特許第6605417号(P6605417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605417
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】樹脂成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20191031BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20191031BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20191031BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C45/26
   B29L9:00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-170140(P2016-170140)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-34448(P2018-34448A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋介
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−176214(JP,A)
【文献】 特開2005−297387(JP,A)
【文献】 特開2000−252038(JP,A)
【文献】 特開2000−006156(JP,A)
【文献】 特開平07−137090(JP,A)
【文献】 特開平10−193363(JP,A)
【文献】 特開平04−263913(JP,A)
【文献】 特開2013−159085(JP,A)
【文献】 実開平01−009717(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
F02M 39/00−71/04
H05K 7/02− 7/10
H01R 25/00−25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で板状の複数のバスバーを樹脂で被覆した樹脂成形品において、
前記複数のバスバーは、板面の少なくとも一部が対向する状態で固定され、
少なくとも一対の対向するバスバーの間には、該バスバーの板面と平行に板状のスペーサが配置され、
少なくとも一つのスペーサには、該スペーサから突出して前記バスバーの端面を覆うカバー部が該バスバーの外周の少なくとも一部の範囲に沿って延びるように形成され
前記複数のバスバーは、少なくとも一つのバスバーの端部と他のバスバーの端部とが接合されていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記バスバーとして三つ以上のバスバーが設けられ、各バスバーの間に、それぞれ前記スペーサが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記スペーサとして複数のスペーサが所定間隔で配置され、少なくとも二つのスペーサの端部間が前記カバー部で塞がれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記カバー部に前記バスバーの端面が当たっていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項5】
金属製で板状の複数のバスバーを樹脂で被覆した樹脂成形品を製造する方法であって、
前記バスバーと板状のスペーサとを有し、前記複数のバスバーが板面の少なくとも一部が対向する状態で配置されると共に、少なくとも一対の対向するバスバーの間に該バスバーの板面と平行に前記スペーサが配置される中間体であって、少なくとも一つのスペーサに該スペーサから突出して前記バスバーの端面を覆うことができるカバー部が該バスバーの外周の少なくとも一部の範囲に沿って延びるように形成されている中間体を準備する準備工程と、
前記樹脂成形品の成形型に形成されたキャビティ内に前記中間体をセットするセット工程と、
前記キャビティ内に樹脂を充填して前記樹脂成形品を成形する成形工程とを含み、
前記成形工程において、前記スペーサのカバー部が前記バスバーの端面を該バスバーの外周の少なくとも一部の範囲で覆っており、
前記準備工程において、前記複数のバスバーのうち少なくとも一つのバスバーと他のバスバーとの間に前記スペーサを挟んだ状態で該バスバーの端部を接合することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程において、前記キャビティ内に樹脂を射出して充填することで前記樹脂成形品を射出成形することを特徴とする請求項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のバスバーを樹脂で被覆した樹脂成形品及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂成形品としては、例えば、車両のエンジンルーム内に配置される車載電子部品等を電気的に接続するための電気部品が挙げられ、この電気部品の中には、所定間隔で配置した複数のバスバーを樹脂で被覆して所定の回路を形成したものがある。このような樹脂成形品は、成形型のキャビティ内に複数のバスバーを所定間隔で配置した状態でキャビティ内に樹脂を射出して充填することで成形するようにしたものがある。
【0003】
しかし、上記の樹脂成形品を成形する際に、成形型のキャビティ内にセットしたバスバーが樹脂の流動圧力で移動してしまい、バスバー同士を所定間隔に保って成形することが困難であった。
【0004】
そこで、特許文献1(特開平7−137090号公報)に記載されているように、中子部材に形成された複数の溝状のバスバースロットにそれぞれバスバーを上方から挿入して、複数のバスバーを所定間隔で配置した状態に保持し、このように複数のバスバーを中子部材で保持した状態で成形型のキャビティ内にセットして、キャビティ内に樹脂を射出して充填することで樹脂成形品を成形するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−137090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術では、中子部材に形成された溝状のバスバースロットにバスバーを挿入して保持するようにしているが、樹脂成形品を成形する際に、樹脂の流動方向によってはバスバースロットの開放側からバスバースロットとバスバーとの間に樹脂が入り込む可能性があり、バスバースロットとバスバーとの間に樹脂が入り込むと、バスバーがバスバースロットから抜けて、バスバーの位置ずれが発生した樹脂成形品が成形されてしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、バスバーを樹脂で被覆した樹脂成形品のバスバーの位置ずれを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、金属製で板状の複数のバスバーを樹脂で被覆した樹脂成形品において、前記複数のバスバーは、板面の少なくとも一部が対向する状態で固定され、少なくとも一対の対向するバスバーの間には、該バスバーの板面と平行に板状のスペーサが配置され、少なくとも一つのスペーサには、該スペーサから突出して前記バスバーの端面を覆うカバー部が該バスバーの外周の少なくとも一部の範囲に沿って延びるように形成され、更に、前記複数のバスバーは、少なくとも一つのバスバーの端部と他のバスバーの端部とが接合されていることを特徴とするものである。
【0009】
バスバーの間にスペーサが配置された樹脂成形品では、樹脂成形品を成形する際に、バスバーとスペーサとの間に樹脂が入り込むと、その樹脂の流動圧力によってバスバーが移動したり変形したりするおそれがある。その点、本発明では、スペーサのカバー部でバスバーの端面が覆われているため、樹脂成形品を成形する際に、バスバーとスペーサとの間に不要な樹脂が入り込むことを抑制して、バスバーが移動したり変形したりすることを抑制することができ、バスバーの位置ずれや変形が発生した樹脂成形品が成形されてしまうことを抑制することができる。また、スペーサのカバー部でバスバーの端面が覆われているため、バスバーを絶縁し易くして、短絡の防止効果を高めることができる。
【0010】
この場合、請求項1では、前記複数のバスバーは、少なくとも一つのバスバーの端部と他のバスバーの端部とが接合されているため、複数のバスバーを電気的に接続した回路を形成することができる。
【0011】
更に、請求項のように、前記バスバーとして三つ以上のバスバーが設けられ、各バスバーの間に、それぞれ前記スペーサが配置されているようにしても良い。このようにすれば、三つ以上のバスバーを用いて容易に所望の回路を形成することができる。
【0012】
また、請求項のように、前記スペーサとして複数のスペーサが所定間隔で配置され、少なくとも二つのスペーサの端部間が前記カバー部で塞がれているようにしても良い。このようにすれば、樹脂成形品を成形する際に、二つのスペーサの間に樹脂が入り込むことを抑制することができる。
【0013】
更に、請求項のように、前記カバー部に前記バスバーの端面が当たっているようにしても良い。このようにすれば、カバー部でバスバーの端面の位置を規制して、バスバーの位置決めをすることができる。
【0014】
また、請求項に係る発明は、金属製で板状の複数のバスバーを樹脂で被覆した樹脂成形品を製造する方法であって、前記バスバーと板状のスペーサとを有し、前記複数のバスバーが板面の少なくとも一部が対向する状態で配置されると共に、少なくとも一対の対向するバスバーの間に該バスバーの板面と平行に前記スペーサが配置される中間体であって、少なくとも一つのスペーサに該スペーサから突出して前記バスバーの端面を覆うことができるカバー部が該バスバーの外周の少なくとも一部の範囲に沿って延びるように形成されている中間体を準備する準備工程と、前記樹脂成形品の成形型に形成されたキャビティ内に前記中間体をセットするセット工程と、前記キャビティ内に樹脂を充填して前記樹脂成形品を成形する成形工程とを含み、前記成形工程において、前記スペーサのカバー部が前記バスバーの端面を該バスバーの外周の少なくとも一部の範囲で覆っており、前記準備工程において、前記複数のバスバーのうち少なくとも一つのバスバーと他のバスバーとの間に前記スペーサを挟んだ状態で該バスバーの端部を接合することを特徴とするものである。
【0015】
この製造方法では、成形工程において、スペーサのカバー部でバスバーの端面が覆われているため、バスバーとスペーサとの間に不要な樹脂が入り込むことを抑制して、バスバーが移動したり変形したりすることを抑制することができ、バスバーの位置ずれや変形が発生した樹脂成形品が成形されてしまうことを抑制することができる。
【0016】
この場合、請求項5では、前記準備工程において、前記複数のバスバーのうち少なくとも一つのバスバーと他のバスバーとの間に前記スペーサを挟んだ状態で該バスバーの端部を接合するようにしたので、準備工程で、バスバーの間にスペーサを挟んで仮固定した中間体を準備することができ、セット工程で、中間体を成形型のキャビティ内に容易にセットすることができる。
【0017】
また、請求項のように、前記成形工程において、前記キャビティ内に樹脂を射出して充填することで前記樹脂成形品を射出成形するようにすると良い。このようにすれば、樹脂成形品を射出成形により能率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の一実施例における樹脂成形品の斜視図である。
図2図2は中間体の斜視図である。
図3図3は中間体の分解斜視図である。
図4図4は樹脂成形品の成形時の状態を示す断面図(図1のA−A断面図相当)である。
図5図5はカバー部及びその周辺部の拡大断面図である。
図6図6は本実施例の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、樹脂成形品10の構成について説明する。
図1に示すように、樹脂成形品10は、例えば、車両のエンジンルーム内に配置される車載電子部品等を電気的に接続するための電気部品であり、導電金属製のバスバー11〜13(図3参照)を樹脂で被覆して所定の回路を形成したものである。尚、バスバー11〜13のうち接続端子14〜16の部分は樹脂で被覆されずに露出している。また、樹脂成形品10の表面には、複数の支持跡17,18が形成されている。長円状の支持跡17は、後述する成形型27の支持部32(図4参照)によって形成された孔(つまり支持部32の抜け孔)であり、円状の支持跡18は、成形型27の支持ピン(図示せず)によって形成された孔(つまり支持ピンの抜け孔)である。これらの支持跡17,18では、バスバー13の表面が露出している。
【0020】
図1乃至図4に示すように、樹脂成形品10は、金属製で板状の複数のバスバー11〜13と、樹脂製で板状の複数のスペーサ19,20とを交互に重ねて配置した中間体21を準備し、この中間体21(バスバー11〜13及びスペーサ19,20)をインサート射出成形により樹脂で被覆して製造したものである。本実施例では、樹脂成形品10は、三つのバスバー11〜13(第1のバスバー11,第2のバスバー12,第3のバスバー13)と、二つのスペーサ19,20(第1のスペーサ19,第2のスペーサ20)とを備えている。
【0021】
樹脂成形品10を形成する樹脂材料、つまり、中間体21(バスバー11〜13及びスペーサ19,20)を被覆する樹脂材料としては、例えば、ガラス繊維入りのPPS(ポリフェニレンサルファイド)、ガラス繊維入りのPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性や耐熱性を有する樹脂材料が用いられる。
【0022】
バスバー11〜13は、導電性を有する金属板を打ち抜き加工して形成され、本体部が略四角形に形成されている。各バスバー11〜13の端部には、それぞれ他の電子部品等に電気的に接続するための接続端子14〜16が設けられている。バスバー11〜13を形成する金属材料としては、例えば、銅合金、アルミ合金等の導電性を有する金属材料が用いられる。
【0023】
スペーサ19,20は、絶縁性を有する樹脂を射出成形して形成され、本体部が略四角形に形成されている。スペーサ19,20を形成する樹脂材料としては、例えば、ガラス繊維入りのPPS、ガラス繊維入りのPBT等の絶縁性や耐熱性を有する樹脂材料が用いられる。尚、スペーサ19,20を形成する樹脂材料は、中間体21を被覆する樹脂材料と同じ材料を用いるようにしても良い。
【0024】
図2乃至図4に示すように、バスバー11〜13は、本体部の板面の全部又は一部が対向する状態(本体部の板面に対して垂直方向に見て板面の全部又は一部が重なる状態)で平行に固定され、各バスバー11〜13の間に、それぞれスペーサ19,20が配置されている。この場合、対向する第1のバスバー11と第2のバスバー12との間には、バスバー11,12の板面と平行に第1のスペーサ19が配置され、対向する第2のバスバー12と第3のバスバー13との間には、バスバー12,13の板面と平行に第2のスペーサ20が配置されている。これにより、第1のスペーサ19と第2のスペーサ20は、第2のバスバー12を挟んで所定間隔で配置されている。尚、図2に示すように、各バスバー11〜13の接続端子14〜16は、互いに対向しない(重ならない)ように異なる位置に設けられている。
以下、説明の便宜上、接続端子14〜16が設けられている側を「端子側」、その反対側を「反端子側」ということもある。
【0025】
図2乃至図4に示すように、第3のバスバー13の反端子側の端部には、段差部22を介して断面U字形状の接合部23が設けられ、第1のバスバー11の反端子側の端部には、第3のバスバー13の接合部23に挿入可能な平板状の接合部24が設けられている。第1のバスバー11と第3のバスバー13との間に第1及び第2のスペーサ19,20及び第2のバスバー12が挟まれた状態で、第3のバスバー13の接合部23に第1のバスバー11の接合部24が挿入されて、第3のバスバー13の接合部23と第1のバスバー11の接合部24とが接合されて電気的に接続されている。接合部23と接合部24は、例えば、かしめ、ねじ止め、接着、溶着等によって接合されている。
【0026】
また、第1のスペーサ19の外周部には、第1のスペーサ19から突出して第2のバスバー12の端面を覆うカバー部25が形成されている。この第1のスペーサ19のカバー部25は、第2のバスバー12の外周のほぼ全周に沿って延びるように形成されているが、第2のバスバー12の接続端子15に対応する部分にはカバー部25が形成されていない。つまり、第1のスペーサ19のカバー部25は、第2のバスバー12の外周のうち接続端子15以外の範囲で第2のバスバー12の端面を覆っている。
【0027】
更に、第2のスペーサ20の外周部には、第2のスペーサ20から突出して第2のバスバー12の端面を覆うカバー部26が形成されている。この第2のスペーサ20のカバー部26は、第2のバスバー12の外周のうち反端子側の端部に沿って延びるように形成されている。つまり、第2のスペーサ20のカバー部26は、第2のバスバー12の外周のうち反端子側の端部の範囲で第2のバスバー12の端面を覆っている。
【0028】
図4に示すように、第1のスペーサ19のカバー部25の内周面に、第2のスペーサ20の外周面(端面)が当接して、二つのスペーサ19,20の端部間がカバー部25で塞がれている。第2のスペーサ20のカバー部26が形成された範囲では、第1のスペーサ19のカバー部25と第2のスペーサ20のカバー部26とが重なった状態で第2のバスバー12の端面を覆っている。
【0029】
尚、図5に示すように、第2のバスバー12の端子側(図5では右側)では、第1のスペーサ19のカバー部25と第2のバスバー12の端面との間に隙間が設けられているが、これに限定されず、図6に示すように、第1のスペーサ19のカバー部25の内周面に第2のバスバー12の端面が当たっているようにして、第1のスペーサ19のカバー部25と第2のバスバー12の端面との間に隙間が無いようにしても良い。このようにすれば、カバー部25でバスバー12の端面の位置を規制して、バスバー12の位置決めをすることができる。
【0030】
次に、樹脂成形品10の製造方法について説明する。
図4に示すように、樹脂成形品10を射出成形するための成形型27は、下型28と、この下型28に対して上下方向に開閉移動可能な上型29とを備えている。これらの下型28と上型29に、樹脂成形品10を成形するためのキャビティ30が形成され、このキャビティ30内に樹脂材料Pを射出する射出ゲート31が下型28に設けられている。また、下型28と上型29には、中間体21(例えば第3のバスバー13の接合部23)を挟んで支持する複数の支持部32が設けられ、下型28及び上型29には、中間体21(例えば第3のバスバー13の本体部)を受け支える複数の支持ピン(図示せず)が設けられている。
【0031】
樹脂成形品10を製造する場合には、まず、中間体21を準備する準備工程を実行する。この準備工程では、図2及び図3に示すように、三つのバスバー11〜13と二つのスペーサ19,20とを交互に重ねて、第1のバスバー11と第3のバスバー13との間に第1及び第2のスペーサ19,20及び第2のバスバー12が挟まれた状態とする。この状態で、第3のバスバー13の接合部23を第1のバスバー11の接合部24を挟むように折り返して、第3のバスバー13の接合部23と第1のバスバー11の接合部24とを接合する。これにより、三つのバスバー11〜13の板面が対向する状態でバスバー11〜13が平行に配置されると共に、各バスバー11〜13の間にそれぞれスペーサ19,20がバスバー11〜13の板面と平行に配置された中間体21を作製する。この中間体21は、第1のスペーサ19に該スペーサ19から突出して第2のバスバー12の端面を覆うカバー部25が形成され、第2のスペーサ20に該スペーサ20から突出して第2のバスバー12の端面を覆うカバー部26が形成されている。
【0032】
この後、成形型27のキャビティ30内に中間体21をセットするセット工程を実行する。このセット工程では、上型29を上昇させて成形型27を開いた状態で、下型28に中間体21をセットした後、上型29を下降させて成形型27を閉じる。これにより、中間体21が支持部32や支持ピンに支持された状態(第3のバスバー13の接合部23が支持部32で挟まれて支持されると共に、第3のバスバー13の本体部が上下両側から支持ピンで挟まれて受け支えられた状態)で、キャビティ30内にセットされる。
【0033】
この後、キャビティ30内に樹脂を充填して樹脂成形品10を成形する成形工程を実行する。この成形工程では、射出ゲート31からキャビティ30内に加熱溶融した樹脂材料Pを射出して充填することで、中間体21(バスバー11〜13及びスペーサ19,20)を樹脂で被覆した樹脂成形品10を射出成形する。この際、本実施例では、射出ゲート31からキャビティ30内に射出された樹脂材料Pは、中間体21の反端子側から端子側に向かって中間体21の周囲に沿って流れた後、中間体21の端子側で合流する(図5参照)。この成形工程において、第1のスペーサ19のカバー部25は、第2のバスバー12の外周のうちほぼ全周の範囲(接続端子15以外の範囲)で第2のバスバー12の端面を覆っている。第2のスペーサ20のカバー部26は、第2のバスバー12の外周のうち反端子側の端部の範囲で第2のバスバー12の端面を覆っている。
【0034】
この後、上型29を上昇させて成形型27を開いて、中間体21(バスバー11〜13及びスペーサ19,20)を樹脂で被覆した樹脂成形品10を取り出す取出工程を実行する。これにより、樹脂成形品10の製造が完了する。
【0035】
以上説明した本実施例では、スペーサ19,20のカバー部25,26でバスバー12の端面が覆われていると共に、二つのスペーサ19,20の端部間がカバー部25で塞がれているため、樹脂成形品10を成形する際に、バスバー12とスペーサ19,20との間や二つのスペーサ19,20の間に不要な樹脂が入り込むことを抑制して、バスバー12が移動したり変形したりすることを抑制することができ、バスバー12の位置ずれや変形が発生した樹脂成形品10が成形されてしまうことを抑制することができる。また、スペーサ19,20のカバー部25,26でバスバー12の端面が覆われているため、バスバー12を絶縁し易くして、短絡の防止効果を高めることができる。
【0036】
例えば、図5に示すように、キャビティ30内に射出された樹脂材料Pは、中間体21の周囲に沿って流れた後、中間体21の端子側で合流する。樹脂材料Pの合流部付近においても、第1のスペーサ19のカバー部25で第2のバスバー12の端面が覆われていると共に、二つのスペーサ19,20の端部間がカバー部25で塞がれているため、樹脂成形品10を成形する際に、バスバー12とスペーサ19,20との間や二つのスペーサ19,20の間に樹脂が入り込むことを抑制することができる。
【0037】
また、本実施例では、第3のバスバー13の接合部23と第1のバスバー11の接合部24とが接合されているため、第1及び第3のバスバー11、13を電気的に接続した回路を形成することができる。
【0038】
更に、本実施例では、三つのバスバー11〜13が設けられ、各バスバー11〜13の間に、それぞれスペーサ19,20が配置されているため、三つのバスバー11〜13を用いて容易に所望の回路を形成することができる。
【0039】
また、本実施例では、準備工程において、第1のバスバー11と第3のバスバー13との間に第1及び第2のスペーサ19,20及び第2のバスバー12を挟んだ状態で第3のバスバー13の接合部23と第1のバスバー11の接合部24とを接合して中間体21を作製するようにしたので、準備工程で、第1及び第3のバスバー11,13の間に第1及び第2のスペーサ19,20及び第2のバスバー12を挟んで仮固定した中間体21を準備することができ、セット工程で、中間体21を成形型27のキャビティ30内に容易にセットすることができる。
【0040】
また、本実施例では、成形工程において、キャビティ30内に樹脂を射出して充填することで樹脂成形品10を射出成形するようにしたので、樹脂成形品10を射出成形により能率良く製造することができる。
【0041】
尚、上記実施例では、第1のスペーサ19のカバー部25は、第2のバスバー12の外周のほぼ全周(接続端子15以外の範囲)に沿って形成し、第2のスペーサ20のカバー部26は、第2のバスバー12の外周のうち一部の範囲に沿って形成したが、これに限定されず、第2のスペーサ20のカバー部26も、第2のバスバー12の外周のほぼ全周に沿って形成するようにしても良い。また、第1のスペーサ19のカバー部25と第2のスペーサ20のカバー部26とが重なった状態で第2のバスバー12の端面を覆うようにしても良い。或は、第1のスペーサ19と第2のスペーサ20のうち一方のみにカバー部を形成するようにしても良い。
【0042】
また、第1のスペーサ19のカバー部25が第1のバスバー11の端面を、或は、第2のスペーサ20のカバー部26が第3のバスバー13の端面を覆うようにしても良い。更に、例えば、第1のスペーサ19のカバー部25を、第1のスペーサ19の両側に配置される第1及び第2のバスバー11,12の夫々の端面を覆うように形成しても良い。
【0043】
また、第2のバスバー12の端面を覆うカバー部を、必ずしも第2のバスバー12の外周のほぼ全周に沿って形成する必要はなく、第2のバスバー12の外周の一部の範囲のみに沿って形成するようにしても良い。この場合、カバー部を形成する範囲は、カバー部が無い場合にバスバーとスペーサとの間に樹脂が入り込み易い範囲に設定すると良い。このようにすれば、バスバーとスペーサとの間に入り込む樹脂の流れを遮る位置にカバー部を形成することができる。その際、カバー部を形成する範囲(つまり、カバー部が無い場合にバスバーとスペーサとの間に樹脂が入り込み易い範囲)は、例えば、カバー部が無い場合の樹脂の流れを推測(計算)する流動解析を行って、その解析結果に基づいて設定する。或は、カバー部が無い場合の実際の樹脂の流れを調べる実験を行って、その実験結果に基づいて設定するようにしても良い。
【0044】
また、上記実施例では、第1のバスバー11と第3のバスバー13を接合するようにしたが、これに限定されず、接合するバスバーの組み合わせを変更しても良い。或は、バスバー同士を接合しない構成としても良い。
また、上記実施例では、準備工程で中間体21を作製するようにしたが、これに限定されず、中間体21を外部から入手するようにしても良い。
【0045】
また、上記実施例では、中間体21を作製した後、その中間体21を成形型27のキャビティ30内にセットするようにしたが、これに限定されず、成形型27の下型28にバスバー11〜13やスペーサ19,20をセットしながら中間体21を組み立てて作製することで成形型27のキャビティ30内に中間体21をセットするようにしても良い。
【0046】
その他、本発明は、バスバーやスペーサの形状や数、各バスバーに設ける接続端子の形状や数を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0047】
10…樹脂成形品、11〜13…バスバー、19,20…スペーサ、21…中間体、23,24…接合部、25,26…カバー部、27…成形型、30…キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6