(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
分離媒体を生成する方法を提供し、この方法では、異なる光透過率の領域を有するフォトマスクを介して分離媒体前駆体溶液を光源からの光に曝して分離媒体を生成する。本方法を行うために使用されるシステム、分離媒体を含むマイクロ流体デバイス、及びマイクロ流体デバイスを使用する方法を更に提供する。本開示の実施形態は、分析物が流体試料に存在するか否かを検出することを含む、様々な異なる用途に使用される。
【0029】
本発明を更に詳細に記載する前に、言うまでも無くそれ自体が変わり得るように、本開示の態様が記載された具体的な実施形態に限定されないことを理解すべきである。本明細書に使用されている専門用語は、具体的な実施形態について説明するためだけのものであり、本開示の実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるので、限定的であることを意図するものではないことも理解すべきである。
【0030】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限及び下限の間の、文脈が別段に明示しない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値が本開示の実施形態に包含されることを理解すべきである。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として本開示の実施形態に更に包含される。記載された範囲が限度のうちの一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限度の一方又は両方を除外した範囲も本開示の実施形態に更に包含される。
【0031】
特に定義されていない限り、本明細書に使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等であるあらゆる方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、潜在的且つ典型的な方法及び材料を本明細書に記載している。
【0032】
本明細書に引用されている全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が、具体的に且つ個別に参照によって組み込まれると示されているかのように参照によって本明細書に組み込まれ、刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示して記載すべく、参照によって本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであって、先行発明を理由として、本開示の実施形態がそのような刊行物に先行する権限がないことを認めるものであるとみなされるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある。
【0033】
単数形の「1つの(a )」、「1つの(an)」及び「その(the )」が、本明細書及び請求項で用いられている場合、文脈が別段に明示しない限り、複数の指示対象を含むことを留意すべきである。更に、請求項がいかなる選択的な要素も排除して記載されていることを留意すべきである。従って、この記述は、請求項の要素の記載に関する「唯一の(solely)」、「のみの(only)」等の排他的用語の使用、又は「否定的な(negative)」限定の使用のための先行記載として機能すべく意図される。
【0034】
当業者が本開示を読むと明らかであるように、本明細書に説明され例示された個々の実施形態は夫々、別々の構成要素及び特徴を有しており、別々の構成要素及び特徴は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、又はいずれかの特徴と容易に組み合わされてもよい。全ての記載された方法は、記載された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0035】
以下に、主題のマイクロ流体デバイスについてまず詳細に記載する。主題のマイクロ流体デバイスが使用される、流体試料中の分析物を検出する方法を更に開示する。更に、主題のマイクロ流体デバイスを含むシステム及びキットについても記載する。
【0036】
方法
本開示の態様は、分離媒体を生成する方法を含んでいる。ある実施形態では、本方法は、異なる光透過率の領域を有するフォトマスクを介して分離媒体前駆体溶液を光源からの光に曝して分離媒体を生成する工程を有する。(本明細書では「マスク」とも称される)フォトマスクは、透明又は半透明な基板であり、光源と分離媒体の前駆体溶液及び/又は生成された分離媒体との間に設けられてもよい。ある実施形態では、フォトマスクは、光源と分離媒体の前駆体溶液との間に設けられている。光が光源からフォトマスクを通って分離媒体の前駆体溶液に透過して、前駆体溶液から分離媒体を生成してもよい。例えば、分離媒体の前駆体溶液は、光源からの光によって活性化して分離媒体を生成する前駆体部分を含んでもよい。場合によっては、以下に更に詳細に記載されているように、前駆体部分は、光に曝されて分離媒体を生成する際に重合するモノマー(例えば、光によって活性化するモノマー)を含んでいる。
【0037】
場合によっては、フォトマスクは異なる光透過率の領域を有している。「異なる光透過率」とは、フォトマスクがフォトマスクの領域内又は異なる領域間に異なる透過率の値を有する一又は複数の領域を有していることを意味する。例えば、フォトマスクは、第1の領域及び第2の領域のような2以上の領域を有することができ、第1の領域は第1の透過率を有し、第2の領域は第1の領域とは異なる第2の透過率を有する。場合によっては、フォトマスクは、同一の領域内に透過率の値が異なる領域を有している。例えば、フォトマスクは、透過率が領域に亘って徐々に変わる領域のような、透過率が同一の領域内で変わる領域を有してもよい。場合によっては、透過率が領域に亘って徐々に変わる領域は勾配フォトマスクと称される。「勾配フォトマスク」とは、フォトマスクが、低光透過率領域及び高光透過率領域を有しており、低光透過率領域から高光透過率領域に光透過率が増加することを意味する。場合によっては、勾配フォトマスクの光透過率が、低光透過率領域から高光透過率領域に線形に増加するように、光透過率の勾配は線形勾配である。
【0038】
ある実施形態では、フォトマスクは連続的な基板である。例えば、基板に空隙(例えば穴又はマスクされていない領域)がないように、フォトマスクは連続的な基板であってもよい。このような実施形態では、光源からの光が、分離媒体前駆体溶液及び/又は分離媒体に達する前にフォトマスクの基板を透過するので、フォトマスクの基板を透過せずに分離媒体前駆体溶液及び/又は分離媒体に直接達することはない。
【0039】
ある実施形態では、異なる光透過率を有するフォトマスクの領域が半透明な領域である。「半透明」とは、光透過率が0%〜100 %の材料を意味する。例えば、半透明なフォトマスクの光透過率は、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下又は10%以下のような100 %未満であってもよい。言い換えると、半透明なフォトマスクの光透過率は、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上又は90%以上のように0%より大きくてもよい。場合によっては、半透明なフォトマスクの光透過率は、20%〜80%、30%〜70%又は40%〜60%を含む10%〜90%のような0%〜100 %の間である。光透過率が10%〜90%、20%〜90%、30%〜90%、40%〜90%、50%〜90%、60%〜90%、70%〜90%又は80%〜90%などの範囲内であるような他の範囲も対象である。
【0040】
場合によっては、半透明な領域を含んでいるフォトマスクは、「グレースケールマスク」と称され、上述したように、光透過率を調節して、基板又は分離媒体前駆体溶液のような材料への光の空間照射量を制御すべく構成されている。グレースケールマスクの光透過率は、0%〜100 %の範囲内であってもよく、0%〜100 %の間のいかなる値であってもよい。例えば、グレースケールマスクは、20%〜80%、30%〜70%又は40%〜60%を含む10%〜90%のような0%〜100 %の光透過率の半透明な領域を有してもよい。場合によっては、グレースケールマスクは、実質的にマスク全体に亘って10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は上記に記載した範囲内の値の光透過率のような均一な光透過率を有する。
【0041】
ある実施形態では、グレースケールマスクが光透過率の勾配を有するように、グレースケールマスクは勾配マスクである。「光透過率の勾配」とは、マスクが、低光透過率領域及び高光透過率領域を有しており、低光透過率領域から高光透過率領域に光透過率が増加することを意味する。場合によっては、マスクの光透過率が低光透過率領域から高光透過率領域に線形に増加するように、勾配は線形勾配である。低光透過率領域は本明細書に記載されているあらゆる値のパーセント透過率を有してもよく、同様に、高光透過率領域は、低光透過率領域とは異なる値である、本明細書に記載されているあらゆる値を有してもよい。例えば、勾配マスクは、5%〜95%、10%〜90%、15%〜85%、20%〜80%、25%〜75%、30%〜70%、35%〜65%又は40%〜60%の光透過率の勾配のような、0%〜100 %の光透過率の勾配(つまり、0%の光透過率の領域から100 %の光透過率の領域の勾配)を有してもよい。0%〜25%、25%〜45%、45%〜75%、75%〜100 %又は1%〜70%などの勾配範囲のような他の勾配範囲も可能である。
【0042】
ある実施形態では、グレースケールマスクは、グレースケールマスクによって遮られる光の割合に相当するパーセントグレースケールを単位として記載されてもよい。例えば、100 %のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を全く透過させず、0%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を100 %透過させる。同様に、10%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を90%透過させ、20%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を80%透過させ、30%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を70%透過させ、40%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を60%透過させ、50%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を50%透過させ、60%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を40%透過させ、70%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を30%透過させ、80%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を20%透過させ、90%のグレースケールを有するグレースケールマスクは光を10%透過させる。
【0043】
ある実施形態では、光透過性基板に不透明な領域のパターンを設けることにより、グレースケールマスクが作製される。例えば、不透明な領域のパターンは、基板の表面に規則的なパターンで設けられる不透明な材料を含んでもよい。不透明な領域のパターンは、これらの領域間のエリアに不透明な材料を含まない領域間エリアを有してもよい。基板の単位面積当たりの不透明な領域によって覆われる領域の量により、フォトマスクのパーセントグレースケールが決定される。例えば、不透明な材料のパターンで覆われた単位面積当たりより高い割合の領域は、不透明な材料のパターンで覆われた単位面積当たりより低い割合の領域と比較して、より高いパーセントグレースケールを有する。場合によっては、不透明な材料のパターンは、光透過性基板の表面にグリッドパターンで配置されている。
【0044】
図6Aは、75%のグレースケールパターン(つまり25%の透過率、
図6A(上))及び25%のグレースケールパターン(つまり75%の透過率、
図6A(下))に関して光透過性基板(白い領域)に不透明な材料のグリッドパターン(陰影領域)を含むグレースケールフォトマスクを示す概略図である。
図6Bは、グレースケールマスクの値(%グレースケール)に対する透過光の相対強度(%透過率)を示すグラフである。
図6Bに示されているように、グレースケールマスクは実質的に線形に変わる相対強度(つまり透過率)を有する。
図6Cは、光学的に透明な基板上に作製された異なるグレースケールの領域を有するフォトマスクの画像を示す図である。グレースケールマスクは、フォトマスクの異なる領域を透過する光の強度によって示されるような異なるパーセント透過率を有する。
【0045】
ある実施形態では、フォトマスクは、光透過率が異なる一又は複数(例えば2以上)の別個の領域を有する。別個の領域夫々の光透過率は、20%〜80%、30%〜70%若しくは40%〜60%を含む10%〜90%のような0%〜100 %の範囲内であってもよく、又は0%〜100 %の間のあらゆる値であってもよい。ある場合には、一又は複数の別個の領域は上述したような半透明であり、例えば、20%〜80%、30%〜70%若しくは40%〜60%を含む10%〜90%のような0%〜100 %の範囲内の光透過率を有する。ある場合には、一又は複数の別個の領域は上述したような光透過率の勾配を有する。光透過率が異なる別個の領域は互いに隣り合ってもよく、又は領域間エリアによって分離されてもよい。領域間エリアは、別個の領域とは異なる光透過率を有してもよい。例えば、領域間エリアは0%の光透過率を有してもよく、又は100 %の光透過率を有してもよい。
【0046】
ある実施形態では、分離媒体前駆体溶液及び/又は分離媒体に達する光の強度は、上述したようなフォトマスクの一又は複数の透過率の値に応じてフォトマスクによって調節される。場合によっては、光にフォトマスクを透過させることにより、分離媒体前駆体溶液の異なる領域に達する光の強度を調節する。例えば、光にフォトマスクを透過させることにより、フォトマスクの一又は複数の透過率の値に応じて分離媒体前駆体溶液の領域に達する光の強度を弱めてもよい。透過率が比較的高いフォトマスクの領域により、より高い強度の光に曝される分離媒体前駆体溶液の領域でより活発な重合が開始され、従ってより高い密度(例えばより低い多孔度)のその領域に分離媒体が生成されてもよい。透過率が比較的低いフォトマスクの領域により、より低い強度の光に曝される分離媒体前駆体溶液の領域であまり活発でない重合が開始され、従ってより低い密度(例えばより高い多孔度)のその領域に分離媒体が生成されてもよい。以下により詳細に記載されているように、分離媒体の密度(例えば多孔度)は、分離媒体の生成を開始させるために分離媒体前駆体溶液に達する光の強度に応じて決まってもよい。本明細書に記載されているように、前駆体溶液に達する光の強度は、本明細書に記載されているようなグレースケールマスクを用いて調節されてもよい。
【0047】
図7Aは、本開示に係る0%のグレースケール(つまり100 %の透過率)〜100 %のグレースケール(つまり0%の透過率)の範囲内の様々なグレースケールマスクの画像を示す図である。
図7Bは、光透過性基板上の不透明な材料のグリッドパターンを示すために拡大した20%のグレースケールマスクを示す図である。
図7Cは、グレースケールの値(%グレースケール)に対する、グレースケールマスクを透過した光の相対強度を示すグラフである。
図7Cに示されているように、相対強度はグレースケールの値に応じて線形的に変化する。
【0048】
ある実施形態では、空間的に変わる分離媒体を生成する方法は、分離媒体を生成するために必要な処理工程及び/又は時間を最小限度に抑える。例えば、異なる密度(例えば多孔度)の2以上の領域を有する分離媒体を生成する典型的な処理は、第1の前駆体溶液をマイクロチャネル又はチャンバに導入する、第1の前駆体溶液を第1の領域で重合する、第1の前駆体溶液をマイクロチャネル又はチャンバから取り除く、第2の前駆体溶液をマイクロチャネル又はチャンバに導入する、第2の前駆体溶液を第2の領域で重合するなどの複数の工程を有してもよい。本明細書に記載されているように、本開示の方法では、本明細書に記載されているようなフォトマスクを通して光を透過させることにより、分離媒体前駆体溶液の異なる領域を異なる強度の光に同時に(例えば1つの工程中で)曝して空間的に変わる分離媒体を生成する。更に、勾配分離媒体を生成する典型的な処理では、マイクロチャネル又はチャンバの1つの領域に第1の前駆体溶液を供給し、マイクロチャネル又はチャンバの第2の領域に第2の前駆体溶液を供給して、第1及び第2の前駆体溶液をマイクロチャネル又はチャンバに亘って拡散させることにより勾配が生じる時間待機する。この処理は、適切な勾配が生じるのに最大20時間かかる場合がある。本明細書に記載されているように、本開示の方法では、本明細書に記載されているような勾配フォトマスクを通して光を透過させることにより、分離媒体前駆体溶液の領域を光強度の勾配に(例えば1つの工程中で)曝して勾配分離媒体を生成する。更に、本開示の実施形態では、光源の強度を変える必要なく光源から空間的に変わる分離媒体を生成する。本明細書に記載されているように、本開示の方法では、本明細書に記載されているようなフォトマスクを通して光を透過させることにより、分離媒体前駆体溶液の異なる領域を異なる強度の光に(例えば1つの工程中で)曝して空間的に変わる分離媒体を生成する。
【0049】
ある実施形態では、本方法では、フォトマスクと分離媒体前駆体溶液との間に光拡散体を設ける。場合によっては、本方法は、フォトマスク及び分離媒体前駆体溶液間の光拡散体を通して光源からの光を導く工程を有する。場合によっては、光拡散体は、光が分離媒体前駆体溶液に達する前にフォトマスクを透過した光を拡散するか広げるように構成されている。上記に記載されているように、場合によっては、フォトマスクは光透過性基板の表面に不透明な材料のパターン(例えばグリッドパターン)を含んでもよく、場合によってはこのために、フォトマスクを透過する光のピクシレーションを生じさせる場合がある。場合によっては、光が分離媒体前駆体溶液に達する前に光拡散体を通して光を通過させることにより、フォトマスクを透過する光のピクシレーションを低下させる。
図11A は、0%のグレースケール、10%のグレースケール、20%のグレースケール、30%のグレースケール、40%のグレースケール、50%のグレースケール、60%のグレースケール、70%のグレースケール、80%のグレースケール、90%のグレースケール及び100 %のグレースケールのグレースケールマスクに関して拡散体を使用せずに様々なグレースケールマスクを透過した光の画像を示す図である。
図11B は、0%のグレースケール、10%のグレースケール、20%のグレースケール、30%のグレースケール、40%のグレースケール、50%のグレースケール、60%のグレースケール、70%のグレースケール、80%のグレースケール、90%のグレースケール及び100 %のグレースケールのグレースケールマスクに関して拡散体を使用して様々なグレースケールマスクを透過した光の画像を示す図である。拡散体に対するグレースケールマスクの距離は1mmであった。
図11C (上)は、グレースケールマスクのピクシレーションを示す、拡散体を使用せずに20%のグレースケールマスクを透過した光の画像を示す拡大図である。
図11C (下)は、ピクシレーションの著しい低下を示す、拡散体を使用して20%のグレースケールマスクを透過した光の画像を示す拡大図である。
【0050】
ある実施形態では、光拡散体が、フォトマスクと分離媒体前駆体溶液との間に存在しない。例えば、フォトマスクとゲル前駆体溶液との間にある間隔を置いて、光拡散体がグレースケールマスクを透過した光のピクシレーションを最小限度に抑える必要がないようにフォトマスクが構成されてもよい。例えば、グレースケールマスクの不透明な特徴のサイズ及び/又は間隔は、グレースケールマスクを透過する光のピクシレーションを最小限度に抑えるために以下の式によって決定されてもよい。0%より大きく25%に至るグレースケールでは、(X
min)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。25%〜45%のグレースケールでは、(X
array−X
min)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。45%〜75%のグレースケールでは、(X
array)
2−(X
varied)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。75%から100 %未満のグレースケールでは、(X
array)
2−(X
min)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。X
variedは定められた一次関数であり、(0.45のグレースケールでの)X
variedは2×X
minであり、(0.75のグレースケールでの)X
variedはX
minである。更に、0より大きく1より小さいグレースケールでは、X
array=X
min+X
variedである。更に実施例3及び
図13参照。ある実施形態では、フォトマスクとゲル前駆体溶液との間隔は、5cm以下、2cm以下、1cm以下、7mm以下、5mm以下、3mm以下、2mm以下又は1mm以下のような10cm以下である。ある場合には、フォトマスクは、フォトマスクとゲル前駆体溶液との間隔が1mmでグレースケールマスクを透過する光のピクシレーションを最小限度に抑えるように構成されている。場合によっては、光拡散体が、フォトマスクとゲル前駆体溶液との間に存在しない。
【0051】
図4は、本明細書に記載されているような空間的に変わる分離媒体を生成する方法の処理フローを示す概略図である。
図4(上)では、前駆体溶液が、マイクロチャネル、又は型(例えばガスケット型)に含まれる基板の表面に供給される。
図4(中央)に示されているように、分離媒体前駆体溶液は、異なる光透過率の領域を有するグレースケールマスクを透過する紫外線に曝される。その結果、重合された分離媒体(例えばポリアクリルアミンゲル;PAG )は、その領域のグレースケールマスクのパーセント透過率に応じて異なる密度の領域を有する(
図4(下))。
【0052】
図5は、本明細書に記載されているような勾配分離媒体を生成する方法の処理フローを示す概略図である。
図5(上)では、前駆体溶液が、マイクロチャネル、又は型(例えばガスケット型)に含まれる基板の表面に供給される。
図5(中央)に示されているように、分離媒体前駆体溶液は、0%から100 %の光透過率の勾配を有する勾配マスクを透過する紫外線に曝される。その結果、重合された分離媒体(例えばポリアクリルアミンゲル;PAG )は、勾配マスクに対応する密度勾配を有する(
図5(下))。
【0053】
ある実施形態では、本明細書に記載されている本方法を使用して生成された空間的に変わる分離媒体は、試料中の分析物を検出するための方法及びシステムに使用される。そのため、空間的に変わる分離媒体を使用する本方法は、試料中に分析物が存在するか否かを判定する工程、例えば、試料中の1以上の分析物の有無を判定する工程を有する。本方法のある実施形態では、試料中の1以上の分析物の存在が定質的に又は定量的に判定され得る。定質的判定は、試料中の分析物の存在に関する単純な存在/非存在の結果がユーザに提供される判定を含む。定量的判定は、試料中の分析物の量に関して、例えば少ない、中程度、多い等の大まかな結果がユーザに提供される半定量的判定と、分析物の濃度の正確な測定値がユーザに提供される詳細な結果との両方を含む。
【0054】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、試料中の1以上の分析物の存在を検出するように構成されている。主題のマイクロ流体デバイスを用いてアッセイされ得る試料は異なってもよく、単純試料及び複合試料の両方を含んでもよい。単純試料は、対象となる分析物を含む試料であり、対象とならない1以上の分子要素を含んでも含まなくてもよく、これらの非対象分子要素の数は少なくてもよく、例えば10以下、5以下等である。単純試料は、初めの生体試料、又は、例えば干渉し得る分子要素を試料から除去するために何らかの方法で処理された他の試料を含み得る。「複合試料」とは、対象となる一又は複数の分析物を有しても有さなくてもよい(例えば、対象となる一又は複数の分析物を含んでいると少なくとも疑われる)が、対象とならない異なるタンパク質及び/又は他の分子を更に含む試料を意味する。場合によっては、主題の方法でアッセイされる複合試料は、分子構造又は物理的特性(例えば分子量、サイズ、電荷、等電点等)で互いに異なる10以上、例えば100 以上を含む20以上、例えば10
3 以上、(15,000、20,000又は25,000以上のような)10
4 以上の別個の(すなわち、異なる)分子要素を含む試料である。
【0055】
ある実施形態では、対象となる試料は、限定されないが、尿、血液、血清、血漿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、便、口腔粘膜採取検体、脳脊髄液、細胞溶解物試料、羊水、胃腸液、生検組織(例えばレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM )から得られた試料)等の生体試料である。試料は、生体試料であり得るか、又はDNA 、RNA 、タンパク質及びペプチドを適切に抽出するための従来の方法を使用して、ヒト、動物、植物、菌類、酵母、細菌、組織培養、ウイルス培養、又はこれらの組合せに由来する生体試料から抽出されてもよい。ある実施形態では、試料は、流体中の分析物の溶液等の流体試料である。流体は、限定されないが、水、緩衝液等の水溶液であってもよい。
【0056】
上述したように、主題の方法でアッセイされ得る試料は、1以上の対象となる分析物を含み得る。検出可能な分析物の例として、限定されないが、核酸、例えば二本鎖又は一本鎖のDNA 、二本鎖又は一本鎖のRNA 、DNA −RNA ハイブリッド、DNA アプタマー、RNA アプタマー等と、修飾されているか又は修飾されていないタンパク質及びペプチド、例えば抗体、二重特異性抗体、Fab 断片、DNA 又はRNA の結合タンパク質、リン酸化タンパク質(リン酸化プロテオミクス)、ペプチドアプタマー、エピトープ等と、阻害剤、活性剤、リガンド等の小分子と、オリゴ糖類又は多糖類と、これらの混合物等とが挙げられる。
【0057】
ある実施形態では、対象となる分析物を識別することができるため、対象となる分析物の存在を検出できる。本明細書に記載されている本方法のいずれかによって分析物を識別してもよい。例えば、検出可能な標識を含む、分析物に特異的な結合メンバーを用いてもよい。検出可能な標識は、限定されないが、蛍光標識、比色分析標識、化学発光標識、酵素結合試薬、マルチカラー試薬、アビジン−ストレプトアビジン関連検出試薬、非視覚的検出可能な標識(例えば、放射性標識、金粒子、磁気標識、電気的な読出し情報、密度信号など)を含んでいる。ある実施形態では、検出可能な標識は蛍光標識である。蛍光標識は、蛍光検出器によって検出可能に標識が付された部分である。例えば、蛍光標識の対象となる分析物への結合によって、対象となる分析物が蛍光検出器によって検出され得る。蛍光標識の例として、限定されないが、試薬と接すると蛍光を発する蛍光分子、電磁放射線(例えば紫外線、可視光線、X線など)が照射されると蛍光を発する蛍光分子などが含まれる。
【0058】
適切な蛍光分子(フルオロフォア)は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインのスクシンイミジルエステル、フルオレセインジクロロトリアジンの5異性体、ケージ化カルボキシフルオレセイン−アラニン−カルボキサミド、Oregon Green 488、Oregon Green 514、ルシファーイエロー、アクリジンオレンジ、ローダミン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、ヨウ化プロピジウム、JC-1(5,5',6,6'−テトラクロロ−1,1',3,3'−テトラエチルベンズイミダゾイルカルボシアニンヨウ化物)、テトラブロモローダミン123 、ローダミン6G、TMRM(テトラメチルローダミンメチルエステル)、TMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)、テトラメチルローザミン、ローダミンB及び4−ジメチルアミノテトラメチルローザミン、緑色蛍光タンパク質、ブルーシフト緑色蛍光タンパク質、シアンシフト緑色蛍光タンパク質、レッドシフト緑色蛍光タンパク質、イエローシフト緑色蛍光タンパク質、4-アセトアミド-4'-イソチオシアナトスチルベンゼン-2,2'ジスルホン酸;アクリジン及び誘導体、例えばアクリジン、アクリジンイソチオシアネート;5-(2'- アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸)(EDANS );4-アミノ-N-[3-ビニルスルホニルフェニル]ナフト−アリミド-3,5ジスルホン酸塩;N-(4-アニリノ-1-ナフチル)マレイミド;アントラニルアミド;4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4aジアザ-5-インダセン-3-プロピオン酸BODIPY;カスケードブルー;ブリリアントイエロー;クマリン及び誘導体:クマリン、7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC 、クマリン120 )、7-アミノ-4- トリフルオロメチルクマリン(クマリン151 );シアニン色素;シアノシン;4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI);5',5"-ジブロモピロガロール−スルホナフタレン(ブロモピロガロールレッド);7-ジエチルアミノ-3- (4'- イソチオシアナトフェニル)-4- メチルクマリン;ジエチレントリアミン5酢酸塩;4,4'-ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン-2,2'-ジスルホン酸;4,4'- ジイソチオシアナトスチルベンゼン-2,2'-ジスルホン酸;5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1- スルホニルクロリド(DNS 、ダンシルクロリド);4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-イソチオシアネート(DABITC);エオシン及び誘導体:エオシン、エオシンイソチオシアネート、エリトロシン及び誘導体:エリトロシンB、エリトロシン、イソチオシアネート;エチジウム;フルオレセイン及び誘導体:5-カルボキシフルオレセイン(FAM )、5-(4,6-ジクロロトリアジン-2- イル)アミノ−フルオレセイン(DTAF)、2',7' ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6- カルボキシフルオレセイン(JOE )、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、QFITC 、(XRITC );フルオレサミン;IR144;IR1446;マラカイトグリーンイソチオシアネート;4-メチルウンベリフェロンオルトクレゾールフタレイン;ニトロチロシン;パラローザニリン;フェノールレッド;B−フィコエリトリン;o−フタルジアルデヒド;ピレン及び誘導体:ピレン、酪酸ピレン、スクシンイミジル1-ピレン;ブチラート量子ドット;リアクティブレッド4(チバクロン(商標)ブリリアントレッド3B-A)ローダミン及び誘導体:6-カルボキシ−X−ローダミン(ROX )、6-カルボキシローダミン(R6G )、リサミンローダミンBスルホニルクロリドローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123 、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101 、スルホローダミン101 のスルホニルクロリド誘導体(テキサスレッド);N,N,N',N'-テトラメチル-6- カルボキシローダミン(TAMRA );テトラメチルローダミン;テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC );リボフラビン;5-(2'- アミノエチル)アミノナフタリン-1- スルホン酸(EDANS )、4-(4'- ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、ロゾール酸;CAL Fluor Orange 560;テルビウムキレート誘導体;Cy3 ;Cy5 ;Cy5.5 ;Cy7 ;IRD700;IRD800;ラホヤブルー(La Jolla Blue );フタロシアニン;及びナフタロシアニン、クマリン及び関連色素、キサンテン色素、例えばロドール、レソルフィン、ビマン、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、アミノフタルヒドラジド、例えばルミノール、及びイソルミノール誘導体、アミノフタルイミド、アミノナフタルイミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、蛍光ユーロピウム及びテルビウム錯体;これらの組合せなどを含むが、これらに限定されない。適切な蛍光タンパク質及び発色性タンパク質として、緑色蛍光タンパク質(GFP )が含まれるが、これに限定されず、緑色蛍光タンパク質として、オワンクラゲに由来するGFP 又はその誘導体、例えば増強GFP などの「ヒト化」誘導体;ウミシイタケ、レニラムレリ(Renilla mulleri)、オレンジシーペン(Ptilosarcus guernyi)などの別の種からのGFP ;「ヒト化」組み換えGFP (hrGFP );花虫類種からの様々な蛍光タンパク質及び着色タンパク質のいずれか;これらの組合せ;などが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
ある実施形態では、本方法は、マイクロ流体デバイス内に流体試料を導入する工程を有する。マイクロ流体デバイス内に流体試料を導入する工程は、分離媒体を通して流体試料を導いて分離した試料を生成する工程を有してもよい。場合によっては、分離した試料は、上述したように、試料が分離媒体を横切るときにゲル電気泳動によって生成される。分離した試料は、分析物の異なる検出可能なバンドを含んでもよく、各バンドは、行われるゲル電気泳動の種類に応じて分子量、サイズ、電荷(例えば、電荷対質量比)、等電点等の略同様の特性を有する1以上の分析物を含む。
【0060】
ある実施形態では、本方法は、試料中の分析物の一重(uniplex )分析を含む。「一重分析」とは、試料中の1つの分析物の存在を検出するために試料が分析されることを意味する。例えば、試料は、対象となる分析物と対象とならない他の分子要素との混合物を含み得る。場合によっては、本方法は、試料混合物中の対象となる分析物の存在を判定するための試料の一重分析を含む。
【0061】
ある実施形態は、試料中の2以上の分析物の多重(multiplex )分析を含む。「多重分析」とは、2以上の分析物が互いに異なる2以上の別個の分析物の存在が判定されることを意味する。例えば、分析物は、分析物の分子量、サイズ、電荷(例えば、質量対電荷比)、等電点等における検出可能な差異を含み得る。場合によっては、分析物の数は、2より多くの、例えば、4以上、6以上、8以上等、最高20以上、例えば100以上を含む50以上の別個の分析物である。ある実施形態では、本方法は、2〜100の別個の分析物、例えば4〜20の別個の分析物を含む4〜50の別個の分析物の多重分析を含む。
【0062】
ある実施形態では、試料中の分析物を検出する方法は自動化された方法である。そのため、本方法は、マイクロ流体デバイス内に試料を導入した後、ユーザとマイクロ流体デバイス及びシステムとのやり取りを最小限度に抑え得る。例えば、分離媒体を通して試料を導き、分離した試料を生成する工程は、マイクロ流体デバイス及びシステムによって行われ、ユーザがこれらの工程を手動で行う必要がない。場合によっては、自動化された方法により、全アッセイ時間が短縮され得る。例えば、試料中の分析物の分離及び検出を含む本方法の実施形態は、30分以内、例えば15分以内、10分以内、5分以内、2分以内、又は1分以内を含む20分以内に行われ得る。
【0063】
マイクロ流体デバイス
本開示のマイクロ流体デバイスは、本明細書に記載されている方法によって生成された分離媒体を含んでいる。場合によっては、本マイクロ流体デバイスは、一又は複数のマイクロチャネル及び/又はマイクロチャンバを備えているマイクロ流体デバイスである。ある実施形態では、マイクロチャネルは分離媒体を含んでいる。分離媒体は、本明細書に記載されているような異なる密度(例えば多孔度)の一又は複数の領域を有することが可能である。例えば、分離媒体は、孔径がマイクロチャネルの一部分から別の部分に向けて変化する、例えば増加又は減少するように、マイクロチャネルの長さに沿った孔径勾配を含んでもよい。場合によっては、孔径がマイクロチャネルの長さに沿って線形的に変わるように、勾配は線形である。
【0064】
所与のマイクロチャネルの長さ(つまり、孔径勾配を有する分離媒体によって占める所与のマイクロチャネルの長さ)は異なってもよい。場合によっては、マイクロチャネルの長さがマイクロチャネルの幅より長いように、マイクロチャネルは細長いマイクロチャネルである。例えば、マイクロチャネルの長さ対幅の比率は、5:1以上、10:1以上、20:1以上、50:1以上、75:1以上、100 :1以上、250 :1以上、500 :1以上、750 :1以上、又は1000:1以上であってもよい。場合によっては、マイクロチャネルの長さは、5mm以上、例えば7.5 mm以上、10mm以上のような2mm以上である。ある実施形態では、所与のマイクロチャネルの長さは、5〜7mmを含む3〜10mmのような2〜15mmの範囲内であってもよい。ある実施形態では、マイクロ流体チャネルの幅は、10μm 〜200 μm を含む5μm 〜300 μm のような1μm 〜500 μm の範囲内であり、例えば50μm 〜150 μm の範囲内である。場合によっては、マイクロ流体チャネルの幅は100 μm である。ある実施形態では、マイクロ流体チャネルの深さは、10μm 〜50μm を含む5μm 〜100 μm のような1μm 〜200 μm の範囲内である。場合によっては、マイクロ流体チャネルの深さは25μm である。
【0065】
ある実施形態では、分離媒体は、異なる密度(例えば異なる多孔度)の2以上の領域を有する。例えば、分離媒体は、第1の密度(例えば多孔度)の第1の領域と、第1の領域とは異なる第2の密度(例えば多孔度)の第2の領域とを有してもよい。ある実施形態では、分離媒体は、同一の領域内に異なる密度(例えば多孔度)の領域を有する。例えば、分離媒体は、密度(例えば多孔度)が同一の領域内で変わる領域、例えば密度(例えば多孔度)が領域に亘って徐々に変わる領域を有してもよい。例えば、分離媒体は、低密度領域及び高密度領域を有してもよく、低密度領域から高密度領域に向けて密度が増加する。場合によっては、密度勾配は、勾配の密度が低密度領域から高密度領域に向けて線形的に増加するような線形勾配である。
【0066】
図9Aは、異なる密度勾配、例えば50%の勾配、60%の勾配、70%の勾配、80%の勾配、90%の勾配及び勾配無しの様々な分離媒体を示す概略図である。
図9Bは、本明細書に開示されている本方法に従って生成された様々な分離媒体の勾配の対応する蛍光画像を示す図である。
図9Bにおける分離媒体は、分離ゲルに取り込まれたポリアクリルアミドの量を示すために蛍光検出器を使用して視覚化された蛍光モノマーを含有した。
図9Cは、本明細書に開示されている本方法を使用して生成された勾配分離媒体に関する分離チャネルでの位置(画素)に対する相対蛍光単位(RFU )の蛍光画像(上)及び対応するグラフ(下)を示す図である。
【0067】
図10A は、本明細書に開示されている本方法に従って生成された勾配分離媒体の経時的な一連の蛍光画像を示す図である。試料の蛍光タンパク質を勾配ゲルに流して経時的にモニタリングした。
図10B は、試料の蛍光タンパク質に関する、時間(秒)に対する対応する位置(mm)のグラフ(
図10B の上)、及び時間(秒)に対する速度(μm/s )のグラフ(
図10B の下)を示す。
図10C は、レーザ印刷されたグレースケールフォトマスクからの分離媒体のピクシレーションを示す、蛍光タンパク質のバンドを示す拡大図である。
【0068】
あらゆる便利な分離媒体をマイクロ流体デバイスに使用してもよい。ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、ポリマーゲル等のポリマーを含んでいる。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に好適なゲルであってもよい。ポリマーゲルは、限定されないが、ポリアクリルアミドゲル(例えばメタクリルアミドゲル)、アガロースゲル等を含んでもよい。従って、ポリマーゲルは、アクリレートポリマー、アルキルアクリレートポリマー、アルキルアルキルアクリレートポリマー、そのコポリマー等の適切なポリマーを含んでもよい。あらゆる便利な架橋剤を使用してもよく、対象の架橋剤はビス−アクリルアミドなどを含むが、これらに限定されない。
【0069】
分離媒体の分解能は、限定されないが、孔径、全ポリマー含有量(例えば、総アクリルアミド含有量)、架橋剤の濃度、印加される電場、アッセイ時間等の種々の要因により決められてもよい。例えば、分離媒体の分解能は、分離媒体の孔径により決められてもよい。場合によっては、孔径は、分離媒体の全ポリマー含有量及び/又は分離媒体中の架橋剤の濃度により決められる。ある場合には、分離媒体は、50,000Da以下、25,000Da以下、又は10,000Da以下、例えば5,000 Da以下、2,000 Da以下、又は1,000 Da以下を含む7,000 Da以下、例えば500 Da以下、又は100 Da以下の分子量の差を有する分析物を分解するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、1%〜20%、例えば5%〜10%を含む3%〜15%の範囲の総アクリルアミド含有量T(T=アクリルアミド及びビスアクリルアミドモノマーの総濃度)を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。
【0070】
場合によっては、分離媒体の多孔度は、重合前にマイクロチャネルに存在するモノマーの濃度(%T)を単位として記載されてもよい。場合によっては、重合前のマイクロチャネル内のモノマーの濃度は、5%T〜25%Tを含む2%T〜40%Tのような1%T〜50%Tの範囲内であってもよい。
【0071】
ある実施形態では、分離媒体は前駆体部分から生成されるように構成されている。例えば、分離媒体はゲル前駆体(例えば、ポリアクリルアミドゲルモノマーのようなポリアクリルアミドゲル前駆体)から生成されたゲル(例えばポリアクリルアミドゲル)であってもよい。前駆体部分は、分離媒体を生成すべく反応するように構成されてもよい。例えば、ゲル前駆体はポリアクリルアミドゲル分離媒体を生成すべく互いに反応するように構成されてもよい。限定されないが化学活性化、光活性化などのあらゆる適切なプロトコルによって、ゲル前駆体の反応を活性化してもよい。ある実施形態では、ゲル前駆体は、例えば、限定されないが過酸化物のような活性剤とゲル前駆体を接触させることにより化学的に活性化されるように構成されている。ある実施形態では、ゲル前駆体は、光により、例えばゲル前駆体を光に曝すことにより活性化される(つまり、光活性化される)ように構成されている。光は、分離媒体の生成を活性化するのに適切なあらゆる波長であってもよく、場合によっては、可視スペクトル内の青色光に関連する波長を有してもよい。例えば、分離媒体の生成を活性化するために使用される光の波長は、400 nm〜500 nmの範囲内であってもよく、例えば420 nm〜480 nm、430 nm〜480 nm、440 nm〜480 nm、450 nm〜480 nm、460 nm〜480 nm又は465 nm〜475 nmを含む410 nm〜490 nmの範囲内であってもよい。ある場合には、分離媒体の生成を活性化するために使用される光の波長は465 〜475 nmの範囲内である。場合によっては、分離媒体の生成を活性化するために使用される光の波長は470 nmである。
【0072】
分離媒体の多孔度は、モノマー前駆体の濃度、架橋剤の濃度、開始剤の濃度、前駆体溶液に達する光の強度などの様々な要因により決められてもよい。ある実施形態では、分離媒体の多孔度(例えば密度)は、分離媒体前駆体溶液に達する光の強度により決められる。分離媒体の多孔度(例えば密度)は、例えば
図8Aに示されているように、生じた分離媒体の剛性を応力レオメータを用いて決定することにより測定され得る。様々な分離ゲルを異なる紫外線の強度(例えば37、30、25、20mW/cm
2)でグレースケールマスクなしで生成して、異なる強度の光に分離媒体前駆体溶液を曝すことにより、異なる剛性のゲルを生成するか否かを試験した。
図8Bは、異なる強度の紫外線で生成された分離媒体に関するレオメータ剛性試験の角周波数(rad/s )に対する弾性率(Pa)を示すグラフである。
図8Bに示されているように、弾性率はより高い紫外線の強度でより大きかった。
図8Cは、紫外線の強度(mW)に対する5rad/s (Pa)での弾性率を示すグラフである。
図8Cに示されているように、5rad/s での弾性率は、紫外線の強度が増加するにつれて線形的に増加した。
図8A〜8Cは、異なる強度の光に前駆体溶液の異なる領域を曝すことにより、空間的に変わる分離媒体が生成され得ることを示した。
【0073】
ある実施形態では、分離媒体前駆体溶液、ひいては生じた分離媒体は均質な組成を有する。例えば、モノマー濃度(%T)が分離媒体前駆体溶液に亘って実質的に増加又は減少しないように、分離媒体前駆体溶液中のモノマーの濃度は、分離媒体前駆体溶液に亘って実質的に同一であってもよい。場合によっては、実質的に均質な前駆体溶液から生成された分離媒体の多孔度は、分離媒体の生成を開始させるために前駆体溶液に達する光の強度によって決まる。本明細書に記載されているように、前駆体溶液に達する光の強度は、本明細書に記載されているようなグレースケールマスクを用いて調節されてもよい。
【0074】
ある実施形態では、前駆体溶液は架橋剤を更に含んでもよい。架橋剤の濃度(%C)は、分離媒体前駆体溶液に亘って実質的に一定であるように前駆体溶液に亘って均質であってもよく、例えば2〜10%のような1〜15%の範囲内であってもよい。場合によっては、実質的に均質な前駆体溶液から生成された分離媒体の多孔度は、分離媒体の生成を開始させるために前駆体溶液に達する光の強度によって決まる。本明細書に記載されているように、前駆体溶液に達する光の強度は、本明細書に記載されているようなグレースケールマスクを用いて調節されてもよい。
【0075】
ある実施形態では、分離媒体前駆体溶液は重合開始剤を含んでいる。重合開始剤は、分離媒体前駆体モノマーの分離媒体への重合を促進するように構成されてもよい。場合によっては、重合開始剤は、活性剤に曝されると前駆体モノマーの重合を開始させるための化学的に活性化される開始剤である。場合によっては、重合開始剤は、光に曝されると前駆体モノマーの重合を開始させるための光活性化される開始剤(例えば光開始剤)である。ある実施形態では、重合開始剤は、リボフラビン、過硫酸アンモニウム(APS )、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED )、及びこれらの組合せなどの内の1又は複数から選択される。
【0076】
本開示の実施形態では、支持体に関連付けられた独立の分離媒体が含まれている。「独立の」とは、分離媒体が基板の表面に配置されているように支持体に関連付けられていることを意味する。例えば分離媒体は、分離媒体の底面のみが支持体の表面に接するように支持体の表面に配置されてもよい。このような場合、分離媒体の側部(例えば分離媒体の底部から上方に延びる分離媒体の側部)は支持体に接しなくてもよく、設けられている場合には周囲のチャンバ又はチャネル(例えばマイクロ流体チャンバ又はマイクロチャネル)に接しなくてもよい。同様に、分離媒体の上面は支持体に接しなくてもよく、設けられている場合には周囲のチャンバ又はチャネル(例えばマイクロ流体チャンバ又はマイクロチャネル)に接しなくてもよい。場合によっては、独立の分離媒体は、支持体の表面に配置され、周囲環境に囲まれてもよい。他の場合には、独立の分離媒体は、支持体の表面に配置され、独立の分離媒体が環境チャンバの内部にある環境に囲まれているように環境チャンバの内部に配置されてもよい。例えば、環境チャンバは、湿度が周囲条件より高い環境(例えば分析環境)を含んでもよい。湿度がより高い分析環境により、分離媒体からの液体(例えば緩衝液など)の蒸発の低下を容易にすることができる。
【0077】
分離媒体は、試料中の分析物を互いに分離するように構成され得る。場合によっては、分離媒体は、分析物の物理的特性に基づいて試料中の分析物を分離するように構成されている。例えば、分離媒体は、分析物の分子量、サイズ、電荷(例えば、電荷対質量比)、等電点等に基づいて試料中の分析物を分離するように構成され得る。ある場合には、分離媒体は、分析物の分子量に基づいて試料中の分析物を分離するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、分析物の等電点(例えば、等電点フォーカシング)に基づいて試料中の分析物を分離するように構成されている。分離媒体は、試料中の分析物を分析物の異なる検出可能なバンドに分離するように構成されてもよい。「バンド」とは、分析物の濃度が周囲の領域より著しく高い異なる検出可能な領域を意味する。分析物の各バンドは一又は複数の分析物を含んでもよく、分析物の1つのバンド中の分析物は夫々、上述したように実質的に同様の物理的特性を有する。
【0078】
ある実施形態では、分離媒体は、試料が分離媒体を横切るときに試料中の分析物を分離するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、試料が分離媒体を通って流れるときに試料中の分析物を分離するように構成されている。ある実施形態では、分離媒体は、ポリマーゲル等のポリマーを含んでいる。ポリマーゲルは、ゲル電気泳動に好適なゲルであってもよい。ポリマーゲルは、限定されないが、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等を含んでもよい。分離媒体の分解能は、限定されないが、孔径、全ポリマー含有量(例えば、総アクリルアミド含有量)、架橋剤の濃度、印加される電場、アッセイ時間等の種々の要因により決められてもよい。例えば、分離媒体の分解能は、分離媒体の孔径により決められてもよい。場合によっては、孔径は、分離媒体の全ポリマー含有量及び/又は分離媒体中の架橋剤の濃度により決められる。場合によっては、分離媒体は、10,000Da以下、例えば5,000 Da以下、2,000 Da以下、又は1,000 Da以下を含む7,000 Da以下、例えば500 Da以下、又は100 Da以下の分子量の差を有する分析物を分解するように構成されている。場合によっては、分離媒体は、1%〜50%、例えば1%〜30%を含む1%〜40%の範囲内の総アクリルアミド含有量を有するポリアクリルアミドゲルを含んでもよい。分離媒体の長さは異なってもよく、場合によっては、分離媒体の長さは短く、0.5 〜10mmのような0.5 〜20mmであり、例えば0.5 〜5mm、例えば5mmである。
【0079】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、電場を発生するように構成されている1以上の電場発生器を備えている。電場発生器は、分離媒体に電場を印加するように構成されてもよい。電場発生器は、マイクロ流体デバイスの種々の媒体を通して試料中の分析物及び部分を動電的に運ぶように構成されてもよい。場合によっては、電場発生器は、マイクロ流体デバイスに配置される等、マイクロ流体デバイスの近傍にあってもよい。場合によっては、電場発生器は、マイクロ流体デバイスから離れて配置されている。例えば、電場発生器は、以下により詳細に記載されているように、分析物を検出するためのシステム内に組み込まれてもよい。場合によっては、電場は、500V以下の電圧を有し、例えば400V以下、300V以下、200V以下、100V以下、例えば25 V以下、15 V以下、10 V以下を含む50 V以下の電圧を有する。
【0080】
ある実施形態では、分離媒体は緩衝液を含んでいる。緩衝液は、ゲル電気泳動に使用されるあらゆる便利な緩衝液であってもよい。ある実施形態では、緩衝液はトリス緩衝液である。ある実施形態では、分離媒体は、トリス−グリシン緩衝液等の緩衝液を含んでいる。例えば、緩衝液は、トリス及びグリシンの混合物を含んでもよい。
【0081】
場合によっては、緩衝液は界面活性剤を含んでいる。ある場合には、界面活性剤は、試料中の分析物に略同様の電荷対質量比をもたらすように構成されている。略同様の電荷対質量比を有する分析物により、試料中の分析物の分子量に基づく、分析物の1以上のバンドへの分離媒体における分離を容易にすることができる。ある場合には、界面活性剤は、試料中の分析物に負の電荷等の電荷を与えるように構成されている陰イオン界面活性剤である。例えば、界面活性剤は、限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の陰イオン界面活性剤であってもよい。
【0082】
マイクロ流体デバイスの態様は、マイクロ流体デバイスが試料を流れ場にさらすように構成されている実施形態を含んでいる。「流れ場」とは、要素が略同一の方向に領域を横切る領域を意味する。例えば、流れ場は、移動性の要素が媒体を通って略同一の方向に移動する領域を含んでもよい。流れ場は、分離媒体、充填媒体等の媒体を含んでもよく、緩衝液、分析物、試薬等の要素が媒体を通って略同一の方向に移動する。流れ場は、印加される電場、圧力差、電気浸透等によって導かれてもよい。ある実施形態では、流れ場の方向が異なってもよい。例えば、流れ場は、分離媒体の方向軸に揃えられてもよい。流れ場は、分離媒体を含む細長い流路を通して試料又は成分(例えば分析物)を導くように構成されてもよい。
【0083】
支持体の実施形態では、支持体は、マイクロ流体デバイスと、マイクロ流体デバイスに使用される試料、緩衝液、試薬等とに適合するあらゆる好適な材料から作製されてもよい。場合によっては、支持体は、主題のマイクロ流体デバイス及び方法に使用される試料、緩衝液、試薬等に対して不活性な(例えば、劣化しないか又は反応しない)材料から作製されている。例えば、支持体は、限定されないが、ガラス、石英、ポリマー、エラストマー、紙、これらの組み合わせ等の材料から作製されてもよい。
【0084】
場合によっては、マイクロ流体デバイスは、分離媒体に関連付けられた試料充填要素を備えている。試料充填要素は、試料がマイクロ流体デバイス内に導入され得るように構成されてもよい。試料充填要素は、分離媒体と流体連通してもよい。場合によっては、試料充填要素は、分離媒体の上流端部と流体連通する。試料充填要素は、流体が試料充填要素から流出するのを防止するような構造を更に含んでもよい。例えば、試料充填要素は、試料及び/又は緩衝液を含む流体が試料充填要素から流出するのを実質的に防止するように構成されている一又は複数の壁を含んでもよい。場合によっては、試料充填要素は、分離媒体内にウェルとして構成されてもよい。
【0085】
場合によっては、マイクロ流体デバイスは、分離媒体を含む細長い流路を備えてもよい。細長い流路の幅は、1mm以下であってもよく、例えば250 μm 以下、200 μm 以下、150 μm 以下、100 μm 以下、75μm 以下、50μm 以下、40μm 以下、30μm 以下、20μm 以下又は10μm 以下を含む500 μm 以下であってもよい。場合によっては、分離媒体を含む細長い流路の幅は70μm である。場合によっては、分離媒体を含む細長い流路の長さは、0.5 mm〜50mmの範囲内であり、例えば1mm〜20mm又は5mm〜15mmを含む0.5 mm〜25mmの範囲内である。ある実施形態では、分離媒体を含む細長い流路の長さは10mmである。場合によっては、分離媒体を含む細長い流路の深さは、100 μm 以下であり、例えば50μm 以下、25μm 以下、20μm 以下、15μm 以下、10μm 以下又は5μm 以下を含む75μm 以下である。場合によっては、分離媒体を含む細長い流路の深さは10μm である。分離媒体自体の寸法は、上記に記載した幅、長さ及び深さと同様であってもよい。
【0086】
マイクロ流体デバイスの態様は、上述したような分離媒体を夫々含む2以上の細長い流路が設けられている実施形態を更に含む。2以上の細長い流路は、マイクロ流体デバイスに平行に又は列をなして配置されてもよい。例えば、2以上の細長い流路が平行に配置されてもよく、ある実施形態では、このため、2以上の試料を同時に分析することを容易にすることができる。マイクロ流体デバイスは、2以上、例えば8以上、12以上、16以上、20以上、24以上、36以上、54以上又は100 以上を含む4以上の平行に配置された細長い流路を備えてもよい。場合によっては、2以上の細長い流路は列をなして配置されてもよい。例えば、マイクロ流体デバイスは、列をなして配置された第1の細長い流路及び第2の細長い流路を備えてもよい。マイクロ流体デバイスは、2以上、例えば8以上、12以上、16以上、20以上、24以上、36以上、54以上又は100 以上を含む4以上の平行に配置された細長い流路を備えてもよい。ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、列をなして且つ平行に配置された複数の細長い流路を備えている。場合によっては、細長い流路を平行に且つ列をなして配置することにより、細長い流路のアレイが設けられ、従ってマイクロ流体デバイスに列をなして且つ平行に配置された分離媒体のアレイが設けられる。
【0087】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスの幅は、10cm〜1mmの範囲内であり、例えば1cm〜5mmを含む5cm〜5mmの範囲内である。場合によっては、マイクロ流体デバイスの長さは、100 cm〜1mmの範囲内であり、例えば10cm〜5mm又は1cm〜5mmを含む50cm〜1mmの範囲内である。ある態様では、マイクロ流体デバイスの面積は、1000cm
2 以下、例えば50cm
2 以下を含む100 cm
2 以下、例えば10cm
2 以下、5cm
2 以下、3cm
2 以下、1cm
2 以下、0.5 cm
2 以下、0.25cm
2 以下、又は0.1 cm
2 以下である。
【0088】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは略透明である。「透明」とは、ある物質が、その物質に可視光を透過させることを意味する。ある実施形態では、透明なマイクロ流体デバイスは、分離媒体内の分析物、例えば、蛍光標識等の検出可能な標識を含む分析物の検出を容易にする。場合によっては、マイクロ流体デバイスは略不透明である。「不透明」とは、ある物質が、その物質に可視光を透過させないことを意味する。場合によっては、不透明なマイクロ流体デバイスは、光の存在下で反応するか又は劣化する分析物等の、感光性の分析物の分析を容易にし得る。
【0089】
マイクロ流体デバイス、マイクロ流体デバイスのための分離媒体、及びマイクロ流体デバイスを使用する方法に関する更なる態様は、米国特許出願公開第2012/0329040 号明細書に記載されており、その開示内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0090】
システム
本開示の態様は、本明細書に記載されている分離媒体を生成するためのシステムを含んでいる。場合によっては、本システムは、分離媒体前駆体溶液を含むように構成されている支持体と、半透明な領域を有するフォトマスクと、フォトマスクを通して光源からの光を分離媒体前駆体溶液に導くように構成されている光源とを備えている。
【0091】
ある実施形態では、フォトマスクは、本明細書に記載されているように異なる光透過率を有する2以上の領域を有している。場合によっては、本システムは、支持体及びフォトマスク間に光拡散体を備えている。他の実施形態では、本システムは、支持体及びフォトマスク間に光拡散体を備えていない。上述したように、場合によっては、光拡散体がフォトマスクと支持体(例えば支持体上のゲル前駆体溶液)との間に必要とされないように、フォトマスクは、グレースケールマスクを透過する光のピクシレーションを最小限度に抑えるように構成されている。
【0092】
ある実施形態では、支持体は、分離媒体前駆体溶液を含むように構成された支持体の表面にガスケットを含んでいる。ガスケットは、生じたゲルの形状を決定する型として構成されてもよい。場合によっては、型は、生じたゲルに空隙を生成するように、例えば生じたゲルに試料充填ウェルを生成するように構成された柱のような一又は複数の特徴を含んでいる。場合によっては、支持体は、分離媒体前駆体溶液を含むように構成されたマイクロチャネルを含んでいる。
【0093】
ある実施形態の態様は、試料中の分析物を検出するためのシステムを含む。場合によっては、本システムは、本明細書に記載されているようなマイクロ流体デバイスを備えている。本システムは、検出器を更に備えてもよい。場合によっては、検出器は、検出可能な標識を検出するように構成されている検出器である。上述したように、検出可能な標識は蛍光標識であってもよい。例えば、蛍光標識は、蛍光標識を励起して検出可能な電磁放射線(例えば、可視光線等)を蛍光標識に放出させる電磁放射線(例えば可視光線、紫外線、X線等)と接することが可能である。放出された電磁放射線は、分離媒体によって分離した試料中の分析物の存在を判定するために、適切な検出器によって検出され得る。
【0094】
場合によっては、検出器は、上述したように、蛍光標識からの放出を検出するように構成されてもよい。ある場合には、検出器は、光電子増倍管(PMT )、電荷結合素子(CCD )、増強電荷結合素子(ICCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサ、視覚比色読み出し情報、フォトダイオード等を含んでいる。
【0095】
本開示のシステムは、必要に応じて種々の他の構成要素を備えてもよい。例えば、本システムは、マイクロ流体処理要素等の流体処理要素を備えてもよい。流体処理要素は、1以上の流体をマイクロ流体デバイスに及び/又はマイクロ流体デバイスから導くように構成されてもよい。場合によっては、流体処理要素は、限定されないが、試料溶液、緩衝液(例えば、剥離緩衝液、洗浄緩衝液、電気泳動緩衝液等)などの流体を導くように構成されている。ある実施形態では、マイクロ流体処理要素は、流体が分離媒体(又は試料充填要素)に接するようにマイクロ流体デバイスの分離媒体(又は試料充填要素)に流体を運ぶように構成されている。流体処理要素はマイクロ流体ポンプを含んでもよい。場合によっては、マイクロ流体ポンプは、流体の圧力駆動によるマイクロ流体処理、並びに本明細書に開示されているマイクロ流体デバイス及びシステムへの及び/又は該マイクロ流体デバイス及びシステムからの流体の分配のために構成されている。ある場合には、マイクロ流体処理要素は、少量の流体、例えば1mL以下、例えば100 μL 以下を含む500 μL 以下、例えば50μL 以下、25μL 以下、10μL 以下、5μL 以下又は1μL 以下の流体を運ぶように構成されている。
【0096】
ある実施形態では、本システムは、1以上の電場発生器を備えている。電場発生器は、マイクロ流体デバイスの種々の領域に電場を印加するように構成されてもよい。本システムは、試料がマイクロ流体デバイスを通って動電的に運ばれるように、電場を印加するように構成されてもよい。例えば、電場発生器は、分離媒体に電場を印加するように構成されてもよい。場合によっては、印加される電場は、分離媒体の分離流路の方向軸と揃えられてもよい。そのため、印加される電場は、分離媒体を通して試料中の分析物及び部分を動電的に運ぶように構成されてもよい。場合によっては、印加される電場は、分離媒体によって分離され選択された分析物を動電的に運ぶように構成されている。分離媒体によって分離され選択された分析物は、分離媒体に適切な電場を所望の方向軸に沿って印加することにより、その後の分析のための第2の媒体(例えばブロッティング媒体)又は収集リザーバに運ばれてもよい。場合によっては、方向軸は、試料中の分析物の分離中に使用される分離媒体の方向軸に直交している。場合によっては、電場発生器は、10V/cm〜1000V/cm、例えば200 V/cm〜600 V/cmを含む100 V/cm〜800 V/cmの範囲内の強度で電場を印加するように構成されている。
【0097】
ある実施形態では、電場発生器は電圧調整要素を含んでいる。場合によっては、電圧調整要素は、印加される電場の強度が分離媒体に亘って略均一であるように、印加される電場の強度を制御するように構成されている。電圧調整要素は、試料中の分析物の分解能を増加させ得る。例えば、電圧調整要素は、分離媒体を通る試料の非均一的な移動を減少させ得る。更に、電圧調整要素は、分析物が分離媒体を横切るときに分析物のバンドの分散を最小限度に抑えることができる。
【0098】
ある実施形態では、主題のシステムは、バイオチップ(例えば、バイオセンサチップ)である。「バイオチップ」又は「バイオセンサチップ」とは、基板の表面に2以上の別個のマイクロ流体デバイスを有する基板表面を含んでいるマイクロ流体システムを意味する。ある実施形態では、マイクロ流体システムは、マイクロ流体デバイスのアレイを有する基板表面を備えている。
【0099】
「アレイ」は、アドレス可能な領域の任意の二次元的な又は実質的に二次元的な(及び三次元的な)配置、例えば空間的にアドレス可能な領域を含んでいる。アレイが、アレイの特定の所定の位置(例えば「アドレス」)に設けられた複数のデバイスを有するとき、アレイは「アドレス可能である」。アレイの特徴(例えば、デバイス)は、介在する空間によって分離されてもよい。任意の所与の基板が、基板の前面に配置された1、2、4、又はそれ以上のアレイを有してもよい。使用法に応じて、アレイのうちのいずれか又は全てが同一であってもよいか又は互いに異なってもよく、各々が、複数の異なるマイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体を有してもよい。
【0100】
アレイは、2以上、4以上、8以上、10以上、50以上、100 以上を含む1以上のマイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体を有してもよい。ある実施形態では、マイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体は、10cm
2 未満、5cm
2 未満、例えば50mm
2 未満、20mm
2 未満、10mm
2 未満を含む1cm
2 未満、若しくは更に小さい面積のアレイに配置され得る。例えば、マイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体の寸法は、100 mm×100 mm以下を含む10mm×10mm〜200 mm×200 mmの範囲内であってもよく、例えば50mm×50mm以下、例えば25mm×25mm以下、10mm×10mm以下、若しくは5mm×5mm以下、例えば1mm×1mm以下の範囲内であってもよい。
【0101】
マイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体のアレイは、試料の多重分析のために設けられてもよい。例えば、複数のマイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体は、複数の異なる試料が列をなして配置された異なるマイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体で同時に分析され得るように列をなして配置され得る。ある実施形態では、平行に配置された異なるマイクロ流体デバイス及び/又は分離媒体で2以上の試料を略同時に分析できるように、複数のマイクロ流体デバイスが平行に配置されてもよい。ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、分離媒体のアレイを与えるように同一のデバイス内に列をなして且つ平行に配置されてもよい。ある実施形態では、列をなして配置された分離媒体は、連続的なゲルモノリス(例えば本明細書に記載されているような連続的なポリマーゲルモノリス)から生成される。
図12は、12の連続的な分離媒体を列をなして夫々含む8つの平行なレーンの平面アレイに設けられた96の分離媒体を示す概略図である。
【0102】
ある実施形態では、分離媒体のアレイは分離媒体の放射状構成で配置されてもよい。分離媒体の放射状構成は、複数の細長い分離媒体を含むことが可能である。場合によっては、各分離媒体の一端部が中央のウェルと流体連通している。中央のウェルは分離媒体の放射状構成で分析される試料を含むように構成されてもよい。
図2Aは、中央のウェルと流体連通している一端部を夫々有する細長い分離媒体の放射状構成の画像を示す図である。
【0103】
本システムの態様は、マイクロ流体デバイスが、依然として検出可能な結果を与える一方で、最小量の試料を消費するように構成されてもよいことを含む。例えば、本システムは、依然として検出可能な結果を与える一方で、100 μL 以下、例えば50μL 以下、25μL 以下、又は10μL 以下を含む75μL 以下、例えば5μL 以下、2μL 以下又は1μL 以下の試料体積を使用するように構成されてもよい。ある実施形態では、本システムは、1nM以下、例えば100 pM以下を含む500 pM以下、例えば1pM以下、500 fM以下又は250 fM以下、例えば50fM以下、25fM以下又は10fM以下を含む100 fM以下の検出感度を有するように構成されている。場合によっては、本システムは、1μg/mL以下、例えば100 ng/mL 以下を含む500 ng/mL 以下、例えば10mg/mL 以下又は5ng/mL 以下、例えば1ng/mL 以下、0.1 ng/mL 以下又は1pg/mL 以下を含む0.01 ng/mL以下の濃度の分析物を検出することができるように構成されている。ある実施形態では、本システムは、10
-18 M〜10M、例えば10
-12 M〜10
-6Mを含む10
-15 M〜10
-3Mの範囲のダイナミックレンジを有する。
【0104】
場合によっては、本システムは、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100 以上、150 以上、200 以上、500 以上、1,000 以上、2,000 以上、3,000 以上、4,000 以上、5,000 以上、6,000 以上、7,000 以上、8,000 以上、9,000 以上又は10,000以上を含む15以上のような10以上の信号対雑音比(SNR )を有するように構成されている。場合によっては、達成可能な信号対雑音比は、アッセイで使用される検出の方法によって決まる。例えば、ある実施形態では、対象の分析物に、検出可能な標識が直接付される。このような実施形態では、信号対雑音比は、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100 以上、150 以上又は200 以上を含む15以上のような10以上であってもよい。他の実施形態では、対象の分析物にまず一次標識(例えば一次抗体)を付して、その後、一次標識に二次標識(例えば二次抗体)を付す。このような実施形態では、信号対雑音比は、200以上、500以上、1,000以上、2,000 以上、3,000 以上、4,000 以上、5,000 以上、6,000 以上、7,000 以上、8,000 以上、9,000 以上又は10,000以上を含む150 以上のような100 以上であってもよい。
【0105】
ある実施形態では、マイクロ流体デバイスは、1℃〜100 ℃、例えば10℃〜50℃を含む5℃〜75℃又は20℃〜40℃の範囲内の温度で作動される。場合によっては、マイクロ流体デバイスは、35℃〜40℃の範囲内の温度で作動される。
【0106】
有用性
ある実施形態では、本開示のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、例えば光重合されたポリアクリルアミドゲルのような光重合された分離媒体の生成に使用される。例えば、本開示のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、高処理の電気泳動分離に使用するための光重合された分離媒体(例えばポリアクリルアミドゲル)の生成に使用される。ある実施形態では、本開示のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、異なる重合度の領域を有する光重合された分離媒体(例えばポリアクリルアミドゲル)の生成を容易にする。例えば、本開示のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、異なる密度(例えば多孔度)の領域を有する光重合された分離媒体の生成を容易にする。場合によっては、本開示のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、光に一度曝して均質な分離媒体前駆体溶液(例えばポリアクリルアミドゲル前駆体溶液)から異なる重合度の領域を有する光重合された分離媒体を生成することを容易にする。
【0107】
主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、試料中の1以上の分析物の有無の判定及び/又は定量化が所望される様々な異なる用途に使用される。ある実施形態では、本方法は、試料中の核酸、タンパク質又は他の生体分子の検出を対象とする。本方法は、試料中の一組のバイオマーカ、例えば2以上の別個のタンパク質バイオマーカの検出を含んでもよい。例えば、本方法は、例えば対象の病態の診断、又は対象の病態の継続的な管理若しくは治療に用いられるように、生体試料中の2以上の疾患バイオマーカの迅速な臨床検出に使用されてもよい。更に、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、限定されないが、ウエスタンブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、イースタンブロット法、ファーウエスタンブロット法、サウスウエスタンブロット法等の、試料中の分析物の検出のためのプロトコルに使用され得る。
【0108】
ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、バイオマーカの検出に使用される。場合によっては、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、限定されないが、尿、血液、血清、血漿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、便、口腔粘膜採取検体、脳脊髄液、細胞溶解物試料、羊水、胃腸液、生検組織(例えばレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM )によって得られた試料)等の、血液、血漿、血清、又は他の体液若しくは排出物中の特定のバイオマーカの有無と、特定のバイオマーカの濃度の増減とを検出するために使用されてもよい。
【0109】
バイオマーカの有無、又はバイオマーカの濃度の著しい変化は、個人における疾患リスク、疾患の存在を診断するため、又は個人における疾患に対する治療を調整するために使用され得る。例えば、特定のバイオマーカ又はバイオマーカのパネルにより、個人に施される薬物治療又は投与計画の選択に影響を及ぼす可能性がある。薬物療法を評価する上で、バイオマーカは、生存又は不可逆的な疾病等の自然なエンドポイントの代わりとして使用されてもよい。治療によって、健康の改善と直接的な関連性を有するバイオマーカが変化する場合、バイオマーカは、特定の治療計画又は投与計画の臨床的な利点を評価するための代替エンドポイントとしての役割を果たすことができる。よって、個人で検出された特定のバイオマーカ又はバイオマーカのパネルに基づく個人に合わせた診断及び治療は、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法によって容易になる。更に、疾患に関連するバイオマーカの早期検出は、上述したように、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムの高い感度によって容易になる。感度、拡張性、及び使い易さと併せて、単一のチップで複数のバイオマーカを検出する能力により、本開示のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、携帯型のポイントオブケア診断又はベッドサイド分子診断に使用される。
【0110】
ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、疾患又は病態に関するバイオマーカの検出に使用される。場合によっては、疾患は、限定されないが、癌、腫瘍、乳頭腫、肉腫又は癌種などの細胞増殖性疾患である。場合によっては、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、創薬及びワクチン開発のための細胞シグナル伝達経路及び細胞内情報伝達機構の特徴付けに関するバイオマーカの検出に使用される。例えば、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、癌、腫瘍、乳頭腫、肉腫、癌種などの細胞増殖性疾患のような疾患を検出する際に使用される。場合によっては、癌又は細胞増殖性疾患の指示薬を検出するための、対象とする特定のバイオマーカは、前立腺癌バイオマーカである前立腺特異抗原(PSA );炎症の指示薬であるC反応性タンパク質;細胞周期及びアポトーシス制御を促進するP53 などの転写因子;光線性角化症及び扁平上皮癌の指示薬であるポリアミン濃度;増殖成長相にある細胞の核内に発現する細胞周期関連タンパク質である増殖性細胞核抗原(PCNA);IGF-I などの増殖因子;IGFBP-3 などの増殖因子結合タンパク質;遺伝子発現を調節する、長さが約21〜23のヌクレオチドの一本鎖RNA 分子であるマイクロRNA ;膵癌及び結腸癌のバイオマーカである炭水化物抗原CA19.9;サイクリン依存性キナーゼ;上皮増殖因子(EGF );血管内皮増殖因子(VEGF);タンパク質チロシンキナーゼ;エストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)の過剰発現;などを含むが、これらに限定されない。例えば、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、疾患試料、健康な試料及び良性試料中の、内因性前立腺特異抗原(PSA )の量を検出及び/又は定量化するために使用されてもよい。
【0111】
ある実施形態では、主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、感染症又は病態に関するバイオマーカの検出に使用される。場合によっては、バイオマーカは、限定されないが、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子等の分子バイオマーカであってもよい。例えば、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、HIV カプシドタンパク質p24 、糖タンパク質120 及び41、CD4+細胞などに抗体でセンサ表面を官能化することによって、HIV/AIDS診断及び/又は治療監視のためのHIVウイルス量及び患者のCD4 値を監視するために使用されてもよい。対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法によって検出されてもよい特定の疾患及び病態は、細菌感染、ウイルス感染、遺伝子発現の増加又は減少、染色体異常(例えば欠失若しくは挿入)などを含むが、これらに限定されない。例えば、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、無菌性髄膜炎、ボツリヌス中毒症、コレラ、大腸菌感染症、手足口病、ヘリコバクター感染症、出血性結膜炎、ヘルパンギーナ、心筋炎、パラチフス、ポリオ、細菌性赤痢、腸チフス、ビブリオ敗血症、ウイルス性下痢などの、但しこれらに限定されない胃腸感染症を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、アデノウイルス感染症、非定型肺炎、トリインフルエンザ、ブタインフルエンザ、腺ペスト、ジフテリア、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎菌性髄膜炎、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ、百日咳(pertussis 、すなわちwhooping chough )、肺炎、肺ペスト、呼吸器合包体ウイルス感染症、風疹、猩紅熱、敗血症性ペスト、重症急性呼吸器症候群(SARS)、結核などの、但しこれらに限定されない呼吸器感染症を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、クロイツフェルト・ヤコブ病、ウシ海綿状脳症(すなわち、狂牛病)、パーキンソン病、アルツハイマー病、狂犬病などの、但しこれらに限定されない神経疾患を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、AIDS、軟性下疳、クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、陰部ヘルペス、淋病、鼠径リンパ肉芽腫、非淋菌性尿道炎、梅毒などの、但しこれらに限定されない泌尿生殖器疾患を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎などの、但しこれらに限定されないウイルス性肝炎疾患を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、エボラ出血熱、腎症候性出血熱(HFRS)、ラッサ出血熱、マールブルグ出血熱などの、但しこれらに限定されない出血熱疾患を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、炭疽病、トリインフルエンザ、ブルセラ症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ウシ海綿状脳症(すなわち、狂牛病)、エンテロウイルス病原性大腸菌感染症、日本脳炎、レプトスピラ症,Q熱、狂犬病、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、但しこれらに限定されない動物原生感染症を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、デング出血熱、日本脳炎、ダニ媒介性脳炎、西ナイル熱、黄熱病などの、但しこれらに限定されないアルボウイルス感染症を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、アシネトバクター・バウマンニ、カンジダアルビカンス、腸球菌種、肺炎桿菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌など、但しこれらに限定されない抗生物質耐性菌感染症を検出するために使用されることが可能である。加えて、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、ネコ引っ掻き病、発疹熱、発疹チフス、ヒトエールリッヒ症、日本紅斑熱、シラミ媒介性回帰熱、ライム病、マラリア、塹壕熱、ツツガムシ病など、但しこれらに限定されない動物媒介性感染症を検出するために使用されることが可能である。同様に、対象のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、心血管疾患、中枢神経疾患、腎不全、糖尿病、自己免疫疾患、及びその他の多くの疾患を検出するために使用されることが可能である。
【0112】
主題のマイクロ流体デバイス、システム及び方法は、限定されないが、上述したようなバイオマーカの検出及び/又は定量化、無症候性の対象について一定間隔で試料を試験するスクリーニングアッセイ、バイオマーカの存在及び/又は量を、起こり得る疾患の経過を予測するために使用する予後アッセイ、異なる薬物治療に対する対象の反応を予測することができる層別化アッセイ、薬物治療の有効性をモニタリングする有効性アッセイなどの診断アッセイに使用される。
【0113】
主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は更に、検証アッセイにも使用される。例えば、検証アッセイは、疾患マーカが、様々な個体に亘って疾患の有無の信頼性が高い指標であることを検証するか又は確認するために使用されてもよい。主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法のアッセイ時間が短いことにより、最小の時間で複数の試料をスクリーニングするための処理量が増大し得る。
【0114】
場合によっては、主題のマイクロ流体デバイス、システム、及び方法は、実施のために実験室を必要とせずに使用され得る。同等の分析研究用の実験機器と比較して、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは、携帯型の手持ち式システムで同等の分析感度を有する。場合によっては、重量及び操作コストが典型的な固定型実験機器よりも低い。
【0115】
対象となる分析物の分離、移動、標識の付与、及び検出を含むアッセイの全ての工程を単一の装置によって行うことができるように、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは単一の装置に組み込まれてもよい。例えば、場合によっては、対象となる分析物の分離、移動、標識の付与、及び検出のために別個の装置は存在しない。更に、主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは、試料中の1以上の分析物を検出するために、医療訓練を受けていない人物によって、市販の家庭用検査のために家庭環境で用いられ得る。主題のマイクロ流体デバイス及びシステムは更に、臨床現場で、例えば、迅速な診断のためにベッドサイドで、又はコスト若しくは他の理由から固定型実験機器が設けられない現場で用いられてもよい。
【0116】
キット
本開示の態様は、本明細書に詳述されているようなマイクロ流体デバイスを備えているキットを更に含む。ある実施形態では、本キットは、マイクロ流体デバイスを含むように構成された包装体を備えている。包装体は、密閉された無菌の包装体のような密閉された包装体であってもよい。「無菌」とは、微生物(菌類、バクテリア、ウィルス、胞子形など)が実質的に存在しないことを意味する。場合によっては、包装体は密閉されるように構成されてもよく、例えば任意には気密及び/又は真空気密で耐水蒸気性の包装体であってもよい。
【0117】
ある実施形態では、本キットは緩衝液を備えている。例えば、本キットは、電気泳動緩衝液、試料緩衝液等の緩衝液を備えてもよい。本キットは、限定されないが、剥離剤、変性試薬、リフォールディング試薬、界面活性剤、検出可能な標識(例えば、蛍光標識、比色標識、化学発光標識、マルチカラー試薬、酵素結合試薬、アビジン−ストレプトアビジン関連検出試薬、放射標識、金粒子、磁気標識等)などの付加的な試薬を更に備えてもよい。
【0118】
上述した構成要素に加えて、主題のキットは、主題の方法を行うための使用説明書を更に備えてもよい。これらの使用説明書は、主題のキット内に様々な形態で備えられてもよく、使用説明書のうちの一又は複数がキット内に備えられてもよい。これらの使用説明書が備えられる一形態は、好適な媒体又は基板上に印刷された情報であり、例えば、情報が印刷されている一又は複数の紙片、キットの包装体、又は添付文書等である。別の手段は、情報が記録又は保存されているコンピュータ可読媒体であり、例えば、CD、DVD、ブルーレイ(登録商標)、コンピュータ可読メモリ(例えばフラッシュメモリ)等である。存在し得る更なる別の手段は、離れた場所で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用可能なウェブサイトアドレスである。あらゆる簡便な手段がキット内に設けられ得る。
【0119】
上記に提供した開示から明らかであるように、本発明の実施形態は、多様な用途を有する。従って、本明細書に提示されている実施例は、例示のために提供されているのであって、本発明に対する何らかの制限であるとみなされることを意図するものではない。当業者は、本質的に同様の結果をもたらすために変更又は修正されてもよい様々な重要ではないパラメータを容易に認識する。よって、以下の実施例は、本発明をどのように作製して使用するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されるのであって、本発明者が自身の発明であるとみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が、行われた全ての又は唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用された数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するために努力がなされたが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮に入れられるべきである。別途記載がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるか又は大気圧に近い圧力である。
【0120】
実施例
実施例1
タンパク質の測定アッセイを行うための複雑なラボオンチップデバイスを作製するためのグレースケールマスクの光パターニング処理を行って、特徴付けて試験すべく実験を行った。非均一なヒドロゲルは、調製機能及び分析機能の両方(例えば試料濃縮、高分解能な生体分子の分離、試料の固定/捕捉)を一体化するための手段を与える。
【0121】
レーザ印刷されたグレースケールマスクを介したヒドロゲルの光パターニングを使用して、60秒未満の1回の紫外線照射及びアクリルアミド前駆体溶液によって非均一な孔径の分散を制御して定めた。グレースケールの光パターニングを使用して、生体分析電気泳動ゲルを生成した。この処理によって、デバイスの設計から生成まで15分という短い所要時間が可能になった(例えば
図1A〜1C参照)。場合によっては、フォトマスク自体に印刷されたグレースケールドットパターンの解像度の限界が、約30〜80μmドットであった(
図1B)。光拡散体を紫外線の光路に含めた結果、約5%〜40%の線密度ゲル勾配の生成が可能になった。
【0122】
実施例2
2つの分析電気泳動デバイスを使用して実験を行った。第1のデバイスを使用して24plex電気泳動スクリーニングアッセイを行った(
図2A〜2D)。一度の注入により、ラボオンチップデバイスで24の別個のゲル条件下で試料をアッセイした。第2のデバイスを使用して、独立のポリアクリルアミドゲルプラットフォームで96plex勾配ゲルに基づくタンパク質サイジングアッセイを行った(
図3A〜3D)。
図12は、列をなして配置された12の勾配分離媒体の8つの平行なレーンのアレイを含んでいる96plex勾配ゲルに基づく分離デバイスを示す概略図である。各勾配分離ゲルの黒い四角は、試料充填ウェルを表している。
【0123】
24plex電気泳動スクリーニングアッセイを、共有の中央リザーバを有する24の放射状チャネルを含む小さな円形のチップ(米国の10セント硬貨の直径)を使用して行った。操作のために、一時的な等速電気泳動を使用して、中央リザーバから別個のゾーンとして24全ての放射状チャネルに試料を注入した。異なるゲル条件を作るために、グレースケールマスクを使用して6つの別個の領域のゲル密度を角度的に変えた(
図2C)。広範囲のタンパク質ラダーを24の放射状チャネルの各々に流した。60%〜0%の勾配ゲルを最適な分離条件として確認した。
【0124】
独立のポリアクリルアミドゲルを用いて、独立の96plex勾配ゲルに基づくタンパク質サイジングアッセイを行った。隣り合うレーンへの試料種の移動を防ぐために、非均一なゲル条件と孔径が減少したヒドロゲル勾配とを含む独立の96plexゲルアレイを生成した。この孔径が減少したヒドロゲル勾配によって、1つのデバイスにおける連続的であるが別個の分離レーンでの密に配置された分離ゲルが可能になった。本発明の非均一な孔径グレースケールフォトマスク作製法を使用して、独立の勾配ゲルの分離を用いた96plexタンパク質サイジング(非天然)アッセイを行った(
図3C)。タンパク質のピークは、4分の電気泳動で明瞭に消散した。勾配ゲルを用いると、15分の分離後であっても、隣り合うレーンからの汚染が観察されなかった。
【0125】
非均一なヒドロゲル密度、閉じたチャネル及び独立のヒドロゲルマイクロ流体の幾何学的構造を迅速に生成するための方法は、高処理プロテオミクスのための新しい分析ツールの開発及び最適化に使用される。
【0126】
実施例3
1mm以下の空間パターニングのためのクロムグレースケールの作製
短い長さスケール(例えば1mm以下)に亘って光を制御して弱めるためのグレースケールマスクを作製するために、小さな二値特徴(binary features )を有するマスクを用いて所望のUVパターンを生成した。クロムマスクを、グレースケール生成法(
図13参照)を使用して作製し、マスクの最大特徴を最小限度に抑えた(つまりマスクの最大の不透明な特徴を最小限度に抑えた)マスクを作製した。マスクの最大特徴を最小限度に抑えることにより、紫外線を弱める代わりにグレースケールマスクからのマイクロパターニング(つまりピクシレーション)の低下が容易になった。マスクの不透明な特徴はクロムを含んでいる。
【0127】
図13(上)は、本開示の実施形態に係る、0%〜25%のグレースケール、25%〜45%のグレースケール、45%〜75%のグレースケール及び75%〜100 %のグレースケールのグレースケールマスクの不透明な特徴のサイズを決定するための図及び付随する式を示す。
図13(下)は、5%〜95%の線形勾配グレースケールマスクの実施例を示す。0%より大きく25%に至るグレースケールでは、(X
min)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。25%〜45%のグレースケールでは、(X
array−X
min)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。45%〜75%のグレースケールでは、(X
array)
2−(X
varied)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。75%から100 %未満のグレースケールでは、(X
array)
2−(X
min)
2/(X
array)
2によりグレースケールが表される。X
variedは定められた一次関数であり、(0.45のグレースケールでの)X
variedは2×X
minであり、(0.75のグレースケールでの)X
variedはX
minである。更に、0より大きく1より小さいグレースケールではX
array=X
min+X
variedである。
【0128】
実施例4
1mmの空間パターニングのためのクロム線形勾配グレースケールマスクが
図14A に示されている。
図14A に示されているように、線形勾配は20%〜80%のグレースケールであった。
図14B (上)は、2倍対物レンズによって得られてマスクに焦点が合わされた2つの20%〜80%のグレースケールマスクの画像を示す図である。
図14B (下)は、10倍対物レンズによって得られてマスクに焦点が合わされた1つの20%〜80%のグレースケールマスクの画像を示す図である。
図14C (上)は、2倍対物レンズによって得られてマスクの上1mmに焦点が合わされた2つの20%〜80%のグレースケールマスクの画像を示す図である。
図14C (下)は、10倍対物レンズによって得られてマスクの上1mmに焦点が合わされた1つの20%〜80%のグレースケールマスクの画像を示す図である。マスクから1mmでのグレースケールマスクの小さな最大特徴サイズにより、光回折がマスクのマイクロパターンを除去し、なだらかに強度が弱められた勾配を生成した(
図14C 参照)。1mmの空間パターニングのためのこの線形勾配グレースケールマスクを使用して、単細胞分析のための勾配ゲルを生成してもよい。
【0129】
単細胞分析のためのグレースケールの作製機構
図15は、単細胞分析のためのグレースケールゲルを生成するための作製機構を示す概略図である。単細胞分析のためのグレースケールゲルを生成するための作製機構は、ロングパスフィルタ、グレースケールマスク、マイクロな特徴(例えばゲル内に試料充填ウェルを生成するための型の柱)を有する透明な型、及びメタクリル酸塩で処理されたガラススライドを備えた(
図15(上)参照)。ロングパスフィルタ(390 nmのカットオフ)を紫外線の光路に置いて、光パターニング中にベンゾフェノンの活性化を最小限度に抑えた。ゲル前駆体溶液は、ベンゾフェノンメタクリル酸塩、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド及び光開始剤(例えば、非ニトリルノニオンハロゲンフリーアゾ系開始剤であるVA086 、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド])を含有した。ゲル前駆体溶液は、透明な型とメタクリル酸塩で処理されたスライドとの間に限定された。(
図15の下に円で示されているようなウェルの位置を示す)型の柱を、グレースケールマスクに沿って所望の位置に並べて、その後、紫外線照射を制御した時間行った。
【0130】
実施例5
勾配ゲルの視覚化
ゲル密度を視覚化するために、アリルアミンを前駆体溶液にアクリルアミドに対して1:100 (mol :mol )の割合で加えた。その後、水中のフルオレセインイソチオシアネート(FITC;異性体I)又はテトラメチルローダミン(TRITC ;G異性体)にゲルを浸し、ゲル密度を決定するための代用物として機能するアリルアミンの第一アミンと反応させた。以下の画像は、FITCフルオロフォアを使用して1mmの勾配ゲルを実証したものである。
図16A は、ゲル密度の勾配を示す勾配ゲルの蛍光画像を示す。
図16B は、勾配ゲルに関する位置(画素)に対する相対蛍光単位(RFU )を示すグラフである。
図17A は、TRITC フルオロフォアによって視覚化されるような勾配ゲルのマイクロウェル内のU373-GFP発現細胞の画像を示す図である。
図17B は、距離(画素)に対するグレースケールの値を示す対応するグラフである。
【0131】
実施例6
勾配ゲルの特徴分析
均一なポリアクリルアミドゲルと比較するために、U373-GFP発現細胞を勾配ポリアクリルアミドゲル(PAG )に播いた。本明細書に記載されているように、25%T、3.3 %C及び27.5mW/cm
2の紫外線を110 秒使用して勾配ゲルを生成し、90%〜10%のグレースケール勾配PAG を生成した。均一なゲルを20%Tを使用して生成した。
【0132】
細胞を溶解して、GFP 移動をepi-蛍光撮像を用いて評価した。勾配ゲル中のGFP 種は、グレースケールでパターン化されたPAG の勾配性を示す非線形の移動を示した(
図18(左上)参照)。
図18(左上)は、上述した勾配PAG を通って移動する分析物の蛍光画像を示す。均一なPAG は線形移動を実証した(
図18(右上)参照)。
図18(右上)は、均一なPAG を通って移動する分析物の蛍光画像を示す。勾配ゲルに亘るゲルのサイズの変化を特徴付けるために、GFP 移動の空間及び時間の変化を均一なゲルで観察された速度と比較した。
図18(左下)は、上述した勾配PAG に関する時間(秒)に対する速度(μm/s )を示すグラフであり、
図18(右下)は、上述した勾配PAG に関する位置(μm )に対する速度(μm/s )を示すグラフである。点線は、示されているように均一なPAG に関する対応する値(%T)を示している。
【0133】
勾配ゲルは広範囲な速度を示し、最も速い速度は6%Tの均一なPAG での速度より速く、最も遅い速度は12%Tの均一なPAG での速度より遅い。
【0134】
実施例7
勾配PAG での単細胞ウエスタンブロット法
単細胞ウエスタンブロット法を、グレースケール光パターン化されたポリアクリルアミドゲル(PAG )を使用してSKBR3 細胞で行って、均一なゲルと比較した。フォトマスクパターンは、(ゲル中の積層領域を生成するために)300 μm の長さの均一な70%のグレースケール領域を含み、ゲル中の勾配ゲル分離領域を生成するために300 μm 〜1mmの長さの70%〜1%のグレースケール領域を含んだ(
図19A 参照)。145 秒の紫外線照射時間で12%Tの前駆体溶液を使用して勾配ゲルを生成した。勾配ゲルを、12%Tの化学的に重合された均一なポリアクリルアミドゲルと比較した。細胞をゲルに加えて、試料充填ウェルに細胞を置いた後、タンパク質の溶解(20秒)及び電気泳動(E=40Vcm
-1、25秒)を行った。紫外線によって開始したPAG 内の反応性ベンゾフェノン基への付着によって分析物を捕捉した。HER2及びERK に関してゲルを調べて、調べた結果を
図19B に示している。
図19B は、70%〜1%の勾配ゲルでの分析物の分離の蛍光画像を示す図である。グレースケールマスクを使用して生成された勾配ゲルは、均一なゲルと比較して分析物の分離が著しく改善されたことを示した。
図19C は、均一なゲルでの分析物の分離の蛍光画像を示す図である。
【0135】
上記の発明は、理解し易くするために例証及び例示としてある程度詳細に記載されているが、当業者には、本発明の教示に鑑みて、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正が行われてもよいことは容易に明らかである。本明細書に使用されている専門用語は、具体的な実施形態について説明するためだけのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定的であることを意図するものではないことも理解されたい。
【0136】
従って、前述の内容は本発明の本質を単に示しているに過ぎない。本明細書に明示的に説明されていないか又は示されていないが、本発明の本質を具体化して本発明の趣旨及び範囲に含まれる様々な構成を当業者が考案することが可能であることは明らかである。更に、本明細書に述べられている全ての例及び条件的な用語は、本発明の本質と、本技術分野を進展させるために本発明者により与えられた概念とを理解する際に読者を支援することを本質的に意図するものであり、このように具体的に述べられた例及び条件に限定するものではないと解釈されるべきである。更に、本発明の本質、態様及び実施形態だけでなく、本発明の具体的な例を述べている本明細書における全ての記載は、本発明の構造的且つ機能的な等価物の両方を含むことを意図するものである。加えて、このような均等物は、現時点で既知の均等物及び今後開発される均等物の両方、すなわち構造に関わらず同一の機能を有する開発された全ての要素を含むことを意図するものである。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され説明された例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲により具体化される。
【0137】
本出願は、米国特許法第119 条(e) に従って、2013年9月24日に出願された米国仮特許出願第61/881879号明細書の出願日の優先権を主張しており、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0138】
政府支援に関する言及
本発明は、全米科学財団によって与えられた認可番号1056035 に基づき政府の支援を受けてなされた。政府は本発明の特定の権利を有している。