特許第6605478号(P6605478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6605478磁界に対する応答が改善された磁気抵抗素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6605478
(24)【登録日】2019年10月25日
(45)【発行日】2019年11月13日
(54)【発明の名称】磁界に対する応答が改善された磁気抵抗素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/08 20060101AFI20191031BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20191031BHJP
   H01L 43/10 20060101ALI20191031BHJP
【FI】
   H01L43/08 Z
   G01R33/09
   H01L43/10
【請求項の数】26
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-545809(P2016-545809)
(86)(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公表番号】特表2017-504208(P2017-504208A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】US2015010417
(87)【国際公開番号】WO2015105830
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年12月22日
(31)【優先権主張番号】61/925,446
(32)【優先日】2014年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/452,783
(32)【優先日】2014年8月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】591150395
【氏名又は名称】コミサリア タ レネルジー アトミック エ オー エネルジー アルテルナティーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】フェルモン,クロード
(72)【発明者】
【氏名】パネティア−ルクール,ミリアン
(72)【発明者】
【氏名】シリル,マリー−クレール
(72)【発明者】
【氏名】ドレスラー,シリル
(72)【発明者】
【氏名】カムピリオ,パオロ
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−174217(JP,A)
【文献】 特開2003−008100(JP,A)
【文献】 特開2002−111094(JP,A)
【文献】 特表2009−527745(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0058587(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0191348(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0036315(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0206831(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/095971(WO,A1)
【文献】 特開2006−179566(JP,A)
【文献】 特表2003−526911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/08
G01R 33/09
H01L 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子であって、
基板と、
前記基板の上に配置された第1の層であって、シード層を含む、第1の層と、
前記第1の層の上に配置された第2の層であって、第1の反強磁性固定化層を含む、第2の層と、
前記第2の層の上に配置された第3の層であって、前記第3の層は第1の固定層を含み、前記第2の層の位置は前記第3の層の磁化に影響を与えるように選択される、第3の層と、
前記第3の層の上に配置された第4の層であって、第1の非磁性スペーサ層を含む、第4の層と、
前記第4の層の上に配置された第5の層であって、前記第5の層は自由層を含み、前記自由層は複数の磁区を有し、前記複数の磁区は、
第1の方向を指す磁界を有する第1の複数の磁区と、
第1の方向とは異なる1つ又は複数の方向を指す磁界を有する第2の複数の磁区と
を含む、第5の層と、
前記第5の層の上に配置された第6の層であって、第2の固定層を含み、単一の強磁性層からなる、第6の層と、
前記第6の層の上に配置された第7の層であって、前記第7の層は第2の反強磁性固定化層を含み、前記第7の層の位置は前記第6の層の磁化に影響を与えるように選択され、前記第6の層は前記第5の層に対して選択された位置にあり、前記第5の層に対する前記第6の層の前記選択された位置は、前記第5の層を完全に固定することなく、前記第5の層における前記第2の複数の磁区内の磁区の量の選択された減少をもたらす、第7の層と、
前記第5の層と、一緒に考慮した前記第6及び第7の層との間に配置された第8の層であって、前記第8の層は第2の非磁性スペーサ層を含み、前記第8の層の材料は、前記第5の層と前記第6の層との間での所望の部分的な固定を可能にしながら、前記第8の層の厚さが0.5nmよりも大きくなることを可能にするように選択される、第8の層と
を備え、前記第1の固定層は、
前記第2の層に近接して配置された第1の強磁性固定層と、
前記第1の強磁性固定層の上に配置された第3の非磁性スペーサ層と、
前記第3の非磁性スペーサ層の上に配置された第2の強磁性固定層と
から構成され、
前記第1及び第2の固定層における磁界方向は、90度離れるようにアニールされ、前記第2の固定層における磁界方向は、前記第2の反強磁性固定化層における磁界方向と平行であり、
前記第1及び第2の反強磁性固定化層の両方がPtMnから構成され、
前記磁気抵抗素子の少なくとも一部はヨーク形状を有し、
前記第6の層及び第7の層が、前記第6の層及び第7の層全体においてそれぞれの一様な厚さを有する、
磁気抵抗素子。
【請求項2】
前記第2の非磁性スペーサ層の材料は、前記第5の層と前記第6の層との間の磁気結合が最大の強磁性結合と最大の反強磁性結合との間となることを可能にするように、前記第2の非磁性スペーサ層の厚さが0.5nmより大きいことを可能にするように選択される、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項3】
前記第2の非磁性スペーサ層は、前記第5の層と前記第6の層との間の調整可能なRKKY結合を提供するように選択された材料から構成される、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項4】
前記第2の非磁性スペーサ層はRuから構成される、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項5】
前記第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmと約2nmの間である、請求項4に記載の磁気抵抗素子。
【請求項6】
前記第2の非磁性スペーサ層が、Ru、Ag又はAuのうちの選択された1つから構成される、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項7】
前記第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmと約2nmの間である、請求項6に記載の磁気抵抗素子。
【請求項8】
前記第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmと約2nmの間である、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項9】
前記第2の非磁性スペーサ層の材料及び厚さは、前記第5の層の部分的な固定をもたらすように選択され、前記部分的な固定は、前記第6の層と前記第5の層との間の磁気結合が前記第3の層と前記第5の層との間の磁気結合よりも小さいことに対応する、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項10】
前記第2の非磁性スペーサ層はRuから構成され、前記第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.5nmから約1.7nmの間である、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項11】
前記第2の反強磁性固定化層の材料は、両方が300℃より上の、ネール温度及びブロッキング温度を有するように選択される、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項12】
前記第1及び第2の固定層の両方がCoFeから構成される、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項13】
前記第1及び第2の強磁性固定層はCoFeから構成され、前記第3の非磁性スペーサ層はRuから構成される、請求項12に記載の磁気抵抗素子。
【請求項14】
磁気抵抗素子の製造方法であって、
基板上に二重固定磁気抵抗素子を堆積させるステップを含み、
前記二重固定磁気抵抗素子は、
前記基板の上に配置された第1の反強磁性固定化層と、
前記反強磁性固定化層の上に配置された第1の固定層と、
前記第1の固定層の上に配置された第1の非磁性スペーサ層と、
前記第1の非磁性スペーサ層の上に配置された自由層と、
前記自由層の上に配置され、単一の強磁性層からなる第2の固定層と、
前記第2の固定層の上に配置された第2の反強磁性固定化層と、
前記第2の固定層と前記自由層との間に配置された第2の非磁性スペーサ層であって、前記第2の非磁性スペーサ層の材料は、前記第2の固定層と前記自由層との間の所望の部分的な固定を可能にしながら、前記第2の非磁性スペーサ層の厚さが0.5nmよりも大きくなることを可能にするように選択される、第2の非磁性スペーサ層と
を含み、前記第1の固定層は、
前記第1の反強磁性固定化層に近接して配置された第1の強磁性固定層と、
前記第1の強磁性固定層の上に配置された第3の非磁性スペーサ層と、
前記第3の非磁性スペーサ層の上に配置された第2の強磁性固定層と
から構成され、
前記第1及び第2の固定層における磁界方向は、90度離れるようにアニールされ、前記第2の固定層における磁界方向は、前記第2の反強磁性固定化層における磁界方向と平行であり、
前記第1及び第2の反強磁性固定化層の両方がPtMnから構成され、
前記二重固定磁気抵抗素子を堆積させるステップは、前記二重固定磁気抵抗素子の少なくとも一部をヨーク形状に堆積させるステップを含
前記第2の固定層及び前記第2の反強磁性固定化層が、前記第2の固定層及び前記第2の反強磁性固定化層全体においてそれぞれの一様な厚さを有する、
方法。
【請求項15】
前記第2の非磁性スペーサ層の材料は、前記第2の固定層と前記自由層との間の磁気結合が最大の強磁性結合と最大の反強磁性結合との間になることを可能にするように、前記第2の非磁性スペーサ層の厚さが0.5nmより大きいことを可能にするように選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のアニーリング温度、第1のアニーリング磁界、第1のアニーリング磁界方向及び第1のアニーリング時間で、前記第1の固定層及び前記第1の反強磁性固定化層をアニールするステップと、
第2のアニーリング温度、第2のアニーリング磁界、第2のアニーリング磁界方向及び第2のアニーリング時間で、前記第2の固定層及び前記第2の反強磁性固定化層をアニールするステップと
を含み、
前記第1のアニーリング磁界方向は選択された磁化方向にあり、
前記第2のアニーリング磁界方向は前記第1のアニーリング磁界方向と直交し、
前記第1のアニーリング磁界は前記第2のアニーリング磁界より高く、前記第2のアニーリング磁界は、前記第1の固定層のアニーリング又は前記第1の反強磁性固定化層のアニーリングに影響を与えることなく、前記第2の固定層のアニーリング及び前記第2の反強磁性固定化層のアニーリングをもたらすように選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のアニーリング磁界は約1テスラであり、前記第2のアニーリング磁界は約20ミリテスラから約100ミリテスラの範囲にある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のアニーリング温度は約295℃であり、前記第2のアニーリング温度は約3
00℃であり、前記第1のアニーリング時間は約1時間であり、前記第2のアニーリング時間は約1時間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2の固定層の両方がCoFeから構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1及び第2の固定層の両方がCoFeから構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の非磁性スペーサ層はRuから構成され、前記第2の非磁性スペーサ層の厚さが約0.9nmと約2nmの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の非磁性スペーサ層はRuから構成され、前記第2の非磁性スペーサ層の厚さが約0.5nmと約1.5nmの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記ヨーク形状の長さ(L)及び前記ヨーク形状の横方向アームの長さ(d)は、それぞれ前記ヨーク形状の幅(w)の少なくとも3倍であり、前記ヨーク形状の幅(w)は、約1μmと約20μmの間であり、前記長さ(L)は前記ヨーク形状の最長の寸法である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記ヨーク形状の長さ(L)及び前記ヨーク形状の横方向アームの長さ(d)は、それぞれ前記ヨーク形状の幅(w)の少なくとも3倍であり、前記ヨーク形状の幅(w)は、約1μmと約20μmの間であり、前記長さ(L)は前記ヨーク形状の最長の寸法である、請求項1に記載の磁気抵抗素子。
【請求項25】
前記第2の非磁性スペーサ層は、約−50mTと約50Tの間の、前記第5の層と前記第6の層との間のRKKY結合を提供する、請求項10に記載の磁気抵抗素子。
【請求項26】
前記第2の非磁性スペーサ層は、約−50mTと約50Tの間の、前記自由層と前記第2の固定層との間のRKKY結合を提供する、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、スピンエレクトロニクス磁気抵抗素子に関し、より詳細には、磁界に対する改善された応答を有する巨大磁気抵抗(GMR)素子及びトンネル磁気抵抗(TMR)素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において使用されるとき、「磁界検知素子」という用語は、磁界を検知することができる様々な電子素子を記述するために使用されている。このような磁界検知素子の1つは磁気抵抗(MR)素子である。磁気抵抗素子は、磁気抵抗素子によって経験される磁界に関連して変化する抵抗を有する。
【0003】
知られているように、異なるタイプの磁気抵抗素子が存在しており、例えばアンチモン化インジウム(InSb)などの半導体磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗(GMR)素子、例えばスピンバルブ、異方性磁気抵抗素子(AMR)、及び磁気トンネル接合(MTJ)素子とも呼ばれるトンネリング磁気抵抗(TMR)素子がある。
【0004】
これらの磁気抵抗素子のうち、GMR素子及びTMR素子は、スピンエレクトロニクス(すなわち電子スピン)を使用して動作し、GMR素子又はTMR素子の抵抗は、いわゆる「自由層」中の磁化の角度方向に関連付けられる。自由層については、以下でより完全に説明される。
【0005】
磁気抵抗素子は、単一の素子であってもよいし、又は、代替的に、様々な構成、例えば半ブリッジ又は全(ホイートストン)ブリッジで配置された2つ又はそれ以上の磁気抵抗素子を含むことも可能である。
【0006】
知られているように、金属系又は金属磁気抵抗素子(例えば、GMR、TMR、AMR)は、それらが形成された基板に対して平行な感度の軸を有する傾向がある。
本明細書において使用されるとき、「磁界センサ」という用語は、磁界検知素子を使用している、一般的には他の回路と組み合わせた回路を記述するために使用されている。典型的な磁界センサの場合、磁界検知素子及び他の回路は、共通の基板上に集積化され得る。
【0007】
磁界センサは、限定されないが、磁界の方向の角度を検知する角度センサ、電流搬送導体によって搬送される電流によって生成される磁界を検知する電流センサ、強磁性体の近接を検知する磁気スイッチ、強磁性物品、例えばリング磁石又は強磁性ターゲット(例えば歯車の歯)の磁区の通過を検知する、磁界センサがバックバイアス磁石又は他の磁石と組み合わせて使用される回転検出器、及び磁界の磁界密度を検知する磁界センサを始めとする様々な応用例で使用されている。
【0008】
様々なパラメータが、磁界センサ及び磁界検知素子の性能を特徴付ける。磁界検知素子に関しては、パラメータは、磁界検知素子の出力信号が磁界に応答して変化する感度、及び磁界センサの出力信号が磁界に対して線形に変化する(すなわち正比例する)度合である線形性を含む。
【0009】
GMR素子及びTMR素子は、例えばホール素子と比較すると、比較的高い感度を有することが知られている。また、GMR素子及びTMR素子は、適度に良好な線形性を有することも知られているが、磁界の限られた範囲にわたるものであり、当該範囲はホール素子が動作することができる範囲よりもさらに限定されている。しかしながら、限定された磁界の範囲においてさえ、GMR素子又はTMR素子の線形性が不規則性の問題を抱えていることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、線形性の不規則性が低減されたGMR素子又はTMR素子を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、線形性の不規則性が低減されたGMR又はTMR素子(又は任意のスピンエレクトロニクスの磁気抵抗素子)を提供する。
本発明の態様を理解するための有用な例によれば、磁気抵抗素子は、基板と、基板の上に配置された第1の層とを含み、第1の層はシード層を含む。磁気抵抗素子はまた、基板の上に配置された第2の層を含み、第2の層は第1の反強磁性固定化層(pinning layer)を含む。磁気抵抗素子はまた、基板の上に配置されて第2の層に近接する第3の層を含み、第3の層は第1の固定層を含み、第2の層の位置は第3の層の磁化に影響を与えるように選択される。磁気抵抗素子はまた、基板の上に配置されて第3の層に近接する第4の層を含み、第4の層は第1の非磁性スペーサ層を含む。磁気抵抗素子はまた、基板の上に配置されて第4の層に近接する第5の層を含み、第5の層は自由層を含み、自由層は複数の磁区を有する。複数の磁区は、第1の方向を指す磁界を有する第1の複数の磁区と、第1の方向とは異なる1つ又は複数の方向を指す磁界を有する第2の複数の磁区とを含む。磁気抵抗素子はまた、基板の上に配置された第6の層を含み、第6の層は第2の固定層を含む。磁気抵抗素子はまた、基板の上に配置されて第6の層に近接する第7の層を含み、第7の層は第2の反強磁性固定化層を含む。第7の層の位置は、第6の層の磁化に影響を与えるように選択される。第6の層は、第5の層に対して選択された位置にある。第5の層に対する第6の層の選択された位置は、第5の層を完全に固定することなく、第5の層における第2の複数の磁区内の磁区の量の選択された減少をもたらす。磁気抵抗素子はまた、第5の層と、一緒に考慮した第6及び第7の層との間に配置された第8の層を含む。第8の層は、第2の非磁性スペーサ層を含む。第8の層の材料は、第5の層と第6の層との間での所望の部分的な固定を可能にしながら、第8の層の厚さが0.5nmよりも大きくなることを可能にするように選択される。
【0012】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第8の層の周囲のいくつかの層は異なっているか又は省略される。
いくつかの実施形態では、上述磁気抵抗素子は、任意の組み合わせで、以下の態様のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0013】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の材料は、第5の層と第6の層との間の磁気結合が最大の強磁性結合と最大の反強磁性結合との間となることを可能にするように、第2の非磁性スペーサ層の厚さが0.5nmより大きいことを可能にするように選択される。
【0014】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層は、第5の層と第6の層との間の調整可能なRKKY結合を提供するように選択された材料から構成される。
【0015】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層はRuで構成される。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmと約2nmの間である。
【0016】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層は、Ru、Ag、又はAuのうちの選択された1つから構成される。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmと約2nmの間である。
【0017】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmと約2nmの間である。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の材料及び厚さは、第5の層の部分的な固定をもたらすように選択され、当該部分的な固定が第6の層と第5の層との間の磁気結合が第3の層と第5の層との間の磁気結合よりも小さいことに対応する。
【0018】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.1nmと約1.7nmの間である。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の反強磁性固定化層の材料は、第1の反強磁性固定化層の材料と同じである。
【0019】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第1及び第2の固定層における磁界方向は、90度離れるようにアニールされ、第2の固定層における磁界方向は、第2の反強磁性固定化層における磁界方向と平行である。
【0020】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の反強磁性固定化層の材料は、両方が300℃より上の、ネール温度とブロッキング温度を有するように選択される。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の層は第1の層の上に配置され、第3の層は第2の層の上に配置され、第4の層は第3の層の上に配置され、第5の層は第4の層の上に配置され、第8の層は第5の層の上に配置され、第6及び第7の層はいずれかの順序で第8の層の上に配置される。
【0021】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第1及び第2の反強磁性固定化層は、PtMn、IrMn又はFeMnのうちのそれぞれ選択された1つから構成される。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第2の層は第1の層の上に配置され、第3の層は第2の層の上に配置され、第4の層は第3の層の上に配置され、第5の層は第4の層の上に配置され、第8の層は第5の層の上に配置され、第6及び第7の層はいずれかの順序で第8の層の上に配置され、第2の固定層はCoFeから構成され、第2の反強磁性固定化層はPtMn、IrMn又はFeMnのうちの選択された1つから構成される。
【0022】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第3の層は、
第2の層に近接して配置される第1の強磁性固定層、
第1の強磁性固定層の上に配置された第3の非磁性スペーサ層、及び
第2の非磁性スペーサ層の上に配置された第2の強磁性固定層
を含む。
【0023】
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、強磁性固定層はCoFeから構成され、第3の非磁性スペーサ層はRuから構成される。
上記磁気抵抗素子のいくつかの実施形態では、第1及び第2の固定層における磁界方向は、90度離れるようにアニールされ、第2の固定層における磁界方向は第2の反強磁性固定化層における磁界方向と平行である。
【0024】
本発明の態様を理解するのに有用な別の例によれば、磁気抵抗素子の製造方法は、基板上に二重固定磁気抵抗素子を堆積させることを含む。二重固定磁気抵抗素子は、第1の反強磁性固定化層を含む。二重固定磁気抵抗素子はまた、反強磁性固定化層に近接する第1の固定層を含む。二重固定磁気抵抗素子はまた、第1の反強磁性固定化層に近接して配置された第1の非磁性スペーサ層を含む。二重固定磁気抵抗素子はまた、第2の固定層を含む。二重固定磁気抵抗素子はまた、第2の固定層に近接する第2の反強磁性固定化層を含む。二重固定磁気抵抗素子は、第1及び第2の固定層の間に自由層を含む。二重固定磁気抵抗素子はまた、第2の固定層と自由層との間に第2の非磁性スペーサ層を含む。第2の非磁性スペーサ層の材料は、第2の固定層と自由層との間の所望の部分的な固定を可能にしながら、第2の非磁性スペーサ層の厚さが0.5nmよりも大きくなることを可能にするように選択される。
【0025】
上記方法のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の周りのいくつかの層は異なるか又は省略される。
いくつかの実施形態では、上記の方法は、任意の組み合わせで、以下の態様のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0026】
上記方法のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の材料は、第2の固定層と自由層との間の磁気結合が最大の強磁性結合と最大の反強磁性結合との間になることを可能にするように、0.5nmより大きい第2の非磁性スペーサ層の厚さを可能にするように選択される。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記方法はさらに、
第1のアニーリング温度、第1のアニーリング磁界、第1のアニーリング磁界方向及び第1のアニーリング時間で、第1の固定層及び第1の反強磁性層をアニールすること、
第2のアニーリング温度、第2のアニーリング磁界、第2のアニーリング磁界方向及び第2のアニーリング時間で、第2の固定層及び第2の反強磁性層をアニールすること
を含み、
第1のアニーリング磁界方向は選択された磁化方向であり、
第2のアニーリング磁界方向は第1のアニーリング磁界方向と直交し、
第1のアニーリング磁界は第2のアニーリング磁界より高く、第2のアニーリング磁界は、第1の固定層のアニーリング又は第1の反強磁性層のアニーリングに影響を与えることなく、第2の固定層のアニーリング及び第2の反強磁性層のアニーリングをもたらすように選択される。
【0028】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1のアニーリング磁界は約1テスラであり、第2のアニーリング磁界は約20ミリテスラから約100ミリテスラの範囲である。
上記方法のいくつかの実施形態では、第1のアニーリング温度は約295℃であり、第2のアニーリング温度は約300℃であり、第1のアニーリング時間は約1時間であり、第2のアニーリング時間は約1時間である。
【0029】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1及び第2の固定層の両方がCoFeから構成される。
上記方法のいくつかの実施形態では、第1及び第2の反強磁性固定化層の両方がPtMnから構成される。
【0030】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1及び第2の反強磁性固定化層の両方がPtMnから構成される。
上記方法のいくつかの実施形態では、第1及び第2の反強磁性固定化層は、同じ材料で構成される。
【0031】
上記方法のいくつかの実施形態では、第1及び第2の固定層の両方がCoFeから構成される。
上記方法のいくつかの実施形態では、第2の非磁性スペーサ層の厚さは約0.9nmから約2nmの間である。
【0032】
本発明の前述の特徴及び本発明自体は、図面についての以下の詳細な説明からより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】巨大磁気抵抗(GMR)素子の理想的な及び実際の伝達特性を示すグラフである。
図2】単一の固定された構成を有する従来技術のGMR素子の層を示すブロック図である。
図3】二重の固定された構成を有する従来技術のGMR素子の層を示すブロック図である。
図4】特定の二重固定配置を有する磁気抵抗素子の実施形態の層を示すブロック図である。
図5】いくつかの実施形態において、図4の磁気抵抗素子の形状を記述することができる、ヨーク形状を有する磁界検知素子の平面図である。
図6】回転速度測定のために磁性ターゲットの上に配置される磁気抵抗素子磁界センサのブロック図である。
図7図4及び5の二重固定GMR素子を形成するために使用することができる処理ステップの一例を示すフローチャートである。
図8図4及び5の二重固定GMR素子を形成するために使用することができる代替的な処理ステップの例を示すフローチャートである。
図9図4及び5の二重固定GMR素子を形成するために使用することができる代替的な処理ステップの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明について説明する前に、本明細書においては、特定の形状(例えばヨーク形)を有するGMR素子又はTMR素子が参照されることがあることに留意されたい。しかしながら本明細書において説明される技法は、様々な大きさ及び形状に適用することができることが当業者には理解されよう。
【0035】
本明細書において使用されるとき、「異方性」又は「異方性の」という用語は、さらなる外部磁界を経験しない場合に、強磁性層又はフェリ磁性層の磁化が向く傾向のある、特定の軸又は方向を指す。軸方向異方性は、結晶性効果によって、又は形状異方性によって生成されることが可能であり、結晶性効果及び形状異方性は、いずれも磁界の2つの同等な方向を許容する。また、方向異方性は、隣接する層の中にやはり生成されることが可能であり、例えば隣接する層内の特定の軸に沿った単一の磁界方向のみを許容する反強磁性層によって生成され得る。
【0036】
以上に鑑みて、磁性層内に異方性を導入することにより、外部磁界が存在しない場合にその異方性に沿って整列されるように磁性層の磁化を強制することができることが理解されよう。GMR素子又はTMR素子の場合、方向異方性は、例えば外部磁界に応答して磁性層内に磁界のコヒーレント回転を得る能力を提供する。
【0037】
本明細書において使用されるとき、「磁界検知素子」という用語は、磁界を検知することができる様々な電子素子を記述するために使用される。磁気抵抗素子は、磁界検知素子の1つのタイプにすぎない。
【0038】
本明細書において使用されるとき、「磁界センサ」という用語は、磁界検知素子を使用する、一般的には他の回路と組み合わせた回路を記述するために使用される。磁界センサは、限定されないが、磁界の方向の角度を検知する角度センサ、電流搬送導体によって搬送される電流によって生成される磁界を検知する電流センサ、強磁性体の近接を検知する磁気スイッチ、強磁性物品、例えばリング磁石の磁区の通過を検知する回転検出器、及び磁界の磁界密度を検知する磁界センサを含む様々な応用例で使用される。
【0039】
本明細書において説明される構造及び方法は、GMR磁気抵抗素子及びTMR磁気抵抗素子の両方に適用される。しかしながら、同じ又は同様の構造及び方法を、現在知られているものであれ、あるいは後に開発されるものであれ、他のスピンエレクトロニクス磁気抵抗素子に適用することができることを理解されたい。
【0040】
ここで図1を参照すると、グラフ100は、ミリテスラ(mT)の磁界単位のスケールを有する水平軸、及び任意の単位の抵抗単位のスケールを有する垂直軸を有する。
曲線102は、理想的なGMR素子の伝達関数、すなわちGMR素子によって経験される抵抗対磁界を表している。伝達関数102は、上側飽和点102bと下側飽和点102cの間に線形領域102aを有する。領域102d、102eは飽和している。線形領域102aは理想的な線形領域であることを理解されたい。
【0041】
ステップ(段、段差)、例えばステップ104は、GMR素子の実際の伝達関数を表している。飽和点102b、102cを越えると、ステップ104によって表されている実際の伝達関数は、飽和領域102d、102eと一体になる。
【0042】
ステップ104は望ましいものではない。ステップ104は、GMR素子におけるいわゆる自由層内の磁区の磁気的挙動に起因する。自由層の挙動は、図2に関連して以下でより完全に説明される。
【0043】
ステップ104は等しい間隔及び等しいステップの高さを有する規則正しいステップであるように示されているが、ステップ104はまた、不均等な間隔及び不均等なステップの高さ(すなわち、振幅)を有する不規則なものであってもよい。
【0044】
次に図2を参照すると、従来技術のGMR素子200は、基板の上に配置された複数の層を含む。基板の上側の表面は、図2の一番下に、最も下側の線として示されている。
図2の左側に、個々の層が機能名称によって識別されている。図2の右側には、機能層を形成することができる副層(サブレイヤ)の磁気特性が示されている。一般に、磁気材料は様々な磁気特性を有することができ、また、限定されないが、強磁性、反強磁性及び非磁性を含む様々な用語によって分類され得る。様々なタイプの磁気材料についての説明は、本明細書においては詳細にはなされていない。しかしながら、ここでは、強磁性材料は、強磁性材料内の伝導電子の磁気モーメントが、概して、平行で、かつ、同じ方向になるように整列する傾向があり、強磁性材料の非ゼロ正味磁界をもたらす材料である、と言及しておくだけで十分であるとしておく。
【0045】
銅、銀及び金のようなほとんどの材料は、正味磁化を示さない反磁性材料である。これらの材料は、印加される(外部)磁界とは逆で、かつ、それに比例する極端に弱い磁化を示す傾向がある。反磁性材料は非磁性材料とも呼ばれる。
【0046】
反強磁性材料は、反強磁性材料中の磁気モーメントが、概して、平行で、かつ、反対方向になるように整列する傾向があり、ゼロ正味磁界をもたらす材料である。
示されているように、従来技術のGMR素子200は、基板の上に配置されたシード層202、シード層202の上に配置された反強磁性固定化層(pinning layer)204、及び反強磁性固定化層204の上に配置された固定層(pinned layer)206を含むことができる。固定層206は、第1の強磁性固定層206a、第2の強磁性固定層206c、及びそれらの間に配置されたスペーサ層206bからなり得る。
【0047】
また、従来のGMR素子200は、第2の強磁性固定層206cの上に配置されたスペーサ層208、及びスペーサ層208の上に配置された自由層210を含むことも可能である。スペーサ層206bは非磁性金属層である。また、スペーサ208も非磁性層であり、GMRの場合は金属層であり、あるいはTMRの場合は絶縁層であってもよい。自由層210は、第1の強磁性自由層210a及び第2の強磁性自由層210bからなり得る。
【0048】
キャップ層212は、GMR素子200を保護するために自由層210の上に配置され得る。
従来技術のGMR素子200の層の厚さの例は、ナノメートルの単位で示されている。従来技術のGMR素子の層の材料の例は、原子記号によって示されている。
【0049】
いくつかの層には、GMR素子200が外部磁界を経験しない場合の層の磁界方向の方向を示す矢印が示されている。ページから出ていく矢印は、円の中の点で示されており、また、ページの中に入る矢印は、円の中の十字で示されている。
【0050】
一番下から上に向かって層を取り上げると、シード層202は、上の層の結晶特性に影響を及ぼす、基板上の規則的な結晶構造を提供するために使用される。
反強磁性固定化層204に関して、反強磁性固定化層204内の副層(サブレイヤ、すなわち層部分)は、右矢印及び左矢印によって示されている異なる交互の方向を指す磁界を有し、ゼロの正味磁界を有する反強磁性固定化層をもたらす傾向がある。反強磁性固定化層204の頂部表面は、1つの方向、ここでは左に向かって示されている方向を指す磁気モーメントを有する傾向がある。
【0051】
固定層206に関して、第1の強磁性固定層206aは、反強磁性固定化層204の頂部表面に強磁性的に結合する傾向があり、したがって第1の強磁性固定層206a内の磁界は、反強磁性固定化層204の頂部表面における、ここでは左に向かって示されている磁気モーメントと同じ方向を指し示し得る。
【0052】
第1の強磁性固定層206aと第2の強磁性固定層206cとの間にスペーサ層206bが存在しているため、第2の強磁性固定層206cは、第1の強磁性固定層206aと反強磁性的に結合する傾向があり、したがって第2の強磁性固定層206cは、他の方向、ここでは右を指して示されている方向を指す磁界を有する。3つの層206a、206b、206cの組み合わせは、合成反強磁性構造又は層と呼ばれ得る。
【0053】
第1の自由層及び第2の自由層210a、210bは、外部磁界が存在しない場合、ページから出る方向を指すそれぞれの磁界を有する。この指示方向は、ページから出る方向指示に沿った特定の異方性を生成することによって達成され得る。その異方性は、GMR素子の形状によって生成され得る。例えば、異方性は、ヨーク形状を有するようにGMR素子200(上面図)をパターン化することによって、又は結晶異方性もしくは磁気異方性によって生成され得る。ヨーク形状については、図5に関連して以下でより完全に説明される。ヨーク形状を生成したことにより、自由層210は優先軸(ヨーク軸)を有する。ヨーク軸が基準磁化に対して直交する場合、交差した異方性が達成され、それにより自由層異方性の次数の磁界拡張(field extension of the order of the free layer anisotropy)に対する線形応答が獲得され得る。
【0054】
動作時、従来のGMR素子200が矢印214の方向を指す外部磁界に曝されると、強磁性自由層210a、210b内の磁界は、右に向かって回転し、第2の強磁性固定層206c内の磁界指示方向とますます整列されるようになる(又は完全に整列され、すなわち右方向を指す)傾向を示す。しかしながら、固定層206内の磁界は反強磁性固定化層によって固定され、回転しない。強磁性自由層210a、210b内の磁界の回転の量は、外部磁界の大きさに依存する。強磁性自由層210a、210b内の磁界と、第2の強磁性固定層206c内の磁界の方向が整列すればするほど、GMR素子200の抵抗が小さくなる傾向がある。具体的には、抵抗は、主として第1の自由層210a内、第2の(Cu)スペーサ層208内、及び第2の強磁性(例えばCoFe)固定層206c内で変化する傾向がある。
【0055】
逆に、GMR素子が矢印214とは逆の方向を指す外部磁界に曝されると、自由層210内の磁界は、左に向かって回転し、第2の強磁性固定層206c内の磁界指示方向とますます反整列される(anti−aligned)ようになる(又は完全に反整列され、すなわち左方向を指す)傾向を示す。回転する量は外部磁界の大きさに依存する。強磁性自由層210a、210b内の磁界と、第2の強磁性固定層206c内の磁界の方向が反整列すればするほど、GMR素子200の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0056】
以上に鑑みて、図1を簡単に参照すると、外部磁界が存在しない場合、GMR素子200の抵抗は、線形領域102aの中心に存在しており、抵抗は、外部磁界214の方向に応じて、伝達特性曲線102上を右又は左へ移動することができる(すなわちより小さくなるか、又はより大きくなる)ことが理解されよう。層の全整列又は全反整列が達成されると、GMR素子200は、それぞれ下側飽和領域102e又は上側飽和領域102dに存在することになる。
【0057】
一般に、強磁性自由層210a、210bは、磁界が第1の方向を指す第1の複数の磁区、及び磁界が1つ又は複数の他の方向を指す第2の複数の磁区を含むがこれらに限定されない、複数の磁区を通常有する傾向がある。強磁性自由層210a、210b内の第1の複数の磁区は、GMR素子200が外部磁界に露出されない場合にページから出ていくように示されるが、GMR素子200が磁界に露出される場合に回転し得る、自由層210の正味磁界と整列される磁界指示方向を有する。上で説明したように、第1の複数の磁区の磁界指示方向は、外部磁界に応答して回転する。第2の複数の磁区は、1つ又は複数の他の方向を指す磁界指示方向を有する傾向がある。
【0058】
簡潔に言うと、図1のステップ104に関して、個々のステップは、強磁性自由層210a、210b内の正味磁界が外部磁界に応答してどこを指したとしても(すなわち回転したとしても)、第1の複数の磁区に存在しない(例えば第2の複数の磁区に存在する)磁区のうちの1つ又は複数、すなわち強磁性自由層210a、210b内の正味磁界の方向を指さない磁界を有する磁区のうちの1つ又は複数が、強磁性自由層210a、210b内の磁界の正味磁界指示方向と整列されるようになる方向に突然スナップする(すなわちジャンプする)ときに生成される。しかしながら、強磁性自由層210a、210b内の正味磁界の方向を指さない磁界を有する磁区のうちの1つ又は複数は、強磁性自由層210a、210b内の磁界の正味磁界指示方向と整列されるようになる方向に、よりゆっくり変化することも可能であり、その場合、図1のステップのうちの1つ又は複数の傾斜は、示されている傾斜より緩やかになるが、それでも依然として望ましくない。したがって自由層210内の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層210内の磁区の数を少なくすること(すなわち第2の複数の磁区内の磁区の量を少なくすること)が望ましい。この低減により、ステップ104がより少なくなり、ステップ104がより小さくなり、又はステップ104が存在しなくなる。
【0059】
自由層の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層210内の磁区の数を少なくするために、すなわちページから出る方向以外の方向を指す磁区の数を少なくするために、外部バイアス化磁石が使用され得る。代替として、いわゆる「二重固定」構造を使用してスタック内磁気バイアスを達成するために、複数の層が基本的なGMR素子200に加えられ得る。
【0060】
次に図3を参照すると、従来技術の二重固定GMR素子300は、非磁性シード層302、シード層302の上に配置された反強磁性固定化層304、固定化層304の上に配置された固定層306、固定層306の上に配置されたスペーサ層308、及びスペーサ層の上に配置された自由層310を含むことができる。いくつかの構造では、自由層310は、2つの強磁性自由層310a、310bからなり得る。いくつかの構造では、スペーサ層308は非磁性層である。
【0061】
二重固定GMR素子300は、自由層310の上に配置されたスペーサ層312、スペーサ層312の上に配置された第2の固定層314、第2の固定層314の上に配置された第2の固定化層316、及び第2の固定化層316の上に配置された非磁性キャップ層318をさらに含むことができる。いくつかの構造では、スペーサ層312は非磁性層である。
【0062】
GMR素子300の層の厚さの例は、ナノメートルの単位で示されている。GMR素子300の層の材料の例は、原子記号によって示されている。
従来技術の二重固定GMR素子300は、第2の固定層314によって生成される静磁界を達成する。第2の固定層314は、第2の反強磁性固定化層316の底部表面に強磁性結合されており、したがって第2の固定層314内の磁界は、反強磁性固定化層316の底部表面における磁気モーメントと同じ方向、ここではページに入る方向を指して示されている方向を指す。
【0063】
第2の反強磁性固定化層316のために使用される材料は、第1の反強磁性固定化層304のために使用される材料とは異なっている。この方法によれば、2つの材料の異なるブロッキング温度(blocking temperatures)(IrMnの場合、230℃未満であり、また、PtMnの場合、250℃より十分に高い温度)を利用することにより、2つの層304、316の磁化が独立して操作され得る。
【0064】
第2の固定層314は、ここでは、第1の固定層306の磁界に対して直角になるように、ページに入る方向を指すように示されている方向に配向された磁界を有する。具体的には、第2の固定層314によって生成され、かつ、自由層310によって経験される磁界の指示方向は、自由層310の正味磁界の方向とは異なる方向を指す自由層310内の磁区の数の低減をもたらし、例えばページから出る方向とは異なる方向を指す磁区の数の低減をもたらす。
【0065】
スペーサ層312の厚さは、第2の固定層314と自由層310の間の所望の磁気結合強度を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、スペーサ層312のTaの厚さはわずか数オングストロームであり、また、結合は、スペーサ層312中のピンホールを通しても生じる。わずか数オングストロームの堆積の厚さは制御が困難であり、また、ピンホール密度も制御が困難であることは理解されよう。したがって第2の固定層314と自由層310の間の磁気結合の量は制御が困難である。
【0066】
GMR素子の場合、スペーサ308は金属非磁性層である(通常は銅)。TMR素子の場合、スペーサ308は絶縁非磁性層である(例えばAl2O3又はMgO)。さもなければGMR素子300は、匹敵するTMR素子と同じ、又は同様の層を有することができる。したがってTMR素子は明確には示されていない。
【0067】
図4を参照すると、二重固定GMR素子400の例は、基板の上に配置された複数の層を含む。基板の上側の表面は、図4の一番下に暗い線で示されている。
図4の左側に、個々の層が機能名称によって識別されている。図4の右側には、機能層を形成することができる副層の磁気特性が示されている。
【0068】
GMR素子400の層の厚さの例は、ナノメートルの単位で示されている。GMR素子400の層の材料の例は、原子記号によって示されている。
一般に、磁気材料は様々な磁気特性を有することができ、また、限定されないが、強磁性、反強磁性及び非磁性を含む様々な用語によって分類され得る。これらのタイプの磁気材料の簡単な説明は、上で与えられている。
【0069】
示されているように、例示的なGMR素子400は、図3の従来技術のGMR素子に対して上で説明した層と同じ層のいくつかを含むことができる。図3の従来技術のGMR素子と同様、例示的なGMR素子400は、基板の上に配置されたシード層402、シード層402の上に配置された反強磁性固定化層404、及び反強磁性固定化層404の上に配置された固定層406を含むことができる。しかしながらいくつかの実施形態では、固定層406は、第1の強磁性固定層406a、第2の強磁性固定層406c、及びそれらの間に配置されたスペーサ層406bからなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層406bは非磁性材料からなる。
【0070】
いくつかの他の実施形態では、固定層406は、上記の代わりに、図3の固定層306と同じ、又は同様の1つの固定層からなり得る。
第1の強磁性固定層406aと第2の強磁性固定層406cの間にスペーサ406bが存在しているため、第2の強磁性固定層406cは、第1の強磁性固定層406aと反強磁性的に結合する傾向があり、したがって第2の強磁性固定層406cは、他の方向、ここでは右を指して示されている方向を指す磁界を有する。上で説明したように、3つの層406a、406b、406cの組み合わせは、合成反強磁性構造又は層と呼ばれ得る。
【0071】
また、例示的なGMR素子400は、第2の強磁性固定層406cの上に配置されたスペーサ層408、及びスペーサ層408の上に配置された自由層410をも含むことができる。いくつかの実施形態では、自由層410は、第2の強磁性自由層410bの下に配置された第1の強磁性自由層410aからなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層408は、非磁性材料(例えばGMRの場合は導電性Cu、又はTMRの場合は絶縁材料)からなる。
【0072】
図3の従来技術のGMR素子300と同様、図4のGMR素子400は、第2の強磁性自由層410bの上に配置されたスペーサ層412、及びスペーサ層412の上に配置された第2の固定層414をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の固定層414は強磁性材料からなり得る。いくつかの実施形態では、スペーサ層412は非磁性材料(例えばRu)からなる。
【0073】
図4のGMR素子400は、第2の固定層414の上に配置された第2の反強磁性固定化層416をさらに含むことができる。
キャップ層418は、GMR素子400を保護するためにGMR素子400の頂部に配置され得る。
【0074】
いくつかの層には、GMR素子400が外部磁界を経験しない場合の層の磁界の方向を示すか又は当該方向である矢印が示されている。ページから出ていく矢印は、円の中の点で示されており、また、ページの中に入る矢印は、円の中の十字で示されている。
【0075】
いくつかの実施形態では、シード層402はRu又はTaからなり、また、第1の反強磁性固定化層404はPtMnからなる。いくつかの実施形態では、第1の固定層406は、CoFeからなる第1の強磁性固定層406aからなり、スペーサ層406bはRuからなり、また、第2の強磁性固定層406cはCoFeからなる。いくつかの実施形態では、スペーサ層408はCuからなる(又は別法としてはAuもしくはAgからなる)。いくつかの実施形態では、第1の強磁性自由層410aはCoFeからなり、また、第2の強磁性自由層410bはNiFeからなる。いくつかの実施形態では、スペーサ層412はRuからなり(又は別法としてはAuもしくはAgからなる)、第2の固定層414はCoFeからなり、第2の反強磁性固定化層416はPtMnからなり、また、キャップ層418はTaからなる。しかしながら他の材料も可能である。
【0076】
Ru(又はAuもしくはAg)からなるスペーサ層412は、スペーサ層412の実現可能な範囲の厚さを可能にし(以下で説明される)、それにより自由層420を部分的に固定することができる。部分固定化については、以下でより完全に説明される。
【0077】
いくつかの他の実施形態では、第1及び第2の反強磁性固定化層404及び416は、IrMn、FeMn又は任意の他のタイプの反強磁性材料からなり得る。いくつかの他の実施形態では、第2の固定層414は、そのようなものではなく、第1の固定層406の副層と同じ、又は同様の複数の副層からなり得る。いくつかの他の実施形態では、スペーサ層408は、Ta又はCuからなり得る。
【0078】
スペーサ層412の厚さは、第2の固定層414と自由層410の間の所望の量の(すなわち部分的な)磁気結合を提供するように選択される。また、スペーサ層412の厚さは、第2の固定層414と自由層410の間の所望のタイプの磁気結合、すなわち強磁性結合又は反強磁性結合、あるいは強磁性と反強磁性の間の結合を提供するように選択される。ここでは結合は、強磁性結合になるように示されているが、結合は、スペーサ層412の厚さを選択することにより、反強磁性にすることも、あるいは強磁性と反強磁性の間の結合にすることも可能である。
【0079】
スペーサ層412がRuから構成されているいくつかの実施形態では、スペーサ層412の厚さは約0.1〜約2nmの範囲内になるように選択されるが、製造プロセスのロバスト性のために好ましくは0.9〜2nmであり、すなわち、スペーサ層412を再現でき且つ信頼できる厚さをもって堆積することができる十分な厚さであることが好ましい。いくつかの実施形態では、スペーサ層412の厚さは0.5nmより大きく、すなわち、図3の従来技術の二重固定GMR素子300のスペーサ層312の厚さよりも大きい。
【0080】
CoFe及びNiFeが同様の磁気特性を有すると見なすと、第1の強磁性自由層410aより上及び第1の強磁性自由層410aより下の材料の層は、同様であるが順序が逆であり、すなわちNiFe(又はCoFe)/Ru/CoFe/PtMnであることが認識されよう。しかしながらスペーサ層406bは、周囲の層の間の強力な結合を提供することが望ましく、したがってスペーサ層406bは薄いことが望ましく、一方、スペーサ層412は、周囲の層の間のそれほど強力ではない結合を提供することが望ましく、したがってスペーサ層412は、より厚いことが望ましい。
【0081】
Ruは、Ruの厚さに応じて、周囲の層の間の反強磁性結合又は磁性結合(Ruderman Kittel Kasuya Yoshida、すなわちRKKY結合とも呼ばれる)を可能にするため、スペーサ層412に良く適している。本質的に、Ru材料は、その存在にもかかわらずRuを介した結合を許容する。これは、達成可能な厚さの値の範囲でより厚いRu層412を可能にし、それにより自由層410の所望の部分固定化を達成することができ、また、自由層410の所望の部分固定化を調整することができる。部分固定化については、上でより完全に説明されており、また、以下でより完全に説明される。
【0082】
対称的に、図3のTaスペーサ層312は、非磁性スペーサ層としてのみ使用され、RKKY結合を提供しないことを理解されたい。本質的に、Taスペーサ層312は、自由層310を固定層314から減結合するだけである。しかしながら、上で説明したように、図4のRuスペーサ層412は、自由層410と固定層414の間のRKKY結合を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、Ruスペーサ層412の厚さは、約−50mTと約50Tの間のRKKY結合を提供するように選択される。RKKY結合は、あり得るプロセス変動に関して安定になる傾向があり、すなわち結合の量は、製造プロセスの変化等によるRu層の約10パーセントの厚さ変化に対しても一定を維持し、かつ、安定を維持する傾向がある。
【0084】
層402〜410の動作については、図2及び3の同様の層に関連して上で説明されている。
自由層410内の磁界の指示方向と整列した固定磁界指示方向を有する第2の固定層414は、特定の挙動を自由層410内にもたらす傾向がある。具体的には、第2の固定層414内の磁界の指示方向は、自由層の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層410内の磁区の数の低減、すなわち外部磁界が存在しない場合にページから出る方向以外の方向を指す磁区の数の低減をもたらす。
【0085】
図2に関連して上で説明したように、一般に、強磁性自由層410a、410bは、限定されないが、磁界が第1の方向を指す第1の複数の磁区、及び磁界が第1の方向とは異なる1つ又は複数の方向を指す第2の複数の磁区を含む複数の磁区を通常有する傾向がある。上で説明した第1の方向は、自由層410の上側及び下側の表面に平行であってもよい。第1の複数の磁区は、GMR素子400が外部磁界に露出されない場合、ページから出ていくように示されるが、GMR素子400が磁界に露出されると回転することができる、自由層410の正味磁界と整列される磁界指示方向を有する。上で説明したように、自由層410内の第1の複数の磁区の磁界指示方向は、外部磁界に応答して回転する。第2の複数の磁区は、第1の方向とは異なる1つ又は複数の方向を指す磁界指示方向を有する傾向がある。
【0086】
また、図2に関連して上で説明したように、図1のステップ104に関して、自由層410内の正味磁界が外部磁界に応答してどこを指したとしても(すなわち回転したとしても)、第1の複数の磁区に存在しない(例えば第2の複数の磁区に存在する)磁区のうちの1つ又は複数、すなわち自由層410内の正味磁界の方向を指さない磁界を有する磁区のうちの1つ又は複数が、自由層410内の正味磁界の磁界指示方向と整列されるようになる方向に突然スナップする(又はよりゆっくり回転する)場合に、個々のステップが生成される。
【0087】
第2の固定層414は、第1の方向以外の方向、すなわち外部磁界が存在しない場合の自由層410内の正味磁界の方向以外の方向を指す自由層410内の磁区の数を少なくするために(すなわち第2の複数の磁区内の磁区の量を少なくするために)、スペーサ層412を介して自由層410に部分的に磁気結合するように動作することができる。この低減により、ステップ104がより少なくなり、ステップ104がより小さくなり、又はステップ104が存在しなくなる。この低減は、上記第2の複数の磁区内の磁区の量の低減を含むことができる。
【0088】
部分固定化とは、第2の固定層414と自由層410の間の磁気結合の方が、第1の固定層406と自由層410の間の磁気結合より少ないことを意味する。部分固定化の量は、部分的にはスペーサ層412の材料及び厚さによって決定される。
【0089】
PtMnの第1及び第2の反強磁性固定化層404、416は、いずれも約300℃より高いネール温度及びブロッキング温度を有することができる。高温応用例、例えば自動車応用例におけるGMR素子400の磁気特性の損失を除去するためには、この高い温度が重要である。
【0090】
GMR素子の層は特定の順序で示されているが、他の実施形態では、層404、406(すなわち406a、406b、406c)及び408は、それぞれ層416、414、412と交換され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、図4に示されているすべての層は、一番下から一番上まで順序が逆にされ得る。
【0091】
結合強度、したがって異方性振幅は、自由層410と第2の固定層414の間の非磁性スペーサ層412によって制御される。図3の従来技術の構造では、極めて薄いTaスペーサ312が使用されている。製造においては、薄いTaスペーサ312の厚さを制御することは困難であり、したがって図3の第2の固定層314と自由層310の間の磁気結合の量を制御することは困難である。対照的に、図4の構造は異なる非磁性スペーサ層412を使用し、第2の固定層414と自由層410の間の強力なRKKY結合を可能にしている。スペーサ層412には、Ru、Ag又はAuが使用され得る。
【0092】
RKKY結合は、固定層414と自由層410の間の距離が長くなるにつれて(すなわち非磁性スペーサ層412の厚さが厚くなるにつれて)小さくなり、最大反強磁性結合と最大強磁性結合の間で切り換わる。結合の最小の値(minima)(結合の第2の最小の値と呼ばれる)は、これらの最大の値の間に出現し、厚さの選択によって結合が調整され得る厚さの範囲で生じる。スペーサ層412の材料は、結合の第2の最小の値(例えばRuの場合、1.6nm)近辺で選択されることが可能であり、それにより、単に厚さに応じて急激にRKKY結合が小さくなるだけの図2の薄いTaスペーサ312に現在使用されている堆積プロセスよりはるかに優れた再現可能な堆積プロセスが得られる。
【0093】
GMR素子の場合、スペーサ層408は金属非磁性層である(通常は銅)。TMR素子の場合、スペーサ層408は絶縁非磁性層である(例えばAl2O3又はMgO)。さもなければGMR素子400は、同等なTMR素子と同じ、又は同様の層を有することができる。したがってTMR素子は明確には示されていない。
【0094】
次に、図4の要素と同様の要素が同様の参照名称で示されている図5を参照すると、特定の実施形態によれば、図4の磁気抵抗素子400は、ヨーク500の形状で形成され得る。断面線A−Aは、図4の透視図を示す。
【0095】
ヨーク500は、主部分501、主部分501に結合された2つのアーム506、508、及びそれぞれ2つのアーム506、508に結合された2つの横方向アーム512、514を有する。いくつかの実施形態では、主部分501、2つのアーム506、508及び2つの横方向アーム512、514は、それぞれ幅(w)を有する。しかしながら他の実施形態では、幅は異なっていてもよい。
【0096】
ヨーク500の長さ(L)及びヨーク500の横方向アーム512、514の長さ(d)は、それぞれヨーク500の幅(w)の少なくとも3倍であり、また、ヨーク500の幅(w)は、約1μmと約20μmの間であってもよい。
【0097】
ヨーク寸法は、例えば以下の範囲内であってもよい。
−ヨーク500の主部分501の長さ(L)は、約10μmと約10ミリメートルの間であってもよい。
【0098】
−ヨーク500のアーム506、508の長さ(l)は、幅(w)の少なくとも3倍であってもよい。
−ヨーク500の幅(w)は、約1μmと約20μmの間であってもよい。
【0099】
ヨーク500のアーム506、508は、主部分501に平行で、全体の長さ(L)の約1/4と1/3の間である長さlを有する横方向アーム512、514に連結されている。
【0100】
一般に、ヨーク形状500を有する磁気抵抗素子400の感度は、幅(w)と共に鈍くなり、また、磁気抵抗素子400の低周波雑音は、幅(w)と共に大きくなる。
ヨーク形状は、主部分501の長手方向の中央領域においてより良好な磁気均質性を提供する。これは、主として主部分501に沿っているヨーク長の減磁界によるものであり、また、これは、ヨーク500の長さに沿ったゼロ磁界における磁化として理解され得る図4の自由層410の異方性を誘導する。固定層(例えば図4の406)がヨークに対して直交する磁界(例えば矢印502)を有する場合、矢印502の方向に外部磁界が印加されると、自由層410の磁化が一様に、すなわち領域をジャンプすることなく回転する。自由層410の磁化の均質な回転は、応答にステップがない応答曲線をもたらす(例えば図1参照)。
【0101】
GMR素子の場合、スタック全体がヨーク形状で設計され得るが、TMR素子の場合、いくつかの実施形態では、ヨーク形状を有することができるのは自由層のみである。
他の実施形態では、GMR素子又はTMR素子400は、ヨークの形では形成されず、その代わりに、例えば寸法L及びwを有する直線バーの形で形成され、寸法l及びdに関連する特徴は有していない。バー形状のGMR素子又はTMR素子の場合でも、依然として断面線A−Aは、図4のGMR素子400の断面を表している。
【0102】
次に図6を参照すると、磁界センサ600は、1つ又は複数の磁気抵抗素子を含むことができる。ここでは、図4に関連して上で説明したタイプの素子であってもよい4つの磁気抵抗素子が共通基板の上に配置されている。4つの磁気抵抗素子は、ブリッジで配置され得る。他の電子コンポーネント(図示せず)、例えば増幅器及びプロセッサも共通基板の上に集積され得る。
【0103】
磁界センサ600は、可動磁性物体、例えば磁北極及び磁南極を交互に有するリング磁石602の近傍に配置され得る。リング磁石602は回転される。
磁界センサ600は、リング磁石の少なくとも回転速度を示す出力信号を生成するように構成され得る。いくつかの構造では、リング磁石602は、ターゲット物体、例えばエンジン内のカムシャフトに結合され、検知されたリング磁石602の回転速度は、ターゲット物体の回転速度を示す。
【0104】
磁界センサ600は、回転検出器として使用されているが、他の同様の磁界センサ、例えば図4の1つ又は複数の磁気抵抗素子を有する電流センサも実現され得ることを理解されたい。
【0105】
図7は、半導体製造設備を使用して実施される、以下で企図されている技法に対応するフローチャートを示したものであることを理解されたい。本明細書においては「処理ブロック」を表す長方形の要素(図7の要素704によって代表される)は、プロセスステップを表している。
【0106】
別段本明細書に記されていない限り、説明されているブロックの特定のシーケンスは例示的なものにすぎず、本発明の趣旨から逸脱することなく変更され得ることは当業者には理解されよう。したがって別段言及されていない限り、以下で説明されるブロックは順序不定であり、可能である場合、ステップは、任意の好都合の順序又は望ましい順序で実行され得ることを意味している。
【0107】
ここで図7を参照すると、上記図4における二重固定GMR素子を製造するための例示的プロセス700はブロック702で始まり、図4の全スタック400が逐次堆積ステップで堆積される。この堆積は、ブロック704のパターン化プロセスに続いてもよい。パターン化により、例えば図5のヨーク形状を得ることができる。
【0108】
ブロック704のパターン化の後、ブロック706で、処理されたウェーハに第1のアニーリングが適用され、第1の固定層(例えば図4の406)内の磁界の方向、及び第1の反強磁性層(例えば図4の404)内の方向が画定される。典型的にはアニーリングは温度T1で実行され、磁界H1がウェーハに平行に、また、例えば図5の矢印502に平行に印加される。このアニーリングは、例えば295℃で1Tの磁界の下で1時間の継続期間を有することができるが、これらの値は、スタックの組成、すなわち層の材料に適合される。
【0109】
ブロック706のこの第1のアニーリングの後、ブロック708で、第2の固定層(例えば図4の414)及び第2の反強磁性層(例えば図4の416)の磁化を画定するために第2のアニーリングが実行され、この第2のアニーリングは、第1の固定層(例えば図4の406)内の磁界の方向、及び第1の反強磁性層(例えば図4の404)内の方向に対して直角に配向される第2の固定層内及び第2の反強磁性層内の磁界を提供する。このアニーリングステップは、例えば、T1に等しくてもよい温度T2で、かつ、磁界H1より小さい磁界H2で1時間の継続期間を有することができる。磁界H2は、図5の矢印504に平行な方向に印加され得る。このステップは、第1の固定層(例えば図4の406)の磁化方向及び値を変えることなく、第2の固定層(例えば図4の414)の磁化を配向することを意味している。
【0110】
2つのPtMn固定化層404、416を有する図4の二重固定層構造に対する典型的な値は、1時間の間、T1=295℃、H1=1T、及び1時間の間、T2=300℃、H2=20mTから100mTである。しかしながら、他の値を使用することもできる。
【0111】
ある実施形態では、値の範囲は次のようになる。
T1=280℃から320℃;H1≧0.3T
T2=280℃から320℃;H2=20から60mT
継続時間:30分から2時間
次に、図7の要素と同様の要素が同様の参照名称で示されている図8及び9を参照すると、同様のプロセス800、900が図7のステップに従って適用され得るが、示されているように順序が異なっている。
【0112】
プロセス700、800、900のすべてにおいて、第2のアニーリング中に印加される磁界H2は、H1より小さく、別の方向、好ましくはH1に対して直交する方向に印加される。
【0113】
本明細書において引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
この特許の主題である種々の概念、構造及び技術を説明するのに役立つ好適な実施形態を説明したが、これらの概念、構造及び技術を組み込んだ他の実施形態が使用されてもよいことは明らかであろう。したがって、特許の範囲は説明した実施形態に限定されるものではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲の趣旨及び範囲によってのみ限定されるべきであると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9