特許第6605471号(P6605471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605471
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】高フッ素化エラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/26 20060101AFI20191031BHJP
   C08F 216/12 20060101ALI20191031BHJP
   C08F 2/26 20060101ALI20191031BHJP
   C08F 214/28 20060101ALI20191031BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20191031BHJP
   C08L 27/18 20060101ALI20191031BHJP
   C08L 29/10 20060101ALI20191031BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   C08F214/26
   C08F216/12
   C08F2/26 Z
   C08F214/28
   C08F214/18
   C08L27/18
   C08L29/10
   C08K5/14
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-538533(P2016-538533)
(86)(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-540088(P2016-540088A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】US2014067564
(87)【国際公開番号】WO2015088784
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】61/914,457
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヒンツァー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアーン デー.ヨッフム
(72)【発明者】
【氏名】ハーラルト カスパル
(72)【発明者】
【氏名】カイ ハー.ロッホハース
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン ツェー.ツィップリーズ
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/024381(WO,A1)
【文献】 特開2006−036861(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/078738(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/082633(WO,A1)
【文献】 特表2004−514777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/44
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00− 246/00;301/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00− 101/14、
F16J 15/00− 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高フッ素化エラストマーゴム及び硬化系を含む、硬化性組成物であって、前記硬化系は、本質的に過酸化物と任意の助剤とからなるものであり、
前記高フッ素化エラストマーゴムは、
(a)含まれるモノマーの総モルの内、30モル%以上〜65モル%以下のテトラフルオロエチレンモノマーと、
(b)含まれるモノマーの総モルの内、35モル%超〜50モル%未満の1つ以上の下記式のペルフルオロ化エーテルモノマー
[ここで前記ペルフルオロ化エーテルモノマーは、
CF=CF(CFO(Rf’’O)(Rf’O) (I)
(式中、Rf’’及びRf’は、独立して、2〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、m及びnは、独立して、0〜10の整数であり、Rは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、bは0又は1である)から選択される]と、
(c)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1モル%の式(III)の化合物
CF=CF−(CF−(O−CF(CF)−CF−O−(CF−(O)−(CF−CF(I)−X (III)
(式中、XはF又はCFから選択され、gは0又は1であり、hは0〜3から選択される整数であり、iは0〜5から選択される整数であり、jは0又は1から選択される整数であり、kは0〜6から選択される整数である)と
から得られるものである、硬化性組成物。
【請求項2】
前記高フッ素化エラストマーゴムが0.1未満の積分吸光度比を有し、前記積分吸光度比が、フーリエ変換赤外分光分析で、2220〜2740cm−1の範囲の積分ピーク強度に対する1620〜1840cm−1の範囲の積分ピーク強度の比を計算することで得られるものである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記式(III)の化合物が、CF=CFOCI(MV4I)、CF=CFOCFCFCF−O−CI、及びCF=CFOC少なくとも一つから選択される、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記高フッ素化エラストマーゴムが、さらに(d)HFP及びCTFEの少なくとも1つから選択される追加のペルフルオロ化モノマーから得られるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記高フッ素化エラストマーゴムが、さらに(e)追加の硬化部位モノマーから得られるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記式(III)において、XがF又はCFから選択され、gが0又は1であり、hが0であり、iが1〜5から選択される整数であり、jが1であり、且つkが0〜6から選択される整数である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記高フッ素化エラストマーゴムがペルフルオロ化されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記高フッ素化エラストマーゴムが、その総重量に対し、0.2重量%以上のヨウ素を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化反応の反応生成物を含む、硬化フルオロエラストマー組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化フルオロエラストマー組成物を含む成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高フッ素化エラストマー組成物を説明する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロエラストマー(エラストマー系ぺルフルオロポリマー)は、硬化状態、非硬化状態のいずれにおいても耐熱性、耐薬品性が非常に高い。これらの性質は、ポリマー骨格の大部分を占める共重合ぺルフルオロ化モノマー単位の安定性及び不活性によるものであって、ポリマー骨格の例としては、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル等が挙げられ、これらは米国特許第3,467,638号、第3,682,872号、第4,035,565号、第4,281,092号、第4,972,038号に記載されている。一方、ペルフルオロエラストマーは少量ではあるが、安定性の低い共重合硬化部位モノマーを必ず含んでしまい、多くのペルフルオロエラストマーは、重合化の際に連鎖移動剤や分子量調整剤を使用することで導入される反応性末端基を含んでしまう。当該部分では、有効な架橋や化学的硬化現象を促進するため、反応性が高いことが必須であるが、一方でこのような反応性により、ポリマーは酸化のような劣化的化学反応をより生じやすくならざるを得ない。そのため、ポリマーのある種の物理的特性、具体的には圧縮永久歪みや、高温ストレス/歪みに関する特性に悪影響が及ぶ。
【0003】
エラストマーは、封止用途に使用されることがあるため、エラストマーが圧縮下で良好に機能することが重要である。圧縮封止は、容易に圧縮され、かつ嵌合表面上に押し戻す結果として得られる力を生じさせるエラストマーの能力によっている。この結果として得られる力を幅広い環境条件にわたって時間に応じて維持する材料の能力は、長期安定性にとって重要である。熱膨張、応力緩和、及び熱エージングの結果、初期封止力は、時間と共に減衰するであろう。圧縮永久歪みを決定することによって、エラストマー材料を、それらの封止力保持について幅広い条件下で評価することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、良好な圧縮永久歪みを有するペルフルオロエラストマー組成物を提供することが望ましい。
【0005】
一様態では、高フッ素化エラストマーゴムを含む組成物であって、
(a)含まれるモノマーの総モルの内、30モル%以上〜80モル%以下のテトラフルオロエチレンモノマーと、
(b)含まれるモノマーの総モルの内、35モル%超〜50モル%未満の式(I)の1つ以上のペルフルオロビニルエーテルモノマー/ペルフルオロアリルエーテルと、ここで前記ペルフルオロビニル/ペルフルオロアリルエーテルモノマーは、
CF=CF(CFO(Rf’’O)(Rf’O) (I)
(式中、Rf’’及びRf’は、独立して、2〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、m及びnは、独立して、0〜10の整数であり、Rは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、bは0又は1である)から選択され、
(c)(i)及び(ii)の少なくとも1つから選択される化合物と、から得られる前記組成物であって、ここで
(i)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1.0モル%の式(II)
CF=CF−(CF−(O−CF(Z)−CF−O−(CF−(O−CF(Z)−CF−(O)−(CF(A))−CX=CY (II)
(式中、aは0〜2から選択される整数であり、bは0〜2から選択される整数であり、cは0〜8から選択される整数であり、dは0〜2から選択される整数であり、eは0又は1であり、fは0〜6から選択される整数であり、Zは独立してF又はCFから選択され、AはF又はペルフルオロ化アルキル基であり、XはH又はFであり、Yは独立してH,F,CFから選択される)の化合物並びに/又は
(ii)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1モル%の式(III)
CF=CF−(CF−(O−CF(CF)−CF−O−(CF−(O)−(CF−CF(I)−X (III)
(式中、XはF又はCFから選択され、gは0又は1であり、hは0〜3から選択される整数であり、iは0〜5から選択される整数であり、jは0又は1から選択される整数であり、kは0〜6から選択される整数である)の化合物である、組成物である。
【0006】
別の態様において、上述された高フッ素化エラストマーゴムを含み、かつ過酸化物硬化系を更に含む硬化性高フッ素化フルオロエラストマー組成物が提供される。
【0007】
更に別の態様において、上述された高フッ素化エラストマーゴムと、過酸化物硬化系との硬化反応の反応生成物を含む硬化高フッ素化フルオロエラストマー組成物が提供される。
【0008】
前述の概要は、各実施形態を記述することを意図するものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細も、以下の説明に記載される。他の特徴、目的及び利点は、説明並びに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用する場合、用語
「a」、「an」、及び「the」は、互換的に使用され、1つ又は2つ以上を意味する。そして、
用語「及び/又は」は、生じ得る記載事例の一方又は両方を指すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)の両方を含む。
「主鎖」は、ポリマーの主となる連続鎖を指す。
「架橋」は、2つの予め形成されたポリマー鎖を、化学結合又は化学基を用いて接続することを指す。
「硬化部位」は、架橋に関与する場合がある、官能基を指す。
「共重合」は、モノマーが一緒に重合されてポリマー主鎖を形成することを指す。
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子である。
用語「ペルフルオロ化」とは、全ての水素原子がフッ素原子に置換されている、炭化水素から得られる基又は化合物を意味する。但し、ペルフルオロ化合物は、酸素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子のようなフッ素原子及び炭素原子以外の原子を含んでもよい。そして、
「ポリマー」は、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも100,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも500,000ダルトン、少なくとも750,000ダルトン、少なくとも1,000,000ダルトン、又は更には少なくとも1,500,000ダルトンであり、かつポリマーの早期ゲル化を引き起こすほどには高くない数平均分子量(Mn)を有するマクロ構造を指す。
【0010】
また、本明細書において、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜10は1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等を含む)を含む。
【0011】
また、本明細書において、「少なくとも1つの」という記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2つ、少なくとも4つ、少なくとも6つ、少なくとも8つ、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)を含む。
【0012】
本開示は、テトラフルオロエチレン(TFE)、1つ以上のペルフルオロエーテルモノマー、並びに高フッ素化ビスオレフィンエーテル及びヨウ素含有ペルフルオロ化エーテルの少なくとも1つから選択される化合物を含むモノマーから得られる高フッ素化エラストマーゴムの重合化に関する。後述の通り、本明細書に記載の高フッ素化エラストマーの重合化により、例えば圧縮永久歪み等の特性が改善したポリマーが得られる。
【0013】
本開示の高フッ素化エラストマーゴムは、テトラフルオロエチレン(TFE)から得られる。含まれるモノマーの総モルの内、30モル%以上〜80モル%以下のTFEを使用してもよい。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーに含まれるモノマーの総モル数の内、30,40,60,62、又は更には65モル%以上、かつ70,75、又は更には80モル%以下のTFEを使用してもよい。
【0014】
また、本開示の高フッ素化エラストマーゴムは、ペルフルオロエーテルモノマーからも得られるものであって、当該ペルフルオロエーテルモノマーは、ペルフルオロビニルエーテルモノマー、ペルフルオロアリルエーテルモノマー、又はペルフルオロビニルエーテルモノマー及びペルフルオロアリルエーテルモノマーの組み合わせである。上記ペルフルオロエーテルモノマーは式(I)によって表される。
CF=CF(CFO(Rf’’O)(Rf’O) (I)
式中、Rf’’及びRf’は、独立して、炭素原子を2,3,4,5、又は6個含む直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、m及びnは、独立して、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10から選択される整数であり、Rは炭素原子を1,2,3,4,5、又は6個含むペルフルオロアルキル基である。ペルフルオロビニルエーテルモノマーの例として、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE−1)、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、ペルフルオロ−メトキシ−メチルビニルエーテル(CF−O−CF−O−CF=CF)、及びCF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF−O−CF=CF、ペルフルオロ(メチルアリル)エーテル(CF=CF−CF−O−CF)、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n−プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルアリルエーテル、ペルフルオロ−メトキシ−メチルアリルエーテル、及びCF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF−O−CF=CF=CF、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
本開示において、含まれるモノマーの総モル数の内、35モル%超〜50モル%未満のペルフルオロエーテルモノマーを使用してもよい。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーに含まれるモノマーの総モル数の内、36,37,38,39、又は更には40モル%以上、かつ49,48、47,46又は更には45モル%未満のペルフルオロエーテルモノマーを使用してもよい。
【0016】
本開示の高フッ素化エラストマーゴムは更に、式(II)で表される高フッ素化ビスオレフィン化合物、式(III)で表されるヨウ素含有ペルフルオロ化エーテル、又はその組み合わせからも得られる。
【0017】
式(II)で表される高フッ素化ビスオレフィン化合物は、任意で以下の式で表されるエーテル結合を少なくとも1つ含む。
CF=CF−(CF−(O−CF(Z)−CF−O−(CF−(O−CF(Z)−CF−(O)−(CF(A))−CX=CY (II)
式中、aは0,1,2から選択される整数であり、bは0,1,2から選択される整数であり、cは0,1,2,3,4,5,6,7,8から選択される整数であり、dは0,1,2から選択される整数であり、eは0又は1であり、fは0,1,2,3,4,5,6から選択される整数であり、Zは独立してF及びCFから選択され、AはF又はペルフルオロ化アルキル基であり、XはH又はFであり、Yは独立してH、F、CFから選択される。好適な実施形態では、式(II)で表される高フッ素化ビスオレフィン化合物はペルフルオロ化されており、これはX及びYが独立してF及びCFから選択されることを意味する。
【0018】
式(II)で表される例示的な化合物として、CF=CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF−CF=CF,CF=CF−CF−O−(CF−O−CF−CF=CF,CF=CF−O−CFCF−CH=CH,CF=CF−(OCF(CF)CF)−O−CFCF−CH=CH,CF=CF−(OCF(CF)CF−O−CFCF−CH=CH,CF=CF CF−O−CFCF−CH=CH,CF=CF CF−(OCF(CF)CF)−O−CFCF−CH=CH,CF=CFCF−(OCF(CF)CF−O−CFCF−CH=CH,CF=CF−CF−CH=CH,CF=CF−O−(CF−O−CF−CF−CH=CH(式中、cは2〜6から選択される整数である)、CF=CFCF−O−(CF−O−CF−CF−CH=CH(式中、cは2〜6から選択される整数である)、CF=CF−(OCF(CF)CF−O−CF(CF)−CH=CH(式中、bは0,1、又は2である)、CF=CF−CF−(OCF(CF)CF−O−CF(CF)−CH=CH(式中、bは0,1、又は2である)、CF=CF−(CF−(O−CF(CF)CF−O−(CF−(OCF(CF)CF−O−CF=CF(式中、aは0又は1であり、bは0,1、又は2であり、cは1,2,3,4,5、又は6であり、fは0,1、又は2である)が挙げられる。
【0019】
一実施形態において、式(II)で表される好適な化合物は、CF=CF−O−(CF−O−CF=CF(式中、nは2〜6から選択される整数である)と、CF=CF−(CF−O−(CF−O−(CF−CF=CF(式中、nは2〜6から選択される整数であり、a及びbは0又は1である)と、ペルフルオロ化ビニルエーテル及びぺルフルオロ化アリルエーテルを含むペルフルオロ化化合物とを含む。
【0020】
本開示において、含まれるモノマーの総モル数に対して、式(II)で表される化合物を0.01モル%〜1モル%使用してもよい。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーに含まれるモノマーの総モル数に対して、0.02,0.05、又は更には0.1モル%以上、かつ0.5,0.75、又は更には0.9モル%以下の式(II)で表される化合物が使用される。
【0021】
式(III)で表されるヨウ素含有ペルフルオロ化エーテルは、以下の式で表される。
CF=CF−(CF−(O−CF(CF)−CF−O−(CF−(O)−(CF−CF(I)−X (III)
式中、XはF及びCFから選択され、gは0又は1であり、hは0,2,3から選択される整数であり、iは0,1,2,3,4,5から選択される整数であり、jは0又は1であり、kは0,1,2,3,4,5,6から選択される整数である。
【0022】
式(III)で表される例示的な化合物として、CF=CFOCI(MV4I),CF=CFOCI,CF=CFOCFCF(CF)OCI,CF=CF−(OCFCF(CF))−O−CI,CF=CF−O−CFCFI−CF,CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFI−CF,CF=CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−CF−O−CF−O−CI,CF=CF−CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−CF−O−(CF−O−CI,CF=CF−CF−O−CI,CF=CF−CF−O−CI,CF=CF−CF−O−CFCF(CF)−O−CI,CF=CF−CF−(OCFCF(CF))−O−CI,CF=CF−CF−O−CFCFI−CF,CF=CF−CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFI−CF、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、式(III)で表される好適な化合物として、CF=CFOCI、CF=CFCFOCI、CF=CFOCI、CF=CFCFOCI、CF=CF−O−(CF−O−CF−CFI及びCF=CFCF−O−(CF−O−CF−CFI(式中、nは2,3,4、又は6から選択される整数である)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
本開示において、含まれるモノマーの総モル数に対して、式(III)で表される化合物を0.01モル%〜1モル%使用してもよい。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーに含まれるモノマーの総モル数に対して、0.02,0.05、又は更には0.1モル%以上、かつ0.5,0.75、又は更には0.9モル%以下の式(III)で表される化合物が使用される。
【0024】
フルオロポリマーの架橋について考察すると、臭素又はヨウ素原子が、重合中にポリマー鎖に組み込まれて架橋のための後続地点を可能にする。本開示においては、式(III)に示すような、ヨウ素連鎖移動剤又はヨウ素含有硬化部位モノマーを介して、ヨウ素原子が高フッ素化ポリマーに組み込まれる。
【0025】
一実施形態において、本開示の高フッ素化エラストマーゴムは、その総重量に対し、0.2又は更には0.25重量%以上、かつ0.4,0.5、又は更には1重量%以下のヨウ素を含む。このようなヨウ素基は、ヨウ素連鎖移動剤による末端基及び/又はヨウ素含有硬化部位モノマーによる末端基であると考えられる。これらヨウ素基は、高フッ素化エラストマーゴムの架橋に使用できる。一実施形態において、フッ素化エラストマー組成物の製造においても、硬化部位モノマーは必要ではない場合がある。一方、他の実施形態では、硬化部位モノマーを含めることにより、フルオロポリマー中に更に硬化部位を増やすことが望ましい場合がある。
【0026】
上述のモノマーに加えて、任意で追加のモノマーを添加してもよく、そのような追加モノマーとしては、例えばガラス温度を大幅に下げるための追加のペルフルオロ化モノマー、追加の硬化部位モノマー、又は所定のペルフルオロ化アルコキシビニルエーテル、或いはI−(CF−I(式中、nは1,2,3,4,5,6、又は7である)のような、末端Iを導入するその他の連鎖移動剤等が挙げられる。
【0027】
一実施形態において、追加のペルフルオロ化モノマーが重合化に使用される。当該追加のペルフルオロ化モノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のようなペルフルオロ化アルケン、及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のようなペルハロゲン化アルケンが挙げられる。
【0028】
通常、これら追加のペルフルオロ化モノマーが使用される場合、それらはフルオロポリマーに組み込まれるモノマーの総モル数に対して、1,2,5、又は更には10モル%以上、かつ25,30、又は更には35モル%以下の量で使用される。
【0029】
一実施形態において、追加の硬化部位モノマーが重合化に使用される。当該硬化部位モノマーとしては、遊離基重合化が可能で、過酸化物硬化反応に寄与可能なヨウ素を含むものが挙げられる。更に、最終的なエラストマーの適切な熱安定性が保証されるよう、追加の硬化部位モノマーはペルフルオロ化されるべきである。過酸化物硬化反応に関与することができるヨウ素は、主鎖の末端位置に位置する。式(III)に記載されたものとは異なる、追加の硬化部位モノマーの例としては、CF=CFCFI、CF=CFI、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
通常、これら更なるモノマーが使用される場合、それらはフルオロポリマーに組み込まれるモノマーの総モル数に対して、0.01,0.02,0.05、又は更には0.1モル%以上、かつ0.5,0.75,0.9、又は更には1モル%以下の量で使用される。
【0031】
本開示の高フッ素化エラストマーゴムは、既知の重合技術のうちのいずれかで得ることができるが、フルオロポリマーは、好ましくは、バッチ、半バッチ、又は連続的重合技術を含む、既知の様式で実行することができる、水性乳化重合プロセスを通して作製される。水性乳化重合プロセスに使用するための反応槽は、典型的には、重合反応中に内部圧力に耐えることができる加圧可能な槽である。典型的には、反応槽は、反応器含有物の完全な混合物を生産する機械撹拌機、及び熱交換システムを含む。任意の量のモノマー(複数可)が、反応槽に充填されてもよい。モノマーは、バッチ毎に、又は連続的若しくは半連続的な様式で充填されてもよい。半連続的とは、重合の過程中、複数のモノマーのバッチが、槽に充填されることを意味する。モノマーをケトルに添加する独立した比率は、時間をともなう特定のモノマーの消費率に依存する。好ましくは、モノマーの添加率は、モノマーの消費率、すなわちポリマーへのモノマーの変換であるに等しい。
【0032】
反応ケトルは、水で充填されるが、その量は重要ではない。水相には、一般にフッ素化界面活性剤、典型的には非テロゲン性(non-telogenic)フッ素化界面活性剤も添加されるが、フッ素化界面活性剤を添加しない水性乳化重合も実施されてもよい。好適なフッ素化界面活性剤には、水性乳化重合で一般的に用いられる任意のフッ素化界面活性剤も挙げられる。一実施形態では、フッ素化界面活性剤は、一般式:
Y−R−Z−M
のものであり、式中、Yは、水素、Cl又はFを表し、Rは、4〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝ペルフルオロ化アルキレンを表し、Zは、COO又はSOを表し、Mはアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを表す。例示的なフッ素化界面活性剤としては、ペルフルオロオクタン酸及びペルフルオロオクタンスルホン酸等のペルフルオロ化アルカン酸のアンモニウム塩を含む。
【0033】
別の実施形態では、フッ素化界面活性剤は、一般式:
[R−O−L−COO (VI)
のものであり、式中、Lは、直鎖部分フッ素化若しくは完全フッ素化アルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは、直鎖部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基、又は1つ以上の酸素原子で中断された直鎖部分フッ素化若しくは完全フッ素化基を表し、Xは、価数iを有する陽イオンを表し、iは、1、2、及び3である。具体的な実施例は、例えば、米国特許公開第2007/0015937号(Hintzerら)に記載されている。例示的な乳化剤としては、CFCFOCFCFOCFCOOH,CHF(CFCOOH,CF(CFCOOH,CFO(CFOCF(CF)COOH,CFCFCHOCFCHOCFCOOH,CFO(CFOCHFCFCOOH,CFO(CFOCFCOOH,CF(CF(CHCFCFCFCFCOOH,CF(CFCH(CFCOOH,CF(CFCOOH,CF(CF(OCF(CF)CF)OCF(CF)COOH,CF(CF(OCFCFOCF(CF)COOH,CFCFO(CFCFO)CFCOOH、及びその塩が挙げられる。一実施形態では、界面活性剤の分子量は、1500、1000、又は更には500グラム/モル未満である。
【0034】
これらのフッ素化界面活性剤は、単独で使用されてもよく、又は2つ以上の混合物として組み合わせて使用されてもよい。界面活性剤の量は概して、使用される水の質量に基づいて、250〜5,000ppm(百万分率)、好ましくは250〜2000ppm、より好ましくは300〜1000ppmの範囲である。
【0035】
連鎖移動剤は、フルオロポリマーの分子量を制御して、所望のゼロ剪断速度粘度を得、かつ/又はポリマー鎖の末端位置でハロゲン(I又はBr)を導入するように使用されてもよい。好適な連鎖移動剤の例としては、式Rを有するものが挙げられ、式中、Pは、Br又はI、好ましくはIであり、Rは、所望により塩素原子を含有する場合がある、1〜12個の炭素原子を有するx価のアルキルラジカルである。xは概して1又は2である。有用な連鎖移動剤としては、ペルフルオロ化一ヨウ化アルキル、ペルフルオロ化二ヨウ化アルキル、ペルフルオロ化一臭化アルキル、ペルフルオロ化二臭化アルキル、ペルフルオロ化一臭化一ヨウ化アルキル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。具体例としては、CFBr、Br(CFBr、Br(CFBr、CFClBr、CFCFBrCFBr、I(CFI(式中、nは1〜10の整数である)(例えば、I(CFI)、Br(CFI(式中、nは1〜10の整数である)(例えば、Br(CFI)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
通常、重合は水相に反応開始剤又は反応開始剤システムの添加によるモノマーの初期充填後、開始する。例えば、過酸化物をフリーラジカル反応開始剤として使用することができる。過酸化物開始剤の具体例としては、過酸化水素、ジアシルペルオキシド(例えばジアセチルペルオキシド、ジプロピオニルペルオキシド、ジブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルアセチルペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド及びジラウリルペルオキシド)、並びに更なる水溶性過酸及びその水溶性塩(例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はカリウム塩)が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に用いることができ、これらの例としては、tert−ブチルペルオキシアセテート及びtert−ブチルペルオキシピバレートが挙げられる。使用することができる開始剤の更なる部類は、水溶性アゾ化合物である。開始剤として用いるために好適な酸化還元系としては、例えばペルオキソジスルフェートと亜硫酸水素又は二亜硫酸水素の組み合わせ、チオスルフェートとペルオキソジスルフェートの組み合わせ、又はペルオキソジスルフェートとヒドラジンの組み合わせが挙げられる。使用することができる更なる開始剤は、過硫酸、過マンガン酸、もしくはマンガン酸、又は複数のマンガン酸のアンモニウム塩、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。用いられる開始剤の量は、重合混合物の全重量を基準にして典型的には0.001〜2重量%の間、好ましくは0.01〜1重量%の間、もっとも好ましくは0.02〜0.2重量%の間である。反応開始剤の全量が重合の開始時に添加されてもよく、又は反応開始剤は、重合中に連続的な方式で70〜80%の変換まで重合に添加され得る。また開始剤の一部を開始時に添加し、重合中に残りを1回の又は別々の追加分として添加することができる。また、例えば鉄、銅及び銀の水溶性塩等の促進剤を添加してもよい。
【0037】
重合反応の開始中、密閉した反応ケトル及びその内容物が、反応温度まで適宜予熱される。重合温度は20℃〜150℃、30℃〜110℃、又は更には40℃〜100℃である。一実施形態においては、カルボニル含有量を低く抑えた状態で重合時間を最適化するため、70℃〜90℃の温度範囲が好ましい場合がある。重合圧力は、典型的には4〜30bar(400〜3,000kPa)、特に8〜20bar(800〜2,000kPa)である。水性乳化重合システムは更に、緩衝剤及び錯体形成剤のような助剤を含んでもよい。
【0038】
重合の終了で得られることができるポリマー固体の量は、典型的には10重量%〜45重量%、好ましくは20重量%〜40重量%であり、得られるフルオロポリマーの平均粒径は、典型的には50nm〜500nm、好ましくは80nm〜250nmである。
【0039】
所定のモノマーの組み合わせと重合条件により、有利な高フッ素化エラストマーゴムが得られることが分かっている。例えば、所定のモノマーの組み合わせと重合条件により、圧縮永久歪みが極めて良好となる高フッ素化エラストマー組成物が得られることが分かっている。米国特許第4,910,276号と異なり、本開示のフルオロポリマーは、ポリマー主鎖が略環状構造を有さない。但し、本明細書に開示の式(II)及び/又は(III)のペルフルオロ化モノマーの使用に、C−H結合は含まれないため、連鎖移動剤が追加されることとはならず、更に炭素鎖にウィークポイント(即ちC−H結合)が導入されないと考えられる。更に、式(II)及び/又は(III)のペルフルオロ化モノマーの使用により、開始剤の使用量が減るため(例えば10ミリモル/kgポリマー)、積分吸光度比も下がり得る。これらの特徴により、最終的なフルオロポリマーの製品性能が高くなり得る(例えば、低圧縮永久歪み、低イオン含有量、高い熱安定性等)。
【0040】
一実施形態において、高フッ素化ゴムは、カルボニル含有量が低い。
【0041】
高フッ素化エラストマーゴムのカルボニル含有量は、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)に基づく積分吸光度比法によって測定することができる。
【0042】
当該方法は、カルボキシル、カルボキシレート、カルボキサミド基の測定にも用いられるものであって、高フッ素化エラストマーゴムのプレスされたフィルムのFT−IRスペクトルの突出したピーク下の積分吸光度に補正されたベースラインに基づく。特に、約1620cm−1〜1840cm−1の最も突出したピークの積分吸光度を測定する。これらのピークは、ポリマー内に存在するカルボニル部分に起因する吸光度と一致する。1620cm−1〜1840cm−1の範囲内の最も強いピーク下の積分吸光度に補正されたこのベースラインは、2220cm−1〜2740cm−1のC−F高次倍音の積分吸光度に補正されたベースラインによって分割され、これは、試料の厚さを示す。これは、ポリマーのカルボキシル、カルボン酸塩、及びカルボキサミド含有量を特徴付けるカルボニル吸光度比を与える。本開示に有用なポリマーは0.07未満、0.04未満、又は更には0.03未満の積分吸光度比を有する。当該測定方法は、米国特許第6,114,452号(Schmiegel)及び8,604,137号(Grootaetら)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
酸性末端基の存在により、フルオロポリマーの所定の性質に悪影響を及ぼすことが知られている。したがって、カルボキシル末端基を非イオン末端基に変換するため、加熱技術が使用されてきた。このようにカルボキシル末端基が非イオン酸フッ化末端基に転換されるが、そのような酸フッ化末端基は、環境中の周囲水により緩やかに加水分解されて、再度カルボキシル末端基に戻るよう転換され得る。したがって、フルオロポリマーは熱処理後に積分吸光度比が低くなるが、時間経過とともに積分吸光度比は増加し得る。上述のようにモノマーが選択され、重合化方法が採用されるため、本開示の一実施形態のフルオロエラストマーは、イオン性末端基の量が最小に抑えられ、そのため熱処理を経なくとも、本明細書に記載の低積分吸光度比を得られる。
【0044】
一実施形態において、特に少量で使用された場合に顕著だが、分枝鎖ポリマーの生成により、高フッ素化エラストマーゴムはその機械的特性及び/又は硬化形態に好適に作用するような高分子構造を有する。
【0045】
分枝又は非直線性の程度は、長鎖分枝指数(LCBI)によって特徴付けることができる。LCBIは、R.N.Shroff,H.Mavridis著、Macromol.、32、8464−8464(1999)及び34、7362〜7367(2001)に記載のように、以下の式により決定することができる:
【0046】
【数1】
上記の式では、分枝鎖ポリマーを溶融することができる溶媒中で、η0、brは、温度Tで測定された分枝鎖ポリマーのゼロ剪断粘度(単位Pa・s)であり、[η]brは、温度T’における分枝鎖ポリマーの固有粘度(単位mL/g)であり、a及びkは、定数である。これらの定数は、次の式から決定される:
【0047】
【数2】
式中、η0,lin及び[η]linは、それぞれ、対応する直鎖ポリマーの、それぞれ同じ温度T及びT’並びに同じ溶媒中で測定されたゼロ剪断粘度及び固有粘度を表す。したがって、当然のことながら、同一の溶媒及び温度を等式1及び2で使用することを条件とする限り、LCBIは、選ばれた測定温度及び溶媒の選択とは無関係である。ゼロ剪断粘度及び固有粘度は、典型的には、凍結固化ポリマーに関して決定される。
【0048】
分枝鎖ポリマーの固有粘度[η]brを決定するためには、ポリマーが有機溶剤に溶けやすい必要がある。高フッ素化ポリマーは、その化学的不活性により、アセトン、エチルアセテート、又はテトラヒドロフランのような標準的な有機溶剤に通常溶けることはない。通常、高フッ素化ポリマーを溶解可能な有機液体は数えるほどしかない。TuminelloらによるJournal of Applied Polymer Science(1995)56巻4号495〜499ページ(「Dissolving Poly(tetrafluoroethylene)in Low Boiling Halocarbons」)における記載によると、ペルハロゲン化炭素であれば高フッ素化ポリマーを溶解可能である。更に、適度な実験室環境において、本開示の高フッ素化エラストマーの溶解に特に適したものとして、ペルフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)(3M Companyから商品名「FLUORINERT FC−75」で入手可能)等のペルフルオロ化溶媒、又はペルフルオロ−5,8,9,12−テトラメチル−4,7,10,13−テトラオキサヘキサデカン(Hostinert−216)等のペルフルオロ化ポリエーテル、又は一般式CFCFCFO[CF(CF)CFO]nCFHCF(2≦n≦4)で表されるHFPOオリゴマーが挙げられる。例えば、本開示のテトラフルオロエチレン及びペルフルオロエーテルモノマーから得られた非結晶コポリマーは35℃のHostinert−216内で容易に溶解可能である。
【0049】
使用されるフルオロポリマーのLCBIは、少なくとも0.2の値を有する必要がある。しかしながら、分枝(したがって、LCBI値)のレベルが大き過ぎる場合、ポリマーは、有機溶媒に溶融できないゲル分率を有する場合がある。当業者は、日常的な実験によってLCBIの適切な値を容易に測定する場合がある。一般に、LCBIは、0.2〜5、好ましくは0.5〜1.5であろう。一実施形態では、LCBIは、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、4、又は更には6より大きい。
【0050】
本開示の一実施形態では、本開示の組成物は、ハロゲン化オレフィン等の代替分枝剤を用いて調製した同一のポリマーと比較してより高いLCBI値を含む。
【0051】
ここでのエラストマーは高フッ素化されている。換言すれば、ポリマー主鎖中の全てのC−H結合は、C−F結合で置き換えられているが、末端基は、フッ素化されていても、又はされていなくてもよい。一実施形態において、本開示のポリマーは、高度にフッ素化されており、これはポリマー主鎖中の80%、90%、95%、99%、又は更には100%のC−H結合が、C−FまたはC−I結合で置き換えられていることを意味する。フルオロエラストマーゴムは、硬化(架橋)されていてもよいし、硬化されていなくて(未架橋)もよい。典型的には、フルオロエラストマーは非晶質である。典型的には、フルオロエラストマーは、融解ピークを有しない。一般に、フルオロエラストマーは、最高25℃、好ましくは0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0052】
上述の高フッ素化エラストマーゴムは、硬化性高フッ素化エラストマー組成物の生成に使用されてもよい。硬化性高フッ素化エラストマー組成物は、硬化性高フッ素化エラストマーゴムと、1つ以上の過酸化硬化系を含む。過酸化物硬化系は、典型的には、有機過酸化物を包含する。過酸化物は、活性化されると、高フッ素化エラストマーを硬化させ、架橋(硬化)フルオロエラストマーを形成する。好適な有機過酸化物は、硬化温度でフリーラジカルを発生させるものである。50℃を超える温度で分解するジアルキル過酸化物又はビス(ジアルキル過酸化物)が特に好ましい。多くの場合、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を有するジ−第三級ブチルペルオキシドを使用することが好ましい。この種のペルオキシドの中で最も有用なものは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三級ブチルペルオキシ)ヘキシン−3及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三級ブチルペルオキシ)ヘキサンである。他の過酸化物は、過酸化ジクミル、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸第三級ブチル、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン)、及びジ[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルペルオキシ)−ブチル]カーボネート等の化合物から選択することができるがこれらに限定されない。一般に、高フッ素化エラストマー100部当たり約1〜5部の過酸化物を使用してもよい。
【0053】
硬化剤は、担体、例えば、シリカ含有担体上に存在してもよい。
【0054】
過酸化物硬化系はまた、1つ以上の助剤を含んでもよい。典型的には、助剤としては、過酸化物と協働して有用な硬化を提供することのできる多価不飽和化合物が挙げられる。これらの助剤は、フルオロポリマー100部当たり0.1〜10部、好ましくはフルオロポリマー100部当たり2〜5部の量で添加されてもよい。有用な助剤の例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、トリアリルホスファイト、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアルキルテレフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリル−フタレート、及びトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートが挙げられる。トリアリルイソシアヌレートが特に有用である。
【0055】
硬化性高フッ素化エラストマー組成物は、酸受容体を更に含有してもよい。フルオロエラストマー耐蒸気性及び耐水性を改善するために酸受容体を添加してもよい。かかる酸受容体は、無機、又は無機酸受容体と有機酸受容体とのブレンドであってもよい。無機酸受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。有機酸受容体としては、エポキシ、ステアリン酸ナトリウム、及びシュウ酸マグネシウムが挙げられる。特に好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛が挙げられる。酸受容体の混合物も同様に使用してもよい。酸受容体の量は、一般に、使用する酸受容体の特性により異なる。
【0056】
一実施形態では、使用する酸受容体の量は、高フッ素化エラストマー100部当たり0.5〜5部である。本開示の一実施形態において、酸受容体は不要、即ち高フッ素化エラストマー組成物は基本的に酸受容体を有さない。本開示の一実施形態において、金属含有酸受容体は不要、即ち硬化性高フッ素化エラストマー組成物は基本的に金属含有酸受容体を有さない。ここで、基本的に酸受容体を有さない、基本的に金属含有酸受容体を有さないとは、高フッ素化エラストマー100部当たり0.01、0.005又は更には0.001部であることを意味する。
【0057】
硬化性高フッ素化エラストマー組成物は、従来のゴム加工設備内で、高フッ素化エラストマー、過酸化物硬化組成物、及び任意に、添加剤を混合して、固形混合物、即ち、当該技術分野において「化合物」とも称される、更なる成分を含有する固形ポリマーを提供することによって調製されてもよい。これらの成分を混合して他の成分を含有するかかる固形ポリマー組成物を生成するこのプロセスは、典型的には、「化合」と呼ばれる。かかる設備としては、ラバーミル、バンバリーミキサ等の密閉式ミキサ、及び混合押出成形機が挙げられる。混合中の混合物の温度は、典型的に、約120℃を超えて上昇しない。混合中、構成要素及び添加剤は、結果として得られるフッ素化ポリマー「化合物」又はポリマーシート全体を通して均一に分散される。その後、この「化合物」は、押出されるか又は、例えば、キャビティ又はトランスファー成形型等の成形型内でプレス成形され、続いてオーブン硬化することができる。代替実施形態では、硬化をオートクレーブの中で行うことができる。
【0058】
フルオロポリマーのムーニー粘度は、ポリマーの分子量を示す。一実施形態において、本開示のフルオロポリマーは、ASTM D 1646−06に開示の方法と同様に測定した場合、121℃でムーニー粘度(ML 1+10)が5〜100、好ましくは15〜80、より好ましくは20〜60である。
【0059】
硬化は、典型的には、硬化性高フッ素化エラストマー組成物を熱処理することによって実現される。熱処理は、硬化したフルオロエラストマーを作成するのに有効な温度で有効な時間にわたり行われる。最適条件は、硬化した高フッ素化エラストマーの機械的及び物理的特性を調べることにより、試験することができる。典型的には、硬化は、120℃超又は150℃超の温度で実行される。典型的な硬化条件としては、160℃〜210℃又は160℃〜190℃の温度での硬化が挙げられる。典型的な硬化期間としては、3〜90分が挙げられる。硬化は、好ましくは、加圧下で行われる。例えば、10〜100bar(1,000〜10,000kPa)の圧力を印加してもよい。硬化プロセスが完全に完了するのを確実にするために、後硬化サイクルが適用されてもよい。後硬化は、170℃〜250℃の温度で1〜24時間の間行われてもよい。
【0060】
硬化された高フッ素化エラストマーは、高温及び/又は腐食性物質に曝される系、例えばとりわけ自動車、化学処理、半導体、航空宇宙、及び石油産業用途における封止、ガスケット、及び成型品として特に有用である。硬化された高フッ素化エラストマーは封止用途で使用され得るため、エラストマーが圧縮下で良好に機能することが重要である。圧縮封止は、容易に圧縮され、かつ嵌合表面上に押し戻す結果として得られる力を生じさせるエラストマーの能力に基づく。この結果として得られる力を幅広い環境条件にわたって時間に応じて維持する材料の能力は、長期安定性にとって重要である。熱膨張、応力緩和、及び熱エージングの結果、初期封止力は、時間と共に減衰するであろう。圧縮永久歪みを測定することにより、様々な条件下、特に200℃、225℃、232℃、250℃、及び更には275℃等の高温条件下におけるエラストマー材の封止力保持性を評価することができる。
【0061】
硬化した高フッ素化エラストマーを使用して、成形物品を調製することができる。かかる物品は、硬化性高フッ素化エラストマー組成物を提供し、かつ充填剤、顔料、可塑剤、潤滑剤等の更なる成分をこの硬化性組成物に添加することによって調製され得る。典型的な充填剤としては、例えば、シリカ含有材料、又はカーボンブラック、グラファイト、煤等のカーボン粒子が挙げられる。或いは、これら成分は、配合工程において既に添加されていてもよく、化合物中に導入される。組成物の成形物品への成形は、例えば、造形された成形型の中で組成物を硬化することによって、又は当該技術分野において既知の方法を用いて、例えば、切断や打抜き切断等により硬化組成物を成形することによって行ってもよい。
【実施例】
【0062】
本開示の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に説明するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、全ての百分率、割合、及び比率は、特に指示しない限り重量による。
【0063】
全ての材料は、例えば、Sigma−Aldrich Company(ミズーリ州、セントルイス)又はAnles(ロシア、サンクトペテロブルグ)等の一般の化学製品供給業者から入手したかもしくは入手可能であり、又は従来の方法によって合成してもよい。
【0064】
以下の実施例において次の略語が使用される:phr=ゴム100に対する配合剤の比。g=グラム、min=分、mol=モル。mmol=ミリモル、hr又はh=〜時間、℃=摂氏〜度、mL=ミリリットル、L=リットル、psi=ポンド/平方インチ圧力、psig=ポンド/平方インチゲージ、MPa=メガパスカル、GCMS=ガスクロマトグラフィー質量分析、FNMR=フーリエ変換核磁気共鳴、N−m=ニュートンーメートル。
【0065】
ヨウ素含有量の測定:ヨウ素含有量を、Enviroscience(ドイツ、デュッセルドルフ)製のASC−240 S自動試料採取器、Enviroscience AQF−2100 F燃焼装置ユニット(ソフトウェア:「NSX−2100、バージョン1.9.8」;Mitsubishi Chemical Analytech Co.,LTD.)、Enviroscience GA−210ガス吸収装置、及びMetrohm「881 compac IC pro」液体クロマトグラフィー分析装置(ソフトウェア:Metrohm「Magic IC Net 2.3」、フロリダ州、リバービュー)を使用して、元素分析によって測定した。ヨウ素含有量は、フルオロポリマーの重量に対する重量%で報告される。
【0066】
平均粒径の測定:ISO/DIS 13321によるマルバーン・ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)1000 HASを用いての動的光散乱によって、ラテックス粒径を測定した。測定前に、ポリマーラテックスを0.001モル/LのKCl溶液で希釈し、測定温度は25℃とした。報告された平均値は、Z平均粒径(中央粒径、d50)である。
【0067】
ポリマー組成測定:19F核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、Bruker社(マサチューセッツ州、ビレリカ)製Avance 400(400.13MHz)で記録した。ポリマーを、アセトン−d6中に、典型的には50mg/mLの濃度で溶解させ、通常1回の測定当たり3000スキャンを適用した。
【0068】
積分吸光度比法:フーリエ変換赤外線分光計上で、積分ピーク強度2220〜2740cm−1の範囲のものに対する1620〜1840cm−1の範囲のものの比を計算することで、積分吸光度比を測定した。
【0069】
ムーニー粘度法:ムーニー粘度値を、121℃で、大きな回転子(ML 1+10)を使用して、MV2000装置(Alpha Technologies,Ohioから入手可能)によりASTM D 1646−06 Type Aと同様の方法で測定した。結果はムーニー単位で記録した。
【0070】
比較例1(CE−1)
無酸素状態で、4リットルのケトルに2500mLの脱イオン水を入れ、20gのCF−O−(CF−O−CFH−CF−COONH(米国特許第7,671,112号の「化合物11の調整(Preparation of Compound 11)」の通りに調整)を乳化剤として添加した。80℃まで加熱後、95gのテトラフルオロエテン(TFE)、700gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、7gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による20mLの脱イオン水に溶解した0.5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び80℃で、600gのTFE、540gのPMVEが330分間供給された。得られたラテックスは、固体分が30%であり、MgClにより凝固させた。得られた1.1kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0071】
得られたポリマーの組成は、NMR(核磁気共鳴)によるとTFEが61モル%、PMVEが39モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.2重量%であった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.014で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が19であった。
【0072】
(実施例2)
本試料は、実施例1に記載の通りに調整、凝固、乾燥させたが、オクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンの添加量は4gのみとし、重合に際して7.3gのぺルフロオロ−[(6−ヨード−4−オキサ−ヘキシル)−ビニル]−エーテル(MV32−I)がさらに添加された。
【0073】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが61モル%、PMVEが39モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.2重量%であった。ヨウ素は、ヨウ素含有連鎖移動剤及び/又はヨウ素含有硬化部位モノマー(CSM)によるものである。ヨウ化CSM MV32−Iの量を計算したところ、0.09モル%であり、よって全フルオロポリマーに対しヨウ素が0.1重量%となった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.04で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が65であった。
【0074】
(実施例3)
無酸素条件下で、40リットルのケトルに、28Lの脱イオン水を入れた。乳化剤として、220gのCF−O−(CF−O−CFH−CF−COONHを添加した。90℃まで加熱後、590gのテトラフルオロエテン(TFE)、1,740gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、48gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による290mLの脱イオン水への溶解した3.5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び90℃で、4,500gのTFEと、4,090gのPMVEと、54gのぺルフロオロ−[(6−ヨード−4−オキサ−ヘキシル)−ビニル]−エーテル(MV32−I)と、追加で340gの脱イオン水中に溶解した4.1gのAPSとを、380分間にわたって供給した。得られたラテックスは、23%の固体分を有し、MgSOを使用して凝固させた。得られた8.6kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0075】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが67.6モル%、PMVEが32.4モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.4重量%であった。ヨウ素は、ヨウ素含有連鎖移動剤及び/又はヨウ素含有硬化部位モノマー(CSM)によるものである。ヨウ化CSM MV32−Iの量を計算したところ、0.13モル%であり、よってヨウ素が0.13重量%となった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.05で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が16であった。
【0076】
(実施例4)
無酸素条件下で、40リットルのケトルに、28Lの脱イオン水を入れた。乳化剤として、180gのCF−O−(CF−O−CFH−CF−COONHを添加した。80℃まで加熱後、650gのテトラフルオロエテン(TFE)、1,920gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、45gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による50mLの脱イオン水に溶解した5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び80℃で、6,500gのTFEと、5,920gのPMVEと、78gのぺルフロオロ−[(6−ヨード−4−オキサ−ヘキシル)−ビニル]−エーテル(MV32−I)を190分間にわたって供給した。得られたラテックスは、30%の固体分を有し、MgSOを使用して凝固させた。得られた12kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0077】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが66.4モル%、PMVEが33.6モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.33重量%であった。ヨウ素は、ヨウ素含有連鎖移動剤及び/又はヨウ素含有硬化部位モノマー(CSM)によるものである。ヨウ化CSM MV32−Iの量を計算したところ、0.13モル%であり、よってヨウ素が0.13重量%となった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.031で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が56であった。
【0078】
(実施例5)
無酸素条件下で、40リットルのケトルに、28Lの脱イオン水を入れた。乳化剤として、180gのCF−O−(CF−O−CFH−CF−COONHを添加した。80℃まで加熱後、650gのテトラフルオロエテン(TFE)、1,960gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、58gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による50mLの脱イオン水に溶解した5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び80℃で、6,500gのTFEと、5,910gのPMVEと、64gのぺルフロオロ−[(6−ヨード−4−オキサ−ヘキシル)−ビニル]−エーテル(MV32−I)を215分間にわたって供給した。得られたラテックスは、93nmの平均粒径と、30%の固体分を有し、MgSOを使用して凝固させた。得られた12kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0079】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが63.1モル%、PMVEが32.9モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.34重量%であった。ヨウ素は、ヨウ素含有連鎖移動剤及び/又はヨウ素含有硬化部位モノマー(CSM)によるものである。ヨウ化CSM MV32−Iの量を計算したところ、0.11モル%であり、よってヨウ素が0.11重量%となった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.033で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が36であった。
【0080】
(実施例6)
無酸素条件下で、40リットルのケトルに、28Lの脱イオン水を入れた。乳化剤として、180gのCF3−O−(CF−O−CFH−CF−COONHを添加した。80℃まで加熱後、570gのテトラフルオロエテン(TFE)、2,160gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、43gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による50mLの脱イオン水に溶解した5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び80℃で、5,850gのTFEと、6,560gのPMVEと、64gのぺルフロオロ−[(6−ヨード−4−オキサーヘキシル)−ビニル]−エーテル(MV32−I)を185分間にわたって供給した。得られたラテックスは、30%の固体分を有し、MgSOを使用して凝固させた。得られた12kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0081】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが62.3モル%、PMVEが37.7モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.37重量%であった。ヨウ素は、ヨウ素含有連鎖移動剤及び/又はヨウ素含有硬化部位モノマー(CSM)によるものである。ヨウ化CSM MV32−Iの量を計算したところ、0.11モル%であり、よってヨウ素が0.13重量%となった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.047で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が36であった。
【0082】
(実施例7)
無酸素条件下で、40リットルのケトルに、28Lの脱イオン水を入れた。乳化剤として、180gのCF−O−(CF−O−CFH−CF−COONHを添加した。80℃まで加熱後、660gのテトラフルオロエテン(TFE)、1,990gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、78gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による50mLの脱イオン水に溶解した5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び80℃で、2,590gのTFEと、2,460gのPMVEと、13.4gの3,7−ジオキサ−ドデカフルオロノナ−1,8−ジエン(DVE−3)を113分間にわたって供給した。得られたラテックスは、15%の固体分を有し、MgSOを使用して凝固させた。得られた5kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0083】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが67.4モル%、PMVEが32.6モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.69重量%であった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.052で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が1であった。
【0084】
(実施例8)
無酸素条件下で、40リットルのケトルに、28Lの脱イオン水を入れた。乳化剤として、180gのCF−O−(CF−O−CFH−CF−COONHを添加した。80℃まで加熱後、650gのテトラフルオロエテン(TFE)、1,960gのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、79gのオクタフルオロ−1,4−ジヨードブタンを添加した。連続供給による50mLの脱イオン水に溶解した5gのペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の添加により、反応を開始させた。17バール(1,700kPa)圧力及び80℃で、6,500gのTFEと、5,900gのPMVEと、34gの3,7−ジオキサ−ドデカフルオロノナ−1,8−ジエン(DVE−3)を174分間にわたって供給した。得られたラテックスは、31%の固体分を有し、MgSOを使用して凝固させた。得られた13kgのポリマーを120℃で乾燥させた。
【0085】
得られたポリマーの組成は、NMRによるとTFEが64.5モル%、PMVEが35.5モル%であり、イオンクロマトグラフ法によるとヨウ素が0.32重量%であった。得られたポリマーは、積分吸光度比が0.036で、ムーニー粘度(1+10’,121℃)が50であった。
【0086】
化合物配合組成
下記のように、各試料(比較例1及び実施例2〜8)のポリマーは、過酸化物硬化パッケージによりプレス硬化され、様々な物理特性が測定された。各ケースにおいて、上述の実施例のポリマー100部を、二段ロール機上で、25部のCancarb Ltd.(カナダ、アルバータ州、メディシンハット)から商品名「THERMAX FLOFORM MEDIUM THERMAL CARBON BLACK N990」、ASTM N990で入手可能なカーボンブラックN−990と、2.5部のAkzoNobel Polymer Chemicals LLC(イリノイ州、シカゴ)から商品名「TRIGONOX 101−50 pd」で販売されている過酸化物と、3部の日本化成株式会社(日本)から商品名「TAIC」で入手可能なTAIC(トリアリルイソシアヌレート)(70%)と混合する。ZnO(ランクセス社(ドイツ、レバークーセン)から入手可能)を5部添加した各試料を、下記では符号Aで示す。ZnO無添加の試料を符号Bで示す。
【0087】
プレス硬化:177℃で7分間、約10メガパスカル(10MPa)でプレスして、物理特性を測定するための150×150×2.0mmの試料シートを用意した。
【0088】
二次硬化:プレス硬化されたシートは、オーブンにて、16時間、230℃の熱に曝して、二次硬化した。
【0089】
硬化レオロジー:試験を、未硬化の配合済み試料を用いて、レオメータ(例えば、アルファテクノロジー社製ラバー・プロセス・アナライザ(RPA)2000型)を用いて、ASTM D 5289に従い、177℃、前加熱なし、経過時間12分、0.5度arc、毎分100サイクルで実施した。最小トルク(M)、及び平坦域又は最大トルク(M)が得られない場合は特定の期間中に到達する最も高いトルク(M)の両方を、測定した。また、トルクがMより上に2単位増加する時間(t2)、トルクがM+0.5(M−M)に等しい値に到達する時間(t’50)、及びトルクがM+0.9(M−M)に到達する時間(t’90)も測定した。表1A及び1Bに結果を示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
硬化性組成物の二次硬化済みシート(処理は上記参照)を使用して、物理特性を測定した。全ての被検査物は試験前に周囲温度に戻した。
【0093】
物理的特性
対応する二次硬化済みシートからASTM D 412のパンチダイDを使用して切断した試料を使用して、ASTM D 412に従って破断点引張強さ、破断点伸び、及び100%伸長時の弾性率を測定した。
【0094】
ショアA硬度は、ISO 7619−1を使用し、タイプA−2ショアデュロメータを用いて測定した。
【0095】
O−リング成形及び圧縮永久歪み
0.139インチ(3.5mm)の断面厚さを有するOリングを、配合済み試料から成形し(177℃で12分間の硬化)、引き続き230℃の空気中で16時間の二次硬化を行った。このOリングを、表2A及び2Bの通りの様々な時間及び温度での25%の初期たわみで、ASTM 395−89方法Bに記載のものと同様の方法に従って圧縮永久歪み試験に供した(3回ずつ分析した)。
【0096】
表2A及び2Bに、各試料の物理特性と圧縮永久歪みを示す。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずとも、本発明に関し予測可能な修正及び変更が当業者には明白であろう。本発明は、説明のみを目的として本出願に記載される実施形態に限定されるべきではない。
本発明は以下の態様を包含する。
項目1:
高フッ素化エラストマーゴムを含む組成物であって、
(a)含まれるモノマーの総モルの内、30モル%以上〜80モル%以下のテトラフルオロエチレンモノマーと、
(b)含まれるモノマーの総モルの内、35モル%超〜50モル%未満の下記式の1つ以上のペルフルオロ化エーテルモノマーと、ここで前記ペルフルオロ化エーテルモノマーは、
CF=CF(CFO(Rf’’O)(Rf’O) (I)
(式中、Rf’’及びRf’は、独立して、2〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、m及びnは、独立して、0〜10の整数であり、Rは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、bは0又は1である)から選択され、
(c)(i)及び(ii)の少なくとも1つから選択される化合物と、から得られる前記組成物であって、ここで
(i)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1モル%の式(II)
CF=CF−(CF−(O−CF(Z)−CF−O−(CF−(O−CF(Z)−CF−(O)−(CF(A))−CX=CY (II)
(式中、aは0〜2から選択される整数であり、bは0〜2から選択される整数であり、cは0〜8から選択される整数であり、dは0〜2から選択される整数であり、eは0又は1であり、fは0〜6から選択される整数であり、Zは独立してF又はCFから選択され、AはF又はペルフルオロ化アルキル基であり、XはH又はFであり、Yは独立してH、F、及びCFから選択される)の化合物と、
(ii)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1モル%の式(III)
CF=CF−(CF−(O−CF(CF)−CF−O−(CF−(O)−(CF−CF(I)−X (III)
(式中、XはF又はCFから選択され、gは0又は1であり、hは0〜3から選択される整数であり、iは0〜5から選択される整数であり、jは0又は1から選択される整数であり、kは0〜6から選択される整数である)の化合物である、組成物。
項目2:
積分吸光度比が0.1未満である、項目1に記載の高フッ素化エラストマーゴム組成物。
項目3:
前記ペルフルオロ化エーテルモノマーは、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE−1)、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、及びCF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF−O−CF=CF、ペルフルオロ(メチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n−プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルアリルエーテル、及びCF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF−O−CFCF=CFの少なくとも1つから選択される、項目1又は2に記載の高フッ素化エラストマーゴム組成物。
項目4:
前記式(II)の化合物は、CF=CF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CFCF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CFCF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CFCF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CFCF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CFCF−O−(CF−O−CF=CF、CF=CFCF−O−(CF−O−CF=CF、及びCF=CFCF−O−(CF−O−CF=CFの少なくとも1つから選択される、項目1〜3のいずれかに記載の高フッ素化エラストマーゴム組成物。
項目5:
前記式(III)の化合物は、CF=CFOCI(MV4I)、CF=CFOCFCFCF−O−CI、CF=CFOCI、及びCF=CFOCFCF(CF)OCIの少なくとも1つから選択される、項目1〜4のいずれかに記載の高フッ素化エラストマーゴム組成物。
項目6:
HFP及びCTFEの少なくとも1つから選択される(d)追加のペルフルオロ化モノマーを更に含む、項目1〜5のいずれかに記載の高フッ素化エラストマーゴム組成物。
項目7:
I−CF=CFの少なくとも1つから選択される(d)追加の硬化部位モノマーを更に含む、項目1〜6のいずれかに記載の高フッ素化エラストマーゴム組成物。
項目8:
項目1〜7のいずれかに記載の組成物及び過酸化物硬化系を含む、硬化性組成物。
項目9:
項目1〜7のいずれかに記載の高フッ素化エラストマーと、過酸化物硬化系との硬化反応の反応生成物を含む、硬化フルオロエラストマー組成物。
項目10:
項目9に記載の硬化高フッ素化エラストマーを含む成形物品。
項目11:
ホース、管類、及びOリングの少なくとも1つから選択される、項目10に記載の成形物品。
項目12:
高フッ素化エラストマーゴムを製造する方法であって、前記高フッ素化エラストマーゴムは、
(a)含まれるモノマーの総モルの内、30モル%以上〜80モル%以下のテトラフルオロエチレンモノマーと、
(b)含まれるモノマーの総モルの内、35モル%超〜50モル%未満の下記式の1つ以上のペルフルオロ化エーテルモノマーと、ここで前記ペルフルオロ化エーテルモノマーは、
CF=CF(CFO(Rf’’O)(Rf’O) (I)
(式中、Rf’’及びRf’は、独立して、2〜6個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、m及びnは、独立して、0〜10の整数であり、Rは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、bは0又は1である)から選択され、
(c)(i)及び(ii)の少なくとも1つから選択される化合物と、から選択されるモノマーから得られ、ここで
(i)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1モル%の式(II)
CF=CF−(CF−(O−CF(Z)−CF−O−(CF−(O−CF(Z)−CF−(O)−(CF(A))−CX=CY (II)
(式中、aは0〜2から選択される整数であり、bは0〜2から選択される整数であり、cは0〜8から選択される整数であり、dは0〜2から選択される整数であり、eは0又は1であり、fは0〜6から選択される整数であり、Zは独立してF又はCFから選択され、AはF又はペルフルオロ化アルキル基であり、XはH又はFであり、Yは独立してH、F、及びCFから選択される)の化合物と、
(ii)含まれるモノマーの総モルの内、0.01〜1モル%の式(III)
CF=CF−(CF−(O−CF(CF)−CF−O−(CF−(O)−(CF−CF(I)−X (III)
(式中、XはF又はCFから選択され、gは0又は1であり、hは0〜3から選択される整数であり、iは0〜5から選択される整数であり、jは0又は1から選択される整数であり、kは、0〜6から選択される整数である)の化合物であって、
前記方法は、1つ以上の開始剤を含む水性媒体中、反応温度で前記モノマーを重合することを含む、方法。
項目13:
前記反応温度は約60℃〜85℃である、項目12に記載の方法。
項目14:
前記重合は、
[R−O−L−COO (VI)
(式中、Lは、直鎖部分フッ素化若しくは完全フッ素化アルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表し、Rは、直鎖部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基、又は1つ以上の酸素原子で中断された直鎖部分フッ素化若しくは完全フッ素化基を表し、Xは、価数iを有する陽イオンを表し、iは、1、2、及び3である)から選択されるフッ素化乳化剤を更に含む、項目12又は13に記載の方法。
項目15:
前記高フッ素化エラストマーゴムの積分吸光度比が0.1未満である、項目12〜14のいずれかに記載の方法。