【実施例1】
【0017】
図1は実施例1の面発光表示器1の斜視図、
図2は平面図、
図3は側面説明図である。電力自給式である面発光表示器1は、既存のプラットホームや経路等の上に直接載置する平面状の平面部2と、この平面部2の一方端部から下方に延在する円筒状の埋設部3と、埋設部3の上部にあって平面部2の凹部に固定する発光部4と、この発光部4と接続し、埋設部3内に収納した収納機器部5とから構成されている。
【0018】
平面部2は上方から見て長方形状であり、周囲は緩やかな傾斜によりスロープ形状の傾斜部2a、2bが設けられている。平面部2の大きさは、例えば横1m、縦15cm、頂部の高さ1cm程度であり、これらの横、縦の長さは既設のタイルの大きさ等に応じて、適宜のサイズを採用することが可能である。
【0019】
平面部2は、両長辺に沿う傾斜部2a、両短辺に沿う傾斜部2bと、これらの傾斜部2a、2bに囲まれた凹部2cとから構成されている。傾斜部2a、2b及び凹部2cは強度の大きな金属素材、例えば5mmの厚みのステンレス板、アルミニウム板等から形成され、傾斜部2a、2bには図示は省略しているが、適当な間隔で後述するプラットホームの床板Fに固定するための貫通孔が穿設されている。
【0020】
図4は
図2の平面図のA−A’線に沿った断面図であり、凹部2c内には底面側から、白く着色又は白色シート材から成る白色シート層2d、光反射層2eの順で積層され、更にこの光反射層2eの直上に導光板部2fが積層されている。凹部2cの内側面には、白色シート層2dのみが設けられており、この白色シート層2dは光を多く反射する鏡面状のシート体であってもよい。
【0021】
光反射層2eは例えばポリカーボネート、アクリル等の合成樹脂シートから構成される。この光反射層2eの表面には多数の山形溝形状が形成されており、発光部4から離れるにつれて、光反射率が高くなるようにされている。つまり、発光部4の近傍では、溝ピッチが広く、例えば0.3mm程度で山形の角度も緩やかに形成されており、発光部4から離れた位置では、溝ピッチが狭く、例えば0.1mm程度で山形の角度も鋭く形成されている。
【0022】
導光板部2fは例えばポリカーボネート、アクリル等の透明な合成樹脂から成り、凹部2c内に嵌合されている。導光板部2fの表面は、傾斜部2a、2bの頂部と段差なく連続している。導光板部2fは透明な平面体であって、上方からの押圧力に対して強度を有するものであれば、ポリカーボネート以外の適宜の材料を採用することも可能である。
【0023】
また、導光板部2fの厚みは、凹部2cの側面の高さと略一致している。このため導光板部2fは上方からの押圧力に対して破損し難い構造となっている。製造する場合は、予め発光部4の凸形状を考慮したポリカーボネート等の板材の導光板部2fを用意し、凹部2cに嵌め込んで固定するようにしてもよい。或いは、白色シート層2d及び光反射層2eを凹部2c内に積層した状態で、溶解したポリカーボネートを凹部2c内に充填して製造することもできる。
【0024】
凹部2cの一方の端部の底面には、埋設部3がその中心軸を上下方向に向けて連結されている。この埋設部3は例えば直径10cm、高さ10cm、肉厚3mm程度の円筒形をしており、底には取り外して開閉可能な底部3aを有している。埋設部3の素材としてステンレス等の金属や、金属以外に耐腐蝕性を有する合成樹脂等を採用することができる。
【0025】
埋設部3が連結する凹部2cの片側には、凹部2cの短辺に沿って長さが凹部2cの短辺と略一致する長方形状の孔部2gが設けられている。埋設部3の上端には、孔部2gに挿通し一部を凹部2cから上方へ突出した状態で、凹部2cに発光部4が固定されている。
【0026】
発光部4は孔部2gを塞ぐように、ねじ止め等により凹部2cに固定されており、孔部2gを介して突出した発光部4の表面には、凹部2cの他方の端部側に発光する発光本体部4aが設けられている。この発光本体部4aは、複数のLED素子を凹部2cの短辺に沿ってライン状に配列したものであり、略水平方向に向けて発光されるようになっている。
【0027】
このライン状の発光本体部4aは、注意喚起に適した例えば赤色の高輝度LED素子を用いることが好ましい。また、赤色の高輝度LED素子以外に、青色、緑色の高輝度LED素子も赤色の高輝度LED素子と併せて配置することもできる。
【0028】
また、埋設部3及び発光部4を凹部2cの中央に配置し、略水平方向に向けて発光する発光本体部4aを発光部4の両面に配置するようにしてもよい。このように配置することで、遠端までの距離が短くなるので同じ高輝度LED素子を使用した場合よりも明るく面発光させることができる。
【0029】
発光部4の下方であって、埋設部3内には
図3に示すように収納機器部5が配置されており、収納機器部5は長寿命電池5aと、この長寿命電池5aに接続したクロック部5bとから構成されている。
【0030】
なお、
図3においてはブロック図により長寿命電池5a及びクロック部5bを図示しているが、埋設部3の筒内にねじ止め等により交換可能な状態で固定されており、収納機器部5の大きさについても長寿命電池5aの容量に応じて埋設部3内を適宜の大きさで占有することになる。
【0031】
図3に示すように、破損し易い電気部品から成る収納機器部5及び発光部4は、埋設部3により保護された状態となる。なお、収納機器部5において長寿命電池5aは必須の構成であるが、クロック部5bは設けなくてもよい。
【0032】
長寿命電池5aは、鉛、アルカリ等の小型蓄電池であって、容量が数百Ah程度のものを使用する。クロック部5bによる点滅制御や後述する照度センサを利用した夜間発光制御等の運用を行った場合でも、数年間は電池交換が不要で運用することが可能である。
【0033】
クロック部5bは、ディレー点灯の点灯タイミング制御を行う機能を有している。更に、点灯を行う時間帯等を設定し、時間帯に併せて点灯制御のオンオフを制御する機能を付加するようにしてもよい。
【0034】
面発光表示器1をプラットホームに設置する際には、先ずプラットホームの長手方向の縁部から数10cm離れた個所の既存のプラットホームの床板Fに、埋設部3の直径よりも若干大きい径の円形孔をドリル等を用いて穿孔する。
【0035】
そして、この円形孔に埋設部3を挿入すると同時に、プラットホームの長手方向の縁部と平面部2とが平行になるように面発光表示器1を床板F上に載置する。
【0036】
最後に、面発光表示器1の床板F上の最終的な位置合わせをした後に、前述の傾斜部2a、2bに設けた貫通孔にアンカボルトを挿入して、面発光表示器1を床板Fに固定して設置作業は完了する。このような設置作業を繰り返して、面発光表示器1はプラットホームの長手方向の全長に渡って所定間隔をおいて設置されることになる。そして、面発光表示器1を設置した状態から、直ちに発光本体部4aの点滅制御を開始する。
【0037】
このように、実施例1の面発光表示器1によれば、スレッドラインの新設工事の作業時間を、従来のタイルごと交換したり、スレッドラインに沿って既存のタイルに長溝を設けるスレッドラインの施工方法に比べて、大幅に短縮することができる。
【0038】
また、長寿命電池5aにより、発光部4に電力供給されるため、プラットホーム下等に電源系統を設置する必要がなく、更に無駄にタイルを交換することもないので、安価にスレッドラインを新設することが可能である。
【0039】
図5は面発光表示器1の面発光を説明した説明図であり、面発光表示器1はプラットホーム、通路等の設置面に対して垂直に面発光を行う。発光本体部4aから発光した略水平方向の光Lは、発光部4から離れるにつれて光反射率が高くなるようにされているので、発射した光Lは略水平方向に導光板部2f内を全反射を繰り返しながら進み、光反射層2eの山形溝形状の斜面に入射すると上方に反射して、導光板部2fから上方に出射する。なお、光反射層2eの山形溝形状の斜面に入射した光Lの一部は、光反射層2eを透過して光反射層2e下の白色シート層2dによって反射されることになる。
【0040】
図6に示すように、プラットホームの床板Fに複数の面発光表示器1から成るスレッドラインを配置し、スレッドラインを構成する複数の面発光表示器1は、同期して点滅するようにしてもよく、また隣接する面発光表示器1に対してずらしながら点滅させることも可能である。ずらしながら点滅させることで点灯した発光部4からの光が列車Tの進入する方向に移動するように順に点滅制御させることも可能である。
【0041】
このようなずらしながら点滅するディレー点灯制御は、
図6に示す面発光表示器11〜14は同期したクロック部5bを有し、面発光表示器11はクロック部5bが0秒の発光タイミングで、面発光表示器12はクロック部5bが0.25秒の発光タイミングで、面発光表示器13はクロック部5bが0.5秒の発光タイミングで、面発光表示器14はクロック部5bが0.75秒の発光タイミングで、200ms程度点灯する。
【0042】
これを所定周期、例えば1秒周期で繰り返すことで、面発光表示器11〜14の発光部4からの光が順に移動するように点灯させることが可能である。なお、面発光表示器11〜14の複数組を隣接して設置することで、プラットホームPの長手方向の全長に渡って光が移動するように点灯させることもできる。
【0043】
光反射層2eは発光本体部4aの近くの強い光L1は、あまり反射することはないが発光本体部4aから離れて弱くなった光L2は反射が大きくなる。従って、面発光表示器1は全体で均一の面発光がなされることになる。
【0044】
面発光表示器1を設置したスレッドラインにおいては、従来の所定間隔で点発光するスレッドラインに比べて面発光を順に行うため、より高い注意喚起効果が得られる。
【0045】
また、実施例1では面発光表示器1をプラットホームに設置することを例として説明しているが、道路等の適宜の場所において注意喚起用の発光装置として使用することも可能である。
【実施例2】
【0046】
図7は、実施例2の面発光表示器の平面図であり、
図8は実施例2の面発光表示器の側面説明図である。実施例1の面発光表示器1はプラットホームの注意喚起用のスレッドラインとして使用しているが、実施例2の面発光表示器1’は、緊急避難用の誘導表示器として地下鉄、ビル等の通路上や、通路壁面に設置するものである。
【0047】
誘導表示器として面発光表示器1’を使用する場合には、発光本体部4aに赤色、青色、緑色の高輝度LED素子を配置し、それらを同時に点灯させて、白色の光を発光するようにする。
【0048】
また、導光板部2fの表面には、緑色の矢印マーク2hや非常口マーク2iが設けられている。これらのマークの背後から白色で面発光することで、遠くからでも着色したマークを認識でき、容易に非常口の方向へ向うことができる。
【0049】
また、実施例1の収納機器部5のクロック部5bに代えて照度センサ5cを配置している。この照度センサ5cは発光部4の近傍であって、上方から外光が照射される個所に設置されており、照度センサ5cからの照度に応じて発光本体部4aのオンオフの制御を行う。災害等により照明等が落ちた場合や、夜間になり照明を消灯した場合等に自動的に面発光を行うことができる。
【0050】
なお、照度センサ5cはプラットホームに載置する面発光表示器1の収納機器部5に内蔵させることもできる。このような場合は、照度センサ5cからの照度に応じて、発光本体部4aから照射される光の強弱を調整するようにしてもよい。
【0051】
面発光表示器1’の施工方法は、実施例1の面発光表示器1と同様に、床面又は壁面に円形孔をドリル等を用いて穿孔し、この円形孔に埋設部3を挿入し、ボルト等で固定する。実施例2の面発光表示器1’の設置も実施例1の面発光表示器1と同様に、電源設備を準備することなく任意の場所に設置すること可能である。
【0052】
また、収納機器部5として無線中央装置からの点灯制御信号等を受信する無線通信部を実施例1、2の面発光表示器1、1’に設け、無線中央装置から点滅、点灯制御を行うようにしてもよい。例えば、無線中央装置に列車連動装置を接続し、列車接近信号を無線通信部に送信した際に、所定時間だけ面発光表示器1を点滅制御させたり、災害発生時には、無線中央装置から面発光表示器1’に点灯制御を行うようにしてもよい。
【0053】
更に、面発光表示器1の発光本体部4aに無線中央装置からの発光色指令に基づいて、任意の色を面発光させることも可能である。
【0054】
面発光表示器1、1’の導光板部2fにひび割れ等が発生したり、傾斜部2a、2bが破損した場合には、面発光表示器1、1’を固定しているボルトを外し、面発光表示器1、1’を取り外した後に、新しい面発光表示器1、1’を上述の施工方法で設置することで、簡便に故障状態から復旧することができる。
【0055】
また、面発光表示器1、1’の発光部4の発光本体部4aが点灯しなくなるような不具合が発生した場合には、上述のように面発光表示器1、1’の交換による復旧以外に、面発光表示器1を取り外した後に、埋設部3の底部3aを外して、発光部4や長寿命電池5a等の部品を取り外し、新しい部品と交換を行うことで復旧するようにしてもよい。
【0056】
更に、面発光表示器1、1’の発光部4からの略水平方向の光を導光板部2f内に照射し、白色シート層2d及び光反射層2eにより、上方の導光板部2fから発射して面発光させるので、平面部2の厚みを薄くすることができる。
【0057】
また、面発光表示器1、1’は上方からの押圧力に対して強固であることから、同時に多数の利用者が長期に渡って踏んだとしても、破損することはない。更に、面発光表示器1、1’は平面状であり、周囲がスロープ状とされているので利用者がつまずく虞もない。