、ポラライザ143を透過した光の成分におけるγ方向の位相差量をλ/4変位(90度変位)させる。例えば、第1波長板144は、ポラライザ143を透過した直線偏光を円偏光に変換する。
【0018】
コンデンサレンズ145は、第1波長板144を透過した光を集光してプレパラート11上の試料を含む領域に均一に照射する。なお、コンデンサレンズ145に、光源部141から照射された光の光量を調整可能な視野絞りと、視野絞りの径を変化させる視野絞り操作部と、を設けてもよい。
【0019】
観察光学系15は、対物レンズ151と、レボルバ152と、第2波長板153と、アナライザ154と、結像レンズ155と、プリズム156と、接眼レンズ157と、リレーレンズ158と、撮像部159と、を備える。観察光学系15は、試料から順に、対物レンズ151、レボルバ152、第2波長板153、アナライザ154、結像レンズ155、プリズム156および接眼レンズ157の順に配置されてなる。
【0020】
対物レンズ151は、試料を挟んでコンデンサレンズ145と対向する光路上の位置に配置される。対物レンズ151は、互いに倍率が異なるもの(例えば10倍、50倍、100倍)がレボルバ152に装着される。
【0021】
レボルバ152は、複数の対物レンズ151が着脱自在に装着される。レボルバ152は、光路上に対して回転自在に設けられ、試料の上方に配置されてなる。レボルバ152は、例えばスイングレボルバ等を用いて構成される。
【0022】
第2波長板153は、1/4波長板を用いて構成される。第2波長板153は、アナライザ154と対物レンズ151との間の光路上であって、ポラライザ143を透過する光の偏光成分の振動方向とアナライザ154を透過する光の偏光成分の振動方向とを平行となるパラニコルの状態時に、γ方向がポラライザ143の振動方向およびアナライザ154の振動方向それぞれに対して45度となるように光路上に配置されてなる。第2波長板153は、対物レンズ151を透過した光の成分におけるγ方向の位相差量をλ/4変位(90度変位)させる。また、第2波長板153および第1波長板144は、互いにγ方向が平行となるように光路上に固定されて配置されてなる。
【0023】
アナライザ154は、第2波長板153と結像レンズ155との間の光路上に、コンデンサレンズ145の光軸Xを回転軸として回転可能に配置されてなる。アナライザ154は、第2波長板153を透過した光の1方向の偏光成分のみを透過させる。アナライザ154は、コンデンサレンズ145の光軸Xを中心に回転可能に配置されてなる。アナライザ154は、フィルタ等の光学素子の1つである偏光板を用いて構成される。また、アナライザ154の外周側には、光軸Xに対する所定の角度(例えば45度)を示すマークを有する。なお、本実施の形態1では、アナライザ154が第2偏光板として機能する。
【0024】
結像レンズ155は、アナライザ154を透過した光を集光して観察像を結像する。結像レンズ155は、1または複数のレンズを用いて構成される。
【0025】
プリズム156は、結像レンズ155で結像された観察像の光を撮像ユニットと接眼レンズ157とに分割する。プリズム156は、接合面に光を分割するためのコーティングが施されてなる。
【0026】
接眼レンズ157は、プリズム156を介して入射された観察像を拡大する。接眼レンズ157は、1または複数のレンズを用いて構成される。
【0027】
リレーレンズ158は、プリズム156からの光を撮像部159へリレーする。リレーレンズ158は、1または複数のレンズを用いて構成される。
【0028】
撮像部159は、リレーレンズ158を介して入射された試料の観察像を受光して光電変換を行うことによって、試料の画像データを生成し、この画像データを図示しない表示モニタに出力する。撮像部159は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサを用いて構成される。
【0029】
このように構成された層板骨観察用顕微鏡1は、
図2に示すように、ポラライザ143と第1波長板144とによって照明側セナルモンコンペンセータ16を構成し、アナライザ154と第2波長板153とによって観察側セナルモンコンペンセータ17を構成する。さらに、第1波長板144および第2波長板153は、観察者(光軸X)に対して、γ方向が東西方向(
図2の左右方向)で固定されてなる。さらに、ポラライザ143は、コンデンサレンズ145の光軸Xに対して、振動方向が東西方位を基準位置(0度)として回転可能に配置されてなる。さらにまた、アナライザ154は、コンデンサレンズ145の光軸Xに対して、振動方向が南北方位(
図2の上下方向)を基準位置(0度)として回転可能に配置されてなる。
【0030】
上述した層板骨観察用顕微鏡1は、照明側セナルモンコンペンセータ16および観察側セナルモンコンペンセータ17で構成することによって、試料に対して、直線偏光、楕円偏光および円偏光のいずれかの偏光によって照明することができる。具体的には、観察者は、照明側セナルモンコンペンセータ16のポラライザ143を基準位置(0度)から±45度回転させることによって、照明光を直線偏光、楕円偏光および円偏光のいずれかに偏光することができるうえ、リタデーションを0〜137nmの範囲で可変することができる。この場合において、観察者は、観察側セナルモンコンペンセータ17のアナライザ154を基準位置から±45度回転させることで、照明側のリタデーションを相減の法則で打ち消すことができる。以下においては、上述のような方式を複式セナルモン方式と呼ぶ。これにより、観察者は、ポラライザ143を基準位置から−45度回転(光軸Xに対して右回り)させることによって、試料に照射される光を左楕円偏光から円偏光に偏光することができる。また、観察者は、アナライザ154を基準位置から+45度回転(光軸Xに対して左周り)させた場合、観察光が右楕円偏光から円偏光とすることができる。
【0031】
(観察手順)
次に、層板骨観察用顕微鏡1による複式セナルモン方式の観察手順について説明する。
図3は、層板骨観察用顕微鏡1による複式セナルモン方式の観察手順の概要を示すフローチャートである。
図4A〜
図4Cは、層板骨観察用顕微鏡1による複式セナルモン方式における各部の振動方向を模式的に示す図である。
図5A〜
図5Cは、ポラライザ143とアナライザ154それぞれの振動方向を模式的に示す図である。なお、
図3、
図4A〜
図4Cおよび
図5A〜
図5Cにおいては、試料として骨切片を観察する場合について説明する。また、光源部141が照射する光を白色光として説明する。さらに、
図5A〜
図5Cにおいて、矢印P1がポラライザ143の偏光方向を示し、矢印A1がアナライザ154の偏光方向を示す。
【0032】
図3に示すように、まず、観察者は、ポラライザ143の振動方向とアナライザ154の振動方向とが直交したクロスニコル(直交ニコル)の状態(
図4Aおよび
図5Aを参照)から、アナライザ154を基準位置から数度、+側に回転させる(ステップS101)。これにより、観察者が観察する視野は、明るくなる。
【0033】
続いて、観察者は、ポラライザ143を基準位置から視野の明るさを消光する方位に回転させる(ステップS102)。具体的には、
図4Bおよび
図5Bに示すように、観察者は、ポラライザ143を基準位置から視野の明るさを消光する方位に僅かに回転させる。
【0034】
その後、観察者は、ポラライザ143を、その位置から左右に僅かに回転させて観察像のコントラストの変化を観察し(ステップS103)、観察像のコントラストが良好である場合(ステップS104:Yes)、観察者は、後述するステップS106へ移行する。これに対して、観察像のコントラストが良好でない場合(ステップS104:No)、観察者は、アナライザ154をさらに数度回転させる(ステップS105)。ステップS105の後、ステップS103へ戻り、観察者は、ポラライザ143を回転させながら観察像のコントラストが良好となるまで、ポラライザ143とアナライザ154とを回転させる。
【0035】
ステップS106において、観察者は、観察像が消光位置であるか否かを判断する。具体的には、観察者は、アナライザ154を回転することによって、アナライザ154の回転角度が大きくなるに従って、ポラライザ143を回転させても消光せず、観察像の視野が鋭敏色となるとき、消光(λ=546nm)とみなす。このとき、上下の照明側セナルモンコンペンセータ16および観察側セナルモンコンペンセータ17は、円偏光板となり、λ=546nmが消光している状態となる。観察像が消光位置であると判断した場合(ステップS106:Yes)、観察者は、ステップS107へ移行する。これに対して、観察像が消光位置でないと判断した場合(ステップS106:No)、観察者は、ステップS103へ戻り、観察像が消光位置となるまで、ポラライザ143およびアナライザ154を回転させる。
【0036】
ステップS107において、観察者は、ポラライザ143を視野の明るさを消光する方位に回転させる。
【0037】
続いて、観察者は、ポラライザ143を、その位置から左右に僅かに回転させて観察像のコントラストの変化を観察し(ステップS108)、観察像のコントラストが良好である場合(ステップS109:Yes)、観察者は、後述するステップS111へ移行する。これに対して、観察像のコントラストが良好でない場合(ステップS109:No)、観察者は、アナライザ154をさらに数度回転させる(ステップS110)。ステップS110の後、ステップS107へ戻り、観察者は、ポラライザ143を回転させながら観察像のコントラストが良好となるまで、ポラライザ143とアナライザ154とを回転させる。
【0038】
ステップS111において、観察者は、アナライザ154およびポラライザ143の回転を固定する。具体的には、
図4Cおよび
図5Cに示すように、アナライザ154が基準位置から+45度の位置、ポラライザ143が基準位置から−45度の位置が回転の上限となる(パラニコル状態)。より具体的には、
図6のテーブルT1に示すように、上下の照明側セナルモンコンペンセータ16および観察側セナルモンコンペンセータ17は、円偏光板となり、λ=546nmが消光している状態となる。ステップS111の後、本手順を終了し、試料の観察を行う。このように、試料のZ’方向が第1波長板144および第2波長板153それぞれのγ方向と同一である場合、相加(青)の干渉色を示し、垂直であれば相減(黄)の干渉色を示す。なお、観察者は、明視野観察または蛍光観察を行う場合、光路上からアナライザ154、ポラライザ143、第1波長板144および第2波長板153を退避させる。
【0039】
〔干渉縞の比較〕
次に、層板骨観察用顕微鏡1によるクロスニコルおよびパラニコルそれぞれの干渉縞について説明する。
図7は、層板骨観察用顕微鏡1によるクロスニコルおよびパラニコルそれぞれの白色光の干渉縞を示す図であり、
図7の(a)がポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態時に観察可能な干渉縞を示し、
図7の(b)がポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態時に観察可能な干渉縞を示す。なお、
図7においては、試料を石英クサビとし、光源部141が照射する光を白色光として説明する。
【0040】
図7に示すように、1次の干渉縞に対応するリタデーション(R)の範囲d1は、クロスニコルの場合、1次干渉色がR=λが中心となる(
図7の(a)を参照)、これに対して、1次の干渉縞に対応するリタデーション(R)の範囲d2は、パラニコルの場合、1次干渉色がR=λ/2が中心となり(
図7の(b)を参照)、クロスニコルのほぼ1/2となる。
【0041】
図8は、層板骨観察用顕微鏡1によるクロスニコルおよびパラニコルそれぞれの単色光の干渉縞を示す図であり、
図8の(a)がポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態時に観察可能な別の干渉縞を示し、
図8の(b)がポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態時に観察可能な干渉縞を示す。なお、
図8においては、試料を石英クサビとし、光源部141が照射する光を546nmの単色光として説明する。
【0042】
図8に示すように、層板骨観察用顕微鏡1は、ポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において、半波長の整数倍((λ/2)×n(n=自然数))のリタデーション(R)で消光し、ポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態において、λの整数倍のリタデーション(R)で消光する(
図8の(a)および(b)を参照)。
【0043】
このように層板骨観察用顕微鏡1は、ポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において試料のリタデーションに対応する干渉カラーチャートを作成することができる。さらに、1次の干渉色は、リタデーションがλ/2にある。また、層板骨観察用顕微鏡1は、鋭敏色がλ/2の位置にあり、1次干渉色の幅(黄から青)がクロスニコルの約半分となる。さらにまた、層板骨観察用顕微鏡1は、ポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において、波長のλ/2からλの整数倍のリタデーションで消光し、ポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態において、λの整数倍のリタデーションで消光する。
【0044】
〔骨切片の観察像〕
次に、層板骨観察用顕微鏡1を用いて試料としての骨切片を観察した際の観察像について説明する。
図9Aは、複式セナルモン方式においてポラライザ143およびアナライザ154を基準位置から中間の方位に位置する際の骨切片を示す図であり、
図9Bは、ポラライザ143およびアナライザ154をパラニコルの状態からアナライザ154を僅かに回転させてコントラストを変化させた際の骨切片を示す図であり、
図9Cは、従来の偏光顕微鏡によるクロスニコル鋭敏色観察においてリタデーションが530nmの鋭敏色板を用いた際の骨切片を示す図である。
【0045】
図9Bに示すように、複式セナルモン方式において、色のコントラストで骨切片の層板構造を容易に観察することができる。
【0046】
〔クリソタイルの観察像〕
次に、層板骨観察用顕微鏡1を用いて試料としてのクリソタイル(アスベスト)を観察した際の観察像について説明する。
図10Aは、複式セナルモン方式においてポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において観察した際のクリソタイルを示す図であり、
図10Bは、複式セナルモン方式においてポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において観察した際の別のクリソタイルを示す図であり、
図10Cは、クロスニコル鋭敏色観察(530nm波長板を使用)において観察した際のクリソタイルを示す図であり、
図10Dは、クロスニコル鋭敏色観察において観察した際の別のクリソタイルを示す図である。
図10Aおよび
図10Bにおいて、矢印P1がポラライザ143の振動方向を示し、矢印A1がアナライザ154の振動方向を示し、矢印H1が第1波長板144、第2波長板153それぞれのγ方向を示す。また、
図10Cおよび
図10Dにおいて、矢印P1がポラライザ143の振動方向を示し、矢印A1がアナライザ154の振動方向を示し、矢印H1が鋭敏色板のγ方向を示す。
【0047】
図10A〜
図10Cに示すように、複式セナルモン方式においては、リタデーションの小さい細いアスベスト繊維で色のコントラストの強い観察像を得ることができる。
【0048】
〔コノスコープ像〕
次に、層板骨観察用顕微鏡1を用いたコノスコープ像の観察について説明する。
図11Aは、従来の偏光顕微鏡によるポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図であり、
図11Bは、複式セナルモン方式においてポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図であり、
図11Aおよび
図11Bにおいて、試料として方解石(1軸性、負号結晶)の場合について説明する。
【0049】
図11Aおよび
図11Bに示すように、観察者は、従来のクロスニコスによるコノスコープ像と比べて(
図11Aを参照)、光学軸部分(中心部)に1次の干渉色を示すので、負号結晶であることを容易に判定することができる(
図11Bを参照)。これにより、観察者は、アイソジャイアのない偏光干渉像を観察することができる。
【0050】
図12Aは、従来の偏光顕微鏡によるポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図であり、
図12Bは、複式セナルモン方式においてポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図であり、
図12Cは、複式セナルモン方式においてポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
図12A〜
図12Cにおいて、試料として方解石(1軸性、負号結晶)の場合について説明する。また、
図12A〜
図12Cにおいては、546nmフィルタによる単色光のコノスコープ像を示す。
【0051】
図12A〜
図12Cに示すように、観察者は、従来のクロスニコスによるコノスコープ像と比べて(
図12Aを参照)、中心部のリタデーションがλ/2となるので、消光している縞間隔がλとなる(
図12Bを参照)。
図12Bでは、第1輪帯のリタデーションがλ、
図12Cでは、第1輪帯のリタデーションがλ/2となる。このため、通常のコノスコープ像と同じとなる。これにより、観察者は、アイソジャイアのない偏光干渉像を観察することができる。
【0052】
図13Aは、従来の偏光顕微鏡によるポラライザ143とアナライザ154とがクロスニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図であり、
図13Bは、複式セナルモン方式においてポラライザ143とアナライザ154とがパラニコルの状態において観察されるコノスコープ像を示す図である。
図13Aおよび
図13Bにおいて、試料として白雲母(2軸性結晶)の場合について説明する。
【0053】
図13Aおよび
図13Bに示すように、観察者は、2軸性結晶での光学軸付近の像が異なった観察を行うことができる。これにより、観察者は、アイソジャイアのない偏光干渉像を観察することができる。また、546nmフィルタによる単色光のコノスコープ像においても方解石の場合と同様の干渉像を観察することができる。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、骨切片の層板構造を容易に視認することができる。
【0055】
また、本発明の実施の形態1によれば、ポラライザ143とアナライザ154とをパラニコルにした場合、第1波長板144および第2波長板153それぞれが相加の方位で固定して配置することによって、全体リタデーションが274nmとなり、視野を鋭敏色とすることができるので、ポラライザ143およびアナライザ154のどちらか一方を僅かに回転させた場合、異方性のある部分が青色または黄色の干渉色に変化させることができる。
【0056】
また、本発明の実施の形態1によれば、ポラライザ143およびアナライザ154それぞれの回転が基準位置から45度未満であっても、上下の照明側セナルモンコンペンセータ16および観察側セナルモンコンペンセータ17が互いに相減することができるので、その位置でも観察像のコントラストを調整することができる。
【0057】
また、本発明の実施の形態1によれば、試料の方位を維持したまま観察することができる。
【0058】
また、本発明の実施の形態1によれば、微小なリタデーションを持つ試料を明瞭な色のコントラストで観察することができる。
【0059】
また、本発明の実施の形態1によれば、円偏光照明、円偏光検出する条件下において、ポラライザ143およびアナライザ154がパラニコル下で1/2波長板を用いた鋭敏色観察と同じとなり、高感度な鋭敏色観察を行うことができるので、鋭敏色観察を行う場合、観察像のコントラストを強調することができる。
【0060】
また、本発明の実施の形態1によれば、偏光状態でコノスコープ観察を行う場合、アイソジャイアのない偏光干渉像を観察することができる。
【0061】
(実施の形態1の変形例)
次に、本発明の実施の形態1に係る変形例について説明する。なお、上述した実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図14は、本発明の実施の形態1の変形例に係る層板骨観察用顕微鏡の一部を模式的に示す概略図である。
【0063】
図14に示す層板骨観察用顕微鏡1aは、ポラライザ143およびアナライザ154は、互いの振動方向がパラニコルの状態で固定されて配置されてなる。具体的には、ポラライザ143およびアナライザ154は、振動方向が光軸Xに対して45度回転させた状態で固定されて配置されてなる。これにより、ポラライザ143と第1波長板144とによって左回り円偏光板を構成することができるとともに、第2波長板153とアナライザ154とによって右回り円偏光板を構成することができる。
【0064】
以上説明した本発明の実施の形態1に係る変形例によれば、上述した実施の形態1と同様の効果を有し、骨切片の層板構造を容易に視認することができる。
【0065】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、上述した実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図15は、本発明の実施の形態2に係る層板骨観察用顕微鏡の一部を模式的に示す概略図である。
【0067】
図15に示す層板骨観察用顕微鏡1bは、上述した実施の形態1に係る層板骨観察用顕微鏡1の第2波長板153およびアナライザ154それぞれに換えて、ブレースケーラコンペンセータ181と、アナライザ182と、を備える。
【0068】
ブレースケーラコンペンセータ181は、対物レンズ151とアナライザ182との光路上にコンデンサレンズ145の光軸Xを回転軸として回転可能に配置されてなり、アナライザ182との相対的な位置関係に応じて試料のリタデーションを変化させる。
【0069】
アナライザ182は、対物レンズ151の後段の観察側の光路上に配置されてなり、ポラライザ143との相対的な位置関係に応じて試料を透過した光の1方向の偏光成分のみを透過させる。アナライザ182は、基準位置(南北方位)で固定されて配置されてなる。
【0070】
(観察手順)
次に、層板骨観察用顕微鏡1bによる観察手順について説明する。
図16は、層板骨観察用顕微鏡1bによる観察手順の概要を示すフローチャートである。
【0071】
図16に示すように、観察者は、ブレースケーラコンペンセータ181を任意の角度に回転して観察像の視野を調整して試料のリタデーションを生じさせる(ステップS201)。なお、ブレースケーラコンペンセータ181のリタデーションは、最大で55nmである。
【0072】
続いて、観察者は、ポラライザ143を回転させて消光し(ステップS202)、その位置からポラライザ143またはブレースケーラコンペンセータ181を僅かに左右に回転して観察像のコントラストを調整する(ステップS203)。
【0073】
その後、観察者は、観察像のコントラストが良好であるか否かを判断し(ステップS204)、観察像のコントラストが良好である場合(ステップS204:Yes)、観察者は、本処理を終了し、試料の観察を行う。これに対して、観察像のコントラストが良好でない場合(ステップS204:No)、観察者は、上述したステップS201へ戻る。
【0074】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同様の効果を有し、骨切片の層板構造を容易に視認することができる。
【0075】
(その他の実施の形態)
本発明では、骨切片の層板構造を観察する層板骨観察用顕微鏡を例に説明したが、たとえば標本を拡大する対物レンズ、対物レンズを介して標本を撮像する撮像機能、および画像を表示する表示機能を備えた撮像装置、たとえばビデオマイクロスコープ等であっても、本発明を適用することができる。
【0076】
また、本発明では、層板骨観察用顕微鏡が透過照明を用いて場合を説明したが、落射照明を用いる場合であっても適用することができる。この場合、試料からの反射光を分岐するプリズムを光路に設け、照明光学系と観察光学系とを光路上に配置すればよい。
【0077】
また、本発明では、蛍光観察法など他の観察法との併用も可能である。
【0078】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「その後」、「続いて」等の表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本発明を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。すなわち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0079】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態を含みうるものであり、請求の範囲によって特定される技術的思想の範囲内で種々の設計変更等を行うことが可能である