特許第6605402号(P6605402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000002
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000003
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000004
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000005
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000006
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000007
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000008
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000009
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000010
  • 特許6605402-調節ボルト付き機器 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605402
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】調節ボルト付き機器
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20191031BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20191031BHJP
   F16B 39/12 20060101ALI20191031BHJP
   F16B 21/18 20060101ALI20191031BHJP
   F16B 37/14 20060101ALI20191031BHJP
   F16B 39/18 20060101ALI20191031BHJP
   F02M 59/20 20060101ALN20191031BHJP
【FI】
   F16B41/00 Q
   F02M59/44 S
   F16B39/12 B
   F16B21/18 F
   F16B37/14 C
   F16B39/18
   !F02M59/20 D
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-125410(P2016-125410)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-227310(P2017-227310A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 直也
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】奥田 貢
(72)【発明者】
【氏名】岩永 渉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
(72)【発明者】
【氏名】梶原 崇弘
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−336963(JP,A)
【文献】 特開昭58−065965(JP,A)
【文献】 特開2010−096172(JP,A)
【文献】 特開2005−016350(JP,A)
【文献】 実開昭50−114569(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 41/00, 39/12, 39/18,
21/18, 35/04, 37/04,
37/14, 39/02, 39/10
F02M 39/00− 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ孔が形成されているボルト取付壁と、
前記雌ねじ孔に螺合されて前記ボルト取付壁に装着されている調節ボルトと、
前記調節ボルトに螺合されているロックナットと、
前記調節ボルト及び前記ロックナットを囲繞する筒状部を有して前記ロックナットに嵌装されているカバーと、
前記カバーを前記ロックナットに対して抜止め状態とする抜止め部と、
を備えている調節ボルト付き機器であって、
前記カバーの開口側に前記筒状部より径及び肉厚の大きい補強部を形成し、前記補強部には平坦面でなる当接部が設けられ、
前記ボルト取付壁又は前記ボルト取付壁に取付けられている機器側の部材に設けられている被当接部と前記当接部とが、前記調節ボルトの軸心回り方向で当接する構成とされることにより、
前記カバーが前記軸心回りに回転することを規制する回転規制機構が設けられている調節ボルト付き機器。
【請求項2】
前記当接部は、前記カバーの前記軸心方向視での外郭形状がD形となるように、前記カバーの外周部を部分的に欠如させた平坦面により構成されている請求項1に記載の調節ボルト付き機器。
【請求項3】
前記被当接部は、前記平坦面に近接対向配備される状態に前記機器側の部材に形成された機器側平坦面である請求項2に記載の調節ボルト付き機器。
【請求項4】
前記当接部は、前記カバーのボルト取付壁側の開口端を前記軸心に関する所定角度分が延設されてなる円弧状突設部であり、前記被当接部は、前記円弧状突設部と前記軸心回りで干渉するように前記ボルト取付壁に形成されている盛上り部である請求項1に記載の調節ボルト付き機器。
【請求項5】
近接配備される一対の雌ねじ孔が形成されているボルト取付壁と、
各前記雌ねじ孔に螺合されて前記ボルト取付壁に装着されている一対の調節ボルトと、
各前記調節ボルトに螺合されているロックナットと、
前記調節ボルト及び前記ロックナットを囲繞する筒状部を有して各前記ロックナットに嵌装されている一対のカバーと、
前記カバーを前記ロックナットに対して抜止め状態とする抜止め部の一対と、
を備えている調節ボルト付き機器であって、
一対の前記カバーそれぞれに形成されている当接部どうしの当接により、各前記カバーのそれぞれが対応する前記調節ボルトの軸心回りに回転することを規制する回転規制機構が設けられている調節ボルト付き機器。
【請求項6】
前記カバーは、前記ロックナットに抜止め状態に外嵌されているフランジ部と、前記フランジ部のボス部に圧入外嵌されている開口部及び前記筒状部を備えるカバー本体とからなり、
前記フランジ部の前記軸心方向視での外郭形状がD形となるように前記フランジ部に平坦面が形成され、各平坦面が対向配備される状態に配置して前記回転規制機構が構成されている請求項5に記載の調節ボルト付き機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節ボルト付き機器に係り、詳しくは、調節ボルトの調節位置の改竄を防止するカバーの抜き取りを抑制させるための調節ボルト付き機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メネジ孔が形成されたボルト取付壁と、メネジ孔にネジ嵌合され、ボルト取付壁に取り付けられた調節ボルトと、調節ボルトにネジ嵌合されたロックナットと、ロックナットに回転可能に外嵌されたカバーと、カバーを抜け止めする抜け止め部を備えた、調節ボルト付き機器がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の機器では、調節ボルトでエンジンの最大出力時の燃料噴射量等を調節した後は、ロックナットをカバーで覆い、調節ボルトの調節位置の改竄を防止することができる利点がある。
【0004】
特許文献1の発明では、カバーの抜け止め部は、カバーの周壁の開口端部で構成されるカシメ部と、カシメ部を係止するロックナットの係止部を備え、カバーの周壁には、カシメ部の変形を容易にする変形用スリットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−71345号公報(特に、図1図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、その「発明の背景、「発明が解決しようとする課題」、及び従来図である図11〜13に記載されたように、アルミ合金製で中間部がカシメによりナットに套嵌固定されたカバーや、ワイヤーを用いて封印された防護キャップでは、調節ボルトの調節位置改竄の防止に不完全さがあり、それを改善したものである。即ち、鋼材製のカバーの下端部に変形用スリットを入れ、下端部をカシメて抜止めさせる手段である。
【0007】
しかしながら、下端カシメ、中間カシメ、封印キャップ方式、或いは圧入などの構成により取外し不能なカバーを設ける手段では、調節ボルトが曲がるほどの強い横方向の力がカバーに加えられた場合には、調節ボルトと一体となっている若干傾いたカバーを、その傾きを利用しての偏心回し操作が可能になることがありえる。
【0008】
そうなると、カバーを介して曲がった調節ボルトが緩められたり外されたりされるおそれがある。つまり、カバーが回し操作可能な構成である点に起因して、調節ボルトの調節位置の改竄防止が不完全となる場合のあることが分かってきたのである。
【0009】
このような実状に鑑みて、本発明の目的は、調節ボルトの調節位置の改竄を防止するためのカバーの回し操作ができないようにして、調節ボルトが曲がるほどの外力が加えられた場合でも、カバーを介しての調節ボルトの回し操作を規制することができる調節ボルト付き機器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、雌ねじ孔1が形成されているボルト取付壁2と、
前記雌ねじ孔1に螺合されて前記ボルト取付壁2に装着されている調節ボルト3と、
前記調節ボルト3に螺合されているロックナット4と、
前記調節ボルト3及び前記ロックナット4を囲繞する筒状部5Aを有して前記ロックナット4に嵌装されているカバー5と、
前記カバー5を前記ロックナット4に対して抜止め状態とする抜止め部6と、
を備えている調節ボルト付き機器において、
前記カバー5の開口側に前記筒状部5Aより径及び肉厚の大きい補強部22を形成し、前記補強部22には平坦面でなる当接部22Aが設けられ、
前記ボルト取付壁2又は前記ボルト取付壁2に取付けられている機器側の部材37に設けられている被当接部37aと前記当接部22Aとが、前記調節ボルト3の軸心P回り方向で当接する構成とされることにより、
前記カバー5が、前記軸心P回りに回転することを規制する回転規制機構Aが設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の調節ボルト付き機器において、
前記当接部22Aは、前記カバー5の前記軸心P方向視での外郭形状がD形となるように、前記カバー5の外周部を部分的に欠如させた平坦面により構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の調節ボルト付き機器において、
前記被当接部37aは、前記平坦面22Aに近接対向配備される状態に前記機器側の部材37に形成された機器側平坦面であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の調節ボルト付き機器において、
前記当接部22Aは、前記カバー5のボルト取付壁側の開口端を前記軸心Pに関する所定角度分が延設されてなる円弧状突設部であり、前記被当接部37aは、前記円弧状突設部22Aと前記軸心P回りで干渉するように前記ボルト取付壁2に形成されている盛上り部であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、近接配備される一対の雌ねじ孔1,1が形成されているボルト取付壁2と、
各前記雌ねじ孔1,1に螺合されて前記ボルト取付壁2に装着されている一対の調節ボルト3,3と、
各前記調節ボルト3,3に螺合されているロックナット4,4と、
前記調節ボルト3及び前記ロックナット4を囲繞する筒状部5Aを有して各前記ロックナット4,4に嵌装されている一対のカバー5,5と、
前記カバー5を前記ロックナット4に対して抜止め状態とする抜止め部6の一対と、
を備えている調節ボルト付き機器において、
一対の前記カバー5,5それぞれに形成されている当接部22Aどうしの当接により、各前記カバー5,5のそれぞれが、対応する前記調節ボルト3の軸心P回りに回転することを規制する回転規制機構Aが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の調節ボルト付き機器において、
前記カバー5,5は、前記ロックナット4に抜止め状態に外嵌されているフランジ部5Fと、前記フランジ部のボス部に圧入外嵌されている開口部46及び前記筒状部5Aを備えるカバー本体5Hとからなり、
前記フランジ部5Fの前記軸心P方向視での外郭形状がD形となるように前記フランジ部5Fに平坦面22Aが形成され、各平坦面22A,22Aが対向配備される状態に配置して前記回転規制機構Aが構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、カバーの回し操作に起因して、出荷後の調節ボルトの再調節が防止される効果が得られる。
即ち、ボルト取付壁から離れる向きにロックナットから抜き取られようとするカバーは、抜止め部の存在により、その抜取りが牽制阻止されている。つまり、調節ボルトはカバーに覆われて封印されており、従って、カバーが装着された後は、調節ボルトの回し操作が不能とされている。
【0017】
ところで、一般的に、ナットなどの雌ねじ部に螺着されているボルトに横方向の力が掛かり、ボルトの雌ねじ部から出ている部分が曲がってしまった場合、その曲がっている部分のボルトは本来のボルト軸心に対して偏心しており、その偏心を利用した無理回し操作、即ち、偏心回し操作により、緩めたり増し締めしたりすることが可能なことがある。
従って、機器のボルト取付壁に螺着されていてカバーに覆われている調節ボルトに、横方向の強い力が加わって曲がり変形された場合には、カバーを介しての前述した偏心回し操作により、調節ボルトの緊緩の回し操作が可能となるおそれが考えられる。
【0018】
しかしながら、カバーが、調節ボルトの軸心回りに回転することを規制する回転規制機構が設けられているので、上述の如く、横方向の強い力によって調節ボルト曲がり変形された場合でも、その曲がりによるカバーを介しての偏心回し操作が行えないように規制される。
その結果、調節ボルトの調節位置の改竄を防止するためのカバーの回し操作ができないようにして、外力によって調節ボルトが曲がった場合でも、カバーを介しての調節ボルトの回し操作は規制され、より改善された調節ボルト付き機器を提供することができる。
【0019】
請求項1の発明によれば、ボルト取付壁又はそれに固定されている機器側の部材の被当接部がボルト軸心回り方向で当接するから、カバーが左右いずれにも回らない、或いは少ししか回せない回動規制が行える回転規制機構が構成されている。従って、この段落までに述べてきた効果が強化される利点がある。
【0020】
なお、回転規制機構としては、請求項2の発明のように、カバーの外郭形状をD形としてその平坦面で当接部を構成させる手段や、請求項3の発明のように、機器側の部材に形成された機器側平坦面で当接部に当接する被当接部とする手段がある。また、請求項4の発明のように、カバーの開口端側に設けた円弧状突設部により当接部とし、かつ、ボルト取付壁に形成された盛上り部により被当接部とする手段を採ることもできる。
【0021】
請求項5の発明によれば、調節ボルトの一対が互いに近接されて配置されている場合には、一対のカバーそれぞれの当接部どうしを当接させる構造を採ることが可能であって、それにより、構造簡単で廉価に回転規制機構を設けることができる利点がある。
【0022】
この場合、請求項6の発明のように、カバーが、ロックナットに抜止め外嵌されたフランジ部と、フランジ部に圧入外嵌されたカバー本体とからなる構成の場合には、フランジ部をD形として、フランジ部どうしの当接により、構造簡単で廉価に回転規制機構を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】燃料噴射量の調節ボルトの構造を示す一部切欠きの正面図
図2】カバーの回止め構造を示す要部の平面図
図3図1の調節ボルトを備えるディーゼルエンジンの要部の縦断断面図
図4】(a)自由状態での袋ナットの装着溝と止め輪との位置関係を示す要部断面図、(b)カバー下降操作開始時における止め輪の縮径変形を示す要部断面図
図5】(a)カバー下降による止め輪のカバー内周溝への拡径変形を示す要部断面図、(b)カバー持上げによる止め輪の連れ上り状況を示す要部断面図
図6】(a)カバー持上げによる止め輪の規制溝への移行及びロック状態を示す要部断面図、(b)縮径変形した止め輪によるロック状態を示す要部断面図
図7】(a)止め輪の平面図、(b)止め輪の正面図
図8】実施形態2のカバーの回止め構造を示し、(a)は回動規制機構の構造を表すボルト取付壁の平面図、(b)は(a)のX−X断面線での一部切欠き側面図
図9】実施形態3のカバーの回り止め構造を示し、(a)は調節阻止機構部分の一部切欠きの側面図、(b)は一対のカバーを示す正面図
図10】実施形態4のカバーの回り止め構造を示し、(a)は調節阻止機構部分の一部切欠きの側面図、(b)は一対のカバーを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明による調節ボルト付き機器の実施の形態を、その一例として、立形で直列複数気筒の燃料調節ボルト付きディーゼルエンジンについて、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図3に示されるように、実施形態1によるディーゼルエンジンは、燃料噴射装置30を備えている。燃料噴射装置30は、ポンプ収容ケース31と、燃料噴射ポンプ32と、メカニカルガバナ29とを備えている。
ポンプ収容ケース31は、クランクケース(図示省略)の幅方向を横方向として、クランクケースの横側にクランクケースと一体鋳造で形成され、上壁33にポンプ差込み口34を備え、ポンプ差込み口34の開口周縁部にポンプ取付け座35が設けられている。
【0026】
燃料噴射ポンプ32はボッシュ型のプランジャ式列形ポンプで、ポンプ収容ケース31内にはポンプ差込み口34から燃料噴射ポンプ32のプランジャ部36が差し込まれ、燃料噴射ポンプ32のフランジ部37が六角穴付ボルトなどによってポンプ取付け座35に取り付けられ、プランジャ部36がポンプ収容ケース31内に収容されている。
【0027】
図3に示されるように、メカニカルガバナ29は、ポンプ収容ケース31内に収容され、燃料噴射ポンプ32を調量制御し、負荷変動に拘わらず、エンジン回転数を調速レバー28で設定された目標回転数に維持する。メカニカルガバナ29は、ガバナスプリング(図示省略)のバネ力とフライウェイト(図示省略)のガバナ力との不釣合い力で揺動するガバナレバー38を備え、ガバナレバー38の揺動を介して燃料噴射ポンプ32の燃料調量ラック39が調量される。
【0028】
図3に示されるように、ポンプ収容ケース31の上壁33には、燃料調節装置40が設けられている。この燃料調節装置40は、エンジンの定格回転数での最大燃料噴射量が調節され、エンジンの最大出力が調節される。
図1に示されるように、燃料調節装置40は、ボルト先端部3aと基端部の回し調節溝3bとを有してボルト取付壁2(ポンプ取付け座35)に螺着されている軸ボルト状の調節ボルト3と、ロックナット4とを備えて構成されている。つまり、工具係合部である回し調節溝3bを用いてマイナスドライバーなどで調節ボルト3を回して調節し、その後にロックナット4を操作して調節ボルト3を位置決め固定させることができる。なお、12は平ワッシャである。
【0029】
燃料調節装置40の要の部品である調節ボルト3は、雌ねじ孔1に螺合されてボルト取付壁2に貫通装着されており、そのボルト先端部3aはポンプ収容ケース31内に突出している。ボルト先端部3aは、ガバナレバー38の燃料増量揺動側に位置されており、ガバナレバー38を受け止めて、ガバナレバー38の燃料増量側の揺動位置を決めている。従って、調節ボルト3の締め込み量の調節により、最大燃料噴射量が調節可能に構成されている。
【0030】
図1図3に示されるように、調節ボルト3の回し操作を不可として、燃料調節装置40の調節機能が行えないように阻止する調節阻止機構Sが装備されている。
調節阻止機構Sの機能は、図1に示されるように、調節ボルト3でエンジンの最大出力の燃料噴射量を調節した後は、ロックナット4をカバー5で覆って封印し、調節ボルト3の調節位置の改竄を防止する、というものである。カバー5は、一旦ロックナット4に装着すると、破壊させない限り抜き出すことができないように構成されている。次に、その調節阻止機構Sについて詳述する。
【0031】
調節阻止機構Sは、図1図3に示されるように、雌ねじ孔1が形成されているボルト取付壁2と、調節ボルト3と、調節ボルト3に螺合されているロックナット4と、調節ボルト3及びロックナット4に囲繞する筒状部5Aを有してロックナット4に嵌装されているカバー5と、カバー5をロックナット4に対して抜止め状態とする抜止め部6と、を備えて構成されている。
ロックナット4は、平ワッシャ12を介してボルト取付壁2に接する第1ロックナット4Aと、平ワッシャ13を介して第1ロックナット4Aに接する第2ロックナット4Bと、を有するダブルナット構造に構成されている。第2ロックナット4Bは、円柱状の胴部14、ナット部15、及び半円球面状の袋部16を有する袋ナットで構成されている。
【0032】
抜止め部6は、C形の止め輪10と、止め輪10を抜止め状態で内装可能にカバー5に形成されている装着内周部11と、止め輪10を外装可能に第2ロックナット4Bの胴部14に形成されている外周溝7とを有して構成されている。ここで、装着内周部11の一例として、内周溝11が採用されている。
外周溝7は、内周溝11に内嵌装着、即ち内装されている止め輪10の縮径による内周溝11からの外れを規制する溝底8aを備えた第1溝部8と、内周溝11に内装されている止め輪10の内周溝11からの縮径による外れを許容する溝底9aを備えて第1溝部8のボルト取付壁側に連続形成されている第2溝部9とを有して構成されている。
【0033】
図4(b)に示されるように、カバー5において止め輪10を強制縮径させて通過させる最も小さい径を持つ主内周面19、詳しくは、テーパ内周面20と内周溝11との間の短い主内周面(通過制限内周面)19の径(直径)をD、止め輪10の径方向幅をw、第1溝部8の溝底8aの径(直径)をd1、第2溝部9の溝底9aの径(直径)をd2と定義する。この場合、次の式(1)と(2)が成り立つように構成されている。
(1)…d1>D−2w
(2)…d2<D−2w
【0034】
つまり、式(1)は、「装着内周部11に内装されている前記止め輪10の縮径による前記装着内周部11からの外れを規制する溝底8a」を表す構成であり、式(2)は、「装着内周部11に内装されている前記止め輪10の前記装着内周部11からの縮径による外れを許容する溝底9a」を表す構成である。但し、内周溝11の径(直径)をΦとすると、図6(a)に示す状態を可能とするために、
(3)…d1<Φ−2w
となるように、即ち、第1溝部8の溝底8aに関しては、「Φ−2w>d1>D−2w」が成り立つように構成されている。
【0035】
なお、上記式(3)は、内周溝11に嵌っているときの止め輪10の外径が内周溝11の径Φに一致している場合、即ち、内周溝11の径Φが止め輪10の自由状態の外径と同じ又は小さい場合に成り立つ。内周溝11の径Φが止め輪10の自由状態の外径より少し大きい場合に、上記式(3)を成り立たせるには、内周溝11の径に代えて止め輪10の自由状態の外径をΦとすれば良い。
【0036】
カバー5は、図1図3に示されるように、円筒断面を有する筒状部5Aと、中心に円形の孔17を備える蓋部5Bとを有して構成され、筒状部5Aの開口側は径の大きい補強部22に形成されている。
筒状部5Aの内周部は、最も径が大きく均一径を備えてボルト取付壁側(先端側)に形成されている開口内周面18と、開口内周面18よりも小径で反ボルト取付壁側(基端側)に形成されている主内周面19と、ボルト軸方向21で径を徐変させて開口内周面18と主内周面19とを繋ぐテーパー内周面20とにより構成されている。
つまり、カバー5の内周部には、自由状態の止め輪10の外径よりも大径の開口部18aを備えて奥窄まりとなるテーパー内周面20が、内周溝11のボルト取付壁側に形成されている。主内周面19におけるテーパー内周面20との境目付近に形成されている。
【0037】
また、カバー5の補強部22には、図2に示されるように、断面形状がD形状となるように、一部が削られたような面である平坦面22Aが形成されている。その平坦面22Aは、ロックナット4への装着状態において、燃料噴射ポンプ32のフランジ部37の平坦な側面37aに隙間少なく近接配置される状態に、その寸法や形状が設定されている。
従って、ロックナット4に装着された状態では、平坦面22Aと側面37aとの近接対向配備構成により、カバー5の回動操作ができない回動規制機構(回転規制機構の一例)Aが構成されている。
【0038】
つまり、調節ボルト3の軸心P回りにカバー5が回転することを規制する回動規制機構Aは、カバー5に設けられている平坦面(当接部の一例)22Aと、ボルト取付壁2に取付けられている機器側の部材であるフランジ部37に設けられている機器側平坦面である側面(被当接部の一例)37aとが、カバー5の軸心P回り方向で当接する配置設定により構成されている。当接部22Aは、カバー5の軸心P方向視での外郭形状がD形となるように、カバー5の外周部を部分的に欠如させた平坦面により構成されている。
【0039】
止め輪10は、図7(a)に示されるように、径方向幅aが一定のサークリップ、即ちC形の止め輪10に構成されている。そして、図7(b)に示されるように、止め輪10は、その厚み方向に捻られた螺旋状のものに形成されている。例えば、コイルバネを作る要領により、その螺旋状の止め輪10が製作されている。この螺旋形状により、内周溝11や外周溝7に嵌っている状態では、それら内周溝11や外周溝7とボルト軸方向21で常時押圧付勢されて当接する状態をもたらすことが可能であり、振動によるビビリ音などの騒音防止に役立つ利点がある。
【0040】
次に、調節阻止機構Sにおけるカバー5のロックナット4への装着手順と作用について説明する。まず、図7に示す止め輪10を、調節ボルト3に螺着固定されている第2ロックナット4Bの外周溝7、詳しくは第2溝部9に嵌め入れる。
次いで、図4(a)に示されるように、カバー5を補強部22が下となる姿勢で、調節ボルト3の上方から被せるように下降させる。このとき、開口内周面18は自由状態の止め輪10の外径より大きいので、止め輪10は、外周溝7の下方側周面23に載っている状態が維持されている。
【0041】
カバー5の下降を続けると、図4(b)に示されるように、テーパー内周面20が止め輪10に外接し、そのテーパー内周面20のボルト軸方向21に対する緩い傾斜角度によって径内側方向への強い力が生じ、止め輪10は下方側周面23に接した状態のまま強制的に縮径変形される。
なおも、カバー5の下降により、図5(a)に示されるように、相対的に止め輪10は主内周面19の端部を乗越えて内周溝11に位置した途端、弾性復元力によって瞬間的に拡径変形して内周溝11に嵌り込み、内嵌装着される。そして、カバー5は、内周溝11の反ボルト取付壁側(上側)となる上側周面24が、止め輪10の上面10aに当接する位置まで下降して止まり、それが図1に示す装着状態である。止め輪10の拡径弾性力が強い場合は、下端位置までカバー5が降りないこともありうる。
【0042】
さて、図1などに示すように、第2ロックナット4Bに組付けた装着状態のカバー5を外そうとして、上方に引っ張った場合について説明する。
図5(a)に仮想線又は実線で示される装着状態にあるカバー5を引っ張り上げると、図5(b)に示されるように、内周溝11のボルト取付壁側(下側)となる下側周面25が、外周溝7の下方側周面23に載っている止め輪10に当接して連れ上り移動させる。
【0043】
なおもカバー5を引き上げると、図6(a)に示されるように、連れ上り移動する止め輪10の上面10aが外周溝7の上方側周面26に当接し、それ以上のカバー5の引き上げがストップされる。このとき、図6(b)に示されるように、止め輪10が撓んで捩れるとか、加工寸法誤差(例:角の面取りが大きい)などにより止め輪10が縮径したとしても、連れ上がった止め輪10は第1溝部8に位置していてその溝底8aにより縮径変形が殆どできないように規制されている。
【0044】
従って、第1溝部8において止め輪10が縮径しても、内周溝11の下側周面25は止め輪10の下面10bに依然として当接しており、やはりカバー5の引き上げ移動はできないように牽制阻止されている。つまり、外周溝7は、内周溝11に内装されている止め輪10の縮径による内周溝11からの外れを規制する溝底8aを備えた第1溝部8と、内周溝11に内装されている止め輪10の内周溝11からの縮径による外れを許容する溝底9aを備えて第1溝部8のボルト取付壁側に連続形成されている第2溝部9とを有して構成されている。
【0045】
以上述べたとおり、止め輪10を有するロックナット4が螺装された調節ボルト3に、カバー5を、その内周溝11に止め輪10が内装されるまで下降移動させて組付けると、その後は、カバー5を引き上げて取り外すことは不可能となる調節阻止機構Sが構成されている。故に、カバー5のロックナット4への(調節ボルト3への)装着により、調節ボルト3の回し操作ができないように、調節阻止機構Sにより調節ロックされる。
【0046】
カバー5を無理やり外すには、止め輪10をせん断破壊させる必要があり、例えば、カバーをロックナットなどに圧入させる手段や、或いはカバーの下端を部分的に径内側に切り折り曲げてロックナットに引っ掛ける手段に比べて、カバー5の引き上げ耐力が格段に向上(例:耐荷重が1〜2トン)する利点がある。
【0047】
〔実施形態2〕
実施形態2による調節ボルト付き機器は、図8に示されるように、実施形態1におけるボルト取付壁2とカバー5、及び回動規制機構Aが異なったものである。その他の構成、及び調節阻止機構Sについては、図1図4図7に示される実施形態1によるものと同じである。
【0048】
即ち、カバー5は均一径の外周を持つものであって補強部22が無く、その代わりに、その開口端にスカート部である円弧状突設部22Aが一体形成されている。また、ボルト取付壁2は、調節ボルト3の取付座2aと、取付座2aよりも高さの高い本体壁部2bと、取付座2aよりも高さの低い段差壁部2cと、一対の盛上り部(被当接部の一例)37a,37aとを有して構成されている。図8において、盛上り部37aは、取付座2aの高さよりも若干低い高さのものとして描かれているが、取付座2aと同じ高さ、或いは若干高い高さとすることは可能である。実施形態2の回動規制機構Aは、円弧状突設部22Aと一対の盛上り部37a,37aとにより構成されている。
【0049】
つまり、当接部22Aは、カバー5のボルト取付壁側の開口端を軸心Pに関する所定角度分が延設されてなる円弧状突設部22Aであり、被当接部37aは、円弧状突設部22Aと軸心P回りで干渉するようにボルト取付壁2に形成された左右の盛上り部37aである。このような構成であるから、第2ロックナット4Bに止め輪10を介して抜止め状態で嵌装されているカバー5を、ボルト軸心P回りに回すと、図8(b)に示されるように、軸心P回りに左右いずれの方向でも若干角度回動するに伴って、円弧状突設部22Aの周方向端面22aが左右何れかの盛上り部37aに当接し、それ以上の回動が規制されるように回動規制機構Aが機能する。
【0050】
従って、横方向からの力により、調節ボルト3が若干曲がってしまうようなことが生じても、前述の回動規制機構Aにより、カバー5は若干の回動移動しかできず実質的に回し操作できないから、カバー5を介しての調節ボルト3の偏心回し操作が行えず、緩められたり外されてしまうことが防止される。
【0051】
〔実施形態3〕
実施形態3による調節ボルト付き機器は、図9に示されるように、並んで近接配備される一対の調節ボルト3,3を有する場合の回動規制機構Aである。互いに全く同構造で一対の調節ボルト3,3が近接配備される機器としては、例えば、特開2010−096172号公報において公知であり、以下、回動規制機構Aなどの要点のみ説明する。
【0052】
図9(a)に示されるように、互いに同構造の各調節ボルト3及び互いに同構造の調節阻止機構Sの構成自体については、図1図4図7に示される実施形態1によるものと基本的に同じであり、カバー5と回動規制機構Aとが異なる。
つまり、一対のカバー5,5それぞれに形成されている当接部22Aどうしの当接により、各カバー5,5のそれぞれが、対応する調節ボルト3の軸心P回りに回動(回転も含む)することを規制する回転規制機構Aが設けられている。
【0053】
具体的には、各カバー5は、その内周部の構成は実施形態1によるカバー5と基本的に同じ(詳細説明は省略する)であるが、外郭形状については軸心P方向に均一なD形のものとされている。そして、図9(b)に示されるように、カバー5,5の平坦面でなる当接部22Aどうしが近接対向配備される状態に、各カバー5を対応するロックナット4に嵌装させることにより、各カバー5の軸心Pの回動を不可とする回動規制機構Aが構成されている。
【0054】
〔実施形態4〕
実施形態4による調節ボルト付き機器は、図10に示されるように、並んで近接配備される一対の調節ボルト3,3を有する場合の回動規制機構Aである。互いに同構造で一対の調節ボルト3,3は、例えば、出力制限用とトルク制限用とであり、機器から横向き状態で突設されている以外は、基本的に図9に示される一対の調節ボルト3,3と同じであり、調節阻止機構Sと回動規制機構Aとが異なる。
【0055】
実施形態4による調節阻止機構Sを簡単に説明する。調節阻止機構Sは、図10に示されるように、第1ロックナット4Aと第2ロックナット4Bとでなるロックナット4と、二枚の平ワッシャ12,13と、有蓋筒状のカバー5とを備えて構成されている。
第1ロックナット4Aは、円筒部41と六角ナット部42とからなり、平ワッシャ12を介してボルト取付壁2に対して調節ボルト3に螺装されている。第2ロックナット4Bは、外周溝43aが形成されている六角ナット部43と、略半球壁状の袋部44とを有する袋ナットで構成されており、平ワッシャ13を介して第1ロックナット4Aとダブルナット構造を呈するように調節ボルト3に螺装されている。
【0056】
図10(a),(b)に示されるように、カバー5は、第1ロックナット4Aの円筒部41に外嵌されているフランジ部5Fと、フランジ部5Fのボス部45に圧入されているカバー本体5Hとからなる。つまり、円筒部41にフランジ部5Fが外嵌されている第1ロックナット4A及び第2ロックナット4Bを調節ボルト3に螺装した状態において、ロックナット4に被せるようにカバー本体5Hを差し入れ、その開口部46をボス部45に圧入してフランジ部5Fと一体化させることにより、カバー5の組付け及び調節阻止機構Sが構成される。
カバー本体5Hとフランジ部5Fとは極めて強力に圧入されているので、カバー本体5Hを無理に引き抜こうとしても、まず抜き取ることができようになっている。
【0057】
次に、回動規制機構Aであるが、その原理は図9に示される実施形態3のものと同じであり、D断面による相互回り止め構造である。即ち、図10(a),(b)に示されるように、カバー5,5は、ロックナット4に抜止め状態に外嵌されているフランジ部5Fと、フランジ部5Fのボス部45に圧入外嵌されている開口部46及び筒状部5Aを備えるカバー本体5Hとからなり、フランジ部5Fの軸心P方向視での外郭形状がD形となるようにフランジ部5Fに平坦面22Aが形成され、各平坦面22A,22Aが対向配備される状態に配置して回転規制機構Aが構成されている。
【0058】
回動規制機構Aとしては、図示は省略するが、例えばカバー5に、ボルト取付壁2の凸部に干渉するように、径外方に向けた突片を設けて、凸部と突片とが軸心回り方向でぶつかるまでの角度(例:300度)しかカバー5を回せない構成のものでも良い。
要は、カバー5を連続回転することで曲がった調節ボルト3の回し操作が可能となるから、1回転未満しか回せないようにすれば、事実上、カバーを介しての調節ボルトの回し操作はできない。つまり、カバー5の回転操作を規制する回転規制機構Aで良いが、より狭い角度範囲しか操作できない回動規制機構Aなら、なお良い。
【0059】
〔別実施例〕
カバー5を外郭形状を四角形や六角形など、平坦面を設けて回り止めさせる構成、即ち、回転規制機構Aは種々の変更が可能である。また、軸心Pの周方向で互いに係合する凹部と凸部とを、ボルト取付壁とカバーとに振り分け配置して回転規制機構Aとする手段も可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 雌ねじ孔
2 ボルト取付壁
3 調節ボルト
4 ロックナット
5 カバー
5A 筒状部
5F フランジ部
5H カバー本体
6 抜止め部
22 補強部
22A 当接部、平坦面、円弧状突設部
37 機器側の部材
37a 被当接部、機器側平坦面、盛上り部
46 開口部
A 回転規制機構
P 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10