(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力供給事業者から送られる電力制限要請指令に基づき、複数の需要家電力管理システムであって、その一部の前記需要家電力管理システムの電力管理対象となる電気機器に蓄電池を含む、複数の前記需要家電力管理システムに対して、電力制限分配量を分配する、アグリゲータシステムであって、
前記電力供給事業者の電力供給能力及び当該電力供給事業者に対する電力需要に基づいて、前記電力制限要請指令の発令有無を予測するとともに発令予定時刻を求める指令予測部と、
前記電力制限要請指令の発令有りと予測されたときに、過去の、前記電力供給事業者から前記アグリゲータシステムに対して指令された電力制限実績量に基づいて、前記電力供給事業者から前記アグリゲータシステムに対して要請があると予測される電力制限要請予測量を求める要請量予測部と、
前記電力制限要請予測量の前記各需要家電力管理システムへの分配量である、電力制限分配予測量の初期値を求める分配予測量算出部と、
前記需要家電力管理システムにおいて、自身への前記電力制限分配予測量の全量が少なくとも含まれるように、前記発令予定時刻における前記蓄電池の蓄電量下限値が設定され、加えて、前記蓄電量下限値を超過する余剰分の蓄電量が、前記発令予定時刻までの放電可能量に設定されるように、前記分配予測量算出部により、電力管理対象に前記蓄電池が含まれない前記需要家電力管理システムに割り当てられた、前記電力制限分配予測量の少なくとも一部を、前記分配予測量算出部により、電力管理対象に前記蓄電池が含まれる前記一部の需要家電力管理システムに割り当てられた、前記電力制限分配予測量に加え、さらに、前記一部の需要家電力管理システムが管理する前記蓄電池の蓄電量以下となるように、前記一部の需要家電力管理システムへの前記電力制限分配予測量を調整する分配予測量調整部と、
を備える、アグリゲータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<電力管理システムのシステム構成>
図1に、本実施形態に係る電力管理システム10の全体的なシステム構成を例示する。電力管理システム10は、アグリゲータシステム12及び需要家電力管理システム14(電力管理システム:Energy Management System、EMS)を含んで構成される。なお、図示を簡略化するために、
図1では、アグリゲータシステム12に接続される需要家電力管理システム14は一つのみ例示されているが、複数の需要家電力管理システム14,14,14・・・がアグリゲータシステム12に接続される。
【0023】
アグリゲータシステム12は、電力供給事業者16と複数の需要家電力管理システム14,14,14・・・との間に入り、電力供給事業者16から送られる、大口の電力制限要請量である、デマンドレスポンス要請指令(DR要請指令、電力制限要請指令)を分配(小分け)して、各需要家電力管理システム14,14,・・・に対して小口の電力制限要請量である、デマンドレスポンス分配量(DR分配量、電力制限分配量)を割り当てる。
【0024】
アグリゲータシステム12は、インターネット網または電力網を含むネットワーク18を介して電力供給事業者16と接続される。またこれに加えて、アグリゲータシステム12は、ネットワーク18を介して、卸電力取引所20及び気象情報提供者21とも接続される。
【0025】
アグリゲータシステム12は、例えば計算機システム(コンピュータ)を含んで構成される。アグリゲータシステム12は、CPU22(Central Processing Unit)、メモリ24、入力部26、表示部27、及び入出力インターフェース28がシステムバスを介して接続される。
【0026】
メモリ24は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリや、ハードディスク等のストレージデバイスを含む、揮発性及び不揮発性メモリ(記憶媒体)から構成される。後述するように、メモリ24には、DR予測に基づく電力管理プログラムのうち、コンピュータをアグリゲータシステム12として機能させるプログラムが記憶されている。なお、当該プログラムが記憶された、CD−ROMやDVD等の記憶媒体を読み込むことで、コンピュータをアグリゲータシステム12として機能させてもよい。また、メモリ24には
図2に示す機能構成図のように、電力価格データベース30、電力使用実績データベース32、デマンドレスポンス実績データベース34が構成されている。これらの機能等については後述する。
【0027】
CPU22は、メモリ24やCD−ROMやDVD等の記憶媒体に記憶された、DR予測に基づく電力管理プログラムの実行に伴い、
図2に示すように、仮想的に複数の機能部が構築される。具体的には、CPU22は、電力需要予測部36、デマンドレスポンス発令確率予測部38、デマンドレスポンス要請量予測部40、デマンドレスポンス成功率予測部42、及びデマンドレスポンス分配量調整部44を備える。なお、これらの機能部の一部を、他のコンピュータの機能部として持たせてもよい。
【0028】
上記機能部のうち、デマンドレスポンス発令確率予測部38が、特許請求の範囲における、指令予測部に対応する。また、デマンドレスポンス要請量予測部40が、特許請求の範囲における、要請量予測部に対応する。また、デマンドレスポンス成功率予測部42が、特許請求の範囲における、分配予測量算出部に相当する。さらに、デマンドレスポンス分配量調整部44が、特許請求の範囲における、分配予測量調整部に対応する。これら各機能部の動作については後述する。
【0029】
入力部26は、例えばキーボードやマウス等で構成され、アグリゲータシステム12の運用者等が電力管理に関する各種情報を入力可能となっている。表示部27は例えばLCD等で構成され、CPU22の演算処理結果やメモリ24に記憶された各種データベースの記憶内容を表示可能となっている。
【0030】
図1に戻り、需要家電力管理システム14は、ネットワーク18を介して、アグリゲータシステム12に接続される。需要家電力管理システム14は、例えば計算機システム(コンピュータ)から構成される。
【0031】
需要家がビルや大型商業施設等である場合、需要家電力管理システム14はいわゆるビル・エネルギー・マネージメント・システム(Building Energy Management System、BEMS)から構成される。これを受けて、複数の需要家電力管理システム14を束ねるアグリゲータシステム12は、いわゆるBEMSアグリゲータとなる。
【0032】
需要家電力管理システム14は、自身が設けられた需要家に設置された、各種電気機器の電力管理を行う。
図1に示す実施形態では、需要家電力管理システム14は、太陽光発電装置45(Photovoltaics、PV)、負荷47、及び蓄電池49の電力管理を行う。後述するように、需要家電力管理システム14は、アグリゲータシステム12から分配されるDR分配量に応じて、上記電気機器の電力管理を行う。
【0033】
負荷47は、例えば照明装置や空調装置、昇降機等が含まれる。また蓄電池49は、例えばニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池から構成され、例えば10kWh以上200kWh程度の容量を備える。需要家電力管理システム14は、これらの電気機器のエネルギー使用に関するに対する方針・目的・目標等を需要家のオーナー等から予め取得し、これを実現するための計画を立て、当該計画に沿って各種電気機器の制御を行う。
【0034】
需要家電力管理システム14は、CPU46、メモリ48、入力部51、表示部53、検出部55、及び入出力インターフェース57がシステムバスを介して接続される。
【0035】
メモリ48は、例えばRAM、ROM等のメモリや、ハードディスク等のストレージデバイスを含む、揮発性及び不揮発性メモリ(記憶媒体)から構成される。後述するように、メモリ48には、DR予測に基づく電力管理プログラムのうち、コンピュータを需要家電力管理システム14として機能させるプログラムが記憶されている。なお、当該プログラムが記憶された、CD−ROMやDVD等の記憶媒体をCPU46が読み込むことで、コンピュータを需要家電力管理システム14として機能させてもよい。さらに、メモリ48には
図3に示す機能構成図のように、要求仕様データベース59が構成されている。
【0036】
CPU46は、メモリ48やCD−ROMやDVD等の記憶媒体に記憶された、DR予測に基づく電力管理プログラムの実行に伴い、
図3に示すように、仮想的に複数の機能部が構築される。具体的には、CPU46は、太陽光発電(PV)量予測部52、蓄電池制御計画作成部54、及び蓄電量下限値設定部56、及び需要家電力管理システム14が管理対象とする電気機器(太陽光発電装置45、負荷47、及び蓄電池49)を制御するコントローラ50を備える。なお、これらの機能部の一部を、他のコンピュータに持たせてもよい。また、デマンドレスポンスの一態様として、電力管理対象の負荷47の消費電力を制限する負荷制御が知られているが、これに関する機能部については、適宜図示を省略する。
【0037】
上記機能部のうち、蓄電量下限値設定部56が、特許請求の範囲における、蓄電量下限値設定部に対応する。また、蓄電池制御計画作成部54が、特許請求の範囲における、蓄電池制御部に対応する。これら各機能部の動作については後述する。
【0038】
入力部51は、例えばキーボードやマウス等で構成され、需要家電力管理システム14の運用者等が電力管理に関する各種情報を入力可能となっている。表示部53は例えばLCD等で構成され、CPU46の演算処理結果やメモリ48に記憶された各種データベースの記憶内容を表示可能となっている。検出部55は、図示しない電力計、電圧センサ、電流センサ、温度センサ等から、需要家電力管理システム14が管理対象とする電気機器の消費電力、電圧、電流、及び温度変化等を検出する。入出力インターフェース57は、アグリゲータシステム12から送信される各種情報を受信する受信部として機能する。
【0039】
<デマンドレスポンス予測に基づく電力管理プロセス>
図4に、本実施形態に係る、デマンドレスポンス予測に基づく電力管理プロセスの概要が例示されている。当該プロセスでは、
図4上段に示されるように、実際にデマンドレスポンス指令(電力制限要請指令、DR指令)が電力供給事業者から発令される前に、電力供給事業者16からアグリゲータシステム12に対して配分されると予想される、大口の電力制限要請の予測量である、デマンドレスポンス要請予測量(電力制限要請予測量、DR要請予測量)が算出される。
【0040】
次に、(大口の)DR要請予測量が、各需要家向けに小口に分配される。この分配値を、以下ではデマンドレスポンス分配予測量(電力制限分配予測量、DR分配予測量)と呼ぶ。本実施形態では、
図4下段に示されるように、各蓄電池49の蓄電量以下となるように、それぞれのDR分配予測量が調整される。さらに、DR指令が発令されると予測される発令予定時刻における各蓄電池49の蓄電量下限値が、調整後のDR分配予測量の全量を含むように、当該蓄電量下限値が設定される。さらに、各蓄電池49の蓄電量のうち、設定後の蓄電量下限値を超過する余剰分が、例えばピークカット等の、デマンドレスポンス以外の用途に用いることのできる放電可能量に設定される。
【0041】
本実施形態に係る、DR予測に基づく電力管理プロセスでは、アグリゲータシステム12側の処理と、需要家電力管理システム14側の処理に大きく分けることができる。
図5にはアグリゲータシステム12のプロセスフローが例示されている。当該フローは、例えば、DR指令が発令される前であって、DR指令の発令可能性の低い時間帯であり、かつ、各需要家に設置された蓄電池49の蓄電量が比較的多い(例えば、平均SOCが70%以上)であるときに実行される。例えば、相対的に電気料金の低い深夜帯に蓄電池49に充電が行われるように、蓄電池49の運用が定められているような場合には、早朝(例えば午前6時)に当該フローが実行される。
【0042】
アグリゲータシステム12は、自身と契約した需要家(配下の需要家)の中から、電力需要予測がまだ行われていない需要家を選択する(S100)。次に選択された需要家に対して、電力需要予測部36は、電力需要予測処理を実行する(S120)。
【0043】
図6には、ステップS120の電力需要予測処理の詳細が例示されている。電力需要予測部36は、メモリ24内の電力使用実績データベース32から、選択された需要家の電力使用実績データを取得する(S122)。
【0044】
取得する電力使用実績データは、
図5のフローが実行される日(以下、単にフロー実行日と呼ぶ)と電力使用条件が近似している日の電力使用実績データであることが好適である。例えば、経済産業省のガイドラインにより定められた、いわゆるネガワット取引に用いられるベースラインを算出する際に用いられる、High k of nの手法を用いてよい。すなわち、フロー実行日が平日である場合、土曜日、日曜日、及び祝日を除く直近n日間(例えば5日間)のうち、平均電力需要量の多いk日間(例えば4日間)の電力需要データを取得する。この電力需要データは、例えば所定の開始時刻から終了時刻(例えば午前8時から午後8時)までの30分単位の電力需要実績が示される。
【0045】
次に電力需要予測部36は、電力需要に関連度の高いパラメータを取得する(S124)。例えば需要家施設がオフィスビルである場合、オフィスビル全体の電力消費に対する、空調の電力消費の比率は約50%となることが知られている。空調の運転状況は気温や湿度に応じて変化する。これを受けて電力需要予測部36は、電力需要に関連度の高いパラメータとして、気象情報提供者21より、フロー実行日における、予想気温や予想湿度を含む気象情報を取得する。
【0046】
また、需要家施設の利用状況も電力需要に関連することから、電力需要予測部36は、選択された需要家の需要家電力管理システム14に、需要家施設の利用状況等のデータを取得する。利用状況のデータは、例えば、営業日カレンダー、設備予約状況、テナント入居状況、従業員出勤予定、節電施策の実施有無、設備異常・故障の有無、機器のリプレース情報を示すデータが含まれる。
【0047】
次に電力需要予測部36は、電力使用実績データベース32から取得した電力使用実績データと、電力需要に関連度の高いパラメータから、選択された需要家における、フロー実行日の電力需要を予測する(S126)。例えばステップS122にて取得したベースラインに、需要家施設内の利用状況に応じた補正係数を乗じた値を、フロー実行日の電力需要予測値とする。
【0048】
図5に戻り、アグリゲータシステム12は、自身と契約した需要家の中から、電力需要予測が未処理の需要家がいるか否か、言い換えると、電力需要予測がまだ行われていない需要家がいるか否かを判定する(S140)。電力需要予測が未処理の需要家がいる場合には、ステップS100に戻って再度電力需要予測が行われる。
【0049】
ステップS140にてすべての需要家に対して電力需要予測が行われたと判定されると、アグリゲータシステム12のデマンドレスポンス発令確率予測部38(指令予測部)は、DR指令(電力制限要請指令)の発令有無を判定する(S160)。この発令有無の判定は、電力供給事業者16の電力供給能力(予測)及び当該電力供給事業者16に対する電力需要(予測)に基づいて行われる。
【0050】
図7には、ステップS160のデマンドレスポンス発令(DR発令)確率予測処理の詳細が例示されている。DR発令確率予測部38は、電力供給事業者から、電力供給能力、電力供給事業者の予想電力使用量、過去の電力使用実績データ、及び過去のDR実績データを取得する(S162)。例えば、各電力会社が運営する電力需要のデータシステムである「でんき予報(登録商標)」から、これらのデータを取得する。これらのデータは所定の時間区切り、例えば30分単位に区切って提供される。
【0051】
次に、DR発令確率予測部38は、予めメモリ24に記憶された、DR発令確率特性式に基づいて、DR発令確率を算出する(S164)。
図8に、DR発令確率特性式が例示されている。横軸は予想電力使用率であり、電力供給事業者の予想電力使用量を電力供給能力で除したパラメータである。また、縦軸はDR発令確率が示されている。
【0052】
DR発令確率特性式は、曲線式を用いる場合、下記数式(1)のようなロジスティック回帰によって求めることができる。
【0054】
数式(1)のうちyはDR発令確率、Kは任意の定数、−ax+bは説明変数を表す。この説明変数には、デマンドレスポンスの発令に関連するパラメータが含まれる。例えば、電力使用率とDR発令確率は高い相関を持つことから、過去の電力使用率の推移及びこれに併せたDR発令の有無の傾向から、DR発令確率を記述する説明変数が導き出される。また、卸電力取引所におけるフロー実行日の電力卸価格が相対的に低額であれば、電力供給事業者は卸電力取引所から電力を調達すると見込まれるので、DR発令確率はその分低くなる。DR発令確率予測部38は、卸電力取引所20(
図1参照)または電力価格データベース30から電力卸価格を取得して、これをDR発令確率特性式のパラメータに含める。また、過去の電力使用率の推移及びこれに併せたDR発令の有無のデータを、DR発令確率特性式のパラメータに含める。
【0055】
さらに、夏季の晴天時や高温時、及び高湿時には空調の消費電力が高くなることが見込まれることから、これらの情報も数式(1)の説明変数に含めてもよい。この場合、DR発令確率予測部38は、気象情報提供者21(
図1参照)よりフロー実行日の天気予報、予想最高気温、予想最高湿度等の情報を取得し、数式(1)に適宜代入する。
【0056】
なお、
図8に示す例では、DR発令確率特性式が予想最高気温で変動する例が示されている。DR発令確率予測部38は、数式(1)に各種パラメータを代入することで得られたDR発令確率特性式に、予想電力使用率をプロットし、これに対応するDR発令確率を求める。
【0057】
図5に戻り、DR発令確率予測部38は、求められたDR発令確率が、所定の閾値[%]以上であるか否かを判定する。閾値は、例えば30%以上50%以下に設定される。ステップS160にて求められたDR発令確率が閾値未満である場合、デマンドレスポンスの発令無しと判定され、フローが終了する。一方、DR発令確率が閾値以上であると、デマンドレスポンスの発令有りと判定される。
【0058】
上述したように、電力供給事業者の予想電力使用量は30分区切り等の時間区切りで提供される。したがって、DR発令確率は当該時間区切りごとに順次算出される。このことから、ステップS160にて求められたDR発令確率が閾値未満から閾値以上に切り替わった時刻が求められ、これがデマンドレスポンス発令予定時刻(DR発令予定時刻)となる。また、DR発令確率が閾値以上から閾値未満に切り替わった時刻がデマンドレスポンス終了予定時刻(DR終了予定時刻)となる。
【0059】
ステップS180にてDR発令有りと判定されると、次に、電力供給事業者16からアグリゲータシステム12に対して配分されると予想されるデマンドレスポンス要請予測量(DR要請予測量)が予測される(S200)。
図9に、DR要請予測量の予測処理が例示されている。アグリゲータシステム12のDR要請量予測部40は、アグリゲータシステム12のメモリ24に格納されたデマンドレスポンス実績データベース34(DR実績DB)から、電力供給事業者16からアグリゲータシステム12に対して配分された、過去のDR実績、言い換えると、実際に電力供給事業者16からアグリゲータシステム12に発令された、デマンドレスポンス要請量を取得する(S202)。
【0060】
DR実績データベース34には、実際にデマンドレスポンスが発令された割合や、実際にデマンドレスポンスが発令されたときの、電力供給事業者16からアグリゲータシステム12へのDR要請量(電力制限実績量)が記憶されている。DR要請量予測部40は、これらのデータに基づいて、
図10に示すようなDR要請予測量特性式を求める。
【0061】
図10には、2種類のDR要請予測量特性式が例示されている。一方は、数式(1)と同様のロジスティック回帰によるものであり、他方は、下記数式(2)に示す線形回帰によるものである。なお、横軸はDR発令確率を示し、縦軸はDR要請予測量を示す。
【0063】
数式(2)のうち、yはDR発令確率、ax+bは説明変数を示す。DR要請量予測部40は、数式(1)及び数式(2)のDR要請予測量特性式を適宜選択した上で、当該特性式にステップS160で取得したDR発令確率をプロットし、電力供給事業者16からアグリゲータシステム12へのDR要請予測量(電力制限要請予測量)を求める(S206)。
【0064】
図5に戻り、アグリゲータシステム12は、各需要家のデマンドレスポンス成功率(DR成功率)を予測する。まずアグリゲータシステム12は、DR成功率予測が未処理の任意の需要家を選択する(S220)。未処理の需要家が選択されると、アグリゲータシステム12のデマンドレスポンス成功率予測部42(DR成功率予測部)は、DR成功率予測処理を実行する(S240)。
【0065】
図11に、DR成功率予測処理を例示する。DR成功率予測部42(分配予測量算出部)は、大口のDR予測量であるDR要請予測量を小口に分配したDR分配予測量(電力制限分配予測量)の初期値を求める(S242)。例えばDR要請予測量を、配下の需要家数で単純に割った値を、DR分配予測量の初期値とする。
【0066】
次にDR成功率予測部42は、選択された需要家に設けられた需要家電力管理システム14に問い合わせて、当該需要家電力管理システム14が電力管理の対象とする、蓄電池49の、DR発令予定時刻における蓄電量(蓄電池残量)の予測値あるいは計画値及び蓄電量下限値を求める(S244)。DR発令予定時刻における蓄電量(蓄電池残量)の予測値あるいは計画値は、例えば
図6にて求めた各需要家の電力需要予測量、特に、ステップS244実行時からDR発令予定時刻までの電力需要予測量、需要家電力管理システム14の要求仕様データベース59に記憶された、蓄電池の電力消費ポリシー、及び、ステップS244実行時における、各需要家の蓄電池49の蓄電量をもとに、求めることができる。
【0067】
なお、上記したステップS244では、需要家電力管理システム14への問い合わせに代えて、またはその一部を、アグリゲータシステム12に記憶された情報に基づいて、蓄電池49の、DR発令予定時刻における蓄電量(蓄電池残量)の予測値あるいは計画値を取得してもよい。例えば、アグリゲータシステム12のメモリ24に、各需要家の電力使用実績と蓄電池49の充放電履歴を記録するデータベースを構築しておく。さらに、
図6にて示したDR発令予定時刻における各需要家の電力需要の予測量と、当該電力需要に対応する蓄電池49の蓄電量を、メモリ24内のデータベースから取り出すようにしてもよい。
【0068】
なお、
図12に示すように、蓄電量下限値は、一般的に、蓄電池49の過放電劣化を防止するために定められるSOC下限値と、いわゆるBCP(Business Continuity Plan)、すなわち非常用電源として常時確保しておくべき蓄電量の和を含んで構成される。
【0069】
DR成功率予測部42は、選択された需要家のDR分配予測量(初期値)と蓄電池49のデータから、DR成功率を求める(S246)。ここで、本実施形態に係るDR成功率とは、DR分配予測量の全量を蓄電値の放電量で賄うことができるか否かを保障する確率を指す。したがって、負荷の出力を抑制させてDR要請量を賄ういわゆる負荷制御は、上記DR成功率のパラメータとしては使用されない。
【0070】
DR成功率予測部42は、
図12に示すようなDR成功率特性式を用いて、DR成功率を求める。DR成功率特性式は、例えば、数式(1)に示すようなロジスティック回帰により求められる。横軸は、蓄電量−蓄電量下限値−DR分配予測量で求められる判定値を示し、縦軸はDR成功率を示す。判定値が正側に行くほど、DR分配予測量を蓄電池49の放電量で賄うときの余裕が大きいことになるから、DR成功率は相対的に高くなる。また、上記判定値が負側に行くほど、DR分配予測量を蓄電池49の放電量で賄うときの余裕が無くなることから、DR成功率は相対的に低くなる。DR成功率予測部42は、
図12の特性式に判定値をプロットし、選択された需要家に対応するDR成功率を求める。
【0071】
図5に戻り、アグリゲータシステム12は、DR成功率の算出が未処理の需要家があるか否かを判定する(S260)。未処理の需要家がある場合はステップS220に戻り、DR成功率を算出する。すべての需要家に対してDR成功率が算出された場合、アグリゲータシステム12のデマンドレスポンス分配量調整部44(DR分配量調整部、分配予測量調整部)は、DR分配予測量(電力制限分配予測量)を、DR成功率に基づいて調整(再分配)する(S280)。
【0072】
図13にDR分配調整処理を例示する。DR分配量調整部44は、DR成功率予測部42から、各需要家のDR成功率及びDR成功率特性式を取得する(S282)。さらにDR分配量調整部44は、各需要家のDR成功率が所定値に収束するように、DR分配予測量を再分配する(S284)。
【0073】
上述したように、本実施形態に係るDR成功率は、要するに蓄電池49の余剰蓄電量(蓄電量−蓄電量下限値)にてDR分配予測量を賄えるか否かが反映されている。したがって余剰蓄電量よりもDR分配予測量が多いような需要家は、DR成功率は0%に近くなる。DR分配量調整部44は、このようなDR成功率の低い需要家のDR分配予測量の一部を、DR成功率の高い(100%を超過するような)需要家に移し変える操作を行って、各需要家のDR成功率を所定のDR成功率に揃える。
【0074】
一例として、所定のDR成功率とは100%を指す。蓄電池49に余裕を持たせるために、DR成功率を100%以上の値に設定してもよい。つまりこのステップでは、各需要家(厳密には需要家電力管理システム14)が管理する蓄電池49の蓄電量(厳密には余剰蓄電量)以下となるように、当該需要家に分配されるDR分配予測量が調整される。
【0075】
さらにDR分配量調整部44は、各需要家に分配される調整後のDR分配予測量の総和と、調整前(初期値)のDR分配予測量の総和とを比較する(S286)。調整前のDR分配予測量の総和が調整後のDR分配予測量の総和以下であれば、そのままDR分配量調整処理は終了する。一方、調整前(初期値)のDR分配予測量の総和が調整後のDR分配予測量の総和を超過しており、調整後のDR分配予測量では調整前のDR分配予測量を賄えない場合、DR分配量調整部44は、DR分配予測量の超過分(賄えない分)を負荷制御に振り分ける(S288)。例えば、
図6にて求めた全需要家の電力需要予測量に対する負荷制御量(電力管理対象となる負荷47の消費電力制限量)の比率が一律となるように、負荷制御量を振り分ける。
【0076】
上述したように、本フローは、各需要家の蓄電池49が十分に充電されたタイミングで実行されるが、夏季にて晴天かつ小風量と予報され、その上電力供給事業者に大規模な風力発電プラントが設けられている場合等、DR要請予測量が比較的大きな値となる場合がある。このようなケースに備え、本実施形態では、万が一、各需要家の蓄電池49の余剰蓄電量の総量で(大口の)DR要請予測量の全量が賄えないような場合を想定して、負荷制御への負担配分を行う。
【0077】
負荷制御は既知であることから、ここでは簡単に説明する。アグリゲータシステム12は、予め、各需要家電力管理システム14から、当該システムが管理する電気機器(主に負荷)の余力(削減可能電力量)を取得している。アグリゲータシステム12は、各需要家の余力に応じてDR分配予測量の超過分を分配する。
【0078】
図5に戻り、アグリゲータシステム12は、調整後のDR分配予測量を需要家電力管理システム14に送信する(S300)。また必要に応じて、DR予測分配量の超過分に基づく負荷制御量を送信する。さらにアグリゲータシステム12は、DR発令確率、DR発令予定時刻、及びDR終了予定時刻を需要家電力管理システム14に送信する。
【0079】
図14には、需要家電力管理システム14のフローが例示されている。なお、このフローでは、既知である負荷制御とは独立して実行可能であり、便宜上、負荷制御のフローは図示を省略している。
【0080】
調整後のDR分配予測量を受信した需要家電力管理システム14は、自身が管理する電気機器に、太陽光発電装置45(PV発電装置)が含まれるか否かを判定する(S420)。太陽光発電装置45が含まれていない場合は、そのままステップS500までスキップする。
【0081】
電力管理の対象に太陽光発電装置45が含まれる場合、需要家電力管理システム14のPV発電量予測部52は、太陽光発電に関連度の高いパラメータを取得する(S440)。当該パラメータは、例えば太陽光発電装置に関連するものと、外部環境に関連するものに大別される。前者は例えばパネル方位や定格発電量を指し、需要家電力管理システムのメモリ48に予め記憶させておくことができる。また後者は例えば天気(晴天、曇天、雨天等)、日射量、気温、降水量、雲量等であり、アグリゲータシステム12を介して、気象情報提供者21から取得できる。
【0082】
次にPV発電量予測部52は、
図15に示すような太陽光発電量モデルを用いて太陽光発電予測量を求める(S460)。太陽光発電量モデルでは、横軸を日射量(予測値)、縦軸を太陽光発電量とし、日射量の予測値をプロットすることで太陽光発電予測量を求める。また、太陽光発電量モデルの別例として、例えば需要家の所在地(ビル住所等)の大気外日射量と天気別発電係数を学習しておき、天気予報に基づいて太陽光発電予測量を求めてもよい。また、天気別に過去数日分の太陽光発電実績量を平均化して太陽光発電予測量を求めてもよい。
【0083】
次に、蓄電池制御計画作成部54(
図3参照、蓄電池制御部)は、アグリゲータシステム12のデマンドレスポンス分配量調整部44(分配予測量調整部)(
図2参照)により算出されたDR分配予測量から、PV発電量予測部52から取得した太陽光発電予測量を差し引く(S480)。
【0084】
次に、需要家電力管理システム14の蓄電量下限値設定部56は、アグリゲータシステム12のDR分配量調整部44にて調整され、またPV発電量予測部52により太陽光発電予測量が差し引かれた、DR分配予測量の全量を少なくとも含むように、DR発令予定時刻における蓄電池49の蓄電量下限値を設定する(S500)。
【0085】
図16には、ステップS500の処理が模式的に例示されている。
図16上段に、当該処理前の蓄電池49の設定状態が示され、下段に処理後の設定状態が示されている。蓄電量下限値設定部56は、SOC下限値及びBCP用の蓄電量を含む蓄電量下限値に、DR分配予測量を積み増しして、蓄電量下限値を嵩上げする。これをDR発令予定時刻における、蓄電量下限値に設定する。
【0086】
次に蓄電池制御計画作成部54(蓄電池制御部)は、予めメモリ48に記憶された、蓄電池49に対する要求仕様データベース59から、蓄電池49の制御パラメータを取得する(S520)。
【0087】
要求仕様とは、要するに需要者が要求する蓄電池49の仕様であり、例えば電圧範囲、作動時間、休止時間を含む電気特性、充電時間やサイクル充電/トリクル充電等の充電方式を含む充電条件、使用温度範囲や湿度範囲を含む温度・湿度条件、電池寿命、寸法、質量、形状等の情報(制御パラメータ)を含む。
【0088】
加えて、要求仕様データベース59には、蓄電池49のSOC下限値、SOC上限値、最大放電電流値、最大充電電流値、充電開始時刻、充電終了時刻、放電条件等の制御パラメータが定められる。これらのパラメータは、例えば、予め需要家の使用者(ビルオーナー等)とアグリゲータシステム12の運用者との間で定められる。例えば、蓄電池49の劣化を抑制させ長寿命とするために、最大放電電流値及び最大充電電流値が相対的に低く(絞り目に)設定される。また、医療施設や介護施設等が含まれる需要家では、BCP用の蓄電量が相対的に多めに設定される。
【0089】
蓄電池制御計画作成部54は、嵩上げ後の蓄電量下限値と、要求仕様データベース59から、蓄電池49の制御計画を作成する(S540)。具体的には、嵩上げ後の蓄電量下限値から超過する余剰分の蓄電量を、DR発令予定時刻までの放電可能量に割り当てる。例えば、割り当てられた放電可能量を、DR発令予定時刻までの買電量削減のために用いる。この放電可能量の消費パターンは、例えば電気料金が最小となるような制約条件であったり、蓄電池49の寿命が最大となるような制約条件を適用することで定めることができる。
【0090】
<DR発令予定時刻以降の蓄電池制御>
図17には、DR発令予定時刻以降の、需要家電力管理システム14による蓄電池制御フローが例示されている。DR発令予定時刻に到達すると、需要家電力管理システム14は、アグリゲータシステム12に問い合わせて、電力供給事業者16からデマンドレスポンス要請(DR要請)が発令されたか否かを確認する(S602)。または、需要家電力管理システム14自身の設定状況を確認し、DR要請を受信したか否かを確認する。
【0091】
DR要請が発令された場合、需要家電力管理システム14の蓄電量下限値設定部56は、蓄電量下限値のうち、DR分配予測量分を開放して放電可能量に回す(S604)。なお、DR分配予測量分を開放しても、実際のDR要請の全量を賄えない場合は、上述したBCP用の蓄電量の一部をデマンドレスポンス用に割り当ててもよい。
【0092】
ステップS604による放電可能量の増加を受けて、蓄電池制御計画作成部54は、蓄電池49の制御計画を変更し(S606)、実際のDR要請量を蓄電池49からの放電電力で賄う(S608)。これをDR要請が終了するまで継続する(S610)。
【0093】
ステップS602に戻り、DR発令予定時刻に至ってもDR要請が発令されない場合、需要家電力管理システム14は、アグリゲータシステム12から送られたDR発令確率を所定割合で引き下げる(S612)。例えばDR発令予定時刻におけるDR発令確率が100%であり、DR発令時刻に至ったときにDR要請が無かった場合、需要家電力管理システム14は、DR発令確率を100%から90%に引き下げる。
【0094】
次に蓄電量下限値設定部56は、DR発令確率の引き下げに応じて、蓄電量下限値を所定割合で引き下げる(S614)。例えばDR発令確率が100%から90%に引き下げられた場合、蓄電量下限値も10%引き下げられる。
【0095】
蓄電量下限値の引き下げに応じて、蓄電池制御計画作成部54は、蓄電池制御計画を変更する(S616)。例えば蓄電量下限値の引き下げに伴って放電可能量が増加するので、その分負荷47への自家放電に割り当てる。
【0096】
さらに需要家電力管理システム14は、DR終了予定時刻に到達したか否かを判定する(S618)。DR終了予定時刻に到達した場合、フローが終了する。一方、DR終了予定時刻にまだ到達していない場合、所定時間待機(S620)の後、ステップS602に戻る。
【0097】
このように本実施形態では、DR発令予定時刻以降にDR要請(電力要請指令)が送られない場合に、当該DR発令予定時刻以降の時間経過に応じて蓄電量下限値を漸次引き下げる。このようにすることで、放電可能量が増加し、自家放電やいわゆるピークカットに回せる蓄電量が増加する。
【0098】
<第2の実施形態>
図18には、第2の実施形態に係る電力管理システム10が例示されている。この例では、アグリゲータシステム12と契約関係にある複数の需要家のうち、一部の需要家(需要家電力管理システム14A)に蓄電池49が設けられ、他の需要家(需要家電力管理システム14B)には蓄電池49が設けられていないケースが例示されている。本実施形態では、このような場合において、蓄電池49が設けられていない需要家に分配されたDR分配予測量の少なくとも一部を、蓄電池49が設けられた需要家が肩代わりする。
【0099】
図19には、本実施形態に係る、DR予測に基づく電力管理プロセスのうち、アグリゲータシステム12側のフローが例示されている。当該フローは、
図5のステップS220、S280及びS300の代わりにステップS700、S720、S740が設けられたもので、残りのステップは
図5のものと同様である。
【0100】
なお、
図5に示すフローでは、ステップS240のDR成功率予測処理において、DR要請予測量からDR分配予測量の初期値を求めて(S242)いたが、
図19のフローにおいてもステップS240で同様の処理を実行する。ここで、DR分配予測量の初期値を配下の需要家数で割った値とする場合には、当該配下の需要家数を、蓄電池49の保有者数と非保有者数の総和としてもよい。
【0101】
ステップS700にて、DR成功率予測が未処理の需要家が選択される。このとき、選択候補となるのは、蓄電池49の保有者に限られる。DR分配予測量を蓄電池49の蓄電量で賄えるか否かを示すDR成功率予測を、蓄電池49の非保有者に対して求めたとしても、必ず0%になることから、ここでは需要家の候補として蓄電池49の非保有者を除外している。
【0102】
さらにステップS720では、DR分配予測量の調整が行われる。DR分配予測量の調整処理が
図20に例示される。この処理フローでは、
図13のステップS284の代わりにステップS722が設けられており、残りのステップは
図13の各ステップと同様である。
【0103】
ステップS722では、DR分配量調整部44(要請予測量調整部)によって、各需要家のDR成功率が所定値(例えば100%)に収束するように、各需要家のDR分配予測量が調整される。
【0104】
このステップにおいて、DR分配予測量の調整対象の需要家は、蓄電池保有需要家のみであって、蓄電池非保有需要家は調整対象から外される。さらに、調整対象となるDR分配予測量は、蓄電池保有需要家のDR分配予測量のみならず、蓄電池非保有需要家のDR分配予測量の少なくとも一部が含まれる。
【0105】
例えばこのステップS722では、蓄電池非保有需要家のDR予測分配量は初期値から0に設定変更され、当該初期値は調整対象となるDR分配予測量に加えられる(プールされる)。例えば、蓄電池非保有需要家のDR予測分配量の総和を、蓄電池保有需要家の総数で割った値を、蓄電池保有需要家に割り当てる。その後、DR分配量調整部44(要請予測量調整部)は、蓄電池保有需要家のDR成功率が所定値(例えば100%)に収束するように、各需要家のDR分配予測量が調整される。
【0106】
調整前のDR分配予測量の総和が調整後のDR分配予測量を超過する場合(S286)、その超過分は負荷制御に回される(S288)。この負荷制御では、蓄電池49の保有の有無に関わらず、すべての需要家に対して負荷制御量が分配される。分配調整後、蓄電池保有需要家に、調整後のDR分配予測量、DR発令確率、DR発令予定時刻、DR終了予定時刻、及び負荷制御量が送信される(S740)。また、蓄電池非保有需要家に、DR発令確率、DR発令予定時刻、DR終了予定時刻、及び負荷制御量が送信される。
【0107】
蓄電池49を保有しない需要家は、本来、DR分配予測量の全量を負荷制御にて賄わなければならないが、本実施形態のように、その少なくとも一部を、蓄電池49を保有する需要家の蓄電量で賄うことで、蓄電池49を保有しない需要家の負荷制御負担を軽減できる。
【0108】
例えば蓄電池49を保有する需要家Aと蓄電池49を保有しない需要家Bとで保有者(ビルオーナー等)が同一である場合には、このようなDR量の融通を通して、需要家Bに蓄電池49を設置させる場合と同等の効果を得ることができる。
【0109】
デマンドレスポンス終了後、アグリゲータシステム12は、各需要家のDR結果を集計して、インセンティブ提供の算定基準を電力供給事業者に通知する。この集計の際に、蓄電池49を保有しない需要家のDR要請量の一部を負担した、蓄電池49を保有する需要家に対して、インセンティブを加算するようにしてもよい。
【0110】
図21には、DR結果の集計フローが例示されている。アグリゲータシステム12は、デマンドレスポンスの終了後、各需要家のDR実績を収集する(S750)。例えば、実際のDR要請量に対するDR実績量を収集する。
【0111】
次にアグリゲータシステム12は、DR実績に応じたDR貢献度を算出する(S752)。例えばDR分配予測量とDR実績量との比較により、DR貢献度を算出する。
【0112】
ここで、DR実施前の、DR分配予測量を分配する段階(ステップS722)で、蓄電池保有の需要家のDR分配予測量に、蓄電池非保有の需要家のDR分配予測量の一部が割り当てられていた場合は、割り当て前のDR分配予測量をベースに、DR実績量との比較を行う。つまり、蓄電池保有の需要家については、最終的なDR分配予測量から割り当て分が差し引かれた量とDR実績量とが比較される。蓄電池非保有の需要家については、最終的なDR分配予測量から割り当て分が足し込まれた量とDR実績量とが比較される。
【0113】
このような操作を行うことで、多くの場合において、蓄電池保有の需要家のDR実績は、DR分配予測量を上回ることとなり、相対的に高い貢献度を得ることができる。一方、蓄電池非保有の需要家のDR実績は、DR分配予測量を下回ることとなり、相対的に低い貢献度が与えられる。
【0114】
次に、アグリゲータシステム12は、各需要家のDR成否と貢献度を電力供給事業者16へ通知する(S754)。例えばDR実績量/DR分配予測量の割合が100%未満である場合には、DR成否として「失敗」と判定され、DR実績量/DR分配予測量の割合が100%以上である場合には、DR成否として「成功」と判定される。各需要家のDR成否及び貢献度に加えて、アグリゲータシステム12としてのDR成否及び貢献度を電力供給事業者16に通知してもよい。すなわち、電力供給事業者16からアグリゲータシステム12に要請されたDR要請量と、DR実績量、つまり、全需要家のDR実績量の総和に基づいて、アグリゲータシステム12のDR成否及び貢献度を算出し、これらを電力供給事業者16に通知する。
【0115】
DR成否及び貢献度に応じて、電力供給事業者16は各需要家にインセンティブやペナルティを与える。例えばインセンティブとして電力料金の軽減サービスを提供し、ペナルティとして電力料金の割り増しを通知する。また、アグリゲータシステム12のDR成否及び貢献度に応じて、報奨金等のインセンティブを提供する。
【0116】
なお、上述の実施形態では、予測段階で蓄電池保有者と非保有者とでDR量を融通していたが、実際のDR制御の段階で、DR量の融通を行ってもよい。例えば
図22に例示するように、予測段階と比べて、実際のデマンドレスポンスにおいて、蓄電池49を保有しない需要家Bの負荷制御量が、予測段階よりも目減りする、つまり予測段階よりも電力が削減できないような状況も生じ得る。このような場合、逐次需要家BのDR要請量を需要家Aの蓄電量(放電可能量)に充てるようにしてもよい。このような場合、需要家Aにはインセンティブを割り増して提供し、需要家Bにはペナルティを割り増して与えてもよい。