(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、低温衝撃強度又は低温切欠き衝撃強度、耐薬品性及び屋外耐候性、及び老化特性及び難燃性に関して良好な特性を有することが知られている。これらの特性に関して、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、従来のポリカーボネート(ビスフェノールAを基剤とするホモポリカーボネート)より優れている場合もある。
【0003】
これらの共縮合物の工業的製造は、モノマーから、通常ホスゲンとの界面方法により、出発する。これらの、ジフェニルカーボネートを使用するメルトエステル交換反応方法による、シロキサン共縮合物の製造も公知である。しかし、これらの方法には、そのために使用する工業プラントが、標準的なポリカーボネートの製造に使用され、従って、プラントサイズが大きいという不利な点がある。これらのプラントで特殊なブロック共縮合物を製造することは、これらの製品の量が小さいために、経済的に不利であることが多い。その上、共縮合物の製造に必要な原料、例えばポリジメチルシロキサン、が、プラント又は溶剤回路の汚れにつながることがあるので、プラントを損なう。さらに、毒性の原料、例えばホスゲン、が製造に必要であるか、又はこれらの方法が、高いエネルギー需要を伴う。
【0004】
界面プロセスによるポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共重合体の製造は、文献から公知であり、例えば米国特許出願公開第3189662号、第3419634号、独国特許第334782号及び欧州特許第122535号に記載されている。
【0005】
メルトエステル交換反応方法による、ビスフェノール、ジアリールカーボネート及びシラノール末端を有するポリシロキサンからの、触媒の存在下における、ポリシロキサンカーボネートブロック共重合体の製造は、米国特許第5227449号に記載されている。使用するシロキサン化合物は、シラノール末端基を有するポリジフェニル-又はポリジメチルシロキサンテロマーである。しかし、シラノール末端基を有するその様なジメチルシロキサンは、シラノール末端基を有するジフェニルシロキサンと対照的に、酸性又は塩基性媒体中で、鎖長の低下と共に、自己縮合する傾向が増加するので、結果として、形成される時に共重合体中への配合がより困難になる。この方法で形成される環状シロキサンは、重合体中に残り、電気/エレクトロニクス分野における用途で、極めて破壊的な影響を及ぼす。
【0006】
米国特許第5504177号は、メルトエステル交換反応による、カーボネート末端を有するシリコーンから、ビスフェノール及びジアリールカーボネートにより、ブロックコポリシロキサンカーボネートの製造を記載している。シロキサンとビスフェノール及びジアリールカーボネートの相溶性が非常に悪いので、シロキサンの、ポリカーボネートマトリックス中への均質な配合が、メルトエステル交換反応方法によっては、起こるにしても、非常に困難である。さらに、モノマーから出発するブロック共縮合物の製造が、非常に厄介である。
【0007】
これら方法全ての不利な点は、シリコーン-ポリカーボネートブロック共重合体の合成の少なくとも一工程における有機溶剤の使用、原料としてホスゲンの使用、及び/又は共縮合物の品質が悪いことである。特に、モノマーから出発する共縮合物の合成は、界面方法及び特にメルトエステル交換反応方法の両方で、解決すべき点が非常に多い。例えば、メルトプロセスの場合、蒸発、従って、モノマーの除去を阻止するために、小さな相対的低圧及び低温を使用しなければならない。モル質量が高いオリゴマーが形成される、後になった反応段階でのみ、より低い圧力及びより高い温度を使用できる。これは、反応を幾つかの段階にわたって行う必要があり、従って、反応時間も長くなる。さらに、製造方法の残留物、例えば低分子量シロキサン成分が、共縮合物中に残るという危険性もある。
【0008】
分岐が、ポリカーボネートのレオロジー特性に影響を及ぼすことが分かっている。例えば、分岐したポリカーボネートは、高い構造的粘度を示す。これは、押出方法、例えば水筒又はマルチ-スキンシートの製造に使用される。そのような分岐したポリカーボネートの製造は、よく知られており、欧州特許第649724号に記載されている。ホスゲンによる界面方法で分岐したポリカーボネートの製造に加えて、メルトエステル交換反応方法による分岐したポリカーボネートの製造も、公知であり、欧州特許第2374829号に記載されている。これらの方法では、分岐は、多官能性化合物、例えば1,1,1-トリス-(4-ヒドロキシフェニル)エタン、の使用により達成される。興味深いことに、これら欠陥のある構造は、分岐形成にもつながるが、そのプロセスの際に結果として生じるポリカーボネートのレオロジーに不利な影響を有する(欧州特許第2374829号)。
【0009】
独国特許第19710081号は、オリゴカーボネート及び特殊なヒドロキシアリールシロキサンから出発し、メルトエステル交換反応方法による、上記の共縮合物の製造方法を記載している。この出願には、オリゴカーボネートの製造も記載されている。しかし、比較的少量の特殊な共縮合物を製造するための、オリゴカーボネートの工業的規模の製造は、非常にコストが掛かり、不便である。さらに、得られる材料は、OH末端基及び他の不純物、例えば触媒残留物成分、の濃度が高く、末端製品の色を悪くするので、共縮合物の製造には不適当である。
【0010】
現在、ポリカーボネートは、工業的には、モノマー、即ち低分子量ビスフェノール及び有機カーボネート、例えばジフェニルカーボネート、から製造され、これは改良を非常に必要とし、対応する工業的規模のプラントで、コスト的に標準的なポリカーボネート合成又はコポリカーボネート合成を必要としている。
【0011】
上記の出願のどれも、特殊な転位構造を含んでなるポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物を記載していない。さらに、市販のポリカーボネート及びシロキサン成分から誘導された、分子量が3000g/molを超え、せん断下で高い流動性を示すシロキサン-含有ブロック縮合物は、この分野では記載されていない。これらの生成物は、その製造が、大きな工業的設備、例えば界面重縮合方法のための設備、も、毒性原料、例えばホスゲン、も必要としないので、有利である。
【0012】
従って、概要を述べた先行技術から出発し、対処すべき問題は、高い流動性及び高いメルト安定性を有するシロキサン含有-ポリカーボネートブロック共縮合物をコスト的に効率的な様式で提供することである。
【0013】
驚くべきことに、特殊な転位構造を含む特殊なポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、上記の好ましい特徴を示すことが分かった。さらに、これらの共縮合物は、ホスゲンを使用せずに、市販のポリカーボネートから製造でき、それにも関わらず、公知のホスゲンによる界面方法により製造したシロキサン含有ブロック共縮合物と類似の好ましい特徴を示すことが分かった。
【0014】
これは、現在市販されているシロキサン含有-ポリカーボネート共縮合物は、ホスゲンによる界面プロセスで製造され、少量の未反応出発材料、例えばモノマー及びシロキサン成分、により区別されるので、特に驚くべきことである。ホスゲンの高い反応性のため、出発材料は、事実上完全に反応し、縮合生成物を形成する。残留する副生物、例えば塩、は、洗浄によりほとんど完全に除去されるので、共縮合物は、優れた熱安定性を示す。それとは対照的に、本発明のポリシロキサン−ポリカーボネートブロック共縮合物は、メルトエステル交換反応プロセスにより製造される。試薬の反応性が低いために、抽出可能な残留物が共縮合生成物中に残るという危険性がより高い。従って、本発明のポリシロキサン−ポリカーボネートブロック共縮合物が、高いメルト安定性を有し、痕跡量の抽出可能なシロキサン化合物しか含まないことは、特に驚くべきことである。そのような抽出可能なシロキサン成分は、型汚染物の形成を起こし易く、その様なポリシロキサン−ポリカーボネートブロック共縮合物から製造された成形品及び押出成形物の電気的特性及び/又は表面特性に好ましくない影響を及ぼす。従って、最小量の抽出可能なシロキサン成分を含むポリシロキサン−ポリカーボネートブロック共縮合物を与えるのが望ましい。
【発明の概要】
【0015】
従って、本発明は、
(A)少なくとも一種の、式(1)のヒドロキシアリール末端を有するシロキサン(シロキサン成分):
【化1】
〔式中、
R
1は、H、Cl、Br又はC
1〜C
4アルキル、好ましくはH又はメチル、特に好ましくはHであり、
R
2及びR
3は、同一であるか、又は異なった、それぞれ互いに独立して、アリール、C
1〜C
10アルキル及びC
1〜C
10アルキルアリールから選択され、好ましくはR
2及びR
3はメチルであり、
Xは、単結合、−CO−、−O−、C
1〜C
6アルキレン、C
2〜C
5〜アルキリデン、C
5〜C
12シクロアルキリデン又はC
6〜C
12アリーレンであり、これらは、ヘテロ原子を含むさらなる芳香族環に縮合されていてもよく、Xは、好ましくは単結合、C
1〜C
5アルキレン、C
2〜C
5〜アルキリデン、C
5〜C
12シクロアルキリデン、−O−又は−CO−であり、Xは、より好ましくは単結合、イソプロピリデン、C
5〜C
12シクロアルキリデン又は酸素であり、最も好ましくはイソプロピリデンであり、
nは、1〜500、好ましくは10〜400、特に好ましくは10〜100、最も好ましくは20〜60の数であり、
mは、1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは2〜5の数であり、
pは、0又は1、好ましくは0であり、
nxmの値は、好ましくは12〜400、より好ましくは15〜200である〕、
(B)及び少なくとも一種のポリカーボネート
から誘導されたポリシロキサン−ポリカーボネートブロック共縮合物であって、
前記ポリシロキサン−ポリカーボネートブロック共縮合物は、下記の構造(I)〜(IV)、即ち
【化2】
の少なくとも一種、好ましくは2種以上を含み、
ここで、
フェニル環は、置換されていないか、又は独立してC
1〜C
8アルキル及び/又はハロゲン、好ましくはC
1〜C
4アルキル、より好ましくはメチルにより一又は二置換されており、
Xは、単結合、C
1〜C
6アルキレン、C
2〜C
5〜アルキリデン又はC
5〜C
6シクロアルキリデン、好ましくは単結合又はC
1〜C
4アルキレン、及び特に好ましくはイソプロピリデンであり、構造単位(I)〜(IV)中の---により示す結合は、それぞれカルボキシレート基の各部分であり、
構造単位(I)〜(IV)の量は、合計60〜1500、好ましくは70〜1200ppm、最も好ましくは80〜850ppmである(加水分解後に、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に基づいて決定する)。
【0016】
構造単位(I)、(II)、(III)、及び/又は(IV)は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物の重合体鎖の中に、好ましくは重合体鎖の、ポリカーボネート(成分B)に由来する部分中に構築される。
【0017】
好ましくは、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、Ubbelohde粘度計を使用し、ジクロロメタン中、5g/lの濃度で、25℃で測定して、相対的溶液粘度1.26〜1.40、より好ましくは1.27〜1.38、特に好ましくは1.28〜1.35を有する。
【0018】
好ましくは、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、Ubbelohde粘度計を使用し、ジクロロメタン中、5g/lの濃度で、25℃で、相対的溶液粘度を測定することにより決定した重量平均分子量26,000〜40,000g/mol、より好ましくは27,000〜38,000g/mol、最も好ましくは28,000〜35,000g/molを有する。
【0019】
好ましい実施態様では、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物のナトリウム含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物の総重量に対して、少なくとも50ppb、好ましくは少なくとも80ppb、より好ましくは少なくとも100ppb、特に少なくとも150ppbである。好ましい実施態様では、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物のナトリウム含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物の総重量に対して、0.1ppm〜1000ppm、好ましくは0.2〜100ppm、より好ましくは0.3〜10ppm、特に0.4〜5ppmである。縮合物のナトリウム含有量は、例えば火炎微粒化で原子吸光分析により測定することができる。
【0020】
上記の転位構造は、互いに異なった量及び比で起こる。その量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物の総加水分解により決定することができる。
【0021】
転位構造の量を決定するには、特定のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物を総加水分解にかけ、この様にして式(Ia)〜(IVa)の対応する分解生成物を形成し、その量をHPLCにより測定する。
【0022】
(これは、例えば次のように行うことができる、即ち、試料を還流下で、ナトリウムメトキシドにより加水分解する。対応する溶液を、酸性化し、濃縮して乾燥させる。乾燥残留物をアセトニトリル中に溶解させ、式(Ia)〜(IVa)のフェノール系化合物を、HPLCによりUV検出で決定する。
【化3】
【0023】
好ましくは、放出される式(Ia)の化合物の量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に対して、20〜800ppm、より好ましくは25〜700ppm、特に好ましくは30〜500ppmである。
【0024】
好ましくは、放出される式(IIa)の化合物の量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に対して、0(即ち、検出限界の10ppm未満)〜100ppm、より好ましくは0〜80ppm、特に好ましくは0〜50ppmである。
【0025】
好ましくは、放出される式(IIIa)の化合物の量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に対して、10〜800ppm、さらに好ましくは10〜700ppm、より好ましくは20〜600ppm、最も好ましくは30〜350ppmである。
【0026】
好ましくは、放出される式(IVa)の化合物の量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に対して、0(即ち、検出限界の10ppm未満)〜300ppm、好ましくは10〜250ppm、最も好ましくは20〜200ppmである。
【0027】
簡素化の理由から、式(I)〜(IV)の構造の量は、放出される式(Ia)〜(IVa)の化合物の量に等しい。
【0028】
本発明では、「C
1〜C
4アルキル」は、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルであり、「C
1〜C
6アルキル」は、さらに例えばn-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル又は1-エチル-2-メチルプロピル、「C
1〜C
10アルキル」は、さらに、例えばn-ヘプチル及びn-オクチル、ピナシル、アダマンチル、異性体状メンチル、n-ノニル、n-デシル、「C
1〜C
34」アルキルは、さらに、例えばn-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル又はn-オクタデシルである。同じことが対応するアルキルラジカルにも当てはまり、例えばアラルキル又はアルキルアリール、アルキルフェニル又はアルキルカルボニルラジカルである。対応するヒドロキシアルキル又はアラルキルもしくはアルキルアリールラジカルにおけるアルキレンラジカルは、例えば上記のアルキルラジカルに対応するアルキレンラジカルである。
【0029】
「アリール」は、6〜34個の骨格炭素原子を有する炭素環芳香族ラジカルである。アラルキルラジカルとも呼ばれるアリールアルキルラジカルの芳香族部分にも、及びより複雑な基、例えばアリールカルボニルラジカル、のアリール構成成分にも、同じことが当てはまる。
【0030】
「C
6〜C
34アリール」の例は、フェニル、o-、p-、m-トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル又はフルオレニルである。
【0031】
「アリールアルキル」又は「アラルキル」は、それぞれの場合に、独立して、上に規定する様に、直鎖状、環状、分岐した、または分岐していないアルキルラジカルであり、上に規定するアリールラジカルにより、一重に、多重に、又は完全に置換されていてよい。
【0032】
上記の列挙は、例として理解すべきであり、制限するものではない。
【0033】
本発明では、ppm及びppbは、他に指示が無い限り、重量による部数を意味する。
【0034】
構造要素(I)〜(IV)を含むポリカーボネートの工業的規模における製造は、原則的に公知であり、例えば独国特許第102008019503号に記載されている。
【0035】
本発明におけるポリカーボネートは、ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方である。
【0036】
好ましくは、ポリカーボネートは、ゲル透過クロマトグラフィー及びBPA(ビスフェノールA)標準により測定して、重量平均分子量が16000〜28000g/mol、好ましくは17000〜27000g/mol、特に好ましくは18000〜26500g/mol、及びフェノール系OH基が250ppm〜1000ppm、好ましくは300〜900ppm、特に好ましくは350〜800ppmである。
【0037】
好ましい実施態様では、ポリカーボネートは、Ubbelohde粘度計を使用し、ジクロロメタン中、5g/lの濃度で、25℃で測定して、相対溶液粘度(eta rel)1.16〜1.30、好ましくは1.17〜1.28、最も好ましくは1.18〜1.27を有する。
【0038】
ポリエステルカーボネートを含むポリカーボネートの好ましい製造様式は、公知のメルトエステル交換反応方法により行う。
【0039】
本発明に好適なポリカーボネート中にあるカーボネート基の幾らか、好ましくは80mol%まで、より好ましくは20mol%〜50mol%まで、を、芳香族ジカルボン酸エステル基で置き換えることができる。そのようなポリカーボネートは、分子鎖中に取り込まれた炭酸の酸ラジカル及び芳香族ジカルボン酸の酸ラジカルの両方を含み、正確には、芳香族ポリエステルカーボネートである。簡素化のために、これらの化合物は、本願では、熱可塑性芳香族ポリカーボネートの用語に含める。
【0040】
ポリカーボネートは、公知の方法では、ジフェノール、炭酸誘導体、所望により連鎖停止剤及び所望により分岐試剤から製造され、炭酸誘導体の一部を、芳香族ジカルボン酸又はジカルボン酸の誘導体により、特に、芳香族ポリカーボネート中で置き換えるべきカーボネート構造単位に応じて、芳香族ジカルボン酸エステル構造単位により、置き換え、ポリエステルカーボネートを製造する。
【0041】
ポリカーボネートの製造に関する例として、Schnell, 「ポリカーボネートの化学及び物理学(Chemistry and Physics of Polycarbonates)」, Polymer Reviews, Volume 9, Interscience Publishers, New York, London, Sydney 1964、をここで参照する。
【0042】
ポリカーボネート製造に好適なジフェノールは、先行技術で何度も記載されている。
【0043】
好ましくは、ポリカーボネートは、及びそれによって、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物も、一般式(2a)によるジフェノール:
【化4】
〔式中、
Zは、6〜30個の炭素原子を有する芳香族残基であり、一個以上の置換されていてもよい芳香族環を含み、芳香族環は、脂肪族残基又はアルキルアリール基又はヘテロ原子ブリッジにより接続されていてよい〕から誘導された構造を含む。
【0044】
好ましい実施態様では、Zは、式(2b):
【化5】
〔式中、
R
6及びR
7は、互いに独立して、H、C
1〜C
18アルキル、C
1〜C
18アルコキシ、ハロゲン、例えばCl又はBr、もしくは置換されていてもよいアリール-又はアラルキル、好ましくはH又はC
1〜C
12アルキル、より好ましくはH又はC
1〜C
8アルキル、最も好ましくはH又はメチルであり、
Xは、単結合、−CO−、−O−、C
1〜C
6アルキレン、C
2〜C
5〜アルキリデン、C
5〜C
12シクロアルキリデン又はC
6〜C
12アリーレンであり、これらは、ヘテロ原子を含むさらなる芳香族環に縮合されていてもよく、Xは、好ましくは単結合、C
1〜C
5アルキレン、C
2〜C
5〜アルキリデン、C
5〜C
12シクロアルキリデン、−O−又は−CO−であり、Xは、より好ましくは単結合、イソプロピリデン、C
5〜C
12シクロアルキリデン又は酸素であり、最も好ましくはイソプロピリデンである〕による残基である。
【0045】
式(2a)による好適なジフェノールは、例えばヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α、α'-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、及びそれらのアルキル化された、環-アルキル化された、及び環-ハロゲン化された化合物である。
【0046】
式(2a)による好ましいジフェノールは、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)2-メチルブタン及び1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)2-プロピル]ベンゼンである。
【0047】
特に好ましい式(2a)によるジフェノールは、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。これらの、及び他の好適なジヒドロキシアリール化合物は、例えば独国特許出願公開第3832396号、仏国特許出願公開第1561518号、H.Schnell, ポリカーボネートの化学及び物理学(Chemistry and Physics of Polycarbonates), Interscience Publishers, New York 1964, p.28 ff.; p.102 ff. 及びD.G. Legrand, J.T.Bendler, ポリカーボネート科学及び技術のハンドブック(Handbook of Polycarbonate Science and Technology), Marcel Dekker New York 2000, P.72ff.中に記載されている。
【0048】
ホモポリカーボネートの場合、ただ1種類のジフェノールを使用し、コポリカーボネートの場合、複数のジフェノールを使用し、無論、使用するジフェノール、及び他の全ての合成に添加する薬品及び助剤が、それらの独自の合成、取扱い及び貯蔵から発生する不純物で汚染されることがあるが、最大限清浄な原料で作業することが望ましい。
【0049】
ポリカーボネートは、意識的な、調整された様式で、少量の連鎖停止剤及び分岐試剤の使用により、改変することができる。好適な連鎖停止剤及び分岐試剤は、文献から公知である。幾つかは、例えば独国特許出願公開第3833953号に記載されている。好ましくは、使用する連鎖停止剤は、フェノール又はアルキルフェノール、特にフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロ炭酸エステル又はモノカルボン酸の酸塩化物又はそれらの連鎖停止剤の混合物である。好ましい連鎖停止剤は、フェノール、クミルフェノール、イソオクチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、特にフェノールである。
【0050】
分岐試剤として好適な化合物の例は、少なくとも3個、好ましくは3又は4個のヒドロキシル基を有する芳香族又は脂肪族化合物である。3個以上のフェノール系ヒドロキシル基を有する特に好適な例は、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0051】
分岐試剤として好適な他の三官能性化合物の例は、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸塩化物及び3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0052】
特に好ましい分岐試剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドール及び1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0053】
メルトエステル交換反応におけるジヒドロキシアリール化合物との反応に好適なジアリールカーボネートは、一般式(2c)の化合物である:
【化6】
〔式中、
R、R’及びR”は、同一であるか、又は異なっており、それぞれ独立して、水素、直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
34アルキル、C
7〜C
34アルキルアリール又はC
6〜C
34アリールであり、Rは、さらに-COO-R'''でもよく、ここでR'''は、水素、直鎖状又は分岐鎖状C
1〜C
34−アルキル、C
7〜C
34アルキルアリール又はC
6〜C
34アリールである〕。
【0054】
好ましいジアリールカーボネートは、例えばジフェニルカーボネート、メチルフェニルフェニルカーボネート及びジ(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-エチルフェニル)カーボネート、4-n-プロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-プロピルフェニル)カーボネート、4-イソプロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-イソプロピルフェニル)カーボネート、4-n-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ブチルフェニル)カーボネート、4-イソブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-イソブチルフェニル)カーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、4-n-ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ペンチルフェニル)カーボネート、4-n-ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ヘキシルフェニル)カーボネート、4-イソオクチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-イソオクチルフェニル)カーボネート、4-n-ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-n-ノニルフェニル)カーボネート、4-シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、4-(2-ナフチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-ナフチル)フェニル]カーボネート、ジ[4-(2-ナフチル)フェニル ]カーボネート、4-フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-フェノキシフェニル)カーボネート、3-ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ(3-ペンタデシルフェニル)カーボネート、4-トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-トリチルフェニル)カーボネート、(メチルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(メチルサリチレート)カーボネート、(エチルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(エチルサリチレート)カーボネート、(n-プロピルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(n-プロピルサリチレート)カーボネート、(イソプロピルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(イソプロピルサリチレート)カーボネート、(n-ブチルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(n-ブチルサリチレート)カーボネート、(イソブチルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(イソブチルサリチレート)カーボネート、(tert-ブチルサリチレート)フェニルカーボネート、ジ(tert-ブチルサリチレート)カーボネート、ジ(フェニルサリチレート)カーボネート及びジ(ベンジルサリチレート)カーボネートである。
【0055】
特に好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート及びジ(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0056】
ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
【0057】
一種類のジアリールカーボネート、でなければ様々なジアリールカーボネート(複数)、を使用することができる。
【0058】
ジアリールカーボネートは、それを製造した元のモノヒドロキシアリール化合物の残留含有物と共に使用することもできる。モノヒドロキシアリール化合物の残留含有量は、20重量%まで、好ましくは10重量%まで、より好ましくは5重量%まで、最も好ましくは2重量%まででよい。
【0059】
ジヒドロキシアリール化合物(複数可)に対して、ジヒドロキシアリール化合物1モルあたり、一般的に1.02〜1.30mol、好ましくは1.04〜1.25mol、より好ましくは1.045〜1.22mol、最も好ましくは1.05〜1.20molのジアリールカーボネート(複数可)を使用する。上記ジアリールカーボネートの混合物を使用することもでき、その場合、ジヒドロキシアリール化合物1モルあたりの上記のモル数は、ジアリールカーボネート混合物の総量に対する数である。
【0060】
ポリカーボネート製造用のメルトエステル交換反応で使用する触媒は、文献中で公知の塩基性触媒、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物及び/又はオニウム塩、例えばアンモニウム又はホスホニウム塩でよい。好ましくはオニウム塩、より好ましくはホスホニウム塩を合成に使用する。そのようなホスホニウム塩は、例えば一般式(3):
【化7】
〔式中、
R
4−7 は、同一であるか、又は異なった、置換されていてもよいC
1〜C
10アルキル、C
6〜C
14アリール、C
7〜C
15アリールアルキル又はC
5〜C
6シクロアルキルラジカル、好ましくはメチル又はC
6〜C
14アリール、より好ましくはメチル又はフェニルである、及び
X
−は、水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、炭酸塩、ハロゲン化物、好ましくは塩化物、及びアルコキシド又は式−OR
8のアロキシド[ここでR
8は、置換されていてもよいC
6〜C
14アリール、C
7〜C
15アリールアルキル、C
5〜C
6シクロアルキル又はC
1〜C
20アルキルラジカル、好ましくはフェニルである]の群から選択された陰イオンである〕のホスホニウム塩である。
【0061】
特に好ましい触媒は、塩化テトラフェニルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウム及びテトラフェニルホスホニウムフェノキシド、特に好ましくは、テトラフェニルホスホニウムフェノキシドである。
【0062】
触媒は、ジヒドロキシアリール化合物1モルに対して、好ましくは10
−8〜10
−3molの量で、より好ましくは10
−7〜10
−4molの量で使用する。
【0063】
また、重縮合の速度を増加するために、共触媒を所望により使用することもできる。
【0064】
これらは、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルカリ塩、例えばリチウム、ナトリウム及びカリウムの水酸化物、置換されていてもよいC
1〜C
10アルコキシド及びC
6〜C
14アロキシド、好ましくはナトリウムの水酸化物、置換されていてもよいC
1〜C
10アルコキシドまたはC
6〜C
14アロキシドである。好ましくは、水酸化ナトリウム、ナトリウムフェノキシド又は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンの二ナトリウム塩である。
【0065】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンがそれらの塩の形態で供給される場合、アルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンの量は、例えば、原子吸光分光法により測定して、形成すべきポリカーボネートに対して、1〜500ppb、好ましくは5〜300ppb、最も好ましくは5〜200ppbである。しかし、本発明による方法の好ましい実施態様では、アルカリ金属塩は使用しない。
【0066】
ポリカーボネート合成は、連続的又はバッチ様式で行う。
【0067】
さらに、末端基としてフェノールを有するポリカーボネート(フェニル末端を有するポリカーボネート)が好ましい。
【0068】
特別な実施態様では、含水量0.01〜0.40、好ましくは0.05〜0.35重量%のポリカーボネートを使用する。
【0069】
シロキサン成分の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー及びBPA(ビスフェノールA)標準により測定して、好ましくは3000〜20000g/mol、特に好ましくは3500〜15000g/molである。
【0070】
特に好ましくは、シロキサン成分として、式(1)のヒドロキシアリール末端を有するシロキサンを使用するが、R
2及びR
3ラジカルは、両方共メチルであり、R
1ラジカルは水素であり、pは0である。
【0071】
式(1)のシロキサンは、一般式(4)の直鎖状α,ω-ビスアシルオキシ-ポリジアルキルシロキサンと、少なくとも2個のフェノール系ヒドロキシ基を有する少なくとも一種の芳香族化合物との反応工程を含む方法により製造され、一般式(4)は、
【化8】
〔式中、
R
0は、アリール、C
1〜C
10アルキル又はC
1〜C
10アルキルアリールであり、
R
2及びR
3は、同一であるか、又は異なった、それぞれ互いに独立して、アリール、C
1〜C
10アルキル及びC
1〜C
10アルキルアリールから選択され、好ましくはR
2及びR
3は、両方共メチルであり、
nは、1〜500、好ましくは10〜400、特に好ましくは10〜100、最も好ましくは20〜60の数である〕
であり、式(4)の化合物及び芳香族化合物は、芳香族化合物中のフェノール系ヒドロキシル基と、式(4)の化合物中のアシルオキシ基の比が2.0未満になる様なモル比で反応する。
【0072】
特に好ましい実施態様では、少なくとも2個のフェノール系ヒドロキシ基を有する芳香族化合物は、ビスフェノール系化合物又はそのヒドロキシ官能性オリゴマーである。
【0073】
式(1)のシロキサンの製造は、好ましくは不活性溶剤中で、好ましくは、例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素、及び例えば酢酸及び他のC3〜C6有機カルボン酸等の極性有機酸、から選択された不活性溶剤中で行う。反応は、好ましくは、有機酸の金属塩、例えば酢酸ナトリウム又はカリウムから選択された触媒の存在下で行うことができる。シロキサン縮合反応の触媒作用がこの分野で公知の他の触媒も使用できる。
【0074】
好ましくは、本発明では、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、式(1)のシロキサン成分及びポリカーボネートを含んでなる組成物から誘導され、その組成物は、シロキサン成分を、それぞれの場合に使用するポリカーボネートに対して、0.5〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%、特に好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは2.5〜10重量%、特に2.5〜7.5重量%の量で含む。
【0075】
好ましくは、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、成分(A)を成分(B)と、温度280℃〜400℃、好ましくは300℃〜390℃、より好ましくは320℃〜380℃、最も好ましくは330℃〜370℃の融成物中で、圧力0.001mbar〜50mbar、好ましくは0.005mbar〜40mbar、特に好ましくは0.02〜30mbar、最も好ましくは0.03〜5mbarで、好ましくは触媒の存在下で反応させることにより、得られる。
【0076】
好ましくは、ポリカーボネート及びシロキサンを、触媒を使用して反応させる。原理的には、反応を触媒無しに行うことができるが、その場合、より高い温及びより長い滞留時間を許容する必要があろう。
【0077】
好適な触媒は、例えばテトラアルキルアンモニウム触媒、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸セチルトリメチルアンモニウム及びセチルトリメチルアンモニウムフェノキシドである。
【0078】
特に好適な触媒は、式(5)のホスホニウム触媒である:
【化9】
〔式中、R
a、R
b、R
c及びR
dは、同一であるか、又は異なったC
1〜C
10アルキル、C
6〜C
14アリール、C
7〜C
15アリールアルキル又はC
5〜C
6シクロアルキル、好ましくはメチル又はC
6〜C
14アリール、より好ましくはメチル又はフェニルであり、Y
−は、陰イオン、例えば水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、炭酸塩又はハロゲン化物、好ましくは塩化物、又はアルコキシドもしくは式−OR
eのアロキシド[ここでR
eは、C
6〜C
14アリール、C
7〜C
15アリールアルキル又はC
5〜C
6シクロアルキル、好ましくはフェニルでよい]でよい〕。
【0079】
特に好ましい触媒は、塩化テトラフェニルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウム及びテトラフェニルホスホニウムフェノキシドであり、特に好ましくはテトラフェニルホスホニウムフェノキシドである。
【0080】
触媒は、組成物全体に対して0.0001〜1.0重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%、特に好ましくは0.005〜0.3重量%、最も好ましくは0.01〜0.15重量%の量で使用する。
【0081】
触媒は、単独で、又は触媒混合物として使用され、そのままで、又は例えば水又はフェノール中の溶液として(例えばフェノールとの共結晶として)加えることができる。
【0082】
本発明による共縮合物の製造に好適な触媒は、上記の触媒であり、反応物中に、好適なポリカーボネート、特に上に記載した本発明のポリカーボネートとのマスターバッチにより、又はポリカーボネートとは別に、又はポリカーボネートに加えて、導入することができる。
【0083】
触媒は、単独で、又は混合物で使用でき、そのままで、又は水もしくはフェノール中の溶液として加えることができる。
【0084】
好ましい実施態様では、式(1)のシロキサン及びポリカーボネートの反応は、少なくとも一種の、pK
A値が3〜7(25℃)である酸の有機又は無機塩の存在下で行う。好適な酸は、カルボン酸、好ましくはC
2〜C
22カルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、p-トリル酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸及びサリチル酸、ポリカルボン酸の部分エステル、例えばコハク酸のモノエステル、リン酸の部分エステル、例えばモノ-又はジオルガノリン酸エステル、分岐した脂肪族カルボン酸、例えば2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸及び2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
【0085】
有機又は無機塩は、好ましくは式(5)の触媒に加えて使用し、この実施態様では、有機又は無機塩は、共触媒として作用する。
【0086】
好ましくは、有機又は無機塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩及び第四級ホスホニウム塩からなる群から選択される。有用な第四級アンモニウム塩は、テトラ-(n-ブチル)-アンモニウム、テトラフェニルアンモニウム、テトラベンジルアンモニウム及びセチルトリメチルアンモニウム塩から選択される。有用な第四級ホスホニウム塩は、テトラ-(n-ブチル)-ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム及びセチルトリメチルホスホニウム塩から選択される。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が特に好ましい。
【0087】
有用な有機及び無機塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム、二カリウム及び二リチウム塩であるか、これらに由来する。さらに、塩としては、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム及びそれぞれのオレイン酸塩が挙げられる。これらの塩は、単独又は組合せで使用することができる。
【0088】
特に好ましい実施態様では、塩は、カルボン酸のアルカリ金属塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される。
【0089】
好ましい実施態様では、塩は、カルボン酸から誘導される。
【0090】
有機又は無機塩は、好ましくは、シロキサン及び有機又は無機塩の総重量に対して、0.5〜1000ppm、より好ましくは1〜100ppm、最も好ましくは1〜10ppmの量で使用する。好ましくは、有機又は無機塩は、シロキサン、ポリカーボネート及び有機又は無機塩の総重量に対して、0.0005〜5mmol/kg、より好ましくは0.001〜1mmol/kg、及び最も好ましくは0.001〜0.5mmol/gの量で使用する。
【0091】
好ましい実施態様では、有機又は無機塩は、ナトリウム塩、好ましくはカルボン酸のナトリウム塩であり、好ましくは得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物中のナトリウム含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物の総重量に対して、少なくとも50ppb、好ましくは少なくとも80ppb、より好ましくは少なくとも100ppb、特に少なくとも150ppbの量で使用する。
【0092】
好ましい実施態様では、有機又は無機塩は、ナトリウム塩、好ましくはカルボン酸のナトリウム塩であり、好ましくは得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物中のナトリウム含有量が、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物の総重量に対して、0.1ppm〜1000ppm、好ましくは0.2〜100ppm、より好ましくは0.3〜10ppm、特に0.4〜5ppmの量で使用する。共縮合物のナトリウム含有量は、例えば火炎微粒化による原子吸光分析により測定することができる。
【0093】
有機又は無機塩は、単独で、又は混合物として使用し、そのままで、又は溶液として添加することができる。好ましい実施態様では、無機又は有機塩は、シロキサン及び有機又は無機塩を含む混合物の形態で添加する。好ましくは、混合物は、シロキサン及び有機又は無機塩及び所望により一種以上の、30個まで、好ましくは20個までの炭素原子、及び少なくとも一個の、好ましくはO、N及びSから選択されたヘテロ原子を有する、極性有機化合物を混合し、及び所望により混合物を、例えば50℃〜300℃の温度に、透明になるまで加熱し、次いで室温に冷却することにより得られる。極性有機化合物は、混合物をポリカーボネートに加える前に、又はその後に、好ましくは蒸留により除去することができる。
【0094】
好適な極性有機化合物は、有機ケトン、エステル及びアルコールからなる群から選択される。アルコール、特に20個までの炭素原子を有する第一級アルコール、例えば1-オクタノール、1-デカノール、2-エチルヘキサノール、1-ドデカノール。1,2-オクタンジオール、ベンジルアルコール、エチルヘキシルグリセリン及びオレオイルアルコールが特に好ましい。好ましくは、極性有機化合物は、300℃未満の沸点を有する(1.013barで)。
【0095】
本発明のブロックコポリカーボネートの製造方法は、連続的に、又はバッチ様式で、例えば撹拌タンク、薄膜蒸発装置、撹拌タンクカスケード、押出機、ニーダー及び簡単なディスク反応器で行うことができる。原料は、一緒にブレンドし、開始から融解させることができる。さらに、原料は、互いに分離して加えることができる。例えば、本発明により使用するポリカーボネートは、最初に融解させ、本発明により使用するシロキサン成分を後の時点で加えることができる。これは、例えば適切なポンプで液体計量により、又はポリカーボネート上に散布する顆粒により行うことができる。触媒は、どの時点でも、好ましくは反応開始時、又は融解後に、自由形態で、又はマスターバッチの形態で、加えることができる。融解は、空気下でも行えるが、好ましくは保護ガス雰囲気、例えば窒素又はアルゴン下で、又は同様に好ましくは減圧下で行うことができる。
【0096】
反応は、上に規定する温度及び圧力で行う。反応混合物にせん断力をかけるのが好ましい。これは、タンク中で急速撹拌により、又は好適な混合素子、例えば静止ミキサー、押出機スクリュー上の混合素子、等により、行うことができる。高混合が、低混合よりも好ましい。反応は、低分子量構成成分、例えば水、フェノール、直鎖状及び環状低分子量シロキサン、ジフェニルカーボネート、ビスフェノールA及びビスフェノールAオリゴマー(オリゴカーボネート)、が効果的に除去される様に行う。
【0097】
反応物は、好ましくは減圧下で融解させる。プラント構造に応じて、融解工程の際に、大気圧、好ましくは穏やかな真空、即ち200mbar未満、特に好ましくは100〜200mbar、最も好ましくは100mbar未満の絶対圧力を作用させる。しかし、反応物は、標準的な圧力下で、好ましくは保護ガス、例えば窒素、雰囲気下でも融解させることができる。融解は、好ましくは、250〜400℃の範囲内、より好ましくは280〜380℃の範囲内、最も好ましくは300〜360℃の範囲内で行う。反応又は縮合工程には、上記の温度及び圧力をかける。
【0098】
顆粒は、可能であれば、融成物を直接回転させ、続いて造粒することにより、又は排出押出機又は歯車ポンプの使用により得られ、その際、回転は、空気中又は液体、通常は水により行う。押出機を使用する場合、添加剤は、この押出機の上流で融成物に、所望により静止ミキサーを使用し、又は押出機に副押出機を使用することにより、添加することができる。
【0099】
添加剤及び/又は充填剤及び補強剤を、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物に添加することができる。添加剤は、好ましくは0重量%〜5.0重量%、より好ましくは0重量%〜2.0重量%、最も好ましくは0重量%〜1.0重量%の量で使用する。添加剤は、標準的な重合体添加剤、例えば、欧州特許出願公開第0839623号、国際公開第96/15102号パンフレット、欧州特許出願公開第0500496号又は「プラスチック添加剤ハンドブック」, Hans Zweifel, 5th Edition 2000, Hanser Verlag, Munnich: に記載されている、難燃剤、UV安定剤、ガンマ安定剤、帯電防止剤、光学光沢剤、流動性改善剤、熱安定剤、無機顔料、離型剤又は加工助剤である。充填剤及び/又は補強剤は、0重量%〜50重量%、好ましくは0重量%〜20重量%、より好ましくは0重量%〜12重量%、特に0重量%〜9重量%の量で使用することができる。
【0100】
これらの添加剤、充填剤及び/又は補強剤は、重合体融成物に、個別に、又はどのような混合物又は複数の異なった混合物でも、添加することができ、添加剤は、特に重合体の絶縁の途中で(例えば、副押出機のような副装置)、純粋物質又はポリカーボネート中のマスターバッチとして、又は顆粒の融解後の配合工程で供給することができる。添加剤又はそれらの混合物は、重合体融成物に、固体形態、即ち粉末として、又は融成物として加えることができる。計量添加の別の方法は、添加剤もしくは添加剤混合物のマスターバッチ又はマスターバッチの混合物を使用することである。
【0101】
その上、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、熱安定剤又は加工安定剤を含むことができる。ホスファイト及びホスホナイト、及びホスフィンも特に好適である。例は、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリチルジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリチルジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリチルジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリトリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリトリチルジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリトリチルジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、2,2',2”-ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1'-ビフェニル-2,2'-ジイル)ホスファイト]、2-エチルヘキシル(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1'-ビフェニル-2,2'-ジイル)ホスファイト、5-ブチル-5-エチル-2-(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノキシ)-1,3,2-ジオキサホスフィラン、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリチルジホスファ
イト、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリアルキルフェニルホスフィン、ビスジフェニルホスフィノエタン又はトリナフチルホスフィンである。トリフェニルホスフィン(TPP)、Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)及びトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、又はそれらの混合物が特に好ましい。
【0102】
さらに、フェノール系酸化防止剤、例えばアルキル化モノフェノール、アルキル化チオアルキルフェノール、ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノンを使用することができる。Irganox(登録商標)1010(ペンタエリトリチル3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、CAS:6683-19-8)及びIrganox(登録商標)1076(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカンオキシカルボニルエチル)フェノール)を使用するのが特に好ましい。
【0103】
好適なUV吸収剤は、例えば欧州特許出願公開第1308084A1号、独国特許出願公開第102007011069A1号、及び独国特許出願公開第10311063A1号に記載されている。
【0104】
特に好適な紫外線吸収剤は、ヒドロキシベンゾトリアゾール、例えば2-(3',5'-ビス(1,1-ジメチルベンジル)2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)234、BASF SE、Ludwigshafen)、2-(2'-ヒドロキシ-5'-(tert-オクチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)329、BASF SE、Ludwigshafen)、2-(2'-ヒドロキシ-3'-(2-ブチル)5'-(tert-ブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)350、BASF SE、Ludwigshafen)、ビス(3-(2H-ベンズトリアゾリル)2-ヒドロキシ-5-tert-オクチル)メタン(Tinuvin(登録商標)360、BASF SE、Ludwigshafen)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)5-(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin(登録商標)1577、BASF SE、Ludwigshafen)、及びベンゾフェノン2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimasorb(登録商標)22、BASF SE、Ludwigshafen)及び2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(登録商標)81、BASF SE、Ludwigshafen)、2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペン酸、2,2-ビス[[(2-シアノ-1-オキソ-3,3-ジフェニル-2-プロペニル)オキシ]メチル]1,3-プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(登録商標)3030、BASF AG、Ludwigshafen)、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン(Tinuvin(登録商標)1600、BASF SE、Ludwigshafen)、又はテトラエチル2,2'-(1,4-フェニレン-ジメチリデン)ビスマロネート(Hostavin(登録商標)B-Cap、Clariant AG)である。
【0105】
これら紫外線吸収剤の混合物を使用することもできる。
【0106】
その上、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、離型剤を含むことができる。本発明の組成物に特に好適な離型剤は、ペンタエリトリチルテトラステアレート(PETS)又はグリセリルモノステアレート(GMS)である。
【0107】
さらに、本発明のブロック共縮合物に、他の重合体、例えばポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリスチレン、スチレン共重合体、芳香族ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−シクロヘキサンジメタノール共重合体(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状ポリオレフィン、ポリ−又はコポリアクリレート、及びポリ−又はコポリメタクリレート、例えばポリ−又はコポリメチルメタクリレート(例えばPMMA)、及びスチレンとの共重合体、例えば透明ポリスチレン−アクリロニトリル(PSAN)、ゴム変性ビニル(コ-)重合体、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン、環状オレフィンを基剤とする重合体(例えばTOPAS(登録商標)、Ticonaから市販)を加えることができる。
【0108】
本発明のブロック共縮合物は、熱可塑性ポリカーボネートに公知の様式で加工し、望ましい成形品を与えることができる。
【0109】
この状況下では、本発明の共縮合物は、例えばホットプレス、スピニング、吹込み成形、熱成形、押出し又は射出成形により、製品、成形品又は形状を有する物品に変換することができる。多層系の使用も重要である。その使用は、ベース構造の成形と同時に、又はその直後に、例えば共押出し又は多成分射出成形により、行うことができる。しかし、その使用は、形状を与えたベース構造に、例えばフィルムでラミネーション又は溶液でコーティングにより、行うこともできる。
【0110】
ベース層及び所望により使用するトップ層(複数可)(多層系) から構成されたシート又は成形品は、(共)押出し、直接スキニング、直接被覆、インサート成形、フィルムインサート成形、又は当業者には公知の他の好適な方法により、製造することができる。
【0111】
射出成形方法は、当業者には公知であり、例えば「射出成形ハンドブック」、Friedrich Johannnaber/Walter Michaeli, Munich; Vienna: Hanser, 2001. ISBN 3-446-15632-1又は「射出成形工具の構造便覧」、Menges/Michaeli/Mohren, Munich; Vienna: Hanser, 1999, ISBN 3-446-21258-2に記載されている。
【0112】
押出し方法は、当業者には公知であり、例えば、共押出しに関しては、とりわけ欧州特許出願公開第0110221号、第0110238号及び第0716919号に記載されている。付属品及びノズルプロセスの詳細に関しては、Johnnaber/Ast: 「プラスチック-機械運転士」, Hanser Verlag, 2000及びプラスチック技術会社: 「共押出ししたフィルム及びプレート:将来の展望、必要条件、設備及び製造、品質保証」,VDI-Verlag, 1990参照。
【0113】
本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、公知の芳香族ポリカーボネートが現在使用されている全ての分野、及び良好な流動性と改良された離型特性及び低温における高靭性及び改良された耐薬品性がさらに必要な分野、例えば大型の屋外自動車部品及び屋外用スイッチボックス、及びシート、キャビティシート、電気及び電子部品、及び光学メモリーの製造、に使用できる。例えば、ブロック共縮合物は、IT分野で、コンピュータハウジング及びマルチメディアハウジング、携帯電話ケース、及び家庭分野、例えば洗濯機、及びスポーツ分野、例えばヘルメットの材料に使用される。
【実施例】
【0114】
本発明を以下に、作業例により詳細に説明するが、ここに記載する測定方法は、他に指示が無い限り、本発明で対応する全てのパラメーターに使用する。
【0115】
融成物体積流量(MVR)の測定
融成物体積流量(MVR)は、他の条件が記載されていない限り、ISO 1133(300℃、1.2kg)により測定する。
【0116】
溶液粘度の測定(eta rel)
相対的溶液粘度(η
rel、eta relとも呼ばれる)は、ジクロロメタン中、濃度5g/l、25℃で、Ubbelohde粘度計で測定した。
【0117】
転位構造の測定(Ia)〜(IVa)
試料を、還流下でナトリウムメトキシドを使用して加水分解する。対応する溶液を酸性化し、濃縮して乾燥させる。乾燥残留物をアセトニトリル中に溶解させ、式(Ia)〜(IVa)のフェノール系化合物を、UV検出でHPLCにより測定した。構造(Ia)〜(IVa)を、核磁気共鳴分光法(NMR)で正確に分析した。
【0118】
流動性の測定
流動性は、コーン-プレート粘度計により、低せん断率及び高せん断率におけるメルト粘度を測定することにより決定した。
【0119】
メルト粘度は、Physica UDS 200回転-/振動レオメーター及びコーン-プレート幾何学的構造を使用して測定した。円錐角度は、2°で、コーン直径は25mm(MK 216)であった。蒸発残留物を使用する場合、試料を、先ず真空乾燥加熱炉中で乾燥させ、次いでホットプレスにより230℃で圧縮し、薄膜を得た。
【0120】
コンプレックスせん断モジュラスG
*=G'+iG''の等温振動数スペクトルは、10K間隔で300℃〜260℃の温度範囲で記録した。従って、温度は10Kで段階的に低下させた。変形は10%で測定した。それぞれの場合に75〜0.08Hz(20測定点)の範囲内におけるスペクトルを記録した。
【0121】
使用した材料
PC1
直鎖状ビスフェノールAポリカーボネート、フェノール系末端基を有し、溶液粘度1.205、融成物体積流量MVR59cm
3/10min(ISO 1033により、300℃、1.2kg負荷で測定)。このポリカーボネートは、添加剤、例えばUV安定剤、離型剤、又は熱安定剤、を全く含まない。ポリカーボネートは、独国特許第102008019503号に記載されている様に、メルトエステル交換反応により製造した。
【0122】
PC2
独国特許第19710081号に記載されているオリゴカーボネート
【0123】
独国特許第19710081号で使用するのは、工業的規模で製造したポリカーボネートではなく、特別に製造したオリゴカーボネートであり、ブロック共縮合物は、独国特許第19710081号に記載されている条件に基づく比較例で製造した。
【0124】
攪拌機及び短経路セパレーターを備えた3方向ガラスフラスコ中で、ビスフェノールA150.0g(0.65mol)、ジフェニルカーボネート146.6g(0.68mol)を、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート0.027g(0.00004mol)と混合する。この混合物を、150℃で融解させる。約100mbarの真空及び180℃で、フェノールを留別する。90分間かけて、真空を段階的に10mbarに下げ、温度を250℃に増加させる。形成されたフェノールを、250℃、10mbarでさらに30分間かけて、留別する。これによって、溶液粘度1.069を有する150gのオリゴカーボネートが得られる。
【0125】
PC3
直鎖状ビスフェノールAポリカーボネート、フェノール系末端基を有し、融成物体積流量(MVR)9.5cm
3/10min(ISO 1033により、300℃、1.2kg負荷で測定)。このポリカーボネートは、添加剤、例えばUV安定剤、潤滑油、又は熱安定剤、を全く含まない。ポリカーボネートは、界面プロセスにより製造した。Bayer MaterialScienceから市販のMakrolon(登録商標)2808を使用する。
【0126】
シロキサン成分
使用するシロキサンは、式(I)のヒドロキノン末端を有するポリジメチルシロキサン(即ち、R
1=H、R
2、R
3=メチル、p=0)であり、n=33.7であり、m=3.7であり、ヒドロキシ含有量11.9mgKOH/g及び粘度358mPas(23℃)を有する。
【0127】
重量平均分子量はMw=9100g/mol、ビスフェノールA標準によるゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定し、検出は、1050cm
−1におけるIR検出器により行う。
【0128】
シロキサン成分は、下記の手順により製造することができる、即ちサーモスタットヒーター、攪拌機、温度計、及び還流冷却器を備えた反応フラスコ中で、
29Si-NMRにより測定して平均鎖長31.8ジメチルシロキサン単位及びアシルオキシ末端基230mmolを有するα、ω-ビスアシルオキシポリジメチルシロキサン250gを、4時間かけて、ビスフェノールA35.1g(150mmol)をキシレン50g、酢酸25g、及び酢酸ナトリウム0.5gに入れた溶液中に、105℃で穏やかに還流加熱しながら、滴下して加える。完全に加えた後、透明溶液をさらに1時間撹拌する。次いで、溶剤及び揮発分を、160℃及び3mbar圧力にて真空蒸留することにより除去する。冷却後、粗生成物を3ミクロンフィルター(Seitz K300)上でろ過し、透明、無色液体236g(理論値の83%)を得る。
【0129】
触媒
使用する触媒は、Rhein Chemie Rheinau GmbH (マンハイム、ドイツ)から市販のテトラフェニルホスホニウムフェノキシドである。この物質は、フェノールとの共結晶形態で使用し、テトラフェニルホスホニウムフェノキシド約70%を含む。以下に記載する量は、Rhein Chemieから得た物質に基づく(フェノールとの共結晶として)。
【0130】
例1(本発明の例)
ポリカーボネート顆粒(PC1)142.5g、シロキサン(5重量%)7.5g及びテトラフェニルホスホニウムフェノキシド共結晶(0.1重量%)0.021gを、攪拌機及び短経路セパレータを備えた250mlガラスフラスコに秤量する。この装置を排気し、窒素で掃気する(それぞれ3x)。混合物を、350℃に予備加熱した金属浴を使用し、標準的圧力で(窒素下)10分間以内に融解させる。次いで、減圧を作用させる。装置中の圧力は、約100mbarである。反応混合物は、この減圧に、撹拌しながら、30分間維持する。次いで、窒素を通気し、重合体融成物を除去する。これによって、不透明な白色粉末が得られる。溶液粘度は、表1に報告する。
【0131】
例2(比較例)
共縮合物を、例1に記載する様にして調製する。例1と異なる点は、PC2を反応物として使用することである。
【0132】
例3(比較例)
共縮合物は、モノマーから、ホスゲンで界面プロセスにより製造する、即ち
ビスフェノールA4566g(20mol)及び水酸化ナトリウム3520g(88mol)を水40リットルに入れた、窒素掃気した溶液を、塩化メチレン40リットルに加える。pH12.5〜13.5及び20℃で、ホスゲン3556g(40mol)を通す。pHを12.5から下がるのを防ぐために、ホスゲン化の際に、30%水酸化ナトリウム溶液を加えた(約2500g)。ホスゲン化及び窒素掃気の後、ジクロロメタン2リットルに溶解させたtert-ブチルフェノール65.4g(0.43mol)を加えた。混合物を10分間撹拌し、N−エチルピペリジン10.96g(0.10mol)を加える。混合物をさらに1時間撹拌する。水相を分離した後、有機相をリン酸で酸性化し、蒸留水で中性に、無塩に洗浄する。溶剤をクロロベンゼンで置き換えた後、生成物を290℃及び80回転/min、0.1mbarで通気押出機により押出し、ペレタイザーでペレット化する。
【0133】
【表1】
【0134】
本発明の例1は、同時に良好な色を有する高分子量シロキサン含有-ブロック共縮合物が得られることを示す。生成物の外観は、ホスゲンで界面プロセスにより得た生成物(例3)の外観と類似している。これとは対照的に、独国特許第19710081号に記載する手順に従うオリゴカーボネートから製造された生成物は、非常に劣った色を示し、比較的低い分子量を有する(例2)。
【0135】
生成物の融成物安定性は、様々な温度における、様々な滞留時間の後の生成物の、ISO 1133による融成物体積流量(MVR)を測定することにより研究した。その結果を下記の表2にまとめて示す。
【0136】
【表2】
【0137】
300℃で、全ての生成物は高い融成物安定性を示す。しかし、比較例2及び3の融成物安定性は、より高温(320℃)において著しく低下する。驚くべきことに、メルトエステル交換反応プロセスにより得られた本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、ホスゲンで界面プロセスにより得たポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物と比較して、高温において、著しく安定している。独国特許第19710081号に記載する手順によりオリゴカーボネートから製造したポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物との比較した場合にも、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は高い融成物安定性を示す。
【0138】
高せん断下での融成物粘度及び流動性は、コーン-プレート粘度計を使用する融成物粘度を測定することにより、決定した。試料を300℃、280℃及び260℃で測定した。表3は、低せん断率(0.08Hz、約ゼロ粘度に対応する)及び高せん断率(75Hz)における結果を示す。その低分子量のために、例2の試料は、測定しなかった。
【0139】
【表3】
【0140】
表3から、本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、高せん断の下で高い流動性を示すことが明らかである。このことは、射出成形により、壁の薄い部品を製造するのに有利である。これとは対照的に、従来の直鎖状ポリカーボネートは、せん断の下で高い粘度を示す。このことは、ゼロ粘度が、本発明の例1におけるよりも低いので、驚くべきことである。比較例2は、本発明の例1と比較して、より低い分子量を示すが、せん断の下では、粘度低下は、相対的に、本発明の例1におけるよりも、あまり明らかではない。従って、コスト的に効率の良い様式で製造される本発明のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物は、例3の、従来のポリシロキサン-ポリカーボネートブロック共縮合物よりも、より優れた特性を示す。